説明

放射線画像撮影装置および方法並びにプログラム

【課題】放射線検出器を用いて放射線画像の撮影を行うに際し、適切にキャリブレーションを行うことができるようにする。
【解決手段】検出部40が、カセッテ20A,20Bに電源が印加されたこと、電源が印加されてから所定期間経過したこと、およびカセッテ20A,20Bが接続されたことの条件のうちの少なくとも1つを検出すると、制御部48が、現在接続されているカセッテのキャリブレーション情報が適切であるか否かを判定する。判定が否定されると、キャリブレーションを行って新たなキャリブレーション情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器を用いて、被写体の放射線画像を撮影するに際して、放射線検出器のキャリブレーションを行う放射線画像撮影装置および方法並びにコンピュータを放射線画像撮影装置として機能させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野等において、被写体を透過した放射線の照射により被写体に関する放射線画像を記録する放射線検出器(いわゆる「Flat Panel Detector」 以下、FDPとする)が各種提案、実用化されている。このようなFPDとしては、例えば、放射線の照射により電荷を発生するアモルファスセレン等の半導体を利用したFPDがあり、そのようなFPDとして、いわゆる光読取方式のものやTFT読取方式のものが提案されている。また、FPDとFPDから出力された放射線画像データを記憶する記憶手段としての画像メモリとをケースに収容したカセッテも種々提案されている。また、このようなカセッテにおいて、FPDが検出した放射線画像データを無線通信によって処理装置に送信し、処理装置において画像処理等の信号処理を行うものも提案されている。
【0003】
ところで、FPDを用いて放射線画像を撮影する場合、実際に撮影を行う前に、感度のばらつき等を補正するためのキャリブレーションを行う必要がある。このため、撮影装置においてキャリブレーションを行うための各種手法が提案されている(特許文献1〜3参照)。これらの手法においては、キャリブレーションは、FPDの電源がオンとされたとき、または電源がオンとされてから所定期間経過したとき等に行われ、これにより取得されたキャリブレーションデータが、FPDあるいはFPDを内蔵したカセッテと対応づけて撮影装置に記憶される。そして、撮影時においては、撮影により取得した放射線画像データがキャリブレーションデータにより補正されることとなる。また、新たなカセッテの接続を検出してキャリブレーションを行う手法も提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−289880号公報
【特許文献2】特開2005−111054号公報
【特許文献3】特開2002−336225号公報
【特許文献4】特開2005−204857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FPDは、通電時間の経過により劣化するため、定期的にキャリブレーションデータを更新する必要がある。しかしながら、上記特許文献1〜4に記載された手法においては、どのようなタイミングでキャリブレーションデータの更新を行うことについての記載がないことから、キャリブレーションが不要なタイミングであるにも拘わらず、キャリブレーションが行われてしまう可能性がある。また、無線通信可能なカセッテの場合、放射線検出器を駆動するためにカセッテはバッテリを内蔵するが、バッテリの電力の消費を防止するために、頻繁に電源がオン、オフされることとなる。しかしながら、電源をオンとする毎に必ずキャリブレーションを行うようにすると、電源をオンとしたときに直ちに撮影を行うことができないため、撮影効率が悪化する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、放射線検出器を用いて放射線画像の撮影を行うに際し、適切にキャリブレーションを行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による放射線画像撮影装置は、放射線検出器を用いて被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置であって、
前記放射線検出器のキャリブレーションを行ってキャリブレーション情報を取得する情報取得手段と、
少なくとも1つの放射線検出器の前記キャリブレーション情報を、該少なくとも1つの放射線検出器とそれぞれ対応づけて記憶する記憶手段と、
前記放射線検出器により検出された前記被写体の前記放射線画像に、前記キャリブレーション情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段と、
前記放射線検出器に電源が印加されたこと、該電源が印加されてから所定期間経過したこと、および前記放射線検出器が接続されたことの条件のうちの少なくとも1つを検出する検出手段と、
該検出手段により前記条件のうちの少なくとも1つが検出されると、現在使用中の前記放射線検出器の前記キャリブレーション情報が適切であるか否かを判定し、該判定が否定されると、前記キャリブレーションを実行可能な状態とするよう前記情報取得手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
「キャリブレーションを実行可能な状態」とは、キャリブレーションを直ちに実行することのみならず、キャリブレーションが必要である旨の通知を行うこと、指示を受けてからキャリブレーションを実行すること、あるいは一定時間経過後にキャリブレーションを実行すること等を含む。なお、判定が否定された場合には、キャリブレーションは行われないこととなる。
【0009】
「キャリブレーション情報」としては、キャリブレーションデータの他、キャリブレーションを行った日時および放射線検出器についての累積撮影回数等を含む。また、急患のような直ちに撮影が必要な場合において、救急撮影実施可能であるか否かの情報もキャリブレーション情報として含めてもよい。
【0010】
「放射線検出器が接続されたこと」とは、ケーブルを用いて有線により放射線検出器を接続する場合には、放射線検出器がケーブルに接続されたことを、無線により放射線検出器を接続する場合には、装置が放射線検出器と通信を行って放射線検出器を認識し、放射線検出器と装置との通信が確立したことを意味する。
【0011】
なお、本発明による放射線画像撮影装置においては、前記制御手段を、前記現在使用中の放射線検出器について、最後に前記キャリブレーションが行われた日時から所定期間経過した場合、および/または該放射線検出器についての累積撮影回数が所定回数を超えた場合に、前記キャリブレーション情報が適切でないと判定する手段としてもよい。
【0012】
また、本発明による放射線画像撮影装置においては、前記制御手段を、前記現在使用中の放射線検出器について、救急撮影実施可能であるか否かを判定し、前記キャリブレーション情報が適切であるか否かの判定が否定された場合において、前記救急撮影実施可能であるとの判定が肯定された場合に、前記救急撮影実施可能である旨の通知を行うように前記情報取得手段を制御する手段としてもよい。
【0013】
また、本発明による放射線画像撮影装置においては、前記制御手段を、前記情報取得手段が前記キャリブレーション情報の取得中に前記放射線検出器を用いての撮影の指示があった場合、前記キャリブレーションを中断する手段としてもよい。
【0014】
また、前記制御手段を、前記現在使用中の放射線検出器が充電可能な無線式の放射線検出器である場合、さらに前記使用中の放射線検出器が充電中であるか否かを判定し、該判定が肯定されると、前記キャリブレーションを実行可能な状態とする手段としてもよい。
【0015】
なお、充電中であるか否かの判定が否定された場合には、放射線検出器を用いて撮影が行われる可能性が高いため、キャリブレーションは行われないこととなる。
【0016】
本発明による放射線画像撮影方法は、放射線検出器を用いて被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置であって、
前記放射線検出器のキャリブレーションを行ってキャリブレーション情報を取得する情報取得手段と、
少なくとも1つの放射線検出器の前記キャリブレーション情報を、該少なくとも1つの放射線検出器とそれぞれ対応づけて記憶する記憶手段と、
前記放射線検出器により検出された前記被写体の前記放射線画像の撮影データに、前記キャリブレーション情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段とを備えた放射線画像撮影装置における放射線画像撮影方法であって、
前記放射線検出器に電源が印加されたこと、該電源が印加されてから所定期間経過したこと、および前記放射線検出器が接続されたことの条件のうちの少なくとも1つを検出し、
該検出手段により前記条件のうちの少なくとも1つが検出されると、現在使用中の前記放射線検出器の前記キャリブレーション情報が適切であるか否かを判定し、
該判定が否定されると、前記キャリブレーションを実行可能な状態とするよう前記情報取得手段を制御することを特徴とするものである。
【0017】
なお、コンピュータを本発明による放射線画像撮影装置として機能させるためのプログラムを提供してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、放射線検出器に電源が印加されたこと、電源が印加されてから所定期間経過したこと、および放射線検出器が接続されたことの条件のうちの少なくとも1つが検出され、これらの条件のうちの少なくとも1つが検出されると、現在使用中の放射線検出器のキャリブレーション情報が適切であるか否かが判定され、この判定が否定されると、キャリブレーションが実行可能な状態とされる。このため、無線式のカセッテのように、頻繁に電源がオン、オフされる場合であっても、キャリブレーション情報の更新が不要な場合には、新たなキャリブレーションが行われなくなり、これにより、撮影効率を悪化させることなく、効率よくキャリブレーションを行うことができる。
【0019】
また、現在使用中の放射線検出器について、キャリブレーション情報が適切であるか否かの判定が否定された場合であっても、救急撮影実施可能であるか否かを判定し、救急撮影実施可能であるとの判定が肯定された場合に、救急撮影実施可能である旨の通知を行うことにより、急患のように直ちに撮影を行うことが必要な場合に、キャリブレーションが行われてしまうことを防止できる。
【0020】
また、キャリブレーション情報の取得中に放射線検出器を用いての撮影の指示があった場合、キャリブレーション情報の取得を中断することにより、必要な場合に撮影を優先させることができる。
【0021】
また、現在使用中の放射線検出器が充電可能な無線式の放射線検出器である場合、さらに使用中の放射線検出器が充電中であるか否かを判定し、この判定が肯定されると、キャリブレーションを実行可能な状態とすることにより、撮影が行われる可能性が高い非充電中にキャリブレーションが行われてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による放射線画像撮影装置を適用した放射線画像撮影システムの概略図
【図2】データベースの構成を示す図
【図3】本実施形態において行われるキャリブレーション処理を示すフローチャート
【図4】キャリブレーション実行のための条件の判定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態による放射線画像撮影装置を適用した放射線画像撮影システムの概略図である。図1に示すように、本実施形態による放射線画像撮影システム1は、2つの撮影部10A,10Bおよびコンソール30を備える。
【0024】
撮影部10Aは、臥位にある被写体Hの放射線画像を取得する臥位型の撮影装置であり、照射制御部12A、放射線源14A、撮影台16A、および放射線検出部18Aを備える。撮影部10Bは、立位にある被写体Hの放射線画像を取得する立位型の撮影装置であり、照射制御部12B、放射線源14B、架台16B、および放射線検出部18Bを備える。なお、本実施形態においては、臥位型および立位型の撮影部を備えたものとしているが、被写体Hを任意の体勢にて撮影することができるフリー撮影可能な撮影部をさらに備えるものであってもよい。
【0025】
照射制御部12A,12Bは、放射線源14A,14Bをそれぞれ駆動して、あらかじめ設定された強度の放射線が設定された時間だけ照射されるように照射量を制御する。放射線源14A,14Bから照射された放射線は、撮影台16A上または架台16Bの前の被写体Hを透過して放射線検出部18A,18Bに入射される。
【0026】
放射線検出部18A,18Bは、FPD22A,22Bを内蔵するカセッテ20A,20Bが設置されており、被写体Hを透過した放射線をFPD22A,22Bにより検出して電気信号(放射線画像データ)に変換する。放射線検出部18A,18Bはコンソール30とケーブル50を介して接続されており、これにより放射線検出部18A,18Bからは、被写体Hを撮影することにより取得した放射線画像データ(アナログデータ)が、ケーブル50を介してコンソール30へ出力される。なお、放射線検出部18A,18Bには、カセッテ20A,20Bをケーブル50に接続するためのコネクタ(不図示)が設けられている。
【0027】
FPD22A,22Bは、放射線を電荷に直接変換する直接方式のFPD、または放射線を一旦光に変換し、変換された光をさらに電気信号に変換する間接方式のFPDのいずれも利用可能である。直接方式のFPDは、アモルファスセレン等の光導電膜、キャパシタおよびスイッチ素子としてのTFT(Thin Film Transistor)等によって構成される。例えば、X線等の放射線が入射されると、光導電膜から電子−正孔対(e−hペア)が発せられる。その電子−正孔対はキャパシタに蓄積され、キャパシタに蓄積された電荷が、TFTを介して電気信号として読み出される。
【0028】
一方、間接方式のFPDは、蛍光体で形成されたシンチレータ層、フォトダイオード、キャパシタおよびTFT等によって構成される。例えば、「CsI:Tl」等の放射線が入射されると、シンチレータ層が発光(蛍光)する。シンチレータ層による発光はフォトダイオードで光電変換されてキャパシタに蓄積され、キャパシタに蓄積された電荷が、TFTを介して電気信号として読み出される。
【0029】
コンソール30は、撮影データ処理部32、画像処理部34、出力部36、記憶部38、検出部40、情報取得部42、入力部44、タイマー46および制御部48を備える。
【0030】
撮影データ処理部32は、撮影部10A,10Bから入力された放射線画像データに対して、A/D変換等のデータ処理を行う。撮影データ処理部32からは、データ処理後のデジタルの放射線画像データが出力される。
【0031】
画像処理部34は、撮影データ処理部32が出力した放射線画像データに対して、記憶部38に記憶されている画像処理パラメータを用いて所定の画像処理を施す。画像処理部34が実施する画像処理は、例えば、画素欠陥補正やこれを行うための欠陥マップの作成、暗画像を用いるオフセット補正や所定の均一露光画像を用いるゲイン補正およびシェーディング補正を含む画像の較正(キャリブレーションデータによる放射線画像データの補正)、さらには階調補正および濃度補正、モニタ表示用およびプリント出力用のデータに画像データを変換するデータ変換等、各種の画像処理が実施可能である。
【0032】
なお、画像処理部34は、コンピュータ上で動作するプログラム(ソフトウェア)、専用のハードウェア、あるいは両者を組み合わせて構成される。画像処理部34からは、画像処理済みの放射線画像データが出力される。
【0033】
出力部36は、画像処理部34から入力された画像処理済みの放射線画像データを出力する。出力部36は、例えば、放射線画像を画面上に表示するモニタ、放射線画像をプリント出力するプリンタ、あるいは放射線画像データを記憶する記憶装置等である。なお、本実施形態においては、出力部36は放射線画像および、放射線画像撮影システム1の操作のための各種表示を行うためのモニタ36Aを備えるものとする。
【0034】
記憶部38は、画像処理部34において、画像を較正するためのキャリブレーションデータおよび各種の画像処理を行うための画像処理パラメータ等を記憶するメモリ38aおよび放射線画像データ等を記憶する画像メモリ38bを内蔵する。なお、キャリブレーションデータを記憶するメモリ38aおよび放射線画像データを記憶する画像メモリ38bは、物理的に異なるメモリであってもよく、1つのメモリの異なるメモリ領域であってもよい。また、ハードディスク等の記録媒体であってもよい。また、画像処理部34に内蔵されるものであってもよく、外部に配置されてコンソール30と接続して用いられるものであってもよい。
【0035】
検出部40は、キャリブレーションデータを取得するために、本実施形態による放射線画像撮影システム1の電源がオンとされることにより、カセッテ20A,20Bに内蔵されたFPD22A,22Bに電源が印加されたこと、FPD22A,22Bに電源が印加されてから所定期間経過したこと、および撮影部10A,10Bにカセッテ20A,20Bが設置されたこと(より具体的にはカセッテ20A,20Bがケーブル50と接続されたこと)の条件を検出し、検出信号を制御部48に出力する。なお、検出部40はこれら3つの条件のうちの少なくとも1つを検出することにより検出信号を出力する。
【0036】
ここで、撮影部10A,10Bにカセッテ20A,20Bが設置されたことの検出は、カセッテ20A,20Bがケーブル50と接続され、カセッテ20A,20Bとコンソール30との接続が確立されたことを検出することにより行われる。また、検出部40は、カセッテ20A,20Bの設置を検出した後、タイマー46を用いて経過時間を監視することにより、カセッテ20A,20Bが設置されてから所定時間経過したことを検出する。
【0037】
情報取得部42は、検出部40が上記3つの条件のうちの少なくとも1つを検出すると、FPD22A,22Bのキャリブレーションを行って、キャリブレーションデータを取得する。なお、キャリブレーションは、撮影部10A,10Bの被写体Hがいない状態で、放射線源14A,14BからFPD22A,22Bに向けて放射線を照射することなく撮影環境のままFPD22A,22Bからの第1の検出画像(暗画像)を取得するとともに、同様に被写体がいない状態で放射線源14A,14BからFPD22A,22Bに向けて所定の均一な放射線を照射してFPD22A,22Bからの第2の検出画像を取得し、取得した第1および第2の検出画像から、キャリブレーションデータ、例えばオフセット補正、ゲイン補正、シェーディング補正および欠陥補正を行うためのキャリブレーションデータを取得することにより行われる。
【0038】
取得したキャリブレーションデータは、新たなキャリブレーションデータとして、記憶部38のメモリ38a内のデータベースに、キャリブレーションデータを取得したカセッテのIDと対応づけられて記憶される。図2はデータベースの構成を示す図である。図2に示すように、データベースDB0は、本実施形態による放射線画像撮影システム1において使用され得るカセッテのIDとキャリブレーションデータを含むキャリブレーション情報とが対応づけられて記憶されている。なお、キャリブレーション情報としては、キャリブレーションデータの他、そのキャリブレーションデータを取得するためにキャリブレーションを行った日時、そのキャリブレーションデータを取得したカセッテの累積撮影回数、およびそのカセッテが救急撮影実施可能か否か等の情報を含む。ここで、キャリブレーションデータおよびキャリブレーションを行った日時は、情報取得部42がキャリブレーションを行う毎に更新され、累積撮影回数はそのカセッテを用いて撮影が行う毎に更新される。また、救急撮影実施可能か否かについては、撮影者が入力部44から救急撮影実施可能か否かを指示することにより更新される。なお、画像処理部34においては、撮影部10A,10Bにおいてケーブル50に接続されたカセッテのIDに基づいて、記憶部38からキャリブレーションデータが読み出されて、放射線画像の較正に使用されることとなる。
【0039】
入力部44は、コンソール30に対する各種設定、撮影指示およびキャリブレーションの実行指示等を入力するためのキーボード等の公知の入力手段からなる。
【0040】
制御部48は、入力部44から入力された撮影指示信号に応じて、撮影部10A,10Bおよびコンソール30における各部の動作を制御する。制御部48は、例えば、所定の撮影メニュー、撮影条件または撮影モードで撮影が行われるように撮影部10A,10Bを制御する。また、画像処理部34において、撮影された放射線画像データが取得され、画像処理が行われるように制御する。また、本実施形態の特徴量であるキャリブレーションを行うようコンソール30の各部を制御する。
【0041】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。なお、本実施形態は、キャリブレーションを行う点に特徴を有するものであるため、被写体Hの放射線画像を取得する処理については説明を省略し、ここではキャリブレーション処理についてのみ説明する。図3は本実施形態において行われるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。検出部40が、FPD22A,22Bに電源が印加されたこと、FPD22A,22Bに電源が印加されてから所定期間経過したこと、および撮影部10A,10Bにカセッテ20A,20Bが設置されたことの条件の少なくとも1つが検出されたか否かを監視している(ステップST1)。ステップST1が肯定されると、検出部40からの検出信号が制御部48に出力されるとともに、現在使用中のカセッテのIDがカセッテから制御部48に出力され、これにより制御部48が、現在接続されているカセッテに内蔵されたFPDのキャリブレーション情報を記憶部38のデータベースにおいて検索する(ステップST2)。なお、現在使用中のカセッテが複数ある場合は、各カセッテに対してステップST2以降の処理が行われる。
【0042】
そして、制御部48は、キャリブレーション実行のための条件を判定する(ステップST3)。図4はキャリブレーション実行のための条件の判定処理のフローチャートである。まず制御部48は、検索により得られたキャリブレーション情報から最後にキャリブレーションを行った日時の情報を取得し、取得した日時から現在の日時までの経過時間が所定時間以内であるか否かを判定する(ステップST11)。なお、所定時間は例えば24時間とすることができるが、FPDは経時により劣化することから、現在接続されているカセッテのFPDの使用開始してからの経時期間に応じて、所定時間を少なくするようにしてもよい。
【0043】
ステップST11が肯定されると、さらに制御部48は、検索により得られたキャリブレーション情報から累積撮影回数の情報を取得し、取得した累積撮影回数が所定回数以内であるか否かを判定する(ステップST12)。なお、FPDは経時により劣化することから、現在接続されているカセッテのFPDの使用開始してからの経時期間に応じて、所定回数を少なくするようにしてもよい。ステップST12が肯定されると、制御部48はキャリブレーションが不要と判定し(ステップST13)、判定処理を終了する。
【0044】
ステップST11およびST12が否定されると、制御部48はキャリブレーション情報に含まれる救急撮影実施可能か否かの情報を取得し、これに基づいて現在使用中のカセッテが救急撮影実施可能に設定されているか否かを判定する(ステップST14)。ステップST14が否定されると、制御部48はキャリブレーションが必要であると判定し(ステップST15)、判定処理を終了する。なお、ステップST12が否定された場合には、ステップST14の処理を行うことなく、直ちにキャリブレーションが必要であると判定するようにしてもよい。
【0045】
一方、ステップST14が肯定されると、制御部48は、システム1を救急撮影実施可能である旨の通知を行い(ステップST16)、処理を終了する。具体的には、出力部36のモニタ36Aに救急撮影実施可能な旨の通知の表示を行う。なお、救急撮影実施可能な旨の通知の表示としては、テキストや画像によるメッセージを用いることができる。また、警告音あるいは警告ランプを用いて通知を行うようにしてもよい。この状態においては、撮影者からの指示によりキャリブレーションを実行すればよい。また、タイマー46の経過時間を検出し、救急撮影実行可能な旨の通知の表示を行ってから一定時間経過しても撮影等の操作が行われない場合には、一定時間経過後に情報取得部42がキャリブレーションを実行するようにしてもよい。
【0046】
図3に戻り、キャリブレーションが必要であると判定された場合、情報取得部42がキャリブレーションを実行する(ステップST4)。これによりキャリブレーションデータが取得され、記憶部38のメモリ38aに記憶されたキャリブレーション情報が更新される。一方、キャリブレーションが不要であると判定された場合は、処理を終了する。なお、キャリブレーション実行中に、撮影の指示がなされた場合には、キャリブレーションを中断して、撮影を優先させることが好ましい。この場合、撮影により取得された放射線画像データの較正は、現在メモリ38aに記憶されているキャリブレーションデータを用いて行われることとなる。
【0047】
このように、本実施形態によれば、FPD22A,22Bに電源が印加されたこと、FPD22A,22Bに電源が印加されてから所定期間経過したこと、および撮影部10A,10Bにカセッテ20A,20Bが設置されたことを検出し、これらの条件のうちの少なくとも1つが検出されると、現在使用中のカセッテに内蔵されたFPDのキャリブレーション情報が適切であるか否かを判定し、判定が否定された場合にキャリブレーションを行うようにしたものである。このため、キャリブレーションが不要な場合には、キャリブレーションが行われないことから、効率よくキャリブレーションを行うことができる。
【0048】
また、現在接続されているカセッテについて、救急撮影実施可能であるか否かを判定し、救急撮影実施可能であるとの判定が否定された場合に、救急撮影実施可能である旨の通知を行うことにより、急患のように直ちに撮影を行うことが必要な場合に、キャリブレーションが行われてしまうことを防止できる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、キャリブレーションが必要であると判定された場合に、情報取得部42がキャリブレーションを実行しているが、キャリブレーションが必要であると判定された場合に、その旨の通知の表示を出力部36のモニタ36Aにおいて行い、撮影者からの指示を待ってキャリブレーションを実行するようにしてもよい。この場合、撮影者からの指示が一定時間内になされない場合には、一定時間経過後に情報取得部42がキャリブレーションを実行するようにしてもよい。なお、キャリブレーションが必要である旨の通知の表示は、テキストや画像によるメッセージを用いることができる。また表示に代えて、警告音あるいは警告ランプを用いるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、カセッテ20A,20Bとコンソール30とをケーブル50により接続しているが、FPD22A,22Bが検出した放射線画像データを無線通信によってコンソール30に送信する無線タイプのカセッテを使用することも可能である。この場合、コンソール30にはカセッテと通信を行うための無線インターフェースが設けられ、無線インターフェースを介して、無線タイプのカセッテと通信を行って、カセッテIDおよび放射線画像データの送受信等を行うこととなる。なお、無線タイプのカセッテを使用する場合において、システム1の電源をオンとするとともに、カセッテの電源をオンとすることにより、コンソール30がカセッテを認識し、カセッテとの通信が確立されることとなる。このため、無線タイプのカセッテを使用する場合には、検出部40が、FPD22A,22Bに電源が印加されたこと、および撮影部10A,10Bにカセッテ20A,20Bが設置されたことの条件の検出は、カセッテとコンソール30との無線通信が確立されたことを検出することにより行えばよい。
【0051】
なお、無線式のカセッテは、バッテリを内蔵することから、電力の消費を防止するために、頻繁に電源がオン、オフされることとなる。ここで、カセッテの電源のオンを検出した場合にキャリブレーションを実行する場合、無線カセッテのように頻繁に電源がオン、オフされると、その都度キャリブレーションが実行されてしまう。本実施形態においては、電源がオンされた後に、さらにキャリブレーション情報が適切か否かを判定しているため、無線式のカセッテのように、頻繁に電源がオン、オフされる場合であっても、キャリブレーションが不要な場合には、キャリブレーションが行われないことから、撮影効率を悪化させることなく、効率よくキャリブレーションを行うことができる。
【0052】
また、無線式のカセッテはバッテリの充電がなされるが、充電中は撮影は行われない。したがって、撮影部10A,10Bに設置されたカセッテ20A,20Bが無線式のカセッテである場合には、カセッテが充電中であるか否かを判定し、充電中である場合にのみ、キャリブレーションを実行するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態において、撮影部10A,10Bに温度センサおよび/または湿度センサを設け、キャリブレーションを行った日時における温度および湿度をキャリブレーション情報として記憶しておき、検索により得られたキャリブレーション情報に含まれる温度および/または湿度と現在の温度および/または湿度とを比較し、現在の温度および/または湿度が所定のしきい値を超えて変動している場合に、キャリブレーションが必要であると判定するようにしてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施形態に係るシステム1について説明したが、コンピュータを、上記の撮影データ処理部32、画像処理部34、検出部40、情報取得部42および制御部48に対応する手段として機能させ、図3,4に示すような処理を行わせるプログラムも本発明の実施形態の1つである。また、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本発明の実施形態の1つである。
【符号の説明】
【0055】
1 放射線画像撮影システム
10A,10B 撮影部
20A,20B カセッテ
22A,22B FPD
30 コンソール
32 撮影データ処理部
34 画像処理部
36 出力部
38 記憶部
40 検出部
42 情報取得部
44 入力部
46 タイマー
48 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出器を用いて被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置であって、
前記放射線検出器のキャリブレーションを行ってキャリブレーション情報を取得する情報取得手段と、
少なくとも1つの放射線検出器の前記キャリブレーション情報を、該少なくとも1つの放射線検出器とそれぞれ対応づけて記憶する記憶手段と、
前記放射線検出器により検出された前記被写体の前記放射線画像の撮影データに、前記キャリブレーション情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段と、
前記放射線検出器に電源が印加されたこと、該電源が印加されてから所定期間経過したこと、および前記放射線検出器が接続されたことの条件のうちの少なくとも1つを検出する検出手段と、
該検出手段により前記条件のうちの少なくとも1つが検出されると、現在使用中の前記放射線検出器の前記キャリブレーション情報が適切であるか否かを判定し、該判定が否定されると、前記キャリブレーションを実行可能な状態とするよう前記情報取得手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記使用中の放射線検出器について、最後に前記キャリブレーションが行われた日時から所定期間経過した場合、および/または該放射線検出器についての累積撮影回数が所定回数を超えた場合に、前記キャリブレーション情報が適切でないと判定する手段であることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記使用中の放射線検出器について、救急撮影実施可能であるか否かを判定し、前記キャリブレーション情報が適切であるか否かの判定が否定された場合において、前記救急撮影実施可能であるとの判定が肯定された場合に、前記救急撮影実施可能である旨の通知を行う手段であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記情報取得手段が前記キャリブレーション情報の取得中に前記放射線検出器を用いての撮影の指示があった場合、前記キャリブレーション情報の取得を中断する手段であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記現在使用中の放射線検出器が充電可能な無線式の放射線検出器である場合、さらに前記使用中の放射線検出器が充電中であるか否かを判定し、該判定が肯定されると、前記キャリブレーションを実行可能な状態とする手段であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
放射線検出器を用いて被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置であって、
前記放射線検出器のキャリブレーションを行ってキャリブレーション情報を取得する情報取得手段と、
少なくとも1つの放射線検出器の前記キャリブレーション情報を、該少なくとも1つの放射線検出器とそれぞれ対応づけて記憶する記憶手段と、
前記放射線検出器により検出された前記被写体の前記放射線画像の撮影データに、前記キャリブレーション情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段とを備えた放射線画像撮影装置における放射線画像撮影方法であって、
前記放射線検出器に電源が印加されたこと、該電源が印加されてから所定期間経過したこと、および前記放射線検出器が接続されたことの条件のうちの少なくとも1つを検出し、
該検出手段により前記条件のうちの少なくとも1つが検出されると、現在使用中の前記放射線検出器の前記キャリブレーション情報が適切であるか否かを判定し、
該判定が否定されると、前記キャリブレーションを実行可能な状態とするよう前記情報取得手段を制御することを特徴とする放射線画像撮影方法。
【請求項7】
コンピュータを、放射線検出器を用いて被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置として機能させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、前記放射線検出器のキャリブレーションを行ってキャリブレーション情報を取得する情報取得手段と、
少なくとも1つの放射線検出器の前記キャリブレーション情報を、該少なくとも1つの放射線検出器とそれぞれ対応づけて記憶する記憶手段と、
前記放射線検出器により検出された前記被写体の前記放射線画像の撮影データに、前記キャリブレーション情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段と、
前記放射線検出器に電源が印加されたこと、該電源が印加されてから所定期間経過したこと、および前記放射線検出器が接続されたことの条件のうちの少なくとも1つを検出する検出手段と、
該検出手段により前記条件のうちの少なくとも1つが検出されると、現在使用中の前記放射線検出器の前記キャリブレーション情報が適切であるか否かを判定し、該判定が否定されると、前記キャリブレーションを実行可能な状態とするよう前記情報取得手段を制御する制御手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−160945(P2011−160945A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26168(P2010−26168)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】