説明

放射線画像表示装置および方法

【課題】放射線画像の立体視画像に、立体視しやすくするためのマーカを適切に付与する。
【解決手段】撮影方向が異なる2つの位置から、圧迫板により圧迫された被検体に放射線を照射することにより、2つの放射線画像を取得する。シフト量算出部8cが、被検体の最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように、被検体の厚さおよび2つの位置に基づいて、2つの放射線画像にマーカを付与する際のシフト量を算出する。マーカ付与部8dが、算出されたシフト量にて2つの放射線画像にマーカを付与する。表示制御部8eが、マーカが付与された2つの放射線画像に基づく立体視画像をモニタ9に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の立体視画像を表示する放射線画像表示装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の画像を組み合わせて表示することにより、視差を利用して立体視できることが知られている。このような立体視できる画像(以下、立体視画像またはステレオ画像という)は、同一の被写体を異なる方向から撮影して取得された複数の画像に基づいて表示される。
【0003】
一方、このような立体視画像は、デジタルカメラやテレビ等の分野だけでなく、放射線画像撮影の分野においても利用されている。すなわち、被検体に対して異なる撮影方向から放射線を照射し、その被検体を透過した放射線を放射線検出器によりそれぞれ検出して複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像を用いて立体視画像を表示することが行われている。このような立体視画像を用いることにより、奥行き感のある放射線画像を観察することができるため、診断をより行いやすくすることができる。
【0004】
ところで、病院の検査では病変周辺の組織片を採取することがあるが、近年、患者に大きな負担をかけずに組織片を採取する方法として、中が空洞の組織採取用の針(以下、生検針と称する)を患者に刺し、針の空洞に埋め込まれた組織を採取するバイオプシが注目されている。そして、このようなバイオプシを行うための装置としてステレオバイオプシ装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
このステレオバイオプシ装置は、被検体の立体視画像を観察しながら病変の3次元的な位置を特定することができ、生検針の先端をその特定位置に到達するよう制御することによって所望の位置から組織片を採取することができるものである。
【0006】
ここで、ステレオバイオプシは、生検針の到達位置を精度良く制御する必要があることから、立体視画像の奥行き方向の分解能を確保するために、2つの放射線画像を撮影する際の2つの撮影方向がなす角度(輻輳角)を通常の立体視画像を生成する場合よりも大きく取っている。このため、ステレオバイオプシの場合、立体視画像の立体感は、通常の立体視画像よりも大きいものとなっていることから、2つの放射線画像を融像させて立体視できるようになるまでに時間を要するものとなっている。
【0007】
ここで、立体視を行う際に2つの画像の融像を容易なものとするために、2つの画像に着色された円形のマークを表示する手法(特許文献2参照)、立体視するための基準となるマークを、撮影時に画像に写し込む手法(特許文献3参照)、2つの画像に近景用および遠景用のマークを付与する手法(特許文献4参照)、立体視する画像を表示する前に、立体感に応じて間隔が異なる2つの円形のマーカを表示する手法(特許文献5参照)、立体視を補助するためのマーカを丸形状としたり、明るくしたりする手法(特許文献6参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−75317号公報
【特許文献2】特開平08−262370号公報
【特許文献3】特開平07−325355号公報
【特許文献4】特開平07−114064号公報
【特許文献5】特開2006−350934号公報
【特許文献6】特開2002−092656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献4に記載された手法は、2つの画像に、近景用および遠景用にマークを付与するものであるが、その対象は風景画等の自然画像である。また、特許文献5に記載された手法は、立体感に応じて間隔が異なるマーカを表示するものであるが、その間隔は遠景および近景に応じて変更するものである。ここで、乳房の立体視画像のように、乳房を圧迫板により圧迫して撮影を行うことにより立体視画像を取得する場合、乳房の大きさによって圧迫厚さが異なるものとなる。このため、放射線画像の立体視画像に対して、特許文献4,5に記載された手法のように、近景および遠景という漠然とした位置にマークを付与したのでは、2つの放射線画像を適切に融像することができず、その結果、立体視を容易に行うことができないこととなる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、放射線画像の立体視画像に、立体視しやすくするためのマーカを適切に付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による放射線画像表示装置は、撮影方向が異なる2つの位置から被検体に放射線を照射することにより取得された、2つの放射線画像に基づく立体視画像を表示する表示手段と、
前記2つの放射線画像のそれぞれに、立体視を補助するためのマーカを所定のシフト量にて付与するマーカ付与手段と、
前記立体視画像において、前記被検体の最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように、前記被検体の厚さおよび前記2つの位置に基づいて、前記所定のシフト量を算出するシフト量算出手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
「立体感」とは、2つの放射線画像を立体視したときの奥行き方向の飛び出し量のことを意味する。
【0013】
「シフト量」のシフト方向は、被検体に放射線を照射する2つの放射線源の位置が並ぶ方向と一致するものであり、2つの放射線画像に基づく立体視画像を立体視した際には、シフト量が大きいほど,マーカの立体感は大きくなる。
【0014】
なお、本発明による放射線画像表示装置においては、前記2つの放射線画像を、圧迫板を用いて圧迫された前記被検体を前記2つの位置から撮影することにより取得されたものとし、
前記被検体の厚さを、前記被検体の圧迫厚さとしてもよい。
【0015】
また、本発明による放射線画像表示装置においては、前記マーカと前記放射線画像の最も濃度が高い部分とのコントラスト比を少なくとも800:1としてもよい。
【0016】
また、本発明による放射線画像表示装置においては、前記マーカを円形としてもよい。
【0017】
また、本発明による放射線画像表示装置においては、前記2つの放射線画像を、ステレオバイオプシを行うために取得されたものとしてもよい。
【0018】
本発明による放射線画像表示方法は、撮影方向が異なる2つの位置から被検体に放射線を照射することにより取得された、2つの放射線画像に基づく立体視画像を表示する表示手段と、
前記2つの放射線画像のそれぞれに、立体視を補助するためのマーカを所定のシフト量にて付与するマーカ付与手段とを備えた放射線画像表示装置における放射線画像表示方法であって、
前記立体視画像において、前記被検体の最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように、前記被検体の厚さおよび前記2つの位置に基づいて、前記所定のシフト量を算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、立体視を行うための2つの放射線画像に、所定のシフト量にて立体視を補助するためのマーカを付与するに際し、立体視画像において、被検体の最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように、被検体の厚さおよび被検体に放射線を照射した2つの位置に基づいて、所定のシフト量を算出するようにしたものである。このため、マーカは、放射線画像に含まれる被検体の最も立体感が大きい部分を融像させるために適したシフト量にて付与されることから、融像を適切に行うことができ、その結果、2つの放射線画像に基づく立体視画像を容易に立体視できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の放射線画像表示装置の一実施形態を用いたステレオ乳房画像撮影表示システムの概略構成図
【図2】図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムのアーム部を図1の右方向から見た図
【図3】図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムの撮影台を上方から見た図
【図4】図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
【図5】シフト量の算出を説明するための図
【図6】2つの放射線画像へのマーカの付与を説明するための図
【図7】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【図8】モニタに表示されたステレオ画像を模式的に示す図
【図9】マーカの立体感を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像表示装置の一実施形態を用いたステレオ乳房画像撮影表示システムについて説明する。本発明の実施形態による乳房画像撮影表示システムは、着脱可能なバイオプシユニットを取り付けることにより乳房用のステレオバイオプシ装置としても動作するシステムである。まず、本実施形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成について説明する。図1は、バイオプシユニットが取り付けられた状態の乳房画像撮影表示システムの概略構成を示す図である。
【0022】
本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ8と、コンピュータ8に接続されたモニタ9および入力部7とを備えている。
【0023】
そして、乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。なお、図2には、図1の右方向から見たアーム部13を示している。
【0024】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線照射部16が取り付けられている。アーム部13の回転および上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0025】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線検出器15と、放射線検出器15からの電荷信号の読み出しを制御する検出器コントローラ33が備えられている。また、撮影台14の内部には、放射線検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部等が設けられた回路基板等も設置されている。
【0026】
また、撮影台14はアーム部13に対し回転可能に構成されており、基台11に対してアーム部13が回転したときでも、撮影台14の向きは基台11に対し固定された向きとすることができる。
【0027】
放射線検出器15は、放射線画像の記録と読み出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフさせることによって放射線画像信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0028】
放射線照射部16の中には放射線源17と、放射線源コントローラ32が収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流、時間、管電圧等)を制御するものである。
【0029】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置されて乳房Mを押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向(Z方向)に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。図3は、図1に示す圧迫板18を上方から見た図であるが、同図に示すように、圧迫板18は、撮影台14と圧迫板18により乳房Mを固定した状態でバイオプシを行えるよう、約10×10cm四方の大きさの開口部5を備えている。
【0030】
また、圧迫板コントローラ34は、乳房Mの圧迫厚さの情報を後述するコンピュータに入力する。ここで、圧迫厚さは乳房Mを圧迫板18により圧迫した場合における撮影台14の上面と圧迫板18の下面との距離であり、本実施形態においては、圧迫板18が撮影台14に接している状態を圧迫厚さ=0として、圧迫板コントローラ34により検出されて、コンピュータ8に入力される。
【0031】
バイオプシユニット2は、その基体部分が圧迫板18の支持部20の開口部に差し込まれ、基体部分の下端がアーム部13に取り付けられることによって、乳房画像撮影表示システム1と機械的、電気的に接続されるものである。
【0032】
そして、バイオプシユニット2は、乳房Mに穿刺される生検針21を有し、着脱可能に構成された生検針ユニット22と、生検針ユニット22を支持する針支持部23と、針支持部23をレールに沿って移動させ、あるいは針支持部23を出し入れさせることにより、生検針ユニット22を図1から図3に示すX、YおよびZ方向に移動させる移動機構24とを備える。生検針ユニット22の生検針21の先端の位置は、移動機構24が備える針位置コントローラ35により、3次元空間における位置座標(x,y,z)として認識され、制御される。なお、図1における紙面垂直方向がX方向、図2における紙面垂直方向がY方向、図3における紙面垂直方向がZ方向である。
【0033】
コンピュータ8は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイス等を備えており、これらのハードウェアによって、図4に示すような制御部8a、放射線画像記憶部8b、シフト量算出部8c、マーカ付与部8dおよび表示制御部8eが構成されている。
【0034】
制御部8aは、各種のコントローラ31〜35に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。具体的な制御方法については後述する。
【0035】
放射線画像記憶部8bは、放射線検出器15によって取得された撮影角度毎の放射線画像信号を記憶するものである。
【0036】
シフト量算出部8cは、マーカ付与部8dが後述するように、2つの放射線画像に基づくステレオ画像の立体視を補助するためのマーカを2つの放射線画像に付与する際の、シフト量を算出する。具体的には、ステレオ画像を立体視する際に、マーカの立体感が乳房Mの最も立体感が大きい部分の立体感と同一となるように、マーカを2つの放射線画像に付与する際のシフト量を算出する。ここで、本実施形態においては、乳房Mは圧迫板18により圧迫されて撮影がなされるため、ステレオ画像において立体感が最も大きい部分は乳房Mが圧迫板18と接する部分となる。このため、シフト量算出部8cは、ステレオ画像におけるマーカが、乳房Mが圧迫板18と接する部分と同一の立体感となるように、マーカのシフト量を算出する。
【0037】
図5はシフト量の算出を説明するための図である。なお、本実施形態においては、2つの放射線画像に基づくステレオ画像を表示した際に、ステレオ画における乳房Mが存在しない領域に立体視されるようにマーカを付与するものとする。また、図5におけるX方向に延在する破線は,撮影台14の上面を示し、Z方向の一点鎖線は、アーム部13の回転中心を通る垂線を示す。本実施形態においては、マーカの立体感は乳房Mが圧迫板18と接する部分と同一とすべきであることから、乳房Mが圧迫板18と接する部分における任意の点(すなわち圧迫板18の下面の任意の点)C0を設定する。さらに、後述するステレオ撮影時において乳房Mに放射線を照射する2つの線源位置P0,P1のそれぞれと点C0とを結ぶ直線L0,L1の延長線が、放射線検出器15の表面と交差する位置を算出する。2つの直線L0,L1の放射線検出器15の表面との交点のX方向における位置の差Δt0が、2つの放射線画像に付与するマーカのシフト量となる。
【0038】
ここで、放射線検出器15の表面から線源位置P0,P1までの距離(線源距離)をSID、放射線検出器15の検出面から圧迫板18の下面までの距離をZ0としたとき、シフト量Δt0は撮影時の輻輳角θを用いて下記の式(1)により算出することができる。
【0039】
Δt0=(2×Z0×SID×tanθ)/(SID−Z0) (1)
ここで、線源距離SIDは乳房画像撮影装置10において仕様からあらかじめ分かっている。また、圧迫厚さの情報は圧迫板コントローラ34により検出され、さらに放射線検出器15の表面のZ座標は、乳房画像撮影装置10において仕様からあらかじめ分かっているため、放射線検出器15の検出面から圧迫板18の下面までの距離Z0を算出できる。シフト量算出部8cは、線源距離SID、輻輳角θおよび算出した距離Z0から式(1)を用いてシフト量Δt0を算出する。
【0040】
マーカ付与部8dは、シフト量算出部8cが算出したシフト量にて、マーカを2つの放射線画像に付与する。図6は2つの放射線画像へのマーカの付与を説明するための図である。なお、図6においては2つの放射線画像GR,GLを上下に並べて示し、円形のマーカKR,KLを2つの放射線画像GR,GLにそれぞれ付与する状態を示している。なお、マーカは、2つの放射線画像GR,GLにおける乳房Mが含まれない部分、すなわち放射線検出器15に直接放射線が照射されるすぬけ部に付与される。図6に示すように、マーカKR,KLは、シフト量算出部8cが算出したシフト量Δt0となるように、2つの放射線画像GR,GLに付与される。なお、マーカKR,KLのY座標は,2つの放射線画像GR,GLにおいて同一であり、X座標が算出されたシフト量に応じて異なるものとなっている。ここで、すぬけ部は放射線画像GR,GLにおいて最も濃度が高く、立体視した際にマーカを見やすくするために、マーカKR,KLの濃度は、すぬけ部とのコントラスト比が800:1となるように設定される。
【0041】
表示制御部8eは、マーカが付与された2つの放射線画像を用いたステレオ画像をモニタ9に表示するものである。
【0042】
入力部7は、例えば、キーボードやマウス等のポインティングデバイスから構成されるものであり、モニタ9に表示されたステレオ画像内の異常陰影等の位置をカーソルにより指定可能に構成されたものである。また、入力部7は、操作者による撮影条件等の入力や操作指示の入力等を受け付けるものである。
【0043】
モニタ9は、表示制御部8eの指示により、コンピュータ8から出力された2つの放射線画像信号を用いてステレオ画像を表示するものであるが、その構成としては、例えば、2つの画面を用いて2つの放射線画像信号に基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラス等を用いることで一方の放射線画像は操作者の右目に入射させ、他方の放射線画像は操作者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。または、例えば、2つの放射線画像を所定のずれ量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。
【0044】
次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
まず、撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房が所定の圧力によって圧迫される(ステップST1)。そして、所定の圧力による圧迫後、乳房Mの圧迫厚さの情報が、圧迫板コントローラ34からコンピュータ8に入力される(ステップST2)。
【0046】
次に、入力部7おいて、操作者によって種々の撮影条件が入力された後、撮影開始の指示が入力される。なお、このとき生検針ユニット22は上方に待避しており、まだ乳房Mには穿刺されていないものとする。
【0047】
そして、入力部7において撮影開始の指示があると、乳房Mのステレオ画像の撮影に先だって、スカウト撮影が行われる(ステップST3)。具体的には、まず制御部8aが、バイオプシのスカウト撮影を行うべく、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読み出しを行うよう制御信号を出力する。ここで、アーム部13は初期位置においては、アーム部13が撮影台14に対して垂直となる位置にあることから、この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を垂直方向(θ=0度)方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに、スカウト画像GSの放射線画像信号として記憶される。
【0048】
スカウト撮影により取得されたスカウト画像GSはモニタ9に表示される。操作者はスカウト画像を観察しながら、スカウト画像において視認される異常陰影が圧迫板18の開口部5の位置に位置するように、乳房Mの位置決めを行う。また、この際に乳房Mへの麻酔が行われる。なお、位置決め後、スカウト撮影時と乳房Mの設置位置が異なるものとなった場合には、再度のスカウト撮影を行う。一方、位置決め後、スカウト撮影時と乳房Mの設置位置が略同一となった場合には、被検体である乳房Mへの被曝量低減のために、再度のスカウト撮影は行わない。
【0049】
次いで制御部8aは、あらかじめ設定されたステレオ画像の撮影のための輻輳角θを読み出し、その読み出した輻輳角θの情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施形態においては、バイオプシを行うものであることから、このときの輻輳角θの情報としてθ=±15度があらかじめ記憶されているものとするが、これに限らず、例えば、±10度の角度を用いてもよく、バイオプシを行わない場合には、立体視を良好に行うことが可能な±2度以上±5度以下の任意の角度を用いてもよい。
【0050】
次に、入力部7において撮影開始の指示があると、乳房Mのステレオ画像を表示するための2つの放射線画像の撮影、すなわちステレオ撮影が行われる(ステップST4)。まず、アームコントローラ31において、制御部8aから出力された輻輳角θの情報が受け付けられ、アームコントローラ31は、この輻輳角θの情報に基づいて、図2に示すように、アーム部13が撮影台14に垂直な方向に対して+θ度回転するよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して+15度回転するよう制御信号を出力する。
【0051】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が+15度回転する。続いて制御部8aは、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読み出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を+15度方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶される。なお、この撮影により放射線画像記憶部8bに記憶される放射線画像信号は、右目用の放射線画像GRを表すものとなる。
【0052】
次に、アームコントローラ31は、図2に示すように、アーム部を初期位置に一旦戻した後、撮影台14に垂直な方向に対して−θ度回転するよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して−15度回転するよう制御信号を出力する。
【0053】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が−15度回転する。続いて制御部8aは、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像の読み出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を−15度方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、所定の信号処理が施された後、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶される。なお、この撮影により放射線画像記憶部8bに記憶される放射線画像信号は、左目用の放射線画像GLを表すものとなる。
【0054】
次いで、シフト量算出部8cにより、マーカの立体感が、ステレオ画像を立体視した際の乳房Mの最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように、2つの放射線画像GR,GLにマーカKR,KLを付与するに際のシフト量が算出される(ステップS5)。そして、マーカ付与部8dにより、算出されたシフト量にて2つの放射線画像GR,GLにマーカKR,KLが付与される(ステップST6)。
【0055】
そして、表示制御部8eにより、マーカKR,KLが付与された2つの放射線画像GR,GLの放射線画像信号がモニタ9に出力され、モニタ9において乳房のステレオ画像が表示される(ステップST7)。図8はモニタ9に表示されたステレオ画像を模式的に示す図、図9はマーカの立体感を模式的に示す図である。なお、図9において右側の実線はモニタ9の表示面を、左側の破線は乳房Mが圧迫板18と接する部分、すなわち乳房Mの最も立体感が大きい部分の立体感を示す。図8に示すように、表示されたステレオ画像においては、奥行きを持つ乳房Mの像が立体視される。また、図9に示すように、マーカKが乳房Mの最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように立体視される。
【0056】
次に、乳房のステレオ画像が表示された後、操作者によって、乳房における石灰化や腫瘤等の異常陰影が発見され、引き続いてバイオプシユニット2によってそれらの組織を採取したい場合等には、モニタ9に表示されたステレオ画像上において、操作者によって異常陰影のターゲットが指定される(ステップST8)。この場合、操作者はマーカを指標にすることにより、2つの放射線画像GR,GLを適切に融像でき、これにより、ステレオ画像を容易に立体視することができる。
【0057】
ターゲットの指定は、例えば、入力部7におけるマウス等のポインティングデバイスによって行うようにすればよい。具体的には、例えば、ステレオ画像を構成する2つの放射線画像内にそれぞれ3次元カーソル用の指標を表示させ、この2つの指標から構成される立体視画像である3次元カーソルを入力部7によって動かすことによってターゲットを指定するようにすればよい。なお、各放射線画像GR,GL内における指標の位置は、それぞれ同じ位置を示すように、ステレオ画像を撮影した際の撮影方向に応じてその座標位置が設定されているものとする。
【0058】
このように、バイオプシのターゲットとする異常陰影が指定されると、指定されたターゲットの位置情報(x,y,z)が制御部8aによって取得される。制御部8aはその位置情報をバイオプシユニット2の針位置コントローラ35に出力する。この状態で、入力部7において所定の操作ボタンが押されると、制御部8aから針位置コントローラ35に対し、生検針21を移動させる制御信号が出力される。針位置コントローラ35は、先に入力された位置情報の値に基づき、生検針21の先端が、その座標が示す位置の上方に配置されるように、生検針21を移動する。
【0059】
その後、操作者により、生検針21の穿刺を指示する所定の操作が入力部7において行われると、制御部8aと針位置コントローラ35の制御の下で、生検針21の先端が座標が示す位置に配置されるように生検針21が移動させられて、生検針21による乳房の穿刺が行われる(ステップST9)。
【0060】
このように、本実施形態によれば、立体視を行うための2つの放射線画像GR,GLに、立体視を補助するための所定のシフト量にてマーカKR,KLを付与するに際し、ステレオ画像において、乳房Mの最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように、乳房Mの厚さおよび2つの放射線画像GR,GLを取得した際の放射線源の位置に基づいて、シフト量を算出するようにしたものである。このため、マーカは、放射線画像に含まれる乳房Mの最も立体感が大きい部分を融像させるために適した位置に付与されることから、融像を適切に行うことができ、その結果、2つの放射線画像GR,GLに基づくステレオ画像を容易に立体視できることとなる。
【0061】
なお、上記実施形態においては、マーカの形状を円形としているが,これに限定されるものではなく、星形、三角形等任意の形状としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、マーカと放射線画像とのコントラスト比を800:1としているが、これに限定されるものではなく,任意のコントラスト比としてもよい。なお、マーカに色を付与してもよい。
【0063】
また、上記実施形態は、本発明の放射線画像表示装置の一実施形態をステレオ乳房画像撮影表示システムに適用したものであるが、本発明の被写体としては乳房に限らず、例えば、乳房以外の指、頭部等を対象として撮影を行う放射線画像撮影表示システムにも本発明を適用することができる。この場合、被検体の厚さは、操作者が計測し,計測した結果を入力部を用いて装置に入力するようにすればよい。
【符号の説明】
【0064】
1 乳房画像撮影表示システム
2 バイオプシユニット
7 入力部
8 コンピュータ
8a 制御部
8b 放射線画像記憶部
8c シフト量算出部
8d マーカ付与部
8e 表示制御部
9 モニタ
10 乳房画像撮影装置
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線検出器
17 放射線源
18 圧迫板
21 生検針
22 生検針ユニット
31 アームコントローラ
32 放射線源コントローラ
33 検出器コントローラ
34 圧迫板コントローラ
35 針位置コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影方向が異なる2つの位置から被検体に放射線を照射することにより取得された、2つの放射線画像に基づく立体視画像を表示する表示手段と、
前記2つの放射線画像のそれぞれに、立体視を補助するためのマーカを所定のシフト量にて付与するマーカ付与手段と、
前記立体視画像において、前記被検体の最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように、前記被検体の厚さおよび前記2つの位置に基づいて、前記所定のシフト量を算出するシフト量算出手段とを備えたことを特徴とする放射線画像表示装置。
【請求項2】
前記2つの放射線画像が、圧迫板を用いて圧迫された前記被検体を前記2つの位置から撮影することにより取得されたものであり、
前記被検体の厚さは、前記被検体の圧迫厚さであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像表示装置。
【請求項3】
前記マーカと前記放射線画像の最も濃度が高い部分とのコントラスト比が少なくとも800:1であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像表示装置。
【請求項4】
前記マーカは円形であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の放射線画像表示装置。
【請求項5】
前記2つの放射線画像は、ステレオバイオプシを行うために取得されたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の放射線画像表示装置。
【請求項6】
撮影方向が異なる2つの位置から被検体に放射線を照射することにより取得された、2つの放射線画像に基づく立体視画像を表示する表示手段と、
前記2つの放射線画像のそれぞれに、立体視を補助するためのマーカを所定のシフト量にて付与するマーカ付与手段とを備えた放射線画像表示装置における放射線画像表示方法であって、
前記立体視画像において、前記被検体の最も立体感が大きい部分と同一の立体感となるように、前記被検体の厚さおよび前記2つの位置に基づいて、前記所定のシフト量を算出することを特徴とする放射線画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−245193(P2012−245193A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119948(P2011−119948)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】