説明

放射線硬化可能なゲルインクのレベリングおよび放射線硬化可能なゲルインクの基板に直接的なデジタル印刷のための方法ならびに疎水性表面を有する加圧部材を有する装置およびシステム

【課題】放射線硬化可能なゲルインクのレベリング方法、装置、システムを提供する。
【解決手段】UV硬化可能なゲルインクの、基板に直接的なデジタル印刷のためのUV硬化可能なゲルインクのレベリング方法は、基板に直接的にUV硬化可能なゲルインクを噴射することと、ゲルインクの粘性を増加させるためにゲルインクを放射線にさらすことと、親水性接触ロールに犠牲解放流体を添加することと、接触ロールと加圧ロールとによって形成されたレベリングニップにおいてインクをレベリングすることとを含む。加圧ロールは、エラストマー材料と、疎水性表面とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線硬化可能なゲルインクのレベリングのための方法、装置、およびシステムに関する。特に、本開示は、疎水性表面を有する加圧ロールを使用して、放射線硬化可能なゲルインクを接触レベリングするための方法、装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化可能なゲルインク、例えば、UV硬化可能なゲルインクは、基板に直接的に噴射された時には、従来のインクによって形成される液滴よりも流動性が少ない液滴を形成する傾向にある。UVゲルインクが、画像を形成するように基板に直接的に堆積されるように印字ヘッドから噴射された時には、インクの液滴は液体である。液滴が基板に接触した時には、それらは、急速に冷されてゲル状態になるので、流動性が限定される。
【0003】
従来のインクは、基板との接触の際に流動性の液体液滴を形成する傾向にある。印刷の間に流動性液体インクの液滴が癒着するのを防止するために、基板は、典型的には、被覆および/または処理される。例えば、従来のインクを用いて使用するための紙基板は、粘着特性を増加させて表面エネルギーを増加させる材料、または紙基板とインクとの間の化学的な相互作用に影響を与える材料で被覆され得る。そのような被覆または処理は、媒体に加える特別な作業を必要とし、追加の費用が、印刷作業でそれらを使用しようすることに付随する。例えば、デジタル印刷機と従来の印刷機との両方を使用した印刷プロセスは、各印刷機に適した異なる媒体の供給を必要とし得る。
【0004】
放射線硬化可能なゲルインクは、少なくとも、どのように基板が処理されたかに関わらず、様々な種類の基板上で優れた液滴の位置調整を示すので、放射線硬化可能なゲルインクは、印刷作業にとっては有利である。例えば、複数の印刷装置を横断して同じ種類の媒体または同じ種類の基板を流すことと、特別に被覆された印刷用紙などを運ぶ必要がないこととは、費用の面で有利である。
【0005】
放射線硬化可能なゲルインクの印字ヘッドは、典型的には、印刷プロセスに関する顕著な痕跡を残し、その顕著な痕跡は、インク線の外縁よりも厚い中央を有する噴射されたインク線を含み得る。例えば、UVゲルインク画像は、インク液滴の線の不均一な厚さおよび/または堆積の好ましくない高さによってもたらされる丘や谷に起因するコーデュロイの外観などの印刷のアーチファクトを欠点として持ち得る。噴射されたゲルインク線の均一性を達成するために、および/または様々な線の厚さに対処するために、ならびに好ましくない印刷のアーチファクトを事前に除去するために、フラッドコートに依存することは、費用がかかり、一部の印刷業務には望ましくないことがあり得る高い光沢度をもたらし得る。
【0006】
UVゲルインクのプロセスは、別の方法では、例えば、レベリングロールなどの接触部材上でゲルインクを裏移りさせることによって印刷された画像の品質を低下させるが、それを伴うことなく、インクが基板に直接的に噴射された後にゲルインクをレベリングすることによって、好ましくない堆積の高さおよび/またはインク線の不均一な厚さを費用効果が高く効率的に対処する方法、装置およびシステムから利益を得ることがあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によるシステムは、カットシートまたは媒体ロール紙などの基板に直接的に紫外線(「UV」)ゲルインクなどのゲルインクを堆積させるように構成された印字ヘッドを有する、放射線硬化可能なゲルインクの印刷システムを含んでもよい。基板は、プラスチックであっても、紙であっても、被覆された紙であっても、他の材料であってもよい。他の適切な基板は、例えば、ホイルを含んでもよい。ゲルインクは、任意の適切な放射線硬化可能なゲルインクの堆積方法および/システムによって堆積されてもよい。
【0008】
システムは、例えば、レベリングロールなどの接触部材と、例えば、加圧ロールなどの加圧部材とによって画定されたレベリングニップを有する、UV硬化可能なインクをレベリングする装置を含む。接触部材は、接触部材に対するインクの裏移りを最小にして、または接触部材に対するインクの裏移りなく、基板上の噴射されたUVゲルインクに接触するように、および/または基板上の噴射されたUVゲルインクに圧力を加えるように適合されてもよい。接触部材は、基板上でインクに接触する親水性外側接触表面を含んでもよい。
【0009】
加圧部材は、加圧ロールであってもよい。加圧ロールは、レベリングニップおよび/または対向する接触部材における基板の裏側に対して、低い粘着力を加えるように適応された疎水性表面を含む。基板は、処理の方向に、印字ヘッドからレベリンクニップを通って移動されてもよい。
【0010】
一実施形態による装置およびシステムは、UV硬化可能なゲルインクにUV照射を加えるための1つ以上のUV源を含んでもよい。UV源は、所望の程度までゲルインクを硬化させるか、または所望の量のゲルインクを重合させるように適合されてもよい。例えば、ゲルインクは、露出されたインクのうちの少しの割合だけが、重合されるように硬化されてもよい。特に、UV源は、ゲルインクが濃厚になるように、基板上に配置されたゲルインクに放射線を加えることにより、接触部材に対するインクの裏移りを最小にして、または接触部材に対するインクの裏移りがなく、接触部材が、インクに接触することを可能にするように構成されてもよい。
【0011】
あるいは、ゲルインクは、被曝されたインクのうちの少しの割合だけが、重合されるように硬化されてもよい。UV源は、インクがレベリングニップにおいてレベリングされた後に、インクを硬化させるように構成されてもよい。例えば、システムは、ゲルインクがレベリングニップにおいてレベリングされる前にゲルインクの画像を放射線にさらすための第1のUV源と、ゲルインクが、ゲルインクの画像を硬化させるためにレベリングされた後にゲルインクの画像を放射線にさらす第2のUV源とを含んでもよい。システムは、電子ビームシステムなどの、UV以外の硬化システムを使用して、放射線硬化可能なインクを堆積させ、レベリングし、そして硬化させるように構成されてもよい。
【0012】
装置およびシステムは、親水性で、耐久性があり、比較的に安価で、入手が容易である接触表面を有する接触部材を含んでもよい。接触部材は、親水性セラミック表面または親水性エラストマーを有する回転可能なロールであってもよい。一実施形態において、接触表面は、きめの細かい多孔性基材を生成するように研削および研磨されたプラズマ溶射金属酸化物コーティングを備えてもよい。接触部材の接触表面は、酸化クロム、または、好適には、二酸化チタンもしくはチタニアなどの金属酸化物を備えてもよい。
【0013】
接触部材は、対向する加圧部材と共にレベリングニップを形成する。基板は、処理方向に、レベリングニップを通って移動されてもよい。圧力部材は、中央の長手方向軸回りで回転可能な加圧ロールであってもよい。加圧部材は、親水性で、耐久性がある表面を含んでもよい。一実施形態において、加圧部材は、TEFLON(登録商標)またはフッ化ポリマーを備える表面を含んでもよい。
【0014】
装置およびシステムは、レベリングニップの接触部材の表面に水ベースの解放流体を含有および/または添加するための犠牲解放層流体システムを含んでもよい。例えば、解放流体システムは、ゲルインクの画像が印刷プロセスにおいてレベリングニップを通過する前に、接触部材の表面に水ベースの解放流体を添加するように構成されてもよい。加圧部材の疎水性表面は、レベリングの間に、レベリング部材から加圧部材に引き寄せられる解放流体の量を最小化する。
【0015】
一実施形態の方法は、接触部材と加圧部材とによって形成されたレベリングニップにおいてレベリングの間に基板の裏に接触する疎水性表面を有する加圧部材に対して、紙のロール紙などの基板に直接的に噴射されたUVゲルインクを、金属酸化物表面を有する接触部材と接触させることを含んでもよい。
【0016】
一実施形態による方法は、インクジェットの印字ヘッドによって基板の表面に直接的に噴射されたUVゲルインクにUV照射を加えることを含んでもよい。特に、UV源は、インクの粘性を変化させるようにゲルインクを硬化させるように適合されてもよい。好適には、UV照射は、レベリングのために接触部材とインクを接触させる前にインクを濃厚にすることにより、レベリングプロセスの間の、接触部材に対するインクの裏移りを最小化または防止するために、噴射されたUVゲルインクに加えられてもよい。他の実施形態において、放射線硬化可能なゲルインクが使用されてもよく、大量のインクを重合するのに効果的な放射線を加えるように構成された任意のシステムが、使用されてもよく、その任意のシステムは、例えば、電子ビームシステムを含む。
【0017】
別の実施形態において、方法は、基板に直接的に噴射されたUV硬化可能なゲルインクに接触部材の金属酸化物表面を当てる前に、レベリング装置の接触部材の接触表面に水ベースの犠牲解放流体を添加することを含む。例えば、接触部材は、きめの細かい多孔性基材を形成するプラズマ溶射金属酸化物セラミック表面を備えてもよい。例えば、接触部材は、約25ミクロンの厚さを有する金属酸化物セラミック表面を備えてもよい。プラズマ溶射金属酸化物粒子のサイズは、約5ミクロン以下であってもよい。犠牲解放層は、水および界面活性剤、および/または適切なポリマーを含んでもよい。接触部材と疎水性加圧部材とは、レベリングニップを画定し、レベリングニップにおいて、接触部材は、基板と接触する。
【0018】
別の実施形態によるシステムは、接触部材と加圧部材とによって形成されたレベリングニップを有する、基板に直接的な、UVゲルインクのデジタル印刷システムのためのUVゲルインクのレベリング装置を含む。圧力部材は、疎水性である表面を含む。接触部材は、水の保持、解放流体膜の形成、および水ベースの解放流体の収容を容易にする金属酸化物表面を含んでもよい。接触部材の接触表面は、接触部材の表面に金属酸化物をプラズマ溶射することと、溶射された金属酸化物粒子を研削することと、きめの細かい多孔性金属酸化物基材を形成するために、接触表面上の金属酸化物を研磨することとによって形成されてもよい。
【0019】
加圧部材の疎水性表面は、シリコーン表面を有する加圧部材に、TEFLON(登録商標)スリーブなどのTEFLON(登録商標)層を塗布することによって形成されてもよい。あるいは、加圧部材の疎水性表面が、ウレタンの表面にフッ化ポリマーコーティングを噴霧し、そのコーティングを硬化させることによって形成されてもよい。加圧部材は、回転可能なロールであってもよく、TEFLON(登録商標)の吹き付け層などの疎水性材料で形成された表面を含んでもよい。代替的な実施形態において、加圧部材は、加圧ベルトであってもよい。
【0020】
例示的な実施形態が、本明細書に記載される。しかしながら、本明細書に記載される方法、装置、およびシステムの特徴を組み込むあらゆるシステムが、例示的な実施形態の範囲と精神とによって包含されることが想定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、例示的な実施形態によるUVゲルインクのレベリング装置と、基板に直接的な印刷システムとの図式的な側面図である。
【図2】図2は、例示的な実施形態によるUVゲルインクのレベリングおよび硬化のプロセスを示す図である。
【図3】図3は、例示的な実施形態によるUVゲルインクのレベリングおよび硬化のプロセスを示す図である。
【図4】図4は、例示的な実施形態によるUVゲルインクのレベリングおよび硬化のプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
放射線硬化可能なゲルインクのレベリングのための方法、装置、およびシステムの理解に配慮するために、図面に対して参照が行われる。図面においては、同様の参照番号は、全体を通して、同様な要素または同一の要素を示すように使用される。図面は、切断されたシートまたは媒体ロール紙などの基板に直接的に噴射されたUVゲルインクをレベリングするための実例となる方法、装置、およびシステムの様々な実施形態や、実施形態に関連するデータを描く。インクは、インクと接触する接触部材と、疎水性表面を有し、基板の裏側に接触する加圧部材とによって形成されたレベリングニップにおいてレベリングされてもよい。
【0023】
図1は、例示的な実施形態による放射線硬化可能なゲルインクの印刷システムとレベリング装置とを示す。具体的には、図1は、UVゲルインクを噴射するための印字ヘッド105を有するUVゲル印刷システムを示す。印字ヘッド105は、ブラック、クリア、マゼンダ、シアン、イエロー、またはその他任意の所望のインクの色であり得る1つ以上のインクを含み、および/または堆積もしくは噴射するように構成されてもよい。
【0024】
ゲルインクは、任意の放射線硬化可能なインクであってよい。例えば、ゲルインクは、UV照射によって硬化可能であってもよい。さらに、ゲルインクは、インクジェットの印字ヘッド以外の手段によって堆積されてもよい。インクは、任意の適切なインク堆積手段によって基板に直接的に堆積されてもよい。例えば、インクは、図1に示されるようなインクジェットの印字ヘッド105によって噴射されてもよく、または液体状態にまで加熱されたゲルインクを含むゲルインクを基板に堆積させるように構成されたマイクロエレクトロメカニカルシステムなどのシステムによって堆積されてもよい。
【0025】
UVゲルインク印刷技術は、接触部材107と加圧部材109とによって形成されたレベルングニップを有するレベリング装置を含んでもよい。印字ヘッド105は、例えば、不均一に噴射された画像110を形成するように基板に直接的にUVゲルインクを噴射または堆積するように構成されてもよい。例えば、印字ヘッド105は、基板にインクを噴射してもよい。カットシートは、例えば、紙のカットシートであってもよい。あるいは、基板が、図1に示されるようなロール紙112などの紙のロール紙であってもよい。
【0026】
UVゲルインクが、ロール紙112に噴射された後で、ロール紙は、レベリング装置まで処理方向に移動させられてもよい。図1に示されるように、接触部材107は、中央の長手方向軸回りで回転可能であるドラムまたはロールであってもよい。接触部材107は、基板112のインク保持表面に、例えば、噴射されたインク画像110などの噴射されたインクを接触させるように構成されてもよい接触表面を含んでもよい。代替的な実施形態において、接触部材は、接触表面を有するベルトであってもよい。
【0027】
接触部材107は、ロール・オン・ロール・レベリングのために、加圧部材109とレベリングニップを画定するように、加圧部材109と結合されてもよい。加圧部材109は、粘着性が低く疎水性の表面を含む。加圧部材109の表面は、エラストマーであり、接触部材107とニップを形成するのに適している。例えば、加圧部材は、接触部材107とニップを形成するのに適した疎水性エラストマーを備える表面を備えてもよい。加圧部材109は、シリコーン層を備えてもよく、それを覆って、TEFLON(登録商標)スリーブが配置される。別の実施形態において、加圧部材は、フッ化ポリマーで被覆されたウレタン層を含んでもよい。フッ化ポリマーは、疎水性コーティングを形成するように、ウレタン層に噴射されて硬化されてもよい。加圧部材の表面は、吹き付けTEFLON(登録商標)を備えてもよい。加圧部材109は、示されるように、回転可能なロールであってもよい。代替的な実施形態において、加圧部材は、エンドレスベルトなどのベルトであってもよい。
【0028】
ロール紙112は、インク画像110のゲルインクをレベリングするために、ニップを通って、噴射されたインク画像110を運ぶように構成されてもよい。接触部材107は、レベリングされたインク画像120を生成するために、基板上のインクに圧力を加えることによって、噴射された画像110のインクをレベリングする。
【0029】
一実施形態において、レベリングニップは、UV源などの放射線源と結合されてもよい。図1に示されるように、UVゲルインク印刷システムは、UV源145を含んでもよい。UV源145は、インクがレベリングニップの接触部材107と加圧部材109とによってレベリングされる前に、噴射された画像110のインクにUV照射を加えるように配置されてもよい。
【0030】
UV源145は、ある量のインクが重合するように、インクを硬化させるように構成されてもよい。例えば、インク画像110を備えるある量のインクのうちの少しが、重合されてもよい。あるいは、インクのかなりの量が重合されてもよい。例えば、レベリングニップの下流に配置されたUV源は、最終硬化物を生成するために、ゲルインク画像のUV硬化可能なゲルインクを紫外線にさらすように適合されてもよい。
【0031】
好適には、UV源145は、インクが接触部材107によって接触される前に、インクの粘性を増加させるのに充分なゲルインクを重合するように、インク画像110のゲルインクにUV照射を加えるように構成されてもよい。例えば、インクの粘性は、レベリングニップにおける接触部材107によるインクのレベリングおよび/または接触の間の接触部材107に対するUV硬化可能なゲルインクの裏移りを最小化または排除するために変更、例えば、増加されてもよい。裏移りを最小化または防止するために必要とされる硬化の量は、例えば、ゲルの量と、モノマーの組成と、存在する光開始剤の量を含むインクの性質とに依存してもよい。さらに、加える硬化の量は、放射線の波長と、光開始剤との相互作用と、波長の組み合わせ、強度、および時間を含む被爆とに依存してもよい。
【0032】
一実施形態において、UV源145は、第1のUV源であってもよく、UV硬化可能なゲルインクのデジタル印刷システムは、第2のUV源150を含んでもよい。第2のUV源150は、画像110のインクが、レベリングされた画像120を生成するために接触部材107によってレベリングされた後に、UV照射を加えるように構成されてもよい。図1に示されるように、UV源150は、硬化された最終的なインク画像160を生成するために、レベリングされたインク画像120を放射線にさらすように構成されてもよい。他の実施形態において、放射線源は、UV照射以外の手段によって放射線硬化可能なインクを放射線にさらしたり、硬化させたりするように構成されてもよい。例えば、電子ビームシステムが使用されてもよい。
【0033】
接触部材107は、レベリングされたインク画像120を生成するために、噴射されたインク画像110のインクに圧力を加えるように構成されたレベリングロールであってもよい。例えば、接触部材107は、中央の長手方向軸回りに回転するように構成されたレベリングロールであってもよい。接触部材107は、噴射されたインク画像110のインクに接触する親水性接触表面を含んでもよい。接触部材107がインクに接触する前に、インクの粘性は、UV源145によって変更されてもよい。例えば、インクは、レベリングの間の、接触部材107に対するインクの裏移りを最小化または防止するために濃厚にされてもよい。インクは、裏移りを最小化または防止することを必要とされる硬化の量を適用することによって、所望に応じて濃厚にされてもよい。加えられる硬化の量は、例えば、ゲルの量と、モノマーの組成と、存在する光開始剤の量を含むインクの性質とに依存してもよい。さらに、加えられる硬化の量は、放射線の波長と、光開始剤との相互作用と、波長の組み合わせ、強度、および時間を含む被爆とに依存してもよい。
【0034】
接触部材107の接触表面は、製造するのが比較的に安価で耐久性の高い親水性表面であってもよい。表面の材料は、対向する部材とニップを形成するのに適している。接触部材107は、疎水性加圧部材109と共に、レベリングニップを形成するように構成される。接触部材107は、ニップを形成するために、例えば、エラストマー表面を有するロールなどの対向する疎水性加圧部材と接触するセラミック表面を有するロールであってもよい。例えば、接触部材107の接触表面は、金属酸化物を備えてもよい。一実施形態において、接触部材107は、二酸化チタンまたはチタニアを備えてもよい。別の実施形態において、接触部材107の接触表面は、酸化クロムを備えてもよい。酸化クロム、好適には、二酸化チタンなどの金属酸化物を備える親水性接触表面は、水ベースの解放流体を吸収してもよく、これが、接触部材107に対する基板112からのゲルインクの裏移りを最小化または防止することによってUVゲルインクの効果的なレベリングをさらに提供する。
【0035】
親水性金属酸化物粒子は、毛細管現象機能によって水を保持する多孔性構造を形成するために、接触部材107の表面に配置されてもよい。例えば、接触表面は、ロールなどの接触部材に二酸化チタンなどの親水性金属酸化物粒子をプラズマ溶射することと、水ベースの湿し水のための毛細管現象媒体として働く孔を有するきめの細かい基材を生成するように粒子を研削および研磨することとによって形成されてもよい。例えば、接触部材は、約25ミクロンの厚さを有する金属酸化物セラミック表面を備えてもよい。プラズマ溶射される金属酸化物粒子のサイズは、約5ミクロン以下であってもよい。個々の金属酸化物粒子の表面エネルギーは、Teflon(登録商標)などの物質に対する表面エネルギーよりも高くてもよいが、金属酸化物含有接触表面は、ゲルインクのレベリングのための水ベースの解放流体の保持および膜形成を補助することによって、裏移り性能の改善を提供するか、または特定のインクの粘度に対して裏移りに対する抵抗の改善を提供する。
【0036】
解放流体は、接触表面が、レベリングのために、噴射されたインク画像110と接触する前に、接触部材107の表面に添加されてもよい。例えば、犠牲解放層流体は、レベリング装置の解放流体システム(図示せず)によって、接触部材107に含有および/または堆積されてもよい。解放流体システムは、接触部材107の表面に解放流体を含有および/または堆積するように構成されてもよい。例えば、二酸化チタンセラミック表面と共に効果的に使用され得る例示的な解放流体は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ベースの湿し水、好適には、SILGAURDなどのポリマーベースの湿し水を含む。解放流体は、水溶性短鎖シリコーン、界面活性剤を有する水、消泡剤、および犠牲解放層を形成するのに適した他の流体を含んでもよい。
【0037】
加圧部材109の疎水性エラストマー表面は、圧力部材109が、接触部材107と共に、動作可能なレベリングニップを形成することを可能にする。さらに、加圧部材109の疎水性表面は、望ましくない解放流体の消費および/または接触部材107に対する解放流体の不均一な適用を最小化および/または防止し得る。水ベースの解放流体が、犠牲解放層を形成するために、レベリングの前に接触部材107の表面に添加される装置およびシステムにおいて、加圧部材109の疎水性表面は、ある量の解放流体が、接触部材107から加圧部材109に移動することを最小化または防止する。
【0038】
カットシート印刷システムにおいて、加圧部材109の疎水性表面は、例えば、2つの部材が、間挿する基板を伴うことなく互いに接触する文書分離区間において、水ベースの解放流体が接触部材107から加圧部材109に移動することを最小化または防止する。ロール紙システムにおいて、接触部材107と加圧部材109とは、ロール紙の経路の外側で互いに接触してもよい。低い粘着性を提供する低い表面エネルギーを有する加圧部材109の疎水性表面は、接触部材107の表面に解放流体によって形成される犠牲解放層との望ましくない干渉を最小化または防止する。
【0039】
加圧部材109の疎水性表面の表面エネルギーの低さはさらに、基板112の背面と、加圧部材109の表面との間に低い粘着性を提供する。従って、加圧部材109の疎水性表面は、カットシート用途におけるストリッピングの改善と、ロール紙用途におけるガタガタ音の減少とを可能にする。
【0040】
図2は、基板に対して直接的なデジタル印刷プロセスにおけるUV硬化可能なゲルインクなどの放射線硬化可能なゲルインクをレベリングするための方法の一実施形態を示す。方法は、S201において基板に直接的にUV硬化可能なゲルインクを堆積させることを含んでもよい。具体的には、UV硬化可能なインクは、インクジェットの印字ヘッドによって噴射されてもよい。基板は、カットシートであってもよい。あるいは基板は、紙のロール紙などの媒体ロール紙であってもよい。
【0041】
図2に示された実施形態の方法は、S205において、レベリングニップにおいてゲルインクをレベリングすることを含む。レベリングニップは、レベリング部材と、疎水性表面を有する加圧部材とによって形成されてもよい。例えば、レベリング部材は、親水性セラミック表面を有するレベリングロールであってもよく、加圧部材は、ニップを形成するのに適したエラストマー表面を有する加圧ロールであってもよい。レベリングロールと加圧ロールとは、ロール・オン・ロール・レベリングのためのニップを形成するように構成されてもよい。
【0042】
接触部材またはレベリング部材の表面は、親水性金属酸化物表面であってもよい。接触部材は、水を保持し、そして、解放流体が、レベリングのために解放流体システムによって接触表面に添加された時には、接触部材の表面に水ベースの流体解放膜を形成するように構成されてもよい。金属酸化物表面は、金属酸化物で接触部材の表面をプラズマ溶射することと、きめの細かい多孔性基材を生成するために金属酸化物を研削および研磨することとによって形成されてもよい。
【0043】
加圧部材の表面は、疎水性であり、低い粘着性を示すように構成されてもよい。疎水性表面は、印刷プロセスの間に、加圧部材への水ベースの解放流体の移動を最小化または防止し得る。例えば、接触部材に膜を形成する水ベースの解放流体は、カットシートの印刷および処理のために構成された、基板に直接的な、UV硬化可能なゲルインクのデジタル印刷システムの文書分離区間において疎水性加圧部材に移動することを防止されてもよい。加圧部材の疎水性表面の低い粘着性はまた、加圧部材および接触部材の端部分が、例えば、基板経路の外側においては媒体ロール紙によって間挿されないロール紙印刷システムにとって有利である。さらに、低い表面エネルギーを有し得るので低い粘着性を示す、加圧部材の疎水性表面は、カットシートのシステムに対して加圧ロールのストリッピングの改善を提供し、そして、ロール紙用途におけるロール紙のカタカタ音の減少、例えば、低い線形パウンデージ用途におけるインクのない範囲とインクの範囲との間での表面粘着性の違いに起因する有害な効果の低下を提供する。
【0044】
レベリングニップは、処理方向において印字ヘッドから下流に配置されてもよく、基板は、印字ヘッドによって噴射されたゲルインクをレベリング装置のレベリングニップに運ぶように移動されてもよい。インクがS205においてレベリングされた後に、インクは、S215においてUV源によるUV照射を用いて紫外線にさらされてもよい。UV源は、インクを重合し、硬化された最終的な画像を生成するようにインク画像のインクを硬化させるようにインクに放射線を加えるように構成されてもよい。代替的な実施形態において、放射線硬化可能なゲルインクは、UV源以外の放射線源を用いて放射線にさらされてもよく、電子ビームシステムなどのシステムによって放射線にさらされてもよい。
【0045】
図3は、基板に直接的なデジタル印刷プロセスにおいてUV硬化可能なゲルインクなどの放射線硬化可能なインクをレベリングするための方法の別の実施形態を示す。図3に示されるように、方法は、S301において基板に直接的にUV硬化可能なゲルインクを堆積させること、例えば、噴射することを含んでもよい。UVゲルインクは、ゲルインクを堆積および/または噴射するように構成されたインクジェットの印字ヘッドから噴射されてもよい。基板は、カットシート、または紙のロール紙などの媒体ロール紙であってもよい。S305において、UV源は、基板に噴射されたUV硬化可能なゲルインクに放射線を加えてもよい。放射線は、インクの粘度を増加させるために加えられてもよい。具体的には、インクは、噴射されたゲルインクがレベリングニップにおいて接触部材に粘着するのを最小化または防止するために、S305において濃厚にされてもよい。
【0046】
図3に示された一実施形態に従った方法において、濃厚にされたインクと、基板とは、S310において、インクをレベリングするためにレベリンクニップまで進められてもよい。ニップは、レベリングロールなどの接触部材と、例えば、加圧ロールなどの対向する部材とによって画定されてもよい。接触ロールは、S310においてインクをレベリングするために、S301において基板に噴射されてS305において濃厚にされたUV硬化可能なゲルインクを接触させるための金属酸化物表面を含む。好適には、接触表面は、二酸化チタンを含んでもよい。金属酸化物表面は、きめの細かい多孔性金属酸化物基材を生成するために、接触部材の表面に金属酸化物をプラズマ溶射し、研削し、そして研磨することによって形成されてもよい。
【0047】
加圧部材の表面は、疎水性である。例えば、表面は、疎水性エラストマーを備えてもよい。一実施形態において、インクは、シリコーンを備える表面を有する加圧部材と、シリコーンを覆って配置されたTeflon(登録商標)層とによって形成されたニップにおいてレベリングされてもよい。別の実施形態において、インクは、フッ化ポリマーなどの疎水性コーティングを噴霧されたウレタン表面を有する加圧ロールなどの加圧部材によってレベリングされてもよい。他の適切な材料は、例えば、PFA、TEFZEL、SICLEAN、含浸ウレタンを含んでもよい。
【0048】
レベリングされたインクは、S315においてゲルインクを硬化させるために、UV源に進められてもよい。例えば、放射線は、硬化された最終的なUV硬化可能なゲルインク画像を生成するために基板上のレベリングされたインク画像に対してS315においてUV源によって加えられてもよい。
【0049】
図4は、基板に直接的なデジタル印刷プロセスにおいて、UV硬化可能なゲルインクなどの放射線硬化可能なインクをレベリングするための方法の別の実施形態を示す。図4に示されるように、方法は、S401において、基板に直接的にUV硬化可能なゲルインクを堆積させること、例えば、噴射することを含んでもよい。基板は、紙のロール紙などの媒体ロール紙であってもよい。あるいは、基板はカットシートであってもよい。S405において、UV源は、基板に噴射されたUV硬化可能なゲルインクに放射線を加えてもよい。放射線は、インクの粘度を調整し得る。具体的には、インクの粘度は、S405において増加され得る。
【0050】
濃厚にされたインクと、基板とが、レベリングのためにレベリングニップまで進められてもよい。ニップは、レベリングロールなどの接触部材と、加圧ロールなどの対向する部材とによって画定されてもよい。接触ロールは、S401において基板に噴射されてS405において濃厚にされたUV硬化可能なゲルインクを接触させるための親水性金属酸化物表面を含む。金属酸化物表面は、酸化クロムを含んでもよい。好適には、接触表面は、二酸化チタンまたはチタニアを含んでもよい。水を保持し、接触部材の表面に水ベースの解放流体膜の形成を容易にするきめの細かい多孔性金属酸化物基剤を生成するために、金属酸化物表面は、接触部材の表面に金属酸化物をプラズマ溶射し、研削し、そして研磨することによって形成されてもよい。
【0051】
解放流体は、S407において、接触部材の表面に添加されてもよい。解放流体は、水ベースの流体であってもよい。例示的な解放流体は、SDS、好適には、SILGAURDなどのポリマー含有解放流体であってもよい。他の適切な解放流体は、例えば、グリコールベースの水中流体、水中界面活性剤、およびアルコール溶液を含んでもよい。接触部材の接触表面に犠牲解放層を形成するための解放流体は、解放流体システムによって接触表面に含有および/または堆積されてもよい。
【0052】
例えば、加圧ロールなどの加圧部材の表面は、疎水性である。例えば、表面は、疎水性エラストマーを備えてもよい。一実施形態において、インクは、シリコーンを備える表面を有する加圧部材と、シリコーンを覆って配置されたTeflon(登録商標)層とによって形成されたニップにおいてレベリングされてもよい。別の実施形態において、インクは、フッ化ポリマーなどの疎水性コーティングを用いて噴霧されたウレタン表面を有する加圧ロールなどの加圧部材によってレベリングされてもよい。別の実施形態において、ロールなどの加圧部材は、TEFLON(登録商標)を用いて噴霧されてもよい。
【0053】
S410において、添加された犠牲解放流体を表面に有する接触部材は、インクをレベリングするために、基板に噴射されてUV源によって濃厚にされたインクに接触してもよい。レベリングされたインクは、ゲルインクを硬化させるために、別のUV源に進められてもよい。例えば、硬化された最終的なUV硬化可能なゲルインク画像を生成するために、放射線が、基板上のレベリングされたインク画像に加えられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベリングニップにおいて、基板上の放射線硬化可能なゲルインクを接触部材と接触させることであって、前記レベリングニップは、前記接触部材と加圧部材とによって形成され、前記加圧部材は、疎水性表面を有する、接触させること
を含む、放射線硬化可能なゲルインクのレベリング方法。
【請求項2】
放射線硬化可能なゲルインクの画像を形成するために、インクジェットの印字ヘッドから前記基板に直接的に前記ゲルインクを噴射すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触部材と前記ゲルインクを接触させる前に、前記インクを濃厚にするために前記ゲルインクを放射線にさらすこと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲルインクを硬化させるために、前記接触部材と前記ゲルインクを接触させた後に、前記ゲルインクを放射線にさらすこと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加圧部材の表面は、
シリコーンの表面を覆って配置されたTEFLON(登録商標)層であって、前記TEFLON(登録商標)層が、前記シリコーンの表面を覆って配置されることにより、前記TEFLON(登録商標)の表面は、前記ニップにおいて、前記シリコーンの表面と前記接触部材との間に入る、TEFLON(登録商標)層と、
フッ化ポリマーで被覆されたウレタン層と
のうちの一方を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
加圧部材であって、前記加圧部材は、疎水性表面を有する、加圧部材と、
接触部材であって、前記接触部材と前記加圧部材とは、ニップを形成する、接触部材と、
を備える、放射線硬化可能なゲルインクのレベリング装置。
【請求項7】
前記加圧部材の表面は、
シリコーン層と、前記シリコーンを覆って配置されたTEFLON(登録商標)層であって、前記TEFLON(登録商標)層は、前記加圧部材の最も外側の層である、TEFLON(登録商標)層とのうちの一方と、
ウレタン層であって、前記ウレタン層は、フッ化ポリマーでスプレー被覆される、ウレタン層と
を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記加圧部材の前記疎水性表面は、エラストマーを備え、前記接触部材は、親水性金属酸化物表面をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
放射線源であって、前記放射線源は、前記放射線硬化可能なゲルインクが前記ニップにおいて前記接触部材によって接触される前に、前記ゲルインクを放射線にさらすように構成される、放射線源
をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記接触部材が、印字プロセスにおいて、前記基板上の前記ゲルインクと接触する前に、粘性を増加させるために前記ゲルインクを放射線にさらすように構成される第1のUV源と、
前記接触部材が、印字プロセスにおいて、前記基板上の前記ゲルインクと接触した後に、前記ゲルインクを硬化させるように構成される第2のUV源と
をさらに備える、請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−17995(P2013−17995A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142478(P2012−142478)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】