説明

放射線硬化可能な被覆組成物

【課題】一方で良好な溶解度を有し、かつ他方でNIR−線による良好な光活性化能を有する、NIR−光開始剤系を提供する
【解決手段】(A)シアニン−カチオンCya1個及び相応するアニオン1/m Anm−1個からイオン構成されている吸収剤少なくとも1種及び(B)1個の会合した対イオン1/x Katx+を有する、式(VII):の共−開始剤少なくとも1種を含有する混合物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NIR−光開始剤を含有する放射線硬化可能な被覆組成物、NIR−光開始剤(Photoinitiator)の新規処方物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
EP 408322は、シアニン染料及び特定のボラネートイオンからの塩の形の1成分光開始剤を記載している。
【0003】
同様に、その中でカチオンとしてのシアニン−、キサンチリウム−又はチアジン染料及びアニオンとしてのボラネート化合物が使用される1成分光開始剤系が公知である(例えばEP−A223587参照)。
【0004】
技術水準から公知のこれらの全ての系は、それらが塗料中でかなり低い溶解度を示し、そこで特にそれらが結晶として沈殿する場合に、塗装中に欠陥をもたらことで共通している。
【0005】
この発明は、少なくとも1種の増感染料(増感剤とも称される)及び少なくとも1種のラジカル重合開始剤(共−開始剤とも称される)を含有する2成分NIR−光開始剤系を記載している。
【0006】
増感染料としては、技術水準では屡々、染料、殊にシアニン−、キサンチリウム−又はチアジン染料が使用され、共−開始剤(Co-Initiator)としては、例えばボラネート塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホン、ペルオキシド、ピリジン−N−オキシド又はハロゲンメチルトリアジンが使用されている。
【0007】
シアニン染料は、シアニン−カチオン及び相応するアニオンから成っている。ここで、これは分離して存在するアニオンであるか又は内部アニオンであってもよい、即ちアニオン基はシアニン−カチオンと化学的に結合していてもよい。通常それらは、その製造時に、単純塩として、例えばハロゲニド、テトラフルオロボレート、ペルクロレート又はトシレートとして生じる。長鎖アルキル基又はアルキル置換されたアリール基を含有するアニオンを有するシアニン染料は従来は知られていない。シアニン染料は、市場で入手される。
【0008】
シアニン染料は屡々、例えばUS6014930又はEP−A342576から公知であるように、アルキル−及びアリール−スルホネート、スルフェート、クロリド又は類似物として使用される。
【0009】
DE−A19730498及びDE−A19648256から、カチオン染料の分離塩及びボラネート塩から製造され、UV−光反応開始剤と混合しても使用されうる組成物が公知である。
【0010】
ファイル番号102004011347.5のドイツ特許出願の明細書は、印刷インキ中で0.1質量%の最低溶解度を示し、対イオンとして、中心ホウ素原子上に置換基を4個の酸素原子を介して結合して有するボレートを有していてよい、レーザー線のNIR−吸収剤としてのシアニン染料を記載している。しかしながら、このようなボレートは、光化学的に不活性であり、光開始剤として機能することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP 408322
【特許文献2】EP−A223587
【特許文献3】US6014930
【特許文献4】EP−A342576
【特許文献5】DE−A19730498
【特許文献6】DE−A19648256
【特許文献7】DE102004011347.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、一方で良好な溶解度を有し、かつ他方でNIR−線による良好な光活性化能を有する、NIR−光開始剤系を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、次の成分:
(A)シアニン−カチオンCya1個及び相応するアニオン1/m Anm−1個からイオン構成されている吸収剤
{この際、シアニン−カチオンは、一般式(I)、(II)、(III)又は(IV):
【化1】

[式中、nは1又は2であり、基R〜Rは次のものを表す:
− R及びRは相互に無関係に、C−原子数1〜20を有する線状の又は分枝した、置換又は非置換のアルキル−又はアラルキル基、
− R及びRは相互に無関係に、H、CF又はCN、
− R及Rは相互に無関係に、群 −H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、−CF、−SOCF、−R、−OR、アリール−又は−O−アリールから選択される同種又は異種の置換基1個以上、
− Rは、−H、−Cl、−Br、−I、−フェニル、−O−フェニル、−S−フェニル、−N(フェニル)、−ピリジル、バルビツール酸−又はジメドン基、ここで、フェニル基は、なお更に置換されていてもよい、
− R及びRは相互に無関係に、>C(CH、−O−、−S−、>NR又は−CH=C− ]を有し、
かつ、この際、アニオンAnm−は、極性のイオン性ヘッド基A 1個並びに非極性基R10 k個を有する、一般式 [AR10m−
[kは、1、2又は3の数であり、mは1又は2であり、かつ
非極性基R10は相互に無関係に、次の群:
− C−原子数6〜30を有する、線状の、分枝した又は環状のアルキル基並びに
− 一般式 −アリール−R11のアルキルアリール基
から選択され、ここで、R11はC−原子数3〜30を有する、線状の又は分枝したアルキル基である]を有するか、
又はアニオンAnm−は、一般式(V)又は(VI):
【化2】

[式中、R10は前記と同様に定義され、R12は、H又はC−原子数1〜20を有する、線状の、環状の又は分枝したアルキル基の群から選択される少なくとも1個の置換基であり、かつ
この際、基R10、R11及びR12中で隣接していないC−原子は、場合によりO−原子で置換されていてもよく、かつ/又は基R10、R11及びR12は全て又は部分的に、基の非極性が実質的に影響されないことを条件として、弗素化されていてよい]のボレート−アニオンである}少なくとも1種及び
(B)1個の会合した対イオン1/x Katx+を有する、式(VII):
【化3】

[式中、xは1又は2であり、Katはカチオンであり、
、z、z及びzは相互に無関係に、それぞれ0又は1であり、
この際、z+z+z+zの合計は0、1、2又は3、好ましくは0、1又は2、特に好ましくは0又は1、全く特別好ましくは0であり、
、Y、Y及びYは相互に無関係に、それぞれ、O、S又はNR17であり、
13、R14、R15及びR16はそれぞれ相互に無関係に、C〜C18−アルキル、場合により1個以上の酸素−及び/又は硫黄原子によって及び/又は1個以上の置換又は非置換のイミノ基によって中断されたC〜C18−アルキル、C〜C12−アリール、C〜C12−シクロアルキル基であるか又は酸素−、窒素−及び/又は硫黄原子を有する5〜6員のヘテロ環であり、ここで、記載の基はそれぞれ、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環で置換されていてよく、かつ
17は、水素、C〜C18−アルキル又はC〜C12−アリールを表す、
但し、基R13〜R16の少なくとも1つはC〜C18−アルキル基であり、基R13〜R16の少なくとも1つはC〜C12−アリール基であり、この際、記載の基は、それぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環で置換されていてよいことを条件とする]の共−開始剤少なくとも1種
を含有する混合物によって解決された。
【0014】
この際、場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環で置換されたC〜C18−アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、1,1−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、α,α−ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p−トリルメチル、1−(p−ブチルフェニル)−エチル、p−クロロベンジル、2,4−ジクロロベンジル、p−メトキシベンジル、m−エトキシベンジル、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、2−ブトキシカルボニルプロピル、1,2−ジ(メトキシカルボニル)−エチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシプロピル、2−オクチルオキシエチル、クロロメチル、2−クロロエチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1−ジメチル−2−クロロエチル、2−メトキシイソプロピル、2−エトキシエチル、ブチルチオメチル、2−ドデシルチオエチル、2−フェニルチオエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、6−アミノヘキシル、2−メチルアミノエチル、2−メチルアミノプロピル、3−メチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチル、6−メチルアミノヘキシル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−ジメチルアミノブチル、6−ジメチルアミノヘキシル、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルエチル、2−フェノキシエチル、2−フェノキシプロピル、3−フェノキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシヘキシル、2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、6−メトキシヘキシル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル又は6−エトキシヘキシルを表し、
場合により1個以上の酸素−及び/又は硫黄原子によって及び/又は1個以上の置換又は非置換のイミノ基によって中断されたC〜C18−アルキルは、例えば5−ヒドロキシ−3−オキサ−ペンチル、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−ヒドロキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−ヒドロキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−ヒドロキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−ヒドロキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−ヒドロキシ−5−オキサ−ノニル、14−ヒドロキシ−5,10−オキサ−テトラデシル、5−メトキシ−3−オキサ−ペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−メトキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサ−ノニル、14−メトキシ−5,10−オキサ−テトラデシル、5−エトキシ−3−オキサ−ペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサ−ウンデシル、7−エトキシ−4−オキサ−ヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサ−ウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサ−ペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサ−ノニル又は14−エトキシ−5,10−ジオキサ−テトラデシルを表す。
【0015】
酸素−及び/又は硫黄原子及び/又はイミノ基の数は限定されない。通常、これらはその基中で5を超えず、好ましくは4を超えず、全く特別好ましくは3を超えない。
【0016】
更に、2個のヘテロ原子の間に通常は、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の炭素原子が存在する。
【0017】
置換及び非置換のイミノ基は、例えばイミノ−、メチルイミノ−、イソ−プロピルイミノ、n−ブチルイミノ−又はt−ブチルイミノ基であってよい。
【0018】
更に、場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環で置換されたC〜C12−アリールは、例えばフェニル、トリル、キシリル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−ジフェニリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソ−プロピルフェニル、t−ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−ブロモフェニル、2−又は4−ニトロフェニル、2,4−又は2,6−ジニトロフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル又はエトキシメチルフェニルを表し、
場合によりアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環で置換されたC〜C12−シクロアルキルは、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクロヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチル並びに飽和又は不飽和の二環系並びに例えばノルボルニル又はノルボルネニルを表し、かつ
酸素−、窒素−及び/又は硫黄原子を有する5〜6員のヘテロ環は、例えばフリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンズオキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフロオロピリジル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニル又はt−ブチルチオフェニルを表す。
【0019】
、Y、Y及びYは相互に無関係に、好ましくは酸素又はNR17であり、特に好ましくは酸素である。
【0020】
17は、好ましくは酸素又はC〜C−アルキルである。
【0021】
本発明におけるC〜C−アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチル、好ましくはメチル、エチル又はn−ブチル、特に好ましくはメチル又はエチル、全く特別好ましくはメチルを表す。
【0022】
13、R14、R15及びR16はそれぞれ相互に無関係に、C〜C18−アルキル、C〜C12−アリール又はC〜C12−シクロアルキル、より好ましくはC〜C18−アルキル及びC〜C12−アリールであり、全く特別好ましくは群:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、1,1−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、α,α−ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p−トリルメチル、1−(p−ブチルフェニル)−エチル、フェニル、トリル、キシリル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−ジフェニリル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソ−プロピルフェニル、t−ブチルフェニル及びドデシルフェニルの群から選択され、殊にメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ベンジル、2−フェニルエチル、フェニル、トリル、α−ナフチル及びβ−ナフチルの群から選択され、かつ特にメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、ベンジル、フェニル及びトリルの群から選択される。
【0023】
本発明によれば、基R13〜R16のうち少なくとも1個は、C〜C18−アルキルであり、少なくとも1個はC〜C12−アリールであり、好ましくは少なくとも1個はC〜C18−アルキルであり、少なくとも1個はC〜C12−アリールであり、他の2個は同様にC〜C18−アルキル及びC〜C12−アリールを包含する群から選択され、特に好ましくは少なくとも1個はC〜C18−アルキル及び少なくとも2個はC〜C12−アリールであり、かつ全く特別好ましくは、1個はC〜C18−アルキルであり、3個はC〜C12−アリールである。
【0024】
本発明による被覆組成物中に含有される増感染料の量は、当業者によって、組成物の充分な光硬化が達成されるように選択される。通常の場合には5質量%を下回る量で充分である。殊に被覆組成物の全成分の合計に対して0.05〜4質量%の量、好ましくは0.1〜3質量%、特に好ましくは0.2〜2.5質量%、全く特別好ましくは0.3〜2.0質量%の量が効を奏した。本発明によれば、添加すべき増感染料が被覆組成物中に完全に溶けていることが保証されるべきである。
【0025】
被覆組成物中の増感染料の溶解度は、少なくとも0.2質量%、特に好ましくは少なくとも0.5質量%、全く特別好ましくは少なくとも1.0質量%、例えば少なくとも2質量%であるのが有利である。
【0026】
本発明において増感染料とは、シアニン−カチオンCya1個及び相応するアニオン1/m Anm−(ここで、mは殊に1又は2の値であってよい)1個からイオン構成されている吸収剤である。
【0027】
本発明によるシアニン−カチオンは、次の式(I)〜(IV)から選択される一般式を有する:
【化4】

【0028】
ここで、nは1又は2であり、基R〜Rは、次のものを表す:
及びRは相互に無関係に、C−原子数1〜20を有する線状の又は分枝したアルキル−又はアラルキル基を表す。例には、メチル−、エチル−、1−プロピル−、2−プロピル−、1−ブチル−、2−ブチル−、t−ブチル−、1−ペンチル−、1−ヘキシル−、2−エチル−1−ヘキシル−、1−オクチル−、1−デシル−又は1−ドデシル基が包含される。殊に線状のアルキル基がこれに該当する。基としてはメチル−、エチル−、1−ブチル−又は1−ドデシル基が好ましい。原則的に公知のように、アラルキル基は、アリール基で置換されたアルキル基である。例には、ベンジル−又はフェニルエチル基が包含される。R及びRは、同様な又は相互に異なるものであってよい。R及びRは同種の基であるのが好ましい。
【0029】
及びRは、場合により更に置換されていてよい。ここでは殊に、官能基、例えばアミノ−又はヒドロキシ基を挙げることができる。存在する場合にこれは、殊にアルキル基の末端に存在する官能基であってよい。
【0030】
及びRは相互に無関係に、−H、−CF又は−CNである。R及びRは同じ基であるのが好ましい。
【0031】
基R及びRとは、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、−CF又は−SOCFの群から選択される異種の又は好ましくは同種の基である。R及びRは基−R又は−ORであってよく、この際、Rはそれぞれ前記のものを表す。更に、これはアリール−又は−O−アリール−基であってよく、この際、アリールはフェニルであるのが好ましい。R及びRは−H、−Cl、−Br又は−I又はアルキル基であるのが有利である。末端位の環は、それぞれ複数の同種又は異種の置換基R又はRを、環の異なる位置上に有することができる。好ましくは、各々の環に2個を下回る置換基、特に好ましくはそれぞれ1個のみが存在するのが有利である。
【0032】
は、−H、−Cl、−Br、−I、−フェニル、−O−フェニル、−S−フェニル、−N(フェニル)、−ピリジル、バルビツール酸−又はジメドン基であってよく、この際、フェニル基はなお、更に置換されていてよい。更なる置換基は、例えば直鎖の又は分枝したアルキル基、例えばメチル−又はエチル基又は−F、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN又は−CFであってもよい。
【0033】
基R及びRは、>C(CH、−O−、−S−、>NR又は−CH=CH−の群から選択される、異なる又は好ましくは同種の基である。>C(CHが特別好ましい。
【0034】
シアニンカチオンに対する対イオンAnm−は、一般式[AR10m−を有することができる。これは、極性のイオン性ヘッド基A少なくとも1個並びに非極性基R10k個を包含し、この際、kは1、2又は3の数であり、mは1又は2である。アニオンは1個のみの基R10を有するのが好ましい。更に、これは1価のアニオンであるのが好ましい。アニオン中に複数の非極性基R10が存在する場合には、これらは異なる又は有利には同種であってよい。勿論、これは複数の異なるアニオンの混合物であってもよい。
【0035】
基R10は、C−原子数6〜30を有する線状の、分枝した又は環状のアルキル基であってよい。アルキル基R10はC−原子数6〜12を有するのが有利である。好適な基の例には、1−ヘキシル−、シクロヘキシル−、2−エチル−1−ヘキシル−、1−オクチル−、1−ノニル−、1−デシル−、1−ウンデシル−、1−ドデシル−又は1−テトラデシル基が包含される。線状アルキル基が好ましい。
【0036】
更にこれは、一般式 −アリール−R11(式中、R11はC−原子数3〜30を有する線状の又は分枝したアルキル基である)のアルキルアリール基であってよい。好適な基の例には、1−プロピル−、2−プロピル−、1−ブチル−、2−ブチル−、t−ブチル−、1−ペンチル−、1−ヘキシル−、シクロヘキシル−、2−エチル−1−ヘキシル−、1−オクチル−、1−ノニル−、1−デシル−、1−ウンデシル−、1−ドデシル−又は1−テトラデシル基が包含される。アルキル基R11はC−原子数6〜12を有するのが有利である。線状アルキル基が特別好ましい。
【0037】
アリール単位は、芳香族炭化水素、好ましくはベンゼン又はナフタリンからの相当数の水素原子の形式的引き抜き(formale Abstraktion)によって生じる基である。
【0038】
アリール単位は、殊にフェニレン基、好ましくは1,4−フェニレン基である。好適なアルキルアリール基には、−(C)−C、−(C)−C13又は−(C)−C1225が包含される。
【0039】
極性のイオン性ヘッド基Aは、殊に1−又は2価の酸基のアニオンである。これは、任意の無機又は有機酸基であってよい。カルボキシル基又はS−、P−及び/又はB−含有酸基が有利である。これは、例えば群:−SO、−OSO、−COO、−PO2−、−OPO2−又は(−O)POの群から選択される酸基であってよい。
【0040】
特に好適なアニオンの例には、アルキル基、殊にC−原子数6〜12の線状アルキル基を有するアルキルスルホネート、例えばn−オクチルスルホネート、n−デシルスルホネート又はn−ドデシルスルホネート並びにC−原子数6〜12のアルキル基を有する4−アルキルベンゼンスルホネート、例えば4−ヘキシルベンゼンスルホネート、4−オクチルベンゼンスルホネート、4−デシルベンゼンスルホネート又は4−ドデシルベンゼンスルホネートが包含される。ここで、これは原則的に公知のように、長さの異なる種々のアルキル基の分布を有する工業製品であってもよい。
【0041】
シアニン−カチオンに対する対アニオンAnm−は、一般式(V)又は(VI):
【化5】

のボレート−アニオンであってもよい。
【0042】
10は、前記のように定義されている基である。それぞれ1個又は2個の同じ又は異なる置換基がキレートリガンドの各々に付いて存在していてよい。それぞれ1個の置換基が存在するのが有利である。R12は、それぞれ、H又はC−原子数1〜20を有する線状の、環状の又は分枝したアルキル基の群から選択される同種又は異なる置換基1個以上、有利にはC−原子数2〜12を有する基である。置換基として1個のみのアルキル基が存在するのが有利である。このようなボレート−アニオンは、例えば硼酸及び相応するジアルコールから得られる。
【0043】
基R10、R11又はR12中で、隣接していないC−原子は場合によりO−原子で置換されていてもよいか及び/又は、基R10、R11又はR12は、基の非極性がそれによって実質的に変えられないことを条件として、完全に又は部分的に弗素化されていてもよい。好ましい1実施形では、これらの基は弗素化されていない。
【0044】
本発明による増感染料の製造は、種々の方法を用いて行うことができる。これは例えば2工程法を用いて製造することができ、ここでは、第1工程で、通常のアニオン、例えばヨーダイド、テトラフルオロボレート、ペルクロレート又はパラトルエンスルホネートを有するシアニンカチオンを合成する。製造処方は、当業者には公知である。例として、DE−A3721850、EP−A627660並びにそこで引用されている文献が挙げられる。シアニンをベースとする増感染料は市場でも入手される。
【0045】
次に第2工程で、通常のアニオンを、適当な方法を用いて、本発明によるアニオンAnm−で交換する。
【0046】
このことは、例えば、出発物質を相応する酸HAnと一緒に、水と混ざらない有機溶剤(この際、吸収剤はこの中に不溶であるべきである)中に装入することによって行うことができる。殊に、特定の極性を有する不揮発性有機溶剤が好適である。これは例えばジクロロメタンであってよい。引き続き、有機溶液又は懸濁液を、当初アニオンが完全に有機溶液から除去されるまで水で抽出する。本発明による増感染料は溶液からの溶剤の除去によって得ることができる。
【0047】
製造は、酸性イオン交換樹脂の使用下に実施することもできる。
【0048】
このイオン交換は、WO 03/76518に開示されている方法によって行うことができる。
【0049】
本発明によれば、本発明の混合物は、同様に式(VII)のアニオン性ホウ素化合物からなる成分(B)を含有する。
【0050】
これらアニオン性ホウ素化合物は、その対イオンとして、x−価の正に帯電されたカチオンKatを有する。この場合にこれは、例えばアルカリ(土類)金属−又はアンモニウムイオン、例えばMg2+、Li、Na又はKであってよいが、アンモニウムイオンが好ましい。
【0051】
本発明の意味におけるアンモニウムイオンは、数個の置換基を有する窒素原子少なくとも1個を含有するイオン性化合物であり、ここで置換基はC〜C18−アルキル及びC〜C12−アリールから選択され、アルキル基が好ましい。勿論、2個以上の置換基が環に結合していて、4級窒素原子が5員〜6員の環の部分であってもよい。
【0052】
アンモニウム−カチオンの例は、テトラ−n−オクチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリメチルセチルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリ−n−ブチルエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリ−n−ブチルメチルアンモニウム、ジ−イソプロピル−ジエチルアンモニウム、ジ−イソプロピル−エチルメチルアンモニウム、ジ−イソプロピル−エチル−ベンジルアンモニウム、N,N−ジメチルピペリジニウム、N,N−ジメチルモルホリニウム、N,N−ジメチルピペラジニウム又はN−メチル−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンである。好ましいアルキルアンモニウムイオンは、テトラオクチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム及びテトラ−n−ブチルアンモニウム、特に好ましくはテトラオクチルアンモニウム及びテトラ−n−ブチルアンモニウムであり、テトラ−n−ブチルアンモニウムが全く特別好ましい。
【0053】
環系を含有するアンモニウムイオンは、例えばメチル化、エチル化、n−ブチル化、セチル化又はベンジル化されたピペラジン、ピペリジン、イミダゾール、モルホリン、キヌクリジン、シンノリン、ピリジン又はトリエチレンジアミンである。
【0054】
本発明による混合物は、
− 前記のような式1/m Anm−Cyaの成分(A)少なくとも1種及び
− 好ましくは式(VII)(対イオン1/x Katx+を有する)の成分(B)少なくとも1種
を含有している。
【0055】
本発明による混合物は、成分(B)として、その対イオン1/x Katx+を有する式(VII)のアニオン性ホウ素化合物の代わりに、又は付加的にスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホン、ペルオキシド、ピリジン−N−オキシド又はハロゲンメチルトリアジンを含有することもできる。
【0056】
好適なスルホニウム塩は、例えばDE−A1 19730498、特にその3頁、28〜39行に記載されおり、この記載内容の参照により本発明が明白になるであろう。
【0057】
この際、この塩は、式:
【化6】

[式中、R18及びR19は、それぞれ置換又は非置換のアリール基を表し、R20は置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルケニル基、置換又は非置換の環状脂肪族基、置換又は非置換のアリール基又は置換又は非置換のアラルキル基を表し、AnAはアニオンを表す]のものが有利である。
【0058】
トリフェニルスルホニウム、ジフェニルアニシルスルホニウム、ジフェニル−(4−トリル)−スルホニウム、ジフェニル−(4−フルオロフェニル)−スルホニウム、ジフェニル−[4−(フェニルチオ)−フェニル)−スルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニル−(4−クロロベンジル)−スルホニウム、ジフェニル−(4−ブロモベンジル)スルホニウム、ジフェニル−(4−シアノベンジル)−スルホニウム、ジ−(4−t−ブチルフェニル)−ベンジルスルホニウム、ジアニシル(4−ブロモフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル−(4−クロロフェナシル)スルホニウム、ジフェニル−(4−シアノフェナシル)−スルホニウム、ジフェニルアリルスルホニウム、ジフェニルメシルスルホニウム、ジフェニル−p−トルエンスルホニルメチルスルホニウム、ジフェニル−(ジメチルスルホニウムメチル)−スルホニウム及びジフェニル−[4−(ジフェニルスルホニウムイル)−フェニル]−スルホニウムが特に有利である。
【0059】
好ましいアニオンAnAは、BF、PF、AsF、SbF、ClO、Cl、Br、テトラフェニルボレート、テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ボレート、ベンゼンスルホネートアニオン、p−トルエンスルホネートアニオン及びトリフルオロメタンスルホネートアニオンである。
【0060】
好適なヨードニウム塩は、例えばDE−A1 19730498、特にその3頁、40〜43行に記載されており、その記載内容の参照により本発明が明白になるであろう。
【0061】
この場合に、式:
21−I−R22 AnB
[式中、R21及びR22は置換又は非置換のアリール基を表し、AnBはアニオンを表す]のものが有利である。
【0062】
ジフェニルヨードニウム、アニシルフェニルヨードニウム、ジ−(4−t−ブチルフェニル)−ヨードニウム、ジ−(4−クロロフェニル)−ヨードニウム、ジ−トリルヨードニウム及びジ(3−ニトロフェニル)−ヨードニウムが特に好ましい。
【0063】
好ましいアニオンAnBは、BF、PF、AsF、SbF、ClO、Cl、Br、テトラフェニルボレート、テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ボレート、ベンゼンスルホネートアニオン、p−トルエンスルホネートアニオン及びトリフルオロメタンスルホネートアニオンである。
【0064】
好適なスルホンは、例えばDE−A1 19730498、特にその4頁、1〜12行に記載されており、その記載内容の参照により本発明が明白になるであろう。
【0065】
ここで、式:
【化7】

[式中、R23は置換又は非置換のアリール基を表し、基R24はそれぞれハロゲン原子を表す]のものが好ましい。
【0066】
この明細書の範囲内でハロゲンには、弗素、塩素、臭素及びヨウ素、好ましくは塩素及び臭素、特に好ましくは塩素が包含される。
【0067】
トリクロロメチルフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリクロロメチル−4−クロロフェニルスルホン、トリブロモメチル−4−ニトロフェニルスルホン、2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルホン、2,4−ジクロロフェニルトリクロロメチルスルホン、2−メチル−4−クロロフェニルトリクロロメチルスルホン及び2,4−ジクロロフェニルトリブロモメチルスルホンが特に好ましい。
【0068】
好適なペルオキシドは、例えばDE−A1 19730498、特にその4頁、13〜24行に記載されており、その記載内容の参照により本発明が明白になるであろう。
【0069】
式:
【化8】

[式中、R25は置換又は非置換のアリール基を表し、
26は置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基又は置換又は非置換のベンゾイル基、好ましくは式−R25−(CO)−を表す]のものが好ましい。
【0070】
ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−(t−ブチルペルオキシ)−イソフタレート、ジ−(t−ブチルペルオキシ)−テレフタレート、ジ−(t−ブチルペルオキシ)−フタレート、2,5−ジメチルージ−(ベンゾイルペルオキシ)−ヘキサン及び3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルペルオキシカルボニル)−ベンゾフェノンが特に好ましい。
【0071】
好適なピリジン−N−オキシドは、例えばDE−A1 19730498、特にその3頁、44〜62行に記載されており、その記載内容の参照により本発明が明白になるであろう。
【0072】
この際、式:
【化9】

[式中、R27、R28、R29、R30又はR31はそれぞれ相互に無関係に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基又は置換又は非置換のアリール基を表し、R32は、置換又は非置換のアルキル基を表し、AnCはアニオンを表す]のものが好ましい。
【0073】
N−メトキシピリジニウム、N−エトキシピリジニウム、N−メトキシ−2−ピコリニウム、N−メトキシ−3−ピコリニウム、N−エトキシ−2−ピコリニウム、N−エトキシ−3−ピコリニウム、N−メトキシ−4−ブロモピリジニウム、N−メトキシ−3−ブロモピリジニウム、N−メトキシ−2−ブロモピリジニウム、N−エトキシ−4−ブロモピリジニウム、N−エトキシ−3−ブロモピリジニウム、N−エトキシ−2−ブロモピリジニウム、N−エトキシ−4−クロロピリジニウム、N−エトキシ−3−クロロピリジニウム、N−エトキシ−2−クロロピリジニウム、N−メトキシ−4−メトキシピリジニウム、N−メトキシ−3−メトキシピリジニウム、N−メトキシ−2−メトキシピリジニウム、N−エトキシ−4−メトキシピリジニウム、N−エトキシ−3−メトキシピリジニウム、N−エトキシ−2−メトキシピリジニウム、N−メトキシ−4−フェニルピリジニウム、N−メトキシ−3−フェニルピリジニウム、N−メトキシ−2−フェニルピリジニウム、N−エトキシ−4−フェニルピリジニウム、N−エトキシ−3−フェニル−ピリジニウム、N−エトキシ−2−フェニルピリジニウム、N−メトキシ−4−シアノピリジニウム、N−エトキシ−4−シアノピリジニウム、N,N’−ジメトキシ−4,4’−ビピリジニウム、N,N’−ジエトキシ−4,4’−ビピリジニウム、N,N’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジニウム及びN,N’−ジエトキシ−2,2’−ビピリジニウムが特に好ましい。
【0074】
好ましいアニオンAnCは、BF、PF、AsF、SbF、ClO、Cl、Br、テトラフェニルボレート、テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ボレート、ベンゼンスルホネートアニオン、p−トルエンスルホネートアニオン及びトリフルオロメタンスルホネートアニオンである。
【0075】
好適なハロゲンメチルトリアジンは、例えばDE−A1 19730498、特にその4頁、25〜40行に記載されており、その記載内容の参照により本発明が明白になるであろう。
【0076】
この際、式:
【化10】

[式中、R33、R34及びR35はそれぞれ相互に無関係に、トリハロゲンメチル基、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルケニル基又は置換又は非置換のアリール基を表す、但し、基の少なくとも1個はトリハロゲンメチル基であることを条件とする]のものが有利である。
【0077】
2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−(ジクロロメチル)−6−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−プロピオニル−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンゾイル−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−シアノフェニル−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ニトロフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クメニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−アミノフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−(4−メトキシフェニル)−6−トリクロロメチル、2,4−ビス−(3−クロロフェニル)−6−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−メトキシスチリルー(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−アミノフェニル)−4,6−ビスー(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−(4−メトキシフェニル)−6−トリクロロメチル−s−トリアジン、2,4−ビス−(3−クロロフェニル)−6−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロスチリル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−アミノスチリル)−4,6−ビス−(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−メトキシ−1’−ナフチル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン及び2−(6’−ニトロ−1’−ナフチル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンが特別好ましい。
【0078】
更にこの混合物は、なお溶剤(C)少なくとも1種を含有することができる。これは、例えば次のものであってよい:エステル、例えば酢酸ブチル又は酢酸エチル、芳香族又は(環状)脂肪族炭化水素、例えばキシレン、トルエン又はヘプタン、ケトン、例えばアセトン、イソ−ブチルメチルケトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン、アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、モノ−又は低級オリゴエチレン−又は−プロピレングリコール、1−又は2−個エーテル化されたエチレン−又はプロピレングリコールエーテル、グリコールエーテルアセテート、例えばメトキシプロピルアセテート、環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン、カルボン酸アミド、例えばジメチルホルムアミド又はN−メチルピロリドン及び/又は水。
【0079】
本発明の好ましい混合物は、
− 前記のような式 1/m Anm−Cyaの成分(A)少なくとも1種、
− 好ましくは式(VII)の成分(B)(対イオン1/x Katx+を有する)少なくとも1種及び
− 場合により溶剤(C)少なくとも1種
から成っている。
【0080】
好ましい1実施形で、本発明による混合物は、溶剤(C)なしで使用されうる。
【0081】
本発明の混合物中では、式 1/m Anm−Cyaの成分(A)と対イオン 1/x Katx+を有する式(VII)の成分(B)との間の重量割合は、好ましくは1:1
〜1:5、特に好ましくは1:1〜1:4、全く特別に好ましくは1:2〜1:4である。
【0082】
本発明による混合物は、被覆組成物中に良好に可溶である。この溶解度は、アニオンの選択及びカチオン上の置換基の選択によって影響されうる。基R10、R11又はR12として又はシアニン上の置換基としての長いアルキル鎖は、一般に溶解度の改良をももたらす。
【0083】
本発明による増感染料は、通常700nm〜1200nmの波長範囲で最大吸収を示す。この増感染料の最大吸収は、当業者により原則的に公知の方法で、シアニンカチオン上の置換基の選択によって影響されうる。
【0084】
光硬化のために使用されるNIR−線は、光ダイオード(LED)、ハロゲンランプ、Xe−ランプ等からの広幅放射線であってよい。これは、狭幅放射線であっても、全く特定の波長のレーザー光線であってもよい。レーザーとしては、殊にNIR−範囲で発生するレーザー、例えば半導体ダイオードレーザーが好適である。放射線を連続的に又はパルスとして、例えばフラッシュの形で供給することができる。
【0085】
本発明のもう一つの目的は、本発明による混合物を含有する、放射線硬化可能な被覆組成物である。
【0086】
このような被覆組成物は、典型的に次のものを含有する:
− 前記のような式1/m Anm−Cyaの成分(A)少なくとも1種及び
− 好ましく対イオン1/x Katx+を有する、式(VII)の成分(B)少なくとも1種、
− 場合により溶剤(C)少なくとも1種、
− バインダー(D)少なくとも1種、
− 場合により反応性希釈剤(E)少なくとも1種、
− 場合によりUV−光開始剤(F)少なくとも1種、
− 場合により着色剤(G)少なくとも1種及び
− 場合により他の典型的な塗料添加剤(H)。
【0087】
バインダー(D)は、ラジカル又はカチオン重合可能なエチレン系不飽和基を有する化合物である。この放射線硬化可能な組成物は、放射線硬化可能な化合物1000g当たり放射線硬化可能なエチレン系不飽和基0.001〜12、特に好ましくは0.1〜8、全く特別好ましくは0.5〜7モルを含有するのが有利である。
【0088】
放射線硬化可能な化合物としては、例えば(メタ)アクリル化合物、ビニルエーテル、ビニルアミド、例えばマレイン酸又はフマル酸をベースとする不飽和ポリエステル又はマレインイミド/ビニルエーテル−系がこれに該当する。
【0089】
(メタ)アクリレート化合物、例えばポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、アクリル化されたポリアクリレートが好ましい。
【0090】
放射線硬化可能なエチレン系不飽和基の少なくとも40モル%、特に好ましくは少なくとも60%は、(メタ)アクリル基であるのが有利である。
【0091】
放射線硬化可能な化合物は、例えば有機溶剤又は水中の溶液として、水性分散液として又は粉末として存在することができる。
【0092】
放射線硬化可能な化合物及び従って室温で流動性である放射線硬化可能な組成物も好ましい。しかしながら、放射線硬化可能な化合物又は被覆組成物を融液の形で又は粉末(粉末塗料)として適用するのも有利であり得る。放射線硬化可能な組成物は、有利に20質量%を下回る、殊に10質量%を下回る有機溶剤及び/又は水を含有する。溶剤不含及び水不含である(いわゆる100%系)のが好ましい。この場合には、有利に乾燥工程を省略することができる。
【0093】
反応性希釈剤(E)は、例えば(メタ)アクリル酸とC−原子数1〜20を有するアルコールとのエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、ジビニルベンゼン、α,β−不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α,β−不飽和アルデヒド、例えばアクロレイン、メタクロレイン、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ハロゲン化されたエチレン系不飽和化合物、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、共役不飽和化合物、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン、モノ不飽和化合物、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソ−ブテン、環状モノ不飽和化合物、例えばシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロドデセン、N−ビニルホルムアミド、アリル酢酸、ビニル酢酸、C−原子数3〜8を有するモノエチレン系不飽和カルボン酸並びにこれらの水溶性アルカリ金属−、アルカリ土類金属−又はアンモニウム塩、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸及びイタコン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、例えばN−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−アルキル−カルボン酸アミド又はN−ビニル−カルボン酸アミド、例えばN−ビニルアセタミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド及びN−ビニル−N−メチルアセタミド又はビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、s−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル並びにこれらの混合物である。
【0094】
この明細書中で(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸及びアクリル酸、好ましくはアクリル酸を意味する。
【0095】
UV−光開始剤(F)としては、当業者に公知の光開始剤、例えば"Advances in Polymer Science",Vol.14,Springer Berlin 1974又はK.K.Dietliker, Chemistry and Technology of UV-and EB-Formulation for Coatings,Inks and Paints,Vol.3; Photo-initiators for Free Radical and Cationic Pol ymerization,P.K.T.Oldring(Eds), SITA Technology Ltd.London中に記載されているものが使用でき。NIR−光開始剤とは反対に、UV−光開始剤は、本質的にλ=200〜700nm、特に好ましくはλ=200〜500nm、全く特別好ましくはλ=250〜400nmの波長範囲の光で励起される。
【0096】
本発明によればこれは、光の作用下にラジカルを放出し、かつラジカル反応、例えばラジカル重合を開始させることのできるような光開始剤であると理解される。
【0097】
例えばホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシ−アルキル−アリール−ケトン、チオキサントン、アントラキノン、アセトフェノン、ベンゾイン及びベンゾイン−エーテル、ケタール、イミダゾール又はフェニルグリオキシル酸及びこれらの混合物がこれに該当する。
【0098】
ホスフィンオキシドは、例えばEP−A7508、EP−A57474、DE−A19618720、EP−A495751又はEP−A615980に記載されているような例えばモノ−又はビスアシルホスフィンオキシド、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート又はビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドであり、
ベンゾフェノンは、例えばベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジ−メチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4−ジメチルベンゾフェノン、4−イソプロピルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、2,2’−ジクロロベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4−プロポキシベンゾフェノン又は4−ブトキシベンゾフェノンであり、
α−ヒドロキシ−アルキル−アリール−ケトンは、例えば1−ベンゾイルシクロヘキサン−1−オール(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン)、2−ヒドロキシ−2,2’−ジメチルアセトフェノン(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、1−ヒドロキシアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン又は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−イソプロペン−2−イル−フェニル)−プロパン−1−オンを重合導入含有しているポリマーであり、
キサントン及びチオキサントンは、例えば10−チオキサンテンオン、チオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジ−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン又はクロロキサンテノンであり、
アントラキノンは、例えばβ−メチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル、ベンズ[de]アントラセン−7−オン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン又は2−アミルアントラキノンであり、
アセトフェノンは、例えばアセトフェノン、アセトナフトキノン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、p−ジアセチルベンゼン、4’−メトキシアセトフェノン、α−テトラロン、9−アセチルフェナンスレン、2−アセチルフェナンスレン、3−アセチルフェナンスレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,4−トリアセチルベンゼン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−2−オン又は2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オンであり、
ベンゾイン又はベンゾインエーテルは、例えば4−モルホリノデオキシベンゾイン、ベンゾイン、ベンゾイン−イソブチルエーテル、ベンゾイン−テトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾイン−メチルエーテル、ベンゾイン−エチルエーテル、ベンゾイン−ブチルエーテル、ベンゾイン−イソプロピルエーテル又は7−H−ベンゾイン−メチルエーテルであるか又は
ケタールは、例えばアセトフェノンジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン又はベンジルケタール、例えばベンジルジメチルケタールである。
【0099】
フェニルグリオキシル酸は、例えばDE−A19826712、DE−A19913353又はWO98/33761中に記載されている。
【0100】
更に使用可能な光開始剤は、例えばベンズアルデヒド、メチルエチルケトン、1−ナフトアルデヒド、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン又は2,3−ブタンジオンである。
【0101】
典型的な混合物には、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−2−オンと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノンと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチル−ホスフィンオキシドと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノン又は2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが包含される。
【0102】
本発明の好ましい1実施形では、本発明による被覆組成物中にUV−光開始剤少なくとも1種が存在している。
【0103】
この明細書中で全体的に、着色剤(G)は、顔料及び染料、好ましくは顔料を意味する。
【0104】
顔料(G)とは、CD Roempp Chemie Lexikon-Version 1.0,Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1995における、DIN55943の指示に従う、粒子状の「使用媒体中に実質的に不溶な、無機又は有機の、有彩又は無彩着色剤」である。
【0105】
この場合に「実質的に不溶な」とは、25℃における溶解度が1g/使用媒体1000gを下回る、好ましくは0.5を下回る、特に好ましくは0.25を下回る、全く特別に好ましくは0.1を下回る、殊に0.05g/使用媒体1000gを下回ることを意味する。
【0106】
特有の意味での顔料の例には、吸収−及び/又は効果顔料の任意の系、好ましくは吸収顔料が包含される。この場合に顔料成分の列挙及び選択は、決して限定的なものではない。これらはその都度の必要性、例えば所望の色印象に任意に適合させることができる。例えば全ての顔料成分が、標準化された混合塗料系のベースとなることができる。
【0107】
効果顔料とは、薄板状構造を示し、表面被覆に特別な装飾的色効果を提供する全ての顔料であると理解すべきである。効果顔料は、例えば車両−及び工業塗装で通常使用可能な効果を与える全ての顔料である。このような効果顔料の例は、純粋な金属顔料;例えばアルミニウム−、鉄−又は銅顔料;干渉顔料、例えば二酸化チタン被覆された雲母、酸化鉄被覆された雲母、混合酸化物(例えば二酸化チタンとFe又は二酸化チタンとCr)で被覆された雲母、酸化金属被覆されたアルミニウム又は液晶顔料である。
【0108】
彩色性吸収顔料は、例えば塗料工業で通常使用可能である有機又は無機の吸収顔料である。有機吸収顔料の例は、アゾ顔料、フタロシアニン−、キナクリドン−及びピロロピロール顔料である。無機吸収顔料の例は、酸化鉄顔料、二酸化チタン及びカーボンブラックである。
【0109】
染料も同様に着色剤であり、使用媒体中でのその溶解性によって顔料とは異なり、即ち、これは25℃で1g/1000gを超える使用媒体中の溶解度を有する。
【0110】
染料の例は、アゾ−、アジン−、アントラキノン−、アクリジン−、シアニン−、オキサジン−、ポリメチン−、チアジン−、トリアリールメタン−染料である。これらの染料は、塩基性又はカチオン性の染料、媒染−、直接−、分散−、顕色−、建染−、金属錯体−、反応−、酸−、硫黄−、カップリング−又は直接染料として使用することができる。
【0111】
他の典型的な塗料添加剤(H)としては、例えば酸化防止剤、安定剤、活性化剤(促進剤)、充填剤、帯電防止剤、防炎剤、シックナー、チキソトロープ剤、界面活性剤、粘度変性剤、可塑剤又はキレート化剤を使用することができる。
【0112】
熱的後硬化の促進剤として、例えば錫オクトエート、亜鉛オクトエート、ジブチル錫ラウレート又はジアザ[2.2.2]ビシクロオクタンが使用できる。
【0113】
更に、1種以上の光化学的及び/又は熱的に活性化可能な開始剤、例えばペルオキソジ硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、アゾビス−イソ−ブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジ−イソ−プロピルペルカーボネート、t−ブチルペルオクトエート又はベンズピナコール、並びに例えば80℃での半価時間が100時間より大きいような熱的に活性化可能な開始剤、例えばジ−t−ブチルペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、シリル化されたピナコール(これは、例えばFirma Wacker社からADDID 6000なる商品名で市販されている)又はヒドロキシル基含有アミン−N−オキシド、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等を添加することができる。
【0114】
好適な開始剤の更なる例は、"Polymer Handbook ",2.Aufl.,Wiley & Sons,New Yorkに記載されている。
【0115】
シックナーとしては、ラジカル(共)重合された(コ)ポリマーと並んで慣用の有機及び無機のシックナー、例えばヒドロキシメチルセルロース又はベントナイトが使用される。
【0116】
キレート剤としては、例えばエチレンジアミン酢酸及びその塩並びにβ−ジケトンを使用することができる。
【0117】
彩色不活性の充填剤とは、一方で彩色不活性であり;即ち低い固有吸収を示し、その被覆媒体の屈折率と類似の屈折率を有し、他方で表面被覆中での、即ち適用された塗膜中での効果顔料の配向(平行配列)に、更に被覆加工又は被覆組成物の特性、例えば、硬度又はレオロジーに影響を及ぼすことができる全ての物質/化合物であると理解すべきである。次に使用可能な不活性物質/化合物が例示的に挙げられているが、彩色不活性のトポロジーに影響する充填剤の概念はこれらの例のみに限定されるべきではない。この定義に相応する好適な不活性充填剤は、例えば透明又は半透明な充填剤又は顔料であってよく、例えばプラスチック顆粒、シリカゲル、永久白(Blancfix)、珪藻土、タルク、炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、硫酸バリウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、結晶二酸化珪素、非晶質珪酸又は酸化アルミニウムであってよい。更に不活性充填剤として、任意の固体不活性有機粒子、例えば尿素−ホルムアルデヒド−縮合生成物、マイクロナイズされたポリオレフィンワックス及びマイクロナイズされたアミドワックスを使用することができる。不活性充填剤は、それぞれ混合して使用することもできる。しかしながらそれぞれ1種のみの充填剤を使用するのが好ましい。
【0118】
好適な安定剤には、典型的なUV−吸収剤、例えばオキシアニリド、トリアジン及びベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンが包含される。これらは単独で又は適当なラジカル捕捉剤(Radikalfaenger)、例えば立体障害されたアミン、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン又はそれらの誘導体、例えばビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバシネートと一緒に使用することもできる。安定剤は、通常は組成物中に含有されている固体成分に対して0.1〜5.0質量%の量で使用される。
【0119】
本発明の混合物は、NIR−活性化可能な光開始剤として使用可能であり、NIR−光開始剤の技術水準から公知の処方物に比べて、被覆組成物及び塗料系中でのより良好な溶解度を示し、ここでは、式(VII)のボレートイオンがシアニンカチオンの対イオンとして機能している。このことが、一方で、この光開始剤を一様に塗料系中に分散させることができ、かつ後の塗料中に欠陥箇所としての不溶性粒子を残さず、他方で、高い光反応性を生じさせる結果をもたらす。技術水準から公知のNIR−光開始剤では、化合物が、部分的な溶解度不足に基づき、結晶として被覆組成物中に結晶として沈殿する。
【0120】
この改良された溶解度を得るために、本発明による混合物は、放射線硬化可能な化合物、即ち例えばバインダー(D)及び/又は反応性希釈剤(E)又はそれらを含有する組成物、例えば被覆組成物、塗料又は塗料処方物と混合される。
【0121】
この発明のもう一つ実施形では、放射線硬化可能な化合物を、場合により溶剤中に希釈されている、前記に定義されているような式 1/m Anm−Cyaの成分(A)の少なくとも1種と、かつそれとは別に、場合により溶剤中に希釈されている、対イオン 1/x Katx+を有する、式(VII)の成分(B)少なくとも1種と混合することができる。
【0122】
この場合に、本発明によれば如何なる方法で混合を行うかは重要ではない。例えばこのことは機械的攪拌機、例えばディスク−、傾斜板−、アンカー、強力−又はガス−分散攪拌機を用いるか、循環によって、場合によりスリットブラインドを通して又はミキサーポンプ中で、又は屡々二成分の手による又は振動による簡単な混合によって行うこともできる。勿論、高い剪断エネルギーを用いる混合技術、例えばジェット分散、強力−、ウルトラトゥラックス(Ultraturrax)−又は超音波分散も使用できる。
【0123】
このような光開始剤が顔料着色された塗料中でもラジカル重合を開始させることができることは、NIR−光開始剤の特別な利点である。それというのも、即ち活性化する放射線は、通常は、顔料によっては吸収されないか又は僅かに吸収されるだけであるのに、UV−光開始剤の活性化のために必要であるUV−線は、通常は顔料により吸収及び/又は拡散され、従って被覆中への僅かな侵入深さを示すからである。従って、本発明による混合物を顔料着色された被覆組成物中で使用することは、本発明の好ましい1実施形である。
【0124】
本発明のもう一つの有利な実施態様は、本発明による混合物を、高い層厚を有する被覆組成物中で使用することにある。混合物を、30μmを上回る、好ましくは45を上回る、特別好ましくは60μmを上回る層厚を有する被覆組成物中で使用することは好ましい1実施形である。この被覆組成物は、300まで、好ましくは250まで、特別好ましくは200μmまでの厚さを有することができる。
【0125】
勿論、この被覆は、より厚く又はより薄く、例えば10〜1000μmで塗布することもできる。しかしながら、非常に厚く塗布された被覆組成物では、数回照射することが必要でありうる。
【0126】
放射線硬化可能な被覆組成物は、好ましくは簡単な方法で、例えば吹き付け、こて塗り、刷毛塗り、ドクター、ブラシ、ローリング、ローラコーティング、フローコーティング、浸漬、ラミネーティング、インジェクシヨン−バットモールディング(Hinterspritzen)又は同時押出し(Co-extrudieren)等により、被覆すべき物体上に塗布し、かつ場合によっては乾燥させることができる。
【0127】
硬化のために、可視のNIR−範囲、好ましくはNIR−範囲を包含する電磁線、特別好ましくは700〜900nmの波長の電磁線での照射を行う。
【0128】
この照射は、本発明の好ましい1実施形では、酸素の排除下に実施することもできる。このために、被覆組成物がNIR−線での照射の瞬間に18kPaを下回る酸素分圧に露呈されるように照射を実施する。重要な範囲は、露光の瞬間の、被覆すべき物体の放射線硬化可能な被覆組成物を有する表面範囲である。酸素分圧は17kPaを下回る、特に好ましくは15.3kPaを下回る、全く特別好ましくは13.5kPaを下回る、殊に10kPaを下回る、特に6.3kPaを下回るのが有利である。
【0129】
屡々、完全な酸素不在は必ずしも必要ではなく、従って酸素分圧は、好ましくは0.5kPa、特別好ましくは0.9kPa、全く特別好ましくは1.8kPa、殊に2.5kPaを下回る必要はない。
【0130】
低い酸素分圧での硬化によって、有利に、例えば改良された引掻き強度が観察される。
【0131】
このような低い酸素分圧は、有利に、少なくとも1種の不活性ガスでの酸素含有雰囲気の希釈によって又は少なくとも1種の不活性ガス、即ち放射線硬化条件下に反応しないガスでの置換によって行うことができる。不活性ガスとしては、特に窒素、希ガス、二酸化炭素又は燃料ガスが好適である。その中で放射線硬化が実施される雰囲気中で、少なくとも1種の不活性ガスの割合は、80容量%を上回る、好ましくは少なくとも85、特別好ましくは少なくとも90、全く特別好ましくは少なくとも95、殊に少なくとも98容量%であるべきである。更に、被覆組成物を透明媒体でカバーする方法で照射を行うことができる。透明媒体は、例えばプラスチックシート、ガラス及び液体、例えば水である。この照射を、WO 01/14483に記載のように行うことが特別好ましく、これは参照できる。DE−A1 19957900中に記載されているよう方法での照射が全く特別有利であり、これを参照することができる。
【0132】
本発明による被覆組成物及び塗料処方物は、特に基材、例えば木材、好ましくは松−、トウヒ−、ブナ−、カシ−又はカエデ木材、紙、厚紙、板紙、繊維材料、皮革、代用皮革、フリース、プラスチック表面、好ましくはSAN、PMMA、ABS、PP、PS、PC又はPA(略字はDIN 7728に従う)、ガラス、セラミック、無機建築材料、例えばセメント−成形石及び繊維セメントプレート又は金属又は被覆された金属の被覆のため、好ましくは、例えばシートとしても存在できるプラスチック又は金属の被覆のために好適である。この場合に、金属又は被覆された金属は、例えば貯蔵又は移送のためにロールに、いわゆるコイルに成形されていてよい。この金属の被覆は、通常の下塗り塗装(プライマー)又はカソードディッピング塗装を内容とすることができる。
【0133】
本発明による被覆組成物は、屋外塗装のために、又は昼光に露呈されるような、好ましくは建築物又は建築部材の用途において、屋内用塗装、車両又は飛行機の塗装のために特別好適である。殊に、本発明による被覆組成物は、自動車クリア−及び−上塗りラッカーとして又はその中で使用され、並びに塗料中で、特に屋外塗料、工業用塗料、コイルコーティング、成形−、注型−又は歯科用コンパウンド中で使用される。更に、本発明による混合物は、建築材料、煉瓦、クリンカー、人造石材、たたき床、漆喰及びそれらの被覆用の被覆組成物を硬化させるために使用することができる。有利には、本発明による被覆組成物は、特に装飾塗装のため、家具−、寄せ木細工床−、ラミネート−及び床材塗装のために使用することができる。
【0134】
更に、本発明による被覆組成物は、印刷法で又は印刷板の製造のために、例えばステレオリトグラフィ、写真リトグラフィ、スクリーン印刷、オフセット、平板印刷−、凹板印刷−又は凸版印刷法で、並びにインキジェット法(Ink-Jet)で使用することができる。
【0135】
次の例で本発明の特性を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0136】
この明細書中の「部」又は「%」は、特に断りのない限り「質量部」又は「質量%」である。
【0137】
本発明による合成NIR−増感剤A1〜A10は、第1表中にまとめられている。比較例として、相応するヨーダイドの形の本発明によらないNIR−染料(B1〜B10)を使用する。
【0138】
本発明によるNIR−吸収剤は、2工程法で合成することができる。第1工程で、通常のアニオン、例えばヨーダイドを有するシアニン−カチオンの合成を行なう。この合成は、当業者にとっては原則的に公知であり、文献公知の合成によって実施することができ、例えばK.Venkataraman"The Chemistry of Synthetic Dyes",Academic Press, New York,1952,Bd.II及びH.Zollinger "Color Chemistry: Synthesis,Properties, and Applications of Organic Dyes and Pigments",Weinheim, Wiley-VCH,2003の処方に従って実施することができる。
【0139】
第2工程で、通常のアニオンを本発明によるアニオンで交換する。
【実施例】
【0140】

改良された溶解度を有する本発明による一連のNIR−増感剤を合成した。
【0141】
第1工程:通常のアニオンを有するシアニン−カチオンの合成
下記に、吸収剤2−[2−[2−[2−(1,3−ジヒドロ−1−エチル−3,3−ジメチル−2H−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウム ヨーダイド(B1)の合成を例示する。
【0142】
3−エチル−1,1,2−トリメチルインドリウムヨーダイド10g(0.032モル)及び3−ヒドロキシメチレン−シクロヘキセ−1−エン−カルボアルデヒド2.7g(0.016モル)を、ブタノール105ml及びトルエン45mlからの混合物中に装入した。これを110℃まで加熱し、生じる水を系から除去した。5時間撹拌の後に、室温まで冷却させた。溶液の濃縮の後に、メチル−t−ブチルエーテルを加えた。生じる結晶を吸引濾過し、メチル−t−ブチルエーテルで洗浄した。結晶9.4gを取得し、真空中、50℃で乾燥させた(融点235℃)。
【0143】
類似の方法で相応する出発化合物を使用して、通常のアニオンを有する他のシアニン−カチオンを合成した。
【0144】
第2工程:アニオンの交換によって本発明によるNIR−増感剤を製造する一般的処方
2−[2−[2−[2−(1,3−ジヒドロ−1−エチル−3,3−ジメチル−2H−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウム ドデシルスルホネート(A1)
次のようにして化合物を製造した:NIR−増感剤A1 0.003モル(1.6g)を、Na−ドデシルスルホネート0.009モル(2.3g)と一緒にジクロロメタン50ml中に予め装入した。水50mlを加え、室温で30分間撹拌し、最後に相を分離させた。洗浄水中に硝酸銀溶液でヨウ素がもはや検出できなくなるまで、有機相を、水50mlで3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥の後に、溶剤を留去し、残分を真空中、50℃で乾燥させた。
【0145】
類似の方法で、他のシアニン−カチオン並びに所望アニオンの相応する塩の使用下に、次のNIR−増感剤を製造した。合成された本発明によるNIR−増感剤は第1表中にまとめられている。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
比較の目的で、本発明によらない一連のNIR−増感剤(A1−A10に類似のヨーダイド−塩)を用いた。
【0149】
【表3】

【0150】
使用された共−開始剤X:
【化11】

【0151】
塗料原料中のNIR−増感剤の溶解度の比較:
この試験のために、アクリレートタイプの通常のラジカル重合可能な塗料原料2種(Laromer(R)LR8863及びLaromer(R)LRPO84F、双方ともBASF AG)を使用した。
【0152】
これらにそれぞれ規定量のNIR−増感剤を添加し、室温で少なくとも4時間撹拌した。偏光顕微鏡検査を用いて、生じた液体がなおNIR−増感剤の不溶結晶を含有するか否かを検査した。
【0153】
本発明によらないNIR−増感剤B7、B11及びB12は、双方の溶液中に不満足に可溶であった(溶解度は、それぞれ<0.1質量%)。
【0154】
これに対して、本発明によるNIR−増感剤A7、A11及びA12では、相応するNIR−増感剤それぞれ0.5質量%でも、不溶な結晶を有しない澄明な溶液が得られた。
【0155】
光開始剤混合物中でのNIR−増感剤の試験:
前記の双方の塗料原料に、それぞれNIR−増感剤0.5質量%及びボラネート塩X1.5質量%を加え、この混合物を激しく撹拌した。スぺーサーシートを有する2枚のガラス板の間で、得られた混合物を用いてそれぞれ薄い層(層厚 約50μm)を製造した。これらの層に、250W−ハロゲンランプ(間隔 約15cm)で1分間露光させた。
【0156】
比較例:
本発明によらないNIR−増感剤B7、B11、B12は、塗料原料中に、それぞれ完全には溶けなかった。露光の後に完全には硬化されていない塗膜が得られた。更に、塗料中に着色斑点(偏光顕微鏡下で、溶けていない結晶)が存在した。
【0157】
実施例:
本発明によるNIR−増感剤A7、A11、A12は、塗料原料中にそれぞれ完全に溶けた。4秒の露光時間の後に既に、硬くて澄明な塗膜が斑点不含で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び(B):
(A) シアニン−カチオンCya少なくとも1個及び相応するアニオン1/m Anm−少なくとも1個からイオン構成されている増感剤
{この際、シアニン−カチオンは、一般式(I)、(II)、(III)又は(IV):
【化1】

[式中、nは1又は2であり、基R〜Rは次のもの:
− R及びRは相互に無関係に、C−原子数1〜20を有する、線状の又は分枝した、置換又は非置換のアルキル−又はアラルキル基、
− R及びRは相互に無関係に、H、CF又はCN、
− R及Rは相互に無関係に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO、−CN、−CF、−SOCF、−R、−OR、アリール−又は−O−アリールの群から選択される同種又は異種の置換基1個以上、
− Rは、−H、−Cl、−Br、−I、−フェニル、−O−フェニル、−S−フェニル、−N(フェニル)、−ピリジル、バルビツール酸−又はジメドン基、ここで、フェニル基はなお、更に置換されていてもよい、
− R及びRは相互に無関係に、>C(CH、−O−、−S−、>NR又は−CH=C−
を表す]を有し、
かつ、この際、アニオンAnm−は、極性のイオン性ヘッド基A少なくとも1個並びに非極性基R10 k個を有する、一般式 [AR10m−
[式中、kは、1、2又は3の数であり、mは1又は2であり、
非極性基R10は相互に無関係に、C−原子数6〜30を有する、線状の、分枝した又は環状のアルキル基並びに一般式 −アリール−R11のアルキルアリール基の群から選択され、ここで、R11はC−原子数3〜30を有する、線状の又は分枝したアルキル基である]を有するか、又は
アニオンAnm−は、一般式(V)又は(VI):
【化2】

[式中、R10は前記と同様に定義されており、R12は、水素、C−原子数1〜20を有する、線状の、環状の又は分枝したアルキル基の群から選択される置換基少なくとも1個であり、かつ、
この際、基R10、R11及びR12中で、隣接していないC−原子は、場合によりO−原子で置換されていてもよく、かつ/又は基R10、R11及びR12は全て又は部分的に、基の非極性がそれにより実質的に影響されないことを条件として、弗素化されていてよい]のボレート−アニオンである}少なくとも1種及び
(B)アルキル置換されたボラネート塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホン、ペルオキシド、ピリジン−N−オキシド及びハロゲンメチルトリアジンから成る群から選択される共−開始剤少なくとも1種
を含有している混合物。
【請求項2】
以下の成分:
− 請求項1に定義されているような式1/m Anm−Cyaの成分(A)少なくとも1種、
− アルキル置換されたボラネート塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホン、ペルオキシド、ピリジン−N−オキシド及びハロゲンメチルトリアジンから成る群から選択される共−開始剤(B)少なくとも1種及び
− 場合による溶剤(C)少なくとも1種
から成っている混合物。
【請求項3】
以下の成分:
− 請求項1に定義されているような式1/m Anm−Cyaの成分(A)少なくとも1種、
− アルキル置換されたボラネート塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホン、ペルオキシド、ピリジン−N−オキシド及びハロゲンメチルトリアジンから成る群から選択される共−開始剤(B)少なくとも1種及び
− 場合による溶剤(C)少なくとも1種、
− バインダー(D)少なくとも1種、
− 場合による反応性希釈剤(E)少なくとも1種、
− 場合によるUV−光開始剤(F)少なくとも1種、
− 場合による着色剤(G)少なくとも1種及び
− 場合による他の典型的な塗料添加剤(H)
を含有している被覆組成物。
【請求項4】
共−開始剤(B)は、会合した対イオン1/x Katx+を1個有する、
式(VII):
【化3】

[式中、xは1又は2であり、Katはx−価のカチオンであり、
、z、z及びzは相互に無関係に、それぞれ0又は1であり、
この際、z+z+z+zの合計は、0、1、2又は3であり、
、Y、Y及びYは相互に無関係に、それぞれO、S又はNR17であり、
13、R14、R15及びR16はそれぞれ相互に無関係に、C〜C18−アルキル、場合により1個以上の酸素−及び/又は硫黄原子によって及び/又は1個以上の置換又は非置換のイミノ基によって中断されたC〜C18−アルキル、C〜C12−アリール、C〜C12−シクロアルキルを表すか又は酸素−、窒素−及び/又は硫黄原子を有する5〜6員のヘテロ環であり、この際、記載の基はそれぞれ、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよく、かつ
17は、水素、C〜C18−アルキル又はC〜C12−アリールを表す、
但し、基R13〜R16の少なくとも1つは、C〜C18−アルキル基であり、
13〜R16の少なくとも1つはC〜C12−アリール基であり、この際、記載の基は、それぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又はヘテロ環により置換されていてよい]の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物及び請求項3に記載の被覆組成物。
【請求項5】
共−開始剤(B)は、式:
【化4】

[式中、R18及びR19はそれぞれ、置換又は非置換のアリール基を表し、R20は置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルケニル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換のアリール基又は置換又は非置換のアラルキル基を表し、AnAはアニオンを表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物及び請求項3に記載の被覆組成物。
【請求項6】
共−開始剤(B)は、式:
21−I−R22 AnB
[式中、R21及びR22は置換又は非置換のアリール基を表し、AnBはアニオンを表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物及び請求項3に記載の被覆組成物。
【請求項7】
共−開始剤(B)は、式:
【化5】

[式中、R23は置換又は非置換のアリール基を表し、基R24はそれぞれハロゲン原子を表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物及び請求項3に記載の被覆組成物。
【請求項8】
共−開始剤(B)は、式:
【化6】

[式中、R25は置換又は非置換のアリール基を表し、R26は置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基又は置換又は非置換のベンゾイル基を表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物及び請求項3に記載の被覆組成物。
【請求項9】
共−開始剤(B)は、式:
【化7】

[式中、R27、R28、R29、R30又はR31はそれぞれ相互に無関係に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基又は置換又は非置換のアリール基を表し、
32は置換又は非置換のアルキル基を表し、
AnCはアニオンを表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物及び請求項3に記載の被覆組成物。
【請求項10】
共−開始剤(B)は、式:
【化8】

[式中、R33、R34及びR35はそれぞれ相互に無関係に、トリハロゲンメチル基、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルケニル基又は置換又は非置換のアリール基を表す、但し、基R33、R34及びR35の少なくとも1個はトリハロゲンメチル基である]の化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物及び請求項3に記載の被覆組成物。
【請求項11】
放射線硬化可能な被覆組成物、塗料系、道路標識、車両−、飛行機−及び自動車クリア−及び−上塗りラッカー中での、並びに建築材料、煉瓦、クリンカー、人造石材、たたき床、漆喰及びそれらの被覆用の被覆組成物の硬化のための、請求項1から10までのいずれか1項に記載の混合物の使用。
【請求項12】
バインダー(D)少なくとも1種及び/又は反応性希釈剤(E)少なくとも1種を含有する放射線硬化可能な被覆組成物を製造する方法において、バインダー(D)及び/又は反応性希釈剤(E)を、請求項1から10までのいずれか1項に記載の混合物と混合することを特徴とする、放射線硬化可能な被覆組成物を製造する方法。
【請求項13】
バインダー(D)少なくとも1種及び/又は反応性希釈剤(E)少なくとも1種を含有する放射線硬化可能な被覆組成物を製造する方法において、バインダー(D)及び/又は反応性希釈剤(E)を、請求項1に記載のように定義されている式1/m Anm−Cyaの成分(A)少なくとも1種と混合し、及びそれとは別に、アルキル置換されたボラネート塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホン、ペルオキシド、ピリジン−N−オキシド及びハロゲンメチルトリアジンから成る群から選択される成分(B)少なくとも1種と混合することを特徴とする、放射線硬化可能な被覆組成物を製造する方法。
【請求項14】
NIR−線の照射によって、NIR−光開始剤少なくとも1種及びラジカル重合可能な化合物少なくとも1種を含有する被覆組成物を硬化させる方法において、この照射を、18kPaより低い酸素分圧下で実施することを特徴とする、NIR−線の照射によって被覆組成物を硬化させる方法。
【請求項15】
少なくとも1種の不活性ガスを含有する雰囲気中で硬化を実施することを特徴とする、請求項13に記載の方法。

【公開番号】特開2011−149029(P2011−149029A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92059(P2011−92059)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【分割の表示】特願2007−543769(P2007−543769)の分割
【原出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】