説明

放散ガス測定用組立式チャンバー

【課題】被測定物の大きさや形状に対応して、放散ガス測定用チャンバーの大きさや形状を容易かつ簡素に変更可能とする。
【解決手段】内部に形成された気密空間に被測定物が収容され、被測定物から放散される放散ガスを測定する放散ガス測定用組立式チャンバーであって、所定の形状及び大きさの前記気密空間が内部に形成されるように気密的に組み立てられた、一種又は複数種よりなる複数個のユニットブロック2A〜2Cと、各ユニットブロック2A〜2C同士を固定する固定手段とを備えている。被測定物から放散された放散ガスが接触可能な部位は、放散ガスに対する非吸着性及びガスを放散しない又は放散しにくい非放散性のうちの少なくとも一方の性質を有する非吸着・非放散材により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放散ガス測定用組立式チャンバーに関し、より詳しくは機器、建材、家具や車両の内装部品等から放散されるガスを測定するための放散ガス測定用チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種部品や材料から放散される各種ガスが問題となっている。例えば、電子工業分野においては、半導体デバイス、表示デバイス、記憶デバイス等のデバイスを製造する際、デバイス製造用の機器やクリーンルーム内の建材から放散されるガスがデバイスの性能に影響を与える。また、建材分野においては、建材や家具から放散される有機物ガスが人体に有害なものもある。さらに自動車分野においても、車室内における揮発性有機化合物(Volatile organic Compounds、VOC)を低減させたいという要望がある。
【0003】
そこで、これらの問題を解決すべく、ガス放散現象の解明や実態を調査したり、あるいは対策を検討したりする上で、各種部材や材料から放散されるガスの成分や量等を測定する必要があり、そのための放散ガス測定用チャンバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この放散ガス測定用チャンバーは、チャンバーの形状を保持する剛性枠体と、チャンバーの内部を外気から遮断する柔軟なシートとを備えている。このチャンバーを用いて被測定物から放散されるガスを測定する際は、清浄ガス供給器からチャンバー内に清浄ガスを供給し、シートで覆われた空間を剛性枠体の形状に沿わせて膨らませることにより、チャンバーの形状を保持する。そして、一定量の清浄ガスでチャンバー内を換気しつつ、被測定物からの放散ガスを含むチャンバー内のガスを捕集して成分分析等を行う。
【特許文献1】特開2003−307472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の放散ガス測定用チャンバーでは、チャンバー内に収容、配置することのできる被測定物の形状や大きさが、チャンバーの形状を保持する剛性枠体の形状や大きさにより制限を受ける。このため、例えば大型部品を測定する場合には、剛性枠体をスライド可能に支持するスライド式構造やあるいは入子式構造等の、剛性枠体の寸法を変更可能な変更機構が必要となり、構造が複雑になる。また、スライド式構造等では、特に三次元的に剛性枠体の形状や大きさを変更することが容易ではなく、構造がより複雑となる。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、被測定物の大きさや形状に対応して、放散ガス測定用チャンバーの大きさや形状を容易かつ簡素に変更可能とすることを解決すべき技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の放散ガス測定用組立式チャンバーは、内部に形成された気密空間に被測定物が収容され、該被測定物から放散される放散ガスを測定する放散ガス測定用組立式チャンバーであって、所定の形状及び大きさの前記気密空間が内部に形成されるように気密的に組み立てられた、一種又は複数種よりなる複数個のユニットブロックと、各前記ユニットブロック同士を固定する固定手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
この放散ガス測定用組立式チャンバーは、一種又は複数種よりなる複数個のユニットブロックを組み立ててなるものであるから、ユニットブロックの種類や数を適宜変更しつつ組み合わせることにより、チャンバーの形状や大きさを任意に変更可能である。このため、被測定物の大きさや形状に対応して、放散ガス測定用チャンバーの大きさや形状を二次元的にも三次元的にも容易かつ簡素に変更することができる。
【0009】
ここに、被測定物から放散された放散ガスがチャンバーの内面に吸着したり、あるいはチャンバーの内面を構成する材料からガスが放散されると、気密空間内の前記放散ガス量が低下したり、あるいは気密空間内に前記放散ガス以外のガスが含有されたりするので、測定誤差につながる。
【0010】
そこで、本発明の放散ガス測定用組立式チャンバーは、前記気密空間に収容された前記被測定物から放散された前記放散ガスが接触可能な部位が、該放散ガスに対する非吸着性及びガスを放散しない又は放散しにくい非放散性のうちの少なくとも一方の性質を有する非吸着・非放散材により構成されていることが好ましい。前記放散ガスが接触可能な部位が非吸着・非放散材により構成されていれば、被測定物からの放散ガスがチャンバーの内面等に吸着したり、チャンバーの内面等からガスが放散したりすることによる、測定誤差を低減させることができ、被測定物からの放散ガスの正確な測定が可能となる。
【0011】
前記非吸着性とは、被測定物から放散される放散ガスを吸着しない又は吸着しにくい性質を意味する。この非吸着性は被測定物から放散される放散ガスの種類によっても異なるが、非吸着性を有する材料としては、例えば、ステンレス等の金属、石英を含むガラスやポリテトラフルオロエチレン(「テフロン」商標名)等のフッ素樹脂を挙げることができる。なお、これらのステンレス等の金属、石英を含むガラスやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂は、後述するように、ガスを放散しない又は放散しにくい非放散性の性質も有する。
【0012】
また、前記非吸着・非放散材としては、前記非吸着性及び前記非放散性の双方の性質を有するものを採用することがより好ましい。前記放散ガスが接触可能な部位が、前記非吸着性及び前記非放散性の双方の性質を有する非吸着・非放散材により構成されていれば、被測定物からの放散ガスがチャンバーの内面等に吸着することによる測定誤差及びチャンバーの内面等からガスが放散されることによる測定誤差の双方を低減させることができ、被測定物からの放散ガスのより正確な測定が可能となる。例えば、揮発性有機化合物(VOC)等の有機物ガスを放散する被測定物を測定する場合は、有機物ガスに対する非吸着性を有するとともにガスを放散しない非放散性の性質を有するステンレス等の金属、石英を含むガラスやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等を前記非吸着・非放散材として採用することがより好ましい。
【0013】
前記ユニットブロックの形状、大きさ、構成要素や構造等は、一種又は複数種よりなる複数個のユニットブロックを組み合わせることで、所定の形状及び大きさの気密空間を内部に形成することができるものであれば、特に限定されない。また、組み立てられたチャンバーにおいて所定位置となる各ユニットブロックには、放散ガス測定用の種々の測定手段(送気、吸気、ガス採取、温度制御、湿度制御や撹拌等の手段)や被測定物の出し入れ用扉を設けることができる。また、これらは必要に応じて複数のユニットブロック分の大きさで配置することもできる。
【0014】
好適なユニットブロックとしては、中央開口を有し前記気密空間側に配置された内側フレームと、中央開口を有し外部側に配置された外側フレームと、両該中央開口を塞ぐように該内側フレーム及び該外側フレームの間に挟持されたガラス板と、該内側フレーム及び該外側フレームのうちの少なくとも一方と該ガラス板との間に介装された環状のシール部材とを備えているものを挙げることができる。このように内側フレーム及び外側フレームのうちの少なくとも一方とガラス板との間にシール部材が介装されていれば、ユニットブロック自体における気密性を確保することができる。また、ガラス板は、有機物ガスに対する非吸着性及び非放散性の双方の性質を有するので、このガラス板に前記放散ガスとしての有機物ガスが吸着したり、ガラス板からガスが放散されたりすることがない。
【0015】
前記外側フレーム及び前記内側フレームの材質は特に限定されず、例えば、アルミニウム、鉄やマグネシウム等若しくはそれらの合金等の金属、又はフッ素樹脂やポリプロピレン等の合成樹脂を採用することができる。
【0016】
前記シール部材の材質としては、内側フレーム及び外側フレームのうちの少なくとも一方とガラス板との間におけるシール性(気密性)を確保することのできるものであれば特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、フッ素ゴムやシリコン樹脂等を採用することができる。
【0017】
ただし、前述したように、前記放散ガスの吸着やガスの放散による測定誤差を低減させる観点より、前記内側フレーム、前記外側フレーム及び前記シール部材のうちの少なくとも前記放散ガスが接触可能な部位は、前記非吸着性及び前記非放散性のうちの少なくとも一方(より好ましくは双方)の性質を有する前記非吸着・非放散材により構成されていることが好ましい。
【0018】
また、前記内側フレームの好適な態様としては、表面コーティング層として、前記放散ガスに対する非吸着性及びガスを放散しない又は放散しにくい非放散性のうちの少なくとも一方(より好ましくは双方)の性質を有する非吸着・非放散材よりなる非吸着・非放散層を備えているものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0019】
したがって、本発明の放散ガス測定用組立式チャンバーによれば、被測定物の大きさや形状に応じてユニットブロックの種類や数を適宜変更しつつ組み合わせることにより、チャンバーの大きさや形状を二次元的にも三次元的にも容易かつ簡素に変更することができる。
【0020】
よって、例えば1m3 以上の体積を有するような被測定物であっても、容易に対応して放散ガスの測定が可能となる。また、チャンバー形状の自由度も高いため、あらゆる形状の被測定物に対しても容易に対応可能である。
【0021】
さらに、本発明の放散ガス測定用祖組立式チャンバーにおいて、前記放散ガスが接触可能な部位に、該放散ガスに対する非吸着性及びガスを放散しない又は放散しにくい非放散性のうちの少なくとも一方の性質を有する非吸着・非放散材を採用した場合は、被測定物からの放散ガスがチャンバーの内面等に吸着することによる測定誤差や、チャンバーの内面等からガスが放散されることによる測定誤差を低減させることができ、被測定物からの放散ガスの正確な測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1〜図7に示される本実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1は、直方体形状をなし、内部に形成された気密空間10に被測定物Wが収容され、被測定物Wから放散される放散ガスを測定するものであって、内部に気密空間10が形成されるように気密的に組み立てられた、第1〜第3の3種よりなる26個のユニットブロック2(2A〜2C)と、各ユニットブロック2同士を固定する複数個の固定手段3(図6参照)とを備えている。
【0024】
この実施形態に係る放散ガス測定用組立式チャンバー1におけるユニットブロック2は、8個の第1ユニットブロック2Aと、12個の第2ユニットブロック2Bと、6個の第3ユニットブロック2Cとから構成されている(図1及び図2参照)。
【0025】
そして、これら第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cは、チャンバー1に組み立てられた状態で、気密空間10に配置された被測定物Wから放散される放散ガスが接触可能な部位が、後述するように、この放散ガスに対して非吸着性を有するとともに、ガスを放散しない放散性を有する非吸着・非放散材により構成されている。
【0026】
第1ユニットブロック2Aは、前記直方体を構成する面のうち隣り合う三つの面が交わる8個の頂点位置に配置され、第1〜第3の三つの面部を有している。
【0027】
第2ユニットブロック2Bは、前記直方体を構成する面のうち隣り合う二つの面が交わる12本の各辺の中央位置に配置され、第1〜第2の二つの面部を有している。
【0028】
第3ユニットブロック2Cは、前記直方体を構成する6個の各面の中央位置に配置され、一つの面部を有している。
【0029】
これら第1ユニットブロック2Aの第1〜第3面部、第2ユニットブロック2Bの第1〜第2面部及び第3ユニットブロック2Cの面部は、いずれも同じ構成要素を有している。すなわち第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cの各面部はいずれも、同じ構成要素からなるものであり、中央開口21aを有し気密空間10側に配置された内側フレーム21と、中央開口22aを有し外部側に配置された外側フレーム22、両中央開口21a及び22aを塞ぐように内側フレーム21及び外側フレーム22の間に挟持されたガラス板(非吸着・非放散材)23と、内側フレーム21とガラス板23との間に介装された環状のシール部材24とを備えている(図3及び図4参照)。
【0030】
第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cの各面部を構成する内側フレーム21は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の長方形状の枠状基材21bと、この枠状基材21bの表面にコーティングされた非吸着・非放散層としてのテフロンコーティング層21cとを備えている(図4(b)参照)。また、第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cの各面部を構成する外側フレーム22は、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる。第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cの各面部を構成するガラス板23は、石英ガラスよりなる。第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cの各面部を構成するシール部材24は、テフロンシール材よりなる。
【0031】
また、第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cは、隣り合うユニットブロック2の外側フレーム22同士を固定するための固定手段3を有している。この固定手段3は、所謂パッチン錠よりなり、隣り合うユニットブロック2の一方の外側フレーム22に取り付けられた弾発性フック部31と、隣り合うユニットブロック2の他方の外側フレーム22に取り付けられ、弾発性フック部31と係合可能な留め具32とから構成されている。
【0032】
さらに、第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cは、図5に示されるように、隣り合うユニットブロック2の端面2a、2b同士の間をシールするためのシール手段4を有している。このシール手段4は、隣り合うユニットブロック2の一方の端面2aに設けられた断面矩形状の矩形溝40内に配設された第1テフロンシール材41と、この矩形溝40内に一端が配設されるとともに、隣り合うユニットブロック2の他方の端面2bに設けられた断面三角形状の三角溝42内に他端が配設さたテフロンシート43と、この三角溝42内に配設された第2テフロンシール材44と、矩形溝40が設けられた前記端面2a(内側フレーム21の端面)の該矩形溝40よりも気密空間10側の部位(図5に斜線で示す部位)に貼り付けられたテフロンのシールテープ45とから構成されている。
【0033】
加えて、第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cは、隣り合うユニットブロック2同士の位置を決める位置決め手段5を有している。この位置決め手段5は、隣り合うユニットブロック2の一方の端面2aに設けられた位置決めピン51と、隣り合うユニットブロック2の他方の端面2bに設けられ位置決めピン51と正規位置で嵌合する位置決め孔(図示せず)とから構成されている。
【0034】
かかる構成を有する本実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1は、以下のようにして製造した。
【0035】
先ず、第1ユニットブロック2Aを製造するに際し、前記枠状基材21bの表面に前記テフロンコーティング層21cを塗装・焼成等により形成してなり、所定位置に前記矩形溝40、前記三角溝42、前記位置決めピン51及び前記位置決め孔が適宜設けられた3個の内側フレーム21を準備した。そして、図3に示されるように、3個の内側フレーム21が互いに直角となるようにそれぞれを配置した。このとき、当接し合う各内側フレーム21同士の間には、図示しないテフロンシール材を介在させて、シール性を確保した。そして、図示しないネジ等の固定具で各内側フレーム21同士を固定して、3個の内側フレーム21を一体化し、3個の内側フレーム21よりなる一体品を得た。一方、外側フレーム22、ガラス板23及びシール部材24をそれぞれ3個ずつ準備した。そして、内側フレーム21と外側フレーム22との間にガラス板23が挟持されるとともに、内側フレーム21とガラス板23との間にシール部材24が挟持されるように、前記一体品に対し、3個ずつの外側フレーム22、ガラス板23及びシール部材24をセットした状態で、これら内側フレーム21、シール部材24、ガラス板23及び外側フレーム22を図示しないネジ等の固定具で固定して、第1ユニットブロック2Aを完成した。
【0036】
第2ユニットブロック2Bを製造するに際し、前記枠状基材21bの表面に前記テフロンコーティング層21cを形成してなり、所定位置に前記矩形溝40、前記三角溝42、前記位置決めピン51及び前記位置決め孔が適宜設けられた2個の内側フレーム21を準備した。そして、2個の内側フレーム21が互いに直角となるようにそれぞれを配置した。このとき、当接し合う両内側フレーム21同士の間には、前記テフロンシール材を介在させて、シール性を確保した。そして、前記固定具で両内側フレーム21同士を固定して、2個の内側フレーム21よりなる一体品を得た。一方、外側フレーム22、ガラス板23及びシール部材24をそれぞれ2個ずつ準備した。そして、内側フレーム21と外側フレーム22との間にガラス板23が挟持されるとともに、内側フレーム21とガラス板23との間にシール部材24が挟持されるように、前記一体品に対し、2個ずつの外側フレーム22、ガラス板23及びシール部材24をセットした状態で、これら内側フレーム21、シール部材24、ガラス板23及び外側フレーム22を前記固定具で固定して、第2ユニットブロック2Bを完成した。
【0037】
第3ユニットブロック2Cを製造するに際し、前記枠状基材21bの表面に前記テフロンコーティング層21cを形成してなり、所定位置に前記矩形溝40、前記三角溝42、前記位置決めピン51及び前記位置決め孔が設けられた1個の内側フレーム21を準備した。一方、外側フレーム22、ガラス板23及びシール部材24をそれぞれ1個ずつ準備した。そして、内側フレーム21と外側フレーム22との間にガラス板23が挟持されるとともに、内側フレーム21とガラス板23との間にシール部材24が挟持されるように、前記一体品に対し、外側フレーム22、ガラス板23及びシール部材24をセットした状態で、これら内側フレーム21、シール部材24、ガラス板23及び外側フレーム22を前記固定具で固定して、第3ユニットブロック2Cを完成した。
【0038】
こうして、第1ユニットブロック2A、第2ユニットブロック2B及び第3ユニットブロック2Cをそれぞれ所定個準備した後、各ユニットブロック2の所定位置に前記固定手段3、前記シール手段4及び前記位置決め手段5を適宜設けた。
【0039】
そして、所定の形状及び大きさの前記気密空間10が内部に形成されて、この気密空間10内に被測定物Wを収容、配置することができるように、これら第1〜第3ユニットブロック2A〜2Cを所定個組み合わせて組み立てた。このとき、前記位置決めピン51と前記位置決め孔とを嵌合させることにより、隣り合うユニットブロック2同士の位置を容易に決めることができた。そして、前記矩形溝40及び前記三角溝42に配設された前記第1テフロンシール材41、前記テフロンシート43及び第2テフロンシール材44により、隣り合うユニットブロック2の端面2a、2b同士の間のシール性を確保しつつ、隣り合うユニットブロック2同士を固定手段3で固定して、所定の形状及び大きさをもつチャンバー1とした。
【0040】
したがって、本実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1は、第1〜第3ユニットブロック2A〜2Cという3種類よりなる複数個のユニットブロック2を組み合わせてなるものであるから、例えば第3ユニットブロック2Cの数を変更することにより、チャンバー1の形状や大きさを任意に変更可能である。このため、被測定物Wの大きさや形状に対応して、放散ガス測定用チャンバー1の大きさや形状を二次元的にも三次元的にも容易かつ簡素に変更することができる。
【0041】
また、本実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1では、テフロンコーティング層21cでコーティングされた内側フレーム21とガラス板23とにより、チャンバー1の内面が構成されている。すなわち、このチャンバー1は、気密空間10に収容された被測定物Wから放散された放散ガスが接触可能な部位が、内側フレーム21のテフロンコーティング層21cとガラス板23とで構成されている。そして、これらテフロンコーティング層21c及びガラス板23は、揮発性有機化合物等の有機物ガスに対して非吸着性を有するとともに、ガスを放散しない非放散性を有するものである。このため、このチャンバー1によれば、放散ガスとして例えば揮発性有機化合物を放散する被測定物Wからの放散ガスを測定する際、被測定物Wから放散された放散ガスがチャンバー1の内面に吸着したり、あるいはチャンバー1の内面からガスが放散されたりすることによる測定誤差を低減させることができ、被測定物Wからの放散ガスの正確な測定が可能となる。
【0042】
さらに、本実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1では、各ユニットブロック2同士の間においては、前記シール手段4によりシール性を確保することができるとともに、各ユニットブロック2を構成する各面部においても内側フレーム21とガラス板23との間で前記シール部材24によりシール性を確保することができる。したがって、このチャンバー1では、内部に形成される気密空間10における気密性を確実に確保することが可能である。
【0043】
本実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1を用いて、実際に被測定物Wからの放散ガスを測定する際には、組み立てられたチャンバー1において所定位置となる各ユニットブロック2に、放散ガス測定用の種々の測定手段(送気手段、吸気手段、ガス採取手段、温度制御手段、湿度制御手段や撹拌手段等)を設ける。例えば、所定のユニットブロック2に送気手段、吸気手段及びガス採取手段を設けることにより、図7に示されるように、送気口61、吸気口62及びガス採取口63を有するチャンバー1とすることができる。このチャンバー1では、送気口61に清浄空気供給器(図示せず)を接続するとともに、吸気口62に流量制御器64及びポンプ65を接続し、流量制御器64及びポンプ65によりチャンバー1内の空気を吸気口62から排気しつつ、清浄空気供給器により送気口61からチャンバー1内に清浄空気を導入して、所定時間換気した後に、チャンバー1内の放散ガス含有空気をガス採取口63から捕集し、被測定物Wからの放散ガスの成分や放散ガス量を測定する。
【0044】
(実施形態2)
図8に示される本実施形態は、前記実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバー1において、前記シール手段4の構成を変更したものである。
【0045】
すなわち、この実施形態におけるシール手段4は、隣り合うユニットブロック2の一方の端面2aに設けられた、前記テフロンシート43の厚さと同等の幅を有する断面矩形状の第1細溝46の底部に配設された前記第1テフロンシール材41と、この第1細溝46内に一端が配設されるとともに、隣り合うユニットブロック2の他方の端面2bに設けられた、前記テフロンシート43の厚さと同等の幅を有する断面矩形状の第2細溝47内に他端が配設さた前記テフロンシート43と、この第2細溝47の底部に配設された前記第2テフロンシール材44と、第1細溝46が設けられた前記端面2a(内側フレーム21の端面)の該第1細溝46よりも気密空間10側の部位(図8に斜線で示す部位)に貼り付けられたテフロンの前記シールテープ45とから構成されている。
【0046】
その他の構成は、前記実施形態1と同様である。
【0047】
したがって、この実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1は、前記実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0048】
(実施形態3)
図9に示される本実施形態は、前記実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバー1において、前記シール手段4の構成を変更したものである。
【0049】
すなわち、この実施形態におけるシール手段4は、隣り合うユニットブロック2の一方の端面2aに設けられ、傾斜面48aを有する傾斜段部48と、隣り合うユニットブロック2の他方の端面2bに設けられ、傾斜段部48の傾斜面48aと整合して密接する傾斜面49aを有する傾斜凹段部49と、傾斜段部48の傾斜面48aの気密空間10側の部位(図9に斜線で示す部位)に貼り付けられたテフロンの前記シールテープ46とから構成されている。なお、傾斜段部48及び傾斜凹段部49は、内側フレーム21の端面を傾斜面とすることにより形成されている。
【0050】
その他の構成は、前記実施形態1と同様である。
【0051】
したがって、この実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1は、前記実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0052】
(実施形態4)
図10に示される本実施形態は、前記実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバー1において、前記固定手段3の構成を変更したものである。
【0053】
すなわち、この実施形態における固定手段3は、所謂マグネット錠よりなり、隣り合うユニットブロック2の一方の外側フレーム22に取り付けられた第1磁石33と、隣り合うユニットブロック2の他方の外側フレーム22に取り付けられ、第1磁石33と吸引し合う第2磁石34とから構成されている。
【0054】
その他の構成は、前記実施形態1と同様である。
【0055】
したがって、この実施形態の放散ガス測定用組立式チャンバー1は、前記実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0056】
(実施形態5)
図11に示される本実施形態は、前記実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバー1において、前記第1ユニットブロック2A及び前記第2ユニットブロック2Bの構成を変更したものである。
【0057】
すなわち、この実施形態における第1ユニットブロック2Aにおいては、図11に示されるように、前記第1〜第3面部を構成する内側フレーム21’が一体に形成されている。なお、この一体成形品よりなる内側フレーム21’は、削り出しあるいは接着(溶着)などにより製造した。
【0058】
同様に、この実施形態における第2ユニットブロック2Bにおいても、前記第1〜第2面部を構成する内側フレームが一体に形成されている。
【0059】
したがって、この実施形態における第1ユニットブロック2A及び第2ユニットブロック2Bは、内側フレーム21’が一体成形品よりなるので、第1ユニットブロック2A及び第2ユニットブロック2Bにおけるシール性をより確実に確保することができる。
【0060】
その他の構成及び作用効果は、前記実施形態1と同様である。
【0061】
なお、前述した実施形態1〜5においては、前記第1〜第3面部を有する第1ユニットブロック2Aと、前記第1〜第2面部を有する第2ユニットブロック2Bと、前記面部を有する第3ユニットブロック2Cとを組み合わせてチャンバーを組み立てているが、これに限らず、各ユニットブロックを構成する各面部の大きさ、形状や数は適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバーを概略的に示す斜視図である。
【図2】実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバーに係る、第1〜第3ユニットブロックを概略的に示す模式図であり、(a)は第1ユニットブロック、(b)は第2ユニットブロック、(c)は第3ユニットブロックである。
【図3】実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバーに係る、第1ユニットブロックを分解した一部を概略的に示す分解模式図である。
【図4】実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバーに係るユニットブロックを示し、(a)はユニットブロックを部分的に示す部分平面図であり、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
【図5】実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバーに係り、各ユニットブロック同士の接合部分を模式的に示す部分斜視図である。
【図6】実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバーに係り、各ユニットブロック同士を固定するための固定手段の部分を模式的に示す部分平面図である。
【図7】実施形態1の放散ガス測定用組立式チャンバーに係り、被測定物からの放散ガスを測定する際のガス測定用手段を模式的に示す模式図である。
【図8】実施形態2の放散ガス測定用組立式チャンバーに係り、各ユニットブロック同士の接合部分を模式的に示す部分斜視図である。
【図9】実施形態3の放散ガス測定用組立式チャンバーに係り、各ユニットブロック同士の接合部分を模式的に示す部分斜視図である。
【図10】実施形態4の放散ガス測定用組立式チャンバーに係り、各ユニットブロック同士を固定するための固定手段の部分を模式的に示す部分平面図である。
【図11】実施形態5の放散ガス測定用組立式チャンバーに係る、第1ユニットブロックを分解した一部を概略的に示す分解模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1…放散ガス測定用組立式チャンバー 2…ユニットブロック
2A…第1ユニットブロック 2B…第2ユニットブロック
2C…第3ユニットブロック 3…固定手段
4…シール手段 5…位置決め手段
21…内側フレーム 21a…中央開口
21b…枠状基体
21c…テフロンコーティング層(非吸着・非放散層)
22…外側フレーム 22a…中央開口
23…ガラス板(非吸着・非放散材) 24…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に形成された気密空間に被測定物が収容され、該被測定物から放散される放散ガスを測定する放散ガス測定用組立式チャンバーであって、
所定の形状及び大きさの前記気密空間が内部に形成されるように気密的に組み立てられた、一種又は複数種よりなる複数個のユニットブロックと、
各前記ユニットブロック同士を固定する固定手段とを備えていることを特徴とする放散ガス測定用組立式チャンバー。
【請求項2】
前記気密空間に収容された前記被測定物から放散された前記放散ガスが接触可能な部位は、該放散ガスに対する非吸着性及びガスを放散しない又は放散しにくい非放散性のうちの少なくとも一方の性質を有する非吸着・非放散材により構成されていることを特徴とする請求項1記載の放散ガス測定用組立式チャンバー。
【請求項3】
前記ユニットブロックは、中央開口を有し前記気密空間側に配置された内側フレームと、中央開口を有し外部側に配置された外側フレームと、両該中央開口を塞ぐように該内側フレーム及び該外側フレームの間に挟持されたガラス板と、該内側フレーム及び該外側フレームのうちの少なくとも一方と該ガラス板との間に介装された環状のシール部材とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の放散ガス測定用組立式チャンバー。
【請求項4】
前記内側フレームは、表面コーティング層として、前記放散ガスに対する非吸着性及びガスを放散しない又は放散しにくい非放散性のうちの少なくとも一方の性質を有する非吸着・非放散材よりなる非吸着・非放散層を備えていることを特徴とする請求項3記載の放散ガス測定用組立式チャンバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−205990(P2007−205990A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27341(P2006−27341)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】