説明

放熱性樹脂組成物

【課題】放熱性、耐熱変形性、調色性、光沢性、耐衝撃性及び曲げ歪み特性に優れる放熱性樹脂組成物、並びに、それを含む成形品を提供する。
【解決手段】ポリテトラメチレンアジパミド及び窒化ホウ素を含有し、前者の割合が15〜95質量%、後者の割合が5〜85質量%(但し、両者の合計量は100質量%)である放熱性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性樹脂組成物に関し、詳しくは、表面実装型LEDパッケージを構成する、LED実装用基板、及び、このLED実装用基板に配設されるリフレクターの形成に好適な放熱性樹脂組成物並びに上記各物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED素子は、小型であり、長寿命であり、省電力性に優れることから、表示灯等の光源として利用されている。また、近年、より輝度の高いLED素子が比較的安価に製造されるようになったことから、蛍光ランプ及び白熱電球に替わる光源としての利用が検討されている。このような光源に適用する場合、大きな照度を得るために、表面実装型LEDパッケージ、即ち、例えば、アルミニウム等の金属製のベース基板(LED実装用基板)上に複数のLED素子を配置し、各LED素子の周りに光を所定方向に反射させるリフレクターを配設する方式が多用されている。しかし、LED素子は発光時に発熱を伴うため、このような方式のLED照明装置では、LED素子の発光時の温度上昇が、輝度の低下、LED素子の短寿命化等を招くこととなる。そこで、放熱性の高い金属からなるベース基板上にLED素子のベアチップを実装して、発光時の発熱をベース基板に拡散するような構造のLED照明装置が提案されている(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−149180号公報
【特許文献2】特開2002−344031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、表面実装型LEDパッケージを構成する、LED実装用基板とした場合、及び、リフレクターとした場合、のいずれにおいても、LED素子が発光しているときの放熱性、電気絶縁性(以下「絶縁性」という)及び耐熱性に優れる放熱性樹脂組成物、並びに、それを含むLED実装用基板及びリフレクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、特定の熱可塑性樹脂と、特定の熱伝導性フィラーとを含む組成物を用いて、LED実装用基板とした場合、及び、リフレクターとした場合、のいずれにおいても、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性及び耐熱性に優れていたことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下に示される。
1.ポリテトラメチレンアジパミド及び窒化ホウ素を含有し、前者の割合が15〜95質量%、後者の割合が5〜85質量%(但し、両者の合計量は100質量%)であることを特徴とする放熱性樹脂組成物。
2.ポリテトラメチレンアジパミド及び窒化ホウ素の合計100質量部に対し、着色剤0.05〜30質量部を配合して成る上記1に記載の放熱性樹脂組成物。
3.熱伝導率が2.0(w/m・K)以上、熱変形温度が260(℃)以上、熱放射率が0.7以上、シャルピー衝撃強度が2.0(kJ/m)以上である上記1に記載の放熱性樹脂組成物。
4.上記1〜3の何れかに記載の放熱性樹脂組成物から成ることを特徴とするLED実装用基板。
5.上記1〜3の何れかに記載の放熱性樹脂組成物から成ることを特徴とするリフレクター。
6.上記5に記載のリフレクターを備えていることを特徴とするLED実装用基板。
7.上記1〜3の何れかに記載の放熱性樹脂組成物から成ることを特徴とする表面実装部品用成形材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放熱性樹脂組成物によれば、成形加工性及び耐衝撃性に優れ、LED実装用基板とした場合、及び、リフレクターとした場合、のいずれにおいても、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性及び耐熱性に優れる。従って、本発明の放熱性樹脂組成物を含むLED実装用基板及びリフレクターは、LED素子が発光している時の発熱による温度上昇は、放熱により抑制されることから、輝度の低下を招くことなく、LED素子の長寿命化を図ることができる。
【0008】
本発明のLED実装用基板によれば、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性及び耐熱性に優れる。本発明のリフレクターによれば、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性、耐熱性、及び、光に対する反射性に優れる。そして、本発明の放熱性樹脂組成物は、基板とリフレクター部とが連続相となった一体成形品として得られることから、その生産性に優れ、その結果、LED照明装置の生産性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0010】
<放熱性樹脂組成物>
本発明の放熱性樹脂組成物は、ポリテトラメチレンアジパミド(以下「ナイロン4,6」という)及び窒化ホウ素を含有する。
【0011】
本発明で用いられるナイロン4,6は、テトラメチレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリテトラメチレンアジパミドおよびポリテトラメチレンアジパミド単位を主たる構成成分とする共重合ポリアミドを含む。さらに、他のポリアミドをナイロン4,6の特性を損なわない範囲で混合成分として含んでもよい。共重合成分は特に制限がなく、公知のアミド形成成分を用いることができる。共重合成分の代表例として、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノウンデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε-カプロラクタム、ω-ラウリルラクタムなどのラクタム、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4 -/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(アミノプロシル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどのジアミンとアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロルテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5- メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコ−ル酸などのジカルボン酸などを挙げることができる。
【0012】
また、本発明で用いられるナイロン4,6の製造方法は任意である。例えば、特開昭56−149430号公報、特開昭56−149431号公報、特開昭58−83029号公報および特開昭61−43631号公報などで開示された方法、すなわち、先ず環状末端基が少ないプレポリマ−を特定の条件下で製造した後、これを水蒸気雰囲気下で固相重合して高粘度ナイロン4,6を調製する方法あるいは2-ピロリドンやN-メチルピロリドンなどの極性有機溶媒中で加熱してそれを得る方法などがある。ナイロン4,6の重合度については特に制限はないが、25℃、96%硫酸中、1g/dlにおける相対粘度が2.0から6.0の範囲内にあるナイロン46が好ましく用いられる。
【0013】
本発明で用いられる窒化ホウ素としては、c−BN(閃亜鉛鉱構造)、w−BN(ウルツ鉱構造)、h−BN(六方晶構造)、r−BN(菱面体晶構造)等の複数の安定構造が知られている。本発明においては、いずれの窒化ホウ素も用いることができるが、六方晶構造の窒化ホウ素が好ましい。六方晶構造の窒化ホウ素を用いることにより、成形品を得る際に用いる成形機、及び、金型の摩耗が低減できる。
六方晶構造の窒化ホウ素は、層状の結晶構造を有しており、その形状は、平板状(鱗片状)である。この層状構造を有する窒化ホウ素において、層に平行な方向(a軸方向)の熱伝導性は、層に垂直な方向(c軸方向)のそれの約30倍程度といわれている。
【0014】
窒化ホウ素の形状は、特に限定されず、球状、線状(繊維状)、平板状(鱗片状)、曲板状等とすることができ、単粒タイプでも、顆粒タイプ(単粒の凝集品)でもよい。鱗片状のものを用いると、熱伝導性に優れた成形品が得られるとともに、機械的特性が良好となるので好ましい。鱗片状の窒化ホウ素は、絶縁性に優れると共に、窒化ホウ素自体白色性に優れることから、白色度の高い成形品を得やすく、光に対する反射特性に優れ、リフレクターとした場合、及び、リフレクター部を備えるLED実装用基板とした場合、のいずれにおいても、LED素子が発光しているときの光に対する反射特性にも優れる。
【0015】
窒化ホウ素としては、レーザー回折法で測定した体積平均粒子径が2〜100μmのものが好ましく、より好ましくは3〜50μm、更に好ましくは5〜30μmである。比表面積は8m/g以下のものが好ましく、より好ましくは4m/gである。また、粒度分布を測定して得られた累積体積が10%であるときの粒子径D10は7μm以下が好ましく、より好ましくは6μm以下であり、90%であるときの粒子径D90は30μm以上が好ましく、より好ましくは35μm以上である。また、D10とD90の比D90/D10の値は3〜15であることが好ましく、より好ましくは5〜10である。
また、窒化ホウ素のアスペクト比は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5〜10である。純度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。タップ密度は、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは0.7g/cm3以上である。L値は、好ましくは93以上である。
これらの範囲とすることにより放熱性、熱伝導性、及び光に対する反射特性に優れた成形品を得ることができる。また、上記範囲の範囲であれば、異なる粒子径の窒化ホウ素を組み合わせて用いてもよい。更に、窒化ホウ素は一次粒子が凝集した凝集タイプのものより、分散しているものの方が好ましい。
【0016】
本発明において、ナイロン4,6の配合割合は、15〜95質量%、窒化ホウ素の配合割合が5〜85質量%(但し、両者の合計量は100質量%)である。ナイロン4,6の配合量が少なすぎる(窒化ホウ素の配合量が多すぎる)と、成形加工性、耐衝撃性及び曲げ歪み特性が劣る傾向にあり、一方、ナイロン4,6の配合量が少なすぎる多すぎる(窒化ホウ素の配合量少なすぎる)と、放熱性が劣る傾向にある。ナイロン4,6の配合量は、好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは45〜65質量%である。
【0017】
本発明の放熱性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、抗菌剤、着色剤、結晶核剤、流動改質剤、衝撃改質剤等が挙げられる。尚、本発明の放熱性樹脂組成物を、リフレクターの形成、及び、リフレクター部を備えるLED実装用基板の形成に用いる場合は、組成物が白色系の色を維持できるように、添加剤を選択することが好ましい。また、本発明の放熱性樹脂組成物を、リフレクター部を備えないLED実装用基板の形成に用いる場合は、添加剤によって着色されたものであってもよい。
【0018】
上記充填剤としては、タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、アラミド繊維、ポリアリレート繊維等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記充填剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常3〜30質量部である。
【0019】
上記熱安定剤としては、ホスファイト類、ヒンダードフェノール類、チオエーテル類等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記熱安定剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常0.1〜5質量部である。
【0020】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常0.1〜5質量部である。
【0021】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常0.05〜5質量部である。
【0022】
上記老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記老化防止剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常0.1〜5質量部である。
【0023】
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記可塑剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常0.1〜15質量部である。
【0024】
上記滑剤としては、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、金属石鹸、シリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記滑剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常0.1〜5質量部である。
【0025】
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン、グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0026】
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
上記難燃剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常5〜30質量部、好ましくは5〜20質量部である。
尚、本発明の放熱性樹脂組成物に難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
上記抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀−亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤、錯体化銀−シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤、ガラス系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤等の無機系抗菌剤;ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤;無機・有機ハイブリッド抗菌剤;天然抗菌剤等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記抗菌剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常0.05〜5質量部である。
【0029】
上記着色剤としては、TiO等の無機顔料、有機顔料及び染料のいずれを用いてもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記着色剤の含有量は、上記ナイロン4,6及び窒化ホウ素の量を100質量部とした場合、通常0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜15質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部である。
上記衝撃改質剤としては、グラフトゴム等が挙げられる。
【0030】
<組成物の製造方法>
本発明の放熱性樹脂組成物は、上記所定の含有量となるように秤量した原料成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等に供給し、混練することにより製造することができる。原料成分の供給方法は特に限定されず、各々の成分を一括配合して混練してもよく、多段、分割配合して混練してもよい。
尚、混練温度は、上記ナイロン4,6の種類、及び、上記熱伝導性フィラーの含有量により選択されるが、通常280〜350℃である。
【0031】
<組成物の性質>
本発明の放熱性樹脂組成物は、上記ナイロン4,6をマトリックスとして、上記窒化ホウ素が均一に分散している。従って、本発明の放熱性樹脂組成物を含む成形品は、放熱性、耐熱性および絶縁性に優れる。
【0032】
本発明の放熱性樹脂組成物において、ISO75に準ずる荷重たわみ温度(荷重1.80MPa)は、通常200℃以上であり、好ましくは230〜280℃、より好ましくは245〜280℃である。この温度が200℃未満であると、リフローハンダ工程での変形などが生じる傾向にある。
【0033】
また、25℃における熱伝導率は、通常2.0W/(m・K)以上であり、好ましくは3.0〜10.0W/(m・K)、より好ましくは3.0〜6.0W/(m・K)である。上記熱伝導率が、上記範囲であれば、放熱性及び機械的強度の物性バランスに優れる。この熱伝導率が2.0W/(m・K)未満であると、放熱性が劣る傾向にある。尚、上記熱伝導率は、成形品を製造したときの組成物の流動方向に対して測定した値であり、測定方法は、後述の〔実施例〕において説明する。
【0034】
更に、熱放射率は、通常0.7以上であり、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.8以上である。この熱放射率が0.7未満であると、放熱性が十分でない。尚、熱放射率の測定方法は、後述の〔実施例〕において説明する。
【0035】
更に、光線反射率は、通常80%以上であり、好ましくは85〜99%、更に好ましくは90〜980%である。この光線反射率が高いほど、LED素子からの光の反射特性に優れる。尚、光線反射率の測定方法は後述の実施例において説明する。
【0036】
放熱性樹脂組成物の絶縁性について、本発明の放熱性樹脂組成物を含む成形品の表面固有抵抗(絶縁性の指標、値が高いほど絶縁性に優れる)は、通常1×1013Ω以上、好ましくは1×1014Ω以上である。この範囲にあると、絶縁性に優れる。
絶縁破壊とは、絶縁体にかかる電圧がある限度以上となった時に、絶縁体が電気的に破壊し絶縁性を失って電流を流すようになる現象のことをいう。そして、この時の電圧を絶縁破壊電圧という。絶縁体としては、絶縁破壊の強さが大きいものが好ましい。絶縁破壊電圧は好ましくは10kV/mm以上である。
【0037】
本発明の放熱性樹脂組成物は、以上のような優れた性質を有することから、LED実装用基板、又は、このLED実装用基板に配設されるリフレクターの形成に好適である。
尚、表面実装部品としては、例えば上記のLED実装基板、リフレクター等が挙げられる。
【0038】
<成形品>
本発明のLED実装用基板は、上記本発明の放熱性樹脂組成物から成ことを特徴とする。また、本発明のリフレクターは、上記本発明の放熱性樹脂組成物から成ことを特徴とする。
本発明のLED実装用基板及びリフレクターは、表面実装型LEDパッケージの構成要素であり、ワイヤーボンディング実装の形態の場合の概略断面図(図1〜図3)を用いて説明することができる。
【0039】
図1及び図2の表面実装型LEDパッケージ1は、LED実装用基板11aと、リフレクター12と、LED素子13と、電極14と、LED素子13及び電極14を接続するリード線15と、透明封止部(又は空隙部)16と、レンズ17とを備える。
【0040】
<LED実装用基板>
本発明のLED実装用基板の形状は、通常、角形、円形等の平板状である。断面形状は、一様に平坦であってよいし、LED素子を配設する側の面には、目的、用途等に応じて凹部、凸部、貫通孔等を備えてもよい。例えば、図1によると、基板11aの一方の面に凹部を備え、この凹部の底面にLED素子13を配設している。
また、上記基板11aの、LED素子13が配設されていない側の面には、表面積を大きくすることにより放熱性を改良する等のために、溝等が設けられていてもよい。
【0041】
本発明のLED実装用基板は、複数のLED素子を備えることができる大型の基板であってもよいが、1つのLED素子を備えることができる小型の基板であってもよい。従って、本発明のLED実装用基板の大きさは、目的、用途等に応じて選択される。
また、本発明のLED実装用基板の厚さ(凹部、凸部等を備えない部分の厚さ)は、目的、用途等に応じて選択される。
【0042】
図1及び図2の表面実装型LEDパッケージ1は、LED実装用基板11aと、発光したLED素子13の周りに光を所定方向に反射させるリフレクター12とを別々に準備し、それぞれ配設した態様であるが、図3に示すような態様とすることもできる。即ち、図3の表面実装型LEDパッケージ1は、リフレクター部12bを備えるLED実装用基板11bと、LED素子13と、電極14と、LED素子13及び電極14を接続するリード線15と、透明封止部(又は空隙部)16と、レンズ17とを備える態様である。尚、リフレクター部12bの形状等については、図1及び図2におけるリフレクター12と同様であり、後述の「2−2.リフレクター」において説明する。
【0043】
図3から明らかなように、本発明のLED実装用基板は、図1でいうLED実装用基板11a及びリフレクター12が連続相となっているLED実装用基板(リフレクター部12bを備えるLED実装用基板)11bとすることもできる。このリフレクター部を備えるLED実装用基板11bであれば、従来の製造方法に比べ、少ない部品点数、少ない製造工程により表面実装型LEDパッケージを得ることができ、性能面及びコスト面において優れる。即ち、従来の表面実装型LEDパッケージ3の一例である図5は、金属アルミニウム等の金属製基板11cにLED素子配設用の絶縁性台座18を積層し、その台座18上にLED素子13を配設後、更に、LED素子13の周りにポリフタルアミド等を含むリフレクター12を配設することにより製造されていた。しかしながら、上記LED実装用基板11bによると、加工が必要な金属と異なり、上記本発明の放熱性樹脂組成物により容易に所定形状とすることができ、絶縁性台座18を配設する必要がなく、また、リフレクターを配設する必要もない。
【0044】
<リフレクター(リフレクター部)>
本発明のリフレクター12は、本発明のLED実装用基板11aと組み合わせて用いてよいし、他の材料からなるLED実装用基板と組み合わせて用いてもよい。
本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bは、主として、その内面において、LED素子13からの光をレンズ17の方へ反射させる作用を有する。
【0045】
これらの形状は、通常、レンズ17の端部(接合部)の形状に準じており、通常、角形、円形、楕円形等の筒状である。図1及び図2の概略断面図においては、リフレクター12は、いずれも、筒状体であり、図1においては、リフレクター12の端部122(図面の右側)がLED実装用基板11aに接触、固定されており、リフレクター12の端部121(図面の左側)がLED実装用基板11aの側面に接触、固定されている。一方、図2においては、リフレクター12のすべての端面がLED実装用基板11aの表面に接触、固定されている。尚、本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bの内面は、LED素子13からの光の指向性を高めるために、テーパー状に上方に広げられていてもよい(図2参照)。
【0046】
また、本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bは、レンズ17側の端部を、レンズ17の形状に応じた形に加工された場合には、レンズホルダーとしても機能させることができる。
【0047】
本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bは、目的、用途等に応じて凹部、凸部、貫通孔等を備えてもよい。例えば、図1によると、リフレクター121には貫通孔を備え、この貫通孔を通じて電極14を配設している。
【0048】
また、本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bは、上記本発明の放熱性樹脂組成物が高い白色度を有する場合には、発光したLED素子の光に対する高い反射特性を得ることができるが、更に高い反射特性を得るために、内壁面に、光反射層を形成したものであってもよい。上記光反射層の厚さは、熱抵抗を低くする等の観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
【0049】
<表面実装型LEDパッケージ>
本発明のLED実装用基板及びリフレクターを用いて、図1〜図3のような、ワイヤーボンディング実装形態の表面実装型LEDパッケージを容易に得ることができる。
LED素子13は、放射光(一般に、白色光LEDにおいてはUV又は青色光)を放出する、例えば、AlGaAs、AlGaInP、GaP又はGaNからなる活性層を、n型及びp型のクラッド層により挟んだダブルヘテロ構造を有する半導体チップ(発光体)であり、例えば、一辺の長さが0.5mm程度の六面体の形状をしている。尚、上記のように、ワイヤーボンディング実装の形態でない場合には、リード線15を用いず、バンプを介して、LED素子13の近くに配設された配線パターンにフリップチップ実装される形態とすることができる。
電極14は、駆動電圧を供給する接続端子であり、本発明のリフレクター12、又は、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bに設けられた貫通孔等を通して配設されている。
リード線15は、LED素子13と電極14とを電気的に接続するものであり、透明封止部16を有する場合には、この透明封止部16中に埋設されている。
レンズ17は、通常、樹脂製であり、目的、用途等により様々な構造とすることができ、着色されていてもよい。
【0050】
また、図1〜図3における符号16は、透明封止部であってよいし、必要により空隙部であってもよい。通常は、透光性及び絶縁性を与える材料が充填された透明封止部であり、ワイヤーボンディング実装において、リード線15に直接接触することにより加わる力、及び、間接的に加わる振動、衝撃等により、LED素子13との接続部、及び/又は、電極14との接続部からリード線15が外れたり、切断したり、短絡したりすることによって生じる電気的な不具合を防止することができる。また、同時に、湿気、塵埃等からLED素子13を保護し、長期間に渡って信頼性を維持することができる。
この透光性及び絶縁性を与える材料の主成分としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。尚、上記透明封止部は、必要に応じて、LED素子から発せられた光の波長を所定の波長に変換する、無機系及び/又は有機系の蛍光物質を含んでもよい。
【0051】
以下に、ワイヤーボンディング実装形態の表面実装型LEDパッケージ(図1)の製造方法の一例について説明する。
先ず、上記本発明の放熱性樹脂組成物を、所定形状のキャビティ空間を備える金型を用いた射出成形等により、凹部を有する平板状のLED実装用基板11a、及び、筒状であり且つ電極14を内面から外面に嵌挿可能な貫通孔を有するリフレクター12を成形する。その後、別途、準備したLED素子13、電極14及びリード線を、接着剤又は接合部材によりLED実装用基板11a及びリフレクター12に固定する。次いで、LED実装用基板11a及びリフレクター12により形成された凹部に、シリコーン系樹脂等を含む透明封止剤組成物を入れ、乾燥する等により硬化させて透明封止部16とする。その後、透明封止部16の上にレンズ17を配設して、図1に示す表面実装型LEDパッケージが得られる。
【0052】
<LED照明装置>
本発明のLED実装用基板を有する表面実装型LEDパッケージ、本発明のリフレクターを有する表面実装型LEDパッケージ、又は、本発明の、リフレクター部を備えるLED実装用基板を有する表面実装型LEDパッケージを用いて、LED照明装置とすることができる。図1の表面実装型LEDパッケージを用いたLED照明装置の概略断面図を図4に示す。
【0053】
図4のLED照明装置2は、2つの表面実装型LEDパッケージを備える態様であり、図1の表面実装型LEDパッケージと、このパッケージを構成する電極14と、LED素子を発光させるためのバイアス電圧印加用電源(図示せず)とを接続する配線パターン22と、この配線パターン22を含む照明装置用基板21と、を備える。更に、これらの表面実装型LEDパッケージ及び照明装置用基板21を覆うためのハウジングを備えてもよい。
【0054】
照明装置用基板21の構成は、特に限定されないが、例えば、図4のように、基板211(好ましくは樹脂製絶縁放熱板)及び基板212(好ましくは樹脂製絶縁放熱板)の2層型とし、基板211が配線パターンを含む態様とすることができる。尚、図4においては、(図1の)表面実装型LEDパッケージが、放熱性及び絶縁性に優れたLED実装用基板11aを備えることから、基板211及び基板212における、上記LED実装用基板11aの下方の部分は、貫通孔とする等開口させている。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0056】
以下の実施例及び比較例で用いた組成物の原料成分を示す。
【0057】
(1)ナイロン4,6(PA46):DSM社製「STANYL TS300」(96%硫酸1g/dlでの相対粘度3.0)
(2)窒化ホウ素:電気化学工業社製「デンカボロンナイトライド粉末SGP」(六方晶構造、平均粒径18.0μm、比表面積2m/g、D10=5.4μm、D90=41.6μm、D90/D10=7.7)
(3)酸化チタン(着色剤):石原産業社製「タイペークPF691」
【0058】
実施例1〜3及び比較例1〜2:
表1に示す割合で樹脂成分と熱伝導性フィラー(窒化ホウ素)等をミキサーに投入して5分間混合した後、押出機(「BT−40−S2−30−L型」、プラスチック工学研究所製)を用い、弱練りタイプのスクリューを用い、スクリュー回転数100rpm及びシリンダー温度310℃で溶融混練押出し、ペレット(放熱性樹脂組成物)を得た。
【0059】
上記で得られたペレットを用い、下記評価項目に関する試験を行った。その結果を表1に示した。
【0060】
(1)熱放射率:
放熱性樹脂組成物からなるペレットを用い、射出成形(金型温度;120℃)にて大きさ150×150×3mmの試験片を作製し、サーモスポットセンサー(「TSS−5X型」、ジャパンセンサー社製)を用い、赤外線検出による反射エネルギー測定方式により、雰囲気温度25℃で測定した。
【0061】
(2)熱伝導率(単位;W/(m・K)):
放熱性樹脂組成物からなるペレットを用い、その溶融物を、直径10mm及び長さ50mmのキャビティ空間を有する金型(金型温度;120℃)の下方から射出して、直径10mm及び長さ50mmの円柱体を作製した。その後、ほぼ中央部において、厚さが1.5mmの円板となるように切り出し、これを試験片(直径10mm及び厚さ1.5mm)とした。熱伝導率を放熱性樹脂組成物の流動方向に対して測定するために、この試験片における、上面及び下面の各表面にプローブを当て、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(「TR−7000R型」、アルバック理工社製)を用い、25℃で測定した。
【0062】
(3)荷重たわみ温度:
ISO 75(荷重1.80MPa)に従って測定した。
【0063】
(4)シャルピー衝撃強度(単位;kJ/m):
ISO179に準じて、ノッチ付きのデータを測定した。
【0064】
(5)表面固有抵抗(単位;Ω):
放熱性樹脂組成物からなるペレットを用い、射出成形(金型温度;120℃)にて直径200mm及び厚さ2mmの円形の試験片を作製し、ハイ・レジスタンス・メータ(「4339B型」、Agilent Technologies社製)を用いて測定した。
【0065】
(6)光線反射率:
上記(2)の試験片を用い、紫外線(波長460nm)に対する反射率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V−670型」)により入射角60度で測定した。

【0066】
(7)吸水率:
射出成形により、直径50mm×厚み3.2mmに成形した絶乾状態の試料を、23℃水中に24時間浸漬した後の重量の増加を測定した。
【0067】
(8)絶縁破壊特性:
放熱性樹脂組成物からなるペレットを用い、射出成形(金型温度;120℃)にて大きさ100×100×1mmの試験片を作製し、23℃、相対湿度62%の恒温恒湿槽で48時間調整し、ASTM D 149に準じて測定した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1より次のことが明らかである。すなわち、比較例1は窒化ホウ素の使用量が本発明の範囲未満のため、熱放射率および熱伝導率が低く、放熱性が劣る。比較例2は窒化ホウ素の使用量が本発明の範囲を超えているため、耐衝撃性が劣る。これに対し、実施例1〜3は、熱放射率および熱伝導率が高く、放熱性および耐衝撃性に優れる。

【0070】
試験例1:
実施例1の放熱性樹脂組成物を用いて、上記(8)にて作製した試験片4の表面の中央部に、円形のシリコーンラバーヒーター(直径40mm)5を載置し、印加電圧10V及びワット密度0.5W/cmの条件で一定の電流を流し、加熱した(図6参照)。10分後に中央位置の温度を測定したところ、55℃であった。また、同時に、図6における左上の「X」の位置にて温度を測定したところ、48℃であった。一方、比較例2の放熱性樹脂組成物を用い上記と同様に行ったところ、中央位置の温度は71℃、「X」位置の温度は25℃であった。この結果より、本発明の放熱性樹脂組成物は放熱性に優れていることが明らかである。
【0071】
以上説明した通り、本発明の放熱性樹脂組成物は、LED照明装置の構成部材であって、放熱性、絶縁性又は耐熱性を要求される部材の形成に好適である。従って、LED実装用基板、リフレクター等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のLED実装用基板及びリフレクターを備える表面実装型LEDパッケージの断面構造の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のLED実装用基板及びリフレクターを備える表面実装型LEDパッケージの断面構造の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明のLED実装用基板(リフレクター部を備えるLED実装用基板)を備える表面実装型LEDパッケージの断面構造の他の例を示す概略図である。
【図4】表面実装型LEDパッケージを備えるLED照明装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【図5】従来の表面実装型LEDパッケージの断面構造の一例を示す概略図である。
【図6】試験例1における試験方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1;表面実装型LEDパッケージ
11a;LED実装用基板
11b;リフレクター部を備えるLED実装用基板
11c;金属製LED実装用基板
12;リフレクター
12b;リフレクター部
13;LED素子
14;電極
15;リード線
16;透明封止部(又は空隙部)
17;レンズ
18;絶縁性台座
2;LED照明装置
21;照明装置用基板
22;配線パターン
3;従来の表面実装型LEDパッケージ
4;放熱性評価用試験片
5;シリコーンラバーヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラメチレンアジパミド及び窒化ホウ素を含有し、前者の割合が15〜95質量%、後者の割合が5〜85質量%(但し、両者の合計量は100質量%)であることを特徴とする放熱性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリテトラメチレンアジパミド及び窒化ホウ素の合計100質量部に対し、着色剤0.05〜30質量部を配合して成る請求項1に記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項3】
熱伝導率が2.0(w/m・K)以上、熱変形温度が260(℃)以上、熱放射率が0.7以上、シャルピー衝撃強度が2.0(kJ/m)以上である請求項1に記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の放熱性樹脂組成物から成ることを特徴とするLED実装用基板。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の放熱性樹脂組成物から成ることを特徴とするリフレクター。
【請求項6】
請求項5に記載のリフレクターを備えていることを特徴とするLED実装用基板。
【請求項7】
請求項1〜3の何れかに記載の放熱性樹脂組成物から成ることを特徴とする表面実装部品用成形材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−167358(P2009−167358A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9733(P2008−9733)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】