説明

放熱部品

【課題】本発明は、発熱電子部品の放熱対策に用いられる放熱部品に関して、放熱効率をさらに高めることを目的とする。
【解決手段】放熱部品6を複数のグラファイトシート7から構成し、複数のグラファイトシート7を重畳した重畳領域9を熱移送部12および受熱部11として、グラファイトシート7間に所定の空間を設けた分離領域10を放熱部13とするとともに、分離領域10において分離空間の形状を維持する形状維持手段8を設け、この形状維持手段8を樹脂からなる薄板状部材で形成した構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発熱電子部品の放熱対策に用いられる放熱部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にノート型パソコンに用いられるICなどの発熱電子部品はその温度上昇に伴いそれらを用いた電子機器に対して悪影響を及ぼしてしまうため、その放熱対策として発熱電子部品とそのヒートシンクなる部材との間に熱伝導シートが設けられている。
【0003】
そして、発熱電子部品を用いた電子機器の小型化が進められる中、熱伝導部材自体をヒートシンクとしての役割を付加する形態として、図6に示されるようにグラファイトシート1の先端部分にスリット2を形成しその表面積を増すことにより、グラファイトシート1による放熱機能を確保する構造が提案されている。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平7−109171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノート型パソコンのICに代表されるように発熱電子部品を搭載する電子機器の高機能化や薄型化が進む中、発熱電子部品の発熱量の増大や発熱電子部品から機器表面との間隔が狭くなるといった種々の要因から、放熱部品にさらなる放熱特性が要求されるようになり、先に述べた放熱構造では十分な対応が困難なものとなっていた。
【0006】
そこで、本発明はグラファイトシートを用いた放熱部品の放熱効率をさらに高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、特に複数のグラファイトシートからなり、複数のグラファイトシートを重畳した重畳領域を熱移送部あるいは受熱部として、グラファイトシート間に所定の空間を設けた分離領域を放熱部とするとともに、分離領域において分離空間の形状を維持する形状維持手段を設け、形状維持手段を樹脂からなる薄板状部材で形成した構造としたのである。
【発明の効果】
【0008】
この構成によれば、複数のグラファイトシートを重畳したことにより、この重畳領域における熱移送効率や熱分散効率が高められ、また放熱部となる分離領域における表面積を確保できるとともに、分離領域における空間形状が形状維持手段により維持されることにより放熱特性の安定化が図られるので、結果として放熱部品の放熱効率をさらに高めることが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図を用いながら説明する。
【0010】
図1は本発明の放熱部品6の断面を示したもので、図2に示されるようにノート型パソコンに用いられるICなどの発熱電子部品3から局所的に生じた熱を電子機器内における実装基板4上に実装された他の電子部品5の密集度が低く放熱性の高い領域へ放熱部品6を介して拡散させながら放熱する構造となっており、ノート型パソコンのように電子機器自体が薄型化や高機能化のため、電子機器内にヒートシンクを設け難くなってきた状況において、従来の発熱電子部品3とヒートシンクとの熱伝達に用いられていた熱伝導部材に放熱構造を取り入れたものである。
【0011】
そして、この放熱部品6は図1に示されるように複数のグラファイトシート7と、このグラファイトシート7の形状を維持する形状維持手段8とからなり、複数のグラファイトシート7を重畳した重畳領域9と、重畳方向において扇型に拡開させ隣接するグラファイトシート7間に所定の空間を設けた分離領域10とで構成されている。
【0012】
なお、グラファイトシート7としてはポリイミド等の高分子樹脂シートを1200度以上の温度で炭化させ、その後、2600度以上の温度でグラファイト化し、図3に示されるよう炭素が2次元的に密に結合した炭素層の多層構造体とし、炭素の結合面内において高い熱伝導特性を示すものや、膨張黒鉛をシート状に成形したものや、グラファイトファイバーをシート状に成形したものなどが挙げられる。
【0013】
そして、この放熱部品6は重畳領域9を図2に示されるよう発熱電子部品3から発せられる局所的な熱を受ける部分を受熱部11とし、受熱した熱を重畳したそれぞれのグラファイトシート7の面内方向に分散させながら分離領域10に熱移送する部分を熱移送部12とし、熱移送部12により熱移送された熱を外部に放出する部分を放熱部13とした構造としている。
【0014】
すなわち、図6に示す従来の放熱部品6が単層のグラファイトシート1を用いて熱移送および放熱を行っていた構造であるのに対し、図1に示す放熱部品6が複数のグラファイトシート7を重畳した構成であることから熱移送効率や熱分散効率が向上したものとなり、さらに放熱部13においては、図6に示す従来のものが単層のグラファイトシート1にスリット2を形成しその表面積を確保したものに比べ、図1に示すものが複数のグラファイトシート7の表面をそれぞれ空間に露出させた構造となるため、放熱部13におけるグラファイトシート7の露出面積を確保でき放熱効率を向上させたものとなっている。
【0015】
なお、グラファイトシート7はそれ自体が非常に柔らかいものであるため、放熱部13を形成する分離領域10において、隣接するグラファイトシート7間の空間を維持しグラファイトシート7同士が当接することで露出面が減少することを抑制することが重要となるため、この放熱部13においては形状維持手段8が設けられている。
【0016】
また、具体的な形状維持手段8としては図1に示されるような予め予定形状に屈曲させた樹脂からなる薄板状部材を用いて、この薄板状部材をグラファイトシート7を貼り付けることで容易に放熱部品を形成することが出来るのである。
【0017】
さらに、放熱部品6の形状としても図4に示されるように放熱部13においてグラファイトシート7を順次屈曲させ放熱フィンのような形状とすることや、図5に示されるように放熱部13の両端側部分に形状維持手段8となる薄板状部材を設け、この放熱部の両端側を実質的に外部筐体などの構造体に固定する構造が考えられる。
【0018】
なお、前者となる図4に示された放熱部13をグラファイトシート7を順次屈曲させた構造では、電子機器内の空き領域に応じたフィン形状を実現できることから、電子機器内の空き領域を有効に活用でき、後者となる図5に示された放熱部13の両端側部分に形状維持手段8となる薄板状部材を設けた構造では、多層状となったグラファイトシート7の厚みをもって放熱空間をも構成できるため、特に低背化要望の強い電子機器において有効に活用できるのである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、発熱電子部品の放熱対策に用いられる放熱部品に関し、放熱部品の放熱効率をさらに高められるという効果を有し、特に発熱電子部品を要する電子機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における放熱部品の断面図
【図2】同放熱部品を用いた電子機器の内部構造の模式図
【図3】同放熱部品を構成するグラファイトシートの構造を示す模式図
【図4】他の実施形態における放熱部品の断面図
【図5】さらに他の実施形態における放熱部品の断面図
【図6】従来の放熱部品の斜視図
【符号の説明】
【0021】
7 グラファイトシート
8 形状維持手段
9 重畳領域
10 分離領域
12 熱移送部
13 放熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグラファイトシートからなり、前記複数のグラファイトシートを重畳した重畳領域と、前記グラファイトシート間に所定の空間を設けた分離領域とを設け、前記重畳領域を熱移送部あるいは受熱部として、前記分離領域を放熱部とするとともに、前記分離領域に分離空間の形状を維持する形状維持手段を設け、前記形状維持手段を樹脂からなる薄板状部材で形成したことを特徴とする放熱部品。
【請求項2】
形状維持手段をグラファイトシートの略全面に設けたことを特徴とする請求項1に記載の放熱部品。
【請求項3】
形状維持手段を分離領域の両端側に設けたことを特徴とする請求項1に記載の放熱部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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