説明

放送システム及び冗長構成補償方法

【課題】第1又は第2の制御装置に障害が発生した場合であっても、冗長構成を維持可能な放送システム及び冗長構成補償方法を提供する。
【解決手段】放送システムは、第1及び第2の制御装置、第1及び第2の素材サーバ、切替分岐装置、現用系伝送装置、予備系伝送装置及び切替選択装置を具備する。第1及び第2の制御装置は、互いの状態を監視する。第1の制御装置は、第2の制御装置に障害が発生した場合、切替分岐装置に第1の素材サーバからの第1の素材データを分岐させ、現用系伝送装置及び予備系伝送装置へ出力させ、予備系伝送装置に第1の素材データに基づいて予備系データを作成させる。第2の制御装置は、第1の制御装置に障害が発生した場合、切替分岐装置に第2の素材サーバから供給される第2の素材データを分岐させ、現用系伝送装置及び予備系伝送装置へ出力させ、現用系伝送装置に第2の素材データに基づいて現用系データを作成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冗長構成を採り、現用系装置から出力されるデータ又は予備系装置から出力されるデータのいずれか一方を出力する放送システム、及び、この放送システムで用いられる冗長構成補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放送システムは、素材サーバ、現用系伝送装置、予備系伝送装置、切替選択装置、第1の制御装置及び第2の制御装置を具備する。素材サーバは、素材データを記録しており、第1及び第2の制御装置により指定された素材データを出力する。
【0003】
放送システムは、可用性を高めるために現用系伝送装置と予備系伝送装置とに2重化されている。現用系伝送装置及び予備系伝送装置は、出力された素材データに基づいて現用系データ及び予備系データをそれぞれ作成する。切替選択装置は、現用系伝送装置に障害がある場合、予備系伝送装置に出力を切り替える。
【0004】
第1の制御装置は、番組表に従い、素材サーバ及び現用系伝送装置に対して現用系伝送制御を行うことで、素材サーバに素材データを出力させ、現用系伝送装置に現用系データを作成させる。第2の制御装置は、番組表に従い、素材サーバ及び予備系伝送装置に対して予備系伝送制御を行うことで、素材サーバに素材データを出力させ、予備系伝送装置に予備系データを作成させる。
【0005】
しかしながら、第1及び第2の制御装置は、現用系伝送装置及び予備系伝送装置に対して1つずつしか設置されていないため、例えば、第2の制御装置に障害が発生した場合、素材サーバ及び予備系伝送装置を制御する装置が不在となる。このため、予備系伝送装置自体は正常であるにも関らず、予備系伝送装置を運用できない状態となってしまう。そして、第2の制御装置に障害が発生した状態で、現用系伝送装置に障害が発生した場合、放送システムの運用を継続できなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−269864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来の放送システムでは、第1又は第2の制御装置に障害が発生すると、現用系伝送装置又は予備系伝送装置を制御する装置が不在となり、冗長構成が成立しなくなるという問題がある。
【0008】
そこで、目的は、第1又は第2の制御装置に障害が発生した場合であっても、冗長構成を維持可能な放送システム及びこの放送システムで用いられる冗長構成補償方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、放送システムは、第1及び第2の制御装置、第1及び第2の素材サーバ、切替分岐装置、現用系伝送装置、予備系伝送装置及び切替選択装置を具備する。第1の制御装置は、番組表に記載される放送イベントが放送されるように、現用系データを作成するための第1の現用系伝送制御を行う。第2の制御装置は、前記現用系データと同一内容の予備系データを作成するための第1の予備系伝送制御を行う。第1の素材サーバは、素材データを記録しており、前記第1の現用系伝送制御に応じ、前記記録している素材データを第1の素材データとして出力する。第2の素材サーバは、素材データを記録しており、前記第1の予備系伝送制御に応じ、前記記録している素材データを第2の素材データとして出力する。切替分岐装置は、前記第1の素材データと、前記第2の素材データとを受け取り、前記受け取った第1及び第2の素材データをそれぞれ別の出力先へ出力する。現用系伝送装置は、前記第1の現用系伝送制御に従い、前記切替分岐装置から出力される第1の素材データに基づいて前記現用系データを作成する。予備系伝送装置は、前記第1の予備系伝送制御に従い、前記切替分岐装置から出力される第2の素材データに基づいて前記予備系データを作成する。切替選択装置は、前記現用系データ及び前記予備系データのうち、何れかのデータを出力する。そして、前記第1及び第2の制御装置は、互いの状態をそれぞれ監視する。前記第1の制御装置は、前記第2の制御装置に障害が発生した場合、前記切替分岐装置に前記第1の素材データを分岐させ、前記分岐させた第1の素材データを前記現用系伝送装置及び前記予備系伝送装置へ出力させる第1の分岐制御と、前記予備系伝送装置に前記第1の素材データに基づいて予備系データを作成させる第2の予備系伝送制御とを行う。前記第2の制御装置は、前記第1の制御装置に障害が発生した場合、前記切替分岐装置に前記第2の素材データを分岐させ、前記分岐させた第2の素材データを前記現用系伝送装置及び前記予備系伝送装置へ出力させる第2の分岐制御と、前記現用系伝送装置に前記第2の素材データに基づいて現用系データを作成させる第2の現用系伝送制御とを行う。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る放送システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1の第1の制御装置の監視動作についての処理を示すフローチャートである。
【図3】図1の第2の制御装置の監視動作についての処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る放送システムの機能構成を示すブロック図である。図1に示す放送システムは、第1及び第2の素材サーバ11,12、切替分岐装置13、現用系伝送装置14、予備系伝送装置15、第1及び第2の切替選択装置16,17、第1及び第2の制御装置18,19及び監視装置110を具備する。
【0013】
第1の素材サーバ11は、複数の番組素材及びCM素材等の素材データを記録している。第1の素材サーバ11は、第1の制御装置18から与えられる第1の現用系伝送制御に従って素材データを読み出し、読み出した素材データを第1の素材データとして切替分岐装置13へ出力する。
【0014】
第2の素材サーバ12は、第1の素材サーバに記録される素材データと同様の素材データを記録している。第2の素材サーバ12は、第2の制御装置19から与えられる第1の予備系伝送制御に従って素材データを読み出し、読み出した素材データを第2の素材データとして切替分岐装置13へ出力する。
【0015】
切替分岐装置13は、第1の素材サーバ11からの第1の素材データと、第2の素材サーバ12からの第2の素材データとの出力先を、第1及び第2の制御装置18,19から与えられる制御に従って決定する。すなわち、第1の制御装置18から第1の分岐制御が与えられず、かつ、第2の制御装置19から第2の分岐制御が与えられない場合、切替分岐装置13は、第1の素材データを現用系伝送装置14へ出力し、第2の素材データを予備系伝送装置15へ出力する。また、第1の制御装置18から第1の分岐制御が与えられる場合、切替分岐装置13は、第1の素材データを分岐し、分岐した第1の素材データを現用系伝送装置14及び予備系伝送装置15へ出力する。また、第2の制御装置19から第2の分岐制御が与えられる場合、切替分岐装置13は、第2の素材データを分岐し、分岐した第2の素材データを現用系伝送装置14及び予備系伝送装置15へ出力する。
【0016】
現用系伝送装置14は、ベースバンド伝送装置141及びストリーム伝送装置142を含む。
【0017】
ベースバンド伝送装置141は、切替分岐装置13から供給される第1の素材データに、第1の制御装置18により指定されるタイムスーパー等の効果を施して第1の切替選択装置16へ出力する。また、第1の制御装置18に障害が発生している場合には、ベースバンド伝送装置141は、切替分岐装置13から供給される第2の素材データに、第2の制御装置19により指定されるタイムスーパー等の効果を施して第1の切替選択装置16へ出力する。
【0018】
ストリーム伝送装置142は、第1の切替選択装置16から供給されるデータを、第1の制御装置18からの指示に応じて、予め設定された符号化方式に基づいて符号化する。ストリーム伝送装置142は、符号化することにより得られたストリームデータを第2の切替選択装置17へ出力する。また、第1の制御装置18に障害が発生している場合には、ストリーム伝送装置142は、第1の切替選択装置16から供給されるデータを、第2の制御装置19からの指示に応じて、予め設定された符号化方式に基づいて符号化する。
【0019】
予備系伝送装置15は、ベースバンド伝送装置151及びストリーム伝送装置152を含む。
【0020】
ベースバンド伝送装置151は、切替分岐装置13から供給される第2の素材データに、第2の制御装置19により指定されるタイムスーパー等の効果を施して第1の切替選択装置16へ出力する。また、第2の制御装置19に障害が発生している場合には、ベースバンド伝送装置151は、切替分岐装置13から供給される第1の素材データに、第1の制御装置18により指定されるタイムスーパー等の効果を施して第1の切替選択装置16へ出力する。
【0021】
ストリーム伝送装置152は、第1の切替選択装置16から供給されるデータを、第2の制御装置19からの指示に応じて、予め設定された符号化方式に基づいて符号化する。ストリーム伝送装置152は、符号化することにより得られたストリームデータを第2の切替選択装置17へ出力する。また、第2の制御装置19に障害が発生している場合には、ストリーム伝送装置152は、第1の切替選択装置16から供給されるデータを、第1の制御装置18からの指示に応じて、予め設定された符号化方式に基づいて符号化する。
【0022】
第1の切替選択装置16は、監視装置110から与えられる切替制御に応じ、ベースバンド伝送装置141から供給されるデータを、ストリーム伝送装置142,152のいずれか一方へ出力する。また、第1の切替選択装置16は、監視装置110から与えられる切替制御に応じ、ベースバンド伝送装置151から供給されるデータを、ストリーム伝送装置142,152のいずれか一方へ出力する。
【0023】
第2の切替選択装置17は、監視装置110から与えられる切替制御に応じ、ストリーム伝送装置142,152から供給されるストリームデータのうち、いずれか一方を出力する。
【0024】
第1の制御装置18は、例えば自動番組送出制御装置(図示せず)から番組表を供給される。番組表には、番組及びCM等の放送イベントが放送される時刻順に並んで記載されている。第1の制御装置18は、番組表に記載される放送イベントが、番組表に記載される時刻に放送されるように、第1の素材サーバ11及び現用系伝送装置14に対して、第1の現用系伝送制御を行う。
【0025】
第1の現用系伝送制御では、第1の制御装置18は、番組表に記載される時刻に応じたタイミングで、番組表に記載される放送イベントについての素材データを読み出すように、第1の素材サーバ11に対して指示を出す。また、第1の現用系伝送制御では、第1の制御装置18は、タイムスーパー等の効果を施して第1の素材データを出力するように、ベースバンド伝送装置141に対して指示を出す。また、第1の現用系伝送制御では、第1の制御装置18は、第1の切替選択装置16から出力される素材データを符号化するように、ストリーム伝送装置142に対して指示を出す。
【0026】
また、第1の制御装置18は、第2の制御装置19の状態を監視することで、第2の制御装置19の生存確認を行う。例えば、第1の制御装置18は、ハートビートチェックにより、第2の制御装置19の生存確認を行う。ハートビートチェックでは、第1の制御装置18は、第2の制御装置19からのイベント通知が予め設定された一定周期で繰り返し受信されているか否かを判断し、一定周期を超えてもイベント通知が受信されない場合に、第2の制御装置19に障害が発生したと判断する。第2の制御装置19に障害が発生したと判断した場合、第1の制御装置18は、予備系伝送装置15に対して第2の予備系伝送制御を行うと共に、切替分岐装置13に対して第1の分岐制御を行う。
【0027】
第2の予備系伝送制御では、第1の制御装置18は、タイムスーパー等の効果を施して第1の素材データを出力するように、ベースバンド伝送装置151に対して指示を出す。また、第2の予備系伝送制御では、第1の制御装置18は、第1の切替選択装置16から出力される素材データを符号化するように、ストリーム伝送装置152に対して指示を出す。また、第1の分岐制御では、第1の制御装置18は、切替分岐装置13に対して、第1の素材サーバ11からの第1の素材データを分岐し、分岐した第1の素材データを現用系伝送装置14及び予備系伝送装置15へ出力するように指示を出す。
【0028】
第2の制御装置19は、例えば自動番組送出制御装置(図示せず)から番組表を供給される。第2の制御装置19は、番組表に記載される放送イベントが、番組表に記載される時刻に放送されるように、第2の素材サーバ12及び予備系伝送装置15に対して、第1の予備系伝送制御を行う。
【0029】
第1の予備系伝送制御では、第2の制御装置19は、番組表に記載される時刻に応じたタイミングで、番組表に記載される放送イベントについての素材データを読み出すように、第2の素材サーバ12に対して指示を出す。また、第1の予備系伝送制御では、第2の制御装置19は、タイムスーパー等の効果を施して第2の素材データを出力するように、ベースバンド伝送装置151に対して指示を出す。また、第1の予備系伝送制御では、第2の制御装置19は、番組表に記載される時刻に応じたタイミングで、第1の切替選択装置16から出力される素材データを符号化するように、ストリーム伝送装置152に対して指示を出す。
【0030】
また、第2の制御装置19は、第1の制御装置18の状態を監視することで、第1の制御装置18の生存確認を行う。例えば、第2の制御装置19は、ハートビートチェックにより、第1の制御装置18の生存確認を行う。第1の制御装置18に障害が発生したと判断した場合、第2の制御装置19は、現用系伝送装置14に対して第2の現用系伝送制御を行うと共に、切替分岐装置13に対して第2の分岐制御を行う。
【0031】
第2の現用系伝送制御では、第2の制御装置19は、タイムスーパー等の効果を施して第2の素材データを出力するように、ベースバンド伝送装置141に対して指示を出す。また、第2の現用系伝送制御では、第2の制御装置19は、番組表に記載される時刻に応じたタイミングで、第1の切替選択装置16から出力される素材データを符号化するように、ストリーム伝送装置142に対して指示を出す。また、第2の分岐制御では、第2の制御装置19は、切替分岐装置13に対して、第2の素材サーバ12からの第2の素材データを分岐し、分岐した第2の素材データを現用系伝送装置14及び予備系伝送装置15へ出力するように指示を出す。
【0032】
監視装置110は、第1及び第2の素材サーバ11,12、ベースバンド伝送装置141,151及びストリーム伝送装置142,152の状態を監視し、これらに障害が発生したか否かを判断する。監視装置110は、第1及び第2の素材サーバ11,12、ベースバンド伝送装置141,151及びストリーム伝送装置142,152の状態に応じて第1及び第2の切替選択装置16,17に対して切替制御を行い、正常なストリームデータが第2の切替選択装置から出力されるようにする。
【0033】
例えば、ベースバンド伝送装置141に障害が発生した場合、監視装置110は、ベースバンド伝送装置151から供給されるデータをストリーム伝送装置142へ出力するように第1の切替選択装置16を切り替える。また、必要に応じて、ストリーム伝送装置142から供給されるデータを後段へ出力するように第2の切替選択装置17を切り替える。また、ストリーム伝送装置142に障害が発生した場合、監視装置110は、ストリーム伝送装置152から供給されるデータを後段へ出力するように第2の切替選択装置17を切り替える。
【0034】
次に、以上のように構成された放送システムにおいて、第1及び第2の制御装置18,19が互いの動作を補償する際の動作を説明する。
【0035】
図2は、本実施形態に係る第1の制御装置18が第2の制御装置19の状態を監視し、予備系伝送装置15の制御も行うか否かを判断する際の処理を示すフローチャートである。
【0036】
第1の制御装置18は、ハートビートチェックにより、第2の制御装置19に障害が発生したか否かを判断する(ステップS21)。第2の制御装置19に障害が発生していない場合(ステップS21のNo)、第1の制御装置18は、他系制御フラグをオフとしたまま、処理をステップS21へ移行する。
【0037】
第2の制御装置19に障害が発生した場合(ステップS21のYes)、第1の制御装置18は、第1の現用系伝送制御に加えて、第2の予備系伝送制御及び第1の分岐制御を行うように、他系制御フラグをオンとして、処理を終了する(ステップS22)。
【0038】
図3は、本実施形態に係る第2の制御装置19が第1の制御装置18の状態を監視し、現用系伝送装置14の制御も行うか否かを判断する際の処理を示すフローチャートである。
【0039】
第2の制御装置19は、ハートビートチェックにより、第1の制御装置18に障害が発生したか否かを判断する(ステップS31)。第1の制御装置18に障害が発生していない場合(ステップS31のNo)、第2の制御装置19は、他系制御フラグをオフとしたまま、処理をステップS31へ移行する。
【0040】
第1の制御装置18に障害が発生した場合(ステップS31のYes)、第2の制御装置19は、第1の予備系伝送制御に加えて、第2の現用系伝送制御及び第2の分岐制御を行うように、他系制御フラグをオンとして、処理を終了する(ステップS32)。
【0041】
以上のように、本実施形態では、第1及び第2の制御装置18,19は、互いに生存しているか否かを常に監視する。そして、例えば、第1の制御装置18が第2の制御装置19に障害が発生したことを検知した場合、第1の制御装置18は、第1の現用系伝送制御に応じて出力される第1の素材データを分岐して現用系伝送装置14及び予備系伝送装置15へ出力するように、切替分岐装置13に対して第1の分岐制御を行う。また、第1の制御装置18は、第1の分岐制御を行うと共に、障害が発生した第2の制御装置19に代わり、予備系伝送装置15に対して第2の予備系伝送制御を行うようにしている。また、第2の制御装置19が第1の制御装置18に障害が発生したことを検知した場合には、第2の制御装置19は、第1の予備系伝送制御に応じて出力される第2の素材データを分岐して現用系伝送装置14及び予備系伝送装置15へ出力するように、切替分岐装置13に対して第2の分岐制御を行う。また、第2の制御装置19は、第2の分岐制御を行うと共に、障害が発生した第1の制御装置18に代わり、現用系伝送装置14に対して第2の現用系伝送制御を行うようにしている。これにより、第1及び第2の制御装置のいずれかに障害が発生した場合であっても、現用系伝送装置14又は予備系伝送装置15を制御する装置が不在となることはなくなる。
【0042】
また、従来では、第1又は第2の制御装置に障害が発生した場合、障害が発生した制御装置は、素材サーバに対して伝送制御を行うことができない。そのため、第1又は第2の制御装置に障害が発生した場合、現用系伝送装置又は予備系伝送装置へは、素材サーバから素材データが供給されないこととなる。これに対し、本実施形態では、第1又は第2の制御装置18,19のいずれか一方が他方の制御装置に障害が発生したことを検知した場合、検知した制御装置は、切替分岐装置13に対して、受信した素材データを分岐し、分岐した素材データを現用系伝送装置及び予備系伝送装置へ出力させる分岐制御を行うようにしている。これにより、第1又は第2の制御装置18,19に障害が発生し、第1又は第2の素材サーバ11,12から素材データが出力されない場合であっても、現用系伝送装置14及び予備系伝送装置15のいずれにも素材データが供給されることとなる。
【0043】
また、本実施形態に記載される方法とは別の方法として、正常な制御装置が、自身が制御する素材サーバに加え、障害が発生した制御装置が制御する素材サーバも制御するように動作する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、2つの素材サーバ間の同期をとる必要がある。これに対し、本実施形態における放送システムは、切替分岐装置13により、素材データを分岐し、分岐した素材データを現用系伝送装置14及び予備系伝送装置15へ出力するようにしているため、2つの素材サーバ間の同期をとる必要はなく、より単純な処理で効果を得ることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態に記載される方法とは別の方法として、監視装置が、第1及び第2の制御装置の生存を監視し、障害が発生した場合、監視装置が、正常な制御装置に対して、障害が発生した制御装置の処理の一部を代行するように指示を出すという方法も考えられる。しかしながら、この方法では、第1又は第2の制御装置は、監視装置からの指示を待たなければならず、制御装置に発生した障害に対して迅速に対応することができない。これに対し、本実施形態における放送システムは、第1及び第2の制御装置18,19により、互いの生存を監視し合い、一方に障害が発生した場合、正常な制御装置が、故障した制御装置の制御の一部を代行するようにしているため、制御装置に発生した障害に対して迅速に対応することが可能となる。
【0045】
したがって、本実施形態に係る放送システムによれば、第1又は第2の制御装置18,19に障害が発生した場合であっても、冗長構成を維持することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
11…第1の素材サーバ、12…第2の素材サーバ、13…切替分岐装置、14…現用系伝送装置、141,151…ベースバンド伝送装置、142,152…ストリーム伝送装置、15…予備系伝送装置、16…第1の切替選択装置、17…第2の切替選択装置、18…第1の制御装置、19…第2の制御装置、110…監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
番組表に記載される放送イベントが放送されるように、現用系データを作成するための第1の現用系伝送制御を行う第1の制御装置と、
前記現用系データと同一内容の予備系データを作成するための第1の予備系伝送制御を行う第2の制御装置と、
素材データを記録しており、前記第1の現用系伝送制御に応じ、前記記録している素材データを第1の素材データとして出力する第1の素材サーバと、
素材データを記録しており、前記第1の予備系伝送制御に応じ、前記記録している素材データを第2の素材データとして出力する第2の素材サーバと、
前記第1の素材データと、前記第2の素材データとを受け取り、前記受け取った第1及び第2の素材データをそれぞれ別の出力先へ出力する切替分岐装置と、
前記第1の現用系伝送制御に従い、前記切替分岐装置から出力される第1の素材データに基づいて前記現用系データを作成する現用系伝送装置と、
前記第1の予備系伝送制御に従い、前記切替分岐装置から出力される第2の素材データに基づいて前記予備系データを作成する予備系伝送装置と、
前記現用系データ及び前記予備系データのうち、何れかのデータを出力する切替選択装置と
を具備し、
前記第1及び第2の制御装置は、互いの状態をそれぞれ監視し、
前記第1の制御装置は、前記第2の制御装置に障害が発生した場合、前記切替分岐装置に前記第1の素材データを分岐させ、前記分岐させた第1の素材データを前記現用系伝送装置及び前記予備系伝送装置へ出力させる第1の分岐制御と、前記予備系伝送装置に前記第1の素材データに基づいて予備系データを作成させる第2の予備系伝送制御とを行い、
前記第2の制御装置は、前記第1の制御装置に障害が発生した場合、前記切替分岐装置に前記第2の素材データを分岐させ、前記分岐させた第2の素材データを前記現用系伝送装置及び前記予備系伝送装置へ出力させる第2の分岐制御と、前記現用系伝送装置に前記第2の素材データに基づいて現用系データを作成させる第2の現用系伝送制御とを行うことを特徴とする放送システム。
【請求項2】
番組表に記載される放送イベントが放送されるように、現用系データを作成するための第1の現用系伝送制御を行う第1の制御装置と、前記現用系データと同一内容の予備系データを作成するための第1の予備系伝送制御を行う第2の制御装置と、素材データを記録しており、前記第1の現用系伝送制御に応じ、前記記録している素材データを第1の素材データとして出力する第1の素材サーバと、素材データを記録しており、前記第1の予備系伝送制御に応じ、前記記録している素材データを第2の素材データとして出力する第2の素材サーバと、前記第1の素材データと、前記第2の素材データとを受け取り、前記受け取った第1及び第2の素材データをそれぞれ別の出力先へ出力する切替分岐装置と、前記第1の現用系伝送制御に従い、前記切替分岐装置から出力される第1の素材データに基づいて前記現用系データを作成する現用系伝送装置と、前記第1の予備系伝送制御に従い、前記切替分岐装置から出力される第2の素材データに基づいて前記予備系データを作成する予備系伝送装置と、前記現用系データ及び前記予備系データのうち、何れかのデータを出力する切替選択装置とを具備する放送システムで用いられる冗長構成補償方法において、
前記第1及び第2の制御装置が互いの状態をそれぞれ監視し、
前記第1の制御装置が前記第2の制御装置に障害が発生したと判断した場合、前記第1の制御装置により、前記切替分岐装置に前記第1の素材データを分岐させ、前記分岐させた第1の素材データを前記現用系伝送装置及び前記予備系伝送装置へ出力させる第1の分岐制御と、前記予備系伝送装置に前記第1の素材データに基づいて予備系データを作成させる第2の予備系伝送制御とを行い、
前記第2の制御装置が前記第1の制御装置に障害が発生した場合、前記第2の制御装置により、前記切替分岐装置に前記第2の素材データを分岐させ、前記分岐させた第2の素材データを前記現用系伝送装置及び前記予備系伝送装置へ出力させる第2の分岐制御と、前記現用系伝送装置に前記第2の素材データに基づいて現用系データを作成させる第2の現用系伝送制御とを行うことを特徴とする冗長構成補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115696(P2013−115696A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261647(P2011−261647)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】