説明

放送受信装置及びその制御方法

【課題】機器内雷サージ耐性を向上させ、誘導雷の発生時においても視聴中断のない受信環境を確保する。
【解決手段】放送受信装置100は、受信感度の高いアンテナ部101を用いた第1の放送受信手段と、受信感度は劣るが雷サージの影響を受けない内蔵アンテナ部103を用いた第2の放送受信手段を備える。経路切り替え部104は、受信した放送信号の一方を選択するとともに、選択されない方の経路を遮断することで放送信号の経路を切り替えてチューナ部105に送信する。気象情報管理部109は気象情報を取得して雷サージの発生を予測する。通常の受信状態では、システム制御部108の指示に従って経路切り替え部104がアンテナ部101からの放送信号を選択する。また気象情報に基づいて雷サージの発生が予測される場合、システム制御部108の指示に従って経路切り替え部104が内蔵アンテナ部103からの放送信号を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘導雷による雷サージの発生環境において、機器内雷サージ耐性を向上させ、誘導雷の発生時においても継続した受信環境を実現できる放送受信装置及びその制御方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、誘導雷による電子機器の故障が増加している。その原因は落雷等によって機器内の電源ライン、通信ライン上に発生する過渡的な異常電圧や異常電流、いわゆる雷サージである。通常、雷サージ対策としては、各電子機器において雷サージ用対策部品が実装される。しかし、発生した雷サージ電圧が対策部品の耐サージ電圧を超えた場合、対策部品の破壊は勿論、機器内部回路の破壊を引き起こす虞がある。また、発生した雷サージが対策部品の耐サージ性能内であったとしても、複数回の雷サージが発生した場合には対策部品の劣化が考えられ、その結果、機器内部にサージ電流が漏れてしまうという問題がある。
【0003】
一方、放送受信装置において誘導雷による雷サージの流入経路には、次の3つが考えられる。つまり、屋外電源ラインから機器内電源ラインへの経路、屋外モデムラインから機器内モデムラインへの経路、そして、放送受信アンテナから機器内チューナ端子への経路である。これらの経路における従来のサージ対策として、耐サージ電圧や耐重畳回数性能がより優れた部品を実装することや、各ライン上に複数個の対策部品を実装する手法が考えられる。これによって部品サイズは大きくなってしまうが、サージ性能を格段に向上させることが可能である。しかし、アンテナ経路に関する限り、複数の対策部品を実装した場合、受信感度の悪化を引き起こす虞がある。これは、高周波数帯の信号を扱うため、伝送路特性への影響が発生するからである。
上記課題の解決法として、例えば、特許文献1に示す方法が知られている。これは放送受信装置が使用されている地域において、落雷の発生が予測された場合、放送受信装置とアンテナ端子の間の経路を物理的に遮断し、雷サージの侵入経路を絶つ方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−124621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アンテナ経路を物理的に遮断する方法では、アンテナ経路の放送波を装置で受信してユーザが映像を視聴していた場合、不利益を蒙る虞がある。つまり、放送受信装置とアンテナ端子の間の経路を物理的に遮断したのではユーザが映像を全く視聴できなくなってしまうという問題があった。
そこで、本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、機器内雷サージ耐性を向上させ、しかも誘導雷の発生時に継続した受信環境を確保できる放送受信装置及びその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る放送受信装置は、放送信号を受信する第1の放送受信手段と、放送信号を受信する第2の放送受信手段であって、前記第1の放送受信手段に比べて放送信号の受信感度が低くかつ雷サージの影響が少ない第2の放送受信手段と、前記第1及び第2の放送受信手段で受信した放送信号の一方を選択するとともに、選択されない方の経路を遮断することで放送信号の経路を切り替える信号切り替え手段と、雷サージの発生を予測および/または検知するための雷予測・検知手段と、前記雷予測・検知手段により雷サージの発生が予測および/または検知された場合に、前記第2の放送受信手段で受信した放送信号を選択して、前記第1の放送受信手段で受信した放送信号の経路を遮断することで、放送信号の経路を切り替えるように前記信号切り替え手段を制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部環境の変化に対して第1及び第2の放送受信手段を適応的に選択することにより、機器内雷サージ耐性を向上させ、かつ誘導雷時においても継続した受信環境を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放送受信装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図2】第1実施形態において、アンテナ部101から内蔵アンテナ部103への切り替え処理を例示したフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る放送受信装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図4】第2実施形態において、アンテナ部201から内蔵アンテナ部205への切り替え処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る放送受信装置100の機能構成を概略的に示すブロック図である。放送受信装置100は、チューナ端子部102、内蔵アンテナ部103、経路切り替え部104、地上波デジタル放送チューナ部(以下、地デジチューナ部と呼ぶ)105、及びTSデコーダ部106を備える。また、放送受信装置100は、表示部107、システム制御部108、気象情報管理部109、パルスノイズ検出部110、共通バス111を備える。なお、システム制御部108と、気象情報管理部109は共通バス111に繋がっている。
【0010】
アンテナ部101は、屋外アンテナを用いて構成された地上波デジタル放送受信用アンテナであり、後述のチューナ部とともに第1の放送受信手段を構成する。アンテナ部101で受信された放送波(放送信号)は、チューナ端子部102へ送られる。なおアンテナ部101については屋外アンテナに限定されず、ケーブルTVにて配信されるものであってもよい。チューナ端子部102は、アンテナ部101と放送受信装置100の内部ブロックを接続する端子である。
【0011】
内蔵アンテナ部103は後述のチューナ部とともに第2の放送受信手段を構成する。内蔵アンテナ部103は基板上に形成されたパターンアンテナと、受信信号の増幅用アンプから構成され、アンテナ部101と同様、地上波デジタル放送波を受信可能である。内蔵アンテナ部103のアンプは、システム制御部108により通電及び非通電が制御される。
【0012】
経路切り替え部104はリレーによる2入力1出力のメカニカルスイッチで構成されている。経路切り替え部104には、チューナ端子部102又は内蔵アンテナ部103からの信号が入力される。経路切り替え部104を構成するメカニカルスイッチは、この2つの信号のうち、どちらか一方の信号を選択して後段の地デジチューナ部105に送信する。つまり、2つの伝送経路のうちシステム制御部108によって選択された経路が導通状態となり、選択されない方の経路は物理的に遮断される。
【0013】
地デジチューナ部105は、経路切り替え部104からの信号を受けて、ユーザが選択した物理チャンネルに対応する周波数帯域を選択する。そして地デジチューナ部105は、その周波数帯域に対応したOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)ベースバンド信号の抽出を行い、復調処理、復号処理を順に行う。復号処理されたデータはTSデコーダ部106にMPEG2−TS(Moving Picture Image Coding Experts Group Phase 2 - Transport
Stream)データとして出力される。なお前記物理チャンネルの切り替えはシステム制御部108からの指示に従って行われる。
【0014】
TSデコーダ部106は、地デジチューナ部105より受信したMPEG2−TS形式の信号をデコードし、映像信号、音声信号、及び気象情報が含まれたデータ放送用データを生成する。TSデコーダ部106は該データを表示部107及び気象情報管理部109へ出力する。
【0015】
表示部107は、D/Aコンバータ、モニタ制御回路、モニタ(表示パネル)等を有する(それらの図示は省略する)。表示部107は、TSデコーダ部106からのデジタルビデオ信号を受けて、表示パネルに画像を表示する。なお、表示パネルとしては、電子放出素子を有する表示パネル、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネル等を適用すればよい。
【0016】
システム制御部108は、CPU(中央演算処理装置)、プログラムが格納されたROM(読み出し専用メモリ)、ワークRAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成され、共通バス111に接続された各機能ブロックを制御する。放送受信装置100における通常の使用状態では、システム制御部108が経路切り替え部104を制御し、アンテナ部101から信号を受信するように切り替える。これにより、内蔵アンテナ部103の経路と比べて、より高感度での受信が可能である。また、システム制御部108は気象情報管理部109及びパルスノイズ検出部110から雷サージに関する予測信号を受け取った場合、経路切り替え部104を制御し、内蔵アンテナ部103から信号を受信するように切り替える。このときシステム制御部108は、内蔵アンテナ部103のアンプを通電状態にする。
【0017】
気象情報管理部109は、TSデコーダ部106からデータを受け取って気象情報を抽出し、抽出した情報を調べ、ユーザが現在テレビジョン装置を使用している地域の気象情報を把握して落雷の予測情報を得る。予測情報には落雷の発生に関する予測時刻情報も含まれる。
【0018】
パルスノイズ検出部110は検波回路を用いて構成され、信号に含まれるパルス性のノイズを検出する機能を有する。パルスノイズ検出部110は、誘導雷に起因するパルスノイズが発生した場合に、これを検出して、システム制御部108に伝達する。パルスノイズ検出部110による検出結果及び気象情報管理部109による落雷の予測情報を併用することにより、放送受信装置100への雷サージの発生を精度良く予測することが可能となる。
気象情報管理部109とパルスノイズ検出部110は、雷サージの発生を予測および/または検知するための雷予測・検知手段を構成する。
共通バス111は、これに接続された機能ブロック同士の間で、各種データやコマンド(制御情報)を送受信するためのバスである。
【0019】
次に図2のフローチャートを用いて、アンテナ部の切り替え動作について詳細に説明する。
通常の視聴状態では、安定な受信状態を確保するため、アンテナ部101を経由した放送信号の受信経路が選択される。このためシステム制御部108は経路切り替え部104に対して、アンテナ部101の信号を選択するための信号切り替え命令を発行し、信号経路を切り替える(S101)。このとき経路切り替え部104では内蔵アンテナ部103を経由する信号が遮断される。地デジチューナ部105は、経路切り替え部104から信号を受信し、復調処理、復号処理を行った後、MPEG2−TSデータをTSデコーダ部106に送信する。TSデコーダ部106は、受け取ったMPEG2−TSデータのデコードを行い、映像信号及び音声信号、並びに気象情報が含まれたデータ放送用データを生成する。TSデコーダ部106は該データを表示部107及び気象情報管理部109に出力する。
【0020】
気象情報管理部109では、受信した情報から気象情報を抽出して取得する(S102)。続いて気象情報管理部109は抽出した気象情報からユーザが現在テレビジョン装置を使用している地域の気象情報を把握する。抽出された気象情報が落雷に関する情報を含んでいるか否かを気象情報管理部109が調べ、落雷予報について判断する(S103)。その結果、落雷予報が検出されなかった場合は、再びS102に戻り、気象情報の監視を続ける。またS103にて落雷予報が検出された場合、システム制御部108はパルスノイズ検出部110に対して、パルスノイズの発生についての監視命令を発行する(S104)。パルスノイズの検出確認において、該ノイズが未検出であった場合には監視がそのまま継続される。そしてS105にて、落雷予測情報の示す落雷発生の予測時刻が過ぎたか否かをシステム制御部108が判定する。その結果、落雷発生の予測時刻が過ぎたと判定された場合にはS106に進むが、未だ予測時刻に達していないと判定された場合にはS102に戻る。
【0021】
S106では、パルスノイズ検出部110にてパルスノイズが検出されたか否かが判定される。その結果、パルスノイズが未検出であった場合には、落雷の発生はなかったと判断され、再びS102に戻る。またS106においてパルスノイズが検出された場合にはS107に進む。ここでパルスノイズ検出部110は検出情報をシステム制御部108に送信する。システム制御部108は経路切り替え部104を制御して放送信号経路を内蔵アンテナ部103の経路へと切り替えるとともに、内蔵アンテナ部103のアンプを通電状態にする(S107)。
【0022】
以上のように、本実施形態によれば、安定した受信感度が得られる屋外アンテナと、誘導雷の影響を受けにくい内蔵アンテナを併用し、これらを外部環境の変化により適応的に選択する。これにより、機器内雷サージ耐性を向上させ、しかも誘導雷の発生時に継続した受信環境を実現できる。
【0023】
なお、第1実施形態では、気象情報管理部109での落雷の予測後、さらに誘導雷によるパルスノイズの発生をパルスノイズ検出部110にて確認することで落雷検出の精度向上を図っている。これに限らず、放送局から送られる気象データが十分に信頼できる場合には、パルスノイズの検出を行わずに、気象情報に基づく落雷予測のみで、即座に屋外アンテナから内蔵アンテナに切り替えてもよい。
【0024】
また、第1実施形態ではアンテナ部101から内蔵アンテナ部103へと放送波の信号切り替えを行う構成について述べたが、S107以降において落雷の危険性がなくなった場合には再びS101に戻ることが望ましい。また、第1実施形態では放送受信装置100の内蔵アンテナ部103が利用したが、室内アンテナへの代替も可能である。その場合、室内アンテナ用チューナ端子部を装置に設け、これを経路切り替え部104に接続すればよい。
【0025】
次に本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態では気象情報に基づく予測結果として落雷が予測される場合、受信信号の経路として内蔵アンテナ部103の経路が選択された。内蔵アンテナ部103の受信性能はアンテナ部101より劣るため、弱電界環境では受信感度が悪化する可能性がある。放送局から送信されたデータを放送受信装置100にて受信したとき、受信データに誤りが発生しない必須レベルを所要C/N(Carrier to Noise Ratio)と呼ぶ。所要C/N値は放送波の変調方式に依存し、よりビットレートが高いデータを送信する場合、より高い所要C/N値が必要になることが知られている。内蔵アンテナ部103で信号を受信した場合、例えば12セグメントの放送を受信しているとすると、受信環境によっては受信C/N値が、この所要C/N値を下回る虞がある。
【0026】
第1実施形態では、内蔵アンテナ部103への切り替えがなされた場合、内蔵アンテナ部103での受信レベルが所要C/N値を下回るレベルであったとしても、ユーザに通知することなく信号経路の切り替えが行われることになる。しかしユーザの利便性を考慮して、事前に画像の乱れが発生する可能性があることの通知、又は所要C/N値がより低い変調方式で放送されているサイマルキャスト放送への切り替えや、受信可能なチャンネルの提案等が望まれる。
【0027】
そこで第2実施形態では、内蔵アンテナ用の地デジチューナ部と、屋外アンテナ用の地デジチューナ部を実装する。落雷の予測時には、内蔵アンテナ用の地デジチューナ部から受信C/N値を得て、内蔵アンテナ部でブロックノイズの発生なしに視聴を継続可能であるか否かが判断される。受信C/N値が所要C/N値以上である場合には、第1実施形態と同様の処理を行う。一方、ブロックノイズが発生する可能性があると判断された場合には、その旨がユーザに対してメッセージで表示され、サイマルキャスト放送が行われていれば、当該放送への切り替え制御が行われる。なおサイマルキャスト放送では、同じ時間帯に同一の番組が複数のチャンネルで放送される。
【0028】
図3に示すように、第2実施形態に係る放送受信装置200は、図1に示す第1実施形態の構成に加えて、遮断部203、地デジチューナ部204a、204bを有する。本実施形態における他の構成要素については第1実施形態の場合と同様であり、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0029】
遮断部203は、アンテナ部201からチューナ端子部202を経由した放送波の受信経路上に設けられている。遮断部203は、受信した放送波を地デジチューナ部204aに送信する。遮断部203はリレー等のメカニカルスイッチを用いて構成されており、システム制御部208からの命令に従って、チューナ端子部202と地デジチューナ部204aを繋ぐ経路を物理的に遮断する。
【0030】
地デジチューナ部204a、204bは、第1実施形態の場合と同様の機能を有しており、さらに受信信号の品質の目安となるC/N値を出力する機能を持つ。なお、地デジチューナ部204aがアンテナ部201とともに第1の放送受信手段を構成している。また第2の放送受信手段を構成する地デジチューナ部204bは内蔵アンテナ部205からの信号を受け取る。
【0031】
TSデコーダ部206は、地デジチューナ部204a、204から入力される信号をデコードして出力する機能を有し、さらに、2つの入力信号に対してその一方を選択してデコードする機能を有する。この選択処理はシステム制御部208からの指示に従ってTSデコーダ部206内の切り替え部で行われる。
【0032】
システム制御部208は、放送受信装置200における通常の使用状態では遮断部203を導通状態にし、アンテナ部201の経路で信号を受信するように各ブロックを制御する。また、システム制御部208は気象情報管理部209及びパルスノイズ検出部210から雷サージの予測信号を受け取った場合、遮断部203に対して、アンテナ部201からの信号を遮断するように制御する。そしてシステム制御部208はTSデコーダ部206に対して、内蔵アンテナ部205経由で信号を受信するように各ブロックを制御する。このとき、システム制御部208は必要に応じて、地デジチューナ部204aや204bの通電又は非通電制御も併せて行う。内蔵アンテナ部205への切り替えに際してシステム制御部208は、地デジチューナ部204bに対して現在のC/N値を要求し、これを受信放送の所要C/N値と比較して視聴の継続が可能であるか否かを判断する。そしてシステム制御部208は、状況に応じてサイマルキャスト放送への切り替え命令を、地デジチューナ部204bに対して発行する。システム制御部208は現在の放送波の変調方式を識別し、これに対応する所要C/N値を設定する。
気象情報管理部209とパルスノイズ検出部210は、雷サージの発生を予測および/または検知するための雷予測・検知手段を構成する。
【0033】
以下に、放送受信装置200において、前記機能を利用したアンテナ部の切り替え動作について図4のフローチャートを用いて詳説する。なお、図4では、パルスノイズの検出処理において、落雷予測時刻が過ぎた場合の処理を省略している。
【0034】
先ず、放送受信装置200における通常の視聴状態では、システム制御部208は、アンテナ部201を経由した放送波の受信のために、遮断部203に対して信号の通過命令を発行する。これによりアンテナ部201による信号出力が選択される(S201)。このとき、システム制御部208の制御指令に従って内蔵アンテナ部205のアンプ、地デジチューナ部204bは非通電状態であり、地デジチューナ部204aがアンテナ部201から遮断部203を介して信号を受信する。地デジチューナ部204aでは、受信した信号の復調及び復号処理を行い、MPEG2−TSデータをTSデコーダ部206に送信する。
【0035】
TSデコーダ部206では、受取ったMPEG2−TSデータのデコード処理を行い、映像信号及び音声信号、並びに気象情報が含まれたデータ放送用データを生成する。TSデコーダ部206は該データを表示部207及び気象情報管理部209へ出力する(S202)。
【0036】
共通バス211に接続された気象情報管理部209は、TSデコーダ部206からデータを受信して気象情報を抽出する(S203)。そして気象情報管理部209は、抽出した気象情報に基づいて、ユーザが放送受信装置200を使用している地域の気象情報を把握し、落雷予報の有無を判断する(S204)。その結果、落雷予報が検出された場合、S205に進む。また落雷予報が検出されなかった場合にはS203に戻る。
【0037】
S205にてパルスノイズ検出部210は、パルスノイズの発生を監視し、S206にてパルスノイズが検出されたか否かを判定する。その結果、パルスノイズが検出された場合、S207に進むが、未検出の場合にはS205に戻ってパルスノイズ検出部210による監視を続行する。
【0038】
S207にてシステム制御部208は、内蔵アンテナ部205のアンプ、地デジチューナ部204bが通電状態となるように制御する。そしてシステム制御部208は地デジチューナ部204bに対して、現在の受信放送波に関するC/N値を要求する(S208)。
【0039】
次のステップS209にてシステム制御部208は、地デジチューナ部204bからC/N値を受けて、これが、現在の放送方式に対応する所要C/N値を上回っているか否かを判定する。つまり所要C/N値が比較基準値として用いられ、C/N値が所要C/N値を上回っていると判定された場合、S210に進む。ここでシステム制御部208は、内蔵アンテナ部205による信号であっても安定な受信が可能であると判断し、TSデコーダ部206が内蔵アンテナ部205の経路に係るTSデータを出力するように制御する。そしてシステム制御部208は、TSデコーダ部206での切り替え制御が終了すると、地デジチューナ部204aが非通電状態となるように制御し(S211)、一連の処理が終了する。
【0040】
一方、前記S209にて、内蔵アンテナ部205による信号のC/N値が基準値以下、つまり所要C/N値以下である場合、S212に進む。ここでシステム制御部208は、ユーザに対して視聴制限が発生することを伝えるために、その旨を示す視聴制限メッセージを表示部207に送信する。表示部207は、視聴制限メッセージの信号を映像信号に重畳して映像を表示する。
【0041】
視聴制限メッセージの表示後、システム制御部208は、ユーザが現時点で視聴中の番組についてサイマルキャスト放送が送信されている場合、そのC/N値を地デジチューナ部204bに要求する。そして、この値が所要C/N値を上回っているか否かが判定される。その結果、サイマルキャスト放送の受信が可能な場合、システム制御部208は、サイマルキャスト放送受信用に地デジチューナ部204bを制御する(S213)。そしてS211に進み、システム制御部208は、デコーダ部206での切り替えを終了した後で地デジチューナ部204aを非通電状態にする。
【0042】
以上述べたように、第2実施形態では、内蔵アンテナ部に接続された地デジチューナ部と、アンテナ部に接続された地デジチューナ部を実装する。そして落雷が予測される場合、内蔵アンテナ部に接続された地デジチューナ部のC/N値算出機能を使用して、内蔵アンテナ部を経由した信号にてブロックノイズが発生する可能性が充分に低いことを確認できる。またブロックノイズが発生する可能性がある場合には、ユーザに対してその旨のメッセージを表示し、サイマルキャスト放送が受信可能であればサイマルキャスト放送に切り替えて表示することができる。これにより、ユーザが視聴中断を余儀なくされた場合に、不快感等を抱くことがなくなる。
【0043】
なお、図4のS213に示したサイマルキャスト放送の受信時においても、C/N値が所要C/N値を下回った場合には、サイマルキャスト放送が受信不能である旨のメッセージを表示させることが好ましい。その場合、受信可能なチャンネルの一覧を表示してユーザが選択できるようにし、ユーザの利便性を高め、視聴中断による不快感を緩和することが望ましい。
【符号の説明】
【0044】
101,201 アンテナ部
103,205 内蔵アンテナ部
104 経路切り替え部
105,204a,204b 地デジチューナ部
106,206 TSデコーダ部
108,208 システム制御部
109,209 気象情報管理部
110,210 パルスノイズ検出部
203 遮断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号を受信する第1の放送受信手段と、
放送信号を受信する第2の放送受信手段であって、前記第1の放送受信手段に比べて放送信号の受信感度が低くかつ雷サージの影響が少ない第2の放送受信手段と、
前記第1及び第2の放送受信手段で受信した放送信号の一方を選択するとともに、選択されない方の経路を遮断することで放送信号の経路を切り替える信号切り替え手段と、
雷サージの発生を予測および/または検知するための雷予測・検知手段と、
前記雷予測・検知手段により雷サージの発生が予測および/または検知された場合に、前記第2の放送受信手段で受信した放送信号を選択して、前記第1の放送受信手段で受信した放送信号の経路を遮断することで、放送信号の経路を切り替えるように前記信号切り替え手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記雷予測・検知手段は、
気象情報を取得して雷サージの発生を予測する気象情報管理手段と、
放送信号に重畳された雷サージによるノイズを検出するノイズ検出手段を含み、
前記制御手段は、前記気象情報管理手段によって雷サージの発生が予測され、かつ前記ノイズ検出手段によって雷サージによるノイズが検出された場合に、前記第2の放送受信手段で受信した放送信号を選択して放送信号の経路を切り替えるように前記信号切り替え手段を制御することを特徴とする、請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2の放送受信手段で受信した放送信号の品質を示す値を取得し、
前記雷予測・検知手段により雷サージの発生が予測および/または検知された場合であって、前記第2の放送受信手段で受信した放送信号の品質を示す値が、予め設定された基準値を超えていると判定した場合に、前記制御手段は前記第2の放送受信手段で受信した放送信号を選択して放送信号の経路を切り替えるように前記信号切り替え手段を制御することを特徴とする、請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記雷予測・検知手段により雷サージの発生が予測および/または検知された場合であって、前記第2の放送受信手段で受信した放送信号の品質を示す値が、予め設定された基準値以下であると判定した場合に、前記制御手段は、視聴が制限される旨のメッセージを表示手段にて表示させるように制御するか又は視聴が可能な放送若しくは受信可能なチャンネルへの切り替えを行うように制御することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記第1の放送受信手段が屋外アンテナを備え、前記第2の放送受信手段が内蔵アンテナを備えたことを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の放送受信装置。
【請求項6】
放送信号を受信する第1の放送受信手段と、放送信号を受信する第2の放送受信手段であって前記第1の放送受信手段に比べて放送信号の受信感度が低くかつ雷サージの影響が少ない第2の放送受信手段とを備えた放送受信装置の制御方法であって、
雷サージの発生を予測および/または検知する雷予測・検知ステップと、
前記第1及び第2の放送受信手段で受信した放送信号の一方を選択するとともに、選択されない方の経路を遮断することで放送信号の経路を切り替える信号切り替えステップとを有し、
前記雷予測・検知ステップにて雷サージの発生が予測および/または検知された場合に、前記第2の放送受信手段で受信した放送信号を選択して、前記第1の放送受信手段で受信した放送信号の経路を遮断することで、放送信号の経路を切り替えることを特徴とする放送受信装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−233017(P2010−233017A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79225(P2009−79225)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】