説明

放送波監視装置

【課題】受信したTV画像を劣化させることなく、監視情報を文字や図形としてTV画像領域と共通の画面内にスーパーインポーズできる放送波監視装置を実現すること。
【解決手段】放送波を受信するTVチューナーと、このTVチューナーで受信した放送波の所定の測定項目を測定する受信信号測定部と、この受信信号測定部の測定結果をOSD重畳情報として表示領域にスーパーインポーズされたOSD画面を生成するOSD画面生成部を備えた放送波監視装置において、
前記OSD画面生成部は、前記OSD重畳情報を、レターボックスの黒帯領域にスーパーインポーズすることを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送波監視装置に関し、詳しくは、放送波の監視状態を表示する画面の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば地上波でTV放送を行う放送事業者は、電波塔から送信されている放送波の状態を把握するために、放送事業者自身が社内に放送波監視装置を設置してモニタするとともに、サービスエリア内の複数の視聴者宅に放送波監視装置を設置して放送波のモニタを委託している。
【0003】
図7は、従来の放送波監視装置の一例を示すブロック図である。図7において、TVチューナー1には、放送事業者の電波塔から送信されているたとえば画面比率が16:9の放送波BWがアンテナ2を介して入力されている。TVチューナー1は、制御部3から入力される制御信号Sc2に従って設定されるチャネルの放送波BWを選択的に受信し、設定に応じて画面比率が4:3または16:9のビデオ信号SvをOSD(On Screen Display)画面生成部4に出力するが、図7の例では16:9の画面比率のビデオ信号Svを出力する例を示している。
【0004】
受信信号測定部5は、TVチューナー1が現在受信している放送波BWについて、チャネル番号、信号強度、C/N(Carrier to Noise)比、符号誤り率などを測定し、それらの測定結果Smを制御部3に出力する。
【0005】
制御部3は、操作部6から入力される内部設定操作信号Sisや外部から入力される制御信号Sc1に基づき、TVチューナー1を制御するとともに、OSD画面生成部4に受信信号測定部5の測定結果Smを含むOSD重畳情報Dspを出力する。
【0006】
OSD画面生成部4は、制御部3から入力されるOSD重畳情報Dspに基づき、図8のOSD画面例図に示すように、ビデオ信号SvのTV画像領域に、受信信号測定部5の測定結果Smに含まれている受信信号の信号強度およびC/N比のバーグラフ表示や、チャネル番号や符号誤り率などが監視結果としてスーパーインポーズされた画面比率が16:9のビデオ信号Vvspを生成して出力する。
【0007】
特許文献1には、受信装置がいずれかの検出項目の検出結果に基づいて異常状態と判別したときに、通信網を介してコールセンター内の監視サーバに動作状態情報を出力する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−131060
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図7に示した従来の構成によれば、OSD画面生成部4において、監視情報が文字や図形としてTV画像領域の一部にスーパーインポーズされることから、OSD画面生成部4から生成出力されるビデオ信号SvspのTV画像はスーパーインポーズにより部分的に上書きされてしまうことになり、スーパーインポーズで上書きされた監視情報部分のTV画像は消失することになる。
【0010】
この結果、放送波BWとして受信したTV画像全体の監視が行えなくなってしまい、異常が発生したときに、TV画像のどの部分にどのような影響が現れていたのかを確認できなくなる場合がある。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するものであり、その目的は、受信したTV画像を劣化させることなく、監視情報を文字や図形としてTV画像領域と共通の画面内にスーパーインポーズできる放送波監視装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
放送波を受信するTVチューナーと、このTVチューナーで受信した放送波の所定の測定項目を測定する受信信号測定部と、この受信信号測定部の測定結果をOSD重畳情報として表示領域にスーパーインポーズされたOSD画面を生成するOSD画面生成部を備えた放送波監視装置において、
前記OSD画面生成部は、前記OSD重畳情報を、レターボックスの黒帯領域にスーパーインポーズすることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載の放送波監視装置において、
前記OSD画面生成部で生成出力されるビデオ信号の黒帯領域にスーパーインポーズされる前記OSD重畳情報を監視解析し、異常を検出することにより所定の出力形態のアラームを出力するTV画像監視解析装置を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の放送波監視装置において、
前記TV画像監視解析装置は、
所定の測定項目の異常を検出する異常検出部と、この異常検出部に測定項目に応じた所定の閾値を設定する閾値設定部と、前記異常検出部が異常を検出することにより所定の出力形態のアラームを出力するアラーム発生部と、このアラーム発生部におけるアラーム発生の経過情報をログとして記録するログ記録部、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
これらにより、受信したTV画像を劣化させることなく、監視情報を文字や図形としてTV画像領域と共通の画面内にスーパーインポーズできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の原理ブロック図である。
【図2】図1におけるOSD画面例図である。
【図3】サービスエリア内の複数の視聴者宅に設置される本発明装置の一実施例を示すブロック図である。
【図4】放送事業者自身が社内に設置してモニタするために使用される本発明装置の他の実施例を示すブロック図である。
【図5】図4におけるTV画像監視解析装置10の具体例を示すブロック図である。
【図6】本発明に基づく他のOSD画面例図である。
【図7】従来の放送波監視装置の一例を示すブロック図である。
【図8】図6におけるOSD画面例図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図7と共通する部分には同一の符号を付けている。図1と図7の相違点は、OSD画面生成部7が、図2のOSD画面例図に示すように、受信信号の信号強度およびC/N比のバーグラフ表示や、チャネル番号や符号誤り率などの監視結果を、レターボックスの黒帯領域にスーパーインポーズするように構成されていることである。
【0018】
図1において、TVチューナー1で受信された画面比率が16:9のビデオ信号は、OSD画面生成部7に入力される。ここで、TVチューナー1およびOSD画面生成部7の出力として画面比率が4:3のビデオ信号が選択されると、TV画像領域の上下に黒帯領域を伴ったいわゆるレターボックスとして表示される。
【0019】
OSD画面生成部7は、制御部3から入力されるOSD重畳情報Dspに基づき、図2のOSD画面例図に示すように、レターボックスのビデオ信号Svの黒帯領域に、受信信号測定部5の測定結果Smに含まれている受信信号の信号強度およびC/N比のバーグラフ表示や、チャネル番号や符号誤り率などを監視結果としてスーパーインポーズされたビデオ信号Vvspを生成して出力する。
【0020】
このように、OSD画面生成部7で各黒帯領域にバーグラフ表示や監視結果をスーパーインポーズすることで、OSD画面生成部7から生成出力されるビデオ信号SvspのTV画像は従来のようにバーグラフ表示や監視結果のスーパーインポーズによってTV画像領域が部分的に上書きされてしまうことはなく、必要に応じて、TV画像領域全体に表示されるTV画像情報を全く損なうことなくそのままの状態で外部に出力できる。
【0021】
図2のOSD画面生成部7の出力画面例図では、上部の黒帯領域にチャネル番号や符号誤り率などの監視結果をスーパーインポーズし、下部の黒帯領域に受信信号の信号強度およびC/N比のバーグラフ表示をスーパーインポーズする例を示しているが、これら各黒帯領域にスーパーインポーズする情報の組み合わせは図2の例に限るものではなく、任意に組み合わせることができる。
【0022】
なお、本発明に基づく放送波監視装置は、図3に示すように構成され放送波のモニタを委託しているサービスエリア内の複数の視聴者宅に設置されるものと、図4に示すように構成され放送事業者自身が社内に設置してモニタするために使用されるものとに大別できる。
【0023】
図3において、OSD画面生成部7で生成されたバーグラフ表示や監視結果が各黒帯領域にスーパーインポーズされたビデオ信号Svspは、外付けされるとともにネットワークNWにも接続されているTV画像記録装置8に記録される。
【0024】
TV画像記録装置8は、常に連続した一定期間(たとえば24時間)のビデオ信号Svspを逐次更新しながら保持記録するように構成されている。また、TV画像記録装置8はネットワークNWにも接続されている。
【0025】
制御部3は、ネットワークNWを介してネットワークNWに接続されている図示しない上位装置に対して測定結果SmやOSD重畳情報Dspを含む出力信号Soutを放送波監視装置の属性情報を付加して出力するとともに、TV画像記録装置8との間で制御信号Sc3の授受を行う。
【0026】
これにより、放送事業者は、各視聴者宅に設置されている放送波監視装置の出力信号SoutをネットワークNWを介して上位装置に取り込むことができ、上位装置において各放送波監視装置における出力信号Soutの各項目について異常の有無を判別でき、異常が発生している場合にはそれらの判別結果に基づいて、放送事業者側の放送設備の不具合に起因するものか、サービスエリアの特定地域における外部要因に起因するものかなどを判断できる。
【0027】
また、放送事業者は、異常が発生している場合など必要に応じて、各視聴者宅に設置されている放送波監視装置のTV画像記録装置8に保持記録されているビデオ信号Svspを、ネットワークNWを介して取り出して確認することができる。たとえば上位装置に取り込まれた出力信号Soutに基づいて異常発生と判断した場合、ネットワークNWを介してTV画像記録装置8に異常発生と判断した出力信号Soutの測定時刻情報を含む画像要求信号Sreqを入力することにより、指定時刻に該当するビデオ信号Svspを入手して確認できる。
【0028】
図4において、TV画像記録装置8にはTVモニタ9が接続されている。TVモニタ9には、TV画像記録装置8に逐次更新しながら保持記録されるビデオ信号SvspやTV画像記録装置8に保持記録されている過去のビデオ信号Svspが、オペレータの設定に応じた所定の表示形態で表示される。画面の表示形態としては、選択された所定のビデオ信号Svspのみの全画面表示、複数ビデオ信号Svspの分割表示、選択されたあるビデオ信号Svspを全画面表示するとともに選択された他のビデオ信号Svspを縮小して重畳表示することなどが設定できる。
【0029】
TV画像監視解析装置10は、TV画像記録装置8に逐次更新しながら保持記録されるOSD画面生成部7から生成出力されるビデオ信号Svspを監視解析する機能を有するものであり、たとえば図5に示すように、異常検出部10a、閾値設定部10b、アラーム発生部10c、ログ記録部10dなどで構成されている。
【0030】
図5において、TV画像監視解析装置10には、図示しない上位装置から、各部のパラメータを設定する外部設定信号SesがネットワークNWを介して入力される。
【0031】
TV画像監視解析装置10における各部のパラメータとしては、たとえば、異常検出部10aが受信信号の信号強度やC/N比その他各種監視結果の測定値に対して異常検出を行うために閾値設定部10bを介して設定される各種の閾値や、アラーム発生部10cにおけるアラーム発生に伴うブザー駆動、ランプ点滅、メッセージ表示、接点信号Scttの送出を含むアラーム出力形態設定などがある。
【0032】
ログ記録部10dは、アラーム発生部10cにおけるアラーム発生の経過情報をログとして記録する。ログ記録部10dに記録されるアラーム発生の経過情報は、必要に応じて外部設定信号Sesに基づき出力信号SalmとしてネットワークNWを介して図示しない上位装置に出力される。
【0033】
制御部3は、ネットワークNWに対して測定結果SmやOSD重畳情報Dspを含む出力信号Soutを出力するとともに、TV画像記録装置8との間で制御信号Sc3の授受を行う。
【0034】
このような構成において、異常検出部10aは、閾値設定部10bを介して設定される閾値に基づいて、受信信号強度の所定の設定レベルに対する大小関係を判断したり、受信信号ノイズの所定の設定レベルに対する大小関係を判断する。そして、受信信号強度が所定レベルに達していなかったり、受信信号ノイズが所定レベルを超えている場合には、アラーム発生部10cを介して設定に基づく所定の出力形態のアラームを出力する。
【0035】
なお、異常検出部10aは、たとえばバーグラフ表示部における先端部分の変化位置に対してアナログ的な閾値を設定して異常を検出するようにしてもよいし、デジタル化されている測定値に対するデジタル的な閾値を設定して異常を検出するようにしてもよい。
【0036】
図4および図5の構成によれば、放送波監視装置自身がアラーム発生の有無を判断できるので図3に示した各視聴者宅に設置されている放送波監視装置の場合のように上位装置において各放送波監視装置における出力信号Soutの各項目について異常の有無を判別する必要はなく、上位装置の負荷を軽減できる。
【0037】
また、アラーム発生部10cにおけるアラーム発生をトリガとして、ネットワークNWに接続されている上位装置に、アラームが発生した放送波監視装置の属性情報とアラームの内容をネットワークNWを介して自動的に送信するように構成することにより、上位装置がネットワークNWを介して別途受信している各視聴者宅に設置されている放送波監視装置からの出力信号Soutに基づくアラーム情報の内容と照合することができ、そのアラームが放送事業者側の放送設備の不具合に起因するものか、サービスエリアの特定地域における外部要因に起因するものかなどを的確に判断でき、アラーム状態を復旧するのに必要適切な処置を迅速に行える。
【0038】
また、放送事業者は、社内に設置されている放送波監視装置の出力信号SoutやTV画像記録装置8に保持記録されているビデオ信号SvspおよびTV画像監視解析装置10におけるアラーム発生の経過情報に基づく出力信号Salmを、適宜必要に応じてネットワークNWを介して取り出して確認することができる。
【0039】
ところで、アナログ波放送時代から用いられている4:3画面比率の監視装置は、現在も多数が稼働している。このような監視装置に16:9画面比率のビデオ信号が入力されると、上下に黒帯を伴ったレターボックス形式で表示される。したがって、従来の監視装置においても、本発明のように画面比率が4:3のビデオ信号を入力するとともに、OSD重畳情報をレターボックスの黒帯領域にスーパーインポーズすることにより、画像部分を劣化させることなく画像と文字や図形の監視情報の双方を監視することができ、新たな設備投資をすることなく既存の監視装置を有効活用できる。
【0040】
また、従来から用いられているTV画像監視装置には、図6(A)に示すように、比率4:3の画面を多数の部分的な領域に分けて、各領域の画像のいずれかが動いた場合にアラームを出力する機能が組み込まれているものがある。
【0041】
たとえば領域aの画像が動いた場合にアラームを出すような設定をしておけば、図6(B)に示すように、画面比率16:9のビデオ信号が入力される場合には、領域aはレターボックス形式の黒帯部分の動きを監視することになる。したがって、図2に示すような信号強度やC/N値のバーグラフをOSDによりスーパーインポーズ表示すれば、所定の値に変動があった場合のみをアラームとして検知することができ、既設装置を有効活用して低廉な信号強度やC/N値の監視装置を構成することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、受信したTV画像を劣化させることなく、監視情報を文字や図形としてTV画像領域と共通の画面内にスーパーインポーズできる放送波監視装置が実現できる。
【符号の説明】
【0043】
1 TVチューナー
2 アンテナ
3 制御部
5 受信信号測定部
6 操作部
7 OSD画面生成部
8 TV画像記録装置
9 TVモニタ
10 TV画像監視解析装置
10a 異常検出部
10b 閾値設定部
10c アラーム発生部
10d ログ記録部
BW 放送波
NW ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波を受信するTVチューナーと、このTVチューナーで受信した放送波の所定の測定項目を測定する受信信号測定部と、この受信信号測定部の測定結果をOSD重畳情報として表示領域にスーパーインポーズされたOSD画面を生成するOSD画面生成部を備えた放送波監視装置において、
前記OSD画面生成部は、前記OSD重畳情報を、レターボックスの黒帯領域にスーパーインポーズすることを特徴とする放送波監視装置。
【請求項2】
前記OSD画面生成部で生成出力されるビデオ信号の黒帯領域にスーパーインポーズされる前記OSD重畳情報を監視解析し、異常を検出することにより所定の出力形態のアラームを出力するTV画像監視解析装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の放送波監視装置。
【請求項3】
前記TV画像監視解析装置は、
所定の測定項目の異常を検出する異常検出部と、この異常検出部に測定項目に応じた所定の閾値を設定する閾値設定部と、前記異常検出部が異常を検出することにより所定の出力形態のアラームを出力するアラーム発生部と、このアラーム発生部におけるアラーム発生の経過情報をログとして記録するログ記録部、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の放送波監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−62781(P2013−62781A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201728(P2011−201728)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(302023183)横河ディジタルコンピュータ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】