説明

放電灯点灯装置

【課題】スイッチング素子の数を低減して装置の小型化を図ることのできる放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】交流電源AC1と第1のインダクタL1とともに閉回路を形成し、且つオン/オフを切り替えることで第1のインダクタL1から断続的にエネルギーを出力させる第1のスイッチング素子Q1と、第1のインダクタL1から出力されるエネルギーによって電荷を蓄積する第1のコンデンサC1と、放電灯100及び第1のコンデンサC1を含む負荷回路に接続され、且つオン/オフを切り替えることで第1のコンデンサC1に蓄えられた電荷を放電灯100に供給させる第2のスイッチング素子Q2と、各スイッチング素子Q1,Q2を制御する制御回路2とを備え、各スイッチング素子Q1,Q2は、何れも双方向に流れる電流のオン/オフを切り替える双方向素子から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向素子を用いた放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高輝度放電灯(HIDランプ)を安定して点灯させるための安定器(放電灯点灯装置)として、珪素鋼板などを鉄心とし、当該鉄心に銅線を巻き回したインダクタを用いる銅鉄安定器が知られている。銅鉄安定器は構造が簡単であるが、大型で重量が大きく、また力率が悪いという問題があった。近年では、例えば特許文献1に開示されているように、銅鉄安定器の代わりにスイッチング素子を利用した電力変換回路によって構成された電子式の高圧放電灯点灯装置(放電灯点灯装置)が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載の従来例は、交流電源及び整流回路、並びに昇圧チョッパ回路から成る直流電源と、降圧チョッパ回路と、電力変換回路とを備え、電力変換回路からの矩形波電圧を高圧放電灯に印加する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−281281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような電子式の放電灯点灯装置では、昇圧チョッパ回路によって力率の改善を行うことができる。また、高圧放電灯の安定点灯のためにランプ電流を制限する場合にも、スイッチング素子によって高周波化することで銅鉄安定器に比べてインダクタを小さくすることができ、装置の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の放電灯点灯装置では、昇圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路、電力変換回路のそれぞれで1乃至複数のスイッチング素子を用いるため、装置全体で使用するスイッチング素子の数が多い。このため、装置のこれ以上の小型化が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、スイッチング素子の数を低減して装置の小型化を図ることのできる放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放電灯点灯装置は、交流電源と第1のインダクタとともに閉回路を形成し、且つオン/オフを切り替えることで前記第1のインダクタから断続的にエネルギーを出力させる第1のスイッチング素子と、前記第1のインダクタから出力されるエネルギーによって電荷を蓄積する第1のコンデンサと、負荷及び前記第1のコンデンサを含む負荷回路に接続され、且つオン/オフを切り替えることで前記第1のコンデンサに蓄えられた電荷を前記負荷に供給させる第2のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を前記交流電源の電源周波数よりも高い周波数でスイッチングするように制御するとともに、前記第2のスイッチング素子を前記交流電源の極性に応じた極性で電流が流れるように制御する制御回路とを備え、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子は、何れも双方向に流れる電流のオン/オフを切り替える双方向素子から成ることを特徴とする。
【0009】
この放電灯点灯装置において、前記負荷回路は、前記負荷に直列に接続される第2のインダクタを備え、前記第1のコンデンサに蓄えられたエネルギーを前記第2のインダクタを介して前記負荷に供給することが好ましい。
【0010】
この放電灯点灯装置において、前記第1のインダクタの両端には、前記第2のスイッチング素子及び前記負荷回路の直列回路が接続されることが好ましい。
【0011】
この放電灯点灯装置において、前記第1のインダクタはトランスから成り、前記交流電源と前記第1のインダクタの1次巻線と前記第1のスイッチング素子とから前記閉回路が形成されるとともに、前記第1のインダクタの2次巻線の両端には、前記第2のスイッチング素子及び前記負荷回路の直列回路が接続されることが好ましい。
【0012】
この放電灯点灯装置において、前記第1のスイッチング素子の両端に前記負荷及び前記第1のコンデンサの直列回路が接続され、前記負荷の両端には、前記第2のスイッチング素子が接続されることが好ましい。
【0013】
この放電灯点灯装置において、前記第1のスイッチング素子の両端に前記第2のコンデンサ及び第3のインダクタの直列回路が接続され、前記第3のインダクタの両端には、前記負荷及び前記第1のコンデンサの並列回路と前記第2のスイッチング素子との直列回路が接続されることが好ましい。
【0014】
この放電灯点灯装置において、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子は、ワイドギャップ半導体で形成された双方向スイッチング素子から成ることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、スイッチング素子の数を低減して装置の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態1を示す回路図である。
【図2】同上に用いる双方向スイッチング素子を示す図で、(a)は概略図で、(b)はゲート信号と導通状態との相関図である。
【図3】同上の動作を説明するための波形図である。
【図4】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態2を示す回路図である。
【図5】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態3を示す回路図である。
【図6】本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態4を示す回路図である。
【図7】(a)〜(c)は各実施形態で用いる双方向スイッチング素子の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、交流電源AC1に入力フィルタ1を介して第1のインダクタL1及び第1のスイッチング素子Q1が直列に接続されており、交流電源AC1、第1のインダクタL1、第1のスイッチング素子Q1で閉回路を形成している。また、第1のインダクタL1の両端には、第2のスイッチング素子Q2と、第1のコンデンサC1及び負荷である放電灯100を並列に接続した負荷回路とが直列に接続されている。なお、本実施形態では、負荷回路において放電灯100に第2のインダクタL2が直列に接続されている。また、第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2は、何れも制御回路2によって駆動制御される。
【0018】
第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2は、何れも双方向に流れる電流のオン/オフを切り替える双方向素子である。なお、本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2は、何れもワイドギャップ半導体で形成された双方向スイッチング素子から成る。
【0019】
以下、双方向スイッチング素子について説明する。双方向スイッチング素子は、図2(a)に示すように、端子間に主電流が流れる2つの主端子S1,S2と、主電流のオン/オフを制御する2つの制御端子G1,G2とを有し、主電流の流れる向きを制御端子G1,G2に与える信号によって制御するものである。
【0020】
ここで、双方向スイッチング素子の導通状態について図2(b)を用いて説明する。制御端子G1,G2の何れもが電圧が印加されないLレベルである場合、双方向スイッチング素子はオフ状態となり、主電流は流れない。この双方向スイッチング素子の状態を以下では「第1のモード」と呼ぶ。
【0021】
また、制御端子G1が、主端子S1の電位を基準とした所定電圧が印加されるHレベルであり、且つ制御端子G2が、主端子S2の電位を基準とした所定電圧が印加されるHレベルである場合、双方向スイッチング素子は双方向に主電流を流すことができる。すなわち、当該導通状態では、双方向スイッチング素子は、主端子S2→主端子S1、及び主端子S1→主端子S2の何れの方向にも主電流を流すことができる。この双方向スイッチング素子の状態を以下では「第2のモード」と呼ぶ。
【0022】
次に、制御端子G1がHレベルであって、制御端子G2がLレベルである場合には、双方向スイッチング素子は、主端子S2→主端子S1方向にのみ主電流を流すことのできる単極性のオン状態となる。この双方向スイッチング素子の状態を以下では「第3のモード」と呼ぶ。また、制御端子G1がLレベルであって、制御端子G2がHレベルである場合には、双方向スイッチング素子は、主端子S1→主端子S2方向にのみ主電流を流すことのできる単極性のオン状態となる。この双方向スイッチング素子の状態を以下では「第4のモード」と呼ぶ。
【0023】
以下、本実施形態の動作について図1,3を用いて説明する。先ず、交流電源AC1の電源電圧V1が正極性(すなわち、端子a1の方が端子a2よりも高電圧)である場合、制御回路2は、第2のスイッチング素子Q2を第4のモードで制御する。したがって、第2のスイッチング素子Q2は、主端子S1→主端子S2方向にのみ主電流を流すことのできる状態となる。また、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードと第3のモードとを交互に繰り返すように制御する。すなわち、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1の制御端子G2にはLレベルの信号を入力し、制御端子G1にはHレベルとLレベルとを交互に繰り返す高周波のPWM信号を入力する。なお、当該PWM信号は交流電源AC1の電源周波数よりも十分に高い周波数となっている。
【0024】
第1のスイッチング素子Q1が第3のモードになると、第1のスイッチング素子Q1には交流電源AC1から第1のインダクタL1を介して第1の主電流I1が流れる。この第1の主電流I1が流れることで、第1のインダクタL1にはエネルギーが蓄積される。次に、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードになると、第1のインダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出され、第2のスイッチング素子Q2に第2の主電流I2が流れる。第1のスイッチング素子Q1が第1のモードと第3のモードとを交互に繰り返すことで、第1のコンデンサC1には両端に印加される出力電圧V0に応じた電荷が蓄積される。そして、第1のコンデンサC1に蓄積された電荷が放出されることで、放電灯100及び第2のインダクタL2に出力電流I0が流れる。
【0025】
次に、交流電源AC1の電源電圧V1が負極性(すなわち、端子a2の方が端子a1よりも高電圧)である場合、制御回路2は、第2のスイッチング素子Q2を第3のモードで制御する。したがって、第2のスイッチング素子Q2は、主端子S2→主端子S1方向にのみ主電流を流すことのできる状態となる。また、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードと第4のモードとを交互に繰り返すように制御する。すなわち、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1の制御端子G1にはLレベルの信号を入力し、制御端子G2には高周波のPWM信号を入力する。
【0026】
第1のスイッチング素子Q1が第4のモードになると、第1のスイッチング素子Q1には交流電源AC1から第1のインダクタL1を介して逆極性の第1の主電流I1が流れる。この第1の主電流I1が流れることで、第1のインダクタL1にはエネルギーが蓄積される。次に、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードになると、第1のインダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出され、第2のスイッチング素子Q2に逆極性の第2の主電流I2が流れる。第1のスイッチング素子Q1が第1のモードと第3のモードとを交互に繰り返すことで、第1のコンデンサC1には両端に印加される逆極性の出力電圧V0に応じた電荷が蓄積される。そして、第1のコンデンサC1に蓄積された電荷が放出されることで、放電灯100及び第2のインダクタL2に逆極性の出力電流I0が流れる。
【0027】
したがって、上述のように第1のスイッチング素子Q1のスイッチング動作を行うことで、交流電源AC1の電源電圧V1と同期し、且つ電源電圧V1を昇降圧した電圧を放電灯100に印加し、放電灯100に点灯に必要な電力を供給することができる。なお、制御回路2は、図示しない電源電圧検出回路によって電源電圧V1を検出し、その検出電圧の正負に応じて電源電圧V1が正極性の場合の制御と負極性の場合の制御とを切り替える。
【0028】
ここで、交流電源AC1に流れ込む電流、すなわち、入力電流の波形を電源電圧V1の波形に近づけて力率を改善する場合には、第1のスイッチング素子Q1のオン時間とスイッチング周波数を交流電源AC1の1周期に亘って所定値に固定する。そして、第1のスイッチング素子Q1がオフ状態になってから第2の主電流I2が略ゼロとなった時点でオンする電流不連続モードで駆動するようにPWM信号を第1のスイッチング素子Q1に入力する。このような比較的簡単な制御によって、鋸波状の第1の主電流I1が入力フィルタ1を通過した後の入力電流波形を、電源電圧V1の波形に近い略正弦波状にすることができる。
【0029】
なお、放電灯100に供給される電力は電源電圧V1に影響され、電源電圧V1の2乗に略比例した電力となるため、電源電圧V1のゼロ点付近では、出力電圧V0が低下する。このため、放電灯100のような誘導負荷では極性反転時に出力電流I0が非常に小さくなり、放電灯100の点灯時の放電電圧よりも高い再点弧電圧が発生し、抵抗負荷のように正弦波形状の出力電圧とはならない。
【0030】
上述のように、本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2を用いるだけで電源電圧V1を昇降圧することができるので、従来と比較してスイッチング素子の数を低減することができ、装置の小型化を図ることができる。また、本実施形態では、電源電圧V1を昇降圧する際に第1のインダクタL1のみを用いるので、従来のように昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路それぞれにインダクタを必要とする場合よりもインダクタの数を低減することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1の一方の制御端子にPWM信号を入力し、他方の制御端子にはLレベルの信号を入力しているが、第1のスイッチング素子Q1を流れる第1の主電流I1の極性は電源電圧V1の極性で決定される。したがって、第1のスイッチング素子Q1の何れの制御端子にも同一のPWM信号を入力するように制御しても構わない。また、第1のスイッチング素子Q1の各制御端子に互いに逆位相のPWM信号をそれぞれ入力するように制御しても構わない。このように制御すれば、制御回路2において1つのパルストランス(図示せず)を用いて各制御端子に信号を伝送する場合に、パルストランスの偏磁を抑制することができる。
【0032】
(実施形態2)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態2について図面を用いて説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。本実施形態は、図4に示すように、第1のインダクタL1の代わりにフライバックトランスT1を用いている。フライバックトランスT1の1次巻線L11は、第1のスイッチング素子Q1が単極性のオン状態にあるときに第1の主電流I1が流れることでエネルギーを蓄積させる。そして、第1のスイッチング素子Q1がオフ状態になると、フライバックトランスT1の2次巻線L12が蓄積されたエネルギーを放出し、第2のスイッチング素子Q2に第2の主電流I2が流れる。したがって、フライバックトランスT1は第1のインダクタL1と同様の機能を果たす。
【0033】
なお、本実施形態では、出力電流I0を平滑化させる第2のインダクタL2がトランス構造となっており、2次巻線が放電灯100に直列に接続されるとともに、1次巻線にはパルス発生回路3が接続されている。したがって、放電灯100が消灯しているときに、パルス発生回路3は無負荷時の出力電圧V0を受けて第2のインダクタL2の1次巻線にパルス電流を流し、2次側に巻数比に応じた高電圧を発生させる。この高電圧を放電灯100に印加することで、放電灯100を始動させるようになっている。
【0034】
上述のように、本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2を用いるだけで電源電圧V1を昇降圧することができるので、従来と比較してスイッチング素子の数を低減することができ、装置の小型化を図ることができる。また、本実施形態では、電源電圧V1を昇降圧する際にフライバックトランスT1のみを用いるので、従来のように昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路それぞれにインダクタを必要とする場合よりもインダクタの数を低減することができる。特に、電源電圧V1と点灯状態における放電灯100のランプ電圧との差が大きい場合に、本実施形態を利用するのが好ましい。
【0035】
(実施形態3)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態3について図面を用いて説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。本実施形態は、図5に示すように、第1のスイッチング素子Q1の両端に第1のコンデンサC1及び第2のスイッチング素子Q2の直列回路を接続している。また、第2のスイッチング素子Q2の両端に第2のインダクタL2及び放電灯100の直列回路を接続している。
【0036】
以下、本実施形態の動作について図5を用いて説明する。先ず、交流電源AC1の電源電圧V1が正極性である場合、制御回路2は、第2のスイッチング素子Q2を第4のモードで制御する。したがって、第2のスイッチング素子Q2は、主端子S1→主端子S2方向にのみ主電流を流すことのできる状態となる。また、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードと第3のモードとを交互に繰り返すように制御する。すなわち、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1の制御端子G2にはLレベルの信号を入力し、制御端子G1には高周波のPWM信号を入力する。
【0037】
第1のスイッチング素子Q1が第3のモードになると、第1のスイッチング素子Q1には交流電源AC1から第1のインダクタL1を介して第1の主電流I1が流れる。この第1の主電流I1が流れることで、第1のインダクタL1にはエネルギーが蓄積される。ここで、第1のコンデンサC1には出力電圧V0に応じた電荷が蓄積されており、この電荷が放出されることで第1のスイッチング素子Q1を介して放電灯100、第2のインダクタL2に出力電流I0が流れる。このとき、第2のスイッチング素子Q2では主端子S2が主端子S1よりも電位が高くなるために、電流が流れない。したがって、第1の主電流I1は、第1のインダクタL1を流れる電流に出力電流I0を加えた電流となる。
【0038】
第1のスイッチング素子Q1が第1のモードになると、第1のインダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出され、第2のスイッチング素子Q2に第2の主電流I2が流れる。そして、第1のコンデンサC1には、その両端に印加される出力電圧V0に応じた電荷が蓄積される。また、出力電流I0は、第2のインダクタL2の電流平滑作用により第2のスイッチング素子Q2を通り、放電灯100に供給され続ける。
【0039】
次に、交流電源AC1の電源電圧V1が負極性である場合、制御回路2は、第2のスイッチング素子Q2を第3のモードで制御する。したがって、第2のスイッチング素子Q2は、主端子S2→主端子S1方向にのみ主電流を流すことのできる状態となる。また、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードと第4のモードとを交互に繰り返すように制御する。すなわち、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1の制御端子G1にはLレベルの信号を入力し、制御端子G2には高周波のPWM信号を入力する。
【0040】
第1のスイッチング素子Q1が第4のモードになると、第1のスイッチング素子Q1には交流電源AC1から第1のインダクタL1を介して逆極性の第1の主電流I1が流れる。この第1の主電流I1が流れることで、第1のインダクタL1にはエネルギーが蓄積される。第1のスイッチング素子Q1が第1のモードになると、第1のインダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出され、第2のスイッチング素子Q2に逆極性の第2の主電流I2が流れる。そして、第1のコンデンサC1には、その両端に印加される逆極性の出力電圧V0に応じた電荷が蓄積される。
【0041】
ここで、第1のスイッチング素子Q1が第4のモードであるときには、第1のコンデンサC1に蓄積された電荷が放出されることで、第1のスイッチング素子Q1を介して放電灯100、第2のインダクタL2に逆極性の出力電流I0が流れる。また、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードであるときには、逆極性の出力電流I0が、第2のインダクタL2の電流平滑作用により第2のスイッチング素子Q2を通り、放電灯100に供給され続ける。
【0042】
したがって、上述のように第1のスイッチング素子Q1のスイッチング動作を行うことで、交流電源AC1の電源電圧V1と同期し、且つ電源電圧V1を昇降圧した電圧を放電灯100に印加し、放電灯100に点灯に必要な電力を供給することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、第2のインダクタL2に中間タップを設け、この中間タップを介して第2のコンデンサC2が放電灯100と並列に接続されている。このため、放電灯100が消灯している無負荷の状態であっても、第2のインダクタL2の一端から中間タップまでのインダクタンスL21と第2のコンデンサC21とを介した電流経路が存在する。第2のコンデンサC21は、第1のコンデンサC1の容量よりも十分に小さい1/10以下の容量である。
【0044】
放電灯100の消灯時において、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を、インダクタンスL21及び第2のコンデンサC2の共振周波数、又は当該共振周波数の数分の一(望ましくは1/3,1/5)に設定する。或いは、制御回路2は、共振周波数、又は当該共振周波数の数分の一を含むように第1のスイッチング素子Q1のスイッチング周波数をスイープさせる。これにより、インダクタンスL21及び第2のコンデンサC2から成る共振回路を共振動作させて共振電圧を発生させ、第2のインダクタL2の両端には、トランスの昇圧作用によって巻数比に比例した高電圧が生じる。したがって、この高電圧を放電灯100に印加することで放電灯100を始動させるようになっている。勿論、放電灯100を始動させる構成は他の構成であってもよく、例えば実施形態2で示したように、パルス発生回路3を用いて放電灯100を始動させる構成でもよい。
【0045】
上述のように、本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2を用いるだけで電源電圧V1を昇降圧することができるので、従来と比較してスイッチング素子の数を低減することができ、装置の小型化を図ることができる。また、本実施形態では、電源電圧V1を昇降圧する際に第1のインダクタL1のみを用いるので、従来のように昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路それぞれにインダクタを必要とする場合よりもインダクタの数を低減することができる。
【0046】
特に、本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1のオン時のみならず、第1のスイッチング素子Q1のオフ時においても交流電源AC1からの電源電流が流れるため、電源利用率を向上させることができる。但し、電源電圧V1の瞬時電圧が同一であっても、出力電圧V0やスイッチング条件等によって1回のスイッチング周期で得られる電力が異なる。そこで、制御回路2では、入力電流の波形が正弦波形状となるように第1のスイッチング素子Q1のスイッチング条件を調整することで、力率を向上させるように制御している。
【0047】
(実施形態4)
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態4について図面を用いて説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。本実施形態は、図6に示すように、第1のスイッチング素子Q1の両端に第3のコンデンサC3及び第3のインダクタL3の直列回路を接続している。また、第3のインダクタL3の両端には、第2のインダクタL2及び放電灯100の直列回路と、第1のコンデンサC1とを並列に接続した負荷回路が接続されており、当該負荷回路と直列に第2のスイッチング素子Q2を接続している。
【0048】
以下、本実施形態の動作について図6を用いて説明する。先ず、交流電源AC1の電源電圧V1が正極性である場合、制御回路2は、第2のスイッチング素子Q2を第4のモードで制御する。したがって、第2のスイッチング素子Q2は、主端子S1→主端子S2方向にのみ主電流を流すことのできる状態となる。また、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードと第3のモードとを交互に繰り返すように制御する。すなわち、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1の制御端子G2にはLレベルの信号を入力し、制御端子G1には高周波のPWM信号を入力する。
【0049】
第1のスイッチング素子Q1が第3のモードになると、第1のスイッチング素子Q1には交流電源AC1から第1のインダクタL1を介して第1の主電流I1が流れる。この第1の主電流I1が流れることで、第1のインダクタL1にはエネルギーが蓄積される。ここで、第3のコンデンサC3には、その両端電圧V3に応じた電荷が蓄積されており、この電荷が放出されることで第1のスイッチング素子Q1を介して第3のインダクタL3に第3の主電流I3が流れる。そして、第3のインダクタL3には、第3の主電流I3が流れることでエネルギーが蓄積される。このとき、第2のスイッチング素子Q2では主端子S2が主端子S1よりも電位が高くなるために、電流が流れない。
【0050】
第1のスイッチング素子Q1が第1のモードになると、第1のインダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出され、第2のスイッチング素子Q2に第2の主電流I2が流れる。そして、第1のコンデンサC1には、その両端に印加される出力電圧V0に応じた電荷が蓄積される。また、第3のコンデンサC3には、その両端に印加される両端電圧V3に応じた電荷が蓄積される。同時に、第3のインダクタL3に蓄積されたエネルギーが放出され、第2の主電流I2及び第3の主電流I3が流れることで第1のコンデンサC1に放出される。また、第1のコンデンサC1に蓄積された電荷が放出されることで、放電灯100及び第2のインダクタL2に出力電流I0が流れる。
【0051】
次に、交流電源AC1の電源電圧V1が負極性である場合、制御回路2は、第2のスイッチング素子Q2を第3のモードで制御する。したがって、第2のスイッチング素子Q2は、主端子S2→主端子S1方向にのみ主電流を流すことのできる状態となる。また、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1が第1のモードと第4のモードとを交互に繰り返すように制御する。すなわち、制御回路2は、第1のスイッチング素子Q1の制御端子G1にはLレベルの信号を入力し、制御端子G2には高周波のPWM信号を入力する。
【0052】
第1のスイッチング素子Q1が第4のモードになると、第1のスイッチング素子Q1には交流電源AC1から第1のインダクタL1を介して逆極性の第1の主電流I1が流れる。この第1の主電流I1が流れることで、第1のインダクタL1にはエネルギーが蓄積される。同時に、第3のコンデンサC3には、その両端に印加される逆極性の両端電圧V3に応じて電荷が蓄積され、この電荷が放出されることで第1のスイッチング素子Q1を介して第3のインダクタL3に逆極性の第3の主電流I3が流れる。そして、第3のインダクタL3には、逆極性の第3の主電流I3が流れることでエネルギーが蓄積される。
【0053】
第1のスイッチング素子Q1が第1のモードになると、第1のインダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出され、第2のスイッチング素子Q2に逆極性の第2の主電流I2が流れる。そして、第1のコンデンサC1には、その両端に印加される逆極性の出力電圧V0に応じた電荷が蓄積される。また、第3のコンデンサC3には、その両端に印加される逆極性の両端電圧V3に応じた電荷が蓄積される。同時に、第3のインダクタL3に蓄積されたエネルギーが放出され、逆極性の第2の主電流I2及び逆極性の第3の主電流I3が流れることで第1のコンデンサC1に放出される。また、第1のコンデンサC1に蓄積された電荷が放出されることで、放電灯100及び第2のインダクタL2に逆極性の出力電流I0が流れる。
【0054】
したがって、上述のように第1のスイッチング素子Q1のスイッチング動作を行うことで、交流電源AC1の電源電圧V1と同期し、且つ電源電圧V1を昇降圧した電圧を放電灯100に印加し、放電灯100に点灯に必要な電力を供給することができる。
【0055】
上述のように、本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2を用いるだけで電源電圧V1を昇降圧することができるので、従来と比較してスイッチング素子の数を低減することができ、装置の小型化を図ることができる。また、本実施形態では、電源電圧V1を昇降圧する際に第1のインダクタL1のみを用いるので、従来のように昇圧チョッパ回路及び降圧チョッパ回路それぞれにインダクタを必要とする場合よりもインダクタの数を低減することができる。なお、第1のインダクタL1及び第3のインダクタL3は、磁気結合させたトランス構成であってもよい。
【0056】
特に、本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1のオン時のみならず、第1のスイッチング素子Q1のオフ時においても交流電源AC1からの電源電流が流れるため、電源利用率を向上させることができる。但し、電源電圧V1の瞬時電圧が同一であっても、出力電圧V0やスイッチング条件等によって1回のスイッチング周期で得られる電力が異なる。そこで、制御回路2では、入力電流の波形が正弦波形状となるように第1のスイッチング素子Q1のスイッチング条件を調整することで、力率を向上させるように制御している。
【0057】
ところで、上記各実施形態では、各スイッチング素子Q1,Q2は何れも双方向スイッチング素子から成るが、双方向に電流を流す構成であれば他の構成であってもよい。例えば図7(a)に示すように、電流を単方向のみ制御可能なトランジスタTR1とダイオードD1とから成る並列回路を2つ設け、これら並列回路を互いに逆極性となるように直列に接続した構成であってもよい。また、例えば図7(b)に示すように、トランジスタTR1とダイオードD1とから成る直列回路を2つ設け、これら直列回路を互いに逆極性となるように並列に接続した構成であってもよい。
【0058】
更に、実施形態1でも述べたように、第1のスイッチング素子Q1を流れる第1の主電流I1の極性は電源電圧V1の極性で決定される。したがって、第1のスイッチング素子Q1をオンにした際に、電源電圧V1の極性に依らず、主端子S1→主端子S2、主端子S2→主端子S1の何れの方向にも電流を流すことのできる状態であってもよい。そこで、図7(c)に示すように、4つのダイオードD1から成るブリッジ回路の出力端に電流を単方向のみ制御可能なトランジスタTR2を接続した構成であってもよい。この構成では、トランジスタTR2のゲート端子G0に信号を入力することで主端子S1→主端子S2、主端子S2→主端子S1の双方向に電流を流すことのできる導通状態と、何れの方向にも電流を流すことのできない非導通状態とを切り替えることができる。
【0059】
なお、本発明の構成は上記各実施形態に限定されるものではない。すなわち、第1のスイッチング素子Q1によって交流電源AC1から第1のインダクタL1に流れる電流を高周波で断続させる。そして、少なくとも第1のスイッチング素子Q1のオン時に第1のインダクタL1に蓄積されたエネルギーを、第1のスイッチング素子Q1のオフ時に第2のスイッチング素子Q2を介して放電灯100を含む負荷回路に供給する構成であればよい。
【符号の説明】
【0060】
100 放電灯(負荷)
2 制御回路
AC1 交流電源
C1 第1のコンデンサ
L1 第1のインダクタ
Q1 第1のスイッチング素子
Q2 第2のスイッチング素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と第1のインダクタとともに閉回路を形成し、且つオン/オフを切り替えることで前記第1のインダクタから断続的にエネルギーを出力させる第1のスイッチング素子と、前記第1のインダクタから出力されるエネルギーによって電荷を蓄積する第1のコンデンサと、負荷及び前記第1のコンデンサを含む負荷回路に接続され、且つオン/オフを切り替えることで前記第1のコンデンサに蓄えられた電荷を前記負荷に供給させる第2のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を前記交流電源の電源周波数よりも高い周波数でスイッチングするように制御するとともに、前記第2のスイッチング素子を前記交流電源の極性に応じた極性で電流が流れるように制御する制御回路とを備え、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子は、何れも双方向に流れる電流のオン/オフを切り替える双方向素子から成ることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記負荷回路は、前記負荷に直列に接続される第2のインダクタを備え、前記第1のコンデンサに蓄えられたエネルギーを前記第2のインダクタを介して前記負荷に供給することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記第1のインダクタの両端には、前記第2のスイッチング素子及び前記負荷回路の直列回路が接続されることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記第1のインダクタはトランスから成り、前記交流電源と前記第1のインダクタの1次巻線と前記第1のスイッチング素子とから前記閉回路が形成されるとともに、前記第1のインダクタの2次巻線の両端には、前記第2のスイッチング素子及び前記負荷回路の直列回路が接続されることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記第1のスイッチング素子の両端に前記負荷及び前記第1のコンデンサの直列回路が接続され、前記負荷の両端には、前記第2のスイッチング素子が接続されることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記第1のスイッチング素子の両端に前記第2のコンデンサ及び第3のインダクタの直列回路が接続され、前記第3のインダクタの両端には、前記負荷及び前記第1のコンデンサの並列回路と前記第2のスイッチング素子との直列回路が接続されることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子は、ワイドギャップ半導体で形成された双方向スイッチング素子から成ることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129019(P2012−129019A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278242(P2010−278242)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】