説明

散布作業車

【課題】本発明の課題は、薬液タンクを搭載している散布作業車の後方に薬液サブタンクを配備することによってタンク容量を大幅にアップし、タンク内への補給回数を減らし、作業能率の向上を図ることにある。
【解決手段】自走しながら圃場の作物に薬液を散布する薬液散布装置8を備えた散布作業車において、散布作業車の車体後部には薬液タンク5を搭載し、さらに、車体後方には薬液サブタンク16を搭載したトレーラー17を牽引可能に構成したことを特徴とする。そして、薬液散布装置8は、車体の前方に配置してあることを特徴とする。薬液タンク5と薬液サブタンク16とは前後の最小距離間において吸水ホース20で連通連結してあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自走しながら圃場の作物に薬液を散布する散布作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、散布作業車において、車体の後部に薬液を貯留する薬液タンクを装備したものは一般的に知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−45742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、薬液タンクの後方にサブタンクを配備することによってタンク容量を大幅にアップし、タンク内への水汲み回数を減らし、作業能率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、自走しながら圃場の作物に薬液を散布する薬液散布装置8を備えた散布作業車において、散布作業車の車体後部には薬液タンク5を搭載し、さらに、車体後方には薬液サブタンク16を搭載したトレーラー17を牽引可能に構成したことを特徴とする散布作業車としたものである。
【0005】
車体後部の薬液メインタンク5の後方に薬液サブタンク16を配備することで、タンク容量が大幅にアップし、タンク内への水汲み回数が減少し、作業能率が向上する。
特に、薬液サブタンク16はトレーラー17に搭載して牽引するようにすることで、大規模農場の散布に適応し、また、これを取り外せば、小規模圃場にも容易に対応することができる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、前記薬液散布装置8は、車体の前方に配置してあることを特徴とする請求項1記載の散布作業車としたものである。
車体後部に薬液タンク5を車体の前方に薬液散布装置8を配備するので、車体前後のバランスが良好に保持され、薬液の散布状況を確認しながら作業ができるので、作業能率がより向上する。
【0007】
請求項3記載の本発明は、前記薬液タンク5と薬液サブタンク16とは前後の最小距離間において吸水ホース20で連通連結してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の散布作業車としたものである。
【0008】
薬液サブタンク16から薬液タンク5への吸水の流れが良好で、ホース長を短くできるメリットがある。
【発明の効果】
【0009】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、散布作業車の車体後部には薬液タンク5を搭載し、さらに、車体後方には薬液サブタンク16を搭載したトレーラー17を牽引可能に構成したので、タンク容量が大幅にアップし、タンク内への水汲み回数も減少し、作業能率の向上を図ることができる。
【0010】
また、薬液サブタンク16はトレーラー17によって牽引するようにしたので、大規模農場の散布に適応し、これを取り外せば、小規模圃場にも容易に対応することができる。
請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、薬液散布装置8を車体の前方に配備することで、車体前後のバランスを良好に保持でき、薬液の散布状況を確認しながらの作業が容易にでき、作業能率が一段と向上するものとなった。
【0011】
請求項3の本発明によれば、薬液タンク5と薬液サブタンク16の最小距離間を吸水ホース20で連通連結するよう配管したので、請求項1又は請求項2の発明効果を奏するものでありながら、薬液サブタンク16と薬液タンク5間における薬液、吸水の流れが良好に行え、ホース長も短くすることができて安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、薬液散布用の散布作業車を示すものであり、車体1の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力を走行ミッションケース2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪3と後輪4とに伝えるようにしている。
【0013】
車体1の後部には薬液を収容する薬液タンク5が設置され、該薬液タンク5の上部に運転席6が、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。車体1の前方には圃場の作物に薬液を散布する薬液散布装置8が配設され、散布ブーム9、散布ホース10、噴霧ノズル11などからなる。薬液タンク5内の薬液は、防除ポンプPにより散布ブ−ム9に設けられた散布ホ−ス10の噴霧ノズル11から噴出されるようになっている。機体の左右両側には散布ブ−ムを収納支持するためのブーム収納支持枠13,13が立設され、受け具14によって係止保持されるようになっている。
【0014】
薬液散布装置8は、中央の散布ブ−ム(センタブーム)9Cが機体の横幅に略一致し、左右散布ブ−ム(サイドブーム)9L,9Rが中央のそれよりも長さが長く構成されている。左右のサイドブ−ム9L,9Rは、ブーム支持フレーム12に対し回動自在に連結され、開閉シリンダ15により機体進行方向に沿う後方向きに回動させて折り畳み収納状態に保持させたり、或いは横外側方に張り出して地面と略平行となる散布作業姿勢状態に回動させて支持させたりすることができる。
【0015】
薬液タンク5の後方には、薬液サブタンク16が配備されている。薬液サブタンク16は、左右の車輪17aと車台部17bとからなるトレーラー17に搭載され牽引ヒッチ18を介して車体1の後部に連結されている。牽引ヒッチ18は上下方向のピン軸19回りに回動可能な構成としている。前記トレーラー17の左右車輪17a,17aは、本機の後輪4,4の後方延長線上に配置することで走行跡が最小になるよう抑制している。
また、図3に示すように、トレーラー17の車台部17bの最低地上高H2は本機の最低地上高H1よりも高くしている。トレーラー17前方に位置する本機は、作物を跨いでの管理作業機として開発されたもので中耕から防除、収穫運搬まで一貫して行うことができ、牽引するトレーラー17とのセット作業においても本機の作物適応性或は圃場適応性を低下させないメリットがある。
【0016】
また、車台部の地上高をハイレベルにすることによって作物との干渉を防止でき、更に、図5に示す如くアクスル部17cを垂直状に構成することによっても作物との干渉を防ぐことができる。
【0017】
前記薬液サブタンク16はトレーラー17に搭載して牽引する構成であるため、本機への重量負荷はかからず、前後に配置する薬液散布装置8と薬液タンク5との機体前後バランスを崩すことがなく所期通り安定させることができる。
【0018】
また、本機後部に搭載の薬液タンク5と本機にて牽引される薬液サブタンク16とは、この前後の最小距離間を可撓性を有した伸縮可能な蛇腹状の吸水ホース20にて連通連結した構成としている。旋回時、前後のタンク間の距離が変動しても上記構成によって容易に対応することができる。
【0019】
前記吸水ホース20は、図4に示すように、それぞれのタンクのどちらか一方側の外側附近に配置しておくと、作業条件によりトレーラー17を着脱する際、吸水ホース20の取り付け、取り外しが機体の外側より容易に行え、安全且つ迅速に作業ができる。
【0020】
なお、図6に示すように、吸水ホース20を牽引ヒッチ18の略真上に配置した場合には、旋回時、最も前後タンク間の距離変動が小さくなるため、旋回時の吸水ホース20の伸縮負荷が最も小さく、ホース損傷のリスクも小さく安心して圃場内の旋回が行える。
【0021】
図5に示す実施例では、トレーラー17に搭載した薬液サブタンク16の支持構造において、薬液サブタンク16の底部両端部に凸部16a,16aを設け、この凸部16a,16aで車台部17bの両端部を挟むように係合保持させた構成としている。これにより、タンクの横ズレが防止でき、安定よく支持することができる。
【0022】
また、薬液サブタンク16は、車台部17bの前部に設けたステー22に押し当て、薬液サブタンク16の後部に設けたブラケット23を締付固定具24によって前方に押し付けて締付固定する構成としている。このように薬液サブタンク16をトレーラー17に対して簡単に着脱することができれば、薬液サブタンク16を取り外した場合にはトレーラ17を運搬台車として活用することができる。
【0023】
図4に示すように、車台部17bの車台幅Dより薬液サブタンク16をオーバーハング(D1,D1)して設けることにより、小型の車台部で大型タンクを配置することができる。
【0024】
また、図7に示すように、散布制御装置の薬液吸込吐出経路は、薬液タンク5の防除ポンプP間に至る低圧吸水経路30と、ポンプPから流量制御弁31を経て各散布ブーム9L,9C,9R間に至る高圧吐出経路32とからなり、各散布ホース10L,10C,10R等で連結される。高圧吐出経路32にはポンプの吐出量を制御する調圧制御弁33を有した余水戻し経路34が設けられてタンク5に還元できるようになっている。また、高圧吐出経路32とタンク5及びサブタンク16の底部との間には撹拌経路35が途中部からそれぞれのタンク5,16に分岐(撹拌分岐経路35a,35b)して連通され、薬液をタンク5及びサブタンク16内へは撹拌ノズル部25によって常時噴出還元させながら各タンク内の薬液を撹拌するようになっている。これにより、薬液タンク5及びサブタンク16の底部附近に設けられた撹拌ノズル25,25の撹拌作用によって各タンク内の薬液を循環させ濃度を均一にすることができる。
【0025】
薬液タンク5と薬液サブタンク16との配置関係(図7参照)において、薬液タンク5の底面より薬液サブタンク16の底面を高くすることによって薬液サブタンク16内の薬液が底部に残ることなく吸水ホース20を通じて薬液タンク5内へ確実に吸い込ませることができる。
【0026】
図8に示す実施例は、左右のトレーラ17の車輪17a,17bの前側に分草杆(デバイダ−)26Fを設けることによって走行する車輪が横方向に広がり繁茂する作物を踏み込まないようにしている。
【0027】
また、図9に示すように、車輪17a,17bの後方に設けられた分草杆26Rは、走行跡上を薬液散布する後方散布装置27の散布ノズル27aと前後方向でラップさせて設け、この散布ノズル27aにより分草?26R内部の空間内へ薬液を噴霧するように構成することで、左右に押し分けられた葉と葉の間に噴霧することができ、薬液噴霧が地表面にまで達することになって除草効果がより高められる。
【0028】
前記後方散布装置27は、図3に示すように、トレーラー17の車台部17bに対し昇降リンク機構28を介して昇降可能に構成してあり、昇降シリンダ29の伸縮作動によって昇降するものであり、本機の運転位置から遠隔操作できるようになっている。昇降リンク機構28の支点部はトレーラー17の最低地上高より高い位置に設定することで、後方散布装置を上方に高く持ち上げて作物や障害物との干渉を防止でき、車台部より上方に持ち上げて格納することもでき安全走行が可能となる。
【0029】
また、トレーラー17には、車台部17bに乗り降りするステップ36が設けられ、タンク蓋の開閉や薬液の調合などは車台上に乗って容易に行うことができる構成となっている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】散布作業車の側面図
【図2】散布作業車の平面図
【図3】散布作業車及びトレーラー部の要部の側面図
【図4】同上要部の平面図
【図5】サブタンク搭載のトレーラー部の背面図
【図6】薬液タンクとサブタンクとの関係を示す別実施例の平面図
【図7】散布制御装置の薬液吸込吐出経路図
【図8】散布作業車の別実施例の平面図
【図9】散布作業車の要部の平面図
【符号の説明】
【0031】
5 薬液タンク
8 薬液散布装置
16 薬液サブタンク
17 トレーラー
20 吸水ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走しながら圃場の作物に薬液を散布する薬液散布装置(8)を備えた散布作業車において、散布作業車の車体後部には薬液タンク(5)を搭載し、さらに、車体後方には薬液サブタンク(16)を搭載したトレーラー(17)を牽引可能に構成したことを特徴とする散布作業車。
【請求項2】
前記薬液散布装置(8)は、車体の前方に配置してあることを特徴とする請求項1記載の散布作業車。
【請求項3】
前記薬液タンク(5)と薬液サブタンク(16)とは前後の最小距離間において吸水ホース(20)で連通連結してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の散布作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−75108(P2010−75108A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248407(P2008−248407)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】