説明

散気ノズルおよび散気槽

【課題】散気ノズルの設けられた小型の散気管を槽内に設置して散気用気体を効率的に散気することができる散気ノズルおよび散気槽を提供する。
【解決手段】散気管Aに着脱可能に接続される散気ノズル10は、散気用気体を流通する、先端が開放された管12と、多孔質中空円筒体14を有する。多孔質中空円筒体14は先端が閉塞され管12が緩装される。これにより、管12と多孔質中空円筒体14の間に隙間Cが形成される。散気管Aから管12に流通する散気用気体は管12の先端から多孔質中空円筒体14の内部空間部に流入し、管12と多孔質中空円筒体14の間の隙間Cを通って多孔質中空円筒体14の全面に行き渡って均一に散気される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散気用気体を散気槽内に散気する散気管に取り付けられる散気ノズルおよびその散気ノズルを用いた散気槽に関する。
【背景技術】
【0002】
下水排水や工場廃水等の大量に発生する有機性汚水は、活性汚泥曝気槽等の生物学的処理装置を備えた汚水処理システムによって好気性または嫌気性雰囲気下で効率的に処理されている(例えば特許文献1参照)。
このような汚水処理システムの曝気槽等では、大型の槽内に張り巡らされた散気管に数多くの散気ノズルが設けられ、空気や酸素富化空気等の散気用気体が散気ノズルから槽内の水中に散気され、水中の溶存酸素量が所定濃度に維持される。なお、散気ノズルに代えて、多孔質板からなる散気盤が用いられることもある。
【0003】
上記曝気槽等で用いられる散気ノズルは通常筒状であり、場合によっては、このような散気ノズルが省略されて散気管に開けた無数の孔から散気用気体が散気されるケースも多い。
【0004】
一方、戸建家屋や集合家屋で発生するし尿等の汚水を処理するために、汚水の発生源ごとに浄化槽を設けることも多く、この場合も、固定床タイプの生物学的処理装置を備え、上記汚水処理システムの曝気槽等のものと同様の散気管および散気ノズルが用いられる。
【0005】
また、例えば飲食店等の業務用厨房では、発生量はさほど多くはないものの高濃度の油分等を含む排水を排出する。このため、例えば日本では、国土交通省の告示により、グリス阻集器の設置が義務付けられている。さらにまた、地方公共団体の条例等により、一定量以上の排水を排出する事業所について油分等の排出濃度が規制されているところもある。
上記のような濃度規制の基準を達成するには、上記浄化槽と同様の生物学的処理装置を設けるとともに、高濃度の油分によって生物学的処理機能が阻害されないように、一次処理として排水中の油分のみを予備的に分解する一次処理層(予備槽)としての散気槽を設けることが必要となる。また、濃度規制が適用されない事業所についても、排出される油分が配水管等を詰まらせることを防止するためには、グリス状の油脂を回収する、グリストラップと呼ばれる排水ピット(枡)等を設けることが必要である。
このような一次処理層または排水ピットは、処理を要する排水量が比較的少量であるとともに、飲食店等に個別に設ける必要があるためスペースを多く占めないように、槽が比較的小型化されており、例えば100リットル程度の小容量のものが用いられる。
そして、上記一次処理層では、散気用の気体として酸素富化空気やオゾン富化空気が用いられることが多いが、散気ノズルを取り付けた散気管については、上記の曝気層や浄化槽と同様のものが用いられる。但し、処理層のスケールダウンに応じて、例えば散気用の孔は例えば1mm程度の小径に形成される。また、散気管の材料として、安価な樹脂が用いられることも多い。
【特許文献1】特開2005−246185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の一次処理層としての散気槽等に用いられる散気管に取り付けた円筒形状の散気ノズルや孔では、例えば小容量の槽に設置して効率的に槽内の水中(汚水中)にオゾン富化空気等の散気用気体、特に酸素やオゾン等を溶存させるうえで必ずしも充分ではない。すなわち、例えば、散気管に形成した1mm程度の径の孔から水中に流出される散気用気体の泡は、例えば数十cm程度の深さの水中を上昇する過程で集合して10mm程度の径の気泡となるため、水との接触効率が悪く、したがって散気効率が悪い。
また、上記従来の排水ピットについては、溜まったグリス状の油分を定期的に回収する作業が煩雑であり、かつ回収頻度の多さが無視できない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、散気ノズルの設けられた小型の散気管を槽内に設置して散気用気体を効率的に散気することができる散気ノズルおよび散気槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る散気ノズルは、散気用気体を流通する、先端が開放された管と、先端が閉塞され該管が緩装される多孔質中空円筒体を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る散気ノズルは、前記管の管壁に多数の孔が形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る散気ノズルは、前記多孔質中空円筒体が多孔質金属材料または多孔質無機材料で形成されてなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る散気槽は、散気用気体を供給する散気管が配設される散気槽であって、該散気管から底面に向けて延出するように上記の散気ノズルを設けてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る散気槽は、前記底面から5〜15mm離間した位置に前記散気ノズルの先端が配置されてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る散気槽は、散気用気体としてオゾン含有空気を用い油分を含有する汚水中の油分を化学的に処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る散気ノズルは、散気用気体を流通する、先端が開放された管と、先端が閉塞され管が緩装される多孔質中空円筒体を有するため、管の先端から多孔質中空円筒体の内部に流入した散気用気体が、管と円筒体の間の隙間を通って円筒体の全面に行き渡って均一に散気されるため、また、このとき、気体が例えば径が100μm程度の微細で比表面積(気泡の単位気体量当たりの表面積)の大きな気泡の形態で散気されるため、効率的に散気することができる。
また、本発明に係る散気槽は、散気管から底面に向けて延出するように上記の散気ノズルを設けているため、散気ノズルの先端部分が散気槽の底面付近に位置するように散気管を配設することで、散気槽の高さ(深さ)寸法を小型化することができるとともに効率的に散気することができ、このとき、散気ノズルの先端部分からも確実に散気されるため、散気ノズルの先端部分が槽内に沈積した汚泥等によって閉塞するおそれが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る散気ノズルおよび散気槽の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0016】
まず、図1を参照して本実施の形態例に係る散気ノズルについて説明する。図1は、上下方向に伸びる中心線を挟んで左側に散気ノズルの外観を、および右側に中心線を含むように破断した散気ノズル内部構造を、合わせて一図で示したものである。
【0017】
図1に示すように、散気管(図1中、矢印Aで示す。)のめねじ部分に着脱可能に接続される本実施の形態例に係る散気ノズル10は、散気用気体を図中白抜き矢印で示す方向に流通する、先端が開放(図1中、矢印P1で示す。)された管12と、多孔質中空円筒体14を有する。多孔質中空円筒体14は先端が閉塞され(図1中、矢印P2で示す。)管12が緩装される。これにより、管12と多孔質中空円筒体14の間に隙間(図1中、矢印Cで示す。)が形成される。
【0018】
散気ノズル10は、例えば、1個で毎分0.25リットル程度の散気を行う場合、長さLを15mm程度、直径Dを12mm程度とする。そして、多孔質中空円筒体14の中空部の径や管12の径は、散気量を考慮してこれら長さLおよび直径Dによって制限される範囲内の適宜の寸法とする。
【0019】
管12の材料は特に限定するものではないが、処理する汚水や用いる散気用気体等による腐食を防止する観点からは、耐食性金属や耐食性樹脂を用いることが好ましく、さらに、材料コストの観点を加味すると、例えば塩化ビニル樹脂等の樹脂とすることがより好ましい。なお、管12の散気管Aに接続される側の端部はテーパ状に形成され、散気用気体の流通抵抗を小さくしている。
【0020】
多孔質中空円筒体14の材料は多孔質のものであれば特に限定するものではないが、耐久性を考慮して、好ましくは、多孔質金属材料や多孔質無機材料を用いる。また、処理する汚水や用いる散気用気体等による腐食を防止する観点からは耐食性材料を用いる。
このような多孔質金属材料としては、例えばステンレス材(SUS材)等の金属粉を焼結した多孔質成形体等を好適に用いることができる。また、多孔質無機材料としては、セラミック粉や炭素粉等を焼結した多孔質成形体等を好適に用いることができる。このような材料で形成した多孔質中空円筒体14は、中空部と外部とを連通する例えば70μm以下程度の径の気孔を無数に有する。
【0021】
上記のように構成される散気ノズル10は、散気管Aから管12に流通する散気用気体が管12の先端から多孔質中空円筒体14の内部空間部に流入し、管12と多孔質中空円筒体14の間の隙間Cを通って多孔質中空円筒体14の全面に行き渡って均一に散気される。
また、このとき、散気用気体が微細な径の気孔から例えば径が100μm程度の微細で比表面積(気泡の単位気体量当たりの表面積)の大きな気泡の形態で散気され、この気泡は例えば15cm程度の深さの水中を上昇する際に集合してもせいぜい数mm程度の径の集合気泡に止まるため、散気用気体を効率的に散気することができる。
また、散気用気体は、管12内を流通する時点では大きな流速を持っていても多孔質中空円筒体14の微細な径の気孔を介して勢いを減じられて流出するため、水面に到達したときに気泡が破裂することにより生じる飛沫が軽減され、周囲を汚損するおそれが小さい。このことは、例えば汚水を曝気する際に雑菌等の飛散を防止するうえで有益である。因みに、1個の散気ノズル10から散気される散気用気体は、水中で直径10cm程度の気泡柱を形成する。
散気ノズル10は、管12の管壁に適宜の寸法の多数の孔を形成してもよく、これにより、散気用気体を多数の孔から多孔質中空円筒体14の中空部にバランスよく流出させ、多孔質中空円筒体14から均一に散気することができる。
【0022】
つぎに、本実施の形態例に係る散気ノズル10を用いた本実施の形態例に係る散気槽について、図2を参照して説明する。図2は、散気ノズル10を取り付けた散気管を配設した直方体状の散気槽を、手前の2側面の壁および上部を省略して表示したものである。
【0023】
図2に示す散気槽16は、支持部材17によって支持されて槽の下部にほぼH字状に、例えばSUS材で形成される散気管18が配設される。H字状の4つの端部のそれぞれからさらに二股に分岐して設けられる散気管18の散気ノズル10との接続部分Aは槽の底面に向けて突設される。散気ノズル10は、接続部分Aに接続され、さらに槽の底面に向けて延出するように設けられる。これにより、槽の底面から例えば5〜15mm離間した位置に散気ノズル10の先端が配置することができる。
なお、図2中、散気ノズル10は槽内に8個設けられているように示しているが、具体的には、例えば散気槽16の容量が100リットル程度の場合、散気管18がさらに多数列配列されるとともに散気ノズル10が16個〜20個程度設けられる。また、図2中、参照符合20は、散気時の散気流量を調整し、また、散気槽10を休止等するときに、図示しない散気用気体供給源と散気槽16との間を遮断するための元バルブを示す。このとき、必要に応じて元バルブ20の近辺に逆止弁を設けておくと、散気槽16で処理する水が散気用気体供給源に向かって散気管18内を逆流することを確実に防止することができる。
【0024】
上記のように構成される散気槽16は、散気ノズル10の先端部分が散気槽16の底面付近に位置するように散気管18を配設することで、散気槽16の高さ(深さ)寸法を小型化することができるとともに効率的に散気することができる。また、このとき、散気ノズル10の先端部分からも確実に散気されるため、散気ノズル10の先端部分が槽内に沈積した汚泥等によって閉塞するおそれが少ない。
【0025】
つぎに、本実施の形態例に係る散気槽を、飲食店のグリストラップに用いる例について、図3を参照して説明する。
グリストラップは、飲食店の調理場に設けられ、食廃油等を発生源とする高濃度の油分を含む排水がそのまま下水管に放流されることのないように、例えばオゾン発生器から発生したオゾンを排水中に供給して、脂肪族炭化水素やアルコール類を酸化分解する(化学的処理)。
【0026】
図3に示すように、グリストラップ22は、通常のものと同様に、例えば3槽で構成される。
第1槽24は、例えば排水を予備処理(一次処理)するためのものであり、例えば、回収ネット籠26を備え、食材の残渣等の比較的大きなごみを適宜取り出し、処分する。第1槽24の上部には粘性の高いグリス状の油分が浮遊、滞留する。なお、必要に応じて、油分回収用のネット籠が設けられることもある。
第2槽28は、本実施の形態例に係る散気槽であり、散気ノズル10の先端部分が第2槽28の底面付近に位置するように散気管18が配設される。散気ノズル10からは例えばオゾンを含む空気が散気され、第2槽28に流入する油分を酸化分解する。これにより、粘性の高いグリス状の油分が比較的さらさらとしたヘドロ状にさらには液状に変化する。
第2槽28で処理された排水は、第3槽30に流入し、トラップ管32から排出される。このとき、配水管を詰まらせるおそれのない程度にまで性状が改善された油分もトラップ管32から排出される。
なお、第2槽28および第3槽30についても、時間の経過によって、上部には油分が浮遊、滞留する。このため、第1槽24、第2槽28および第3槽30において、ある程度の頻度で油分を回収する作業は必要であるが、従来の装置に比べて、作業頻度が軽減され、作業性が改善される。
【0027】
上記のように構成されるグリストラップ22において、第2槽28として用いる本実施の形態例に係る散気槽16は、散気管および散気ノズルからなる散気装置が簡易かつ小型化された構造であるため、予め組み立てた状態で現地で据付施工する場合と、現地で組立て施工する場合のいずれにおいても施工が容易である。また、定期的にグリストラップ22を清掃する際には、散気装置を第2槽28からワンタッチで取り出せるため、清掃作業が容易である。また、必要に応じて散気ノズルを散気管から着脱して簡単に交換することができる。
なお、上記のグリストラップ22において、第1槽24および第3槽30にも本実施の形態例に係る散気槽を用いると、より好ましい。また、排水中のBOD等の高次処理を必要とする場合は、例えば、グリストラップ22を予備処理槽とし、予備処理後の水を生物化学的処理する曝気槽等がさらに設けられる。
【0028】
本実施の形態例に係る散気槽16は、上記のようにオゾン含有空気を用い油分を含有する汚水中の油分を化学的処理する場合に好適に用いることができるが、これに限らず、生物学的処理を行う場合においても好適に用いることができることはいうまでもない。
また、本実施の形態例に係る散気槽16は、小型の処理装置において特に有用性を発揮するものであるが、これに限らず、大型の処理装置に適用することを排除するものではない。
【実施例1】
【0029】
実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例)
容量12リットルの水槽に本発明の散気ノズル4個を備えた散気装置を配置して、純水10リットルを投入した。このときの水深は約15cm、水温は25℃である。水槽を密閉し、直径16mmのガス抜き穴を設けた以外は水槽を密閉した。エアポンプで毎分10リットルの空気を散気ノズル4個に分配して供給するとともに、エアポンプと水槽の間にオゾン発生装置を設け、共有する空気中に40ppmのオゾンを含有させた。
1時間散気を行った後、油脂分としてラード5gおよび牛脂5gを純水に溶解し、さらに、1時間散気を継続した。
その後、ガス検知管(ガステック社製 オゾン用検知管18M)を10本用い、水面上の密閉空間のオゾン濃度を測定した。オゾン濃度の平均値は痕跡(1ppm以下)であった。また、純水中の油分は乳化し、さらさらな状態であった。ガス抜き穴から排出される空気は僅かなオゾン臭があった。
【0031】
(比較例)
実施例と同様の条件の水槽および水を用い、実施例と同様の条件でオゾンを含む空気を水槽に供給した。
このとき、実施例の散気装置に代えて、散気部分の長さ20cmの塩ビ管に2cm間隔で1mmの孔を2列、計14個開けた散気装置を用い、実施例と同様の条件で水面上の密閉空間のオゾン濃度を測定した。オゾン濃度の平均値は30ppmであった。また、純水中の油分はわずかに乳化するに止まっていた。ガス抜き穴から排出される空気は極度のオゾン臭があった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態例に係る散気ノズルを説明するための図である。
【図2】本実施の形態例に係る散気槽を説明するための図である。
【図3】本実施の形態例に係る散気槽を用いたグリストラップを説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
10 散気ノズル
12 管
14 多孔質中空円筒体
16 散気槽
17 支持部材
18 散気管
24 第1槽
26 回収ネット籠
28 第2槽
30 第3槽
32 トラップ管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散気用気体を流通する、先端が開放された管と、先端が閉塞され該管が緩装される多孔質中空円筒体を有することを特徴とする散気ノズル。
【請求項2】
前記管の管壁に多数の孔が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の散気ノズル。
【請求項3】
前記多孔質中空円筒体が多孔質金属材料または多孔質無機材料で形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の散気ノズル。
【請求項4】
散気用気体を供給する散気管が配設される散気槽であって、該散気管から底面に向けて延出するように請求項1〜3のいずれか1項に記載の散気ノズルを設けてなることを特徴とする散気槽。
【請求項5】
前記底面から5〜15mm離間した位置に前記散気ノズルの先端が配置されてなることを特徴とする請求項4記載の散気槽。
【請求項6】
散気用気体としてオゾン含有空気を用い油分を含有する汚水中の油分を化学的に処理することを特徴とする請求項4または5記載の散気槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−260529(P2007−260529A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87249(P2006−87249)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(506105364)
【Fターム(参考)】