説明

散気装置の圧力損失測定方法

【課題】散気水深、散気装置圧損の影響を測定値より排除して散気装置の圧力変化を精度良く測定できるようにした散気装置の圧力損失測定方法を提供すること。
【解決手段】有機性汚水を生物学的に処理するようにした処理槽に設置する散気装置2に接続する空気供給配管ラインL1に、下端の開口より空気を直接水中に放出するようにした放風配管ラインL2を併設し、この両ラインL1、L2の差圧を計測することによって散気装置2の圧力損失を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散気装置の圧力損失測定方法に関し、特に、散気水深、散気装置圧損の影響を測定値より排除して散気装置の圧力損失を精度良く測定するようにした散気装置の圧力損失測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、窒素を含む有機性汚水を生物学的に処理する処理方法として、特許文献1に示すように、有機性汚水が流入するようにした処理槽(生物反応槽)内を活性汚泥が循環するよう脱窒槽、硝化槽及び沈澱池に仕切り、脱窒槽に供給された汚水は、脱窒槽内において嫌気条件下で脱窒細菌の作用により汚水中の窒素成分を除去した後、この脱窒槽の処理液を次に硝化槽へ流入して、好気条件下で硝化細菌の作用により処理液中の窒素成分を除去するようにした汚水の処理装置が提案されている。
この場合、槽内での硝化細菌の作用による処理液中の窒素成分の除去効率を向上させるためには、硝化細菌の活性化を図ることが必要で、このため硝化細菌を固定化し高濃度に菌体を保持し、反応速度を向上させるようにしている。この硝化細菌を固定化した担体を硝化槽に投入することで効率良く窒素除去を行うことができる。
また、硝化細菌を固定化した担体が硝化槽内より妄りに流出しないように、硝化槽の処理液流出口には、担体を分離するようにしたスクリーンが設けられているが、このスクリーンは汚水中に浮遊している固体成分にて目詰まりが生じて処理液の流出を阻害するものとなる。そこで、このスクリーンの目詰まりを防止するため、スクリーン下方の処理槽内底位置に散気装置を配設し、散気装置よりスクリーン面に向かって噴出される気体により、その気泡と処理槽内に多数収納された微生物を担持した担体とをスクリーンに衝突させることにより、スクリーンに付着した汚れが洗浄されて、スクリーンの目詰まりを防止して処理液の流出をスムーズに行うようにしている。
【0003】
ところで、この処理槽内下方位置に配置する散気装置には、処理槽内に流入する汚水を攪拌し、かつスクリーン目の洗浄を行う目的で所要圧力で空気を噴出するようにして圧力空気を供給しているが、この散気装置は有機性汚水中に常に浸漬されているため、汚泥物質などにて散気装置の噴気孔が経時的に詰まり、散気効率が低下するとスクリーンに付着する汚れの洗浄効率が低下する。
このため、散気装置の目詰まりを検知して散気装置を洗浄し、再び所要圧力で空気を噴出するようにしている。この散気装置の目詰まり検知は、図2に示すように、ヘッダー管1或いはブロアーから槽の内底部に配置した散気装置2まで空気供給配管ラインL1を接続し、かつ該空気供給配管ラインL1に調整弁6、風量計7、圧力計8を接続し、圧力計表示値の経時的な数値上昇によって散気装置の圧力損失増加、すなわち、散気装置の目詰まり状況を把握するようにしている。
【0004】
しかし、この散気装置は水深5000mm〜10000mm程度の槽底部に配設されるので、散気装置には水深に応じた水圧が常にかかっている。このため、散気装置へ供給する空気の圧力(全体圧力値)は、次式にて表される。なお、配管圧損は無視するものとする。
H=H1+H2+H3 ・・・(式1)
H:全体圧力値
H1:散気水深(5000〜10000mmAq)
H2:散気装置圧損(240mmAq)
H3:経年損失(300〜800mmAq)
したがって、この圧力測定方法では、水深圧力が圧力計の測定値に上乗せされてしまうので、ここで、水深圧力と散気装置での圧力損失を比較した場合、水深圧力の方が極めて大きい値となるため、設置する圧力計のレンジが不必要に増大し、精度が悪化して正確な散気装置の圧力損失の変化、すなわち、散気装置の目詰まりの状況を正確に掴めないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2579122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の散気装置の圧力損失測定方法の有する問題点に鑑み、散気水深、散気装置圧損の影響を測定値より排除して散気装置の圧力損失及びその変化を精度良く測定できるようにした散気装置の圧力損失測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の散気装置の圧力損失測定方法は、有機性汚水を生物学的に処理するようにした処理槽に設置する散気装置に接続する空気供給配管ラインに、下端の開口より空気を直接水中に放出するようにした放風配管ラインを併設し、この両ラインの差圧を計測することによって散気装置の圧力損失を測定するようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、放風配管ラインを空気供給配管ラインと同長とし、放風配管ラインの下端開口位置と、空気供給配管ラインの散気装置の位置とを同じ水平レベルとすることができる。
【0009】
また、放風配管ラインと空気供給配管ライン間に配設する差圧計により両ラインの差圧を計測することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の散気装置の圧力損失測定方法によれば、有機性汚水を生物学的に処理するようにした処理槽に設置する散気装置に接続する空気供給配管ラインに、下端の開口より空気を直接水中に放出するようにした放風配管ラインを併設し、この両ラインの差圧を計測することによって散気装置の圧力損失を測定するようにしているから、水中に設置する散気装置の経年劣化(目詰まりによる圧力損失)測定を水深圧力の影響を無くして散気装置の圧力損失及びその変化を正確に測定することができる。
【0011】
また、放風配管ラインを空気供給配管ラインと同長とし、放風配管ラインの下端開口位置と、空気供給配管ラインの散気装置の位置とを同じ水平レベルとすることにより、水深の浅深に関係なくどんな水深の処理槽においても散気装置の圧力損失及びその変化を正確に測定することができる。
【0012】
また、放風配管ラインと空気供給配管ライン間に配設する差圧計により両ラインの差圧を計測することにより、僅かな差圧をも正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の散気装置の圧力損失測定方法の一実施例を示す説明図である。
【図2】従来の散気装置の圧力損失測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の散気装置の圧力損失測定方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に、本発明の散気装置の圧力損失測定方法の一実施例を示す。
この散気装置の圧力損失測定方法は、図1に示すように、有機性汚水を生物学的に処理するように、活性汚泥が脱窒槽、硝化槽及び沈澱池を循環するようにした汚水の処理槽、特に限定されるものではないが、例えば、硝化槽内の内底部に配設した散気装置に圧力空気を供給するようにした空気供給配管ラインL1と、下端の開口より空気を直接処理槽内の水中に放出するようにした放風配管ラインL2とを併設し、この空気供給配管ラインL1と放風配管ラインL2間を差圧計5を備えた配管L3にて接続し、差圧計5にてこの両ラインの差圧を測定するようにし、これにより高水深の処理槽であってもその散気水深、散気装置圧損の影響を測定値より排除して散気装置2の圧力損失及びその変化を精度良く測定するようにするものである。
【0016】
この空気供給配管ラインL1は、予め定めた圧力を有する空気を供給するよう水面より上方位置に配設したヘッダー管1或いはブロアーと硝化槽内底部でスクリーン下方位置に配設した散気装置2間を空気供給管3にて接続するとともに、この空気供給管3に供給空気量を調整するための調整弁6と、その供給空気量を計測するための風量計7とを直列的に接続して構成し、これにより所定量の空気をヘッダー管1より散気装置2へ供給するようにする。
この場合、特に限定されるものではないが、硝化槽の水深H1は5000mm〜10000mm程度で、この水深位置に散気装置2は設置される。
【0017】
また、この空気供給配管ラインL1とは別に放風配管ラインL2を配設する。この空気供給配管ラインL1と放風配管ラインL2とは併設するもので、空気供給配管ラインL1と同様に圧力空気を供給するようにしたヘッダー管1或いはブロアーと、硝化槽内底部間を接続するように空気供給管4を配設し、かつこの空気供給管4に、供給空気量を調整するための調整弁6と、その供給空気量を計測するための風量計7とを直列的に接続する。
なお、この放風配管ラインL2の空気供給管4の下端は水中に開口し、かつその開口位置は前記空気供給配管ラインL1に接続した散気装置2と同じ水平レベルとなるように設定する。これにより、放風配管ラインL2の空気供給管4の下端開口41からは水深による水圧は作用するも目詰まりによる圧損の影響は受けないものとなる。
【0018】
併設する空気供給配管ラインL1と放風配管ラインL2間を、差圧計5を備えた配管L3にて接続する。この配管L3の接続位置は両ラインとも風量計7を経た後の位置とし、これにより散気水深の影響を受けることなく、散気装置2の目詰まりによる圧力損失及びその変化を精度良く測定することができるようにする。
【0019】
上述の如く構成する本発明において、散気装置2の目詰まりによる圧力損失及びその変化を測定するには、ヘッダー管1から空気供給配管ラインL1と放風配管ラインL2に差圧が0となるようにして調整弁6を調整して空気を供給する。この立ち上げ初期は散気装置2に目詰まりが生じていないので経年損失H3は0であるが、この散気装置2には汚泥物質などにより経時的に目詰まりが生じ、これにより空気供給配管ラインL1側の圧力が高まるようになる。しかし、放風配管ラインL2側では下端が開口されているので圧力損失の変化は生じない。したがって、この散気装置2の目詰まりにより空気供給配管ラインL1と放風配管ラインL2との間に差圧が生じるようになる。この差圧を検出することで散気装置2の目詰まり状況を検知することができ、適切時に散気装置2を洗浄することができる。
【0020】
なお、本発明による散気装置へ供給する空気の圧力(全体圧力値)は、次式にて表される。この場合、配管圧損は無視するものとする。
放風配管ラインの全体圧力値H’は、式2にて表せる。
H’=H1 ・・・(式2)
H1:散気水深
よって、本発明によって測定される差圧hは、式3で示される。
差圧h=H−H’=H2+H3 ・・・(式3)
H2:散気装置圧損(240mmAq)
H3:散気装置の目詰まり等による経年損失(300〜800mmAq)
【0021】
したがって、本発明による場合、立ち上げ初期は散気装置に目詰まりが生じていないため経年損失H3が0で、h=240mmAqとなり、運転時間に伴って散気装置の目詰まりが生じてくると経年損失H3が徐々に増加していくこととなるが、経年損失H3のオーダと極端に異なる損失項が存在しないため、適切なレンジの圧力計を選定することが可能となり、正確な経年損失H3値を測定することができる。
これにより、今まで把握しづらかった散気装置の経年圧力損失を正確に掴むことが可能となり、維持管理面で大きな効果が期待できる。
【0022】
以上、本発明の散気装置の圧力損失測定方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の散気装置の圧力損失測定方法は、散気水深、散気装置圧損の影響を測定値より排除して散気装置の圧力損失及びその変化を精度良く測定できることから、有機性汚水の生物学的処理の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
L1 空気供給配管ライン
L2 放風配管ライン
L3 配管
1 ヘッダー管
2 散気装置
3 空気供給管
4 空気供給管
41 下端開口
5 差圧計
6 調整弁
7 風量計
8 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚水を生物学的に処理するようにした処理槽に設置する散気装置に接続する空気供給配管ラインに、下端の開口より空気を直接水中に放出するようにした放風配管ラインを併設し、この両ラインの差圧を計測することによって散気装置の圧力損失を測定するようにしたことを特徴とする散気装置の圧力損失測定方法。
【請求項2】
放風配管ラインを空気供給配管ラインと同長とし、放風配管ラインの下端開口位置と、空気供給配管ラインの散気装置の位置とを同じ水平レベルとしたことを特徴とする請求項1記載の散気装置の圧力損失測定方法。
【請求項3】
放風配管ラインと空気供給配管ライン間に配設する差圧計により両ラインの差圧を計測するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の散気装置の圧力損失測定方法。

【図1】
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【図2】
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