説明

散気装置

【課題】散気管の散気孔を閉塞させることなく活性汚泥に対する酸素供給効率と膜モジュールの膜洗浄効率とを高める。
【解決手段】散気装置1は膜モジュール2の真下に配置される散気管11と当該真下でない位置にて散気管11と並列に配置される散気管12とを備える。前記真下の位置における散気管11の下面において開口部が管11の軸方向に沿って複数形成される一方で当該開口部よりも小径の複数の散気孔が当該真下でない位置であって当該開口部よりも高位であり且つ管11の軸よりも低位の位置にて前記軸方向に沿って配置されるように当該方向の断面を挟んで形成されている。散気管12の下面には複数の開口部が管12の軸方向に沿って形成される一方で当該開口部よりも小径の複数の散気孔が当該開口部よりも高位であり且つ管12の軸よりも低位の位置にて当該軸方向に沿って配置されるように当該方向の断面を挟んで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浸漬型の膜モジュールを用いた反応槽に備えられる散気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浸漬型の膜モジュールを用いた下水処理装置として例えば複数の外圧式固液分離平膜を反応槽内に膜面が鉛直に配置されるタイプのものがある。この膜分離活性汚泥処理(以下、MBRと称する)方式の下水処理装置では反応槽の下部に設置された散気管から空気気泡を曝気している。これは反応槽内の活性汚泥を構成する微生物に酸素を供給するためであることと、気泡上昇に伴って生成される水流により膜表面を洗浄して膜面の付着物を除去して目詰まりを抑制するためである。
【0003】
MBR方式の下水処理装置は濁質成分の流出を防ぐことが可能であるため、最終沈殿池で固液分離する場合と比べて活性汚泥の濃度を高くして運転することが可能となっている。その結果、装置を小型化でき、さらに発生汚泥を低減できる。
【0004】
MBR方式は活性汚泥濃度が高いことと一定以上の大きさの気泡でなければ膜面の洗浄効果が得られないことから、散気管の散気孔の径は3〜10mmと比較的大きくする必要がある。一般にはこのサイズの孔を配管に複数形成させた構造の散気管が用いられる(例えば特許文献1)。膜モジュールの膜面の洗浄では、曝気による気泡の上昇によって生じる激しい気液混合流により膜表面を掃流することで膜面の汚れを除去し、汚れの蓄積を抑制する。
【0005】
下水道分野においては除去対象物質・目標処理水質に応じて使用する膜が選定される。主に固形物の除去を目的とする場合にはMF膜、UF膜が用いられており、MBRで使用される膜も通常MF膜である。膜の材質は大別すると有機膜と無機膜に区分できる。
【0006】
有機膜としては,MF膜及びUF膜では、PSF(ポリスルホン)、PE(ポリエチレン)、CA(酢酸セルロース)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PP(ポリプロピレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)のいずれかの材料からなるものが用いられている。NF膜及びRO膜ではポリアミド系の有機膜が多く用いられている。無機膜としては、セラミックを用いた膜(MF膜、UF膜、NF膜)が開発されている。
【0007】
また、膜の形状としては中空糸膜、平膜、管状膜、モノリスに区分できる。さらに,膜処理におけるろ過方式は全量ろ過(デッドエンドろ過:dead-end-filtration)とクロスフローろ過(cross-flow filtration)とがある。
【0008】
全量ろ過方式は膜で阻止されたものが膜に付着しろ過とともに付着物が累積するのである時点で一定時間ごとに必ずろ過を停止させ、累積した付着物の層を除去しなければならない。一方、クロスフローろ過方式は膜表面に平行な流れで常に膜表面を洗浄させながらろ過する。この方式はろ過と並流して付着物の除去が行われる連続運転ができ且つろ過速度を高く維持できるが、十分な平行流を作るためろ過流量に対して供給水側の流量が大きくなり、ろ過流量当りのエネルギー消費が大きくなる。
【0009】
MBR法は活性汚泥法による生物処理に膜ろ過を組み合わせた排水処理方法であるが、原理的に膜の目詰まり(ファウリング)を常に対策する必要がある。膜ろ過性能を低下させないための予防方法として、曝気などにより膜表面での流速を常に一定に保つ必要があり、そのための曝気動力を確保しなければならないことから、ランニングコストが高いという問題がある。それゆえに、洗浄を工夫することで高流量及び高効率なろ過処理の実現が必要とされている。
【0010】
MBR処理装置の生物反応槽は例えば非特許文献1に開示されたように無酸素槽と好気槽とからなり、好気槽内に膜モジュールを浸漬させている。好気槽内においては汚泥の付着による膜モジュールの閉塞予防のため、溶存酸素供給用の散気装置とは別に膜モジュール洗浄用の散気装置が具備され、この散気装置から供された気泡によって膜の表面を常時洗浄している。前記散気装置の配管へは散気ブロアとは独立した洗浄ブロアから散気用の空気を供給している。また、前記膜モジュールの内部は吸引ポンプによって負圧状態となっており、膜モジュールの集水路内のろ過水は当該吸引ポンプによって好気槽の外部に搬出される。ろ過水は系外への排出の前にろ過水槽に一定量貯留される。そして、膜モジュールの膜表面の汚れによるろ過流量低下を予防するために一定周期で前記ろ過水による当該膜表面の逆洗浄が行われる。さらに、膜表面の有機物除去のため前記ろ過水に洗浄用の薬液が添加されて定期的な薬液洗浄も実施されている。
【0011】
このような従来のMBR処理装置においては、膜ろ過性能を低下させないための予防方法として、膜面に対して均等に曝気を実施し、膜表面の流速を確保して洗浄効果を高める必要がある。そのため膜洗浄用の散気装置は、高効率な膜表面の洗浄効果にばらつきが生じないようにそれぞれの散気孔から均一に気泡が反応槽内へ注入されるように設計、製作しなければならない。
【0012】
しかし、散気装置を連続運転していると散気孔へ徐々に固形物が付着しまう問題がある。これは加圧空気の温度が高いので散気孔付近の活性汚泥が乾燥することが原因の一つと考えられる。固形物が付着した散気孔では通過する空気の流量が減少するため、散気孔の外側における活性汚泥液の並行流速度が低下し、付着物の付着がさらに加速される。その結果、散気孔ごとの付着物の量に差異が生じ、散気量の差異が生じて膜表面の洗浄が不均一となる。
【0013】
MBR処理槽の設計や処理運転においては膜透過流束(膜フラックス)の維持が重要であるが、上記理由により膜表面の洗浄が不十分な部分が発生するため、安定した固液分離処理ができなくなる。そこで、散気部の気体吐出孔の目詰まり対策として、例えば特許文献2〜4に記載の技術が提案されている。
【0014】
また、MBR処理装置においては、生物処理効率を維持するためには活性汚泥への酸素供給が重要となる。そこで、特許文献5に開示のMBR処理装置は膜モジュールの膜表面の近傍にて液相の上昇速度を高めると共に当該膜モジュールの下方では気泡の分散効果を高めることで膜の洗浄性能の向上と曝気による酸素の供給性能と向上とを図っている。具体的には膜モジュールの下方にて気泡を分散させる分散手段を備え、さらにこの分散手段の下方に散気管を配置させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】明電時報,通巻329号,2010,No.4,pp.9−11
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−106874号公報
【特許文献2】特開2001−29987号公報
【特許文献3】特開平10−286444号公報
【特許文献4】特開2001−170677号公報
【特許文献5】特開2006−224050号公報
【特許文献6】特開平11−28463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の散気管のもつ問題点を改善するために散気管の気泡の吐出孔の径をより大きくすることにより吐出孔を付着固形物によって閉塞から避ける構造を有する散気管が提案されている(特許文献2,3)。具体的には水平方向に配置した散気管の下部側にて空気吐出用の切れ込みやスリットを当該散気管の軸方向に沿ってまたは軸方向に対して垂直に形成することで固形物の付着による散気管下部側からの空気吐出量の減少を回避させている。
【0018】
このような構造では処理槽に設置された散気管における気泡吐出圧(散気管の設置水深が加味される)とブロアからの散気用空気の送気圧との関係にて散気管から吐出する気泡径は大きく影響を受けることとなる。すなわち、前記気泡吐出圧と前記送気圧とがほぼ等しく維持されている状態で散気管から気泡が吐出されている場合には、吐出される気泡は散気管の開口部の最小面積にて形成される部分から吐出されることとなり、気泡は比較的小径のものとはなる。しかしながら、気泡吐出圧と散気用空気の送気圧との差が小さいため、その気泡の吐出流量は比較的少量となりやすい。そのため、散気管からの吐出流量が少なく、膜表面の洗浄効果が不十分となりMBR処理に支障が生じることとなる。
【0019】
一方、前記気泡吐出圧よりも前記送気圧がよりも大きくとなるように設定した場合には、吐出される気泡は散気管の開口部のより広い面積にて形成される部分から吐出されることとなり、気泡は比較的大径のものとなりやすい。そして、散気用空気の送気圧の増加に応じて、気泡径と流量とが大きくなる。これにより、散気管からの吐出流量が増加するので膜表面の洗浄効果が向上する期待がもてる。しかしながら、吐出気泡径が大きくなるため気泡を均一に分布させて膜表面を洗浄することが困難となり洗浄効果が不十分となりMBR処理に支障が生じることとなる。
【0020】
したがって、特許文献2,3の散気管において、高流量のろ過の実現及び高効率な膜表面の洗浄効果にばらつきが生じないように散気管の散気孔から均一に気泡を供給するには散気管の構造と吐出特性を把握する必要がある。さらに、散気用空気の送気圧を調整し、気泡の分布状態と吐出流量を最適化する必要がある。しかしながら、その最適化した吐出状態がMBR処理装置において要求される仕様を満たすとは限らない。
【0021】
また、その他の散気部の目詰まり防止策として洗浄機能を有する特許文献4に記載の散気装置が知られている。この散気装置は曝気の初期時に散気装置に供給する空気によって散気装置内の活性汚泥混合液を先端の開放口から外部へ押し出す。これにより、散気装置内における活性汚泥混合液の残留が防止され、活性汚泥濃度が高い場合にあっても乾燥による散気孔の閉塞を回避できる。しかしながら、通常の曝気時には送気圧の脈動現象などにより、散気装置の内部へ吐出孔から槽内液が引き込まれ、吐出孔へ徐々に固形物が付着し、乾燥、固形化によって散気装置の目詰まりが生ずることとなるため、目詰まり防止対策は十分ではない。
【0022】
また、酸素の供給と膜の洗浄を兼ねた特許文献5のMBR処理装置は膜に供される気泡の良好な分散と膜表面近傍での高い液流速の2つを同時に達成することが可能となっている。しかしながら、活性汚泥への酸素供給効率を上げるためには微細気泡として液相での酸素移動界面での接触面積の増大を図る必要がある一方で膜洗浄効率を上げるためには極力大きい径の気泡による上昇流により強い気液混合流を発生させる必要がある。
【0023】
特許文献5のMBR処理装置のように、気泡を分散させると、発生した気泡が小径化するので活性汚泥への酸素供給と膜洗浄との効果を同時に発揮させるのは困難となる。そのため、MBR処理装置の生物処理効率を安定的に維持させるには散気装置を目的別に少なくとも2種類設置せざるを得ない(非特許文献1)。したがって、曝気装置、散気装置のためのブロワ設備が必要となり、これに伴い当該設備の設置スペースの確保及び空気供給系の配管ラインが複雑となる。
【0024】
以上のことから散気管の吐出孔を閉塞することなくMBR処理に要求される酸素供給量と膜洗浄のための気泡の分布状態と吐出流量を満たす散気管の実現がMBR処理の高効率につながり消費エネルギーの削減を進める上で重要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そこで、本発明の散気装置は、活性汚泥への曝気と膜モジュールの膜洗浄のための散気装置であって、前記膜モジュールの真下に配置される第一散気部材と、前記真下でない位置にて前記第一散気部材と並列に配置される第二散気部材とを備える。
【0026】
前記第一散気部材は、前記真下の位置における下面にて複数の開口部が当該部材の軸方向に沿って配置されるように形成される一方で、当該開口部よりも小径の複数の散気孔が前記真下でない位置であって当該開口部よりも高位であり且つ当該散気部材の軸よりも低位の位置にて前記軸方向に沿って配置されるように当該方向の断面を挟んで複数形成されている。
【0027】
前記第二散気部材は、その下面にて複数の開口部が当該部材の軸方向に沿って配置されるように形成されると共に、当該開口部よりも小径の複数の散気孔が当該開口部よりも高位であり且つ当該散気部材の軸よりも低位の位置にて前記軸方向に沿って配置されるように当該方向の断面を挟んで形成されている。
【発明の効果】
【0028】
以上の発明によれば散気管の散気孔を閉塞させることなく活性汚泥に対する酸素供給効率と膜モジュールの膜洗浄効率とを高めることができるのでMBRの処理効率が向上し消費エネルギーを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】発明の実施形態1に係る散気装置と膜モジュールとの位置関係を示した平面図。
【図2】発明の実施形態1に係る散気装置を備えた膜分離装置の概略構成図。
【図3】発明の実施形態1に係る第一散気部材と膜モジュールとの位置関係を示した正面図(a),当該第一散気部材と当該膜モジュールの分離膜との位置関係を示した側面図(b)。
【図4】発明の実施形態1に係る散気装置の第一散気部材の側面図(a),当該第一散気部材のA−A断面図(b),当該第一散気部材のB−B断面図(c),当該散気装置の第二散気部材の側面図(d),当該第二散気部材のC−C断面図(e)。
【図5】発明の実施形態2に係る散気装置の側面図。
【図6】発明の実施形態3に係る散気装置の第一散気部材の側面図(a),当該第一散気部材のA−A断面図(b),当該第一散気部材のB−B断面図(c),当該散気装置の第二散気部材の側面図(d),当該第二散気部材のC−C断面図(e)。
【図7】発明の実施形態4に係る散気装置の第一散気部材の側面図(a),当該第一散気部材のA−A断面図(b),当該第一散気部材のB−B断面図(c),当該散気装置の第二散気部材の側面図(d),当該第二散気部材のC−C断面図(e)。
【図8】径方向断面の下辺が半円形を成す実施形態5に係る散気部材の斜視図(a),径方向断面の上辺が鈍角三角形である一方で下辺が半円形を成す実施形態5に係る散気部材の斜視図(b),径方向断面の上辺が鋭角三角形である一方で下辺が半円形を成す実施形態5に係る散気部材の斜視図(c),径方向断面の上辺が釣鐘状である一方で下辺が半円形を成す実施形態5に係る散気部材の斜視図(d)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
(実施形態1)
図1に示された本発明の実施形態に係る散気装置1は膜モジュール2を洗浄する散気装置であって図2に示されたように膜モジュール2の下方に配置されている。
【0032】
膜モジュール2は図2に示したようにMBR処理装置3の膜分離槽4内の活性汚泥懸濁液に浸漬される。膜モジュール2は平膜タイプや中空糸膜タイプの分離膜を備えたものが例示される。膜モジュール2は膜分離槽4において鉛直に配置される。膜モジュール2の集水部に接続された配管5の一端にはポンプPが接続されて吸引によりろ過液を膜分離槽4外に移送できるようになっている。
【0033】
散気装置1は活性汚泥に空気を供給するための曝気装置と膜モジュール2の膜洗浄のための散気装置の機能を兼ねている。散気装置1は配管6を介して膜洗浄及び曝気用の空気をブロアBから導入する。配管6には逆止弁Vが設置されることで、ブロアBが停止した時のサイフォン効果による槽4内液のブロアBへの逆流を回避させている。
【0034】
散気装置1は、図1,図2に示したように、膜モジュール2の真下に配置される散気管11と、前記真下でない位置にて散気管11と並列に配置される散気管12と、を備える。
【0035】
散気管11,散気管12は円筒状に形成され、その両端は密閉されている。ブロアBの送気配管6は散気管11,12の一方の端部に接続されるかまたは散気管11,12の内部まで導入された状態で接続される。また、配管6は予備のブロアが準備可能な場合にはブロア毎に設置することによりブロアのメンテナンス時にも処理を継続することが可能となる。尚、その場合のブロアBの送気配管は散気装置1の両端部に分けて接続してもよい。または、一方の端部にまとめて接続してもよい。
【0036】
散気管11には図3(a),図3(b)に示したように開口部111と散気孔112が形成されている。散気管11の通常の散気状態は開口部111から排出された気泡が少なくとも膜モジュール2の膜面を洗浄できるようにブロアBの圧力及び空気流量が調整される。
【0037】
開口部111は主に膜洗浄に供される空気を排出する。また、開口部111は液面を形成し散気管11の内部に流入してきた活性汚泥等の夾雑物を乾燥させることなく当該液面から排出する。開口部111は図3(b)に示したように膜モジュール2の真下の位置における散気管11の下面にて散気管11の軸L11方向に沿って配置されるように複数形成されている。開口部111の開口径及び個数は特に限定しない。
【0038】
散気孔112は主に活性汚泥に供される空気を排出する。散気孔112はその開口径及び個数は特に限定しないが少なくとも開口部111よりも小径に形成されている。散気孔112は膜モジュール2の真下でない位置であって開口部111よりも高位であり且つ軸L11よりも低位の位置にて散気管11の軸L11方向に沿って配置されるように当該方向の断面を挟んで対称的に複数形成されている。散気孔112がこのように配置されることで、散気孔112から吐出した上昇気泡は散気管11の外周面に沿って迂回して上昇し、気液混合流が乱れて気泡が分散しやすくなり気泡100の平面的な分散効果が高まる。これにより、膜モジュール2の膜面洗浄を均等に行える。尚、散気孔112が散気管11の軸L11よりも高位に形成されると、散気管11外の液相が散気孔112から少しずつ散気管11内に流入し、散気管11内の液相が散気孔112のレベルまで満たされる可能性があり、散気孔112は閉塞しないが安定した散気ができなくなる。
【0039】
図3(b)に示されたように散気管11の全長Lは膜モジュール2の有効幅L0よりも長く設定される。散気管11は膜モジュール2の底面の面積に応じて複数並列に配置してもよい。また、散気管11の散気孔112から吐出した気泡の存在領域は気泡が上昇するに従い平面的に広がるので図4(a)〜図4(c)に示したように散気管11の径Dは散気孔112と膜モジュール2との距離及び散気管11の軸L11方向の縦断面を隔てた散気孔112の間隔dに基づき適宜に設定される。散気管11の径Dは例えば散気管11の長手方向の散気孔112のピッチが100〜200mm程度で設けられている場合、これに相当する距離で間隔dが設定され得るので径Dの値としては間隔dの最大2倍程度までの径D=100〜400mmが取りうる範囲となる。散気管11の径Dの寸法がこの範囲で設定されることで以下の効果が生ずる。
【0040】
例えば、散気管11の径DがブロアBの送気配管6の径(数10mm程度)と同等である場合、送気配管6では当然、圧力損失を無視できないことと同様に散気管11の部分でも圧力損失は無視できない。そのため、散気管11の端部における配管6の接続部分は散気管11のもう一方の端部に比べて送気圧が高い状態となるような圧力分布となる。このことにより、散気管11内で均一圧が維持できず、散気管11から気泡を均一に分布させて膜モジュール2の膜表面を洗浄することが困難となる。そこで、散気管11の径Dが送気配管6の径よりも大きく設定されることで、圧力バッファタンクとしての機能が確保され、散気管11内の送気圧が略均一となる。これにより散気管11からの気泡の分布が均一となり膜モジュール2の膜表面を均等に洗浄できる。
【0041】
散気孔112の径及びピッチは周知技術に基づき配置される。例えば直径5〜10mmの散気孔が100〜200mmピッチで散気管に複数形成され、空気散気速度が10m/s以上に設定される散気装置が知られている(特許文献6等)。この最低限の必要条件を満たせば特に散気能力に問題はない。
【0042】
散気管12は膜モジュール2の真下でない位置にて散気管11と並列に配置されている。散気管12は図4(d),図4(e)に示したように散気管11と略同径に形成されている。散気管12には開口部121と散気孔122が形成されている。開口部121は散気管12の下面にて散気管12の軸L12方向に沿って配置されるように複数形成されている。また、散気孔122は開口部121よりも小径に形成されている。散気孔122は開口部121よりも高位であって軸L12よりも低位の位置にて軸L12方向に沿って配置されるように当該方向の断面を挟んで対称的に複数形成されている。散気管12の全長Lと径D、及び開口部121,散気孔122の径とピッチは散気管11と同様の仕様に設定される。
【0043】
以上の散気管11,12の設置数は図示された設置数に限定することなく膜モジュール2,膜分離槽4の容量に応じて適宜に設定される。また、散気管11,12の散気孔111,121は図示されたように散気管11,12の軸方向の断面を挟んで対称に配置されているがこの態様に限定することなく非対称に配置させてもよい。さらに、図1には図示省略されているが散気管11,12に各々接続される配管6には各散気管11,12に供される空気の流量及び圧力を個別に調節できるように周知の流量調整バルブや圧力調整器が適宜に設置される。
【0044】
図1〜図3を参照しながらMBR処理装置3の動作例について説明する。
【0045】
被処理水が供給される膜分離槽4内の液相は散気装置1の散気管11,12によって常時曝気された状態となっており、その曝気量は当該液相の溶存酸素濃度が所定の範囲内になるように制御される。分離膜槽4内の活性汚泥はこの曝気によって供された酸素を利用して液相中の汚濁物質を生物学的に分解する。また、膜分離槽4内の液相は前記曝気による水流によって膜モジュール2に供されて固液分離処理される。膜モジュール2の分離膜20の内部は吸引ポンプPによって負圧状態となっており、膜モジュール2の集水路内に透過したろ過水は吸引ポンプPによって膜分離槽4外に搬出される。
【0046】
図3(a)に示されたように散気管11の散気孔112からはブロアBから供された空気の気泡100が常時放出される。これらの気泡100は前記活性汚泥と接触することで当該汚泥に対して酸素が供される。また、散気管11は径方向断面が円形を成していると共に散気孔112の位置が散気管11の軸L11の高さよりも低位に設定されているので散気孔112から吐出した上昇気泡は散気管11の外周面に沿って迂回しながら上昇し、気液混合流が乱れて気泡100が分散する。これにより、液相における酸素移動界面の接触面積が増大し、前記活性汚泥に対する酸素供給効率が高まる。
【0047】
一方、散気管11の開口部111からは少なくとも気泡100よりも大径の気泡が排出されて膜モジュール2の膜洗浄に供される。さらには開口部111からは活性汚泥等の夾雑物が排出される。また、散気管11は径方向の径方向断面が円形となっているので、膜モジュール2の下端付近に滞留する活性汚泥は散気管11の周面に沿って下方に案内され、散気管11の上面における活性汚泥の堆積が回避される。これにより前記汚濁物質の分解に寄与する前記活性汚泥の絶対量の低減が防止される。そして、散気管11の下面の曲面に沿って上昇してくる気液混合流は散気管11の上方において旋回し、この旋回流が維持されるので散気管11の上方にて激しい気液混合流が継続し、気泡の存在領域が平面的に広がり、膜モジュール2の膜面を均等に洗浄できる。
【0048】
前記分割迂回した激しい気液混合流は膜モジュール2の個々の分離膜20間に導入され、分離膜20の表面の洗浄に供される。この洗浄によって分離膜20の表面から剥離された夾雑物は、前記気液混合流に乗って膜モジュール2の上端開口部から排出されるか、または、膜分離槽4の底部付近に沈降する。前記剥離された夾雑物に含まれる活性汚泥は膜分離槽4内における汚濁物質の生物学的分解に寄与する。
【0049】
また、散気管12においても散気管11と同様にブロアBから供された空気の気泡が散気孔122から常時放出される。これらの気泡も前記活性汚泥と接触することで当該汚泥に対して酸素が供される。さらに、開口部121からは前記気泡よりも大径の気泡が排出されると共に開口部121からは活性汚泥等の夾雑物が排出される。このようにして膜分離槽4内の膜モジュール2から離れて滞留する活性汚泥に対しても均等に酸素を供給できると共に液相の活性汚泥濃度を均一化させることができる。
【0050】
以上のように本実施形態の散気装置1によれば散気管11,12の散気孔112,122を閉塞させることなく活性汚泥に対する酸素供給効率と膜モジュール2の膜洗浄効率とが高まるのでMBRの処理効率が向上し消費エネルギーを削減できる。
【0051】
(実施形態2)
図5に示された実施形態2の散気装置20はブロアBの配管6の一端が散気管11,12の開口部111,121の任意の一つから導入させた態様となっていること以外は散気装置1と同じ構成となっている。図5においては散気管11,12の散気孔112,122の図示が省略されている。配管6の挿入位置は特に限定されない。挿入される開口部111は施工やメンテナンスの作業性に基づき任意に選択される。
【0052】
以上の散気装置20は膜モジュール2と一体的な構造となっていても、配管6を散気装置20から取り外す手間がなくなり、膜モジュール2を膜分離槽4の上方へ移動させることができるので、膜ジュール2のメンテナンス時の作業効率が向上する。また、散気装置20が膜モジュール2と一体的な構造となっていなくても、膜モジュール2と散気装置20と配管6を個別に取り出して扱うことができるのでメンテナンスしやすくなる。
【0053】
(実施形態3)
実施形態3に係る散気装置30は図6(a)〜図6(e)に示されたように散気管11,12の径方向断面の形状が矩形となっていること以外は散気装置1と同じ構成となっている。本態様によれば散気装置の製作及び膜分離槽4内への固定作業が容易となる。
【0054】
(実施形態4)
実施形態4に係る散気装置40は図7(a)〜図7(e)に示されたように散気管11,12の径方向断面の形状が逆三角形となっていること以外は散気装置1と同じ構成となっている。本態様によれば板状部材を三枚で構成できるので本発明に係る散気装置の製作がより一層容易となる。
【0055】
(実施形態5)
実施形態5に係る散気装置は散気管11,12の径方向断面の形状が図8(a)〜図8(d)に示されたいずれかの形状を成していること以外は散気装置1と同じ構成となっている。
【0056】
図8(a)に示された散気装置51の散気管11,12はその径方向断面の下辺が半円形を成している。図8(b)に示された散気装置52の散気管11,12はその径方向断面の上辺が鈍角三角形である一方で下辺が半円形を成している。図8(c)に示された散気装置53の散気管11,12はその径方向断面の上辺が鋭角三角形である一方で下辺が半円形を成している。図8(d)に示された散気装置54の散気管11,12はその径方向断面の上辺が釣鐘状である一方で下辺が半円形を成している。
【0057】
以上の散気装置51〜54は散気管11,12の径方向断面の形状が少なくともその下面が曲面に形成されているので、膜分離槽4内の流体の流れが当該下面に衝突した後、当該曲面上に沿った流れが形成される。これにより、散気管11,12の散気孔112,122から吐出された気泡を平面的に分散できるので、活性汚泥に対する酸素供給効率が高まると共に膜モジュールの膜面洗浄を均等に行える。
【0058】
特に、散気装置52〜54は散気管11,12の径方向断面が上に凸の形状に形成されているので、活性汚泥を散気管11,12の下方に効率良く案内でき、散気管11,12上での活性汚泥の堆積を回避させることができる。
【0059】
また、散気装置54は、散気装置1と同様に、散気管11,12の上面が曲面に形成されているので、散気管11,12の曲面に沿って上昇してくる気液混合流を散気管11,12の上方において旋回させ、この旋回流を維持させることができる。これにより、散気管11,12の上方において激しい気液混合流が継続し、気泡の分散が促進される。
【0060】
以上の実施形態1〜5に基づき本発明について具体例にて説明したが、本願発明の散気装置は膜モジュールの仕様に応じて適宜仕様変更して対応可能である。例えば、散気装置の散気可能面積に応じて、その設置個数を変更し、単一膜モジュールに対して複数の散気装置が設置される。また、膜モジュールの散気の必要面積に応じて、散気装置の長さなどの仕様が変更される。
【符号の説明】
【0061】
1,20,30,40,51〜54…散気装置
2…膜モジュール
6…配管
11…散気管(第一散気部材)
12…散気管(第二散気部材)
111,121…開口部
112,122…散気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥への曝気と膜モジュールの膜洗浄のための散気装置であって、
前記膜モジュールの真下に配置される第一散気部材と、
前記真下でない位置にて前記第一散気部材と並列に配置される第二散気部材と
を備え、
前記第一散気部材は、前記真下の位置における下面にて複数の開口部が当該部材の軸方向に沿って配置されるように形成される一方で、当該開口部よりも小径の複数の散気孔が前記真下でない位置であって当該開口部よりも高位であり且つ当該散気部材の軸よりも低位の位置にて前記軸方向に沿って配置されるように当該方向の断面を挟んで形成され、
前記第二散気部材は、その下面にて複数の開口部が当該部材の軸方向に沿って配置されるように形成されると共に、当該開口部よりも小径の複数の散気孔が当該開口部よりも高位であり且つ当該散気部材の軸よりも低位の位置にて前記軸方向に沿って配置されるように当該方向の断面を挟んで形成されたこと
を特徴とする散気装置。
【請求項2】
前記第一散気部材及び第二散気部材は複数配置されたことを特徴とする請求項1に記載の散気装置。
【請求項3】
前記第一散気部材及び第二散気部材はブロアから供された空気を端部から排出させる配管を備え、前記端部は前記開口部に挿入されるように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の散気装置。
【請求項4】
前記第一散気部材及び第二散気部材は円筒状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の散気装置。
【請求項5】
前記第一散気部材及び第二散気部材はその径方向断面の形状が矩形に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の散気装置。
【請求項6】
前記第一散気部材及び第二散気部材はその径方向断面の形状が逆三角形に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の散気装置。
【請求項7】
前記第一散気部材及び第二散気部材はその径方向断面の下辺が下に凸の立体に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の散気装置。
【請求項8】
前記第一散気部材及び第二散気部材はその径方向断面の下辺が半円形を成すことを特徴とする請求項7に記載の散気装置。
【請求項9】
前記第一散気部材及び第二散気部材はその径方向断面の上辺が三角形である一方で下半部が半円形を成すことを特徴とする請求項8に記載の散気装置。
【請求項10】
前記第一散気部材及び第二散気部材はその径方向断面の上辺が釣鐘状である一方で下半部が半円形を成すことを特徴とする請求項8に記載の散気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−17979(P2013−17979A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155481(P2011−155481)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】