説明

数値制御装置

【課題】工作機械における駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出し表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または、数値制御装置内部または外部の機器への出力を実施することが可能な数値制御装置を得ること。
【解決手段】モータなどのアクチュエータを駆動させるための電力供給に関係する工作機械6における各駆動関連要素、および工作機械6に電力を供給する電源装置12のうちの少なくとも2つ装置の出力電力または出力エネルギーを計算または推定する電力算出部3と、前記電力算出部3から出力された出力電力または出力エネルギーから電力損失または電力効率を算出する損失/効率算出部4と、前記損失/効率算出部4にて算出された電力損失または電力効率を表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施する電力出力部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の数値制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、モータなどのアクチュエータを駆動して対象物を加工する工作機械の数値制御装置として、加工を行う際に消費電力を監視して画面に表示し、また消費電力低減のための対策を行うために消費電力を算出し画面に表示する機能を備える数値制御装置が提案されている。
【0003】
すなわち、特許文献1では、同一の動作1サイクルを繰り返し実行する際に、機械の動作工程ごとに、工作機械または電力消費要素ごとの消費電力を画面に表示する方法が示されている。
【0004】
この方法では、繰り返し動作を行って同一部品を複数個生産する場合に、繰り返し動作1サイクルあたりの消費電力を記録する、或いは所定の時間ごとの消費電力総和と繰り返し回数とを検出し、繰り返し動作1サイクルあたりの消費電力を記録する。また、各サーボモータの消費電力量は電流値を検出してそこから算出し、ヒータ類の消費電力量はその出力に動作時間を乗ずることで算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3088403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、工作機械では、通常、加工を行う可動部を駆動するモータなどのアクチュエータと、工作機械に必要な交流電力を供給する電源装置との間に、コンバータやインバータ、アンプなどが介在している。コンバータやインバータ、アンプ、モータなどをまとめて駆動関連要素と称すれば、この駆動関連要素では、常に電力損失があるため、電源装置から供給される電力が全て工作機械の駆動エネルギーに用いられるわけではない。
【0007】
しかし、従来技術では、モータの消費電力を算出・表示することは可能であるが、前記駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出・表示することはできない。そのため、エネルギー効率を改善することは困難である。
【0008】
また、従来技術では、加工全体でどの程度電力を消費するのかは、実際に加工を行わないと把握することができない。つまり、加工全体でどの程度電力を消費するのかを予め予測することができないので、省エネルギーのための最適な加工条件を求めることが困難である。
【0009】
さらに、従来技術では、電力損失の大きい駆動関連要素と電力損失の小さい駆動関連要素との区別ができないため、電力損失、つまり発熱量に応じた冷却を行うことができず、不要な冷却により無駄な電力を浪費していることになる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、工作機械における駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出し表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施することが可能な数値制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、工作機械を数値制御するNC制御部を備える数値制御装置において、前記工作機械の対象物を加工する可動部に配置されるモータなどのアクチュエータを含み、該アクチュエータと前記工作機械に交流電力を供給する電源装置との間に配置されるコンバータやインバータ、アンプなどのそれぞれを駆動関連要素と称すれば、前記電源装置および前記各駆動関連要素のうちの少なくとも2つの装置の出力電力または出力エネルギーを計算または推定する電力算出部と、前記電力算出部から出力された出力電力または出力エネルギーから対応する前記駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出する損失/効率算出部と、前記損失/効率算出部にて算出された電力損失または電力効率を表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施する電力出力部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電源装置および各駆動関連要素の計算または推定した出力電力または出力エネルギーに基づき各駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出できるので、それらを表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器(つまり、数値制御装置内部または外部の機器)への出力を実施することできる。したがって、工作機械におけるどの駆動関連要素において電力損失が大きいか、電力効率が悪いかを明確に認識することができるようになる。これによって、電力損失を低減することや、電力効率を改善することが容易になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態による数値制御装置を含む全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す電力算出部が計算または推定する出力電力または出力エネルギーと電源装置および各駆動関連要素との関係を示す図である。
【図3】図3は、図1に示す電力出力部が行う表示内容の一例を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す損失/効率算出部にける計算手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる数値制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態による数値制御装置を含む全体構成を示すブロック図である。なお、図中の実線矢印は電力供給経路を表し、破線矢印は信号伝達経路を表している。図1において、数値制御装置1は、NC制御部2と、電力算出部3と、損失/効率算出部4と、電力出力部5とを備えている。各構成要素の詳細は後述するが、NC制御部2は、工作機械6を数値制御する本来的な構成要素である。そして、電力算出部3、損失/効率算出部4、および電力出力部5は、この実施の形態による「駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出し表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器(つまり、数値制御装置の内部または外部の機器)への出力を実施する機能」を実現する構成要素である。
【0016】
工作機械6は、回転する工具7と、ワークテーブルに設置された被加工物8との相対運動により、被加工物8を所望の形状へと加工する。工具7は、主軸モータ9を駆動することで回転する。工具7と被加工物8との相対運動は、複数の可動軸10に取り付けられた複数のサーボモータ11を制御することで実現される。
【0017】
なお、一般的な可動軸10の構成として、例えば直進軸としては回転モータとボールねじとを組み合わせたもの、リニアモータを使用したものなどが挙げられる。また、回転軸としてはサーボモータとウォームギアとを組み合わせたもの、ダイレクトドライブモータによるものなどが挙げられる。
【0018】
図1では、工作機械6の可動部に配置されるアクチュエータである主軸モータ9およびサーボモータ11と、工作機械6に必要な交流電力を供給する電源装置12との間に、コンバータ13と、主軸アンプ14およびサーボアンプ15とが配置され、インバータを含まない構成例が示されている。コンバータ13は、電源装置12の出力交流電力を直流電力に変換し、主軸アンプ14およびサーボアンプ15へ並列に出力する。主軸アンプ14は、コンバータ13の出力直流電力に基づき主軸モータ9への駆動電力を生成する。サーボアンプ15は、コンバータ13の出力直流電力に基づきサーボモータ11への駆動電力を生成する。つまり、図1に示す構成では、コンバータ13、主軸アンプ14、サーボアンプ15、主軸モータ9およびサーボモータ11のそれぞれがこの実施の形態で言う駆動関連要素である。
【0019】
電源装置12は、コンバータ13への出力電力P1の状態を表す電力供給信号S2を電力算出部3へ出力する。また、コンバータ13も同様に、主軸アンプ14およびサーボアンプ15への出力電力P2の状態を表す電力供給信号S3を電力算出部3へ出力する。ここで、電力供給信号S2,S3は、例えば、電源装置12やコンバータ13が電力測定手段や電力計算機能を備える場合には直接電力量を表す信号となる。また、電力供給信号S2,S3は、電力量の計算に使用される信号の組み合わせ、例えば、電流および電圧、トルクおよび回転速度を伝達する信号であってもよい。
【0020】
主軸アンプ14は、コンバータ13の出力電力P2に基づき、NC制御部2から例えば通信ケーブルを介して入力される駆動指令信号S11に応じた駆動電圧V1を生成し主軸モータ9へ印加する。また、サーボアンプ15は、コンバータ13の出力電力P2に基づき、NC制御部2から例えば通信ケーブルを介して入力される駆動指令信号S12に応じた駆動電圧V2を生成しサーボモータ11へ印加する。つまり、主軸モータ9およびサーボモータ11は、それぞれ、NC制御部2が出力する駆動指令信号S11,S12に応じて制御される。
【0021】
このとき、主軸アンプ14は、主軸モータ9の駆動状態を表す駆動データD11をNC制御部2へ例えば通信ケーブルを介して伝達する。また、サーボアンプ15は、サーボモータ11の駆動状態を表す駆動データD12をNC制御部2へ例えば通信ケーブルを介して伝達する。モータの駆動状態とは、例えば、各アンプの位置指令、速度指令、電流指令、電圧指令、および各アンプに対応するモータの位置や角度、回転速度、電流、電圧、トルク、温度、電流周波数、電圧周波数などである。
【0022】
さて、数値制御装置1について説明する。まず、概要を説明する。NC制御部2には、外部から運動指令信号S1が入力される。運動指令信号S1は、被加工物8に対する工具7の運動を表す指令である。NC制御部2は、この運動指令信号S1を解析して主軸アンプ14およびサーボアンプ15に対する上記した駆動指令信号S11,S12を生成する。駆動指令信号S11,S12は、各アンプに対応するモータの位置、角度、速度などに関する指令である。これによって、工作機械6が数値制御される。
【0023】
この実施の形態では、NC制御部2は、主軸アンプ14およびサーボアンプ15から伝達された駆動データD11,D12を電力算出部3へ転送する。また、NC制御部2は、損失/効率算出部4からコンバータ13、主軸アンプ14、サーボアンプ15、主軸モータ9、サーボモータ11の電力損失L1,L2,L3,L4,L5、およびアラーム信号ALが入力される。損失/効率算出部4の説明中で説明するように、NC制御部2は、この実施の形態による動作として、電力損失L1,L2,L3,L4,L5に基づく冷却器制御や、アラーム信号ALに基づいて工作機械を停止させるなどの処理を行う。
【0024】
電力算出部3は、NC制御部2から入力される駆動データD11、D12と、電源装置12およびコンバータ13から入力される電力供給信号S2、S3との全て、または、複数の組み合わせ、若しくは、1つに基づき、電源装置12および各駆動関連要素の中の少なくとも2つの装置の出力電力または出力エネルギーを計算または推定し、それらを駆動データD11、D12と一緒に損失/効率算出部4へ出力する。また、電力算出部3は、その計算または推定した出力電力または出力エネルギーを電力出力部5へ出力する。電力算出部3での詳細な計算方法等については後述するが、例えば図2に示すような関係で計算等が行われる。
【0025】
図2は、図1に示す電力算出部が計算または推定する出力電力または出力エネルギーと電源装置および各駆動関連要素との関係を示す図である。図2おいて、電力算出部3は、電源装置12の出力電力P11、コンバータ13の出力電力P12、主軸アンプ14の出力電力P13、サーボアンプ15の出力電力P14、主軸モータ9の出力エネルギーP21、サーボモータ11の出力エネルギーP22を計算または推定する。なお、出力電力を計算等する際の誤差が0であれば、図1における電源装置12の出力電力P1と、図2における電源装置12の出力電力P11とは等しい。また、図1におけるコンバータ13の出力電力P2と、図2におけるコンバータ13の出力電力P12とは等しい。
【0026】
損失/効率算出部4は、電力算出部3から入力される、駆動データD11,D12と、電源装置12の出力電力P11と、コンバータ13の出力電力P12と、主軸アンプ14の出力電力P13と、サーボアンプ15の出力電力P14と、主軸モータ9の出力エネルギーP21と、サーボモータ11の出力エネルギーP22とに基づいて、後述する計算方法で、コンバータ13の電力損失L1または電力効率E1と、主軸アンプ14の電力損失L2または電力効率E2と、サーボアンプ15の電力損失L3または電力効率E3と、主軸モータ9の電力損失L4または電力効率E4と、サーボモータ11の電力損失L5または電力効率E5とを算出する。
【0027】
損失/効率算出部4は、算出した電力損失L1,L2,L3,L4,L5または電力効率E1,E2,E3,E4,E5を電力出力部5へ出力する。また、損失/効率算出部4は、各モータが力行中か回生中かを識別するための信号(図示省略)も電力出力部5に出力する。さらに、損失/効率算出部4は、駆動関連要素の電力損失または電力効率を求めるために予め設定しておいた基本モデルのパラメータPAを同定または修正し、同定または修正したパラメータPA´を電力出力部5に出力する。なお、図示省略したが、損失/効率算出部4は、基本モデルのパラメータPAも電力出力部5に出力する場合がある。
【0028】
加えて、損失/効率算出部4は、算出した各駆動関連要素の電力損失L1,L2,L3,L4,L5をNC制御部2へ出力する。このとき、損失/効率算出部4は、各駆動関連要素の電力効率E1,E2,E3,E4,E5のみを算出した場合は、その電力効率とその入力電力とから、電力損失L1,L2,L3,L4,L5に相当する電力損失をそれぞれ求め、それらをNC制御部2へ出力する。
【0029】
NC制御部2では、損失/効率算出部4から出力された各駆動関連要素の電力損失に基づき対応する駆動関連要素の図示しない冷却器の制御を行う。例えば、ある駆動関連要素ではその電力損失に比例した電力を冷却器に供給し、冷却の必要ない他の駆動関連要素ではその冷却器は停止させることで、無駄な消費電力を削減する。
【0030】
そして、損失/効率算出部4は、算出した駆動関連要素の電力効率が、駆動関連要素毎に予め設定した最小電力効率よりも小さくなった場合、アラーム信号ALを電力出力部5とNC制御部2とに出力する。ここで、アラーム信号ALとは、電力効率の異常に関する情報を知らせる信号である。このアラーム信号ALは、アラームが発生したことを認識させる信号と、アラームの重要度を知らせる信号と、アラームの原因となった駆動関連要素を知らせる信号とで構成されている。
【0031】
アラーム信号ALを受け取った電力出力部5は、工作機械に備えられたディスプレイにアラーム、およびアラームの原因となった駆動関連要素を表示する。また、アラーム信号ALを受け取ったNC制御部2は、工作機械を停止させるなどアラームの重要度に応じた適切な処理を実行する。具体例を示すと、損失/効率算出部4は、例えば、主軸モータ9の電力効率が主軸モータ9の最小電力効率よりも小さくなった場合に、主軸モータ9で異常が発生していることを報知するため、アラーム信号ALを電力出力部5およびNC制御部2に出力する。すると、電力出力部5は、工作機械6に備えられたディスプレイに主軸モータ9の異常を知らせるアラームを表示し、また、NC制御部2は工作機械6を停止させる。
【0032】
電力出力部5は、電力算出部3から入力された出力電力を工作機械6に備えられたディスプレイに数値またはグラフで表示する。また、電力出力部5は、損失/効率算出部4にて算出された、コンバータ13の電力損失L1または電力効率E1と、主軸アンプ14の電力損失L2または電力効率E2と、サーボアンプ15の電力損失L3または電力効率E3と、主軸モータ9の電力損失L4または電力効率E4と、サーボモータ11の電力損失L5または電力効率E5とが入力されると、それらの値を工作機械6に備えられたディスプレイに数値またはグラフを用いて表示する(例えば図3参照)。
【0033】
また、電力出力部5は、上記した算出データの画面表示と並行して、損失/効率算出部4から入力される各モータが力行中か回生中かを識別するための信号(図示省略)に従って、工作機械6に備えられたディスプレイに各モータが力行中か回生中かを認識するための表示も行う。
【0034】
図3は、図1に示す電力出力部が行う表示内容の一例を示す図である。例えば、図3(1)に示すように、電源装置12および各駆動関連要素(コンバータ13、主軸アンプ14、サーボアンプ15、主軸モータ9、サーボモータ11)の電力系統図を工作機械6に備えられたディスプレイに表示し、その電力系統図中に出力電力、電力損失、電力効率を数値で表示する。
【0035】
このとき、図3(2)(3)(4)に示すように、出力電力、電力損失、電力効率を電力系統図に対応したグラフを用いて表示してもよい。また、駆動関連要素の出力電力、電力損失、電力効率を時系列で数値またはグラフで表示してもよい。なお、回生時には、図3(1)における電力系統図の矢印を逆向きにしてもよい。
【0036】
ここで、図3では、電力出力部5は、工作機械6に備えられたディスプレイに出力電力、電力損失、電力効率を表示する機能のみを説明したが、本実施の形態による電力出力部5は、出力電力、電力損失、電力効率を印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器(つまり、数値制御装置内部または外部の機器)への出力を実施することもできる。また、電力出力部5は、損失/効率算出部4にて同定または修正した基本モデル、または、基本モデルのパラメータも表示出力、印刷出力、記憶媒体に保存、または、数値制御装置内部または外部の機器へ出力することもできる。加えて、電力出力部5は、損失/効率算出部4から出力されたアラーム信号AL、およびアラームの原因となった駆動関連要素を表示出力、印刷出力、記憶媒体に保存、または、数値制御装置内部または外部の機器へ出力することもできる。
【0037】
次に、電力算出部3および損失/効率算出部4での計算方法について説明する。まず、電力算出部3は、NC制御部2から入力される駆動データD11、D12と、電源装置12およびコンバータ13から入力される電力供給信号S2、S3との全て、または、複数の組み合わせ、若しくは、1つに基づき、電源装置12および各駆動関連要素の中の少なくとも2つの要素の出力電力または出力エネルギーを計算または推測によって求める。ここでは、(イ)電源装置12およびコンバータ13の組み合わせでの出力電力、(ロ)主軸アンプ14およびサーボアンプ15の組み合わせでの出力電力、(ハ)主軸モータ9およびサーボモータ11の組み合わせでの出力エネルギーを求める場合について説明する。
【0038】
(イ)電源装置12およびコンバータ13の出力電力P11,P12を次のようにして求める。電源装置12およびコンバータ13が電力測定手段や電力計算機能を備える場合には、電力供給信号S2,S3は出力電力を示すので、電力供給信号S2,S3を電源装置12およびコンバータ13の出力電力P11、P12と推定する。
【0039】
また、電力供給信号S2,S3が電力量の計算に使用される信号の組み合わせ、例えば、電流および電圧を伝達する信号である場合は、式(1)に示すように、電流および電圧の積により電源装置12およびコンバータ13の出力電力P11,P12を求めることができる。なお、式(1)において、Vso、Isoは電源供給信号S2として入力された電源装置12の電圧、電流であり、Vco、Icoは電源供給信号S3として入力されたコンバータ13の電圧、電流である。
【0040】
【数1】

【0041】
(ロ)主軸アンプ14およびサーボアンプ15の出力電力P13,P14は次のようにして求める。主軸アンプ14およびサーボアンプ15の出力電力P13,P14はNC制御部2から入力された駆動データD11,D12を用いて、いくつかの方法により算出可能である。なお、主軸アンプ14の出力電力P13と、サーボアンプ15の出力電力P14とは、同様の方法で求められるため、ここでは両者を併せてアンプの出力電力Pampの算出方法として説明する。
【0042】
アンプの出力電力は、例えば、アンプに接続されたモータの電流を二相変換した場合のモータのq軸、d軸における電圧および電流から求めることができる。すなわち、モータのq軸、d軸における電圧[V]をそれぞれVq,Vdとし、電流[I]をそれぞれIq,Idとすると、アンプの出力電力Pampは、式(2)に示すように、q軸およびd軸での電流および電圧の積の和として求められる。これによって、主軸アンプ14およびサーボアンプ15の出力電力P13,P14が求められる。ここで、電圧Vq,Vdは、モータへの指令電圧またはモータからのフィードバック電圧のどちらでもよい。また、電流Iq,Idは、モータへの指令電流またはモータからのフィードバック電流のどちらでもよい。
【0043】
【数2】

【0044】
なお、一般に、d軸の電流、電圧は、q軸の電流、電圧に比べてそれぞれ小さい場合が多いことが知られている。つまり、d軸の電流および電圧を無視したとしても本実施の形態における計算結果への影響は小さいと言えることから、d軸の電流および電圧を除外して計算することでもよい。
【0045】
また、モータ電機子の抵抗R[Ω]およびq軸、d軸のインダクタンスLq、Ld[H]が既知の場合、式(3)によりq軸電圧、d軸電圧を計算し、式(2)に代入してもよい。なお、式(3)において、pは微分演算子、ωは電機角回転数[rad/s]、φはモータ磁束[Wb]である。これらの値は、誘起電圧定数や対極数から公知の手法により計算される。
【0046】
【数3】

【0047】
(ハ)主軸モータ9およびサーボモータ11の出力エネルギーP21,P22は次のようにして求める。主軸モータ9およびサーボモータ11の出力エネルギーP21,P22はNC制御部2から入力される駆動データD11,D12を用いて、いくつかの方法により算出可能である。なお、主軸モータ9の出力エネルギーP21と、サーボモータ11の出力エネルギーP22とは、同様の方法で求められるため、ここでは両者を併せてモータの出力エネルギーPmotの算出方法として説明する。
【0048】
モータの出力エネルギーPmotは、例えば、式(4)に示すように、モータのトルクTm[Nm]および回転角速度ωm[rad/s]の積で求めることができる。
【0049】
【数4】

【0050】
また、モータのトルクTmは、式(5)によって簡易的に求めることも可能である。式(5)を式(4)に代入することで、モータの出力エネルギーPmotを簡易的に求めてもよい。
【0051】
【数5】

【0052】
なお、式(5)において、Jはモータ軸換算の慣性モーメント[kgm2]、cはモータ軸換算の粘性摩擦係数[Nm/(rad/s)]、fはモータ軸換算のクーロン摩擦トルク[Nm]である。sgnは、符号関数であって、回転角速度ωmが正の値のであるときは+1、負の値であるときは−1、ゼロのときはゼロとする。dは、重力による負荷トルク[Nm]であって、鉛直軸に作用するものとする。アンバランスな質量を持つ傾斜テーブルのような場合には、重力による負荷トルクdの値が、傾斜角度に応じて変化する。これらの値は機械ごとに異なるが、例えば、正弦波往復運動時のモータトルク波形等から、公知の手法により同定可能である。なお、モータの電気回路や制御系、機械の振動特性も加味されたさらに詳細な数学モデルを適用してモータのトルクTm、回転角速度ωm、電流あるいは電圧を推定することでもよい。
【0053】
また、一般に、モータの出力特性(定格出力)Wm(ωm)[W]は、回転角速度ωmに依存する。また、モータへの駆動指令における電流は、モータの定格電流に対する割合[%]として表される場合が多い。そこで、例えば、回転角速度ωmと定格出力Wm(ωm)との関係が既知である場合、あるいは仕様として与えられている場合、モータの出力エネルギーPmotは、回転角速度ωmにより変化する定格出力をWm(ωm)とし、モータの定格電流に対するモータへの指令電流またはモータの定格電流に対するモータからのフィードバック電流の割合[%]をIとし、式(6)に示すように、定格出力Wm(ωm)と定格電流に対する電流の比I[%]との積から求めてもよい。
【0054】
【数6】

【0055】
また、一般に、サーボモータの多くは、定格ストールトルクが既知であって、その特性は、回転数およびトルクの関係で表される。この場合、式(6)の定格出力Wm(ωm)に代えて、定格ストールトルクTs[Nm]および回転角速度ωmを用いることで、サーボモータの出力エネルギーP22は式(7)のように計算できる。
【0056】
【数7】

【0057】
電力算出部3は、以上のように推定または計算して求めた電源装置12の出力電力P11と、各駆動関連要素の出力電力P12,P13,P14または各駆動関連要素の出力エネルギーP21,P22とを、主軸モータ9およびサーボモータ11の駆動状態を表す駆動データD11、D12と共に損失/効率算出部4へ出力する。
【0058】
次に、損失/効率算出部4は、電力算出部3から入力されるこれらのデータを用いて各駆動関連要素の電力損失や電力効率を、図4に示す手順で求める。図4は、図1に示す損失/効率算出部にける計算手順を説明するフローチャートである。以下、図4に沿って説明する。
【0059】
図4において、ステップS11では、電源装置12の出力電力P11および各駆動関連要素の出力電力P12,P13,P14を式(8−1)や式(8−2)に適用して各駆動関連要素の電力損失または電力効率を求める。すなわち、ステップS11では、駆動関連要素である、コンバータ13の電力損失L1または電力効率E1と、主軸アンプ14の電力損失L2または電力効率E2と、サーボアンプ15の電力損失L3または電力効率E3、主軸モータ9の電力損失L4または電力効率E4と、サーボモータ11の電力損失L5または電力効率E5とを求め、電力出力部5へ出力する(ステップS12)。また、ステップS11では、図1では示していない、各モータが力行中か回生中かを識別するための信号も電力出力部5に出力する。
【0060】
具体的に説明する。例えば、モータ力行時では、各駆動関連要素の電力損失L1〜L5は、式(8−1)に示すように、各駆動関連要素の入力電力と出力電力(出力エネルギー)との差から求めることができる。電力効率E1〜E5は、式(8−1)に示すように、各駆動関連要素の出力電力(出力エネルギー)を入力電力で割ることで求めることができる。
【0061】
また、モータ回生時では、各駆動関連要素の電力損失L1〜L5は、式(8−2)に示すように、各駆動関連要素の出力電力と入力電力(出力エネルギー)との差から求めることができる。電力効率E1〜E5は、式(8−2)に示すように、各駆動関連要素の入力電力(出力エネルギー)を出力電力で割ることで求めることができる。なお、式(8−1)(8−2)において、ΣP14は、複数のサーボアンプ11の出力電力の総和である。
【0062】
【数8−1】

【0063】
【数8−2】

【0064】
ここで、駆動関連要素の入力電力とは、その駆動関連要素に電力を供給する電源装置12または各駆動関連要素の出力電力、つまり、図1における電力供給の流れに対して一つ上流の電源装置12または駆動関連要素の出力電力である。具体的には、モータ力行時の電力は、電源装置12からコンバータ13、アンプ(主軸アンプ14、サーボアンプ15)、モータ(主軸モータ9、サーボモータ11)の順に流れるため、電源装置12側を上流とし、モータ側を下流とする。一方、モータ回生時での電力は、逆にモータ(主軸モータ9、サーボモータ11)からアンプ(主軸アンプ14、サーボアンプ15)、コンバータ13、電源装置12の順に流れるが、ここでは、モータ回生時でも電源装置12側を上流とし、モータ側を下流とし、電源装置12または駆動関連要素の出力電力、入力電力も力行時と同一の箇所での電力またはエネルギーとする。そのため、力行時では入力電力よりも出力電力(エネルギー)の方が電力損失分小さくなるが、回生時では逆に出力電力(エネルギー)よりも入力電力の方が電力損失分小さくなる。
【0065】
なお、力行時であるか回生時であるかは、モータが加速中か減速中かで判定することができる。すなわち、モータ回転角速度の微分値(または、モータの回転角加速度)が正である場合は力行であり、負である場合は回生である。また、各駆動関連要素の出力電力(エネルギー)と入力電力の大小関係から力行または回生を判定してもよい。すなわち、入力電力よりも出力電力(エネルギー)の方が小さい場合は力行時であり、逆に、出力電力(エネルギー)よりも入力電力の方が小さい場合は回生時である。
【0066】
そして、モータが停止している場合など、電力の流れが無い場合には電力効率がゼロとなってしまう場合が考えられる。そこで、予め設定された効率算出条件を満たさない場合は、電力効率を更新せず、効率算出条件を満たす場合の最新の電力効率値を維持してもよい。ここで、効率算出条件は、例えば以下のような条件を採用することができる。
【0067】
すなわち、(イ)駆動関連要素の出力電力が予め設定された最小出力電力以下になった場合、(ロ)駆動関連要素の入力電力が予め設定された最小入力電力以下になった場合、(ハ)モータ回転角速度が予め設定された最小回転角速度以下になった場合には、効率算出条件を満たさないとする。これらの場合には、電力損失についてはゼロになっても問題ないため、特別な計算をする必要は無い。
【0068】
なお、式(8−1)、式(8−2)において右辺第1項が入力電力であり、右辺第2項が出力電力である。式(8−1)、式(8−2)では、主軸アンプ14およびサーボアンプ15への入力電力は、コンバータ13の出力電力を、主軸アンプ14およびサーボアンプ15の出力電力の比に応じて分配することで求めている。しかし、主軸アンプ14および複数のサーボアンプ15の電力効率が異なる場合は、それぞれの入力電力を正確に求めることができず、電力損失および電力効率も正確に求めることはできない。
【0069】
そのため、主軸アンプ14および複数のサーボアンプ15の電力効率が異なる場合には別途、主軸アンプ14および複数のサーボアンプ15への入力電力の測定手段を配置し、測定した主軸アンプ14への入力電力P13’、複数のサーボアンプ15への入力電力P14’を用いて、式(9)に示すように、駆動関連要素の入力電力と出力電力との差または商から、主軸アンプ14および複数のサーボアンプ15の電力損失または電力効率を求めてもよい。
【0070】
【数9】

【0071】
ただし、式(9)による方法では主軸アンプ14およびサーボアンプ15の入力電力を計測するため別途計測手段が必要になり、コストの増加が懸念される。そこで、ステップS14にて説明するように、電力損失または電力効率の基本モデルを用いて主軸アンプ14およびサーボアンプ15の電力損失または電力効率を算出してもよい。
【0072】
すなわち、予め主軸モータ9およびサーボモータ11を単独で駆動させておき、そのときの主軸アンプ14およびサーボアンプ15の入出力電力および駆動データD11、D12により、主軸アンプ14およびサーボアンプ15の電力損失または電力効率の基本モデルのパラメータを同定または修正し、その同定または修正した基本モデルを用いて、主軸アンプ14およびサーボアンプ15の電力損失または電力効率を求めてもよい。また、駆動関連要素の電気回路や制御系を加味した詳細な数学モデルから、駆動関連要素の電力損失または電力効率を推定してもよい。
【0073】
なお、電力算出部において電源装置12および各駆動関連要素のうち2つの装置での出力電力または出力エネルギーが計算または推定できれば、損失/効率算出部4では、その2つの装置での出力電力または出力エネルギーを用いて、2つの装置の間の駆動関連要素全体の電力損失または電力効率を算出できる。したがって、電力算出部3は、電源装置12の出力電力および全駆動関連要素の出力電力または出力エネルギーを計算または推定するのではなく、例えば、電源装置12の出力電力P11および主軸モータ9の出力エネルギーP21を計算または推定して損失/効率算出部4に与えることでもよい。損失/効率算出部4は、電力算出部3から入力される電源装置12の出力電力P11および主軸モータ9の出力エネルギーP21を用いて、コンバータ13、主軸アンプ14および主軸モータ9の全てをまとめて一つの駆動関連要素とし、電力損失または電力効率を算出することでもよい。
【0074】
次に、ステップS13では、ステップS11にて算出した電力損失をNC制御部2へ出力する。なお、損失/効率算出部4は、ステップS11にて電力効率のみを求め、電力損失を求めていない場合において、電力損失をNC制御部2へ出力する場合は、NC制御部2へ出力する電力損失を対応する駆動関連要素の電力効率と入力電力との積から求めるようにしている。
【0075】
NC制御部2は、入力された駆動関連要素の電力損失に基づいてその駆動関連要素の冷却器の制御を行う。例えば、入力された駆動関連要素の電力損失が予め設定された冷却器の最大冷却損失LOSS_max[W]以上の電力損失がある場合には、その駆動関連要素の冷却器を定格エネルギーPc_max[W]で駆動する。また、入力された駆動関連要素の電力損失が最大冷却損失未満の場合は、式(10)に示すように、電力損失に比例したエネルギーPcでその駆動関連要素の冷却器を駆動する。
【0076】
【数10】

【0077】
なお、駆動関連要素の電力損失をそのままNC制御部2に出力し、NC制御部2が電力損失に基づいて冷却器を制御すると説明したが、その他、電力損失を他の単位に変換してNC制御部2に出力し、NC制御部2が該他の単位に変換されたデータに基づいて冷却器を制御するようにしてもよい。例えば、損失/効率算出部4は、算出した電力損失を発熱量H[J]に変換してもよい。すなわち、符号1を用いて説明すると、ある駆動関連要素1の発熱量H1[J]は、式(11)に示すように、駆動関連要素1の電力損失L1[W]の積分値で表すことができる。
【0078】
【数11】

【0079】
また、冷却器および自然放熱による駆動関連要素1の放熱量Hr1[W]が既知の場合には、駆動関連要素1の持つ熱量H1’[J]は、式(12)に示すように、発熱量H1と放熱量Hr1との差の積分値で表すことができる。つまり、NC制御部21では、駆動関連要素1の持つ熱量H1’に基づいて冷却器を制御してもよい。
【0080】
【数12】

【0081】
次に、ステップS14では、損失/効率算出部4には、各駆動関連要素の電力損失または電力効率を求めるための基本モデルが、各駆動関連要素における電流・電圧・トルク・温度・モータ回転速度・周波数のうち少なくとも1つの信号を用いて予め設定されている。損失/効率算出部4は、その基本モデルのパラメータを、主軸モータ9およびサーボモータ11の駆動状態を表す駆動データD11、D12、およびステップS11にて求めた各駆動関連要素の電力損失または電力効率を用いて同定または修正する。なお、基本モデルの同定または修正ではステップS11にて説明した「効率算出条件を満たさない場合のデータ」は用いない。
【0082】
このとき、モータの力行時と回生時とで基本モデルが異なる場合には、力行時と回生時との基本モデルを別々に設定してもよい。力行時と回生時とで基本モデルを別々に設定した場合には、力行時の基本モデルのパラメータは力行時のデータのみを用いて同定または修正し、回生時の基本モデルのパラメータは回生時のデータのみを用いて同定または修正する。但し、ここでは、特に力行時と回生時とは分けずに説明する。
【0083】
パラメータの同定または修正方法としては、符号2を用いて説明すると、例えば、ある駆動関連要素2の損失L22の基本モデルが式(13)に示すように、駆動関連要素2の電流I2の1次関数で表されている場合、最小二乗法により、次のようにして同定または修正してもよい。なお、式(13)において、a2、b2は基本モデルのパラメータである。
【0084】
【数13】

【0085】
すなわち、任意の時間Tにおける駆動関連要素2の電力損失をL2、電流をI2、データ数をn(1≦i≦n)すると、基本モデルのパラメータa2、b2は式(14)により同定することができる。なお、式(14)におけるX、A、Cは、それぞれ式(15)で表される。
【0086】
【数14】

【0087】
【数15】

【0088】
ここで、任意の時間Tとは、例えば、ランダムな時間間隔毎の時間、または予め設定した時間間隔毎の時間、もしくは予め設定した時間長分の連続時間とすることができる。また、任意の時間Tに最新の時間を追加し、随時更新することで基本モデルのパラメータa2、b2を更新することができる。なお、最も新しいデータをパラメータの同定または修正によって反映させるため、各データを推定または測定した時間Tに応じて重み付けをした最小二乗法によりパラメータの同定または修正を行ってもよい。また、データ数nは予め設定しておいてもよいし、nの最大値のみを予め設定しておいてもよい。
【0089】
また、基本モデルが2次以上の1変数多項式で表される場合にも、最小二乗法により基本モデルのパラメータを同定または修正することが可能である。また、複数の変数を用いて基本モデルを設定した場合のパラメータの同定または修正については、評価関数を用いて繰り返し演算するなどの方法が知られており、基本モデルのパラメータの同定または修正はそれら公知の手法により行う。以上のように同定または修正した基本モデルのパラメータを電力出力部5に出力する(ステップS15)。前記したように、基本モデルのパラメータも電力出力部5に出力することができる。
【0090】
次に、ステップS16では、駆動関連要素毎に予め設定した最小電力効率と、ステップS11にて算出した各駆動関連要素の電力効率とを用いて各駆動関連要素の異常監視を行う。すなわち、損失/効率算出部4は、ある駆動関連要素の電力効率が、その駆動関連要素に対して予め設定した最小電力効率よりも小さくなった場合、前述の通り、アラーム信号を生成し、アラーム信号をNC制御部2へ出力する(ステップS17)。前記したように、アラーム信号は電力出力部5へも出力される。なお、損失/効率算出部4は、ステップS11にて電力損失のみを求め、電力効率を求めていない場合において各駆動関連要素の異常監視を行う場合は、各駆動関連要素の電力損失を入力電力で割ることで電力効率を求める。
【0091】
以上のように、この実施の形態によれば、各駆動関連要素における電力損失または電力効率を求め、その値を画面に表示するので、ユーザはどの駆動関連要素で電力損失が大きいか、あるいは電力効率が悪いのかを明確に認識することができ、電力効率を改善ないしは電力損失を低減することが容易となる。
【0092】
また、電力損失が大きいところでは、発熱が大きいので冷却器を定格エネルギーで駆動して冷却を行い、電力損失が小さいところでは、発熱が小さいので冷却器を停止させるなど、電力損失に基づいた冷却器の制御を行うことができる。つまり、不要な冷却をしないで済むので、より省エネルギーな加工を実現できる。
【0093】
また、電力損失または電力効率を、予め基本モデルを用いて定義しておくことができるので、実際に加工を行わなくても予め消費電力を推定することができ、省エネルギーのための加工条件見直し作業がより効果的かつ効率的に行えるようになる。
【0094】
また、電力効率が予め設定した最小電力効率よりも小さくなった場合アラームを表示すると共に、アラームの原因となった駆動関連要素も表示するので、各駆動関連要素の異常を素早く発見でき、工作機械の故障による停止を防止することができる。また、仮に工作機械が故障により停止してしまっても、アラームの原因となった駆動関連要素の表示を頼りに故障の原因究明が容易に行えるので、より早く工作機械を復旧することができる。このとき、アラームの表示と並行して、アラームの重要度に応じて工作機械を停止させるなど適切な処置を採ることができる。
【0095】
また、電力系統図と電力損失または電力効率を対応付けて画面に表示することができるので、無駄な電力を浪費している駆動関連要素を図式的に認識できるようになる。したがって、加工条件を見直すことで、電力効率を改善する或いは電力損失を低減する省エネルギー策が実現可能であるか否かをより容易に認識することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明にかかる数値制御装置は、工作機械における駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出し少なくとも画面表示することができる数値制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 数値制御装置
2 NC制御部
3 電力算出部
4 損失/効率算出部
5 電力出力部
6 工作機械
7 工具
8 被加工物
9 主軸モータ
10 可動軸
11 サーボモータ
12 電源装置
13 コンバータ
14 主軸アンプ
15 サーボアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械を数値制御するNC制御部を備える数値制御装置において、
前記工作機械の対象物を加工する可動部に配置されるモータなどのアクチュエータを含み、該アクチュエータと前記工作機械に交流電力を供給する電源装置との間に配置されるコンバータやインバータ、アンプなどのそれぞれを駆動関連要素と称すれば、
前記電源装置および前記各駆動関連要素のうちの少なくとも2つの装置の出力電力または出力エネルギーを計算または推定する電力算出部と、
前記電力算出部から出力された出力電力または出力エネルギーから対応する前記駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出する損失/効率算出部と、
前記損失/効率算出部にて算出された電力損失または電力効率を表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施する電力出力部と
を備えることを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記損失/効率算出部は、
前記各駆動関連要素の電力損失または電力効率を求めるための基本モデルが、前記各駆動関連要素における電流・電圧・トルク・温度・モータ回転速度・周波数のうちの少なくとも1つの信号を用いて予め設定され、
前記算出した各駆動関連要素の電力損失または電力効率と、対応する駆動関連要素の電流・電圧・トルク・温度・モータ回転速度・周波数のうち前記基本モデルに用いた信号とに基づいて、該基本モデルのパラメータを同定または修正し、該同定または修正した基本モデルを用いて対応する駆動関連要素の電力損失または電力効率を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記電力出力部は、
前記電源装置および前記各駆動関連要素による電力系統図を表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施するとともに、該電力系統図に対応させて前記損失/効率算出部にて求められた各駆動関連要素の電力効率または電力損失を表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施する
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記電力出力部は、
前記損失/効率算出部に予め設定されている前記各駆動関連要素についての基本モデルのパラメータを表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施する
ことを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記電力出力部は、
前記損失/効率算出部にて同定または修正された前記各駆動関連要素についての基本モデルのパラメータを表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施する
ことを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記損失/効率算出部は、
前記算出した各駆動関連要素の電力効率が予め設定した最小電力効率よりも小さくなった場合、または電力損失が予め設定した最大電力損失よりも大きくなった場合にアラーム信号を前記電力出力部および前記NC制御部に出力する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記電力出力部は、
前記損失/効率算出部から入力されるアラーム信号に基づき、異常を知らせるアラームおよび該アラームの原因となった駆動関連要素を表示、印刷出力、記憶媒体への記録出力、または他の機器への出力を実施する
ことを特徴とする請求項6に記載の数値制御装置。
【請求項8】
前記NC制御部は、
前記損失/効率算出部からアラーム信号が入力されると、前記工作機械を停止させるなど該アラーム信号が示す重要度に応じた制御を実行する
ことを特徴とする請求項6または7に記載の数値制御装置。
【請求項9】
前記NC制御部は、
前記損失/効率算出部にて算出された電力損失、または電力効率に基づいて対応する駆動関連要素の冷却器を制御する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の数値制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−14649(P2012−14649A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153331(P2010−153331)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】