説明

数値解析情報動画像作成方法及び数値解析情報動画像作成プログラム

【課題】パーソナルコンピュータ(windows(登録商標))によって自然災害(河川の氾濫、土砂流、津波等)の結果を簡単な構成で3次元ムービで表示させることができる数値解析情報動画像作成システムを得る。
【解決手段】流動深付き氾濫数値モデル作成コード部1、ファイル展開部15、地盤・流動深変化判定部5、ファイル変換部3、データ抽出部6、時間解析部8、動画像処理部9を備えることによって、全テキストデータを一旦パソコンに取り込み、数値に変化があるものとないものを区別して、バイナリ変換を行う。そして、フラグ「1」の場合は、流動深に応じて流体部分の厚みを変化させ、フラグ「2」の場合は、地盤標高つまり、基準の地盤のZを変化させてレンダリングを行わせる。フラグ「3」の場合は、地盤のZと流体部分の厚みを変化させてレンダリングを行い、これを直接3次元空間に描画することで時間に対応させた動画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータにおいても土砂流、津波などの流体の動画像をリアルに表示できる数値解析情報動画像作成方法及び数値解析情報動画像作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年発生した土石流災害後の調査では、住民の方々が「土石流の発生を全く予想しなかった」場合に避難が遅れ、大きな被害が発生していると指摘されている。早期自主避難を促すためには、土石流災害の恐ろしさ、さらに自宅裏山でもそのような現象が発生する可能性があることを住民が認識する必要があると言われている。
【0003】
例えば、図17に示すように、土石流の氾濫解析や河川の氾濫解析は、等高線図などの2次元データ上に浸水深等に応じて、その量がわかるように色別表示するのが現状である。
【0004】
つまり、ある時刻の数値解析結果(浸水深)や計算時間内の最大値(最大浸水深)を静止画で2次元平面上に表現されたものが主流となっている。
【0005】
一方、氾濫解析結果を用いて時々刻々とその浸水範囲が広がっていくような動きをアニメーションメッシュ表示しているものがある。
【0006】
また、映画、テレビジョン等においては、河川の氾濫、津波、溶岩流、土砂災害をアニメ的に見せることもある。このような場合は、3D動画ソフトで単に適当なコンピュータグラフィック(CG)を見せるだけであり、実際の地形、雨量、溶岩量、土砂量等に基づくものではなかった。
【0007】
つまり、近年のCG技術やパソコンの性能の発達により、このようなCGを作成することは容易になっているが、これらの多くは数値解析結果等を参考に氾濫範囲を想定しながらも、土石流の流れそのものは専門家の監修のもとでCGクリエータが作成する。このとき、土石流の詳細な流動深、挙動などは推定して作成させていた。
【0008】
さらに、予め定められているデータフォーマットで数値解析結果(X、Y、Z)が出力されている場合には、短時間でかつ非常にリアルな動画像を作成できる高価なシステムもある。
【特許文献1】特許出願平10−36058号公報
【特許文献2】特許公開2003−168179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の従来の方法は、ある時刻の数値解析結果(浸水深)や計算時間内の最大値(最大浸水深)を静止画で2次元平面上に表現するものであるから、現実感が弱いという課題があった。
【0010】
また、2次平面上に色データを割り付けるものであるので、土石流が谷を流れたときに、どこで盛り上がるのかがわからないという課題がった。特に、津波などにおいては、どこで海面が盛り上がり、どこのあたりの岸でどのように盛り上がるかを知りたい。
【0011】
さらに、上記のリアルな動画像を作成できるシステムは、高価である上に、様々なコマンドを入力しなければならないので使いづらい上に作業工数がかかるという課題があった。
【0012】
また、上記の土石流CGは、土石流流の詳細な流動深、挙動は推定の域を出ないものであるから現実感に欠け、十分な効果を発揮しないという課題があった。
【0013】
また、物理モデル数値解析(土砂流、氾濫・・・)の計算手法は、有限要素法、有限体積法、差分法など様々なものがあるが、時刻刻みや境界条件が適切でない場合には数値振動というものが生じる。この数値振動は大きなものから小さなものまであり、その発生を完全にチェックすることは非常に難しい。
【0014】
数値振動は計算中継続して発生するとは限らないため、限られた時刻のメッシュ表示だけを見てその発生を特定することは不可能であった。
【0015】
本発明は以上の課題を解決されたもので、パーソナルコンピュータ(windows(登録商標))によって自然災害(河川の氾濫、土砂流、つなみ等)の結果を簡単な構成で3次元ムービで表示させることができる数値解析情報動画像作成システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の数値解析情報動画像作成方法は、グラフィカルユーザインタフェース環境の3次元動画像作成ソフトウェアを有して、地域の地図データ、及び予想雨量に基づき流動深付き数値解析情報モデル作成コード部によって生成されたX、Y、Z、流動深からなる流動深付き数値データから流体の動画像を時間と共に変化させた3次元動画像を得るための数値解析情報動画像作成方法である。
【0017】
そして、(1)任意の座標系のメッシュで定義された地図データ及び予想雨量に基づいた一定時間あたりの各メッシュの流動深付き数値データを流動深付き数値解析情報モデル作成コード部によって作成し、テキストファイルとしてテキストファイル記憶部に一定時間毎に保存するステップと、(2)一定時間毎に保存されたテキストファイルを全て一時記憶メモリに展開するステップと、(3)一時記憶メモリに展開された全テキストファイルについて、メッシュ毎に割り付けられた地盤標高(Z)及び流動深に変化があるかどうかを判定し、変化がある場合は第1のフラグを、変化無しの場合は第2のフラグをメッシュに付加するステップと、(4)全テキストファイルの全メッシュに第1のフラグ及び第2のフラグの付加が完了したとき、付与したフラグとともに、全テキストファイルをバイナリ変換し、一定時間毎に対応させたバイナリファイルとしてバイナリファイル記憶部に保存するステップと、バイナリファイル記憶部の前記バイナリファイルから、第1のフラグを有するメッシュに割り付けられたをデータを不動地盤情報として保存するし、第2のフラグを有するメッシュに割り付けられたをデータを流体情報として保存するステップと、(5)不動地盤情報及び、時系列の流体情報を3次元動画像作成ソフトウェアに渡して、不動地盤情報から得られる地盤画像上に流体情報から得られる流体画像を合成した3次元動画像を得るステップとを有することを要旨とする。
【0018】
また、本発明の数値解析情報動画像作成プログラムは、予想雨量に基づき、流動深付き数値解析情報モデル作成コード部によって生成されたX、Y、Z、流動深からなる流動深付き数値データから流体の動画像を時間と共に変化させた3次元動画像を得るための数値解析情報動画像作成プログラムである。
【0019】
コンピュータに、流(1)動深付き数値解析情報モデル作成コード部によって作成され、テキストファイル記憶部に予め保存されている一定時間毎のテキストファイルの流動深付き数値データを、一時記憶メモリに展開する手段、(2)一時記憶メモリに展開された全テキストファイルについて、メッシュ毎に割り付けられた地盤標高(Z)及び流動深に変化があるかどうかを判定し、変化がある場合は第1のフラグを、変化無しの場合は第2のフラグをメッシュに付加する手段、(3)全テキストファイルの全メッシュに第1のフラグ及び第2のフラグの付加が完了したとき、付与したフラグとともに、全テキストファイルをバイナリ変換し、一定時間毎に対応させたバイナリファイルとしてバイナリファイル記憶部に保存する手段、(4)バイナリファイル記憶部のバイナリファイルから、第1のフラグを有するメッシュに割り付けられたをデータを不動地盤情報として保存するし、第2のフラグを有するメッシュに割り付けられたをデータを流体情報として保存する手段、(5)不動地盤情報及び、時系列の流体情報を3次元動画像作成ソフトウェアに渡して、不動地盤情報から得られる地盤画像上に流体情報から得られる流体画像を合成した3次元動画像を得る手段としての機能を実現させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、従来の平面的なメッシュ図では表現できなかった土石流や溶岩流、津波が時間と共に変化する3次元動画像をパーソナルコンピュータでも容易にリアルに表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態は、図1に示した数値解析情報動画像作成システム構成をとり、2次元洪水氾濫計算などの物理モデルによる数値解析結果を3次元空間画像として描画するものである。
【0022】
(システム構成)
まず、2次元洪水氾濫計算を行う汎用コンピュータ100と、その数値解析結果を3次元空間画像の描画を行うパーソナルコンピュータ200がある。汎用コンピュータ100とパーソナルコンピュータ200との間のデータの引き渡しは、フロッピー(登録商標)ディスク等の外部記憶媒体を介してでもよいし、通信ネットワークを介してでもよい。
【0023】
汎用コンピュータ100は、流動深付き数値モデル作成コード部1を具備する。流動深付き数値モデル作成コード部1は、入力された雨量等の条件と、地図データ11を元に、各地点の経過時間毎の流動深を計算し、XYZ座標値と共にテキスト形式の流動深付き数値データファイルとしてテキストファイル記憶部2に出力する。例えば、t1(t00001.cg)、t2(t00002.cg)、t3(t00003.cg)、・・・のように、経過時間毎のファイルが作成され、記憶される。
【0024】
なお、流動深付き数値モデル作成コード部(以下、流動深付き数値モデル作成コードという)1は、土石流氾濫解析や洪水氾濫解析、内水氾濫解析の他、溶岩流流下解析、火砕流流下解析、津波伝搬・遡上解析などのように地盤に類するものの上を流体が移動し、その流体部のXYZ座標値を出力できるものであればよい。
【0025】
次に、パーソナルコンピュータ200は、機能的にデータ変換部200aとムービ作成部200bに大別される。データ変換部200aは、テキストファイル記憶部2に記憶されたテキスト形式の全流動深付き数値データファイルを一時記憶メモリ14に展開するファイル展開部15と、一時記憶メモリ14に展開されたデータを解析する地盤・流動深変化判定部5からなる。さらに、データ変換部200aは、地盤・流動深変化判定部5により生成されるデータ(XYZ座標値、流動深、フラグ(0、1、2、または3))からバイナリ形式の変化情報付き数値解析情報ファイルを作成するファイル変換部3と、そのバイナリファイル(h1(t00001.bcg)、h2(t00002.bcg)、h3(t00003.bcg)、・・・)を記憶するバイナリファイル記憶部4とからなる。
【0026】
一方、ムービ作成部200bは、バイナリファイル記憶部4に記憶されたファイルから変化のあるデータのみを抽出するデータ抽出部6と、データ抽出部6から抽出データメモリ16を介して転送されるデータを受信し画像化する動画像処理部9からなる。さらに、ムービ作成部200bは、データ抽出部6から転送されるデータから時間情報とフレーム数を解析する時間解析部8と、時間解析部8が数えたフレーム数をカウントしておくタイムカウンタ10と、タイムカウンタ10から計算された動画像教示経過時間を画面18上の任意の位置に表示するするための画像表示制御部13を有する。また、データ抽出部6が抽出したデータを記憶しておく抽出データメモリ16に接続された抽出データ記憶部7と、動画像処理部9に接続され、動画像処理部9が画像表示に使用するテクスチャーを記憶しておくテクスチャー記憶部12と、動画像処理部9に接続され、動画像処理部9が生成する汎用動画像ファイルを記憶しておく汎用動画像ファイル記憶部17を備える。
【0027】
ここで、本発明の3次元動画像(ムービ)作成システムとは、パーソナルコンピュータ200に実装されるデータ変換部200a及び、ムービ作成部200bのうちのデータ抽出部6、データ抽出部6に接続された抽出データメモリ16、抽出データメモリ16に接続された抽出データ記憶部7、そしてデータ抽出部6に接続された時間解析部8と、時間解析部8に接続されたタイムカウンタ10を含めた手段部をいう。
【0028】
一方、動画像処理部9と画像表示制御部13は、3Dモデリング、アニメーション化、レンダリングを行って立体動画像を描画したり、AVIやMPEG形式の動画像ファイルを生成することができる機能を有する手段部である。この手段部には、パーソナルコンピュータ200に実装可能な市販の3次元動画像(3Dムービ)作成ソフトウェアを利用することができる。
【0029】
動画像処理部9は、不動地盤f1と、データ抽出部6が抽出したデータから描画した流体画像r1、r2、r3、r4、・・・を順次合成していく。図2(a)は、山間部の土石流の流下氾濫のシュミレーション結果の合成例を示し、図2(b)は、都市部における河川の洪水による氾濫のシュミレーション結果の合成例を示している。
【0030】
(システムの処理フロー)
まず図3を用いながら、上記のように構成される数値解析情報動画像作成システムの解析条件設定と数値解析の実施の処理を主にして、全体の流れの概要を説明する:
S1:流体災害をシミュレーションする地域の計画雨量、土砂量などの解析条件(パラメータ)を流動深付き数値モデル作成コード1に設定する。
【0031】
S2:設定された解析条件から数値解析(シミュレーション)を実施する:
シミュレーションでは、流れを例えば数1に示すx−y平面における2次元漸変流の運動方程式として取り扱う。
【数1】

【0032】
また、τx、τyはxおよびy方向の流れの抵抗力であり、マニング(Manning)則を用いれば、それぞれ数2の式で表される。
【数2】

【0033】
そして、水の連続式と土砂の連続式は、それぞれ数3の式で表される。
【数3】

【0034】
掃流砂量式は、数4に示すメイヤー−ピーター・ミュラー(Meyer-Peter・Muller)の式(M.P.M式)を用いる。
【数4】

【0035】
浮遊砂量は、数5に示すレーン・カリンスク(Lane・Kalinske)の式を用いて計算する。
【数5】

【0036】
以上の方程式を差分法で解くことにより、指定の地図の各メッシュにおける時刻毎の流動深を求め、この流動深(水が流れ込むことによる水量の厚み)にXYZ座標を対応させ、流動深付き数値情報とする。
【0037】
S3:データ変換部200aによって、S2によって得られたテキスト形式の流動深付き数値データファイルをバイナリ形式の変化情報付き数値解析情報ファイルに変換後、ムービ作成部200bで地形、解析対象の3次元ポリゴン化を行う。
【0038】
S4:動画像を表示するために適した解析対象のテクスチャー設定を行う。
【0039】
S5:画面18に描画する際の方向として、視点の設定を行う。
【0040】
S6:動画像処理部9は、データ抽出部6が抽出したデータから、解析ステップ毎のレンダリングを行う。
【0041】
S7:そして、設定条件に従って3次元ムービを生成する。
【0042】
次に、図4を用いて数値解析情報動画像作成システムの3次元動画像作成システムの処理を主にして、全体の流れを説明する。
【0043】
S20:まず、汎用コンピュータ100で、前述した数1から数5の解析式を用いて、物理モデルによる数値解析(シミュレーション)を実施する。
【0044】
S21:S20の結果である流動深付き数値情報をテキスト変換(平面直角座標系)してテキストファイル記憶部2に保存する。例えば、図5に示す地域の地図データ11において、時刻T1、T2、Tt3、・・・の各メッシュの地盤標高(Z)と流動深を求め、XY座標と共にテキスト形式の流動深付き数値情報ファイルにしてテキストファイル記憶部2に保存(t1、t2、t3、・・・)する。
【0045】
図6(a)は、500秒後の流動深付き数値情報ファイルtiの情報を流動深付き数値情報を示しており、流動深がゼロ、すなわち水が流れ込んでいない状態である。また、図6(b)に、流動深付き数値情報ファイルtiの各カラムのデータの意味を示している。なお、地盤標高データは洪水半氾濫の場合には、全時刻で同一座標は同一値となるが、土石流などの計算ケースはでは河床が浸食される場合も土砂推積により上昇する場合もある。このため、地盤標高値と流動深は時々刻々変化するものとなる。
【0046】
S22:パーソナルコンピュータ200のデータ変換部200aは、汎用コンピュータ100で生成された流動深付き数値情報ファイルtiを一時記憶メモリ14に展開し、変化情報付き数値解析情報ファイルhiにバイナリ変換し、バイナリファイル記憶部4に出力する。
【0047】
S23:データ抽出部6(図4ではシミュレーションインポータ)は、変化情報付き数値解析情報ファイルhiを3次元動画像作成ソフトウェア(動画像処理部9)への読み込む。
【0048】
S24:表示間隔の設定、流体部分のテクスチャー、オルソフォトの貼りつけなど、3次元動画像作成ソフトウェア(動画像処理部9)が動作するための各種条件を設定する。
【0049】
S25:また、表示に際してのタイムカウンターの自動設定が行われる。
【0050】
S26:画面18に描画する際の方向として、視点の設定を行う。
【0051】
S27:3次元動画像作成ソフトウェア(動画像処理部9)により、シーンレンダリングが行われる。
【0052】
S28:最終的に3次元動画像作成ソフトウェア(動画像処理部9)により、3次元ムービ作成が行われる。
【0053】
続いて、図4のS22の処理について、図7を用いて更に処理の流れを説明する:
S40、S41:データ変換部200aのファイル展開部15は、テキストファイル記憶部2の全ての流動深付き数値情報ファイルtiを一時記憶メモリ14に展開する。
【0054】
S42:地盤、流動深変化判定部5は、まず、任意のメッシュ1地点を指定して、その1地点に関する地盤標高と流動深のデータを、一時記憶メモリ14内の最初の流動深付き数値情報ファイルt1から最後の流動深付き数値情報ファイルtiまでの全ファイルについて比較する。
【0055】
S43:S42において、地盤標高あるいは流動深に変化がないと判定したときは、その地点のデータにフラグ「0」を割り付ける。
【0056】
S44:S42において、比較した結果、地盤標高あるいは流動深に変化があると判定したときは、次に流動深のみ変化しているかどうかを判定する。
【0057】
S45:S44において、流動深のみが変化すると判定したときは、その地点のデータにフラグ「1」を割り付ける。
【0058】
S46:S44において、流動深が変化してはいないと判定したときは、地盤標高のみが変化しているかどうかを判定する。
【0059】
S47:S46において、比較した結果、地盤標高のみが変化すると判定したときは、その地点のデータにフラグ「2」を割り付ける。
【0060】
S48:S46において、変化しているのが地盤標高だけではないと判定したときは、地盤標高・流動深ともに変化するかどうかを判定する。
【0061】
S49:S48において、地盤標高・流動深共に変化すると判定したときは、その地点のデータにフラグ「3」を割り付ける。
【0062】
S50:次のメッシュの地点を指定し、S42からS49までの処理を繰り返す。もしそれ以上指定する地点がなくなった場合は、繰り返し処理を抜ける。
【0063】
S51:最後に、ファイル変換部3は、全データをバイナリデータに変換して、バイナリ形式の変化情報付き数値解析情報ファイルhiとしてバイナリファイル記憶部4に記憶する。
【0064】
ここで、数値に変化がある場合と無い場合の意味について説明する。地盤標高に変化がないとは、洪水氾濫解析などのように初期地盤標高に変化がないものである。地盤標高に変化がある場合とは、土石流の氾濫解析では土石流が通過する際に河床(地盤)を削り取るので、初期地盤が浸食されるという現象が生じる。また、逆に土石流が推積する範囲では地盤に土石が推積して地盤標高が上昇する。したがって、初期地盤標高のみを3次元動画像作成ソフトウェアに読み込めばよいことになり、後は時々刻々変化する標高値のみを読み込めばよい。
【0065】
続いて、図4のS23のデータ抽出部6の処理について、図8、図9を用いて更に詳細に処理の流れを説明する。
【0066】
S60:まずカウンタiに1を代入し、第1番目の変化情報付き数値解析情報ファイルhiを指定する:
S61:変化情報付き数値解析情報ファイルh1を開く:
S62:メッシュを指定するためのカウンタaに1を代入する:
S63:S61で開いた変化情報付き数値解析情報ファイルh1のデータのうちで、メッシュmaに割りふられたフラグを判定する:
S64:フラグの値が(0)である場合は、メッシュmaのデータを不動地盤情報f1として保存する:
S65:フラグの値が(1)である場合は、メッシュmaのデータの座標データと共に流動深値を流体情報r1として保存する:
S66:フラグの値が(2)である場合は、メッシュmaのデータの座標データと共に地盤標高値(Z)を流体情報r1として保存する:
S67:フラグの値が(3)である場合は、メッシュmaのデータの座標データと共に地盤標高値(Z)と流動深値を流体情報r1として保存する:
S68:メッシュを指定するためのカウンタaに1を加算し、次の地点を指定する:
S69:指定した地点がオーバーしていないかを判定し、オーバーしていなければ、次の地点のデータについてS63からS68までの処理を繰り返す。もし変化情報付き数値解析情報ファイルh1の全メッシュデータについて終了した場合は、変化情報付き数値解析情報ファイルh2以降についての処理(図9)に移る。
【0067】
S70:カウンタiに1を加算し、変化情報付き数値解析情報ファイルhiを指定する:
S71:最大ファイル数をオーバーしていないかを判定し、オーバーしていない場合はS72へ、オーバーしている場合は、S80に移る:
S72:変化情報付き数値解析情報ファイルhiを開く:
S73:S72で開いた変化情報付き数値解析情報ファイルhiのデータのうちで、変化情報付き数値解析情報ファイルh1の処理の際にフラグが(0)でなかったメッシュmaに割りふられたフラグを判定する。
【0068】
S74:フラグの値が(1)である場合は、メッシュmaのデータの座標データと共に流動深値を流体情報riとして保存する:
S75:フラグの値が(2)である場合は、メッシュmaのデータの座標データと共に地盤標高値(Z)を流体情報riとして保存する:
S76:フラグの値が(3)である場合は、メッシュmaのデータの座標データと共に地盤標高値(Z)と流動深値を流体情報riとして保存する:
S77:フラグが(0)でなかった次のメッシュmaを指定する。このメッシュmaは、フラグが(0)であったメッシュが保存された不動地盤情報f1のデータから容易に指定できる:
S78:指定したメッシュがオーバーしていないかを判定し、オーバーしていなければ、次のメッシュのデータについてS73からS77までの処理を繰り返す。もし変化情報付き数値解析情報ファイルhiのフラグが(0)でなかった全メッシュデータについて終了した場合は、S70に戻って処理を行う:
S80:全変化情報付き数値解析情報ファイルhiについてのデータ抽出処理が完了したら、その抽出データを抽出データ記憶部7に記憶し、処理を終了する。
【0069】
この図8、図9に示した処理によって、図1に示した不動地盤f1、流体画像r1、r2、r3、r4、・・・の情報が生成される。
【0070】
この抽出データが動画処理部9に転送されて、順次描画していくことにより、3次元ムービ作成が行われる。図10に示すように、山の上に雨が降り出したときの谷を流れる土石流を3次元で時間軸に対応させて表示させることができている。
【0071】
ここで、物理モデル数値解析(土砂流、氾濫・・・)の計算手法は、有限要素法、有限体積法、差分法など様々なものがあるが、時刻刻みや境界条件が適切でない場合には数値振動というものが生じる。この数値振動は大きなものから小さなものまであり、その発生を完全にチェックすることは非常に難しい。
【0072】
数値振動は計算中継続して発生するとは限らないため、限られた時刻のメッシュ表示だけを見てその発生を特定することは不可能であった。
【0073】
しかしながら、数値解析結果を3次元動画化することで、誰でも容易に連続的な解析解の変化を視覚的に捉えることができるので、数値振動発生のチェックが可能となっている。
【0074】
図11は、流体部分が異常に飛び出た映像を示しており、シミュレーションのデータに何らかの誤りがある可能性を視覚的に示したものである。
【0075】
図12は上記処理によってタイムカウンタを動作させたものであり、どの程度の時間で土石流が流れたかを示している。これは、画面のサブウインドウの経過時間表示をクリックした後、画面上をマウスでクリックすることで、その箇所をタイムカウンター表示箇所とすることができる。
【0076】
また、図13は、土石流の3次元表示と、洪水氾濫の3次元表示を示す図である。
【0077】
図14(a)は溶岩流の3次元表示を示し、図14(b)は上記の処理による津波の3次元表示である。これらは、上記処理によって時間と共に立体的に変化していく。つまり、流体部分の質感設定により、表面を粗いブロック上の黒色テクスチャーで覆い、内部をオレンジ色の発光体と設定することにより溶岩流等もリアルに表示が可能である。
【0078】
また、本実施の形態では、視点の設定によって近接映像を表示することも可能であり(図15(a)参照)、上流側から下流側を見ることも可能である(図15(b)参照)。
【0079】
また、本実施の形態では、図16(a)に示すように地形ポリゴンを表示させることも可能であり、図16(b)に示すように流体部分のポリゴンを表示させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
砂防事業実施効果の説明、災害再現計算のビジュアル表示、動くハザードマップ、事業計画、及び事業効果の比較表示の他、解析結果を連続的・直感的に把握できる数値解析モデルの開発、研究に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施の形態の数値解析情報動画像作成システムの概略構成図である。
【図2】本実施の形態の数値解析情報動画像作成システムを用いて得られた氾濫動画像を説明する説明図である。
【図3】本実施の形態の数値解析情報動画像作成システム全体の流れを説明する概略フローチャートである。
【図4】本実施の形態の数値解析情報動画像作成システム全体の流れを説明する詳細フローチャートである。
【図5】雨が降り出す前の地形データ(オルソフォトで示している)を説明する説明図である。
【図6】流動深さ付き数値情報ファイルの出力例の説明図である。
【図7】データ変換部200aのファイル展開部15、ファイル変換部3、地盤・流動深変化判定部5の動作を説明するフローチャートである。
【図8】ムービ作成部200bのデータ抽出部6の動作を説明する第1のフローチャートである。
【図9】ムービ作成部200bのデータ抽出部6の動作を説明する第2のフローチャートである。
【図10】本実施の形態によって谷を流れる土砂流を3次元で動画表示させた画面の説明図である。
【図11】本実施の形態による流体部分が飛び出た映像を得ることができたことを示す説明図である。
【図12】タイムカウンタを動作させたときの説明図である。
【図13】土石流の3次元表示と、洪水氾濫の3次元表示を示す説明図である。
【図14】溶岩流の3次元表示と津波の3次元表示の説明図である。
【図15】視点の設定による3次元表示を説明する説明図である。
【図16】地形ポリゴンを表示、流体部分のポリゴン表示ができることを説明する説明図である。
【図17】従来の土砂流の表現方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 流動深付き数値モデル作成コード
2 テキストファイル記憶部
3 ファイル変換部
4 バイナリファイル記憶部
5 地盤・流動深変化判定部
6 データ抽出部
7 抽出データ記憶部
8 時間解析部
9 動画像処理部
10 タイムカウンタ
11 地図データ
12 テクスチャー記憶部
13 画像表示制御部
14 一時記憶メモリ
15 ファイル展開部
16 抽出データメモリ
17 汎用動画像ファイル記憶部
18 画面
100 汎用コンピュータ
200 パーソナルコンピュータ
200a データ変換部
200b ムービ作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフィカルユーザインタフェース環境の3次元動画像作成ソフトウェアを有して、地域の地図データ、及び予想雨量に基づき流動深付き数値解析情報モデル作成コード部によって生成されたX、Y、Z、流動深からなる流動深付き数値データから流体の動画像を時間と共に変化させた3次元動画像を得るための数値解析情報動画像作成方法であって、
任意の座標系のメッシュで定義された前記地図データ及び前記予想雨量に基づいた一定時間あたりの前記各メッシュの前記流動深付き数値データを前記流動深付き数値解析情報モデル作成コード部によって作成し、テキストファイルとしてテキストファイル記憶部に前記一定時間毎に保存するステップと、
前記一定時間毎に保存された前記テキストファイルを全て一時記憶メモリに展開するステップと、
前記一時記憶メモリに展開された前記全テキストファイルについて、前記メッシュ毎に割り付けられた地盤標高(Z)及び流動深に変化があるかどうかを判定し、変化がある場合は第1のフラグを、変化無しの場合は第2のフラグを前記メッシュに付加するステップと、
前記全テキストファイルの全メッシュに前記第1のフラグ及び前記第2のフラグの付加が完了したとき、付与したフラグとともに、前記全テキストファイルをバイナリ変換し、前記一定時間毎に対応させたバイナリファイルとしてバイナリファイル記憶部に保存するステップと、
前記バイナリファイル記憶部の前記バイナリファイルから、前記第1のフラグを有するメッシュに割り付けられたをデータを不動地盤情報として保存し、前記第2のフラグを有するメッシュに割り付けられたをデータを流体情報として保存するステップと、
前記不動地盤情報及び、時系列の前記流体情報を前記3次元動画像作成ソフトウェアに渡して、前記不動地盤情報から得られる地盤画像上に前記流体情報から得られる流体画像を合成した前記3次元動画像を得るステップと
を有することを特徴とする数値解析情報動画像作成方法。
【請求項2】
前記不動地盤情報と前記流体情報を変化情報付き数値解析情報ファイルとして抽出データ記憶部に保存するステップとを有することを特徴とする請求項1記載の数値解析情報動画像作成方法。
【請求項3】
予め設定されている表示時間間隔で前記流体画像を画面に表示するとき、任意の時点まで渡された前記流体情報の数をカウントし、指定の画面位置に前記流体画像と共に該カウント値より算出した経過時間を表示させるステップとを有することを特徴とする請求項1又は2記載の数値解析情報動画像作成方法。
【請求項4】
予想雨量に基づき、流動深付き数値解析情報モデル作成コード部によって生成されたX、Y、Z、流動深からなる流動深付き数値データから流体の動画像を時間と共に変化させた3次元動画像を得るための数値解析情報動画像作成プログラムであって、
コンピュータに、
前記流動深付き数値解析情報モデル作成コード部によって作成され、テキストファイル記憶部に予め保存されている一定時間毎のテキストファイルの前記流動深付き数値データを、一時記憶メモリに展開する手段、
前記一時記憶メモリに展開された前記全テキストファイルについて、前記メッシュ毎に割り付けられた地盤標高(Z)及び流動深に変化があるかどうかを判定し、変化がある場合は第1のフラグを、変化無しの場合は第2のフラグを前記メッシュに付加する手段、
前記全テキストファイルの全メッシュに前記第1のフラグ及び前記第2のフラグの付加が完了したとき、付与したフラグとともに、前記全テキストファイルをバイナリ変換し、前記一定時間毎に対応させたバイナリファイルとしてバイナリファイル記憶部に保存する手段、
前記バイナリファイル記憶部の前記バイナリファイルから、前記第1のフラグを有するメッシュに割り付けられたをデータを不動地盤情報として保存するし、前記第2のフラグを有するメッシュに割り付けられたをデータを流体情報として保存する手段、
前記不動地盤情報及び、時系列の前記流体情報を前記3次元動画像作成ソフトウェアに渡して、前記不動地盤情報から得られる地盤画像上に前記流体情報から得られる流体画像を合成した前記3次元動画像を得る手段
としての機能を実現させるための数値解析情報動画像作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−91829(P2006−91829A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61629(P2005−61629)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【分割の表示】特願2004−337991(P2004−337991)の分割
【原出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(591074161)アジア航測株式会社 (48)
【Fターム(参考)】