説明

数式表示演算装置およびプログラム

【課題】数式表示演算装置において、数式の演算順序を単に表示させるのではなく、ユーザ操作に応じて直感的に学習することを可能にする。
【解決手段】表示された一連の数式「2+3×4−15÷5」の一部を範囲指定するだけで、当該指定範囲の数式部分「2+3」「2+3×」「2+3×4」の演算の優先順が確認され、その優先順に適合している場合「2+3×4」には、指定範囲の演算結果「14」が付加的に表示され、適合していない場合「2+3」「2+3×」には、不適合のメッセージ「ERR」が表示される。よって、表示された一連の数式の任意の範囲を指定するというユーザ操作に応じて、範囲指定された数式部分が演算の優先順に適合しているのか否かを直ちに知ることができ、各種数式の演算順序をユーザ操作に応じて直感的に学習することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された数式を表示させ、この数式を演算処理する数式表示演算装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般に電卓と称する小型の電子式計算機が広く実用されている。
【0003】
この電卓において、演算したい所望の数式を入力し表示させて実行キーを操作すると、入力された数式の解が直ちに演算処理されて表示される。
【0004】
例えば、所望の数式として「2+3×4−15÷5」を入力して実行キーを操作すると、この数式を演算処理した結果「11」が直ちに表示される。
【0005】
しかし、このような電卓を、特に四則演算の優先順を学習する教育現場で使用する場合、学習対象とした数式の解である演算結果が直ちに表示されてしまうために、どのような演算の優先順で演算処理されたのか分かりづらい面がある。
【0006】
そこで、入力された数式に対し、その演算の優先順序に対応した括弧付を行い表示させることにより、演算順序の分かりづらい複雑な数式でも、表示を見るだけでその演算順序を容易に認識することのできる数式表示方式が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−231081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の数式表示方式を利用して数式の演算順序を表示させると、入力された数式の演算順序を明確に知ることはできものの、要するに演算順序の答えが表示されることになるので、十分な学習効果は得られない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、数式の演算順序を単に表示させるのではなく、ユーザ操作に応じて直感的に学習することが可能になる数式表示演算装置およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の数式表示演算装置は、表示部と、この表示部に数式を表示させる数式表示制御手段と、この数式表示制御手段により表示された数式中の一部の範囲をユーザ操作に応じて指定する数式範囲指定手段と、この数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分が、前記数式の演算の優先順に適合した範囲であるか否かを判断する演算順適否判断手段と、この演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合した範囲であると判断された場合に、その数式部分の演算結果を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定演算表示制御手段と、前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合しない範囲であると判断された場合に、その適合しない旨を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定不適表示制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の数式表示演算装置は、前記請求項1に記載の数式表示演算装置において、前記範囲指定演算表示制御手段により表示された数式部分の演算結果を前記数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分に入れ替えた数式を、前記表示部に表示させる数式再表示制御手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の数式表示演算装置は、前記請求項1または請求項2に記載の数式表示演算装置において、前記範囲指定演算表示制御手段は、前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合した範囲であると判断された場合に、その数式部分の演算結果を同数式部分に対応付けて表示させ、前記範囲指定不適表示制御手段は、前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合しない範囲であると判断された場合に、その適合しない旨を同数式部分に対応付けて表示させる、ことを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の数式表示演算装置は、表示部と、この表示部に数式を表示させる数式表示制御手段と、この数式表示制御手段により表示された数式中の一部の範囲をユーザ操作に応じて指定する数式範囲指定手段と、この数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分が、前記数式の演算の優先順に適合した範囲であるか否かを判断する演算順適否判断手段と、この演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合しない範囲であると判断された場合に、その数式部分を含んで且つ前記数式の演算の優先順に適合している範囲の数式部分を、前記数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分として強制的に設定する強制設定手段と、前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合した範囲であると判断された場合に、その数式部分の演算結果を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定演算表示制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載のプログラムは、表示部を有する演算装置のコンピュータを制御するためのプログラムであって、前記コンピュータを、前記表示部に数式を表示させる数式表示制御手段、この数式表示制御手段により表示された数式中の一部の範囲をユーザ操作に応じて指定する数式範囲指定手段、この数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分が、前記数式の演算の優先順に適合した範囲であるか否かを判断する演算順適否判断手段、この演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合した範囲であると判断された場合に、その数式部分の演算結果を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定演算表示制御手段、前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合しない範囲であると判断された場合に、その適合しない旨を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定不適表示制御手段、として機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、数式の演算順序を単に表示させるのではなく、ユーザ操作に応じて直感的に学習することが可能になる数式表示演算装置およびそのプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の数式表示演算装置の実施形態に係るグラフ関数電卓10の外観構成を示す平面図。
【図2】前記グラフ関数電卓10の電子回路の構成を示すブロック図。
【図3】前記グラフ関数電卓10による第1実施形態の範囲指定演算処理(1)を示すフローチャート。
【図4】前記グラフ関数電卓10の数式優先順評価エリア23dに記憶される数式の演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報を説明する図。
【図5】前記グラフ関数電卓10の第1実施形態の範囲指定演算処理(1)に伴う数式表示の具体例(その1)を示す図。
【図6】前記グラフ関数電卓10の第1実施形態の範囲指定演算処理(1)に伴う数式表示の具体例(その2)を示す図。
【図7】前記グラフ関数電卓10の第1実施形態の範囲指定演算処理(1)に伴う数式表示の具体例(その3)を示す図。
【図8】前記グラフ関数電卓10による第2実施形態の範囲指定演算処理(2)を示すフローチャート。
【図9】前記グラフ関数電卓10の第2実施形態の範囲指定演算処理(2)に伴う数式表示の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面により本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の数式表示演算装置の実施形態に係るグラフ関数電卓10の外観構成を示す平面図である。
【0019】
このグラフ関数電卓10は、その携帯性の必要からユーザが片手で十分把持し片手で操作可能な小型サイズからなり、この電卓10の本体正面にはキー入力部11およびタッチパネル式表示部15が設けられる。
【0020】
キー入力部11には、数字,文字,算術記号を入力したり演算の実行を指示したりするための数字・文字・演算記号キー群12、各種の関数コマンドを入力するための関数機能キー群13、タッチパネル式表示部15に表示されたカーソル,ポインタの移動操作やデータ項目の選択操作などを行うためのカーソルキー14が備えられる。
【0021】
前記数字・文字・演算記号キー群12としては、「0」〜「9」(数値)キー、「+」「−」「×」「÷」(算術記号)キー、「EXP」(指数関数)キー、「CALC」(計算)キー、「EXE」(実行)キー、「AC」(クリア)キーなどが配列される。
【0022】
前記関数機能キー群13としては、「log」キー、「ln」キー、「sin」キー、「cos」キー、「tan」キー、「Graph」キー、「Draw」キーなどが配列される。
【0023】
前記タッチパネル式表示部15は、ドットマトリクス型の液晶表示部15dに透明タッチパネル15tを重ねて構成される。
【0024】
このグラフ関数電卓10は、ユーザ任意の数式がタッチパネル式表示部15に表示された状態で、この表示された数式の任意の範囲をユーザ操作に応じたタッチペンPやカーソルポインタ等のポインティングデバイスにより指定すると、範囲指定された数式部分を反転表示Hする機能を有する。
【0025】
また、このグラフ関数電卓10は、タッチパネル表示部15に表示された数式の演算の優先順を評価し、この演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報を記憶する機能を有する。
【0026】
そして、このグラフ関数電卓10は、前記範囲指定された数式の範囲が前記演算の優先順に対応した数式の範囲に適合(合致)する場合に、その指定範囲の数式を演算処理し演算結果を表示する機能、および前記範囲指定された数式の範囲が前記演算の優先順に対応した数式の範囲に適合(合致)しない場合に、エラーメッセージを表示する機能を有する。
【0027】
図2は、前記グラフ関数電卓10の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0028】
このグラフ関数電卓10は、コンピュータ等からなる制御部(CPU)21を備えている。
【0029】
制御部(CPU)21は、キー入力部11あるいはタッチパネル式表示部15から入力される入力データに応じて、フラッシュROMなどの記憶装置22に予め記憶されている計算機制御プログラム22aを起動させ、あるいは記憶媒体読み書き部24に装着される外部記憶媒体(メモリ・カードなど)25に予め記憶されている計算機制御プログラム22aを前記記憶装置22に読み込ませて起動させ、あるいは通信制御部26を介して通信ネットワークN上のWebサーバ27(この場合は、プログラムサーバ)から受信された計算機制御プログラム22aを前記記憶装置22に読み込ませて起動させ、RAM23を作業用記憶領域として回路各部の動作制御を行なうものである。
【0030】
この制御部(CPU)21には、前記キー入力部11、記憶装置(ROM)22、RAM23、記憶媒体読み書き部24、通信制御部26が接続され、さらに、タッチパネル式表示部15が接続される。
【0031】
前記記憶装置22には、本グラフ関数電卓10の電子回路における全体の処理を司るシステムプログラムが予め記憶されると共に、キー入力部11あるいはタッチパネル式表示部15からの入力に応じた数式表示・演算処理やグラフ描画処理などを実行するための数式表示・演算処理プログラム、グラフ描画プログラム、前記タッチパネル式表示部15の透明タッチパネル15tにおいてタッチ操作された位置(座標)を検出するためのタッチ位置検出プログラムなどが計算機制御プログラム22aとして記憶される。
【0032】
前記数式表示・演算処理プログラムには、前記制御部(CPU)21を制御して、前述した、タッチパネル式表示部15にて範囲指定された数式部分を反転表示Hする機能、数式の演算の優先順を評価し、この演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報を記憶する機能、前記範囲指定された数式の範囲が前記演算の優先順に対応した数式の範囲に適合(合致)する場合に、その指定範囲の数式を演算処理し演算結果を表示する機能、および前記範囲指定された数式の範囲が前記演算の優先順に対応した数式の範囲に適合(合致)しない場合に、エラーメッセージを表示する機能などが含まれる。
【0033】
前記RAM23には、入力バッファ23a、数式記憶エリア23b、範囲指定バッファ23c、数式優先順評価エリア23d、タッチ座標メモリ23e、演算データメモリ23fなどが確保される。
【0034】
入力バッファ23aには、キー入力部11により入力された数値や数式、各種コマンドなどのキー入力データが逐次記憶される。
【0035】
数式記憶エリア23bには、前記キー入力部11により入力された数式のデータが記憶される。
【0036】
範囲指定バッファ23cには、タッチパネル式表示部15に表示された数式に対して、ユーザ操作により当該数式の一部の範囲が指定された場合に、指定された範囲の数式部分が記憶される。
【0037】
数式優先順評価エリア23dには、タッチパネル式表示部15に表示された数式の演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報が記憶される(図4参照)。
【0038】
タッチ座標メモリ23eには、タッチパネル15tに対するタッチ操作に伴い前記タッチ位置検出プログラムに従い検出されるタッチ位置の座標がその始点座標から終点座標まで連続的に一時記憶される。
【0039】
演算データメモリ23fには、本グラフ関数電卓10における各種の求解演算処理に伴う演算過程のデータや演算結果のデータなどが逐次記憶される。
【0040】
次に、前記構成によるグラフ関数電卓10の動作について説明する。
【0041】
(第1実施形態)
図3は、前記グラフ関数電卓10による第1実施形態の範囲指定演算処理(1)を示すフローチャートである。
【0042】
図4は、前記グラフ関数電卓10の数式優先順評価エリア23dに記憶される数式の演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報を説明する図である。
【0043】
例えば図4(A)に示すような数式「sin30×2+cos30×2」の場合、当該数式の演算の優先順の評価に従い、優先順に対応した数式の範囲が括弧記号により示され、各括弧〜閉じ括弧間の数式の範囲毎に、優先して演算すべき範囲が、(sin30)→((sin30)×2)→(cos30)→((cos30)×2)→((sin30×2)+(cos30×2))として示される。
【0044】
また例えば図4(B)に示すような数式「2+3×4−15÷5」の場合、当該数式の演算の優先順の評価に従い、優先順に対応した数式の範囲が括弧記号により示され、各括弧〜閉じ括弧間の数式の範囲毎に、優先して演算すべき範囲が、(3×4)→(15÷5)→(2+(3×4)−(15÷5))として示される。
【0045】
なお、数式の演算の優先順を評価する手法については、従来公知の手法であるため、その詳細な説明は省略する。
【0046】
図5は、前記グラフ関数電卓10の第1実施形態の範囲指定演算処理(1)に伴う数式表示の具体例(その1)を示す図である。
【0047】
キー入力部11のユーザ操作に応じて、数式「2+3×4−15÷5」が入力されると、入力された数式のデータが数式記憶エリア23bに記憶され(ステップS1)、図5(A)に示すように、演算結果「11」と共にタッチパネル式表示部15に表示される(ステップS2)。
【0048】
この任意の数式「2+3×4−15÷5」の表示状態で、当該数式上の所望の範囲「3×4」がペンタッチなどにより指定されると、この範囲指定された数式の一部「3×4」が反転表示Hされる(ステップS3)。
【0049】
ここで、「CALC」(計算)キーが入力されるか、または一定時間(例えば5sec)が経過したと判断されると(ステップS4(Yes))、前記範囲指定された数式の一部「3×4」が範囲指定バッファ23cに記憶される(ステップS5)。
【0050】
そして、前記数式記憶エリア23bに記憶された数式「2+3×4−15÷5」の演算の優先順が評価され、この演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(B)参照)が、数式優先順評価エリア23dに記憶される(ステップS6)。
【0051】
すると、前記範囲指定バッファ23cに記憶された数式の一部「3×4」について、前記数式優先順評価エリア23dに記憶された演算の優先順に対応した数式の範囲に適合するか否か判断される(ステップS7)。
【0052】
この場合、範囲指定された数式の一部「3×4」は、前記演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(B)参照)の中で、括弧で括られた範囲に合致するため、演算の優先順に適合すると判断される(ステップS7(Yes))。
【0053】
すると、前記範囲指定バッファ23cに記憶された数式の一部「3×4」が演算処理され(ステップS8)、その演算結果「12」が演算データメモリ23fに記憶されると共に、タッチパネル式表示部15において反転表示Hされた指定範囲「3×4」の右下に枠で囲って表示される(ステップS9)。
【0054】
これにより、表示された一連の数式の一部を範囲指定するだけで、当該指定範囲の数式部分の演算の優先順が確認され、その演算結果が付加的に表示される。
【0055】
そして、図5(B)に示すように、「EXE」(実行)キーが入力されると、前記反転表示Hされている指定範囲の数式部分「3×4」が、その演算結果「12」と入れ替えられ、一部単純化された数式「2+12−15÷5」としてタッチパネル式表示部15に再表示される。
【0056】
図6は、前記グラフ関数電卓10の第1実施形態の範囲指定演算処理(1)に伴う数式表示の具体例(その2)を示す図である。
【0057】
キー入力部11のユーザ操作に応じて、数式「sin30×2+cos30×2」が入力されると、入力された数式のデータが数式記憶エリア23bに記憶され(ステップS1)、図6(A)に示すように、演算結果「2.732050808」と共にタッチパネル式表示部15に表示される(ステップS2)。
【0058】
この任意の数式「sin30×2+cos30×2」の表示状態で、当該数式上の所望の範囲「sin30」がペンタッチなどにより指定されると、この範囲指定された数式の一部「sin30」が反転表示Hされる(ステップS3)。
【0059】
ここで、「CALC」(計算)キーが入力されるか、または一定時間(例えば5sec)が経過したと判断されると(ステップS4(Yes))、前記範囲指定された数式の一部「sin30」が範囲指定バッファ23cに記憶される(ステップS5)。
【0060】
そして、前記数式記憶エリア23bに記憶された数式「sin30×2+cos30×2」の演算の優先順が評価され、この演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(A)参照)が、数式優先順評価エリア23dに記憶される(ステップS6)。
【0061】
すると、前記範囲指定バッファ23cに記憶された数式の一部「sin30」について、前記数式優先順評価エリア23dに記憶された演算の優先順に対応した数式の範囲に適合するか否か判断される(ステップS7)。
【0062】
この場合、範囲指定された数式の一部「sin30」は、前記演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(A)参照)の中で、括弧で括られた範囲に合致するため、演算の優先順に適合すると判断される(ステップS7(Yes))。
【0063】
すると、前記範囲指定バッファ23cに記憶された数式の一部「sin30」が演算処理され(ステップS8)、その演算結果「0.5」が演算データメモリ23fに記憶されると共に、タッチパネル式表示部15において反転表示Hされた指定範囲「sin30」の右下に枠で囲って表示される(ステップS9)。
【0064】
この後同様に、図6(B)に示すように、数式上の所望の範囲「sin30×2」がペンタッチなどにより指定されると、この範囲指定された数式の一部「sin30×2」が反転表示Hされる(ステップS3)。
【0065】
そして、範囲指定バッファ23cに記憶された数式の一部「sin30×2」について、前記数式優先順評価エリア23dに記憶された演算の優先順に対応した数式の範囲に適合するか否か判断される(ステップS4〜S7)。
【0066】
この場合も、範囲指定された数式の一部「sin30×2」は、前記演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(A)参照)の中で、括弧で括られた範囲に合致するため、演算の優先順に適合すると判断される(ステップS7(Yes))。
【0067】
すると、前記範囲指定バッファ23cに記憶された数式の一部「sin30×2」が演算処理され(ステップS8)、その演算結果「1」が演算データメモリ23fに記憶されると共に、タッチパネル式表示部15において反転表示Hされた指定範囲「sin30×2」の右下に枠で囲って表示される(ステップS9)。
【0068】
これにより、表示された一連の数式の一部を範囲指定するだけで、当該指定範囲の数式部分の演算の優先順が確認され、その演算結果が付加的に表示される。
【0069】
そして、「EXE」(実行)キーが入力されると、前記反転表示Hされている指定範囲の数式部分「sin30×2」が、その演算結果「1」と入れ替えられ、一部単純化された数式「1+cos30×2」としてタッチパネル式表示部15に再表示される。
【0070】
図7は、前記グラフ関数電卓10の第1実施形態の範囲指定演算処理(1)に伴う数式表示の具体例(その3)を示す図である。
【0071】
前記図5で示した具体例(その1)と同様に、図7(A)に示すように、ユーザ操作に応じて入力された数式「2+3×4−15÷5」が、その演算結果「11」と共にタッチパネル式表示部15に表示された状態で、当該数式の範囲がその先頭から順次ペンタッチなどにより指定されると、この範囲指定された数式の一部「2+3」が反転表示Hされる(ステップS1〜S3)。
【0072】
この場合、範囲指定された数式の一部「2+3」は、前記演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(B)参照)の中で、括弧で括られた範囲に合致しないため、演算の優先順に適合しないと判断される(ステップS4〜S7(No))。
【0073】
すると、前記範囲指定された数式の一部「2+3」について、演算優先順が不適合であることのメッセージ「ERR」が、タッチパネル式表示部15において反転表示Hされた指定範囲「2+3」の右下に表示される(ステップS10)。
【0074】
この後、引き続き、図7(B)に示すように、前記数式の一部「2+3×」まで範囲指定されて反転表示Hされると(ステップS1〜S3)、この場合も演算の優先順に適合しないと判断され(ステップS4〜S7(No))、演算優先順の不適合メッセージ「ERR」が、同様に表示される(ステップS10)。
【0075】
そして、図7(C)に示すように、前記数式の一部「2+3×4」まで範囲指定されて反転表示Hされると(ステップS1〜S3)、この場合には演算の優先順に適合すると判断される(ステップS4〜S7(Yes))、
すると、範囲指定バッファ23cに記憶されている数式の一部「2+3×4」が演算処理され(ステップS8)、その演算結果「14」が演算データメモリ23fに記憶されると共に、タッチパネル式表示部15において反転表示Hされた指定範囲「2+3×4」の右下に枠で囲って表示される(ステップS9)。
【0076】
そして、図7(D)に示すように、「EXE」(実行)キーが入力されると、前記反転表示Hされている指定範囲の数式部分「2+3×4」が、その演算結果「14」と入れ替えられ、一部単純化された数式「14−15÷5」としてタッチパネル式表示部15に再表示される。
【0077】
これにより、表示された一連の数式の一部を範囲指定するだけで、当該指定範囲の数式部分の演算の優先順が確認され、その優先順に適合している場合には指定範囲の演算結果が付加的に表示され、適合していない場合には不適合のメッセージ「ERR」が表示される。よって、表示された一連の数式の任意の範囲を指定するというユーザ操作に応じて、範囲指定された数式部分が演算の優先順に適合しているのか否かを直ちに知ることができ、各種数式の演算順序をユーザ操作に応じて直感的に学習することができる。
【0078】
(第2実施形態)
図8は、前記グラフ関数電卓10による第2実施形態の範囲指定演算処理(2)を示すフローチャートである。
【0079】
図9は、前記グラフ関数電卓10の第2実施形態の範囲指定演算処理(2)に伴う数式表示の具体例を示す図である。
【0080】
キー入力部11のユーザ操作に応じて、数式「2+3×4−15÷5」が入力されると、入力された数式のデータが数式記憶エリア23bに記憶され(ステップT1)、図9(A)に示すように、演算結果「11」と共にタッチパネル式表示部15に表示される(ステップT2)。
【0081】
この任意の数式「2+3×4−15÷5」の表示状態で、当該数式上の所望の範囲が、例えばその先頭からタッチペンPなどによりタッチされ指定されると、この範囲指定された数式の一部「2」が反転表示Hされる(ステップT3)。
【0082】
そして、前記範囲指定された数式の一部「2」が範囲指定バッファ23cに記憶される(ステップT4)。
【0083】
すると、前記数式記憶エリア23bに記憶された数式「2+3×4−15÷5」の演算の優先順が評価され、この演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(B)参照)が、数式優先順評価エリア23dに記憶される(ステップT5)。
【0084】
そして、前記範囲指定バッファ23cに記憶された数式の一部について、前記数式優先順評価エリア23dに記憶された演算の優先順に対応した数式の範囲に適合するか否か判断される(ステップT6)。
【0085】
ここで、図9(A)→(B)に示すように、タッチパネル式表示部15に表示中の数式「2+3×4−15÷5」に対するタッチ位置の範囲を、「2」→「2+」と延ばして行くと、その都度、範囲指定された数式部分が範囲指定バッファ23cに記憶されると共に、演算の優先度に適合するか否か判断される(ステップT3〜T6)。
【0086】
図9(B)に示すように、「2+」と範囲指定されたとき、当該範囲指定された数式の一部「2+」は、前記演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(B)参照)の中で、括弧で括られた範囲に合致しないため、演算の優先順に適合しないと判断される(ステップT6(No))。
【0087】
すると、前記演算の優先順に対応した数式の範囲を示す情報(図4(B)参照)に基づき、図9(C)に示すように、範囲指定エリアが、現在の指定範囲「2+」を含んで演算の優先順が適合している範囲「2+3×4」に強制的に設定されて反転表示Hされる(ステップT7)。
【0088】
この場合、前記強制的に範囲指定された数式の一部「2+3×4」は、演算の優先順に適合すると判断されるので(ステップT3〜T6(Yes))、「CALC」(計算)キーが入力されるか、または一定時間(例えば5sec)が経過したと判断されると(ステップT8(Yes))、範囲指定バッファ23cに記憶された数式の一部「2+3×4」が演算処理される(ステップT9)。
【0089】
そして、演算結果「14」が演算データメモリ23fに記憶されると共に、タッチパネル式表示部15において反転表示Hされた強制指定範囲「2+3×4」の右下に枠で囲って表示される(ステップT10)。
【0090】
この第2実施形態の場合も第1実施形態の場合と同様に、「EXE」(実行)キーが入力されると、前記反転表示Hされている強制指定範囲の数式部分「2+3×4」が、その演算結果「14」と入れ替えられ、一部単純化された数式「14−15÷5」としてタッチパネル式表示部15に再表示される。
【0091】
これにより、表示された一連の数式の一部を範囲指定するだけで、当該指定範囲の数式部分の演算の優先順が確認され、その優先順に適合している場合には指定範囲の演算結果が付加的に表示される。一方、適合していない場合でも、強制的に適合している数式の範囲が設定され、その設定範囲の演算結果が付加的に表示される。よって、表示された一連の数式の任意の範囲を指定するというユーザ操作に応じて、範囲指定された数式部分が演算の優先順に適合しているのか否か、そしてどの範囲が適合しているのかを直ちに知ることができ、各種数式の演算順序をユーザ操作に応じて直感的に学習することができる。
【0092】
なお、前記各実施形態において記載したグラフ関数電卓10による動作手法、すなわち、図3のフローチャートに示す第1実施形態の範囲指定演算処理(1)、図8のフローチャートに示す第2実施形態の範囲指定演算処理(2)などの各手法は、コンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカード等)、磁気ディスク(フロッピディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の外部記憶媒体(25)に格納して配布することができる。そして、電子式計算機(10)のコンピュータ(21)は、この外部記憶媒体(25)に記憶されたプログラムを記憶装置(22)(23)に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、前記各実施形態において説明した数式範囲の指定および演算優先順の確認機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0093】
また、前記各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態として通信ネットワーク(公衆回線)N上を伝送させることができ、この通信ネットワークNに接続された通信装置(26)によって前記プログラムデータを電子式計算機(10)のコンピュータ(21)に取り込み、前述した数式範囲の指定および演算優先順の確認機能を実現することもできる。
【0094】
なお、本願発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0095】
10 …グラフ関数電卓
11 …キー入力部
12 …数字・文字・演算記号キー群
13 …関数機能キー群
14 …カーソルキー
15 …タッチパネル式表示部
15d…ドットマトリクス型液晶表示部
15t…透明タッチパネル
21 …CPU
22 …記憶装置
22a…計算機制御プログラム
23 …RAM
23a…入力バッファ
23b…数式記憶エリア
23c…範囲指定バッファ
23d…数式優先順評価エリア
23e…タッチ座標メモリ
23f…演算データメモリ
24 …記憶媒体読み書き部
25 …記憶媒体
26 …通信制御部
27 …Webサーバ(プログラムサーバ)
N …通信ネットワーク
H …(範囲指定)反転表示
P …タッチペン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
この表示部に数式を表示させる数式表示制御手段と、
この数式表示制御手段により表示された数式中の一部の範囲をユーザ操作に応じて指定する数式範囲指定手段と、
この数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分が、前記数式の演算の優先順に適合した範囲であるか否かを判断する演算順適否判断手段と、
この演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合した範囲であると判断された場合に、その数式部分の演算結果を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定演算表示制御手段と、
前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合しない範囲であると判断された場合に、その適合しない旨を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定不適表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする数式表示演算装置。
【請求項2】
前記範囲指定演算表示制御手段により表示された数式部分の演算結果を前記数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分に入れ替えた数式を、前記表示部に表示させる数式再表示制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の数式表示演算装置。
【請求項3】
前記範囲指定演算表示制御手段は、前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合した範囲であると判断された場合に、その数式部分の演算結果を同数式部分に対応付けて表示させ、
前記範囲指定不適表示制御手段は、前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合しない範囲であると判断された場合に、その適合しない旨を同数式部分に対応付けて表示させる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の数式表示演算装置。
【請求項4】
表示部と、
この表示部に数式を表示させる数式表示制御手段と、
この数式表示制御手段により表示された数式中の一部の範囲をユーザ操作に応じて指定する数式範囲指定手段と、
この数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分が、前記数式の演算の優先順に適合した範囲であるか否かを判断する演算順適否判断手段と、
この演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合しない範囲であると判断された場合に、その数式部分を含んで且つ前記数式の演算の優先順に適合している範囲の数式部分を、前記数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分として強制的に設定する強制設定手段と、
前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合した範囲であると判断された場合に、その数式部分の演算結果を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定演算表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする数式表示演算装置。
【請求項5】
表示部を有する演算装置のコンピュータを制御するためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記表示部に数式を表示させる数式表示制御手段、
この数式表示制御手段により表示された数式中の一部の範囲をユーザ操作に応じて指定する数式範囲指定手段、
この数式範囲指定手段により指定された範囲の数式部分が、前記数式の演算の優先順に適合した範囲であるか否かを判断する演算順適否判断手段、
この演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合した範囲であると判断された場合に、その数式部分の演算結果を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定演算表示制御手段、
前記演算順適否判断手段により前記数式部分が前記数式の演算の優先順に適合しない範囲であると判断された場合に、その適合しない旨を前記表示された数式と共に表示させる範囲指定不適表示制御手段、
として機能させるようにしたコンピュータ読み込み可能なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−43917(P2011−43917A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190335(P2009−190335)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】