説明

整合回路、送信器、受信器、送受信器およびレーダ装置

【課題】 容易かつ高精度にインピーダンスの調整を図ることができる整合回路、この整合回路を備える送信器、受信器、送受信器およびレーダ装置を提供することである。
【解決手段】 整合回路1は、ボンディングワイヤ3を介して電子部品2と電気的に接続される。整合回路1は、誘電体基板5に形成され、第1〜第3伝送線路6,7,8と、第1移相回路11と、第2移相回路12とを含んで構成される。第1および第2移相回路11,12は、それぞれ電圧を印加することによってインピーダンスが変化し、それぞれ電圧を印加することによって通過する電磁波の位相を調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波およびマイクロ波などの高周波回路において用いられるインピーダンス調整機能を有する整合回路、この整合回路を備える送信器、受信器、送受信器およびレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高度情報化社会では、大容量のデータを高速で伝達するために、1〜30GHzのマイクロ波領域から30〜300GHzのミリ波領域までの高周波数を利用した情報通信装置などの応用システムが提案されるようになってきている。たとえば車間距離を計測するためのレーダ装置のようなミリ波を用いたシステムが提案されている。
【0003】
このような高周波数を利用したシステムでは、高周波用の回路が用いられる。高周波回路の技術分野では、用いられる信号の周波数が高いことに起因して、高周波部品の接続部においてインピーダンスの不整合が生じ、高周波信号の反射が大きくなるという問題がある。たとえばボンディングワイヤは、周波数が高くなるほどインダクタンス成分に起因してリアクタンスが大きくなるので、MMIC(Microwave Monolithic Integrated
Circuit)などの高周波部品と、50Ωに設計された伝送線路とをボンディングワイヤによって接続する場合、インピーダンスに不整合が生じ、高周波信号の反射が大きくなるという問題がある。この接続部分での反射の低減を図るために、伝送線路側にインピーダンスの整合をとるための整合回路を設けたり、ボンディングワイヤの長さを調整したりしている。
【0004】
このような整合回路を設けたとしても、高周波回路を製造するときに整合回路を構成するパターンの寸法がばらついたり、MMICの実装位置がずれてボンディングワイヤのインダクタンス成分の大きさがばらついたりすることによって、製造した高周波回路が設計値から外れ、インピーダンスの不整合が生じるという問題がある。また高周波回路を製造するときに、ボンディングワイヤの長さが設計値から外れた場合には、ボンディングワイヤのインダクタンス成分の大きさが設計値から外れ、インピーダンスの不整合が生じるという問題がある。
【0005】
高周波回路の製造時のばらつきによって生じるインピーダンスの不整合を解消するために、インピーダンスの調整可能な整合回路がある。従来の技術では、インピーダンスの調整工程を設けて、整合回路のインピーダンスの調整を行なっている。
【0006】
第1の従来の技術では、インピーダンスの異なる複数のインピーダンス素子を予め形成しておき、インピーダンスを調整する工程において特定のインピーダンス素子を整合回路に接続して、インピーダンスの整合を図っている(たとえば特許文献1参照)。
【0007】
第2の従来の技術では、マイクロストリップラインが延びる方向に溝が形成され、この溝に沿って移動自在に係合された球状導体を有する整合回路を用いている。この技術では、インピーダンスを調整する工程において、溝に沿って球状導体の位置を調整することによってインピーダンスを調整し、インピーダンスが整合する位置に球状導体を非導電性接着剤によって固定している(たとえば特許文献2参照)。
【0008】
第3の従来の技術では、基板上にインピーダンス補正用の複数のパッドを予め形成しておき、インピーダンスを調整する工程において半田を用いて特定のパッドを整合回路に接続して、インピーダンスの整合を図っている(たとえば特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2005−117111号公報
【特許文献2】特開平9−252207号公報
【特許文献3】特開2005−5788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
第1の従来の技術では、インピーダンスの調整を行なうときに、特定のインピーダンス素子を整合回路に接続する工程を必要とするので、インピーダンスの調整に要する時間が長くなる。さらにインピーダンス素子を接続した後に、インピーダンスの整合が図れているか否かを確認し、インピーダンスが不整合であればさらに他のインピーダンス素子を整合回路に接続するという工程を繰返す必要があるので、インピーダンスの調整に要する時間が長くなり、生産性が低下することによって、製造コストが増大する。また予め設けたインピーダンス素子を整合回路に接続することによってインピーダンスの調整を行なうので、インピーダンスを連続的に変化させて調整することができず、高精度にインピーダンスの調整を行なうことができないという問題がある。
【0011】
第2の従来の技術では、球状導体の位置を移動させて、インピーダンスの整合が図れているか否かを確認し、インピーダンスが不整合であればさらに他のインピーダンス素子を整合回路に接続するという工程を繰返す必要がある。さらに、球状導体の位置の調整が終了すると、非導電性接着剤で球状導体の位置を固定する工程を必要とするので、インピーダンスの調整に要する時間が長くなり、生産性が低下することによって、製造コストが増大する。
【0012】
第3の従来の技術では、インピーダンスの調整を行なうときに、特定のパッドを整合回路に半田で接続する工程を必要とするので、インピーダンスの調整に要する時間が長くなる。さらにパッドを接続した後に、インピーダンスの整合が図れているか否かを確認し、インピーダンスが不整合であればさらに他のパッドを整合回路に接続するという工程を繰返す必要があるので、インピーダンスの調整に要する時間が長くなり、生産性が低下することによって、製造コストが増大する。また予め設けたパッドを整合回路に接続することによってインピーダンスの調整を行なうので、インピーダンスを連続的に変化させて調整することができず、高精度にインピーダンスの調整を行なうことができないという問題がある。
【0013】
したがって本発明の目的は、容易かつ高精度にインピーダンスの調整を図ることができる整合回路、この整合回路を備える送信器、受信器、送受信器およびレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1伝送線路と、
第2伝送線路と、
2つの第1接続端を有し、前記第1伝送線路の一端部に2つの前記第1接続端のうちの一方の第1接続端が接続され、前記第2伝送線路の一端部に他方の第1接続端が接続され、電圧を印加することによって通過する電磁波の位相を調整可能な第1移相回路と、
前記第2伝送線路から分岐して延在する第3伝送線路と、
少なくとも1つの第2接続端を有し、前記第3伝送線路の一端部に前記第2接続端が接続され、電圧を印加することによって反射する電磁波の位相を調整可能な第2移相回路とを含むことを特徴とする整合回路である。
【0015】
また本発明は、前記第1〜第3伝送線路ならびに前記第1および第2移相回路が設けられ、電気絶縁性を有する基板と、
前記基板の厚み方向の一表面上に形成され、導電性を有し、電子部品が配置される部品配置部と、
前記一表面上において、前記部品配置部から前記第1伝送線路が設けられる領域に向けて延在して形成され、導電性を有する突出部と、
前記基板の厚み方向の他表面上に形成される裏面電極と、
前記突出部と前記裏面電極とを電気的に接続する接続部とをさらに含むことを特徴とする。
【0016】
さらに本発明は、前記第1伝送線路に前記電子部品が電気的に接続され、前記電子部品から電磁波が入力されるとき、
前記電子部品から前記第1伝送線路に入力される電磁波が、前記電子部品と前記第1伝送線路とを接続する接続体で反射される反射係数をΓとし、
前記第1伝送線路に入力された電磁波が、前記第2伝送線路の前記第3伝送線路が分岐する分岐部まで通過する透過係数の大きさを│TM1│とし、
前記第1伝送線路に入力された電磁波が、前記分岐部まで進むときに変化する位相をθとし、
前記第2伝送線路に入力された電磁波が、前記分岐部で反射される反射係数をΓとすると、
Γが、前記第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、
【0017】
【数2】

【0018】
式(1)を満たすように、前記第1および第3伝送線路の線路長ならびに前記第2伝送線路の前記第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれることを特徴とする。
【0019】
さらに本発明は、前記第1伝送線路は、この第1伝送線路と前記電子部品とを接続する前記接続体の一端が接続される接続部位と、前記第1接続端に接続される前記一端部との間に、前記接続部位とはインピーダンスの異なるインピーダンス変化部を含むことを特徴とする。
【0020】
さらに本発明は、前記接続体を介して前記電子部品から電磁波が入力されるとき、
前記接続体と、前記第1伝送線路のうちの遊端部から前記インピーダンス変化部までのコネクタ部と、インピーダンス変化部とによって構成される接続ブロックに、電子部品側から入力される電磁波の反射係数をΓとし、
前記第1伝送線路のうちのコネクタ部およびインピーダンス変化部を除く残余の部分に前記接続ブロックから入力された電磁波が、前記第2伝送線路の前記第3伝送線路が分岐する分岐部まで通過する透過係数の大きさを|TM2|とすると、
Γが、前記第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、
|Γ|<|TM2| …(2)
式(2)を満たすように前記第1および第3伝送線路の線路長、インピーダンス変化部のインピーダンス、ならびに前記第2伝送線路の前記第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれることを特徴とする。
【0021】
さらに本発明は、前記第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、前記接続体と前記整合回路とによって構成される接続回路に電子部品から入力される電磁波が前記接続回路によって反射される反射係数が0となるように、前記第1および第3伝送線路の線路長、インピーダンス変化部のインピーダンス、ならびに前記第2伝送線路の前記第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれることを特徴とする。
【0022】
さらに本発明は、前記第2伝送線路のうち、前記第3伝送線路が分岐する分岐部よりも前記第1移相回路から離間する部分、および前記第1伝送線路のうちの少なくともいずれか一方は、直流阻止用コンデンサを含むことを特徴とする。
【0023】
さらに本発明は、前記第1移相回路は、
前記第1接続端から入力される電磁波の波長をλとしたときに、一周の長さが3(2n−1)λ/2に設定されたリング状伝送線路、および前記リング状伝送線路において周方向の一方向きに順に設けられる第1〜第4入出力端子を有し、前記第1および第2入出力端子の間の線路長、前記第2および第3入出力端子の間の線路長、前記第3および第4入出力端子の間の線路長が、(2n−1)λ/4にそれぞれ選ばれ、前記第4および第1入出力端子の間の線路長が、3(2n−1)λ/4に選ばれるラットレースと(nは自然数を表す)、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第4入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第4入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第3入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、前記第1可変容量素子に電圧を印加するための第1
電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする。
【0024】
さらに本発明は、前記第1移相回路は、
前記第1接続端から入力される電磁波の波長をλとしたときに、一周の長さが3(2n−1)λ/2に設定されたリング状伝送線路、および前記リング状伝送線路において周方向の一方向きに順に設けられる第1〜第4入出力端子を有し、前記第1および第2入出力端子の間の線路長、前記第2および第3入出力端子の間の線路長、前記第3および第4入出力端子の間の線路長が、(2n−1)λ/4にそれぞれ選ばれ、前記第4および第1入出力端子の間の線路長が、3(2n−1)λ/4に選ばれるラットレースと(nは自然数を表す)、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第4入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第4入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第3入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、前記第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする。
【0025】
さらに本発明は、前記第1移相回路は、
前記リング状伝送線路の前記第4入出力端子から前記一方向に(2n−1)λ/4の線路長となる位置に第5入出力端子と(nは自然数を表す)、
前記第5入出力端子に接続され、前記第1〜第3可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第4電極とをさらに含むことを特徴とする。
【0026】
さらに本発明は、前記第1移相回路は、
第1〜第4入出力端子を有し、第1入出力端子から入力された電磁波が第2および第4入出力端子から分配されて出力されるマジックTと、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第4入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第4入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第3入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、前記第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする。
【0027】
さらに本発明は、前記第4入出力端子と前記第2可変容量素子との間の線路長が、前記第2入出力端子と前記第1可変容量素子との間の線路長と、(2n−1)λ/4の長さ分、異なるように選ばれることを特徴とする(nは自然数を表す)。
【0028】
さらに本発明は、前記第1移相回路は、
前記第1接続端から入力される電磁波の波長をλとしたときに、一周の長さが(2n−1)λに設定された四角状伝送線路、および前記四角状伝送線路の各頂点において周方向の一方向きに順に設けられる第1〜第4入出力端子を有し、相互に隣接する各出力端子間の線路長が、(2n−1)λ/4にそれぞれ選ばれるブランチラインと(nは自然数を表す)、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第3入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第3入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第4入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、前記第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする。
【0029】
さらに本発明は、前記第1移相回路は、
第1〜第4入出力端子を有し、第1入出力端子から入力された電磁波が第2および第3入出力端子から分配されて出力される方向性結合器と、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第3入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第3入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第4入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極
と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする。
【0030】
さらに本発明は、前記第2入出力端子と前記第1可変容量素子との間の線路長は、前記第3入出力端子と前記第2可変容量素子との間の線路長と略等しい長さ、またはnλ/2の長さ分、異なるように選ばれることを特徴とする(nは自然数を表す)。
【0031】
さらに本発明は、前記第1伝送線路から分岐して延在し、前記第1〜第3可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第4電極をさらに含むことを特徴とする。
【0032】
さらに本発明は、前記第1移相回路は、
第1〜第3入出力端子を有し、前記第1入出力端子から入力された電磁波が前記第2入出力端子から出力され、前記第2入出力端子から入力された電磁波が前記第3入出力端子から出力されるサーキュレータと、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第3入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
延在部から分岐して延在し、前記第1可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第3電極と、
前記第2伝送線路のうち、前記第3伝送線路が分岐する分岐部よりも前記第1移相回路から離間する部分から延在し、前記第2可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第4電極とをさらに含むことを特徴とする。
【0033】
さらに本発明は、延在部のうち、前記第3電極が分岐する分岐部と前記サーキュレータとの間と、
前記第2伝送線路のうち、前記第3伝送線路が分岐する分岐部と前記サーキュレータとの間と、
前記第2伝送線路のうち、前記第4電極が分岐する分岐部よりも前記第1移相回路から離間する部分と、に直流阻止用コンデンサをさらに含むことを特徴とする。
【0034】
さらに本発明は、前記第1移相回路および前記第2移相回路のうちの少なくともいずれか一方は、
印加電界に応じて誘電率が変化する変化部を含み、電磁波が伝播する誘電体線路と、
前記誘電体線路を挟持する一対の平板導電体部とを含んで構成されることを特徴とする。
【0035】
さらに本発明は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、前記高周波発振器からの高周波信号を伝送する伝送線路と、
前記伝送線路に挿入される前記整合回路と、
前記伝送線路に接続され、高周波信号を放射するアンテナとを含むことを特徴とする送信器である。
【0036】
さらに本発明は、高周波信号を捕捉するアンテナと、
前記アンテナに接続され、前記アンテナによって捕捉される高周波信号を伝送する伝送線路と、
前記伝送線路に挿入される前記整合回路と、
前記伝送線路に接続され、前記伝送線路に伝送される高周波信号を検波する高周波検波器とを含むことを特徴とする受信器である。
【0037】
さらに本発明は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、高周波信号を伝送する第4伝送線路と、
第1、第2および第3端子を有し、前記第1端子が前記第4伝送線路に接続され、前記第1端子に与えられる高周波信号を前記第2端子または前記第3端子に選択的に出力する分岐器と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子から与えられる高周波信号を伝送する第5伝送線路と、
第4、第5および第6端子を有し、前記第5伝送線路を介して前記第4端子に与えられる高周波信号を前記第5端子に出力し、かつ前記第5端子に与えられる高周波信号を前記第6端子に出力する分波器と、
前記第5端子に接続され、前記第5端子から出力される高周波信号を伝送し、前記第5端子に高周波信号を伝送する第6伝送線路と、
前記第6伝送線路に接続され、高周波信号を放射および捕捉するアンテナと、
前記第3端子に接続され、前記第3端子から出力される高周波信号を伝送する第7伝送線路と、
前記第6端子に接続され、前記第6端子から出力される高周波信号を伝送する第8伝送線路と、
前記第7および第8伝送線路に接続され、前記第7および第8伝送線路から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力するミキサと、
前記第4〜第8伝送線路のうち少なくともいずれか1つに挿入される前記整合回路とを含むことを特徴とする送受信器である。
【0038】
さらに本発明は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、高周波信号を伝送する第4伝送線路と、
第1、第2および第3端子を有し、前記第1端子が前記第4伝送線路に接続され、前記第1端子に与えられる高周波信号を前記第2端子または前記第3端子に選択的に出力する分岐器と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子から与えられる高周波信号を伝送する第5伝送線路と、
前記第5伝送線路に接続され、高周波信号を放射する送信用アンテナと、
高周波信号を捕捉する受信用アンテナと、
前記受信用アンテナに接続され、捕捉した高周波信号を伝送する第6伝送線路と、
前記第3端子に接続され、前記第3端子から出力される高周波信号を伝送する第7伝送線路と、
前記第6および第7伝送線路に接続され、前記第6および第7伝送線路から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力するミキサと、
前記第4〜第7伝送線路のうち少なくともいずれか1つに挿入される前記整合回路とを含むことを特徴とする送受信器である。
【0039】
さらに本発明は、前記送受信器と、
前記送受信器からの中間周波信号に基づいて、前記送受信器から探知対象物までの距離を検出する距離検出器とを含むことを特徴とするレーダ装置である。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、第3伝送線路に第2移相回路が接続される。この第3伝送線路と第2移相回路とによって構成される伝送線路は、たとえばスタブとして機能する。スタブのインピーダンスは、通過する電磁波の周波数との関係で、長さに依存する。具体的には、スタブの電気長に依存する。第2移相回路は、印加する電圧に応じて移相量が変化するので、第2移相回路の電気長は、印加する電圧に応じて変化する。つまり通過する電磁波の位相を単位にして考えると、印加する電圧に応じて第2移相回路の長さが変化する。したがって、第3伝送線路と第2移相回路とによって構成される伝送線路の電気長も、印加する電圧に応じて変化する。これによって、作製した第3伝送線路の長さが、設計値から外れていたとしても、第2移相回路に印加する電圧を調整するだけで、第3伝送線路と第2移相回路とによって構成される伝送線路のインピーダンスを設計値通りに調整することができる。
【0041】
また第1伝送線路と第2伝送線路との間に第1移相回路が設けられる。前述と同様に、第1伝送線路と、第1移相回路と、第2伝送線路のうちの第3伝送線路が分岐する分岐部から第1移相回路よりの部分とによって構成される伝送線路の電気長は、第1移相回路に印加する電圧に応じて変化する。したがって、作製した第1伝送線路と、第2伝送線路の分岐部から第1移相回路寄りの部分との長さが設計値から外れていたとしても、第1移相回路に印加する電圧を調整するだけで、第1伝送線路と、第1移相回路と、第2伝送線路の分岐部から第1移相回路寄りの部分とによって構成される伝送線路の電気長を設計値通りに調整することができる。
【0042】
このように第1および第2移相回路にそれぞれ印加する電圧を調整することによって、整合回路全体のインピーダンスを調整することができる。
【0043】
さらに、電子部品をボンディングワイヤで第1伝送線路に接続する場合、ボンディングワイヤと、整合回路とを含めた回路のインピーダンスは、電子部品の実装状態と、ボンディングワイヤの長さおよびボンディングワイヤの配置などのボンディングワイヤの接続状態に依存する。このように電子部品を実装し、ボンディングワイヤで接続した後においても、第1移相回路および第2移相回路にそれぞれ印加する電圧を調整することによって整合回路のインピーダンスを調整することができるので、電子部品からボンディングワイヤおよび整合回路を見たときのインピーダンスを調整することができる。たとえばボンディングワイヤおよび整合回路を含めた回路と、電子部品とのインピーダンスを整合するように第1移相回路および第2移相回路に印加する電圧を調整することによって、電子部品から出力される電力が整合回路によって反射されることを防ぐことができる。ここで、ボンディングワイヤからスタブまでの電気長を第1移相回路によって、スタブの電気長を第2移相回路によって、それぞれ独立に調整できるため、ボンディングワイヤのインピーダンスがどのように変化しても、第1移相回路および第2移相回路に印加する電圧をそれぞれ調整することによってインピーダンスを整合することができる。
【0044】
また電圧は、連続的に変化するので、第1および第2移相回路に印加する電圧を連続的に変化すると、整合回路のインピーダンスを連続的に変化させることができる。これによって、整合回路のインピーダンスを不連続に変化させることができる第1および第3の従来の技術に比べて、高精度に整合回路のインピーダンスを調整することができる。
【0045】
さらに、第1〜第3の従来の技術のように、非導電性接着剤で接着する工程、および半田付け工程などのような工程を必要としないので、従来の技術に比べてインピーダンスの
調整を簡易に行なうことができ、インピーダンスの調整に要する時間を短縮して、コストダウンを図ることができる。
【0046】
また本発明によれば、基板の厚み方向の一表面上に形成される部品配置部から、第1伝送線路が設けられる領域に向けて延在して形成され、導電性を有する突出部が形成される。この突出部と、基板の厚み方向の他表面上に形成される裏面電極とは、接続部を介して電気的に接続される。仮に突出部を設けない場合には、伝送モードが部品配置部と裏面電極とで形成される平行平板モードに結合してしまい、漏れとなって、伝送損失が大きくなる。突出部を設けることによって、平行平板モードの伝送を抑制することができ、伝送損失を抑えることができるため、効率的に高周波信号を伝送することができる。
【0047】
さらに本発明によれば、分岐部で反射される反射係数Γが、第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、式(1)を満たすように、第1および第3伝送線路の線路長ならびに第2伝送線路の第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれる。このような線路長の第1〜第3伝送線路を形成すると、第1移相回路および第2移相回路に印加する電圧を調整することによって、式(1)を満たす整合回路を実現することができる。整合回路が式(1)を満たす場合、第1伝送線路に接続体を介して電子部品の入出力端子を接続すると、入出力端子から入力される高周波信号が接続体で反射される反射係数と、第2伝送線路から第3伝送線路が分岐する分岐部で反射される反射係数が等しく、かつ接続体で反射される反射波と、分岐部で反射される反射波とが、位相差がπradで重ねあわされる。すなわち、接続体と第1伝送線路との接続部位で反射される反射波と、分岐部で反射される反射波とが重なり合って打ち消される。これによって電子部品から入力される高周波信号の反射を低減することができる。
【0048】
さらに本発明によれば、第1伝送線路にインピーダンス変化部が設けられる。このインピーダンス変化部は、第1伝送線路と電子部品とを接続する接続体の一端が接続される第1伝送線路の接続部位とはインピーダンスが異なる。すなわち接続部位から第1移相回路に接続される一端部までに到る経路において、第1伝送線路のインピーダンスが変化する。このインピーダンスが変化するインピーダンス変化部で、電子部品から接続体を介して入力される電磁波の一部が反射され、一部が透過する。インピーダンス変化部を透過した電磁波のうちの一部は、前記第2伝送線路の前記第3伝送線路が分岐する分岐部などで反射されてインピーダンス変化部に戻ってくる。インピーダンス変化部で反射された電磁波と、インピーダンス変化部を透過した後に反射された電磁波とは、重ね合わされる。インピーダンス変化部を透過した後に反射されてインピーダンス変化部に戻る電磁波の位相は、第1伝送線路と、第1移相回路と、第2伝送線路の分岐部から第1移相回路寄りの部分とによって構成される伝送線路の電気長、および第3伝送線路と第2移相回路とによってスタブとして機能する伝送線路のインピーダンスの2つのパラメータに依存する。これら2つのパラメータは、第1および第2移相回路に印加する電圧を調整することによって意図した値に設定することができる。これによって、インピーダンス変化部を透過した後に反射されてインピーダンス変化部に戻る電磁波の位相を調整し、重ね合わされた電磁波を弱めることができ、結果として接続体を介して電子部品から整合回路に入力される電磁波の反射係数を小さくすることができる。インピーダンス変化部の役割を説明する。電子部品から入力される電磁波は、一部が接続体で反射され、一部は透過する。接続体を透過した電磁波のうちの一部は、インピーダンス変化部で反射されて接続体に戻ってくる。接続体で反射された電磁波と、接続体を透過した後にインピーダンス変化部で反射された電磁波とは、重ね合わされ、接続体を透過した後にインピーダンス変化部で反射されて接続体に戻る電磁波の位相を適切に選べば、反射波の大きさを、インピーダンス変化部がない場合に比べて小さくすることができる。そうすると整合するときの、スタブとして機能する第3伝送線路と第2移相回路とによって構成される伝送線路からの反射の大きさが小さくてよいので、損失が小さく、広帯域な整合ができる。
【0049】
さらに本発明によれば、第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、式(2)を満たすように第1および第3伝送線路の線路長、インピーダンス変化部のインピーダンス、ならびに第2伝送線路の第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれる。
【0050】
式(2)を満たす整合回路の特性について説明する。接続体と、第1伝送線路のうちの遊端部からインピーダンス変化部までのコネクタ部と、インピーダンス変化部とによって構成される接続ブロックの電子部品から見た反射係数をΓとし、接続ブロックの第1移相回路から見た反射係数をΓとし、接続ブロックの電子部品側から第1移相回路側への透過係数をΤ43とし、接続ブロックの第1移相回路側から電子部品側への透過係数をT34とし、接続ブロックから入力された電磁波が、前記第2伝送線路の前記第3伝送線路が分岐する分岐部まで通過する透過係数の大きさを|TM2|、位相をθ1とし、第3伝送線路と第2移相回路からなるスタブの第1移相回路側から見た反射係数をΓとし、接続ブロックの電子部品側の入力端をポート1とし、第2伝送線路の第1移相回路と反対側の出力端をポート2として、電子部品から接続体と整合回路とによって構成される接続回路を見たときの反射係数S11を0にできる条件を求める。まず式を簡単にするための準備として、Γ、Γ、Τ34、Τ43の間に成立つ関係式を導く。式の導出を簡単にするために、接続ブロックには損失項がなく、リアクタンス成分のみの負荷の条件を求めておく。
【0051】
図17は、接続ブロックの反射係数、透過係数を説明するための図である。リアクタンス成分Xのみの負荷の場合、反射係数、透過係数に次の式(3)、(4)、(5)、(11)の関係が成り立つ。ポート3側から見た場合とポート4側から見た場合は対称なので、次式(3)が成立つ。
Γ=Γ …(3)
【0052】
また可逆回路の条件によると、次式(4)が成立つ。
Τ34=Τ43 …(4)
【0053】
図18は、スミス図である。Γは、特性インピーダンスRの伝送線路にインピーダンスR+jXの負荷が接続された場合の反射係数とみなせる(図17参照)ので、スミス図上では規格化インピーダンス1の定抵抗円(図18の破線)上に存在する。2Γおよび2Γ−1はそれぞれ図18の実線上、一点鎖線上に存在し、次式(5)で表される。
|2Γ−1|=1 …(5)
無損失回路の条件によると、次式(6),(7)が成立つ。
|Γ+|Τ43=1 …(6)
ΓΤ34+Τ43Γ=0 …(7)
【0054】
式(7)においてΓ,Τ43は、それぞれΓ,Τ43の共役複素数を表す。式(3)を式(7)に代入すると、次式(8)が成立つ。
ΓΤ43+Τ43Γ=0 …(8)
【0055】
式(8)を絶対値と位相とに分けて書き表すと、次式(9)に変形される。
||Τ43|exp{j(∠Τ43−∠Γ)}
+|Γ||Τ43|exp{j(∠Γ−∠Τ43)}=0 …(9)
【0056】
式(9)において∠Τ43,∠Γは、それぞれΤ21,Γの位相角を表し、記号「j」は、虚数単位を表す。式(9)より、次式(10)が成立つ。
∠Τ43=∠Γ−π/2 …(10)
【0057】
Γはスミス図上では図18の破線上に存在し、式(6)と式(10)より、ベクトルΓとベクトルΤ21とベクトル1とが直角三角形をなすことから(図18参照)、次式(11)が成立つ。
Γ+Τ43=1 …(11)
電子部品から接続回路を見たときの反射係数S11は、次式(12)で表される。
【0058】
【数3】

【0059】
|x|<1に対して次式(13)が成立つので、式(3)、式(4)、式(11)および式(13)を用いて式(12)を変形すると、式(14)となる。
【0060】
【数4】

【0061】
【数5】

【0062】
この式(14)をΓに関して整理すると、反射係数S11を0にできる条件として、式(1)においてΓ,TM1,θをそれぞれΓ,TM2,θ1に置き換えた次式(15)が導出される。
【0063】
【数6】

【0064】
両辺の絶対値をとり、式(5)を用いると、次式(16)が成立つ。
【0065】
【数7】

【0066】
|<1でなければポート1からポート2に電磁波が透過することができないので、この条件を式(16)に代入すると、式(2)が導出される。この式(2)が反射係数S11を0にするための必要条件である。本発明では第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、式(2)を満たすように整合回路を作製するので、電子部品から接続体と整合回路とによって構成される接続回路を見たときの反射係数S11を0に調整することができる。これによって、電子部品を設計した通りの負荷に接続して使用することができ、電子部品の設計どおりの特性を得ることができる。
【0067】
さらに本発明によれば、第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、前記接続体と前記整合回路とによって構成される接続回路に電子部品から入力される電磁波が前記接続回路によって反射される反射係数S11が0となるように、前記第1および第3伝送線路の線路長、インピーダンス変化部のインピーダンス、ならびに前記第2伝送線路の前記第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれる。これによって反射係数S11を0に調整することができ、電子部品から入力された電磁波がポート2に出力されるまでの減衰を小さくすることができる。
【0068】
さらに本発明によれば、第2伝送線路のうち、第3伝送線路が分岐する分岐部よりも第1移相回路から離間する部分、および第1伝送線路のうちの少なくともいずれか一方は、直流阻止用コンデンサを含む。すなわち、整合回路を通過する高周波信号の入力端および出力端のうちのいずれか一方に直流阻止用コンデンサが設けられる。これによって、第1および第2移相回路に印加している電圧が、整合回路に接続される電子部品に印加されることを防ぐことができ、電子部品に電圧が印加されることによって生じる電子部品の破壊や特性が不安定になることを避けることができる。
【0069】
さらに本発明によれば、第1移相回路を構成するラットレースは、第1入出力端子から入力される電磁波が、第2および第4入出力端子から分配して出力され、第3入出力端子から出力されないように構成される。また第2入出力端子から出力される電磁波の位相と、第4入出力端子から出力される電磁波の位相とは、πrad異なる。第1移相回路には、このようなラットレースの第2入出力端子から延在する第1延在部と、第4入出力端子から延在する第2延在部とが設けられる。第1延在部と第2延在部とは、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1および第2可変容量素子をそれぞれ備える。さらに整合回路は、第1および第2可変容量素子にそれぞれ電圧を印加するための第1および第2電極を備える。この第1および第2電極に与える電圧を調整することによって、第1および第2延在部のインピーダンスを調整することができる。この第1および第2延在部のインピーダンスを調整することによって、第1および第2延在部によって反射される電磁波の位相を変化させることができる。これによって、第1移相回路を通過する電磁波の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0070】
また第2移相回路は、第3可変容量素子から成り、整合回路は、この第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極を有する。第3電極に印加する電圧を調整することによって第3可変容量素子のインピーダンスを調整することができ、これによって第2移相回路で反射される電磁波の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0071】
さらに本発明によれば、第1移相回路を構成するラットレースは、第3入出力端子から入力される電磁波が、第2および第4入出力端子から分配して出力され、第1入出力端子から出力されないように構成される。また第2入出力端子から出力される電磁波の位相と、第4入出力端子から出力される電磁波の位相とは、πrad異なる。第1移相回路には、このようなラットレースの第2入出力端子から延在する第1延在部と、第4入出力端子から延在する第2延在部とが設けられる。第1延在部と第2延在部とは、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1および第2可変容量素子をそれぞれ備える。さらに整合回路は、第1および第2可変容量素子にそれぞれ電圧を印加するための第1および第2電極を備える。この第1および第2電極に与える電圧を調整することによって、第1および第2延在部のインピーダンスを調整することができる。この第1および第2延在部のインピーダンスを調整することによって、第1および第2延在部によって反射される電磁波の位相を変化させることができる。これによって、第1移相回路を通過する電磁波の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0072】
また第2移相回路は、第3可変容量素子から成り、整合回路は、この第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極を有する。第3電極に印加する電圧を調整することによって第3可変容量素子のインピーダンスを調整することができ、これによって第2移相回路で反射される電磁波の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0073】
さらに本発明によれば、リング状伝送線路の、第4入出力端子から周方向の一方向に(2n−1)λ/4の線路長となる位置に第5入出力端子が設けられる(nは自然数を表す)。第1入出力端子から入力された電磁波は、リング状伝送線路の周方向の一方向と他方向とに分岐され、第5入出力端子において位相差がπradとなって合流する。したがって、第1入出力端子から入力された電磁波は、第5入出力端子からは出力されない。この第5入出力端子に接続される第4電極には、第1〜第3可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられる。このように、第1入出力端子から入力される電磁波が出力されない第5入出力端子に第4電極を接続するので、第4電極を設けることによって、電磁波の伝送に影響を与えることがない。これによって第1移相回路のインピーダンスに影響を与えることなく、基準電位を定めるための第4電極を設けることができる。
【0074】
さらに本発明によれば、第1移相回路を構成するマジックTは、第1入出力端子から入力される電磁波が、第2および第4入出力端子から分配して出力され、第3入出力端子から出力されない。また第2入出力端子から出力される電磁波の位相と、第4入出力端子から出力される電磁波の位相とは、πrad異なる。第1移相回路には、このようなマジックTの第2入出力端子から延在する第1延在部と、第4入出力端子から延在する第2延在部とが設けられる。第1延在部と第2延在部とは、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1および第2可変容量素子をそれぞれ備える。さらに整合回路は、第1および第2可変容量素子にそれぞれ電圧を印加するための第1および第2電極を備える。この第1および第2電極に与える電圧を調整することによって、第1および第2延在部のインピーダンスを調整することができる。この第1および第2延在部のインピーダンスを調整することによって、第1および第2延在部によって反射される電磁波の位相を変化させることができる。これによって、第1移相回路を通過する電磁波の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0075】
また第2移相回路は、第3可変容量素子から成り、整合回路は、この第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極を有する。第3電極に印加する電圧を調整することによって第3可変容量素子のインピーダンスを調整することができ、これによって第2移相回路で反射される電磁波の位相を調整することができる。
【0076】
さらに本発明によれば、第4入出力端子と前記第2可変容量素子との間の線路長が、前記第2入出力端子と前記第1可変容量素子との間の線路長と、(2n−1)λ/4の長さ分、異なるように選ばれる。したがって第1延在部に入力されて反射した電磁波と、第2延在部に入力されて反射された電磁波との位相は、πrad異なる。そして、第1延在部で反射して第3入出力端子から出力される電磁波と、第2延在部で反射して第3入出力端子から出力される電磁との位相は等しくなり、重ね合わされて第3入出力端子から出力される。このように設計された第1移相回路を用いると、反射波の位相変化を生じさせる第1および第2可変容量素子を用いても、第1入出力端子から入力された電磁波が第3入出力端子から出力する移相回路を実現することができる。
【0077】
さらに本発明によれば、第1移相回路を構成するブランチラインは、第1入出力端子から入力される電磁波が、第2および第3入出力端子から分配して出力され、第4入出力端子から出力されない。また第2入出力端子から出力される電磁波の位相と、第3入出力端子から出力される電磁波の位相とは、π/2rad異なる。第1移相回路には、このようなブランチラインの第2入出力端子から延在する第1延在部と、第3入出力端子から延在する第2延在部とが設けられる。第1延在部と第2延在部とは、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1および第2可変容量素子をそれぞれ備える。さらに整合回路は、第1および第2可変容量素子にそれぞれ電圧を印加するための第1および第2電極を備える。この第1および第2電極に与える電圧を調整することによって、第1および第2延在部のインピーダンスを調整することができる。この第1および第2延在部のインピーダンスを調整することによって、第1および第2延在部によって反射される電磁波の位相を変化させることができる。これによって、第1移相回路を通過する電磁波の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0078】
また第2移相回路は、第3可変容量素子から成り、整合回路は、この第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極を有する。第3電極に印加する電圧を調整することによって第3可変容量素子のインピーダンスを調整することができ、これによって第2移相回路で反射される電磁波の位相を調整することができる。
【0079】
さらに本発明によれば、第1移相回路を構成する方向性結合器は、第1入出力端子から入力される電磁波が、第2および第3入出力端子から分配して出力され、第4入出力端子から出力されない。また第2入出力端子から出力される電磁波の位相と、第3入出力端子から出力される電磁波の位相とは、π/2rad異なる。第1移相回路には、このような方向性結合器の第2入出力端子から延在する第1延在部と、第3入出力端子から延在する第2延在部とが設けられる。第1延在部と第2延在部とは、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1および第2可変容量素子をそれぞれ備える。さらに整合回路は、第1および第2可変容量素子にそれぞれ電圧を印加するための第1および第2電極を備える。この第1および第2電極に与える電圧を調整することによって、第1および第2延在部のインピーダンスを調整することができる。この第1および第2延在部のインピーダンスを調整することによって、第1および第2延在部によって反射される電磁波の位相を変化させることができる。これによって、第1移相回路を通過する電磁波の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0080】
また第2移相回路は、第3可変容量素子から成り、整合回路は、この第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極を有する。第3電極に印加する電圧を調整することによって第3可変容量素子のインピーダンスを調整することができ、これによって第2移相回路で反射される電磁波の位相を調整することができる。
【0081】
さらに本発明によれば、第2入出力端子と第1可変容量素子との間の線路長は、第3入出力端子と第2可変容量素子との間の線路長と略等しい長さに選ばれるか、またはnλ/
2の長さ分、異なるように選ばれる。したがって第1延在部に入力されて反射した電磁波と、第2延在部に入力されて反射された電磁波との位相は、π/2rad異なる。そして、第1延在部で反射して第4入出力端子から出力される電磁波と、第2延在部で反射して第4入出力端子から出力される電磁との位相は等しくなり、重ね合わされて第4入出力端子から出力される。このように設計された第1移相回路を用いると、反射波の位相変化を生じさせる第1および第2可変容量素子を用いても、第1入出力端子から入力された電磁波が第4入出力端子から電磁波が出力する移相回路を実現することができる。
【0082】
さらに本発明によれば、第1伝送線路から分岐して延在して設けられる第4電極に与える電圧によって、第1〜第3可変容量素子に印加される電圧の基準電位を定めることができる。
【0083】
さらに本発明によれば、第1移相回路を構成するサーキュレータは、第1入出力端子から入力される電磁波が、第2入出力端子から出力され、第2入出力端子から入力される電磁波が、第3入出力端子から出力される。第1移相回路には、このようなサーキュレータの第2入出力端子から延在する延在部が設けられる。延在部は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を備える。さらに整合回路は、第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極を備える。この第1電極に与える電圧を調整することによって、延在部のインピーダンスを調整することができる。延在部によって反射される電磁波は、第2入出力端子からサーキュレータに入力され、第3入出力端子から出力される。また延在部のインピーダンスを調整することによって、第1移相回路を通過する電磁波の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0084】
また第2移相回路は、第2可変容量素子から成り、整合回路は、この第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極を有する。第2電極に印加する電圧を調整することによって第2可変容量素子のインピーダンスを調整することができ、これによって第2移相回路で反射される電磁波の位相を調整することができる。
【0085】
また第3および第4電極に与える電圧によって、第1および第2可変容量素子に印加される電圧の基準電位を定めることができる。
【0086】
さらに本発明によれば、整合回路は、延在部のうち、第3電極が分岐する分岐部とサーキュレータとの間と、第2伝送線路のうち、第3伝送線路が分岐する分岐部とサーキュレータとの間と、第2伝送線路のうち、第4電極が分岐する分岐部よりも第1移相回路から離間する部分とに直流阻止用コンデンサをさらに含む。これによって、移相回路に印加している電圧が、接続されている電子部品に印加されることによる破壊や特性が不安定になることを避けることができる。
【0087】
さらに本発明によれば、第1移相回路および第2移相回路のうちの少なくともいずれか一方は、印加電界に応じて誘電率が変化する変化部を含み、電磁波が伝播する誘電体線路と、誘電体線路を挟持する一対の平板導電体部とを含んで構成される。すなわち非放射誘電体線路によって第1移相回路および第2移相回路のうちの少なくともいずれか一方が形成される。誘電率が変化すると、誘電体線路を通過する電磁波の波長が変化するので、誘電体線路の誘電率を調整することによって、移相回路を通過する電磁波、または移相回路によって反射される電磁波の位相を調整することができる。これによって、印加する電圧に応じて通過する、または反射される電磁波の位相の変化量を調整可能な移相回路を実現することができる。
【0088】
さらに本発明によれば、伝送線路には、整合回路が挿入されるので、たとえば高周波発振器を接続するためのボンディングワイヤやバンプの形状ばらつきや伝送線路の配線幅の
ばらつきなどによって伝送線路に起因して発生する位相のずれを個々に調整して整合をとることができ、安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ送信器を実現することができる。
【0089】
さらに本発明によれば、アンテナによって捕捉した高周波信号は、伝送線路に伝送されて高周波検波器によって検波される。本発明では、伝送線路には、整合回路が挿入されるので、たとえば高周波検波器を接続するためのボンディングワイヤやバンプの形状ばらつきや伝送線路の配線幅のばらつきなどによって伝送線路に起因して発生する位相のずれを個々に調整して、整合をとることができ、安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ受信器を実現することができる。
【0090】
さらに本発明によれば、高周波発振器が発生した高周波信号は、第4伝送線路に伝送されて分岐器の第1端子に与えられ、分岐器の第2端子から第5伝送線路に与えられ、分波器の第4端子に与えられて、分波器の第5端子から第6伝送線路に与えられて、アンテナから放射される。またアンテナによって受信した高周波信号は、第6伝送線路に与えられて、分波器の第5端子に与えられ、分波器の第6端子から第8伝送線路に与えられて、ミキサに与えられる。またミキサには、分岐器の第3端子から第7伝送線路を介して、高周波発振器が発生した高周波信号がローカル信号として与えられる。ミキサは、高周波発振器が発生した高周波信号とアンテナによって受信した高周波信号とを混合して、中間周波信号を出力することによって、受信した高周波信号に含まれる情報が得られる。
【0091】
第4〜第8伝送線路のうち少なくともいずれかの1つに、整合回路が挿入されることによって、たとえば配線幅のばらつきなどによって伝送線路に起因して不所望に変化する高周波信号の位相を調整して、たとえば安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ送受信器を実現することができ、また、たとえば安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ送受信器を実現することができ受信した高周波信号の信頼性を向上させることができ、また、たとえばミキサによって生成される中間周波数信号の信頼性を向上させることができる。
【0092】
さらに本発明によれば、高周波発振器が発生した高周波信号は、第4伝送線路に伝送されて分岐器の第1端子に与えられ、分岐器の第2端子から第5伝送線路に与えられ送信用アンテナから放射される。また受信用アンテナによって受信した高周波信号は、第6伝送線路に与えられて、ミキサに与えられる。またミキサには、分岐器の第3端子から第7伝送線路を介して、高周波発振器が発生した高周波信号がローカル信号として与えられる。ミキサは、高周波発振器が発生した高周波信号と受信用アンテナによって受信した高周波信号とを混合して、中間周波信号を出力することによって、受信した高周波信号に含まれる情報が得られる。
【0093】
第4〜第7伝送線路のうち少なくともいずれかの1つに、整合回路が挿入されることによって、たとえば配線幅のばらつきなどによって伝送線路に起因して不所望に変化する高周波信号の位相を調整して、たとえば安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ送受信器を実現することができ、また、たとえば安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ送受信器を実現することができ受信した高周波信号の信頼性を向上させることができ、また、たとえばミキサによって生成される中間周波数信号の信頼性を向上させることができる。
【0094】
さらに本発明によれば、送受信器からの中間周波信号に基づいて、距離検出器が送受信器から探知対象物までの距離を検出するので、検知対象物までの距離を正確に検出するこ
とができるレーダ装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
図1は、本発明の実施の一形態の整合回路1を示す斜視図である。整合回路1は、ボンディングワイヤ3を介して電子部品2と電気的に接続される。整合回路1は、接続体に相当するボンディングワイヤ3を介して電子部品2から入力される電磁波(以下、高周波信号という)が、ボンディングワイヤ3との接続部位4で反射されないようにインピーダンスが調整される。
【0096】
整合回路1は、本実施の形態では誘電体基板5に形成され、第1〜第3伝送線路6,7,8と、第1移相回路11と、第2移相回路12とを含んで構成される。
【0097】
第1移相回路11は、2つの第1接続端13a,13bを有する。第1伝送線路6は、一方の第1接続端13aに接続され、この第1接続端13aから電子部品2が配置される部品配置台14に向けて延在して形成される。第2伝送線路7は、他方の第1接続端13bに接続され、この第1接続端13bから部品配置台14に対して離間する向きに延在して形成される。
【0098】
第2移相回路12は、少なくとも1つの第2接続端を有し、本実施の形態では2つの第2接続端15a,15bを有する。第3伝送線路8は、第2伝送線路7から分岐して延在し、第2移相回路12の一方の第2接続端15aに接続される。
【0099】
第1移相回路11は、電圧を印加することによって通過する電磁波の位相を調整可能である。第2移相回路12は、電圧を印加することによって反射する電磁波の位相を調整可能である。
【0100】
誘電体基板5は、電気絶縁性を有し、誘電体によって形成され、ガラス、単結晶、セラミックス、樹脂またはそれらの複合体によって形成される。ガラスとしては、石英ガラス、結晶化ガラスなどが用いられる。単結晶としては、Si、GaAs、水晶、サファイア、MgOまたはLaAlOなどが用いられる。セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、ガラスセラミックス、フォルステライトまたはコーディライトなどが用いられる。樹脂としては、エポキシ樹脂または含フッ素樹脂、液晶ポリマーなどが用いられる。誘電体基板5は、単層基板または多層基板によって実現され、多層基板の場合には、各層の厚み方向Zの厚みが、100μm〜150μmに選ばれる。
【0101】
誘電体基板5の厚み方向Zの一方Z1の表面上には、導電性を有し、部品配置台14を構成する部品配置部16が形成される。この部品配置部16は、本実施の形態では薄膜板状であって、厚み方向Zの表面が四角状に形成され、第1伝送線路6に可能な限り近接して配置される。このように部品配置部16を第1伝送線路6に近接して配置することによって、ボンディングワイヤ3の長さを可能な限り短くすることができる。ボンディングワイヤ3の長さは、300μm〜700μm程度に設計され、直径が25μm程度である。電子部品2は、この部品配置部16に配置される。電子部品2は、たとえばMMICによって実現される高周波発振器、ミキサ、および増幅器などである。誘電体基板5の厚み方向Zの他方Z2の表面上には、導電性を有する裏面電極17が一面に形成される。部品配置台14は、部品配置部16に加えて、部品配置部16と裏面電極17とを電気的に接続する複数の接続部18、および裏面電極17をさらに含んで構成される。接続部18は、誘電体基板5を厚み方向Zに貫通して延びるバイアに導電性材料が充填されることによって形成される。複数の接続部18は、電子部品2が配置されたときに、誘電体基板5の厚み方向Zの一方Z1から見て、電子部品2を囲むように配置される。
【0102】
第1〜第3伝送線路6,7,8は、それぞれマイクロストリップライン、コプレーナ線路、ストリップライン、誘電体導波管、イメージガイド、および非放射性誘電体線路などによって実現される。本実施の形態において第1〜第3伝送線路6,7,8は、マイクロストリップラインによって実現され、それぞれ導電性を有する線路と、誘電体基板5と、裏面電極17とを含んで構成される。導電性を有する線路は、伝送する高周波信号の伝送損失が小さくなるように線幅が100μm〜500μm程度に選ばれる。
【0103】
部品配置部16、裏面電極17、接続部18および第1〜第3伝送線路6,7,8を構成する導電性を有する線路は、おもにCu(銅)、Ag(銀)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)およびAu(金)などの導電性を有する金属によって形成される。
【0104】
本実施の形態では、第3伝送線路8と、第2移相回路12とによって構成される伝送線路が、スタブとして機能する。スタブのインピーダンスは、線路長に依存して変化する。換言すればスタブのインピーダンスは電気長に依存して変化する。第2移相回路12は、前述したように電圧を印加することによって反射する電磁波の位相を調整可能なので、反射波の位相が変化することによって、第3伝送線路8と、第2移相回路12とによって構成される伝送線路の全体の電気長が変化する。すなわち、第2移相回路12によって反射される電磁波の位相を変化させることは、擬似的にスタブとして機能する伝送線路の線路長を変化させることに等しい。このように、第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって、スタブとして機能する第3伝送線路8と、第2移相回路12とによって構成される伝送線路の全体のインピーダンスを調整することができる。
【0105】
また同様に、第1移相回路11に印加する電圧を調整することによって、第1伝送線路6と、第1移相回路11と、第2伝送線路7のうちの、第3伝送線路8が分岐する分岐部19から第1移相回路11寄りの部分(以下、第2伝送線路7の一方という)7aとによって構成される伝送線路の全体の擬似的な長さを調整し、インピーダンスを調整することができる。
【0106】
第1および第3伝送線路6,8の線路長ならびに第2伝送線路7の一方7aの線路長は、第1および第2移相回路11,12の移相量が可変な範囲において、次式(1)を満たすように選ばれる。
【0107】
【数8】

【0108】
式(1)においてΓは、電子部品2から第1伝送線路6に入力される高周波信号が、電子部品2と第1伝送線路6とを接続する接続体に相当するボンディングワイヤ3で反射される反射係数を表し、│TM1│は、第1伝送線路6に入力された電磁波が、分岐部19まで通過する透過係数を表し、θは、第1伝送線路6に入力された高周波信号が、分岐部19まで進むときに変化する位相を表し、Γは、第2伝送線路7に入力された電磁波が、分岐部19で反射される反射係数を表す。
【0109】
図2は、整合回路1を示す平面図である。第1移相回路11は、第1〜第4入出力端子21〜24を有するラットレース26と、第2入出力端子22から延在して形成される第1延在部27と、第4入出力端子24から延在して形成される第2延在部28とを含んで構成される。
【0110】
ラットレース26は、第1入出力端子21から入力される電磁波、すなわち電子部品2から出力される高周波信号の波長をλとすると、一周の長さが3(2n−1)λ/2に形成されるリング状伝送線路31と第5入出力端子25とをさらに含む(nは自然数を表す)。リング状伝送線路31は、マイクロストリップラインによって実現され、円形状および楕円形状を含む略円形状などに形成され、本実施の形態では円形状に形成される。第1〜第5入出力端子21〜25は、リング状伝送線路31において周方向の一方向きにそれぞれこの順に設けられる。第1および第2入出力端子21,22の間の線路長、第2および第3入出力端子22,23の間の線路長、第3および第4入出力端子23,24の間の線路長、第4および第5入出力端子24,25の間の線路長が、(2n−1)λ/4にそれぞれ選ばれ、第4および第1入出力端子24,21の間の線路長が、3(2n−1)λ/4に選ばれる。なお、各端子間の線路長は2通りあり、一方の線路長をxとすると、他方の線路長が、3λ/2−xとなるが、前述の各端子間の線路長は、短い方の線路長について説明している。本実施の形態において記号「n」は、数値「1」に選ばれる。
【0111】
このような構成のラットレース26では、第1入出力端子21から波長λの高周波信号が入力されると、入力された高周波信号が第2入出力端子22と第4入出力端子24とに分配されて出力され、第3および第5入出力端子23,25からは出力されない。
【0112】
第1伝送線路6のボンディングワイヤ3に接続される端部とは反対側の端部は、一方の第1接続端13aに相当する第1入出力端子21に接続される。また第2伝送線路7は、他方の第1接続端13bに相当する第3入出力端子23に接続される。
【0113】
第1延在部27は、第2入出力端子22から延びる伝送線路27aと、この伝送線路27aがラットレース26に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第1可変容量素子27bとを含んで構成される。第2延在部28は、第4入出力端子24から延びる伝送線路28aと、この伝送線路28aがラットレース26に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第2可変容量素子28bとを含んで構成される。本実施の形態では、第1および第2延在部27,28をそれぞれ構成する伝送線路27a,28aは、マイクロストリップラインによって実現され、第1および第2可変容量素子27b,28bは、印加する電圧に応じて電気容量が変化する素子から成る。
【0114】
本実施の形態において第2移相回路12は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子32から成る。第1〜第3可変容量素子27b,28b,32は、バラクタダイオードなどの半導体素子や、強誘電体素子、圧電素子、およびMEMS(
Microelectromechanical system)素子を含む電圧制御可変コンデンサなどによって実現され、本実施の形態では、バラクタダイオードによって実現される。
【0115】
整合回路1は、第1可変容量素子27bに電圧を印加するための第1電極33と、第2可変容量素子28bに電極を印加するための第2電極34と、第3可変容量素子32に電圧を印加するための第3電極35と、第1〜第3可変容量素子27b,28b,32に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第4電極に相当する基準電極36とをさらに含む。この基準電極36と、第1〜第3電極33,34,35との間の電位差が、第1〜第3可変容量素子27b,28b,32に印加される電圧となる。
【0116】
第1〜第3電極33,34,35は、第1可変容量素子27b、第2可変容量素子28b、第2移相回路12の第2接続端15bからそれぞれ延在し、それぞれの端部に電極パッドが形成される。第1電極33の電極パッドと、第1可変容量素子27bとの間、第2電極34の電極パッドと第2可変容量素子28bとの間、および第3電極35の電極パッドと第2移相回路12(第3可変容量素子32)の第2接続端15bとの間には、扇形状のラジアルスタブが設けられる。このラジアルスタブは、高周波信号の漏洩を防止するとともに、第1〜第3可変容量素子27b,28b,32のリアクタンス成分をそれぞれ0付近にすることで大きな位相変化量を得るために設けられる。第1〜第3電極33,34,35にラジアルスタブを設ける代わりに、低域通過フィルタをそれぞれ設けてもよい。
【0117】
基準電極36は、第5入出力端子25から延在し、端部に電極パッドが形成される。電極パッドと第5入出力端子25との間には、高周波信号を遮断する低域通過フィルタ38が形成される。この低域通過フィルタ38は、少なくとも電子部品2から出力される高周波信号を遮断するように形成される。この低域通過フィルタ38は、伝送線路において、線路幅が広がって四角形状に形成される2つの四角部分を含んで構成される。基準電極36に低域通過フィルタを設ける代わりに、ラジアルスタブを設けてもよい。基準電極36は、誘電体基板5を厚み方向Zに貫通して形成され、電極パッドと裏面電極17とを電気的に接続する貫通電極37を含む。したがって、第1〜第3可変容量素子27b,28b,32に印加する電圧の基準電圧は、裏面電極17の電圧と同じ値に設定される。
【0118】
低域通過フィルタ38を設けることによって、第5入出力端子25から基準電極36に高周波信号が入力することを確実に防ぐことができる。これによって、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。また第1入出力端子21から入力される高周波信号が出力されない第5入出力端子25に基準電極36を接続するので、基準電極36を設けることによって、高周波信号の伝送に影響を与えることがない。これによって第1移相回路11のインピーダンスに影響を与えることなく、基準電圧を定めるための基準電極36を設けることができる。
【0119】
第1延在部27は、第1入出力端子21を通って第2入出力端子22から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。また第2延在部28は、第1入出力端子21を通って第4入出力端子24から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。第1延在部27のインピーダンスは、第1延在部27の伝送線路27aの線路長と、第1可変容量素子27bの電気容量に依存する。この第1可変容量素子27bの電気容量は、印加する電圧に応じて可変なので、第1電極33に印加する電圧を調整することによって調整可能である。また同様に、第2電極34に印加する電圧を調整することによって、第2延在部28のインピーダンスを調整することができる。
【0120】
第4入出力端子24と第2可変容量素子28bとの間の伝送線路28aの線路長は、第2入出力端子22と第1可変容量素子27bとの間の伝送線路27aの線路長と、(2n−1)λ/4の長さ分、異なるように選ばれる。本実施の形態では、第4入出力端子24と第2可変容量素子28bとの間の伝送線路28aの線路長は、第2入出力端子22と第1可変容量素子27bとの間の伝送線路27aの線路長より、λ/4の長さ分、長く選ばれる。前述したように、第1延在部27または第2延在部28によって反射されることなく、第1入出力端子21から入力されてリング状伝送線路31を周方向の一方と他方に分かれて伝送し、第3入出力端子23において合流する高周波信号の位相は、互いにπrad異なるが、第1延在部27の伝送線路27aと、第2延在部28の伝送線路28aとが、前述のような線路長に形成されるので、第1入出力端子21から入力されて分岐し、第1延在部27および第2延在部28によってそれぞれ反射されて第3入出力端子23で合流する高周波信号の位相は等しくなる。これによって、第1入出力端子21から入力された高周波信号が、第3入出力端子23から出力される。
【0121】
第1および第2延在部27,28のインピーダンスは、第1および第2電極33,34に印加する電圧に応じて変化するので、第1および第2電極33,34に印加する電圧を調整することによって、第1移相回路11を通過する高周波信号の位相を調整することが
できる。これによって、第1移相回路11を通過する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0122】
また第3電極35に印加する電圧に応じて第3可変容量素子32の電気容量が変化するので、第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12によって反射する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。
【0123】
第2伝送線路7のうち、分岐部19よりも第1移相回路11から離間する部分(以下、第2伝送線路7の他方という)7b、および第1伝送線路6のうちの少なくともいずれか一方は、直流阻止用コンデンサを有する。本実施の形態では、第1伝送線路6と第2伝送線路7の他方7bとの両方に、直流阻止用コンデンサ39が設けられる。直流阻止用コンデンサ39は、電子部品2から出力される高周波信号を通過させ、直流信号を遮断するフィルタとして機能する。直流阻止用コンデンサ39は、窒化シリコンおよび酸化シリコンなどによって形成される薄膜の絶縁膜を伝送線路で挟む構成、インタディジタルキャパシタ、セラミックコンデンサ、単板コンデンサ、薄膜コンデンサなどによって実現される。本実施の形態では、直流阻止用コンデンサ39は、インタディジタルキャパシタによって実現される。
【0124】
本実施の形態では、電子部品2が接続される部分の線路の特性インピーダンスと、ラットレース26の第1入出力端子21の特性インピーダンスとが異なるように設計されるので、第1伝送線路6は、インピーダンス変成器を含んで構成される。たとえば本実施の形態では電子部品2が接続される部分の線路の特性インピーダンスが50Ωに設計され、ラットレース26の第1入出力端子21の特性インピーダンスが35Ωに設計される。第1伝送線路6の線幅は、第1入出力端子21付近では、50Ωになるように選ばれ、第1伝送線路6のボンディングワイヤ3が接続される部分では、35Ωになるように選ばれる。第1伝送線路6は、35Ωの伝送線路と、50Ωの伝送線路とを整合して接続するために、中央部にλ/4インピーダンス変成器が設けられる。
【0125】
図3は、SパラメータのうちのS11(電子部品2から見た反射係数)を表すグラフである。図3において中心は、数値「0」を表し、横軸は、実軸を表し、縦軸は、虚軸を表す。S11は、電子部品2からボンディングワイヤ3を介して整合回路1に高周波信号を入力したときに、電子部品2とボンディングワイヤ3との接続部で高周波信号が反射される割合、すなわち反射係数を表す。インピーダンスの整合がとれていれば、S11が小さいので、測定値はグラフの中心に近づく。図3では、整合回路1に入力される高周波信号の周波数範囲を含む周波数範囲でのS11の測定値を図示している。
【0126】
図3(1)は、整合回路を用いない場合の76.5GHzにおけるS11を表すグラフであり、図3(2)は、本実施の形態の整合回路を用いて第1移相回路11および第2移相回路12に印加する電圧を変化させた場合の76.5GHzにおけるS11を表すグラフである。図3(1)よりも、図3(2)の方が、測定データが中心に近づいているので、整合回路を設けない場合に比べてインピーダンスの整合がとれ、反射が低減していることを表す。具体的には、本実施の形態の整合回路を用いることによって、電子部品2から見た反射係数の絶対値が、−7dBから−12dBに改善されたことが示された。さらに、第1移相回路11および第2移相回路12の電圧を変化させることで、S11が変化していることがわかる。具体的には、第1移相回路11および第2移相回路12に印加する電圧を変化させることによって、電子部品2から見た反射係数の絶対値が−9.5dB〜−13.5dB、位相が−148°〜167°に変化することが示された。これによって、高周波回路を製造するときに整合回路を構成するパターンの寸法がばらついたり、MMICの実装位置がずれてボンディングワイヤのインダクタンス成分の大きさがばらついたりすることによって、製造した高周波回路が設計値から外れた場合でも、第1移相回路11および第2移相回路12に印加する電圧を変化させることによって、調整が可能であることがわかる。
【0127】
以上説明した本実施の形態の整合回路1によれば、第1移相回路11に印加する電圧を調整することによって、第1伝送線路6と、第1移相回路11と、第2伝送線路7の一方7aとによって構成される伝送線路の全体の擬似的な長さを調整し、インピーダンスを調整することができる。また第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって、スタブとして機能する第3伝送線路8と、第2移相回路12とによって構成される伝送線路の全体のインピーダンスを調整することができる。すなわち第1移相回路11および第2移相回路12にそれぞれ印加する電圧を調整することによって、整合回路1全体のインピーダンスを調整することができる。
【0128】
さらに、電子部品2をボンディングワイヤ3で第1伝送線路6に接続する場合、ボンディングワイヤ3と、整合回路1とを含めた回路のインピーダンスは、電子部品2の実装状態と、ボンディングワイヤ3の長さおよびボンディングワイヤ3の配置などのボンディングワイヤ3の接続状態に依存する。このように電子部品2を実装し、ボンディングワイヤ3で接続した後においても、第1移相回路11および第2移相回路12にそれぞれ印加する電圧を調整することによって整合回路1のインピーダンスを調整することができるので、電子部品2からボンディングワイヤ3および整合回路1を見たときのインピーダンスを調整することができる。たとえばボンディングワイヤ3および整合回路1を含めた回路と、電子部品2とのインピーダンスを整合するように第1移相回路11および第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって、電子部品2から出力される電力が整合回路1によって反射されることを防ぐことができる。
【0129】
また電圧は、連続的に変化するので、第1および第2移相回路11,12に印加する電圧を連続的に変化すると、整合回路1のインピーダンスを連続的に変化させることができる。これによって、整合回路1のインピーダンスを不連続に変化させることができる第1および第3の従来の技術に比べて、高精度に整合回路1のインピーダンスを調整することができる。ここで、ボンディングワイヤ3からスタブまでの電気長を第1移相回路11によって、スタブの電気長を第2移相回路12によって、それぞれ独立に調整できるため、ボンディングワイヤ3のインピーダンスがどのように変化しても、第1移相回路11および第2移相回路12に印加する電圧をそれぞれ調整することによってインピーダンスを整合することができる。
【0130】
また本実施の形態の整合回路1は、第1および第3伝送線路6,8の線路長ならびに第2伝送線路7の一方7aの線路長は、第1および第2移相回路11,12の移相量が可変な範囲において、式(1)を満たすように選ばれる。整合回路1が式(1)を満たす場合、第1伝送線路6にボンディングワイヤ3を介して電子部品2の入出力端子を接続すると、入出力端子から入力される高周波信号がボンディングワイヤ3で反射される反射係数と、第2伝送線路7から第3伝送線路8が分岐する分岐部で反射される反射係数が等しく、かつボンディングワイヤ3で反射される反射波と、分岐部で反射される反射波とが、位相差がπradで重ねあわされる。すなわち、ボンディングワイヤ3で反射される反射波と、分岐部で反射される反射波とが重なり合って打ち消される。これによって電子部品2から入力される高周波信号の反射を低減することができる。
【0131】
また本実施の形態の整合回路1は、直流阻止用コンデンサ39を含むので、整合回路1を通る低周波数および直流の信号を除去することができ、第1および第2移相回路11,12に印加している電圧が、整合回路1に接続される電子部品2に印加されることを防ぐことができる。これによって電子部品2に電圧が印加されることによって生じる電子部品2の破壊や特性が不安定になることを避けることができる。
【0132】
さらに本実施の形態の整合回路1によれば、第4入出力端子24と第2可変容量素子28bとの間の伝送線路28aの線路長は、第2入出力端子22と第1可変容量素子27bとの間の伝送線路27aの線路長よりも、λ/4の長さ分、長く選ばれる。したがって、第1延在部27に入力されて反射した高周波信号と、第2延在部28に入力されて反射された高周波信号との位相の変化量は、πrad異なる。そして、第1延在部27で反射して第3入出力端子23から出力される電磁波と、第2延在部28で反射して第3入出力端子23から出力される電磁との位相は等しくなり、重ね合わされて第3入出力端子23から出力される。このように設計された第1移相回路11を用いると、反射波の位相変化を生じさせる第1および第2可変容量素子27b,28bを用いても、第1入出力端子21から入力された電磁波が第3入出力端子23から出力する移相回路を実現することができる。
【0133】
本実施の形態では、整合回路1と電子部品2とを接続する接続体として、ボンディングワイヤ3について説明したが、接続体としては、ボンディングワイヤ3に限らない。たとえば電子部品2の誘電体基板5に対向する面に接続体としてバンプを形成しておき、フリップチップなどの表面実装によって、バンプと整合回路1の第1伝送線路6とを接続してもよい。この場合でも、前述したように電子部品2を表面実装した後に整合回路1の特性インピーダンスを容易に調整することができる、電子部品2と整合回路1との間において生じる高周波信号の反射を低減することができる。
【0134】
図4は、本発明の他の実施の形態の整合回路40を示す平面図である。本実施の形態の整合回路40は、前述の実施の形態の整合回路1の構成と、第1伝送線路6および第2伝送線路7のラットレース26への接続部位が異なるのみなので、対応する構成については同一の参照符号を付して重複する説明を省略し、第1伝送線路6および第2伝送線路7のラットレース26への接続部位についてのみ説明する。
【0135】
本実施の形態の第1および第2伝送線路6,7は、前述の実施の形態の整合回路1の第1および第2伝送線路6,7と同様の構成である。第1伝送線路6のボンディングワイヤ3と接続する端部と反対側の端部は、第3入出力端子23に接続される。第2伝送線路7の一方7aは、第1入出力端子21に接続される。
【0136】
本実施の形態の整合回路40は、前述の実施の形態の整合回路1と同様に第1延在部27および第2延在部28を備える。電子部品2から出力される高周波信号は、第3入出力端子23に入力されて分岐する。この第3入出力端子23で分岐した高周波信号が、リング状伝送線路31を周方向の一方と他方とにそれぞれ伝送して、第1入出力端子21で合流すると、互いの位相がπrad異なるが、前述したように第1延在部27および第2延在部28によってそれぞれ反射されて、第1入出力端子21で合流する場合には、互いに等しい位相となる。これによって、第3入出力端子23から入力された高周波信号が、第1入出力端子21から出力される。
【0137】
前述したように第1移相回路11および第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって整合回路40のインピーダンスの調整を容易に行なうことができるので、電子部品2から出力される電力がボンディングワイヤ3および整合回路40によって反射されることを防ぐことができる。
【0138】
図5は、本発明のさらに他の実施の形態の整合回路41を示す平面図である。本実施の形態の整合回路41は、電子部品2が配置される部品配置台42を含み、この部品配置台42と合わせて電子部品2とのインピーダンスの整合を行なう。本実施の形態の整合回路41は、前述の実施の形態の整合回路1の構成と部品配置台42が異なるのみなので、対
応する構成については同一の参照符号を付して重複する説明を省略し、部品配置台42についてのみ説明する。
【0139】
部品配置台42は、誘電体基板5と、導電性を有し、電子部品2が配置される部品配置部43と、導電性を有する突出部44と、裏面電極17と、突出部44および裏面電極17を電気的に接続する第1接続部45とを含んで構成される。
【0140】
部品配置部43は、薄板の方形状に形成され、誘電体基板5の厚み方向Zの一表面上において、第1伝送線路6の延びる方向Yと、誘電体基板5の厚み方向Zとに垂直な方向Xに延びる。部品配置部43は、長手方向Xの中心が第1伝送線路6の延長線上に重なるように配置され、可能な限り第1伝送線路6に近接して配置される。部品配置部43の長手方向Xの幅は、誘電体基板5の厚み方向Zの一方Z1から見て、電子部品2が配置されたときに長手方向Xの一方と他方に電子部品2が重ならない領域47a,47bが形成されるように、電子部品2よりも幅広に選ばれる。電子部品2は、誘電体基板5の厚み方向Zの一方Z1から見て、入出力端子46が第1伝送線路6の延長線上に重なり、かつ部品配置部43において第1伝送線路6に近接する端部寄りに配置される。これによって、ボンディングワイヤ3の長さを可能な限り短くすることができる。
【0141】
部品配置台42は、部品配置部43と裏面電極17とを電気的に接続する1または複数の第2接続部48を含む。第2接続部48は、裏面電極17と部品配置部43との間において誘電体基板5を貫通して形成されるバイアに導電性を有する材料を充填することによって形成される。本実施の形態において第2接続部48は、誘電体基板5の厚み方向Zの一方から見て、部品配置部43全体に所定の間隔をあけて配置される。これによって、部品配置部43は、裏面電極17と同電位に設定される。
【0142】
突出部44は、誘電体基板5の厚み方向Zの一表面上において、部品配置部43から第1伝送線路6が設けられる領域に向けて延在して形成される。本実施の形態では、突出部44は、第1伝送線路6の延びる方向Yと誘電体基板5の厚み方向Zとにそれぞれ垂直な部品配置部43の長手方向Xに間隔をあけて配置され、部品配置部43の短手方向Yに延びる複数の突出部分49から成る。本実施の形態では、突出部44は、4本の突出部分49を含んで構成される。4本の突出部分49は、誘電体基板5の厚み方向Zの一方Z1から見て、第1伝送線路6の延長線に対して線対称に配置される。4本の突出部分49のうちの、内側に配置される1対の突出部分49をそれぞれ第1および第2突出部分49a,49bと記載し、外側に配置される1対の突出部分49をそれぞれ第3および第4突出部分49c,49dと記載する。
【0143】
第1接続部45は、各突出部分49と裏面電極17とを電気的に接続する。第1接続部45は、各突出部分49と裏面電極17との間において誘電体基板5を貫通する貫通孔に導電性を有する材料を充填することによって形成される。これによって、各突出部分49は、裏面電極17と同電位に設定される。
【0144】
第1伝送線路6の線幅W1および第1および第2突出部分49a,49bと、第1伝送線路6とのそれぞれの間隔W3は、第1伝送線路6を信号線、第1および第2突出部分49a,49bをグラウンドとしたコプレーナ線路と見たときに、第1伝送線路6側から見た特性インピーダンスがボンディングワイヤ3も含めて50Ωになるように設定される。また、3本のボンディングワイヤ3が平行にできるように設定される。したがって、この第1伝送線路6の線幅W1および第1および第2突出部分49a,49bと、第1伝送線路6とのそれぞれの間隔W3は、電子部品2の出力パット間隔に依存する。
【0145】
第1および第2突出部分49a,49bの延びる方向Yの幅W2は、ボンディングワイ
ヤ3と整合回路41とを含めたインピーダンスが、電子部品2と整合し、電子部品2の入出力端子46での反射を低減するように設定される。第1および第2突出部分49a,49bの延びる方向Yの幅W2は、第1および第2突出部分49a,49bによって、少なくとも第1伝送線路6の部品配置部43寄りの端部を挟むように選ばれる。好ましくは、第1および第2突出部分49a,49bの延びる方向Yの幅W2は、電子部品2から出力される高周波信号の波長λのλ/4よりも少し大きい程度に選ばれる。たとえば高周波信号の波長が1500μmのとき、第1および第2突出部分49a,49bの延びる方向Yの幅W2は、410μmに選ばれる。
【0146】
また第1突出部分49aと、第3突出部分49cとの間隔W4、および第2突出部分49bと第4突出部分49dとの間隔W4は、ボンディングワイヤ3と整合回路41とを含めたインピーダンスが、電子部品2と整合し、電子部品2の入出力端子46での反射を低減するように設定され、たとえばλ/8以上かつλ/4未満程度に選ばれる。本実施の形態では、突出部分49が配列される方向Xにおいて、第1および第2突出部分49a,49bの外側に一対の第3および第4突出部分49c,49dを設けたけれども、複数の対の突出部分49を設けてもよく、その場合の各突出部分49の間隔も、W4と同様に設定される。
【0147】
第3および第4突出部分49c,49dの延びる方向Yの幅W5は、たとえばλ/4程度に選ばれる。たとえば高周波信号の波長が1500μmのとき、第3および第4突出部分49c,49dの延びる方向Yの幅W5は、380μmに選ばれる。
【0148】
以上説明した本実施の形態の整合回路41によれば、仮に突出部44を設けない場合には、伝送モードが部品配置部43と裏面電極17とで形成される平行平板モードに結合してしまい、漏れとなって、伝送損失が大きくなる。突出部44を設けることによって、平行平板モードの伝送を抑制することができ、伝送損失を抑えることができるため、効率的に高周波信号を伝送することができる。ここで部品配置部43は、誘電体基板5の厚み方向Zの一表面上に配置しているが、誘電体基板5内部であってもよい。
【0149】
図6は、本発明のさらに他の実施の形態の整合回路51を示す平面図である。本実施の形態の整合回路51は、前述の各実施の形態の整合回路1,40,41の構成と第1移相回路52が異なるのみなので、対応する構成については同一の参照符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0150】
第1移相回路52は、第1〜第4入出力端子53〜56を有するブランチライン57と、第2入出力端子54から延在して形成される第1延在部27と、第3入出力端子55から延在して形成される第2延在部28とを含んで構成される。
【0151】
ブランチライン57は、第1入出力端子53から入力される電磁波、すなわち電子部品2から出力される高周波信号の波長をλとすると、一周の長さが(2n−1)λに形成される四角状伝送線路58を含む。四角状伝送線路58は、マイクロストリップラインによって実現され、四角状および丸みを帯びた略四角状などに形成され、本実施の形態では、四角状に形成される。第1〜第4入出力端子53〜56は、四角状伝送線路58において周方向の一方向きにそれぞれこの順に設けられる。相互に隣接する各出力端子間の線路長は、(2n−1)λ/4にそれぞれ選ばれる。本実施の形態において記号「n」は、数値「1」に選ばれる。第1入出力端子53と、第2入出力端子54との間の伝送線路の特性インピーダンスをZ1とし、第2入出力端子54と、第3入出力端子55との間の伝送線路の特性インピーダンスをZ2とし、第3入出力端子55と、第4入出力端子56との間の伝送線路の特性インピーダンスをZ3とし、第4入出力端子56と、第1入出力端子53との間の伝送線路の特性インピーダンスをZ4とすると、四角状伝送線路58は、Z1,Z2,Z3,Z4がそれぞれ次式(17)の関係を満たすように形成される。
【0152】
【数9】

【0153】
このような構成のブランチライン57では、第1入出力端子53から波長λの高周波信号が入力されると、入力された高周波信号が第2入出力端子54と第3入出力端子55とに分配されて出力され、第4入出力端子56からは出力されない。また、第2入出力端子54から出力される高周波信号の位相と、第3入出力端子55から出力される高周波信号の位相とは、π/2rad異なる。
【0154】
第1伝送線路6のボンディングワイヤ3に接続される端部とは反対側の端部は、一方の第1接続端13aに相当する第1入出力端子53に接続される。また第2伝送線路7は、他方の第1接続端13bに相当する第4入出力端子56に接続される。
【0155】
第1延在部27は、第2入出力端子54から延びる伝送線路27aと、この伝送線路27aがブランチライン57に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第1可変容量素子27bとを含んで構成される。第2延在部28は、第3入出力端子55から延びる伝送線路28aと、この伝送線路28aがブランチライン57に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第2可変容量素子28bとを含んで構成される。
【0156】
第1〜第3電極33,34,35は、前述の第1〜第3電極33,34,35と同様の構成なので、重複する説明を省略する。また第1〜第3可変容量素子27b,28b,32に印加される電圧の基準電圧を定めるための基準電極36は、接続個所が前述の実施の形態の基準電極36と異なるのみなので、接続個所についてのみ説明する。基準電極36は、第1伝送線路6の直流阻止用コンデンサ39と第1入出力端子53との間から分岐して延びる。
【0157】
第1延在部27は、第1入出力端子53を通って第2入出力端子54から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。また第2延在部28は、第1入出力端子53を通って第3入出力端子55から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。第1および第2延在部27,28は、各伝送線路27a,28aの線路長が前述の実施の形態の第1および第2延在部27,28と異なるのみなので、線路長についてのみ説明する。
【0158】
第2入出力端子54と第1可変容量素子27bとの間の伝送線路27aの線路長は、第3入出力端子55と第2可変容量素子28bとの間の伝送線路28aの線路長と略等しい長さ、またはnλ/2の長さ分、異なるように選ばれる。第1延在部27の伝送線路27aと、第2延在部28の伝送線路28aとが、前述のような線路長に形成されるので、第1入出力端子53から入力され、第1延在部27および第2延在部28によってそれぞれ反射されて第4入出力端子56で合流する高周波信号の位相は等しくなる。これによって、第1入出力端子53から入力された高周波信号が、第4入出力端子56から出力される。このように設計された第1移相回路52を用いると、反射波の位相変化を生じさせる第1および第2可変容量素子27b,28bを用いても、第1入出力端子から入力された電磁波が第4入出力端子56から電磁波が出力する移相回路を実現することができる。
【0159】
第1および第2延在部27,28のインピーダンスは、第1および第2電極33,34に印加する電圧に応じて変化するので、第1および第2電極33,34に印加する電圧を
調整することによって、第1移相回路52を通過する高周波信号の位相の変化量を調整することができる。
【0160】
また第3電極35に印加する電圧に応じて第3可変容量素子32の電気容量が変化するので、第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12で反射する高周波信号の位相の変化量を調整することができる。したがって、第3電極35に印加する電圧を調整することによって、スタブとして機能する第3伝送線路8と、第2移相回路12とから成る伝送線路のインピーダンスを調整することができる。
【0161】
以上説明した本実施の形態の整合回路51によれば、ブランチライン57を用いることによって、第1および第2電極33,34に印加する電圧を調整することによって、第1移相回路52を通過する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。また第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12で反射する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。これによって、前述したように第1移相回路52および第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって整合回路51のインピーダンスの調整を容易に行なうことができ、電子部品2から出力される電力が整合回路51によって反射されることを防ぐことができる。
【0162】
図7は、本発明のさらに他の実施の形態の整合回路61を示す平面図である。本実施の形態の整合回路61は、前述の各実施の形態の整合回路1,40,41,51の構成と第1移相回路62が異なり、かつ第2基準電極81を加えた構成なので、対応する構成については同一の参照符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0163】
第1移相回路62は、第1〜第4入出力端子63〜66を有する方向性結合器67と、第2入出力端子64から延在して形成される第1延在部27と、第3入出力端子65から延在して形成される第2延在部28とを含んで構成される。
【0164】
方向性結合器67は、第1入出力端子63から波長λの高周波信号が入力されると、入力された高周波信号が第2入出力端子64と第3入出力端子65とに分配されて出力され、第4入出力端子66からは出力されないように構成される。また第2入出力端子64から出力される高周波信号の位相と、第3入出力端子65から出力される高周波信号の位相とは、π/2rad異なる。本実施の形態の方向性結合器67の結合度は、2dB以上かつ4dB以下に選ばれ、好ましくは3dBに選ばれる。
【0165】
方向性結合器67は、本実施の形態ではLange型方向性結合器によって実現される。第1〜第4入出力端子63〜66は、四角形の頂点にそれぞれ設けられ、第1入出力端子63と第3入出力端子65とは、それぞれ対角に設けられる。本実施の形態において第1入出力端子63と第2入出力端子64とを結ぶ直線の延びる方向を、横方向Xと記載し、第1入出力端子63と第4入出力端子66とを結ぶ直線の延びる方向を、縦方向Yと記載する。
【0166】
第1入出力端子63と第3入出力端子65とは、伝送線路によって接続される。この伝送線路は、第1入出力端子63から、第1入出力端子63および第2入出力端子64の中間まで横方向Xに延びる伝送線路68と、第1入出力端子63と第2入出力端子64との中間から、第4入出力端子66と第3入出力端子65の中間まで縦方向Yに延びる第1縦伝送線路69と、第4入出力端子66と第3入出力端子65との中間から、第3入出力端子65まで横方向Xに延びる伝送線路70とからなる。
【0167】
第2入出力端子64からは、第1入出力端子63から延びる伝送線路68に接続しない程度に近接する位置まで横方向Xに伝送線路71が延び、この伝送線路71の先端から、第1縦伝送線路69に沿って縦方向Yに第2縦伝送線路72が延びる。この第2縦伝送線路72の先端は、第3入出力端子65から延びる伝送線路70に接続しない程度に縦方向Yに延びる。
【0168】
第4入出力端子66からは、第3入出力端子65から延びる伝送線路70に接続しない程度に近接する位置まで横方向Xに伝送線路73が延び、この伝送線路73の先端から、第1縦伝送線路69に沿って縦方向Yに第3縦伝送線路74が延びる。この第3縦伝送線路74の先端は、第1入出力端子63から延びる伝送線路68に接続しない程度に縦方向Yに延びる。
【0169】
第1入出力端子63から横方向Xに延びる伝送線路68からは、第4縦伝送線路75が縦方向Yに分岐して延びる。第4縦伝送線路75は、第3縦伝送線路74を第1縦伝送線路69とによって挟むように第3縦伝送線路74に近接して設けられる。
【0170】
第3入出力端子65から横方向Xに延びる伝送線路70からは、第5縦伝送線路76が縦方向Yに分岐して延びる。第5縦伝送線路76は、第2縦伝送線路72を第1縦伝送線路69とによって挟むように第2縦伝送線路72に近接して設けられる。
【0171】
第1〜第3縦伝送線路69,72,74の線路長は、λ/4程度に選ばれ、第4および第5縦伝送線路75,76の線路長は、λ/8程度に選ばれる。各伝送線路は、マイクロストリップラインによって実現される。
【0172】
方向性結合器67は、第1縦伝送線路69の縦方向Yの中間と、第4縦伝送線路75の遊端と、第5縦伝送線路76の遊端とを電気的に接続するワイヤ状のブリッジ77をさらに含む。また方向性結合器67は、第3縦伝送線路74の遊端と、第2縦伝送線路72の遊端とは反対側の端部とを電気的に接続するワイヤ状のブリッジ78をさらに含む。さらに方向性結合器67は、第3縦伝送線路74の遊端とは反対側の端部と、第2縦伝送線路72の遊端とを電気的に接続するワイヤ状のブリッジ79をさらに含む。
【0173】
第1伝送線路6のボンディングワイヤ3に接続される端部とは反対側の端部は、一方の第1接続端13aに相当する第1入出力端子63に接続される。また第2伝送線路7は、他方の第1接続端13bに相当する第4入出力端子66に接続される。
【0174】
第1延在部27は、第2入出力端子64から延びる伝送線路27aと、この伝送線路27aが方向性結合器67に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第1可変容量素子27bとを含んで構成される。第2延在部28は、第3入出力端子65から延びる伝送線路28aと、この伝送線路28aが方向性結合器67に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第2可変容量素子28bとを含んで構成される。
【0175】
第1〜第3電極33,34,35は、前述の第1〜第3電極33,34,35と同様の構成なので、重複する説明を省略する。また第1〜第3可変容量素子27b,28b,32に印加される電圧の基準電圧を定めるための基準電極36は、前述の実施の形態の構成と同様の構成であって、第1伝送線路6の直流阻止用コンデンサ39と第1入出力端子63との間から分岐して延びる。整合回路61は、前述の各実施の形態の整合回路1,40,41,51に加えて、第2基準電極81を含む。この第2基準電極81は、基準電極36と同様の構成であって、第2伝送線路7の他方7bにおいて、分岐部19と直流阻止用コンデンサ39との間から分岐して延びる。第2基準電極81は、基準電極36と同様に、第1〜第3可変容量素子27b,28b,32に印加される電圧の基準電圧を定める。
【0176】
第1延在部27は、第1入出力端子63を通って第2入出力端子64から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。また第2延在部28は、第1入出力端子63を通って第3入出力端子65から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。第2入出力端子64と第1可変容量素子27bとの間の伝送線路27aの線路長は、第3入出力端子65と第2可変容量素子28bとの間の伝送線路28aの線路長と略等しい長さに選ばれるか、またはnλ/2の長さ分、異なるように選ばれる。第1延在部27の伝送線路27aと、第2延在部28の伝送線路28aとが、前述のような線路長に形成されるので、第1入出力端子63から入力され、第1延在部27および第2延在部28によってそれぞれ反射されて第4入出力端子66で合流する高周波信号の位相は等しくなる。これによって、第1入出力端子63から入力された高周波信号が、第4入出力端子66から出力される。このように設計された第1移相回路62を用いると、反射波の位相変化を生じさせる第1および第2可変容量素子27b,28bを用いても、第1入出力端子から入力された電磁波が第4入出力端子66から電磁波が出力する移相回路を実現することができる。
【0177】
第1および第2延在部27,28のインピーダンスは、第1および第2電極33,34に印加する電圧に応じて変化するので、第1および第2電極33,34に印加する電圧を調整することによって、第1移相回路62を通過する高周波信号の位相の変化量を調整することができる。
【0178】
また第3電極35に印加する電圧に応じて第3可変容量素子32の電気容量が変化するので、第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12を通過する高周波信号の位相の変化量を調整することができる。したがって、第3電極35に印加する電圧を調整することによって、スタブとして機能する第3伝送線路8と、第2移相回路12とから成る伝送線路のインピーダンスを調整することができる。
【0179】
以上説明した本実施の形態の整合回路61によれば、方向性結合器67を用いることによって、第1および第2電極33,34に印加する電圧を調整することによって、第1移相回路62を通過する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。また第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12で反射する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。これによって、前述したように第1移相回路62および第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって整合回路61のインピーダンスの調整を容易に行なうことができ、電子部品2から出力される電力が整合回路61によって反射されることを防ぐことができる。
【0180】
図8は、本発明のさらに他の実施の形態の整合回路84を示す平面図である。本実施の形態の整合回路84は、前述の各実施の形態の整合回路1,40,41,51,61の構成と第1移相回路85が異なるので、対応する構成については同一の参照符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0181】
第1移相回路85は、第1〜第3入出力端子86,87,88を有するサーキュレータ89と、第2入出力端子87から延在して形成される延在部91とを含んで構成される。
【0182】
サーキュレータ89は、第1入出力端子86から波長λの高周波信号が入力されると、入力された高周波信号が第2入出力端子87から出力され、第3入出力端子88からは出力されないように構成される。また第2入出力端子87から入力される高周波信号は、第3入出力端子88から出力され、第1入出力端子86からは出力されない。サーキュレータ89は、たとえば伝送線路を挟むフェライトに適当な強度の静磁界を印加することによ
って実現される。
【0183】
第1伝送線路6のボンディングワイヤ3に接続される端部とは反対側の端部は、一方の第1接続端13aに相当する第1入出力端子86に接続される。また第2伝送線路7は、他方の第1接続端13bに相当する第3入出力端子88に接続される。
【0184】
延在部91は、第2入出力端子87から延びる伝送線路91aと、この伝送線路91aがサーキュレータ89に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第1可変容量素子91bとを含んで構成される。本実施の形態では、延在部91を構成する伝送線路91aは、マイクロストリップラインによって実現され、第1可変容量素子91bは、印加する電圧に応じて電気容量が変化する素子から成り、たとえばバラクタダイオードによって実現される。
【0185】
第2移相回路12は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子92から成り、たとえばバラクタダイオードによって実現される。
【0186】
第1電極33は、前述の第1電極33と同様の構成であって、第1可変容量素子91bに接続され、第1可変容量素子91bに電圧を印加する。第2電極34は、前述の第2電極34と同様の構成であって、第2可変容量素子92に接続され、第2可変容量素子92に電圧を印加する。
【0187】
延在部91の伝送線路91aからは、前述の基準電極36と同様の構成であって、第1可変容量素子91bに印加される電圧の基準電圧を定めるための第3電極に相当する基準電極36が分岐して延びる。また第2伝送線路7の他方7bからは、前述の第2基準電極81と同様の構成であって、第2可変容量素子92に印加される電圧の基準電圧を定めるための第4電極に相当する第2基準電極81が延在する。
【0188】
整合回路84は、整合回路84を通過する高周波信号よりも周波数の低い低周波数信号および直流の信号を遮断する直流阻止用コンデンサ93をさらに含む。直流阻止用コンデンサ93は、延在部91のうち、前記第3電極に相当する基準電極36が分岐する分岐部と前記サーキュレータ89との間に設けられる。また直流阻止用コンデンサ93は、第2伝送線路7のうち、第3伝送線路8が分岐する分岐部とサーキュレータ89との間に設けられる。さらに直流阻止用コンデンサ93は、第2伝送線路7のうち、第4電極に相当する第2基準電極81が分岐する分岐部よりも第1移相回路85から離間する部分に設けられる。
【0189】
延在部91は、第1入出力端子86を通って第2入出力端子87から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。これによって、第1入出力端子86を通って第2入出力端子87から入力される高周波信号は、延在部91で反射されて再び第2入出力端子87に入力され、第3入出力端子88から出力される。
【0190】
延在部91のインピーダンスは、第1電極33に印加する電圧に応じて変化するので、第1電極33に印加する電圧を調整することによって、第1移相回路85を通過する高周波信号の位相の変化量を調整することができる。
【0191】
また第2電極34に印加する電圧に応じて第2可変容量素子92の電気容量が変化するので、第2電極34に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12で反射する高周波信号の位相の変化量を調整することができる。したがって、第2電極34に印加する電圧を調整することによって、スタブとして機能する第3伝送線路8と、第2移相回路12とから成る伝送線路のインピーダンスを調整することができる。
【0192】
以上説明した本実施の形態の整合回路84によれば、サーキュレータ89を用いることによって、第1および第2電極33,34に印加する電圧を調整することによって、第1移相回路85を通過する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。また第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12で反射する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。これによって、前述したように第1移相回路85および第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって整合回路84のインピーダンスの調整を容易に行なうことができ、電子部品2から出力される電力が整合回路61によって反射されることを防ぐことができる。
【0193】
図9は、本発明のさらに他の実施の形態の整合回路101を示す斜視図である。本実施の形態の整合回路101は、前述の各実施の形態の整合回路1,40,41,51,61,84の構成と第1移相回路102が異なるので、対応する構成については同一の参照符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0194】
第1移相回路102は、第1〜第4入出力端子103〜106を有するマジックT107と、第2入出力端子104から延在して形成される第1延在部27と、第4入出力端子106から延在して形成される第2延在部28とを含んで構成される。
【0195】
マジックT107は、第1入出力端子103から波長λの高周波信号が入力されると、入力された高周波信号が第2入出力端子104と第4入出力端子106とに分配されて出力され、第3入出力端子105からは出力されない。マジックT107は、誘電体基板5に形成される導波管によって実現される。本実施の形態では、導波管には、誘電体基板5と同じ材料からなる誘電体が充填される。さらに第1入出力端子103から入力されて、第2および第4入出力端子104,106からそれぞれ出力される高周波信号の位相は、互いにπrad異なる。
【0196】
第1,第2,第4入出力端子103,104,106は、それぞれ誘電体基板5の厚み方向Zの一表面上に形成される。第1入出力端子103は、第2入出力端子104と、第4入出力端子106との中間に形成される。本実施の形態において、第1,第2,第4入出力端子103,104,106が形成される方向を、横方向Xと記載する。また本実施の形態において横方向Xと、誘電体基板5の厚み方向Zとに垂直な方向を縦方向Yと記載する。
【0197】
マジックT107は、第1,第2,第4入出力端子103,104,106の厚み方向Zの他方Z2において横方向Xに延びる導波管108と、この導波管108から第1,第2,第4入出力端子103,104,106に向けて厚み方向Zの一方Z1にそれぞれ延びる導波管109,110,111とを含んで構成される。マジックT107は、横方向Xの中心を通り、横方向Xに垂直な仮想平面に対して面対称に形成される。第3入出力端子105は、横方向Xに延びる導波管108の横方向Xの中間において、縦方向Yの一方に形成される。
【0198】
第1伝送線路6のボンディングワイヤ3に接続される端部とは反対側の端部は、一方の第1接続端13aに相当する第1入出力端子103に接続される。また第2伝送線路7は、他方の第1接続端13bに相当する第3入出力端子105に接続される。第2伝送線路7は、本実施の形態では第3入出力端子105から縦方向Yの一方に延びる導波管によって実現される。この第2伝送線路7の厚み方向Zの他方の底面部113は、裏面電極17の一部によって構成される。したがって、各導波管は、裏面電極17と同じ電圧に設定される。
【0199】
第1延在部27は、第2入出力端子104から延びる伝送線路27aと、この伝送線路27aがマジックT107に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第1可変容量素子27bとを含んで構成される。第2延在部28は、第4入出力端子106から延びる伝送線路28aと、この伝送線路28aがマジックT107に接続される端部とは反対側の端部に設けられる第2可変容量素子28bとを含んで構成される。本実施の形態では、第1および第2延在部27,28をそれぞれ構成する伝送線路27a,28aは、マイクロストリップラインによって実現され、第1および第2可変容量素子27b,28bは、印加する電圧に応じて電気容量が変化する素子から成り、たとえばバラクタダイオードによって実現される。
【0200】
本実施の形態において第3伝送線路8は、第2伝送線路7から、誘電体基板5の厚み方向Zの一方Z1に分岐して延びる導波管112と、この導波管112の遊端部から延びる伝送線路114とを含んで構成される。この第3伝送線路8を構成する伝送線路114は、たとえばマイクロストリップラインによって実現される。
【0201】
本実施の形態において第2移相回路12は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子32から成り、たとえばバラクタダイオードによって実現される。
【0202】
整合回路1は、第1可変容量素子27bに電圧を印加するための第1電極33と、第2可変容量素子28bに電極を印加するための第2電極34と、第3可変容量素子32に電圧を印加するための第3電極35とをさらに含む。本実施の形態では、各導波管の電圧が裏面電極17と同じ電圧に設定されるので、第1〜第3可変容量素子27b,28b,32に印加する電圧の基準となる基準電圧は、裏面電極17と同じ電圧になり、前述の各実施の形態のように基準電極36を設ける必要がない。
【0203】
第1延在部27は、第1入出力端子103を通って第2入出力端子104から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。また第2延在部28は、第1入出力端子103を通って第4入出力端子106から入力される高周波信号を反射するスタブとして機能するように形成される。第1延在部27のインピーダンスは、第1延在部27の伝送線路27aの線路長と、第1可変容量素子27bの電気容量に依存する。この第1可変容量素子27bの電気容量は、印加する電圧に応じて可変なので、第1電極33に印加する電圧を調整することによって調整可能である。また同様に、第2電極34に印加する電圧を調整することによって、第2延在部28のインピーダンスを調整することができる。
【0204】
第4入出力端子106と第2可変容量素子28bとの間の伝送線路28aの線路長は、第2入出力端子104と第1可変容量素子27bとの間の伝送線路27aの線路長よりも、λ/4の長さ分、長く選ばれる。第1延在部27の伝送線路27aと、第2延在部28の伝送線路28aとが、前述のような線路長に形成されるので、第1入出力端子103から入力されて分岐し、第1延在部27および第2延在部28によってそれぞれ反射されて第3入出力端子105で合流する高周波信号の位相は等しくなる。これによって、第1入出力端子103から入力された高周波信号が、第3入出力端子105から出力される。このように設計された第1移相回路102を用いると、反射波の位相変化を生じさせる第1および第2可変容量素子27b,28bを用いても、第1入出力端子から入力された電磁波が第3入出力端子105から電磁波が出力する移相回路を実現することができる。
【0205】
第1および第2延在部27,28のインピーダンスは、第1および第2電極33,34に印加する電圧に応じて変化するので、第1および第2電極33,34に印加する電圧を調整することによって、第1移相回路102を通過する高周波信号の位相の変化量を調整
することができる。
【0206】
また第3電極35に印加する電圧に応じて第3可変容量素子32の電気容量が変化するので、第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12で反射する高周波信号の位相の変化量を調整することができる。したがって、第3電極35に印加する電圧を調整することによって、スタブとして機能する第3伝送線路8と、第2移相回路12とから成る伝送線路のインピーダンスを調整することができる。
【0207】
各導波管の側壁は、電気伝導性を有する金属によって形成されてもよく、また導電性を有する材料によって形成される柱状の複数の導体柱を、側壁が形成される領域に相互に間隔をあけて配置して形成されてもよい。
【0208】
以上説明した本実施の形態の整合回路101によれば、マジックT107を用いることによって、第1および第2電極33,34に印加する電圧を調整することによって、第1移相回路102を通過する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。また第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12で反射する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。これによって、前述したように第1移相回路102および第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって整合回路101のインピーダンスの調整を容易に行なうことができ、電子部品2から出力される電力が整合回路101によって反射されることを防ぐことができる。
【0209】
図10は、本発明のさらに他の実施の形態の整合回路121の第1移相回路122を示す斜視図である。本実施の形態の整合回路121では、第1移相回路および第2移相回路のうちの少なくともいずれか一方は、印加電界に応じて誘電率が変化する変化部を含み、電磁波が伝播する誘電体線路と、誘電体線路を挟持する一対の平板導電体部とを含んで構成される。本実施の形態では、第1移相回路122が、非放射性誘電体線路(NRDガイド)によって構成される。移相回路は、非放射性誘電体線路のほか、誘電体導波管、イメージガイド、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路、ストリップ線路等でもよい。
【0210】
一対の平板導体部123a,123bの一方123aは、誘電体基板5の厚み方向Zの一表面上に形成される導体によって実現され、一対の平板導体部123a,123bの他方123bは、裏面電極17によって実現される。一対の平板導体部123a,123bの一方123aは、おもに金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、チタン(Ti)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)およびNi(ニッケル)などの導電性を有する金属によって形成される。一対の平板導体部123a,123bに挟持される誘電体線路124は、誘電体基板5の厚み方向Zに垂直な方向に延びて形成される。誘電体線路124は、誘電体線路124の延びる方向と、誘電体基板5の厚み方向Zとに垂直な側面を、誘電体基板5によって挟持される。
【0211】
本実施の形態において誘電体線路124は、変化部によって形成され、印加電界に応じて誘電率が変化する誘電体によって形成される。また誘電体線路124は、高周波信号を閉じ込めるために、誘電体線路124の延びる方向と、誘電体基板5の厚み方向Zとに垂直な側面に接する物質よりも誘電率の高い物質によって形成される。本実施の形態では、誘電体線路124は、誘電体基板5よりも誘電率の高い物質によって実現され、たとえばBa(1−x)SrxTiO(チタン酸ストロンチウムバリウム、略称BST)、Mg(1−x)CaxTiO、Zn(1−x)SnxTiO、BaO−PbO−Nd−TiO、SrBiTaまたはBi1.5Zn1.0Nb1.5などによって形成される。誘電体線路124は、印加電界が大きくなるに連れて、すなわち印加される電界強度が高くなるに連れて、誘電率が低くなる。
【0212】
誘電体線路124に印加する電圧は、たとえば一対の平板導体部123a,123bの一方123aに印加する電圧によって調整可能である。高周波信号は、誘電体線路124に閉じ込められて、誘電体線路124の延びる方向に伝播する。誘電体線路124を伝播する高周波信号の波長は、誘電体線路124の誘電率に依存し、一対の平板導体部123a,123bの一方123aに印加する電圧に依存する。したがって、第1移相回路122を通過する高周波信号の位相は、一対の平板導体部123a,123bの一方123aに印加する電圧によって調整可能であり、通過する高周波信号の位相を調整可能な第1移相回路122を実現することができる。
【0213】
以上説明した本実施の形態の整合回路121によれば、NRDガイドによって実現される第1移相回路122を用いることによって、一対の平板導体部123a,123bの一方123aに印加する電圧を調整することによって、第1移相回路52を通過する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。また第3電極35に印加する電圧を調整することによって、第2移相回路12を通過する高周波信号の位相を調整することが可能な移相回路を実現することができる。これによって、前述したように第1移相回路122および第2移相回路12に印加する電圧を調整することによって整合回路121のインピーダンスの調整を容易に行なうことができ、電子部品2から出力される電力が整合回路121によって反射されることを防ぐことができる。また第2移相回路12を、第1移相回路122と同様に変化部を含むNRDによって構成すると、第3伝送線路8とともにスタブとして機能し、第2移相回路12に印加する電圧に応じて反射する電磁波の位相を調整可能な移相回路を実現することができる。
【0214】
図11は、本実施のさらに他の実施の形態の整合回路201を示す斜視図である。本実施の形態の整合回路201は、前述の各実施の形態の整合回路1,40,41,51,61,84,101,121の構成とは第1伝送線路6が異なるので、対応する構成については同一の参照符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0215】
第1伝送線路6は、インピーダンス変化部202をさらに含む。このインピーダンス変化部202は、接続体に相当するボンディングワイヤ3の一端が接続される接続部位4と、第1接続端13aに接続される一端部との間に設けられる。さらにインピーダンス変化部202は、接続部位4とはインピーダンスが異なる。
【0216】
インピーダンス変化部202は、第1伝送線路6のうちの遊端部6aからインピーダンス変化部202までのコネクタ部203とは特性インピーダンスが異なる部分である。インピーダンス変化部202とコネクタ部203との特性インピーダンスを異ならせるためには、たとえばコネクタ部203とインピーダンス変化部202との線幅を異ならせたり、インピーダンス変化部202としてスタブを形成したり、伝送線路の延びる方向に第1伝送線路6を2つの部分に分断するギャップを形成したり、インピーダンス変化部202と裏面電極17との間の誘電体基板5の比誘電率を、コネクタ部203と裏面電極17との間の誘電体基板5の比誘電率と異ならせたり、インピーダンス変化部202の誘電体基板5とは反対側の表面部に空気とは異なる比誘電率の部材を配置したりしてもよい。本実施の形態におけるインピーダンス変化部202は、スタブを形成することによって実現される。
【0217】
インピーダンス変化部202を設けることによって、接続部位4から第1移相回路11に接続される一端部までに到る経路において、第1伝送線路6のインピーダンスが変化する。このインピーダンスが変化するインピーダンス変化部202で、電子部品2からボンディングワイヤ3を介して入力される高周波信号の一部が反射され、一部が透過する。インピーダンス変化部202を透過した高周波信号のうちの一部は、前記第2伝送線路の前記第3伝送線路が分岐する分岐部19などで反射されてインピーダンス変化部202に戻ってくる。インピーダンス変化部202で反射された高周波信号と、インピーダンス変化部202を透過した後に反射された高周波信号とは、重ね合わされる。インピーダンス変化部202を透過した後に反射されてインピーダンス変化部202に戻る高周波信号の位相は、第1伝送線路6と、第1移相回路11と、第2伝送線路の分岐部19から第1移相回路11寄りの部分とによって構成される伝送線路の電気長、および第3伝送線路8と第2移相回路12とによってスタブとして機能する伝送線路のインピーダンスの2つのパラメータに依存する。これら2つのパラメータは、第1および第2移相回路11,12に印加する電圧を調整することによって意図した値に設定することができる。これによって、インピーダンス変化部202を透過した後に反射されてインピーダンス変化部202に戻る高周波信号の位相を調整し、重ね合わされた高周波信号を弱めることができ、結果としてボンディングワイヤ3を介して電子部品2から整合回路201に入力される高周波信号の反射係数を小さくすることができる。
【0218】
本実施の形態における第1および第3伝送線路6,8の線路長、インピーダンス変化部202のインピーダンス、ならびに第2伝送線路7の一方7aの線路長は、第1および第2移相回路11,12の移相量が可変な範囲において、次式(2)を満たすように選ばれる。
|Γ|<|TM2| …(2)
【0219】
式(2)においてΓは、ボンディングワイヤ3と、コネクタ部203と、インピーダンス変化部202とによって構成される接続ブロック204に、電子部品2側から入力される電磁波の反射係数を表し、|TM2|は、第1伝送線路6のうちのコネクタ部203およびインピーダンス変化部202を除く残余の部分205に接続ブロック204から入力された電磁波が、第2伝送線路7の第3伝送線路8が分岐する分岐部19まで通過する透過係数の大きさを表す。
【0220】
さらに本実施の形態における第1および第3伝送線路6,8の線路長、インピーダンス変化部202のインピーダンス、ならびに第2伝送線路7の一方7aの線路長は、第1および第2移相回路11,12の移相量が可変な範囲において、ボンディングワイヤ3と整合回路201とによって構成される接続回路206に電子部品2から入力される高周波信号が接続回路206によって反射される反射係数S11が0となるように選ばれる。
【0221】
式(2)を満たすように整合回路201を製造すると、[発明の効果]の項目において前述したように第1および第2移相回路11,12に印加される電圧を調整することによって、ボンディングワイヤ3と整合回路201とによって構成される接続回路206に電子部品2から入力される高周波信号が接続回路206によって反射される反射係数S11を0となるように調整することができる。このように反射係数S11を0に調整することによって、電子部品2を設計した通りの負荷(たとえば50Ω)に接続して使用することができ、電子部品2の設計どおりの特性を得ることができる。さらに、反射係数S11を0に調整することによって、電子部品2から入力された高周波信号が整合回路201を通って出力されるまでの減衰を小さくすることができる。
【0222】
図12は、SパラメータのうちのS11(電子部品2から見た反射係数)を表すグラフであり、図2に示す整合回路1にインピーダンス変化部202を設けた本実施の形態の整合回路201とボンディングワイヤ3とによって構成される接続回路206の電子部品2から見た反射係数S11を表す。図12には、第1移相回路11および第2移相回路12に印加する電圧を変化させた場合の76.5GHzにおけるS11を示している。図3(2)と比較すると、図12の測定データの方が中心に近づいているので、インピーダンス変化部202を設けることによって電子部品2と接続回路206とのインピーダンスの整合がさらにとれ、反射がより低減することが示された。さらに、第1移相回路11および第2移相回路12へ印加する電圧を変化させることでS11が変化することがわかる。これによって、接続回路206を製造するときに整合回路を構成するパターンの寸法(第1〜第3伝送線路の幅や長さ)がばらついたり、電子部品2の実装位置がずれてボンディングワイヤの長さがばらついたりすることによって、製造した接続回路206が設計値から外れた場合でも、第1移相回路11および第2移相回路12に印加する電圧を変化させることによって、調整が可能であることがわかる。
【0223】
図13は、本発明の実施の一形態の送信器160の構成を示す模式図である。送信器160は、前述した図1に示す実施の形態の整合回路1と、高周波発振器161と、伝送線路162と、送信用アンテナ163とを含んで構成される。高周波発振器161は、ガンダイオードを利用したガン発振器、またはインパットダイオードを利用したインパット発振器またはFET(Field Effect Transistor)などのトランジスタを利用したMMIC(Microwave Monolithic Integrated Circuit)発振器などを含んで構成され高周波信号を発生する。伝送線路162は、マイクロストリップ線路またはストリップ線路、コプレーナ線路によって構成される。伝送線路162の高周波信号の伝送方向の第1端部162aは高周波発振器161に接続され、伝送線路162の高周波信号の伝送方向の第2端部162bは送信用アンテナ163に接続される。送信用アンテナ163は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。高周波信号の伝送方向は、電磁波の伝播方向である。第1端部162aは、マイクロストリップ線路またはストリップ線路、コプレーナ線路によって構成されるとしたけれども、高周波発振器161と整合回路1とを電気的に接続するボンディングワイヤ3によって構成されてもよい。
【0224】
整合回路1は、高周波信号が通過するように、伝送線路162に挿入される。さらに具体的に述べると、伝送線路162は、第1伝送線路6および高周波発振器161を電気的に接続する伝送線路と、第2伝送線路7の他方7bおよび送信用アンテナ163を電気的に接続する伝送線路とを含んで構成される。伝送線路162は、マイクロストリップ線路またはストリップ線路、コプレーナ線路によって構成されるとしたけれども、第1伝送線路6および高周波発振器161を電気的に接続する伝送線路は、前述のボンディングワイヤ3によって構成されてもよい。
【0225】
高周波発振器161で発生した高周波信号は、伝送線路162および整合回路1を通過して送信用アンテナ163に与えられ、送信用アンテナ163から電波として放射される。
【0226】
このように伝送線路162には、整合回路1が挿入されるので、たとえば高周波発振器161を接続するためのボンディングワイヤやバンプの形状ばらつきや伝送線路162の配線幅のばらつきなどによって伝送線路162に起因して発生する位相のずれを個々に調整して整合をとることができ、安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ送信器160を実現することができる。
【0227】
送信器160では、整合回路1を用いているが、前述した各実施の形態の整合回路のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。また送信器160において、前記伝送線路162は、マイクロストリップ線路およびストリップ線路の他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現されてもよい。
【0228】
図14は、本発明の実施の一形態の受信器170の構成を示す模式図である。図13に示す前述した実施の形態の送信器160と同様の構成には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0229】
受信器170は、前述した実施の形態の整合回路1と、高周波検波器171と、伝送線路162と、受信用アンテナ173とを含んで構成される。高周波検波器171は、たとえば、ショットキーバリアダイオード検波器、ビデオ検波器またはミキサMMICなどによって実現される。
【0230】
伝送線路162の高周波信号の伝送方向の第1端部162aは、高周波検波器171に接続され、伝送線路162の高周波信号の伝送方向の第2端部162bは、受信用アンテナ173に接続される。受信用アンテナ173は、パッチアンテナなどの平面アンテナまたはホーンアンテナやロッドアンテナなどによって実現される。
【0231】
整合回路1は、高周波信号が整合回路1を通過するように、伝送線路162に挿入される。
【0232】
受信用アンテナ173によって外部から到来する電波を捕捉すると、受信用アンテナ173は電波に基づく高周波信号を伝送線路162に与え、整合回路1を通過して、高周波検波器171に受信した高周波信号が与えられる。高周波検波器171は、高周波信号を検波して、高周波信号に含まれる情報を検出する。
【0233】
受信器170では、受信用アンテナ173によって捕捉した高周波信号は、伝送線路162に伝送されて高周波検波器171によって検波される。
【0234】
このように伝送線路162には、整合回路1が挿入されるので、たとえば高周波検波器171を接続するためのボンディングワイヤやバンプの形状ばらつきや伝送線路162の配線幅のばらつきなどによって伝送線路162に起因して発生する位相のずれを個々に調整して、整合をとることができ、安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ受信器170を実現することができる。
【0235】
受信器170では、整合回路1を用いているが、前記整合回路1に変えて、前述した実施の形態の整合回路1のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。また受信器170において、前記伝送線路162は、マイクロストリップ線路およびストリップ線路の他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現されてもよい。
【0236】
図15は、本発明の実施の一形態の送受信器180を備えるレーダ装置190の構成を示す模式図である。レーダ装置190において、図13および図14に示す前述した実施の形態の送信器160および受信器170と同様の構成には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する場合がある。レーダ装置190は、送受信器180と、距離検出器191を含んで構成される。
【0237】
送受信器180は、前述した実施の形態の整合回路1と、高周波発振器161と、第4〜第8伝送線路181,182,183,184,185と、分岐器186と、分波器187と、送受信用アンテナ188と、ミキサ189とを含んで構成される。送受信用アンテナ188は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。第4〜第8伝送線路181,182,183,184,185は、前述した伝送線路162と同様の構成を有する。
【0238】
第4伝送線路181の高周波信号の伝送方向の第1端部181aは、高周波発振器161に接続され、第4伝送線路181の高周波信号の伝送方向の第2端部181bは、分岐器186に接続される。整合回路1は、高周波信号が整合回路1を通過するように、第4伝送線路181に挿入される。
【0239】
分岐器(切替器)186は、第1、第2および第3端子186a,186b,186cを有し、第1端子186aに与えられる高周波信号を、第2端子186bおよび第3端子186cに選択的に出力する。分岐器186は、たとえば高周波スイッチ素子によって実現される。分岐器186には、図示しない制御部から制御信号が与えられ、制御信号に基づいて第1端子186aおよび第2端子186b、または第1端子186aおよび第3端子186cを選択的に接続する。レーダ装置190は、パルスレーダによって実現される。前記制御部は、第1端子186aおよび第2端子186bを接続して、パルス状の高周波信号を第2端子186bから出力させた後、第1端子186aおよび第3端子186cを接続して、高周波信号を第3端子186cから出力させる。第2端子186bには、第5伝送線路182の高周波信号の伝送方向の第1端部182aが接続される。前記第3端子186cには、第7伝送線路184の高周波信号の伝送方向の第1端部184aが接続される。レーダ装置190は発振器に電圧制御型発振器を用い、FM−CWレーダによって実現してもよい。
【0240】
分波器187は、第4、第5および第6端子187a,187b,187cを有し、第4端子187aに与えられる高周波信号を第5端子187bに出力し、第5端子187bに与えられる高周波信号を第6端子187cに出力する。第5伝送線路182の高周波信号の伝送方向の第2端部182bは、前記第4端子187aに接続される。前記第5端子187bには、第6伝送線路183の高周波信号の伝送方向の第1端部183aが接続される。第6伝送線路183の高周波信号の伝送方向の第2端部183bは、送受信用アンテナ188に接続される。
【0241】
前記第6端子187cには、第8伝送線路185の高周波信号の伝送方向の第1端部185aが接続される。第7伝送線路184の高周波信号の伝送方向の第2端部184bと、第8伝送線路185の高周波信号の伝送方向の第2端部185bとは、ミキサ189に接続される。分波器187は、ハイブリッド回路によって実現される。ハイブリッド回路は、方向性結合器、ブランチライン、マジックTまたはラットレースなどによって実現される。
【0242】
高周波発振器161で発生した高周波信号は、第4伝送線路181および整合回路1を通過して、分岐器186、第5伝送線路182、分波器187ならびに第6伝送線路183を介して送受信用アンテナ188に与えられ、送受信用アンテナ188から電波として放射される。また、高周波発振器161で発生した高周波信号は、第4伝送線路181および整合回路1を通過して、分岐器186ならびに第7伝送線路184を介してミキサ189にローカル信号として与えられる。
【0243】
送受信用アンテナ188によって外部から到来する電波を受信すると、送受信用アンテナ188は電波に基づく高周波信号を第6伝送線路183に与え、分波器187、第8伝送線路185を介してミキサ189に与えられる。
【0244】
ミキサ189は、第7および第8伝送線路184,185から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力する。ミキサ189から出力される中間周波信号は、距離検出器191に与えられる。
【0245】
距離検出器191は、前述した高周波検波器171を含んで構成され、送受信器180から放射され、測定対象物によって反射された電波(エコー)を受信して得られる前記中間周波信号に基づいて、測定対象物までの距離を算出する。距離検出器191は、たとえばマイクロコンピュータによって実現される。
【0246】
送受信器180では、高周波信号が整合回路1を通過するように、前記第4伝送線路181に、整合回路1が挿入されることによって、たとえば配線幅のばらつきなどによって伝送線路162に起因して不所望に変化する高周波信号の位相を調整して、たとえば安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ送受信器180を実現することができ、また、たとえば安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ送受信器180を実現することができ、また、たとえばミキサ189によって生成される中間周波数信号の信頼性を向上させることができる。
【0247】
レーダ装置190では、前記送受信器180からの中間周波信号に基づいて、距離検出器が送受信器180から探知対象物までの距離、たとえば送受信用アンテナ188と探知対象物までの距離を検出するので、検知対象物までの距離を正確に検出することができる。
【0248】
前記分岐器186は、方向性結合器などのハイブリッド回路やパワーディバイダによって実現されてもよく、この場合第1端子187aに与えられる高周波信号は、第2端子186bおよび第3端子186cに分岐して出力される。この場合には、前述した構成と比較して、送受信用アンテナ188から出力される電波の電力が低くなるが、分岐器186を制御する必要がないので装置の制御が簡単になる。
【0249】
本実施の形態では、第4伝送線路181に整合回路1が挿入されるが、本発明のさらに他の実施では、整合回路1は、第4〜第8伝送線路181〜185の少なくともいずれか1つに、高周波信号が整合回路1を通過するように挿入されてもよい。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。
【0250】
また送受信器180では、整合回路1を用いているが、前述した各実施の形態の整合回路のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。
【0251】
また本発明の実施のさらに他の形態では、前記分波器187は、サーキュレータや高周波スイッチ素子によって実現されてもよく、この様な構成であっても、同様の効果を達成することができる。
【0252】
図16は、本発明の他の実施の形態の送受信器195を備えるレーダ装置196の構成を示す模式図である。レーダ装置196において、図13および図14に示す前述した実施の形態の送信器160および受信器170と同様の構成には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する場合がある。レーダ装置196は、送受信器195と、距離検出器191とを含んで構成される。
【0253】
送受信器195は、前述した実施の形態の整合回路1と、高周波発振器161と、第4〜第7伝送線路181,182,183,184と、分岐器186と、送信用アンテナ163と、受信用アンテナ173と、ミキサ189とを含んで構成される。送信用アンテナ163および受信用アンテナ173は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。第4〜第7伝送線路181,182,183,184は、前述した伝送線路162と同様の構成を有する。
【0254】
第4伝送線路181の高周波信号の伝送方向の第1端部181aは、高周波発振器161に接続され、第4伝送線路181の高周波信号の伝送方向の第2端部181bは、分岐器186に接続される。整合回路1は、高周波信号が整合回路1を通過するように、第4伝送線路181に挿入される。
【0255】
分岐器(切替器)186は、第1、第2および第3端子186a,186b,186cを有し、第1端子186aに与えられる高周波信号を、第2端子186bおよび第3端子186cに選択的に出力する。分岐器186は、たとえば高周波スイッチ素子によって実現される。分岐器186には、図示しない制御部から制御信号が与えられ、制御信号に基づいて第1端子186aおよび第2端子186b、または第1端子186aおよび第3端子186cを選択的に接続する。レーダ装置196は、パルスレーダによって実現される。前記制御部は、第1端子186aおよび第2端子186bを接続して、パルス状の高周波信号を第2端子186bから出力させた後、第1端子186aおよび第3端子186cを接続して、高周波信号を第3端子186cから出力させる。第2端子186bには、第5伝送線路182の高周波信号の伝送方向の第1端部182aが接続される。前記第3端子186cには、第7伝送線路184の高周波信号の伝送方向の第1端部184aが接続される。レーダ装置196は発振器に電圧制御型発振器を用い、FM−CWレーダによって実現してもよい。
【0256】
第5伝送線路182の高周波信号の伝送方向の第2端部182bは、送信用アンテナ163に接続される。
【0257】
受信用アンテナ173と、ミキサ189とは、第6伝送線路183によって接続される。また第7伝送線路184の高周波信号の伝送方向の第2端部184bは、ミキサ189に接続される。
【0258】
高周波発振器161で発生した高周波信号は、第4伝送線路181および整合回路1を通過して、分岐器186、第5伝送線路182を介して送信用アンテナ163に与えられ、送信用アンテナ163から電波として放射される。また、高周波発振器161で発生した高周波信号は、第4伝送線路181および整合回路1を通過して、分岐器186ならびに第7伝送線路184を介してミキサ189にローカル信号として与えられる。
【0259】
受信用アンテナ173によって外部から到来する電波を受信すると、受信用アンテナ173は電波に基づく高周波信号を第6伝送線路183を介してミキサ189に与える。
【0260】
ミキサ189は、第6および第7伝送線路183,184から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力する。ミキサ189から出力される中間周波信号は、距離検
出器191に与えられる。
【0261】
距離検出器191は、前述した高周波検波器171を含んで構成され、送受信器195から放射され、測定対象物によって反射された電波(エコー)を受信して得られる前記中間周波信号に基づいて、測定対象物までの距離を算出する。距離検出器191は、たとえばマイクロコンピュータによって実現される。
【0262】
送受信器195では、高周波信号が整合回路1を通過するように、前記第4伝送線路181に、整合回路1が挿入されることによって、たとえば配線幅のばらつきなどによって伝送線路162に起因して不所望に変化する高周波信号の位相を調整して、たとえば安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ送受信器195を実現することができ、また、たとえば安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ送受信器195を実現することができ、また、たとえばミキサ189によって生成される中間周波数信号の信頼性を向上させることができる。
【0263】
レーダ装置196では、前記送受信器195からの中間周波信号に基づいて、距離検出器が送受信器195から探知対象物までの距離、たとえば送信用および受信用アンテナ163,173と探知対象物までの距離を検出するので、検知対象物までの距離を正確に検出することができる。
【0264】
前記分岐器186は、方向性結合器などのハイブリッド回路やパワーディバイダによって実現されてもよく、この場合第5伝送線路182に与えられる高周波信号は、第2端子186bおよび第3端子186cに分岐して出力される。この場合には、前述した構成と比較して、送信用アンテナ163から出力される電波の電力が低くなるが、分岐器186を制御する必要がないので装置の制御が簡単になる。
【0265】
本実施の形態では、第4伝送線路181に整合回路1が挿入されるが、本発明のさらに他の実施では、整合回路1は、第4〜第7伝送線路181〜184の少なくともいずれか1つに、高周波信号が整合回路1を通過するように挿入されてもよい。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。
【0266】
また送受信器195では、整合回路1を用いているが、前述した各実施の形態の整合回路のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0267】
【図1】本発明の実施の一形態の整合回路1を示す斜視図である。
【図2】整合回路1を示す平面図である。
【図3】SパラメータのうちのS11を表すグラフである。
【図4】本発明の他の実施の形態の整合回路40を示す平面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施の形態の整合回路41を示す平面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態の整合回路51を示す平面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態の整合回路61を示す平面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態の整合回路84を示す平面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態の整合回路101を示す斜視図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態の整合回路121の第1移相回路122を示す斜視図である。
【図11】本実施のさらに他の実施の形態の整合回路201を示す斜視図である。
【図12】SパラメータのうちのS11を表すグラフである。
【図13】本発明の実施の一形態の送信器160の構成を示す模式図である。
【図14】本発明の実施の一形態の受信器170の構成を示す模式図である。
【図15】本発明の実施の一形態の送受信器180を備えるレーダ装置190の構成を示す模式図である。
【図16】本発明の他の実施の形態の送受信器195を備えるレーダ装置196の構成を示す模式図である。
【図17】接続ブロックの反射係数、透過係数を説明するための図である。
【図18】スミス図である。
【符号の説明】
【0268】
1,40,41,51,61,84,101,121,201 整合回路
2 電子部品
3 ボンディングワイヤ
5 誘電体基板
6 第1伝送線路
7 第2伝送線路
8 第3伝送線路
11,52,62,85,102,122 第1移相回路
12 第2移相回路
13a 一方の第1接続端
13b 他方の第1接続端
14,42 部品配置台
15a 一方の第2接続端
15b 他方の第2接続端
16,43 部品配置部
17 裏面電極
18 接続部
19 分岐部
21,53,63,86,103 第1入出力端子
22,54,64,87,104 第2入出力端子
23,55,65,88,105 第3入出力端子
24,56,66,106 第4入出力端子
25 第5入出力端子
26 ラットレース
27 第1延在部
27a 伝送線路
27b 第1可変容量素子
28 第2延在部
28a 伝送線路
28b 第2可変容量素子
31 リング状伝送線路
32 第3可変容量素子
33 第1電極
34 第2電極
35 第3電極
36 基準電極
39,93 直流阻止用コンデンサ
44 突出部
45 第1接続部
46 入出力端子
48 第2接続部
49 突出部分
57 ブランチライン
58 四角状伝送線路
67 方向性結合器
81 第2基準電極
89 サーキュレータ
91 延在部
91a 伝送線路
91b 第1可変容量素子
92 第2可変容量素子
107 マジックT
123a 一対の平板導体部の一方
123b 一対の平板導体部の他方
160 送信器
161 高周波発振器
162 伝送線路
170 受信器
171 高周波検波器
173 受信用アンテナ
180,195 送受信器
181 第4伝送線路
182 第5伝送線路
183 第6伝送線路
184 第7伝送線路
185 第8伝送線路
186 分岐器
186a 第1端子
186b 第2端子
186c 第3端子
187 分波器
187a 第4端子
187b 第5端子
187c 第6端子
188 送信用アンテナ
189 ミキサ
190,196 レーダ装置
191 距離検出器
202 インピーダンス変化部
203 コネクタ部
204 接続ブロック
205 残余の部分
206 接続回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1伝送線路と、
第2伝送線路と、
2つの第1接続端を有し、前記第1伝送線路の一端部に2つの前記第1接続端のうちの一方の第1接続端が接続され、前記第2伝送線路の一端部に他方の第1接続端が接続され、電圧を印加することによって通過する電磁波の位相を調整可能な第1移相回路と、
前記第2伝送線路から分岐して延在する第3伝送線路と、
少なくとも1つの第2接続端を有し、前記第3伝送線路の一端部に前記第2接続端が接続され、電圧を印加することによって反射する電磁波の位相を調整可能な第2移相回路とを含むことを特徴とする整合回路。
【請求項2】
前記第1〜第3伝送線路ならびに前記第1および第2移相回路が設けられ、電気絶縁性を有する基板と、
前記基板の厚み方向の一表面上に形成され、導電性を有し、電子部品が配置される部品配置部と、
前記一表面上において、前記部品配置部から前記第1伝送線路が設けられる領域に向けて延在して形成され、導電性を有する突出部と、
前記基板の厚み方向の他表面上に形成される裏面電極と、
前記突出部と前記裏面電極とを電気的に接続する接続部とをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の整合回路。
【請求項3】
前記第1伝送線路に前記電子部品が電気的に接続され、前記電子部品から電磁波が入力されるとき、
前記電子部品から前記第1伝送線路に入力される電磁波が、前記電子部品と前記第1伝送線路とを接続する接続体で反射される反射係数をΓとし、
前記第1伝送線路に入力された電磁波が、前記第2伝送線路の前記第3伝送線路が分岐する分岐部まで通過する透過係数の大きさを│TM1│とし、
前記第1伝送線路に入力された電磁波が、前記分岐部まで進むときに変化する位相をθとし、
前記第2伝送線路に入力された電磁波が、前記分岐部で反射される反射係数をΓとすると、
Γが、前記第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、
【数1】

式(1)を満たすように、前記第1および第3伝送線路の線路長ならびに前記第2伝送線路の前記第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の整合回路。
【請求項4】
前記第1伝送線路は、この第1伝送線路と前記電子部品とを接続する前記接続体の一端が接続される接続部位と、前記第1接続端に接続される前記一端部との間に、前記接続部位とはインピーダンスの異なるインピーダンス変化部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項5】
前記接続体を介して前記電子部品から電磁波が入力されるとき、
前記接続体と、前記第1伝送線路のうちの遊端部から前記インピーダンス変化部までのコネクタ部と、インピーダンス変化部とによって構成される接続ブロックに、電子部品側から入力される電磁波の反射係数をΓとし、
前記第1伝送線路のうちのコネクタ部およびインピーダンス変化部を除く残余の部分に前記接続ブロックから入力された電磁波が、前記第2伝送線路の前記第3伝送線路が分岐する分岐部まで通過する透過係数の大きさを|TM2|とすると、
Γが、前記第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、
|Γ|<|TM2| …(2)
式(2)を満たすように前記第1および第3伝送線路の線路長、インピーダンス変化部のインピーダンス、ならびに前記第2伝送線路の前記第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれることを特徴とする請求項4記載の整合回路。
【請求項6】
前記第1および第2移相回路の移相量が可変な範囲において、前記接続体と前記整合回路とによって構成される接続回路に電子部品から入力される電磁波が前記接続回路によって反射される反射係数が0となるように、前記第1および第3伝送線路の線路長、インピーダンス変化部のインピーダンス、ならびに前記第2伝送線路の前記第1移相回路と分岐部との間の線路長が選ばれることを特徴とする請求項5記載の整合回路。
【請求項7】
前記第2伝送線路のうち、前記第3伝送線路が分岐する分岐部よりも前記第1移相回路から離間する部分、および前記第1伝送線路のうちの少なくともいずれか一方は、直流阻止用コンデンサを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項8】
前記第1移相回路は、
前記第1接続端から入力される電磁波の波長をλとしたときに、一周の長さが3(2n−1)λ/2に設定されたリング状伝送線路、および前記リング状伝送線路において周方向の一方向きに順に設けられる第1〜第4入出力端子を有し、前記第1および第2入出
力端子の間の線路長、前記第2および第3入出力端子の間の線路長、前記第3および第4入出力端子の間の線路長が、(2n−1)λ/4にそれぞれ選ばれ、前記第4および第1入出力端子の間の線路長が、3(2n−1)λ/4に選ばれるラットレースと(nは自然数を表す)、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第4入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第4入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第3入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、前記第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項9】
前記第1移相回路は、
前記第1接続端から入力される電磁波の波長をλとしたときに、一周の長さが3(2n−1)λ/2に設定されたリング状伝送線路、および前記リング状伝送線路において周方向の一方向きに順に設けられる第1〜第4入出力端子を有し、前記第1および第2入出力端子の間の線路長、前記第2および第3入出力端子の間の線路長、前記第3および第4入出力端子の間の線路長が、(2n−1)λ/4にそれぞれ選ばれ、前記第4および第1入出力端子の間の線路長が、3(2n−1)λ/4に選ばれるラットレースと(nは自然数を表す)、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第4入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第4入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第3入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、前記第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項10】
前記第1移相回路は、
前記リング状伝送線路の前記第4入出力端子から前記一方向に(2n−1)λ/4の線路長となる位置に第5入出力端子と(nは自然数を表す)、
前記第5入出力端子に接続され、前記第1〜第3可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第4電極とをさらに含むことを特徴とする請求項5または9記載の整合回路。
【請求項11】
前記第1移相回路は、
第1〜第4入出力端子を有し、第1入出力端子から入力された電磁波が第2および第4入出力端子から分配されて出力されるマジックTと、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第4入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第4入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第3入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、前記第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項12】
前記第4入出力端子と前記第2可変容量素子との間の線路長が、前記第2入出力端子と前記第1可変容量素子との間の線路長と、(2n−1)λ/4の長さ分、異なるように選ばれることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1つに記載の整合回路(nは自然数を表す)。
【請求項13】
前記第1移相回路は、
前記第1接続端から入力される電磁波の波長をλとしたときに、一周の長さが(2n−1)λに設定された四角状伝送線路、および前記四角状伝送線路の各頂点において周方向の一方向きに順に設けられる第1〜第4入出力端子を有し、相互に隣接する各出力端子間の線路長が、(2n−1)λ/4にそれぞれ選ばれるブランチラインと(nは自然数を表す)、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第3入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第3入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第4入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、前記第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項14】
前記第1移相回路は、
第1〜第4入出力端子を有し、第1入出力端子から入力された電磁波が第2および第3入出力端子から分配されて出力される方向性結合器と、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第1延在部と、
前記第3入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子を前記第3入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する第2延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第4入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第3可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
前記第3可変容量素子に接続され、前記第3可変容量素子に電圧を印加するための第3電極とをさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項15】
前記第2入出力端子と前記第1可変容量素子との間の線路長は、前記第3入出力端子と前記第2可変容量素子との間の線路長と略等しい長さ、またはnλ/2の長さ分、異なるように選ばれることを特徴とする請求項13または14記載の整合回路(nは自然数を表す)。
【請求項16】
前記第1伝送線路から分岐して延在し、前記第1〜第3可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第4電極をさらに含むことを特徴とする請求項13〜15のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項17】
前記第1移相回路は、
第1〜第3入出力端子を有し、前記第1入出力端子から入力された電磁波が前記第2入出力端子から出力され、前記第2入出力端子から入力された電磁波が前記第3入出力端子から出力されるサーキュレータと、
前記第2入出力端子から延在し、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第1可変容量素子を前記第2入出力端子が接続される端部とは反対側の端部に有する延在部とを含んで構成され、
前記第1伝送線路は、前記第1入出力端子に接続され、
前記第2伝送線路は、前記第3入出力端子に接続され、
前記第2移相回路は、印加する電圧に応じて電気容量が変化する第2可変容量素子から成り、
前記第1可変容量素子に接続され、第1可変容量素子に電圧を印加するための第1電極と、
前記第2可変容量素子に接続され、前記第2可変容量素子に電圧を印加するための第2電極と、
延在部から分岐して延在し、前記第1可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第3電極と、
前記第2伝送線路のうち、前記第3伝送線路が分岐する分岐部よりも前記第1移相回路から離間する部分から延在し、前記第2可変容量素子に印加される電圧を定める基準電位が与えられるための第4電極とをさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項18】
延在部のうち、前記第3電極が分岐する分岐部と前記サーキュレータとの間と、
前記第2伝送線路のうち、前記第3伝送線路が分岐する分岐部と前記サーキュレータとの間と、
前記第2伝送線路のうち、前記第4電極が分岐する分岐部よりも前記第1移相回路から離間する部分と、に直流阻止用コンデンサをさらに含むことを特徴とする請求項17記載の整合回路。
【請求項19】
前記第1移相回路および前記第2移相回路のうちの少なくともいずれか一方は、
印加電界に応じて誘電率が変化する変化部を含み、電磁波が伝播する誘電体線路と、
前記誘電体線路を挟持する一対の平板導電体部とを含んで構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の整合回路。
【請求項20】
高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、前記高周波発振器からの高周波信号を伝送する伝送線路と、
前記伝送線路に挿入される請求項1〜19のいずれか1つに記載の整合回路と、
前記伝送線路に接続され、高周波信号を放射するアンテナとを含むことを特徴とする送信器。
【請求項21】
高周波信号を捕捉するアンテナと、
前記アンテナに接続され、前記アンテナによって捕捉される高周波信号を伝送する伝送線路と、
前記伝送線路に挿入される請求項1〜19のいずれか1つに記載の整合回路と、
前記伝送線路に接続され、前記伝送線路に伝送される高周波信号を検波する高周波検波器とを含むことを特徴とする受信器。
【請求項22】
高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、高周波信号を伝送する第4伝送線路と、
第1、第2および第3端子を有し、前記第1端子が前記第4伝送線路に接続され、前記第1端子に与えられる高周波信号を前記第2端子または前記第3端子に選択的に出力する分岐器と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子から与えられる高周波信号を伝送する第5伝送線路と、
第4、第5および第6端子を有し、前記第5伝送線路を介して前記第4端子に与えられる高周波信号を前記第5端子に出力し、かつ前記第5端子に与えられる高周波信号を前記第6端子に出力する分波器と、
前記第5端子に接続され、前記第5端子から出力される高周波信号を伝送し、前記第5端子に高周波信号を伝送する第6伝送線路と、
前記第6伝送線路に接続され、高周波信号を放射および捕捉するアンテナと、
前記第3端子に接続され、前記第3端子から出力される高周波信号を伝送する第7伝送線路と、
前記第6端子に接続され、前記第6端子から出力される高周波信号を伝送する第8伝送線路と、
前記第7および第8伝送線路に接続され、前記第7および第8伝送線路から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力するミキサと、
前記第4〜第8伝送線路のうち少なくともいずれか1つに挿入される請求項1〜19のいずれか1つに記載の整合回路とを含むことを特徴とする送受信器。
【請求項23】
高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、高周波信号を伝送する第4伝送線路と、
第1、第2および第3端子を有し、前記第1端子が前記第4伝送線路に接続され、前記第1端子に与えられる高周波信号を前記第2端子または前記第3端子に選択的に出力する分岐器と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子から与えられる高周波信号を伝送する第5伝送線路と、
前記第5伝送線路に接続され、高周波信号を放射する送信用アンテナと、
高周波信号を捕捉する受信用アンテナと、
前記受信用アンテナに接続され、捕捉した高周波信号を伝送する第6伝送線路と、
前記第3端子に接続され、前記第3端子から出力される高周波信号を伝送する第7伝送線路と、
前記第6および第7伝送線路に接続され、前記第6および第7伝送線路から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力するミキサと、
前記第4〜第7伝送線路のうち少なくともいずれか1つに挿入される請求項1〜19のいずれか1つに記載の整合回路とを含むことを特徴とする送受信器。
【請求項24】
請求項22または23に記載の送受信器と、
前記送受信器からの中間周波信号に基づいて、前記送受信器から探知対象物までの距離を検出する距離検出器とを含むことを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−160785(P2008−160785A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50339(P2007−50339)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】