説明

整形賦形積層シートの製造方法

【課題】製造時に出る端材を再利用して、着色が十分に抑制された整形賦形積層シートを製造することのできる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物をシート状に成形してなる基層の少なくとも片面に、スチレン系樹脂をシート状に成形してなる表面層を積層して積層シートを得る積層工程と、前記積層シートの表面層に成形型の凹凸形状の成形面を押し当てて凹凸形状を賦形した賦形積層シートを得る賦形工程と、前記賦形積層シートの周縁部の少なくとも一部を端材として切り離す整形工程とを包含し、前記積層工程の積層シートにおける表面層の厚さを基層の厚さの10分の1以下に設定し、前記整形工程で得られた端材と該端材に対して10質量倍以上のポリカーボネート樹脂とを混合したものを、前記積層工程での基層用の樹脂組成物として再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形賦形積層シートの製造方法に関し、詳しくはポリカーボネート樹脂基層にスチレン系樹脂表面層が積層され、該表面層に凹凸形状が賦形され、縁部が平面視で所定形状に整形された整形賦形積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性に優れていることから、これをシート状に成形したポリカーボネート樹脂シートは、例えば液晶表示装置を構成する光拡散シート等として有用である(特許文献1参照)。
【0003】
かかるポリカーボネート樹脂シートとして、表面の傷付きを防ぐために、ポリカーボネート樹脂からなる基層の表面にポリスチレン樹脂表面層が積層された構成とし、光源からの光を分散させて均一な照明を得るために、その表面にプリズム等の凹凸形状を賦形した賦形積層シートが提案されており、特許文献2には、その製造方法として、ポリカーボネート樹脂をシート状に成形してポリカーボネート樹脂基層とすると共に、ポリスチレン樹脂をシート状に成形してポリスチレン樹脂表面層とし、該ポリスチレン樹脂表面層を前記ポリカーボネート樹脂基層に積層して積層シートを得た後、該積層シートのポリスチレン樹脂表面層に、成形型の凹凸形状の成形面を押し当てることにより、ポリスチレン樹脂表面層に凹凸形状を賦形する方法が開示されている。得られた賦形積層シートは、その縁部の形状を整えるために裁断されて、所定寸法に整えられた整形賦形積層シートとして用いられる。
【0004】
前記縁部の裁断により端材を生じる。この端材は、ポリカーボネート樹脂基層とポリスチレン樹脂表面層とが積層されたものであるから、再利用に供するべく両層を分別せずに加熱溶融して再使用しても着色を生じやすいという問題があるし、また両層を分別回収することは困難であったことから、通常、前記端材は焼却等により処分されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−29091号公報
【特許文献2】特開2009−103884号公報(実施例1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記縁部の裁断により生じた端材は、省資源の観点から、整形賦形積層シートの製造原料として再利用することが望ましい。
【0007】
本発明は、製造時に出る端材を再利用して、着色が十分に抑制された整形賦形積層シートを製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、賦形積層シートの縁部の裁断により得られた端材を再利用して着色を招くことなく整形賦形積層シートを製造し得る方法を開発するべく鋭意検討した結果、積層の際にスチレン系樹脂表面層の厚さをポリカーボネート樹脂基層の厚さの10分の1以下に設定し、裁断等により得られた端材を該端材の10質量倍以上のポリカーボネート樹脂と混合して該混合物をポリカーボネート樹脂基層の材料として再利用することにより、着色が十分に抑制された整形賦形積層シートを製造できることを見出すに至り、本発明を完成した。
【0009】
即ち、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]ポリカーボネート樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物をシート状に成形してなる基層の少なくとも片面に、スチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂をシート状に成形してなる表面層を積層して積層シートを得る積層工程と、
前記積層シートの表面層に、成形型の凹凸形状の成形面を押し当てることにより、該積層シートの少なくとも表面層に凹凸形状を賦形して賦形積層シートを得る賦形工程と、
前記賦形積層シートの周縁部の少なくとも一部を端材として切り離すことによって、該賦形積層シートの周縁部を整形して、前記基層の少なくとも片面に前記表面層が積層され、該表面層に凹凸形状が形成され、周縁部が整形された整形賦形積層シートを得る整形工程と、を含み、
前記積層工程において、前記積層シートにおける表面層の厚さを基層の厚さの10分の1以下に設定し、
前記整形工程で得られた端材と該端材に対して10質量倍以上のポリカーボネート樹脂とを混合して得た混合物を、前記積層工程での基層用の熱可塑性樹脂組成物として再利用することを特徴とする整形賦形積層シートの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
[1]の発明では、製造工程で出る端材を再利用して、着色が十分に抑制された整形賦形積層シート(光拡散シート等)を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法で得られる整形賦形積層シートの一実施形態を示す断面図である(積層シート、賦形積層シートの断面図もこれと同一である)。
【図2】本発明の製造方法の一例の概略を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る整形賦形積層シートの製造方法について図1、2を参照しつつ説明する。なお、以下の説明及び図2において「ステップ」を「S」と略記する。
【0014】
まず、ポリカーボネート樹脂を主成分とする(を50質量%以上含有する)熱可塑性樹脂組成物からなる基層(8)の少なくとも片面に、スチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂を含有してなる表面層(9)を積層して積層シート(3)を得る(積層工程;S1)。本実施形態では、基層(8)の両面に表面層(9)(9)を積層して積層シート(3)を得る(図1参照)。ここで、前記基層(8)として好ましくは、熱可塑性樹脂を溶融成形して得られ、溶融させる熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂のみを用いるか、ポリカーボネート樹脂100質量部およびスチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂0.1〜10質量部を用いて、得られた層である。また、前記表面層(9)として好ましくは、スチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂からなる層である。
【0015】
次に、得られた積層シート(3)の表面層(9)に、成形型の凹凸形状の成形面を押し当てることにより、該積層シート(3)の少なくとも表面層(9)に凹凸形状を賦形して賦形積層シートを得る(賦形工程;S2)。例えば、得られた積層シート(3)の表面層(9)に転写ロールが圧接するように積層シート(3)を押圧ロールと転写ロールの間に挟み込んで挟圧することによって、該積層シート(3)の少なくとも表面層(9)にレンズ形状等の凹凸形状を賦形する。前記レンズ形状としては、特に限定されるものではないが、例えば断面形状として、略三角形(プリズム形状)、略半円形、略半楕円形、略放物線形状、略双曲線形状、略正弦曲線形状などが挙げられる。
【0016】
次に、得られた賦形積層シート(3)の周縁部の少なくとも一部を裁断等により切り離すことによって、該賦形積層シート(3)の周縁部を整形して、所定の大きさ、形状の製品(整形賦形積層シート)を得ると共に、裁断等により切り離された部分を端材として分別する(整形工程;S3)。
【0017】
こうして得られた整形賦形積層シート(3)は、前記基層(8)の少なくとも片面に前記表面層(9)が積層され、該表面層(9)にレンズ形状等の凹凸形状が形成され、周縁部が所定形状に整形されたシートである。この整形賦形積層シート(3)は、基層(8)が、ポリカーボネート樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物からなる構成であるから、耐衝撃性に優れており、また基層(8)の少なくとも片面にスチレン系樹脂を含有してなる表面層(9)が積層されているから、耐傷性にも優れている。
【0018】
次に、前記端材をポリカーボネート樹脂に混合することによって、基層用の熱可塑性樹脂組成物を調製する(基層用樹脂調製工程;S4)。この時、前記端材と、該端材に対して10質量倍以上のポリカーボネート樹脂とを混合して、基層用の熱可塑性樹脂組成物を調製する。
【0019】
次いで、前記基層用樹脂調製工程で得られた基層用の熱可塑性樹脂組成物からなる基層(8)の片面又は両面に、スチレン系樹脂を含有してなる表面層(9)を積層して積層シート(3)を得る(積層工程;S5)。この積層工程(S5)において、積層シート(3)における表面層(9)の厚さが基層(8)の厚さの10分の1以下になるように設定する。
【0020】
次に、前記積層工程(S5)を経て得られた積層シート(3)の表面層(9)に、成形型の凹凸形状の成形面を押し当てることにより、該積層シート(3)の少なくとも表面層(9)に凹凸形状を賦形して賦形積層シートを得る(賦形工程;S6)。例えば、得られた積層シート(3)の表面層(9)に転写ロールが圧接するように積層シート(3)を押圧ロールと転写ロールの間に挟み込んで挟圧することによって、該積層シート(3)の少なくとも表面層(9)にレンズ形状等の凹凸形状を賦形する。前記レンズ形状としては、特に限定されるものではないが、例えば断面形状として、略三角形(プリズム形状)、略半円形、略半楕円形、略放物線形状、略双曲線形状、略正弦曲線形状等が挙げられる。
【0021】
次に、前記賦形工程(S6)を経て得られた賦形積層シート(3)の周縁部の少なくとも一部を裁断等により切り離すことによって、該賦形積層シート(3)の周縁部を整形して、所定の大きさ、形状の製品(整形賦形積層シート)を得ると共に、裁断等により切り離された部分を端材として分別する(整形工程;S7)。
【0022】
こうして得られた整形賦形積層シート(3)は、前記基層(8)の少なくとも片面に前記表面層(9)が積層され、該表面層(9)にレンズ形状等の凹凸形状が形成され、周縁部が所定形状に整形されたシートである。この整形賦形積層シート(3)は、基層(8)が、ポリカーボネート樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物からなる構成であるから、耐衝撃性に優れており、また基層(8)の少なくとも片面にスチレン系樹脂を含有してなる表面層(9)が積層されているから、耐傷性にも優れている。更に、前記ポリカーボネート樹脂は黄色等の着色が少ないし、スチレン系樹脂も黄色等の着色が少ないし、これらの混合含有による着色も少ないから、端材を基層(8)の構成材料の一部として再利用するにもかかわらず、黄色等の着色が十分に抑制された整形賦形積層シート(3)を製造できる。
【0023】
このようにS4、S5、S6、S7を経て得られた上記整形賦形積層シート(3)は、端材を1回再利用に供して製造されたものであるが(図2参照)、本発明の製造方法では、更に以下の工程を実施して整形賦形積層シートの製造を行うようにしても良い。
【0024】
即ち、S7の整形工程で出た前記端材をポリカーボネート樹脂に混合することによって、基層用の熱可塑性樹脂組成物を調製する(基層用樹脂調製工程;S8)。この時、前記端材と、該端材に対して10質量倍以上のポリカーボネート樹脂とを混合して、基層用の熱可塑性樹脂組成物を調製する。
【0025】
次いで、前記基層用樹脂調製工程(S8)で得られた基層用の熱可塑性樹脂組成物からなる基層(8)の片面又は両面に、スチレン系樹脂を含有してなる表面層(9)を積層して積層シート(3)を得る(積層工程;S9)。この積層工程(S9)において、積層シート(3)における表面層(9)の厚さが基層(8)の厚さの10分の1以下になるように設定する。
【0026】
次に、前記積層工程(S9)を経て得られた積層シート(3)の表面層(9)に、成形型の凹凸形状の成形面を押し当てることにより、該積層シート(3)の少なくとも表面層(9)に凹凸形状を賦形して賦形積層シートを得る(賦形工程;S10)。例えば、得られた積層シート(3)の表面層(9)に転写ロールが圧接するように積層シート(3)を押圧ロールと転写ロールの間に挟み込んで挟圧することによって、該積層シート(3)の少なくとも表面層(9)にレンズ形状等の凹凸形状を賦形する。前記レンズ形状としては、特に限定されるものではないが、例えば断面形状として、略三角形(プリズム形状)、略半円形、略半楕円形、略放物線形状、略双曲線形状、略正弦曲線形状などが挙げられる。
【0027】
次に、前記賦形工程(S10)を経て得られた賦形積層シート(3)の周縁部の少なくとも一部を裁断等により切り離すことによって、該賦形積層シート(3)の周縁部を整形して、所定の大きさ、形状の製品(整形賦形積層シート)を得ると共に、裁断等により切り離された部分を端材として分別する(整形工程;S11)。
【0028】
こうして得られた整形賦形積層シート(3)は、前記基層(8)の少なくとも片面に前記表面層(9)が積層され、該表面層(9)にレンズ形状等の凹凸形状が形成され、周縁部が所定形状に整形されたシートである。この整形賦形積層シート(3)は、基層(8)が、ポリカーボネート樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物からなる構成であるから、耐衝撃性に優れており、また基層(8)の少なくとも片面にスチレン系樹脂を含有してなる表面層(9)が積層されているから、耐傷性にも優れている。更に、S8で再利用された端材は、そもそもその基層中に前のS4で再利用された端材が混合されてなるものであり、いわば2度目の再利用に供されているものであり、従ってS8で得られた基層用熱可塑性樹脂組成物における前記スチレン系樹脂の含有率は、前のS4で得られた基層用熱可塑性樹脂組成物における前記スチレン系樹脂の含有率よりも増大しているのであるが、ここで、スチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂は、黄色等の着色が少ないから、依然として着色が十分に抑制された整形賦形積層シートを得ることができる。
【0029】
次に、S11の整形工程で出た前記端材をポリカーボネート樹脂に混合することによって、基層用の熱可塑性樹脂組成物を調製する(基層用樹脂調製工程;S12)。この時、前記同様に、前記端材と、該端材に対して10質量倍以上のポリカーボネート樹脂とを混合して、基層用の熱可塑性樹脂組成物を調製する。
【0030】
以下、S9〜S12を順次同様に繰り返すことによって、製造過程で出る端材を再利用しながら、黄色等の着色が十分に抑制されると共に耐衝撃性及び耐傷性に優れた整形賦形積層シート(3)を製造することができる。即ち、端材を2回、3回または4回以上の再利用に供することによって、得られる整形賦形積層シートにおける端材のリサイクル含有比率が少しづつ増大していくことになるが、前述したように、前記ポリカーボネート樹脂は黄色等の着色が少ないし、スチレン系樹脂も黄色等の着色が少ないし、これらの混合含有による着色も少ないから、端材を複数回再利用に供しても、黄色等の着色が十分に抑制された整形賦形積層シートを得ることができる。このように、本製造方法では、端材を1回再利用に供した場合は勿論のこと、端材を複数回再利用に供した場合でも黄色等の着色を抑制できるので、本製造方法は工業生産に適している。
【0031】
なお、前記基層(8)と前記表面層(9)とを積層する手法としては、特に限定されるものではないが、例えば共押出成形法、貼合法、熱接着法、溶剤接着法、重合接着法、キャスト重合法、表面塗布法等の方法が挙げられる。中でも、作業が容易で製造効率が高く、接着剤等の他の材料を使う必要のない共押出成形法が好ましい。
【0032】
また、前記端材をポリカーボネート樹脂に混合する際に、傷付き、汚れ、割れ等が存在するために製品として提供できない品質不良品(品質不良の整形賦形積層シート)を前記端材と共にポリカーボネート樹脂に混合しても良い。
【0033】
本発明において、前記表面層(9)を構成するスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂を用いる。スチレン系単量体単位の含有率が70質量%以上であることで、黄色等の着色が少ないものとなり、着色が十分に抑制された整形賦形積層シートを得ることができる。中でも、前記表面層(9)を構成するスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体単位を75質量%以上有するスチレン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0034】
かかるスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体であっても良いし、スチレンと共重合し得る単量体とスチレンとの共重合体であっても良い。スチレンと共重合し得る単量体としては、メタクリル酸メチルやメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチルやアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル等が挙げられ、メタクリル酸エステルが好ましく、中でもメタクリル酸メチルが好ましい。
【0035】
前記スチレン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(メタクリル酸メチル単位の含有率:20質量%、スチレン単位の含有率:80質量%)、ポリスチレン等が挙げられる。
【0036】
また、前記基層(8)に光拡散粒子を含有せしめても良い。この場合には、光拡散シートとして好適なものとなる。前記光拡散粒子としては、前記基層(8)を構成する樹脂又は混合樹脂と屈折率が異なる粒子であって、該粒子を分散させて含有させることにより整形賦形積層シート(光拡散シート)を透過する光を拡散し得るものであれば、特に限定されない。例えば、ガラス粒子、ガラス繊維、シリカ粒子、水酸化アルミニウム粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、タルク等の無機粒子であっても良いし、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子等の有機粒子であっても良い。
【0037】
また、前記基層(8)に、本発明の効果を阻害しない範囲において、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤、造核剤等の添加剤を含有せしめても良い。
【0038】
同様に、本発明の効果を阻害しない範囲において、前記表面層(9)に、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤、造核剤等の添加剤を含有せしめても良い。
【0039】
なお、上記実施形態では、基層(8)の両面に表面層(9)(9)を積層一体化した構成が採用されていたが(図1参照)、特にこのような構成に限定されるものではなく、基層(8)の片面に表面層(9)を積層一体化した構成を採用しても良い。ただ、反りをより十分に防止できる点で、上記実施形態のように基層(8)の両面に表面層(9)(9)を積層一体化した構成を採用するのが好ましい。
【0040】
前記積層工程(S1、S5、S9)において、積層シート(3)における表面層(9)の厚さ(基層の両面に表面層が積層された構成の場合には一方の側の表面層の厚さと他方の側の表面層の厚さの合計である)が基層(8)の厚さの10分の1以下になるように積層する。10分の1以下に設定することにより十分な耐衝撃性を確保できる。中でも、前記積層工程において、積層シート(3)における表面層(9)の厚さが基層(8)の厚さの40分の1以上20分の1以下になるように積層するのが好ましい。
【0041】
前記基層(8)の厚さ(R)は、通常500〜2990μmである。500μm以上であることで十分な耐衝撃性を確保できると共に、2990μm以下であることでコスト増大を抑制できる。中でも、前記基層(8)の厚さ(R)は好ましくは700μm以上2980μm以下、より好ましくは2500μm以下である。
【0042】
また、前記表面層(9)の厚さ(T)は、通常10〜300μmである。10μm以上であることで十分な耐傷性が得られると共に、300μm以下であることでコスト増大を抑制できる。中でも、前記表面層(9)の厚さ(T)は好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0043】
なお、前記整形賦形積層シート(3)の厚さは、通常0.51mm〜3.29mm、好ましくは1〜3mmの範囲に設定される。
【0044】
本発明の製造方法により得られる整形賦形積層シート(3)として好適な構成は、ポリカーボネート樹脂100質量部およびスチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂0.1〜10質量部からなる基層(8)と、前記基層の片面または両面に積層一体化され、スチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂からなる表面層(9)と、を備えた構成であって、表面層の厚さが基層の厚さの10分の1以下に設定された構成である。このような構成からなる整形賦形積層シート(3)は、着色が十分に抑制されていると共に、耐衝撃性及び耐傷性に優れている。
【0045】
なお、本発明に係る整形賦形積層シートの製造方法は、上記例示の実施形態のものに特に限定されるものではなく、請求の範囲内であれば、その精神を逸脱するものでない限りいかなる設計的変更をも許容するものである。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(メタクリル酸メチル単位の含有率:約20質量%、スチレン単位の含有率:約80質量%)(新日鐵化学社製「MS200」)78.55質量部、アクリル系重合体粒子(架橋重合体粒子)(住友化学社製「スミペックスXC1A」、体積平均粒子径約25μm)20.00質量部、アデカスタブLA31(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ADEKA社製)1.00質量部、スミライザーGP(加工安定剤、住友化学社製)0.20質量部、モノグリD(成型加工剤、日本油脂社製)0.25質量部を、ドライブレンドすることによって、表面層形成用樹脂組成物Aを得る。
【0048】
上記表面層形成用樹脂組成物Aをスクリュー径20mmの第2押出機に供給して250℃で溶融混練し、マルチマニホールドダイに供給する。
【0049】
一方、ポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製「カリバーPC200−30」)100質量部、上記表面層形成用樹脂組成物A 1.0質量部、シロキサン系重合体粒子(光拡散粒子)(東レ・ダウコーニング社製「トレフィルDY33−719」、体積平均粒子径2μm)0.2質量部をドライブレンドした後、スクリュー径40mmの第1押出機に供給して250℃で溶融混練し、マルチマニホールドダイに供給する。
【0050】
前記第1押出機からマルチマニホールドダイに供給される樹脂組成物が基層(8)となり、前記第2押出機からマルチマニホールドダイに供給される樹脂組成物が表面層(9)(9)となるように温度245〜250℃で共押出成形を行い、次いで、得られた積層シートの一方の表面層(9)に転写ロールが圧接するように積層シートを押圧ロールと転写ロールの間に挟み込んで挟圧することによって、該積層シートの片面にレンズ形状(断面形状が略半楕円形状である)を賦形した後、周縁部を裁断して、図1に示すような厚さ2.0mm(基層1.9mm、表面層0.05mm×2)の3層の整形賦形積層シート(3)からなる光拡散シートを作製する。
【0051】
<実施例2〜4>
第1押出機に供給する樹脂組成物(基層用)における各成分の含有割合及び各層の厚さを表1に示す条件にそれぞれ設定した以外は、実施例1と同様にして光拡散シートを作製する。
【0052】
<実施例5>
ポリスチレン(スチレン単位の含有率:100質量%)(東洋スチレン社製「HRM40」)78.55質量部、アクリル系重合体粒子(架橋重合体粒子)(住友化学社製「スミペックスXC1A」、体積平均粒子径約25μm)20.00質量部、アデカスタブLA31(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ADEKA社製)1.00質量部、スミライザーGP(加工安定剤、住友化学社製)0.20質量部、モノグリD(成型加工剤、日本油脂社製)0.25質量部を、ドライブレンドすることによって、表面層形成用樹脂組成物Bを得る。
【0053】
上記表面層形成用樹脂組成物Bをスクリュー径20mmの第2押出機に供給して250℃で溶融混練し、マルチマニホールドダイに供給する。
【0054】
一方、ポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製「カリバーPC200−30」)100質量部、上記表面層形成用樹脂組成物B 1.0質量部、シロキサン系重合体粒子(光拡散粒子)(東レ・ダウコーニング社製「トレフィルDY33−719」、体積平均粒子径2μm)0.2質量部をドライブレンドした後、スクリュー径40mmの第1押出機に供給して250℃で溶融混練し、マルチマニホールドダイに供給する。
【0055】
前記第1押出機からマルチマニホールドダイに供給される樹脂組成物が基層(8)となり、前記第2押出機からマルチマニホールドダイに供給される樹脂組成物が表面層(9)(9)となるように温度245〜250℃で共押出成形を行い、次いで、得られた積層シートの一方の表面層(9)に転写ロールが圧接するように積層シートを押圧ロールと転写ロールの間に挟み込んで挟圧することによって、該積層シートの片面にレンズ形状(断面形状が略半楕円形状である)を賦形した後、周縁部を裁断して、図1に示すような厚さ2.2mm(基層2.1mm、表面層0.05mm×2)の3層の整形賦形積層シート(3)からなる光拡散シートを作製した。
【0056】
<実施例6〜8>
第1押出機に供給する樹脂組成物(基層用)における各成分の含有割合及び各層の厚さを表1に示す条件にそれぞれ設定した以外は、実施例5と同様にして光拡散シートを作製する。
【0057】
<比較例1>
アクリル樹脂(メタクリル酸メチル単位の含有率:90質量%以上)(住友化学社製「MG5」)78.55質量部、アクリル系重合体粒子(架橋重合体粒子)(住友化学社製「スミペックスXC1A」、体積平均粒子径約25μm)20.00質量部、アデカスタブLA31(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ADEKA社製)1.00質量部、スミライザーGP(加工安定剤、住友化学社製)0.20質量部、モノグリD(成型加工剤、日本油脂社製)0.25質量部を、ドライブレンドすることによって、表面層形成用樹脂組成物Cを得る。
【0058】
上記表面層形成用樹脂組成物Cをスクリュー径20mmの第2押出機に供給して250℃で溶融混練し、マルチマニホールドダイに供給する。
【0059】
一方、ポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製「カリバーPC200−30」)100質量部、上記表面層形成用樹脂組成物C 1.0質量部、シロキサン系重合体粒子(光拡散粒子)(東レ・ダウコーニング社製「トレフィルDY33−719」、体積平均粒子径2μm)0.2質量部をドライブレンドした後、スクリュー径40mmの第1押出機に供給して250℃で溶融混練し、マルチマニホールドダイに供給する。
【0060】
前記第1押出機からマルチマニホールドダイに供給される樹脂組成物が基層(8)となり、前記第2押出機からマルチマニホールドダイに供給される樹脂組成物が表面層(9)(9)となるように温度245〜250℃で共押出成形を行い、次いで、得られた積層シートの一方の表面層(9)に転写ロールが圧接するように積層シートを押圧ロールと転写ロールの間に挟み込んで挟圧することによって、該積層シートの片面にレンズ形状(断面形状が略半楕円形状である)を賦形した後、周縁部を裁断して、図1に示すような厚さ2.0mm(基層1.9mm、表面層0.05mm×2)の3層の整形賦形積層シート(3)からなる光拡散シートを作製する。
【0061】
<比較例2〜4>
第1押出機に供給する樹脂組成物(基層用)における各成分の含有割合及び各層の厚さを表2に示す条件にそれぞれ設定した以外は、比較例1と同様にして光拡散シートを作製する。
【0062】
<比較例5>
メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(メタクリル酸メチル単位の含有率:約50質量%、スチレン単位の含有率:約50質量%)(日本A&L社製「MM50」)78.55質量部、アクリル系重合体粒子(架橋重合体粒子)(住友化学社製「スミペックスXC1A」、体積平均粒子径約25μm)20.00質量部、アデカスタブLA31(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ADEKA社製)1.00質量部、スミライザーGP(加工安定剤、住友化学社製)0.20質量部、モノグリD(成型加工剤、日本油脂社製)0.25質量部を、ドライブレンドすることによって、表面層形成用樹脂組成物Dを得る。
【0063】
上記表面層形成用樹脂組成物Dをスクリュー径20mmの第2押出機に供給して250℃で溶融混練し、マルチマニホールドダイに供給する。
【0064】
一方、ポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製「カリバーPC200−30」)100質量部、上記表面層形成用樹脂組成物D 2.4質量部、シロキサン系重合体粒子(光拡散粒子)(東レ・ダウコーニング社製「トレフィルDY33−719」、体積平均粒子径2μm)0.2質量部をドライブレンドした後、スクリュー径40mmの第1押出機に供給して250℃で溶融混練し、マルチマニホールドダイに供給する。
【0065】
前記第1押出機からマルチマニホールドダイに供給される樹脂組成物が基層(8)となり、前記第2押出機からマルチマニホールドダイに供給される樹脂組成物が表面層(9)(9)となるように温度245〜250℃で共押出成形を行い、次いで、得られた積層シートの一方の表面層(9)に転写ロールが圧接するように積層シートを押圧ロールと転写ロールの間に挟み込んで挟圧することによって、該積層シートの片面にレンズ形状(断面形状が略半楕円形状である)を賦形した後、周縁部を裁断して、図1に示すような厚さ2.0mm(基層1.9mm、表面層0.05mm×2)の3層の整形賦形積層シート(3)からなる光拡散シートを作製する。
【0066】
<比較例6、7>
第1押出機に供給する樹脂組成物(基層用)における各成分の含有割合及び各層の厚さを表2に示す条件にそれぞれ設定した以外は、比較例5と同様にして光拡散シートを作製する。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
上記のようにして得られた各光拡散シートについて下記評価法に従い評価を行う。
【0070】
<分光透過率測定による黄色度YIの測定法>
積分球を備えた自記分光光度計(日立製作所製「UV−4000」)を用いて光拡散シートの380〜780nmの波長範囲の分光透過率を測定し、これに基づいて黄色度YIを算出する。
【0071】
本発明の製造方法で製造される実施例1〜8の光拡散シートは、黄色度YIが小さくて着色が十分に抑制されている。
【0072】
本発明の製造方法において端材を複数回再利用に供する場合には、端材の再利用を繰り返す毎に、整形賦形積層シートにおける端材のリサイクル含有比率が少しずつ増大していくことになるが、このような場合においても、黄色度YIは小さく抑制されるし、全光線透過率及び拡散光線透過率はいずれも殆ど変化がなく、従って本発明の製造方法を採用すれば、端材を再利用しながら、安定した品質を備えた整形賦形積層シートを製造することができる。
【0073】
これに対し、比較例1〜7の光拡散シートでは、黄色度YIが比較的大きく少し黄色がかった着色がある。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の製造方法で製造された光拡散シートは、例えば液晶表示装置用のバックライト等として用いられる面光源装置用の光拡散シートとして好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0075】
3…整形賦形積層シート(光拡散シート)
8…基層
9…表面層
R…基層の厚さ
T…表面層の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物をシート状に成形してなる基層の少なくとも片面に、スチレン系単量体単位を70質量%以上有するスチレン系樹脂をシート状に成形してなる表面層を積層して積層シートを得る積層工程と、
前記積層シートの表面層に、成形型の凹凸形状の成形面を押し当てることにより、該積層シートの少なくとも表面層に凹凸形状を賦形して賦形積層シートを得る賦形工程と、
前記賦形積層シートの周縁部の少なくとも一部を端材として切り離すことによって、該賦形積層シートの周縁部を整形して、前記基層の少なくとも片面に前記表面層が積層され、該表面層に凹凸形状が形成され、周縁部が整形された整形賦形積層シートを得る整形工程と、を含み、
前記積層工程において、前記積層シートにおける表面層の厚さを基層の厚さの10分の1以下に設定し、
前記整形工程で得られた端材と該端材に対して10質量倍以上のポリカーボネート樹脂とを混合して得た混合物を、前記積層工程での基層用の熱可塑性樹脂組成物として再利用することを特徴とする整形賦形積層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−252999(P2011−252999A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125735(P2010−125735)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】