説明

整流装置、CO2回収装置

【課題】CO2吸収塔に流入する排ガスの上向きへの流速を均一にする整流装置、CO2回収装置を提供する。
【解決手段】本発明の第一の実施の形態に係る整流装置22Aは、CO2を含有する排ガス11とCO2吸収液とを接触させて排ガス11中のCO2を除去するCO2吸収塔15に排ガス11を送給する煙道19のCO2吸収塔15の供給口に排ガス11を水平方向に拡大させる通路を形成する流路拡大連結部21を設け、流路拡大連結部21に排ガス11とCO2吸収液とが接触する領域において排ガス11が適切な流速となるように排ガス11の流速を緩和する整流板23−1、23−2を設ける。整流装置22AによりCO2吸収塔15内に侵入する排ガス11のガス流速を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中のCO2を吸収するCO2吸収塔に送給する排ガスの流速を緩和する整流装置、CO2回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の化石燃料を使用する火力発電所などでは、ボイラにおいて化石燃料を燃焼させることで発生する排ガスをアミン系のCO2吸収液(以下、「吸収液」ともいう。)と接触させて吸収液中にCO2を吸収させることで、排ガス中のCO2を除去、回収する方法及び回収されたCO2を大気へ放出することなく貯蔵する方法が精力的に研究されている。吸収液を用い、排ガスからCO2を吸収除去した後に、CO2を放散回収し、CO2吸収液は再生して再びCO2吸収塔に循環して再利用する方法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、CO2回収装置のCO2冷却塔、CO2吸収塔においては、排ガスの冷却効率、排ガス中のCO2の吸収液への回収効率を向上させるため、排ガスの流速は極力抑えてCO2冷却塔、CO2吸収塔に送給する必要がある。そのため、CO2冷却塔、CO2吸収塔に送給される排ガスの流速は例えば4m/s以下に抑え、排ガスの整流を行なうようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174407号公報
【特許文献2】特開2008−207123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガスを整流する方法として、例えばCO2吸収塔の流入口付近の流路に多孔板を排ガスの流れ方向に直角するように配置し、発生する圧損により整流する方法、CO2吸収塔の流入口付近の流路断面積を拡大し、排ガスの流速を低減する方法、CO2吸収塔の流入口付近の流路内に整流板を設置し、流路の拡大に伴う剥離を低減し、流速を低減する方法などがある。
【0006】
図11は、CO2吸収塔の流入口付近で排ガスを整流する方法の一例を示す図である。図11に示すように、従来の整流装置100は、排ガス101をCO2吸収塔102に送給する煙道103とCO2吸収塔102の流入口104との間に排ガス101が通過する流路断面積を拡大した流路拡大連結部105と、流路拡大連結部105内に設けたガイドベーン106と、CO2吸収塔102の流入口104付近に直角に配置した多孔板107と、で構成されている。従来の整流装置100では、流路拡大連結部105において煙道103より送給される排ガス101の流速を低減し、流路拡大連結部105内に設けたガイドベーン106により流路の拡大に伴い発生する排ガス101の剥離を低減し、流速を低減している。CO2吸収塔102の流入口104付近に設けた多孔板107で発生する圧損により排ガス101を整流するようにしている。
【0007】
しかしながら、従来の整流装置100では、流路拡大連結部105で排ガス101の流路を急に拡大しているため、CO2吸収塔102内での排ガス101の流速の不均一化を招き、排ガス101の流速低減が十分に発揮されない場合がある、という問題がある。
【0008】
また、ガイドベーン106は流路拡大連結部105内に設置しているため、形状に制約があり、排ガス101の流速低減に十分な効果を発揮しない可能性がある上、特定方向にのみ排ガス101を流しやすくなる、という問題がある。
【0009】
更に、多孔板107に圧損がかかりすぎると排ガス101がCO2吸収塔102内で低流速側に流れてしまう、という問題がある。
【0010】
そのため、流路拡大連結部105、ガイドベーン106、多孔板107の影響により、CO2吸収塔102内での排ガス101の流れが干渉し合い、CO2吸収塔102内で排ガス101の上向きへの速い流れを発生させる虞がある、という問題がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、CO2吸収塔に流入する排ガスの上向きへの流速を均一にする整流装置、CO2回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、CO2を含有する排ガスとCO2吸収液とを接触させて前記排ガス中のCO2を除去するCO2吸収塔に前記排ガスを送給する煙道の前記CO2吸収塔の入口付近に、前記排ガスと前記CO2吸収液とが接触する領域において前記排ガスが適切な流速となるように前記排ガスの流速を緩和する流速緩和部材が設けられることを特徴とする整流装置にある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記流速緩和部材が、前記煙道と前記CO2吸収塔との間に前記排ガスを水平方向に前記CO2吸収塔に漸次拡大するように通過させる流路拡大連結部内に二つ以上設けられ、前記流路拡大連結部の高さ方向に前記排ガスが異なる方向に向かうように前記排ガスの流れを変化させることを特徴とする整流装置にある。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、前記流速緩和部材が、前記煙道の中心軸のガス流れ方向に向かって前記流路拡大連結部の入口部から延設されることを特徴とする整流装置にある。
【0015】
第4の発明は、第2又は3の発明において、前記流速緩和部材に沿って設けられる補助整流板を複数有することを特徴とする整流装置にある。
【0016】
第5の発明は、第2乃至4の何れか一つの発明において、二つの流速緩和部材が設けられ、二つの流速緩和部材を連結する仕切り板を有することを特徴とする整流装置にある。
【0017】
第6の発明は、CO2を含有する排ガスを冷却水によって冷却する冷却塔と、第1乃至5の何れか一つの発明の整流装置と、冷却された排ガスとCO2を吸収するCO2吸収液とを接触させて排ガスからCO2を除去するCO2吸収塔と、CO2を吸収したCO2吸収液からCO2を放出させてCO2吸収液を再生する再生塔と、を有することを特徴とするCO2回収装置にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る整流装置によれば、CO2吸収塔の入口付近に、排ガスとCO2吸収液とが接触する領域において排ガスが適切な流速となるように排ガスの流速を緩和する流速緩和部材が設けられるため、CO2吸収塔に流入する排ガスの上向きの速い流れを低減し、流速を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第一の実施の形態に係る整流装置を備えたCO2回収装置の構成を簡略に示す図である。
【図2】図2は、煙道とCO2吸収塔とを連結する流路拡大連結部を簡略に示す斜視図である。
【図3】図3は、流路拡大連結部の部分切掻き図である。
【図4】図4は、本発明による第一の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す図である。
【図5】図5は、本発明による第二の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す部分切掻き図である。
【図6】図6は、本発明による第二の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す平面図である。
【図7】図7は、本発明による第三の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す部分切掻き図である。
【図8】図8は、本発明による第三の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す平面図である。
【図9】図9は、本発明による第四の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す部分切掻き図である。
【図10】図10は、本発明による第四の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す図である。
【図11】図11は、CO2吸収塔の流入口付近で排ガスを整流する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0021】
[第一の実施の形態]
本発明による第一の実施の形態に係る整流装置を適用したCO2回収装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る整流装置を備えたCO2回収装置の構成を簡略に示す図である。
図1に示すように、CO2回収装置10は、CO2を含有する排ガス11を水12によって冷却する冷却塔13と、冷却された排ガス11とCO2を吸収するCO2吸収液14とを接触させて排ガス11からCO2を除去するCO2吸収塔15と、CO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)16からCO2を放出させてCO2吸収液14を再生する再生塔17とを有する。
【0022】
CO2回収装置10では、CO2吸収液14はCO2吸収塔15と再生塔17との間を循環しており、CO2吸収塔15から再生塔17にはCO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)16が送給され、再生塔17からCO2吸収塔15にはリッチ溶液16から再生塔17でほぼ全てのCO2が除去され再生されたCO2吸収液(リーン溶液)14が送給されている。
【0023】
例えばボイラやガスタービン等の産業設備から排出されたCO2を含有する排ガス11は、図示しない排ガス送風機により昇圧された後、冷却塔13に送られ、冷却塔13内で水12と向流接触することにより冷却される。排ガス11と熱交換して高温となった水12は冷却塔13の底部から抜き出され、冷却水18により冷却され、排ガス11の冷却用として循環して使用される。冷却された排ガス11は冷却塔13とCO2吸収塔15とを連結する煙道19より冷却塔13から排出される。
【0024】
煙道19はCO2吸収塔15の供給口20に排ガス11を水平方向に拡大させる通路を形成する流路拡大連結部21が設けられている。冷却塔13から排出される排ガス11は煙道19を通り、流路拡大連結部21を通ってCO2吸収塔15に送られる。
【0025】
図2は、煙道とCO2吸収塔とを連結する流路拡大連結部を簡略に示す斜視図である。図2に示すように、流路拡大連結部21は煙道19とCO2吸収塔15との間に設けられ、流路拡大連結部21の煙道19との連結部分は、煙道19の幅と同じ長さで形成されている。流路拡大連結部21は煙道19との連結部分から排ガス11をCO2吸収塔15に向かって水平方向に漸次拡大して通過させるように形成されている。流路拡大連結部21のCO2吸収塔15の供給口20(図1、参照)との連結部分は、煙道19の幅と同じ長さで形成されている。
【0026】
また、流路拡大連結部21内には、本発明の第一の実施の形態に係る整流装置22Aが設けられている。整流装置22AによりCO2吸収塔15内でCO2吸収液14と接触する際の排ガス11の流速を減速するようにしている。
【0027】
図3は、流路拡大連結部の部分切掻き図であり、図4は、本発明による第一の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す図であり、図4中、上側の図が平面図であり、図4中、下側の図が側面図である。
図2〜図4に示すように、本発明の第一の実施の形態に係る整流装置22Aは、CO2を含有する排ガス11とCO2吸収液14とを接触させて排ガス11中のCO2を除去するCO2吸収塔15に排ガス11を送給する煙道19のCO2吸収塔15の入口付近に、排ガス11とCO2吸収液14とが接触する領域において排ガス11が適切な流速となるように排ガス11の流速を緩和する流速緩和部材として整流板23−1、23−2が設けられている。
【0028】
整流板23−1、23−2は、流路拡大連結部21内に設けられ、流路拡大連結部21の高さ方向に排ガス11が異なる方向に向かうように排ガス11の流れを変化させるようにしている。整流板23−1、23−2は、煙道19の中心軸(図4中、一点鎖線部分)のガス流れ方向に向かって流路拡大連結部21の入口部24から延設されている。
【0029】
整流板23−1は、排ガス11の流れ方向から見て入口部24の左側から流路中心に向かって延びて形成されており、排ガス11の上半分を右向きに曲げるように設置されている。また、整流板23−2は、排ガス11の流れ方向から見て入口部24の右側から中心に向かって、排ガス11の下半分を左向きに曲げるように設置されている。
【0030】
煙道13内の流路を流れる排ガス11は、整流板23−1、23−2により煙道19内の流路の上側を流れる排ガス11Aと、煙道19内の流路の下側を流れる排ガス11Bとに正反対の方向に分割される。
【0031】
煙道19の流路の上側を流れる排ガス11Aの大部分は、整流板23−1により排ガス11の流れ方向から見て右方向に向きを変えながら、CO2吸収塔15の供給口20からCO2吸収塔15の内壁に沿ってCO2吸収塔15の内部に流れる。また、排ガス11Aの一部は、整流板23−1の下側をくぐり排ガス11の流れ方向から見て左方向に流れる排ガス11Bの流れに合流するものと、流路拡大連結部21の壁面近傍に発生する剥離領域25Aに巻き込まれて、排ガス11の流れ方向から見て右方向に下向きへ流れるものとになる。
【0032】
煙道19の流路の下側を流れる排ガス11Bの大部分は、整流板23−2により排ガス11の流れ方向から見て左方向に向きを変えながら、CO2吸収塔15の供給口20からCO2吸収塔15の内壁に沿ってCO2吸収塔15の内部に流れる。また、排ガス11Bの一部は、整流板23−2の上側をくぐり排ガス11の流れ方向から見て右方向に流れる排ガス11Aに合流するものと、流路拡大連結部21の壁面近傍に発生する剥離領域25Bに巻き込まれて、排ガス11の流れ方向から見て左方向に上向きへ流れるものとになる。
【0033】
整流板23−1により排ガス11の流れ方向から見て右方向に流れた排ガス11Aの向きは、整流板23−2により排ガス11の流れ方向から見て左方向に流れた排ガス11Bの向きと、CO2吸収塔15の後側の内壁26で正対する。排ガス11Aは整流板23−1により煙道19内の流路の上側を流れる排ガス11のガス流れの向きを変えたものであり、排ガス11Bは整流板23−2により煙道19内の流路の下側を流れる排ガス11のガス流れの向きを変えたものである。よって、排ガス11Aと排ガス11Bとはガス流れの高さが異なるため、排ガス11Aと排ガス11Bとが正対する互いの境界面付近では強い速度せん断が発生するため、排ガス11Aと排ガス11Bとは急激に混合され、排ガス11Aと排ガス11Bとが混合された後の排ガス11の流速は減速される。
【0034】
この結果、図11に示すような従来の整流装置100を用いた場合、CO2吸収塔102内で局所的に発生する排ガス101の高流速を抑えることができ、排ガス11Aと排ガス11Bとが混合した時の排ガス11のガス流速を、減速することができ、例えば4m/s以下とすることができる。
【0035】
よって、整流板23−1、23−2によりCO2吸収塔15内に侵入する排ガス11の上側の排ガス11Aと下側の排ガス11Bとのガス流れの方向を逆方向とし、CO2吸収塔15内で排ガス11Aと排ガス11Bとを再び合流させることで、互いの流れの境界面で発生する強い速度せん断により、排ガス11Aと排ガス11Bとを急激に混合し、排ガス11Aと排ガス11Bとを混合した後の排ガス11のガス流速を減速することができる。
このため、CO2吸収塔15内に侵入する排ガス11の流速が局所的に増大するのを抑制し、CO2吸収塔15内に侵入する排ガス11のガス流速の均一化を図ることができるので、排ガス11がCO2吸収液14と接触する際に、排ガス11中のCO2をCO2吸収液14中に安定して吸収させることができる。
【0036】
図1に示すように、CO2吸収塔15において、排ガス11はCO2吸収塔15の下部側に設けられたCO2回収部27において、例えばアルカノールアミンをベースとするCO2吸収液14と対向流接触し、排ガス11中のCO2は、下記式のように化学反応によりCO2吸収液14に吸収される。
R−NH2+H2O+CO2→R−NH3HCO3・・・(1)
【0037】
そしてCO2除去後のCO2除去排ガス31Aは水洗部32を上昇し、水洗部32の頂部から供給される水33と気液接触して、CO2除去排ガス31Aに同伴するCO2吸収液14を水33に回収する。その後、CO2吸収塔15の頂部からCO2吸収液14の除去されたCO2除去排ガス31Bが排出される。また、水33は水受部34で回収され、循環して冷却水35で冷却された後、水洗部32の頂部側から水洗部32に供給される。
【0038】
CO2吸収塔15の塔底部に貯留されるリッチ溶液16は、リッチソルベントポンプ36により昇圧され、リッチ・リーン溶液熱交換器37において、再生塔17で再生されたCO2吸収液14により加熱され、再生塔17に供給される。
【0039】
再生塔17の上部から再生塔17内部に放出されたリッチ溶液16は、吸熱により、大部分のCO2を放出する。再生塔17内で一部または大部分のCO2を放出したCO2吸収液14は「セミリーン溶液」と呼称される。このセミリーン溶液は、再生塔17の塔底部に至る頃には、ほぼ全てのCO2が除去されたCO2吸収液(リーン溶液)14となる。リーン溶液14は再生加熱器38に送給される飽和スチーム39と熱交換することで加熱される。再生加熱器38で使用された飽和スチーム39はスチーム凝縮水40として排出される。
【0040】
一方、再生塔17の塔頂部からは塔内においてリッチ溶液16及び図示しないセミリーン溶液から水蒸気を伴ったCO2ガス41が放出される。そして、水蒸気を伴ったCO2ガス41が導出され、コンデンサ42で冷却水43により水蒸気が凝縮され、分離ドラム44にて水が分離され、CO2ガス45は系外に放出されて回収される。分離ドラム44にて分離された水46は凝縮水循環ポンプ47にて再生塔17の上部に供給される。
【0041】
再生塔17の底部に貯留されるリーン溶液14はCO2吸収液として、リーンソルベントポンプ48により送給され、リーンソルベントクーラ49で冷却水50と熱交換して冷却された後、CO2吸収塔15に送給される。
【0042】
このように、本実施の形態に係る整流装置22Aを備えたCO2回収装置10によれば、CO2吸収塔15の入口近傍の流路拡大連結部21に整流板23−1、23−2からなる整流装置22Aを設け、整流板23−1、23−2によりCO2吸収塔15内に侵入する排ガス11のガス流れの方向を排ガス11A、11Bで上下に分け、かつそのガス流れの向きを逆方向としてCO2吸収塔15内に送給している。CO2吸収塔15内で排ガス11A、11Bを正対して再び合流させることで、互いの流れの境界面で発生する強い速度せん断を利用することで、排ガス11Aと排ガス11Bとを急激に混合し、排ガス11のガス流速を減速することができ、CO2吸収塔15内に侵入する排ガス11のガス流速の均一化を図ることができる。このため、排ガス11中のCO2をCO2吸収液14中に安定して吸収することができる。
【0043】
また、本実施の形態においては、2つの整流板23−1、23−2を設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数有するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施の形態においては、整流板23−1により、排ガス11の流れ方向から見て排ガス11の上半分を右方向に曲げるように設置され、整流板23−2により、排ガス11の流れ方向から見て排ガス11の下半分を左方向に曲げるように設置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。整流板23−1は、排ガス11の流れ方向から見て排ガス11の上半分を左方向に曲げるように設置し、整流板23−2は、排ガス11の流れ方向から見て排ガス11の下半分を右方向に曲げるように設置してもよい。
【0045】
また、本実施の形態においては、2つの整流板23−1、23−2をCO2吸収塔15の入口付近に設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、冷却塔13の入口付近に設けるようにしてもよい。また、排ガスを処理する装置の入口付近に整流するために設けるようにしてもよい。
【0046】
[第二の実施の形態]
本発明による第二の実施の形態に係る整流装置を備えたCO2回収装置について、図面を参照して説明する。
本実施の形態においては、本実施の形態に係る整流装置を備えたCO2回収装置の構成は、上述の図1に示すCO2回収装置の構成と同様であるため、CO2回収装置の構成を示す図は省略し、整流装置の構成を示す図のみを用いて説明する。
なお、図1のCO2回収装置と同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図5は、本発明による第二の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す部分切掻き図であり、図6は、本発明による第二の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す平面図である。
図5、6に示すように、本発明による第二の実施の形態に係る整流装置22Bは、整流板23−1、23−2に沿って所定間隔を有しつつ設けられる補助整流板51−1、51−2を有するものである。補助整流板51−1は、整流板23−1と同様に、排ガス11の流れ方向から見て排ガス11を右方向に曲げるように設置され、補助整流板51−2は、整流板23−2と同様に、排ガス11の流れ方向から見て排ガス11を左方向に曲げるように設置されている。
【0047】
補助整流板51−1、51−2を設けることにより、流路拡大連結部21に流れる排ガス11は流路拡大連結部21の壁面に沿って流れ易くなるため、排ガス11のガス流れに剥離が生じるのを抑制でき、流路拡大連結部21の入口部24付近にガス滞留部が生じるのを抑制することができる。このため、整流板23−1、23−2、補助整流板51−1、51−2により排ガス11A、11Bのガス流れの整流を促進することができると共に、排ガス11A、11Bの速度を増大させることができる。
【0048】
よって、排ガス11A、11Bが正対した時の互いの流れの境界面で発生する速度せん断を更に大きくすることができるため、排ガス11Aと排ガス11Bとの混合を更に促進することができると共に、排ガス11Aと排ガス11Bとが混合した後の排ガス11のガス流速の減速効果を更に大きくし、CO2吸収塔15のCO2回収部27に送給される排ガス11のガス流れを更に均一にすることができる。このため、排ガス11中のCO2をCO2吸収液14中に安定して吸収することができる。
【0049】
また、本実施の形態においては、補助整流板51−1は、整流板23−1と同方向となるように設置し、補助整流板51−2は、整流板23−2と同方向となるように設置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、流路拡大連結部21の側壁の開閉具合に応じて補助整流板51−1、51−2の設置する方向は調整するようにする。
【0050】
また、本実施の形態においては、2つの補助整流板51−1、51−2を設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数有するようにしてもよい。
【0051】
[第三の実施の形態]
本発明による第三の実施の形態に係る整流装置を備えたCO2回収装置について、図面を参照して説明する。
本実施の形態においては、本実施の形態に係る整流装置を備えたCO2回収装置の構成は、第二の実施の形態と同様、上述の図1に示すCO2回収装置の構成と同様であるため、CO2回収装置の構成を示す図は省略し、整流装置の構成を示す図のみを用いて説明する。
なお、図1のCO2回収装置と同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図7は、本発明による第三の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す部分切掻き図であり、図8は、本発明による第三の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す平面図である。
尚、図8中、斜線部分が仕切り板の設置される部分を示す。
図7、8に示すように、本発明による第三の実施の形態に係る整流装置22Cは、整流板23−1、23−2を連結する仕切り板52を有するものである。仕切り板52は、整流板23−1の下側の辺23aと整流板23−2の上側の辺23bとを連結し、排ガス11が流れる流路を高さ方向に二つの領域に分割している。
【0052】
整流板23−1で排ガス11の流れ方向から見て右方向に流れを変える排ガス11Aは整流板23−1の下側の辺23aから排ガス11の流れ方向から見て左方向に流出することはないため、整流板23−1により排ガス11Aの全量を排ガス11の流れ方向から見て右方向に曲げることができ、排ガス11Aの流速を増大させることができる。
【0053】
また、整流板23−2で排ガス11の流れ方向から見て左方向に向きを変える排ガス11Bは整流板23−2の上側の辺23bから排ガス11の流れ方向から見て右方向に流出することはないため、整流板23−2により排ガス11Bの全量を排ガス11の流れ方向から見て左方向に曲げることができ、排ガス11Bの流速を増大させることができる。
【0054】
よって、排ガス11A、11Bの全量を整流板23−1、23−2によりCO2吸収塔15内に送給することができるため、CO2吸収塔15内に流れる排ガス11A、11Bの速度を増大させることができる。このため、CO2吸収塔15内で排ガス11A、11Bが相対する際、排ガス11A、11Bの速度せん断を更に大きくし、排ガス11の混合効果を更に大きくすることができると共に、排ガス11の速度の減速効果を更に大きくすることができる。この結果、排ガス11中のCO2をCO2吸収液14中に更に安定して吸収することができる。
【0055】
[第四の実施の形態]
本発明による第四の実施の形態に係る整流装置を備えたCO2回収装置について、図面を参照して説明する。
本実施の形態においては、本実施の形態に係る整流装置を備えたCO2回収装置の構成は、第二、第三の実施の形態と同様、上述の図1に示すCO2回収装置の構成と同様であるため、CO2回収装置の構成を示す図は省略し、整流装置の構成を示す図のみを用いて説明する。
なお、図1のCO2回収装置と同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
図9は、本発明による第四の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す部分切掻き図であり、図10は、本発明による第四の実施の形態に係る整流装置の構成を簡略に示す図であり、図10中、上側の図が平面図であり、図10中、下側の図が側面図である。
図9、10に示すように、本発明による第四の実施の形態に係る整流装置22Dは、流路拡大連結部21内の入口部24の高さ方向に排ガス11が異なる方向に向かうように排ガス11の流れを変化させる整流板23−1〜23−4を有するものである。
【0056】
排ガス11の流れ方向から見て流路拡大連結部21の入口部24の左右に整流板23−1〜23−4が互い違いに設けられている。具体的には、流路拡大連結部21の入口部24には排ガス11の流れ方向から見て左側に整流板23−1、23−3が設けられ、排ガス11の流れ方向から見て右側に整流板23−2、23−4が設けられている。
【0057】
流路拡大連結部21の入口部24には、上側から整流板23−1、23−2、23−3、23−4の順の高さで設置されている。また、整流板23−1、23−3が排ガス11の流れ方向から見て入口部24の左側から流路中心に向かって延びて形成されており、排ガス11を右方向に曲げるように設置されている。整流板23−2、23−4が排ガス11の流れ方向から見て入口部24の流路右側から中心に向かって、排ガス11を左方向に曲げるように設置されている。
【0058】
排ガス11Aは整流板23−1、23−3により排ガス11の流れ方向から見て右方向に流れ、流路拡大連結部21の壁面近傍の剥離領域25Aに生じる乱れに巻き込まれることで排ガス11Aの流速を減速することができる。そのため、排ガス11Aは減速された状態でCO2吸収塔15内に送給することができる。
【0059】
また、排ガス11Bは整流板23−2、23−4により排ガス11の流れ方向から見て左方向に流れ、流路拡大連結部21の壁面近傍の剥離領域25Bで生じる乱れに巻き込まれることで排ガス11Bの流速を減速することができる。そのため、排ガス11Bは減速された状態でCO2吸収塔15内に送給することができる。
【0060】
よって、整流板23−1〜23−4によりガス流れ方向を変えた排ガス11A、11Bは、流路拡大連結部21の壁面近傍に生じる剥離領域25A、25Bで生じる乱れに巻き込まれることで、排ガス11A、11Bの減速効果が大きくなる。このため、整流板23−1〜23−4により左右に分かれた排ガス11A、11BがCO2吸収塔15内で相対する際の排ガス11A、11Bの速度せん断を小さくし、排ガス11の混合効果を小さくすることができると共に、排ガス11の速度の減速効果を小さくすることができる。
【0061】
従って、本実施の形態に係る整流装置22Dによれば、図3に示す第一の実施の形態に係る整流装置22Aを用いる場合に比べて排ガス11の流速を減速させた状態でCO2吸収塔15内に侵入させることができ、排ガス11中のCO2をCO2吸収液14中に更に安定して吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかる整流装置は、CO2吸収塔に送給する排ガスの流速を緩和する整流装置として用いるのに適している。
【符号の説明】
【0063】
10 CO2回収装置
11 排ガス
12、33、46 水
13 冷却塔
14 CO2吸収液
15 CO2吸収塔
16 リッチ溶液
17 再生塔
18、35、43、50 冷却水
19 煙道
20 供給口
21 流路拡大連結部
22A〜22D 整流装置
23−1〜23−4 整流板
24 入口部
25A、25B 剥離領域
26 内壁
27 CO2回収部
31A、31B CO2除去排ガス
32 水洗部
34 水受部
36 リッチソルベントポンプ
37 リッチ・リーン溶液熱交換器
38 再生加熱器
39 飽和スチーム
40 スチーム凝縮水
41 CO2ガス
42 コンデンサ
44 分離ドラム
45 CO2ガス
47 凝縮水循環ポンプ
48 リーンソルベントポンプ
49 リーンソルベントクーラ
51−1、51−2 補助整流板
52 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2を含有する排ガスとCO2吸収液とを接触させて前記排ガス中のCO2を除去するCO2吸収塔に前記排ガスを送給する煙道の前記CO2吸収塔の入口付近に、前記排ガスと前記CO2吸収液とが接触する領域において前記排ガスが適切な流速となるように前記排ガスの流速を緩和する流速緩和部材が設けられることを特徴とする整流装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記流速緩和部材が、前記煙道と前記CO2吸収塔との間に前記排ガスを水平方向に前記CO2吸収塔に漸次拡大するように通過させる流路拡大連結部内に二つ以上設けられ、前記流路拡大連結部の高さ方向に前記排ガスが異なる方向に向かうように前記排ガスの流れを変化させることを特徴とする整流装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記流速緩和部材が、前記煙道の中心軸のガス流れ方向に向かって前記流路拡大連結部の入口部から延設されることを特徴とする整流装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記流速緩和部材に沿って設けられる補助整流板を複数有することを特徴とする整流装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一つにおいて、
二つの流速緩和部材が設けられ、二つの流速緩和部材を連結する仕切り板を有することを特徴とする整流装置。
【請求項6】
CO2を含有する排ガスを冷却水によって冷却する冷却塔と、
請求項1乃至5の何れか一つの整流装置と、
冷却された排ガスとCO2を吸収するCO2吸収液とを接触させて排ガスからCO2を除去するCO2吸収塔と、
CO2を吸収したCO2吸収液からCO2を放出させてCO2吸収液を再生する再生塔と、
を有することを特徴とするCO2回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−62608(P2011−62608A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213612(P2009−213612)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】