説明

文字入力用のプログラムおよび情報処理装置

【課題】文字入力に関するOS側の定義によらずに、簡単な方法でアプリケーションウィンドウに文字を入力できるようにする。
【解決手段】文字入力システム2は、OS1からの呼び出しに応じて、その時点でアクティブな状態にあるアプリケーションウィンドウのウィンドウハンドルを取得し、文字入力用のGUIウィンドウを立ち上げ、以後、GUIウィンドウに対する操作に応じて入力対象の文字列を設定する。さらに確定操作を受け付けると、その時点で設定されている文字列を、貼り付け処理のためにクリップボード4に保存する情報として出力する。さらに、呼び出し時に取得したウィンドウハンドルのアプリケーションウィンドウへの貼り付けキーイベントを送信する。この送信を受け付けたアプリケーションシステム3は、クリップボード4から文字列を取得し、実行中のアプリケーションウィンドウのカーソルの位置に貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレーションシステムが導入されたコンピュータに文字入力システムとしての機能を設定するプログラム、およびこのプログラムによる文字入力システムが設定された情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オペレーションシステム(以下、「OS」と略す場合もある。)が導入されているコンピュータには、「クリップボード」と呼ばれるメモリシステムを介して情報の転送を行う機能(コピーアンドペースト機能)が設けられている。この機能は、たとえば、あるアプリケーションウィンドウで編集中のデータを、同じウィンドウ内の別の場所に移動させたりコピーする場合に利用されるほか、あるアプリケーションウィンドウ内の情報を別のアプリケーションウィンドウに転送する目的で使用される場合もある。
【0003】
またこの種のコンピュータでは、アプリケーションウィンドウにアルファベットや数字以外の文字を入力する必要が生じた場合には、IME(Input Method Editor )と呼ばれる文字入力システムを起動する。OSには、このIMEを、入力対象のアプリケーションと一体になって動作するように制御する機能が設けられている。
【0004】
たとえば、OSとしてWindows(登録商標)が導入されたコンピュータでは、図6に示すように、OS内のIMF(Input Method Framework)と呼ばれる機能により、IMEおよびアプリケーションシステムを制御する。この制御の仕組みについて、図6中の符号を引用して説明すると、文字入力に関してユーザが行った操作(文字キーの操作、変換操作、確定操作など)に応じて、IMF101からIME200にキーイベント情報が渡される。IME200は、このキーイベント情報により操作内容を認識して、操作に応じた処理(文字列の組立、変換候補の抽出、変換後文字列の確定など)を実行し、その処理により設定した文字列をIMF101に出力する。
【0005】
一方で、アプリケーションシステム300からIMF101には、当該システムが実行するアプリケーションウィンドウ内のカーソルの位置などの情報が供給される。IMR101は、この位置情報に基づき表示位置を指定して、IME200から供給された文字列をアプリケーションシステム300に出力する。アプリケーションシステム300では、アプリケーションウィンドウ内の指定された位置に供給された文字列を表示する。
【0006】
上記一連の処理により、ユーザの操作に応じた文字列がアクティブ状態のアプリケーションウィンドウに表示されることになる。
【0007】
日本語入力用のIMEでは、一般に、ローマ字表記のアルファベット文字列の入力を受け付けて、これをかな文字列に変換した後、さらに変換操作に応じてかな漢字変換を実行する。一方、他の言語用のIMEには、キーボードに文字の一部(韓国語の字母など。以下、これを「文字要素」という。)を割り付けて、キーボードの操作に応じて文字列を組み立てるものがある(たとえば特許文献1を参照。)。
【0008】
また、文字入力操作を容易にする目的で、モニタ画面にキーボード画像を表示し、この画像中のキーをマウスでクリックすることによって、変換前の文字列を入力するようにしたシステムも開発されている(たとえば特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3796651号公報
【特許文献2】特開2002−117024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1,2に記載されたものを含む従来のIMEは、IMFの定義に従って動作することを条件とするため、IMFに関する専門知識を持つ者でなければ、IMEを開発するのは困難である。またコンピュータに導入されるすべてのアプリケーションシステムに対してIMEの動作が保障されるように設計する必要があるため、新規のIMEを開発するには多大な労力がかかり、またプログラムが複雑になる。
【0011】
本発明は上記の問題点に着目し、文字入力に関するOS側の定義によらずに、簡単な方法でアプリケーションウィンドウに文字を入力できるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による文字入力用のプログラムは、オペレーションシステムと、オペレーションシステムの管理下で動作するアプリケーションシステムと、貼り付け対象の情報を一時保存するためのメモリシステム(具体的には「クリップボード」のことである。)とが設けられたコンピュータに導入されて、このコンピュータにアクティブ状態のアプリケーションウィンドウへの文字入力処理を実行する機能を設定するためのものである。このプログラムは、以下の識別情報取得手段、文字列設定手段、文字列出力手段、およびキーイベント発生要求手段としてコンピュータを動作させる。
【0013】
識別情報取得手段は、オペレーションシステムからの呼び出しに応じて、アクティブな状態にあるアプリケーションウィンドウの識別情報をオペレーションシステムから取得する。
【0014】
文字列設定手段は、文字入力に関する操作をオペレーションシステムを介して受け付けて、その操作に応じた文字列を設定する。文字列出力手段は、文字列設定手段により設定された文字列をアプリケーションウィンドウに入力する旨の操作をオペレーションシステムを介して受け付けたとき、当該文字列をメモリシステムに保存するために選択した情報としてオペレーションシステムに出力する。
【0015】
キーイベント発生要求手段は、文字列が出力されたことに応じて、識別情報取得手段が取得した識別情報のアプリケーションウィンドウに貼り付け操作のキーイベント情報を送る旨の要求をオペレーションシステムに出力する。
【0016】
上記構成のプログラムによれば、文字入力に関する操作に応じて所定の文字列から他の文字種に変換する処理や、複数の文字要素を組み立てる処理などを実行して、アプリケーションウィンドウに入力するための文字列を設定した後、この文字列を入力する旨の操作に応じて当該文字列をオペレーションシステムに出力する。従来の文字入力システムでは、この出力がアプリケーションシステムに転送されるように、OSの定義情報に従った方法で情報の送信を行っているが、本発明では、貼り付け処理のためにメモリシステム内に保存される情報として文字列を出力する。よって、OS側では、出力された文字列を通常のコピー操作に応じて出力された情報と同様に取り扱って、メモリシステム内に一時保存する。
【0017】
さらに上記の文字列の出力に応じてキーイベント発生要求手段から送信した要求により、オペレーションシステムからの呼び出し時にアクティブな状態にあったアプリケーションウィンドウに貼り付け操作のキーイベント情報が送られる。この送信対象のアプリケーションウィンドウを実行するアプリケーションシステムは、OSにメモリシステムに保存されている文字列の送信を要求し、送信された文字列を上記のアプリケーションウィンドウ内のカーソルが置かれている位置に貼り付ける。これにより、文字入力システムで生成された文字列がアプリケーションウィンドウに入力された状態となる。
【0018】
また上記の方法では、OSからの呼び出し時にアクティブな状態にあるアプリケーションウィンドウの識別情報を取得し、この識別情報のアプリケーションウィンドウに上記のキーイベント情報が送信されるように制御することにより、入力対象のアプリケーションウィンドウを再びアクティブ状態にして文字列を入力するので、従来のIMEと同様の文字入力処理を支障なく実行することができる。
【0019】
上記の文字列出力手段による処理は、貼り付け対象の情報を選択してメモリシステムに転送する処理(コピー)を利用したものであり、キーイベント要求発生手段による処理は、メモリシステムに保存された情報を文字入力位置に貼り付ける処理(ペースト)を利用したものである。このように、本発明では、一般的なコピーアンドペースト機能を利用することによって、OSが定めたIMEの定義情報に従った処理を行わなくとも、アプリケーションシステムへの文字入力を行うことができる。また、オペレーションシステムの基本の機能を利用しているので、OSの管理下で動作する全てのアプリケーションに適用することが可能である。
【0020】
好ましい実施態様のプログラムでは、複数種の言語についてそれぞれ専用に設定された辞書ファイルがコンピュータ内に導入されていることを前提として、文字列設定手段に、複数種の言語の中の1つを選択する操作をオペレーションシステムを介して受け付けて、当該操作により選択された言語を入力対象の言語として認識する認識手段と、文字または文字要素を入力する操作をオペレーションシステムを介して受け付けて、受け付けた入力情報により前記入力対象として認識した言語の辞書ファイルを検索することにより、入力操作に応じた変換候補の文字列を抽出し、表示する変換候補抽出手段と、表示された変換候補を選択する操作をオペレーションシステムを介して受け付けたとき、その操作により選択された変換候補の文字列をメモリシステム内に保存する文字列として確定する文字列確定手段とが設けられる。
【0021】
上記のプログラムによれば、入力対象の言語の選択を切り替える操作に応じて、選択された言語による文字列を入力することができる。またいずれの言語の文字列を入力する場合にも、文字または文字要素を入力する操作に応じて表示された変換候補の中の1つを選択することにより、文字入力作業を途中で終了して、アプリケーションシステムに入力する文字列を確定することができる。よって、1つの文字入力システムによって、ユーザの所望の言語を効率良く入力することが可能になる。
【0022】
より好ましい態様のプログラムでは、文字列設定手段に、認識手段により認識された入力対象の言語について、当該言語用の文字または文字要素が割り付けられたキーボードの画像を含むGUIウィンドウを表示するGUI表示手段がさらに含まれる。また変換候補抽出手段は、GUI表示手段が表示したウィンドウ内のキーを選択する操作をオペレーションシステムを介して受け付けて、操作されたキーに対応する文字または文字要素を認識し、その認識結果に基づき入力対象の言語の辞書ファイルに対する検索処理を実行する。
【0023】
上記の態様によれば、ユーザが言語を選択する操作を行うと、その操作により選択された言語の文字または文字要素が割り付けられたキーボードの画像を含むGUIウィンドウが表示され、このウィンドウ内でのキー操作により文字または文字要素を入力しながら、その入力により設定された文字列を確認することが可能になる。よって文字や文字要素の入力がより一層容易になる。
【0024】
さらに本発明では、オペレーションシステムと、オペレーションシステムの管理下で動作する所定数のアプリケーションシステムと、貼り付け対象の情報を一時保存するためのメモリシステムと、上記のプログラムによる文字入力システムとが導入された情報提供装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、入力対象の文字列をメモリ領域内に保存した後に、呼び出し時にアクティブな状態にあったアプリケーションシステムに貼り付け操作のキーイベント情報を送信することによって、オペレーションシステムが文字入力に関して定義した処理を実行しなくともアプリケーションウィンドウに文字列を入力することができる。よって、文字入力に関するオペレーションシステムの定義情報を考慮せずに文字入力システムを開発することが可能になり、またプログラムの構成を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による文字入力システムが組み込まれたコンピュータシステムの構成を示す図である。
【図2】文字入力システムが立ち上げるGUIウィンドウの構成例を示す図である。
【図3】日本語入力モードにおける文字入力の例を示す図である。
【図4】韓国語入力モードにおける文字入力の例を示す図である。
【図5】日本語入力システムによる処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】従来の文字入力システムが組み込まれたコンピュータシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明を適用した文字入力システムが導入されたコンピュータシステムの例を示す、このコンピュータシステムには、オペレーションシステム(OS)1、このOS1の管理下で動作する文字入力システム2および複数のアプリケーションシステム3(図1では1つのみ示す。)、クリップボード4などが設けられる。
【0028】
さらにこの実施例のコンピュータシステムには、日本語、簡体字表記の中国語、繁体字表記の中国語、韓国語の4種類の言語について、それぞれ専用の辞書ファイルD1,D2,D3,D4が設けられる。文字入力システム2には、これらの辞書ファイルD1〜D4を用いて4種類の言語による文字列を設定する機能や、設定した文字列を、アプリケーションシステム3が実行中のアプリケーションウィンドウに入力する機能が設けられる。
【0029】
上記のコンピュータシステムは、キーボード、マウス、モニタ装置(いずれも図示を省略。)などが接続されたパーソナルコンピュータに組み込まれる。OS1としては、具体的には、Windows(登録商標)の所定のバージョンのものが採用される。なお、図1では、図示の便宜上、各辞書ファイルD1〜D4を文字入力システム2のブロックの外に配置しているが、これらの辞書ファイルD1〜D4も文字入力システム2に含まれるものである。
【0030】
上記の文字入力システム2は、OS1が動作している間、常駐状態に設定され、「ホットキー」と呼ばれる操作(Altキーまたはコントロールキーをその他の特定のキーと共に押下する操作)に応じて呼び出され、図2に示すようなGUIウィンドウ20を立ち上げる。
【0031】
このGUIウィンドウ20には、キーボード画像による操作部21が設けられると共に、その上方に2つの表示領域22,23が設けられる。1番上の表示領域22には、入力対象の文字列が表示されるので、以下、この領域22を「文字列表示エリア22」という。GUIウィンドウ20の中央に配置された領域23には、候補の文字列が一覧表示されるので、以下、この領域23を「候補表示エリア23」という。
【0032】
操作部21には、複数の文字キー24が配列されるほか、変換キー25、確定キー26、バックスペースキー27、および言語選択用の4つの選択キー28が設けられる。
【0033】
ホットキー操作により立ち上げられた直後のGUIウィンドウ20は、あらかじめ登録された標準言語を入力するように設定される。この実施例では、日本語を標準言語としており、操作部21には、平仮名が割り当てられた文字キー24が配列されている。この状態下で日本語以外の言語の選択ボタン28を操作すると、選択された言語による入力モードに切り替えられ、操作部21の文字キー24の配列も、選択された言語に対応するものに更新される。
【0034】
具体的には、簡体字表記の中国語が選択された場合には、ピンインが割り当てられた文字キー24が配列され、繁体字表記の中国語が選択された場合には、注音符号が割り当てられた文字キー24が配列される。また韓国語が選択された場合には、ハングルの字母が割り当てられた文字キー24が配列される。
【0035】
日本語の入力モードでは、文字キー24をクリックする操作に応じて平仮名文字列を組み立てると共に、日本語用の辞書ファイルD1を用いて、平仮名文字列を仮名漢字文字列に変換することができる。他の言語の入力モードでも、それぞれ文字キーの入力を受け付けながら、その言語用の辞書ファイルを参照し、言語の特性に応じた文字列の組み立て処理や変換処理を実行する。
【0036】
さらにこの実施例では、文字列の入力をより容易にするために、各言語の入力モードにそれぞれ予測変換機能を設けている。
【0037】
図3および図4は、ワードプロセッサ用のアプリケーションシステムが作成中の文書に文字入力を行う場合を例に、予測変換機能を用いた処理を示す。各図とも、上段に作成中の文書を示すアプリケーションウィンドウ30の変化を示し、下段にGUIウィンドウ20の変化を示す。各図の(イ)に示すように、立ち上げ直後のアプリケーションウィンドウ30では、実質的に表示されているのはカーソル31のみである。
【0038】
図3の例のGUIウィンドウ20には日本語入力モードが設定されている。図中の(A)は、文字キー24が2つ操作された時点のGUIウィンドウ20の表示状態を示すもので、丸印を付した文字キー24が操作されたキーであり、これらのキーの近傍に配置された丸付き数字は操作順序を示す(図4も同じ)。また、図中の29はマウスカーソルである。
【0039】
この実施例では、文字キー24を操作する都度、操作されたキーに割り付けられた文字(この例では「こ」と「ん」)が文字列表示エリア22に表示され、表示された文字列を「読み」の先頭とする単語が候補表示エリア23に一覧表示される。
【0040】
ここで、図3(B)に示すように、候補表示エリア23内に表示された候補のうちの1つを選択する操作(クリック操作により行われる。)が行われると、文字列表示エリア22の文字列は、選択された候補による文字列に置き換えられる(図3(C))。さらに、この状態下で確定キー26が操作されると、文字列表示エリア22に表示されている文字列(この例では「こんにちは」)がアプリケーションウィンドウ30に転送され、図3(ロ)に示すように、カーソル31の前に挿入される。これにより、GUIウィンドウ20での操作がアプリケーションウィンドウ30に反映された状態となる。
【0041】
つぎに、図4の例では、韓国語の入力モードが設定されている。この図の(A)も、文字キー24が2つ操作された時点のGUIウィンドウ20を示すもので、操作された文字キー24に割り付けられている字母が操作の順に文字列表示エリア22に表示される。また、これらの字母を含む文字が先頭に配置されている単語が、候補表示エリア23に一覧表示されている。
【0042】
この場合にも、表示された候補のうちの1つを選択する操作が行われると、文字列表示エリア22内の文字列が選択された候補の文字列に置き換えられる(図4(B)(C))。さらにこの状態下で確定キー26が操作されると、文字列表示エリア22に表示されている文字列がアプリケーションウィンドウ30に転送され、図4(ロ)に示すように、カーソル31の前に挿入される。
【0043】
簡体字表記や繁体時表記の中国語文字列を入力する場合にも、図3,4の例と同様に、文字キー24をクリック操作することにより文字列を組み立てながら、候補表示エリア23に候補の文字列を表示する。また、表示された候補の文字列の選択に応じて、文字列表示エリア22の表示を選択された候補の文字列に変更する点や、確定操作に応じて文字列表示エリア22内の文字列をアプリケーションウィンドウ30に転送する点についても、同様である。
【0044】
さらに、いずれの言語を入力する場合にも、変換操作や候補選択操作を繰り返して、複数の文節または複数の文を表す文字列を生成した後に、確定操作を行うことができる。
【0045】
ここで図1に戻って、上記のGUIウィンドウ20による文字入力処理の仕組みについて説明する。
まず、操作部21や候補表示エリア23におけるクリック操作を受け付けるには、OS1から文字入力システム2に、マウス操作のイベント情報を供給し、文字入力システム2がそのイベント情報の内容を認識する。すなわち、文字入力システム2では、OS1を介して文字入力に関する各種操作を受け付けて、その操作に応じた処理(文字または文字要素の組み立て、候補の抽出、候補の選択)を実行することにより、入力対象の文字列を設定する。
【0046】
またOS1から確定操作を示すイベント情報が与えられると、その時点で設定されている文字列(文字列表示エリア22に表示されている文字列)を出力するが、この出力は、クリップボード4に対して行われる。図1では、文字入力システム2からクリップボード4に直接文字列が出力されるように記載しているが、実際には、アプリケーションウィンドウ30に入力する対象の文字列を、貼り付け処理のためにクリップボード4に保存する情報として、文字入力システム2からOS1に送信し、OS1が当該文字列をクリップボード4に保存する。
【0047】
また、文字入力システム2では、ホットキー操作によりGUIウィンドウ20を立ち上げる際に、ホットキー操作の際にアクティブな状態にあったアプリケーションウィンドウ30の識別情報(ウィンドウハンドル)をOS1から取得する。そして、このウィンドウハンドルにより、出力された文字列の貼り付け対象となるアプリケーションウィンドウを指定して、擬似的な貼り付け操作を示すキーイベント情報(以下、「貼り付けキーイベント」という。)を送信する。
【0048】
上記の貼り付けキーイベントの送信も、正確にはOS1に対して行われ、OS1からウィンドウハンドルに対応するアプリケーションウィンドウ30を実行するシステム3に渡される。プログラムレベルで説明すると、ホットキー操作に応じて取得したウィンドウハンドルを引数とするSendInput関数を実行することになる。
【0049】
また、アプリケーションシステム3がクリップボード4から文字列を取得する処理も、正確には、アプリケーションシステム3からOS1にクリップボード4内の情報の転送を要求し、この要求に応じてOS1から転送された文字列を受け付けることにより行われる。
【0050】
上記によれば、人がGUIウィンドウ20の文字列表示エリア22に表示された文字列を選択してコピー操作(Ctrl+C)を行った後に、入力対象のアプリケーションウィンドウ30をアクティブにして貼り付け操作(Ctrl+V)を実行した場合と同様の動作が、自動的に実行されることになる。このような処理により、OS1が定義するIMEの動作を実行しなくとも、基本的なカットアンドペーストの機能を用いてアプリケーションウィンドウ30への文字入力を実行することができる。
【0051】
図5は、文字入力システム2により実行される一連の手順を示す。以下、このフローチャートに基づき、文字入力システム2が実行する処理を整理して説明する。
【0052】
まず、OS1の起動に続いて起動すると、ホットキーの登録内容や標準言語などの設定情報を読み込む処理(初期設定)を実行する(ST1)。以後は、ホットキー操作が行われるまで、非アクティブ状態で待機することになる。
【0053】
ホットキー操作が行われると(ST2が「YES」)、OS1に、現在アクティブ状態にあるアプリケーションウィンドウ30のウィンドウハンドルの送信を要求し、この要求に応じて送信されたウィンドウハンドルを取得する(ST3)。さらにGUIウィンドウ20を表示し(ST4)、以後は、マウス操作を受け付けたOS1からのイベント情報によりユーザが実行した操作内容を認識し、その操作に応じた処理を実行する。
【0054】
以下、GUIウィンドウ20の立ち上げ後に通常実行される処理を優先して説明する。
まず、立ち上げられたGUIウィンドウ20内の文字キー24が操作された場合(ST5,6が「NO」、ST7が「YES」)には、図3(A)および図4(A)に示したように、操作されたキーに対応する文字により入力対象の文字列を組み立てる(ST12)。また、現在の入力モードに対応する辞書ファイルを検索して、組み立てられた文字列に対応する候補の文字列を抽出し、抽出された文字列により候補表示エリア23内の表示を更新する(ST13)。
【0055】
つぎに、所定の時点で候補表示エリア23内の候補を選択する操作が行われた場合(ST8が「YES」)には、図3(C)および図4(C)に示したように、選択された候補の文字列により文字列表示エリア22内の表示を更新する(ST13)。
【0056】
なお、図5には明示していないが、文字列の組み立て後に変換キー25の操作が行われた場合にも、辞書ファイルを検索し、候補表示エリア23に所定数の候補を表示する。また、表示された候補の中の1つが選択された場合には、その候補の文字列により文字列表示エリア22内の表示を更新する。
【0057】
上記の各種操作により入力対象の文字列が設定された後に確定キー26が操作された場合(ST9が「YES」)には、その入力対象の文字列をクリップボード4に保存する対象の情報としてOS1に出力する(ST10)。さらにST3で取得したウィンドウハンドル宛の貼り付けキーイベントを出力する(ST11)。
【0058】
つぎに、選択キー28による言語の切替操作が行われた場合(ST5が「YES」)には、使用する辞書ファイルを選択された言語に対応するものに切り替えるとともに、操作部21の文字キー24のキーボード画像を変更する(ST15)。
【0059】
また、GUIウィンドウ20の各エリア22,23に何も表示されていない状態下でホットキー操作が行われた場合(ST6が「YES」)には、GUIウィンドウ20を非表示状態に設定する(ST16)。ただし、この後も再びホットキー操作があれば、ST2が「YES」となり、以下、上記の説明と同様の手順を実行することができる。
【0060】
なお、ST10で入力対象の文字列を出力する際には、この文字列をUnicode形式で表したデータとSJISコード形式で表したデータとの2種類を出力する。この出力を受けたOS1は、双方のデータをクリップボード4に保存する。また続いて出力された貼り付けキーイベントに応じて動作したアプリケーションシステム3も、2種類のデータを取り込んで、自システムで処理できる方のデータを選択する。なお、このとき貼り付け対象のアプリケーションウィンドウ30において、入力対象の言語に応じたフォントが選択されている場合には、選択されたフォントによる文字列を貼り付けることができる。
【0061】
アプリケーションシステム3で上記の貼り付け処理が実行される間は、OS1からの貼り付けイベントの送信により、一時的に、貼り付け対象のアプリケーションウィンドウ30がアクティブ状態になり、GUIウィンドウ20は非アクティブ状態となる。しかし、貼り付け処理が終了すると、再び、GUIウィンドウ20がアクティブ状態に復帰し、以後も、引き続き、操作に応じて入力対象の文字列を設定し、出力することができる。すなわち、GUIウィンドウ20が立ち上げられる直前にアクティブな状態であったアプリケーションウィンドウ30を再びアクティブ状態にして文字列を入力し、その後、再びGUIウィンドウ20をアクティブ状態に復帰させることにより、アプリケーションウィンドウ30のアクティブ状態を維持したまま動作する従来のIMEと同様の処理を実行することができる。
【0062】
さらに、文字入力処理の間に入力対象の言語を切り替える操作が行われた場合にも、その操作に応じて辞書ファイルや操作部21の表示を変更することができる(ST5,15)。
【0063】
上記の如く、この実施例の文字入力システム2によれば、ユーザは、4種類の言語を自由に選択して入力を行うことができる。また入力作業の途中で、言語を切り替える必要が生じた場合にも、表示中のGUIウィンドウ20内の選択ボタン28を操作することにより、容易に入力モードを切り替えることができる。また、いずれの言語を入力する場合にも、予測変換機能を利用して効率の良い入力を行うことができるので、利便性が大幅に向上する。
【0064】
なお、上記の実施例では、ホットキー操作によりGUIウィンドウ20を立ち上げるようにしたが、これに代えて、OS1のタスクバーに呼び出し用のアイコンを設け、このアイコンの操作に応じてGUIウィンドウ20を立ち上げるようにしてもよい。
【0065】
また、上記の実施例では、キーボード画像を含むGUIウィンドウ20によって、文字入力作業を支援するようにしたが、これに限らず、実際のキーボードからの操作に応じて入力対象の文字列を設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 オペレーションシステム(OS)
2 文字入力システム
3 アプリケーションシステム
4 クリップボード
20 GUIアプリケーション
21 操作部
22 文字列表示エリア
23 候補表示エリア
24 文字キー
26 確定キー
30 アプリケーションウィンドウ
D1,D2,D3,D4 辞書ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレーションシステムと、オペレーションシステムの管理下で動作するアプリケーションシステムと、貼り付け対象の情報を一時保存するためのメモリシステムとが設けられたコンピュータに、アクティブ状態のアプリケーションウィンドウへの文字入力処理を実行する機能を設定するためのプログラムであって、
前記オペレーションシステムからの呼び出しに応じて、アクティブな状態にあるアプリケーションウィンドウの識別情報をオペレーションシステムから取得する識別情報取得手段、
文字入力に関する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けて、その操作に応じた文字列を設定する文字列設定手段、
前記文字列設定手段により設定された文字列を前記アプリケーションウィンドウに入力する旨の操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けたとき、当該文字列を前記メモリシステムに保存するために選択した情報としてオペレーションシステムに出力する文字列出力手段、および
前記文字列が出力されたことに応じて、前記識別情報取得手段が取得した識別情報のアプリケーションウィンドウに貼り付け操作のキーイベント情報を送る旨の要求を前記オペレーションシステムに出力するキーイベント発生要求手段、として前記コンピュータを機能させる、ことを特徴とする文字入力用のプログラム。
【請求項2】
前記文字列設定手段には、複数種の言語の中の1つを選択する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けて、当該操作により選択された言語を入力対象の言語として認識する認識手段と、文字または文字要素を入力する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けて、受け付けた入力情報により前記入力対象として認識した言語の辞書ファイルを検索することにより、前記入力操作に応じた変換候補の文字列を抽出し、表示する変換候補抽出手段と、表示された変換候補を選択する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けたとき、その操作により選択された変換候補の文字列を前記メモリシステム内に保存する文字列として確定する文字列確定手段とが設けられている、請求項1に記載された文字入力用のプログラム。
【請求項3】
前記文字列設定手段には、認識手段により認識された入力対象の言語について、当該言語用の文字または文字要素が割り付けられたキーボードの画像を含むGUIウィンドウを表示するGUI表示手段がさらに含まれており、
前記変換候補抽出手段は、GUI表示手段が表示したウィンドウ内のキーを選択する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けて、操作されたキーに対応する文字または文字要素を認識し、その認識結果に基づき前記入力対象の言語の辞書ファイルに対する検索処理を実行する請求項2に記載された文字入力用のプログラム。
【請求項4】
オペレーションシステムと、オペレーションシステムの管理下で動作する所定数のアプリケーションシステムと、貼り付け対象の情報を一時保存するためのメモリシステムと、アクティブ状態のアプリケーションウィンドウへの文字入力処理を実行する文字入力システムとが設けられた情報処理装置であって、
前記文字入力システムは、
前記オペレーションシステムからの呼び出しに応じて、この呼び出し時にアクティブな状態にあったアプリケーションウィンドウの識別情報をオペレーションシステムから取得する識別情報取得手段と、
文字入力に関する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けて、その操作に応じた文字列を設定する文字列設定手段と、
前記文字列設定手段により設定された文字列を前記アプリケーションウィンドウに入力する旨の操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けたとき、当該文字列を前記メモリシステムに保存するために選択した情報として前記オペレーションシステムに出力する文字列出力手段と、
前記文字列が出力されたことに応じて、前記識別情報取得手段が取得した識別情報のアプリケーションウィンドウに貼り付け操作のキーイベント情報を送る旨の要求を前記オペレーションシステムに出力するキーイベント発生要求手段とを、具備する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
前記文字入力システムには、複数種の言語について、それぞれ専用の辞書ファイルが設けられており、
前記文字列設定手段には、複数種の言語の中の1つを選択する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けて、当該操作により選択された言語を入力対象の言語として認識する認識手段と、文字または文字要素を入力する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けて、受け付けた入力情報により前記入力対象として認識した言語の辞書ファイルを検索することにより、前記入力操作に応じた変換候補の文字列を抽出し、表示する変換候補抽出手段と、表示された変換候補を選択する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けたとき、その操作により選択された変換候補の文字列を前記メモリシステム内に保存する文字列として確定する文字列確定手段とが設けられている、
請求項4に記載された情報処理装置。
【請求項6】
前記文字列設定手段には、認識手段により認識された入力対象の言語について、当該言語用の文字または文字要素が割り付けられたキーボードの画像を含むGUIウィンドウを表示するGUI表示手段がさらに含まれており、
前記変換候補抽出手段は、GUI表示手段が表示したウィンドウ内のキーを選択する操作を前記オペレーションシステムを介して受け付けて、前記操作されたキーに対応する文字または文字要素を認識し、その認識結果に基づき前記入力対象の言語の辞書ファイルに対する検索処理を実行する、請求項5に記載された情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−217961(P2010−217961A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60715(P2009−60715)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】