説明

文字入力装置

【課題】 キーボードを使用せずに、文字を入力できるようにする。
【解決手段】
X軸加速度センサ12、Y軸加速度センサ14及びZ軸加速度センサ16は、携帯電話機10の各軸方向の動きの加速度を検出する。筆跡データベース20は、各文字の筆跡パターン、即ち書き順とその軌跡の情報を記憶する。文字認識装置18は、加速度センサ12,14,16の出力を筆跡データベース20に照合して、ユーザによる携帯電話機10の動きで示される文字を認識する。文字認識装置18は、認識された文字を示す文字コードを電子メールソフトウエア22及び表示装置24に印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に対して文字を入力する文字入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キーボードを使用せずに,文字を入力する手段としおて、感圧パッド上でペンなどで文字をなぞり、その記入されたパターンを文字として認識する手書き認識法や、ボタン操作により文字を入力する方法がある。更には、手書き操作やボタン操作を使わずに文字入力を行う方法として、空中に指で軌跡を描く方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、指先にLED(発光ダイオード)を点灯させ、動画カメラで軌跡を認識する技術が記載されている。特許文献2には、指の軌跡をカメラで撮影し、音声認識と一体とすることで、認識率を上げる方法が記載されている。特許文献3には、ジャイロや加速度センサの動作認識器によって、操作者の動きを感知し、認識器の動かす方向や動かし方で、決められた文字配列の中から文字を選択する方法が記載され、特許文献4には、加速度センサにより漢字変換候補を選択する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平10−97361号公報
【特許文献2】特開2002−259046号公報
【特許文献3】特開平10−63412号公報
【特許文献4】特開2000−194693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、外光の影響を大きく受け、認識率が悪い。特許文献2に記載の方法では、声を出す必要があり、静かにすべき環境では使用できない。特許文献3に記載の構成では、文字配列が予め設定されているので、動きと配列の関係を暗記しておくか、又は、どの文字が選択されている常時、視覚的に確認する必要があるので、使用者に負担となり、使用場所が限定される。特許文献4に記載の方法では、変換候補を事前に設定しておく必要があり、任意に文字を入力することができない。
【0005】
本発明は、従来技術のこのような問題点を解決し、簡易に文字等を電子機器に入力できる文字入力装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る文字入力装置は、筐体に固定されるX軸加速度センサと、当該筐体に固定されるY軸加速度センサと、筆跡データベースと、当該X軸加速度センサ及び当該Y軸加速度センサの出力を当該筆跡データベースに照合して、当該筐体の移動により示される文字を認識する文字認識装置とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る文字入力装置は、筐体に固定され、当該筐体の所定軸方向の移動を検出する加速度センサと、当該筐体の当該所定軸方向の移動時間を計測する時間計測手段と、筆跡データベースと、当該加速度センサの出力及び当該時間計測手段の計測結果を当該筆跡データベースに照合して、当該筐体の移動により示される文字を認識する文字認識装置とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加速度センサで筐体の移動を検出するので、使用環境状態に依存せずに利用できる。また、高い認識率を得ることができる。小型の携帯電子機器などに収容できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示し、図2は、本実施例の動作フローチャートを示す。本実施例は、携帯装置、例えば携帯電話機に実装されており、ここでは、電子メールソフトウエアに文字を入力する手段として使用される。
【0011】
本実施例の携帯電話機10は、携帯電話機10の3次元方向の移動を検出する3軸の加速度センサ、即ちX軸加速度センサ12、Y軸加速度センサ14及びZ軸加速度センサ16を具備する。加速度センサ12,14,16は携帯電話機10の筐体に固定されている。加速センサ12,14,16は、携帯電話機10の各軸方向の動きの加速度を検出する。加速度センサ12,14,16の出力は文字認識装置18に入力される。文字認識装置18は、実際には、ソフトウエアプログラムとして携帯電話機10に実装される。筆跡データベース20は、各文字の筆跡パターン、即ち書き順とその軌跡の情報を記憶する。文字認識装置18は、加速度センサ12,14,16の出力を筆跡データベース20に照合して、ユーザによる携帯電話機10の動きで示される文字を認識する。文字認識装置18は、認識された文字を示す文字コードを電子メールソフトウエア22及び表示装置24に印加する。表示装置24は、印加された文字コードに対応する文字を画面上に表示する。
【0012】
図2を参照して、本実施例の使用方法と動作を説明する。
【0013】
携帯電話機10の適当な操作で本実施例による文字入力モードを有効にする。文字入力の開始・終了を示す操作、および、文字の各要素又は辺(以下、文字要素という。)の開始・終了(いわゆる、ペンダウンとペンアップ)を示す操作を予め決めておく。本実施例では、携帯電話機を横方向に移動させる操作、即ち、x−y面内の移動操作で文字を表記することとし、携帯電話機10を前後に移動させる操作、即ちz軸方向の移動操作で、文字入力の開始(と終了)、及び文字内での各文字要素の開始(と終了)を指示するとする。本実施例では、携帯電話機10を瞬間的に遠ざける方向に移動させる動作で、文字内での各文字要素の筆記開始(ペンダウン)を指示し、逆に、携帯電話機10を瞬間的に近づける方向に移動させる動作で、文字内での各文字要素の筆記終了(ペンアップ)を指示する。
【0014】
また、例えば,一定時間以上、携帯電話機10を静止させることが、文字認識装置18への文字入力終了を文字認識装置18に指示する。この場合、一定時間、携帯電話機10を静止させた後での、携帯電話機10を瞬間的に遠ざける方向に移動させる動作は、新たな文字入力の開始を意味し、この移動動作に応じて、文字認識装置18は、新たな文字の記入に備える。勿論、新たな文字の入力を指示する操作を別に決めておいても良い。そうすれば、文字認識装置18による文字認識処理を高速化できる。
【0015】
文字入力開始の操作に従い(S1)、文字認識装置18は、各加速度センサ12,14,16の出力電圧を取り込む(S2)。図3は、携帯電話機10を空中で移動させて、カタカナ「イ」を表記した場合の、携帯電話機10のx−y面内の移動軌跡例を示す。図4(a),(b),(c)はそれぞれ、各加速度センサ12,14,16の出力電圧の時間変化例を示す。携帯電話機10を遠ざけるように移動させる操作により、文字入力の開始(ペンダウン)、即ち新たな文字の最初の文字要素の入力の開始になり、これ以後の期間T1に、使用者は、図3に示すように、x−y面内の右上から左下に携帯電話機10を移動する。期間T1には、X軸加速度センサ12の出力電圧は図4(a)に示すように変化し、Y軸加速度センサ14の出力電圧は、図4(b)に示すように変化する。
【0016】
1文字分の入力が終了するまで(S3)、文字認識装置18は、文字の要素毎に各加速度センサ12,14,16の出力電圧を取り込む(S2)。
【0017】
1文字分の入力が終了すると(S3)、文字認識装置18は、入力された筆順の軌跡を筆跡データベース20に照合することで、入力文字を認識し(S4)、認識した文字を示す文字コードを電子メールソフトウエア22及び文字表示装置24に出力する。文字表示装置24は、文字認識装置18で認識された文字を表示する。これにより、使用者は、入力文字を確認できる。文字表示装置24に表示される文字が意図した文字ではない場合には、所定の操作で削除する。文字表示装置24に表示された文字が、電子メールソフトウエア22に入力されている。
【0018】
以上の操作(S1〜S5)を、必要な文字だけ繰り返す(S6)。
【0019】
このようにして、本実施例では、入力したい文字をなぞるように手持ちの携帯電話機10を空中で動かすことで、所望の文字を入力できる。
【0020】
言うまでも無いことだが、文字に限らず、円(○)や四角(□)、三角(△)、矢印など、所望の記号を入力でき、文字表示装置24に表示することができる。
【0021】
また、筆跡とは関連の無い文字や記号を表示させることも可能である。例えば、筆跡にて「○」を描き、「○」と描かれたことを認識したあと、文字表示装置24には「円」という文字を表示させるということも可能である。
【実施例2】
【0022】
図5は、本発明の第2実施例の概略構成ブロック図を示す。図1に示す実施例と同様に動作する構成要素には、同じ符号を付してある。
【0023】
この実施例の携帯電話機10aでは、携帯電話機10aの移動による筆記入力の有効/無効を文字単位で指示する操作ボタン21を設けた。この実施例では、携帯電話機10aの移動により入力される文字を、文字要素の区切り無しに、一筆書きのように一連の連続する移動軌跡で認識する。そのために、筆跡データベース20aには予め、文字毎に一筆書きに準じた軌跡データを収容しておく。
【0024】
図6は、本実施例の動作フローチャートを示す。操作ボタン21がオンになると(S21)、文字認識装置18aは、操作ボタン21がオフになるまで(S13)、加速度センサ12,14,16の出力を取り込む(S12)。操作ボタン21がオフになると(S13)、文字認識装置18aは、それまでに取り込んだ加速度センサ12,14,16の出力で示される携帯電話機10aの移動軌跡を筆跡データベース20aに照合することで、入力文字を認識する(S14)。文字認識装置18aは、認識した文字を示す文字コードを電子メールソフトウエア22及び文字表示装置24に出力する。文字表示装置24は、文字認識装置18aで認識された文字を表示する。これにより、使用者は、入力文字を確認できる。文字表示装置24に表示される文字が意図した文字ではない場合には、所定の操作で削除する。文字表示装置24に表示された文字が、電子メールソフトウエア22に入力されている。
【0025】
以上の操作(S11〜S15)を、必要な文字だけ繰り返す(S16)。
【0026】
このようにして、本実施例では、入力したい文字をなぞるように手持ちの携帯電話機10を空中で動かすことで、所望の文字を入力できる。
【0027】
実施例1と同様に、携帯電話機10aを前後に瞬間的に移動させることで、文字要素の区切りを入力するようにしてもよい。この場合、文字認識装置18aの文字認識アルゴリズムは、文字認識装置18のそれと同じでよく、筆跡データベース20aは、筆跡データベース20と同じでよい。
【実施例3】
【0028】
携帯機器を空中で移動させて文字を描く場合、一平面上に記入するように描かれるのが普通であり、この観点では、携帯機器の移動は2軸、例えばx軸とy軸で検出すれば足りる。特に、文字要素の区切り無しで、一筆書きで入力文字を認識する場合、z軸方向の移動を検出する必要性は無い。即ち、z軸加速度センサ16を省略できる。
【実施例4】
【0029】
1軸の加速度センサのみでも、各文字要素の筆記時間をモニタすることで、文字を認識することができる。図7は、1軸の加速度センサのみ(この実施例では、X軸加速度センサ12)を有する実施例の概略構成ブロック図を示す。筆跡データベース20bのデータも、携帯電話器10bの移動に対する測定パラメータに従い変更されることはいうまでもない。
【0030】
携帯電話機10bは、加速度センサとしてX軸加速度センサ12のみを具備し、更に、携帯電話機10bのX軸方向の移動時間を計測するために文字認識装置18bが参照するタイマ26を具備する。タイマ26自身が、X軸加速度センサ12の出力に従い、携帯電話機10bのX軸方向の移動時間を計測しても良い。
【0031】
図8は、本実施例の動作フローチャートを示す。操作ボタン21がオンになると(S21)、文字認識装置18bは、操作ボタン21がオフになるまで(S13)、X軸加速度センサ12の出力を取り込むと共に、タイマ26を参照して、X軸のプラス方向及びマイナス方向の移動時間をそれぞれ計測する(S22)。操作ボタン21がオフになると(S13)、文字認識装置18bは、それまでに取り込んだ加速度センサ12の出力で示される携帯電話機10bのX軸上の移動方向と移動時間の一連のデータを筆跡データベース20bに照合することで、入力文字を認識する(S24)。文字認識装置18bは、認識した文字を示す文字コードを電子メールソフトウエア22及び文字表示装置24に出力する。文字表示装置24は、文字認識装置18b認識された文字を表示する。これにより、使用者は、入力文字を確認できる。文字表示装置24に表示される文字が意図した文字ではない場合には、所定の操作で削除する。文字表示装置24に表示された文字が、電子メールソフトウエア22に入力されている。
【0032】
以上の操作(S21〜S25)を、必要な文字だけ繰り返す(S26)。
【0033】
このようにして、単一の加速度センサ12のみでも、入力したい文字をなぞるように手持ちの携帯電話機10bを空中で動かすことで、所望の文字を入力できる。X軸加速度センサ12の代わりに、Y軸加速度センサ14を用いてもよい。これにより、簡易な構成にても実施できる。
【0034】
以上の各実施例では、入力された文字を利用するアプリケーションとして、電子メールソフトウエアを例示したが、その他のアプリケーション、例えばワードプロセッサ等に利用可能であることは明らかである。
【0035】
携帯電話機に適用した実施例を説明したが、その他の携帯機器、例えば、PDAやノートパソコン、マウス等に加速度センサにも適用可能である。加速度センサ12,14,16と文字認識装置18,18a,18bを別体としてもよい。
【0036】
加速度センサ12,14,16の出力電圧信号は、連続値であっても、0、プラス及びマイナスをそれぞれ示す3値信号であってもよい。
【0037】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】第1実施例の動作フローチャートである。
【図3】筆記パターン例である。
【図4】加速度センサ12,14,16の出力例である。
【図5】本発明の第2実施例の概略構成ブロック図である。
【図6】第2実施例の動作フローチャートである。
【図7】本発明の別の実施例の概略構成ブロック図である。
【図8】図7に示す実施例の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
10,10a,10b:携帯電話機
12:X軸加速度センサ
14:Y軸加速度センサ
16:Z軸加速度センサ
18,18a,18b:文字認識装置
20,20a,20b:筆跡データベース
21:操作ボタン
22:電子メールソフトウエア
24:文字表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に固定されるX軸加速度センサ(12)と、
当該筐体に固定されるY軸加速度センサ(14)と、
筆跡データベース(20)と、
当該X軸加速度センサ(12)及び当該Y軸加速度センサ(14)の出力を当該筆跡データベース(20)に照合して、当該筐体の移動により示される文字を認識する文字認識装置(18,18a)
とを具備することを特徴とする文字入力装置。
【請求項2】
更に、当該筐体に固定されるZ軸加速度センサ(16)を具備することを特徴とする請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項3】
更に、文字要素の区切りを当該文字認識装置(18,18a)に指示する文字要素区切り指示手段(16)を具備することを特徴とする請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項4】
更に、当該筐体に固定されるZ軸加速度センサ(16)を当該文字要区切り指示手段として使用することを特徴とする請求項3に記載の文字入力装置。
【請求項5】
更に、文字の区切りを当該文字認識装置(18a)に指示する文字区切り指示手段(21)を具備することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の文字入力装置。
【請求項6】
筐体に固定され、当該筐体の所定軸方向の移動を検出する加速度センサ(12)と、
当該筐体の当該所定軸方向の移動時間を計測する時間計測手段(26)と、
筆跡データベース(20b)と、
当該加速度センサ(12)の出力及び当該時間計測手段(26)の計測結果を当該筆跡データベース(20b)に照合して、当該筐体の移動により示される文字を認識する文字認識装置(18b)
とを具備することを特徴とする文字入力装置。
【請求項7】
更に、文字要素の区切りを当該文字認識装置(18b)に指示する文字要素区切り指示手段(16)を具備することを特徴とする請求項6に記載の文字入力装置。
【請求項8】
更に、文字の区切りを当該文字認識装置(18b)に指示する文字区切り指示手段(21)を具備することを特徴とする請求項6又は7に記載の文字入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−79221(P2006−79221A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260365(P2004−260365)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】