説明

文書処理装置

【課題】原稿の特定領域に記載された情報が秘匿された文書であり、且つ、この秘匿された情報を復元可能な文書の印刷を可能にする文書処理装置を提供する。
【解決手段】文書処理装置が搭載された複合機は、スキャナによって読み取られた原稿の特定領域を抽出する抽出部21と、特定領域に記載された文字を認識して、文字コードを含む文字情報を生成する文字認識部22と、文字情報を含むQRコード(登録商標)を生成するQRコード(登録商標)生成部23と、QRコード(登録商標)を読取データに合成する合成部24と、読取データにおいて、特定領域を秘匿するための秘匿画像に特定領域を置換する置換部25と、合成及び置換がなされた文書データを印刷するプリンタとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿をスキャナにより読み取って画像データを生成し、生成した画像データを印刷することによりコピーを行う文書処理装置が広く知られている。特許文献1には、ユーザがキャッシュカードのコピー操作を行うと、個人情報が記載された領域をマスクして印刷する装置が記載されている。この装置では、キャッシュカードをスキャナにより読み取って画像データを生成し、生成した画像データに対してキャッシュカードの個人情報が記載された領域をマスクする画像処理を行う。そして、画像処理が施された画像データの印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−259114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装置によれば、特定の領域がマスクされた状態で印刷されるので、特定の領域に記載された情報を秘匿化することができる。これにより、例えば、個人情報、企業秘密といった機密情報が記載された文書をコピーしようとした場合に、機密情報が記載された領域を秘匿化することができる。
【0005】
一方で、後から、秘匿された内容を再び知りたい場合がある。すなわち、特定の領域が秘匿された文書から元の原稿に記載されていた情報を知りたい場合がある。しかしながら、上記特許文献1の装置によって印刷された文書からは、秘匿された情報を知ることができない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、原稿の特定領域に記載された情報が秘匿された文書であり、且つ、この秘匿された情報を復元可能な文書の印刷を可能にする文書処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る文書処理装置は、原稿を読み取って読取データを生成する読取手段と、読取手段によって読み取られた原稿の特定領域を読取データから抽出する抽出手段と、読取データから文字を認識して、文字コードを生成する文字認識手段と、特定領域内に記載された文字の文字コードを含む画像コードを生成する生成手段と、生成手段によって生成された画像コードを読取手段によって生成された読取データに合成する合成手段と、抽出手段によって抽出された特定領域を、該特定領域を秘匿するための秘匿画像に置換する置換手段と、合成手段による合成及び置換手段による置換がなされることにより生成された文書データを処理する処理手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る文書処理装置によれば、読取手段によって読み取られた原稿について特定領域の抽出と、読取データの文字認識とが行われる。これにより、原稿の特定領域に記載された文字の文字コードが生成される。そして、この文字コードを含む画像コードが生成手段によって生成され、生成された画像コードが合成手段によって読取データに合成される。また、読取データにおいて、抽出された特定領域が、置換手段によって秘匿画像に置換される。そして、画像コードの合成、及び、画像データの置換が行われることにより生成された文書データについて、印刷又はFAX送信等の処理が行われる。
【0009】
この文書データが、文書処理装置又はFAX送信先の装置等で印刷されると、原稿の特定領域が秘匿画像に置換され、上記の文字コードを含む画像コードの付加された文書が印刷される。この文書は、原稿の特定領域が秘匿画像に置換されているので、原稿の特定領域を秘匿することができる。また、この文書には、上記の画像コードが印刷されているので、この画像コードをデコードすることにより、原稿の特定領域に記載された文字コードを特定し、秘匿されていた情報を復元することができる。すなわち、本発明に係る文書処理装置によれば、原稿の特定領域に記載された情報が秘匿された文書であり、且つ、この秘匿された情報を復元可能な文書の印刷が可能となる。
【0010】
本発明に係る文書処理装置では、抽出手段が、原稿のマーキングされた領域を特定領域として抽出することが好ましい。この場合、例えば、ユーザが、原稿の秘匿したい部分をマーキングすることにより、マーキングされた領域を秘匿した文書を印刷することができる。この場合、ユーザは、原稿の秘匿したい部分を任意に設定することができる。
【0011】
本発明に係る文書処理装置では、抽出手段が、原稿上で予め定められた位置及び範囲を特定領域として抽出することが好ましい。この場合、一定のフォーマットで作成された原稿の特定領域を自動的に秘匿した文書を印刷することができる。
【0012】
本発明に係る文書処理装置では、抽出手段が、文字認識手段によって生成された文字コードの中から特定の文字列を検出し、該文字列に続く領域を特定領域として抽出することが好ましい。この場合、例えば、原稿に記載された「氏名」の後に続く個人名等を自動的に秘匿した文書を印刷することができる。
【0013】
本発明に係る文書処理装置では、文字認識手段によって生成された文字コードを暗号化する暗号化手段を備え、生成手段は、暗号化手段によって暗号化された文字コードを含む画像コードを生成することが好ましい。
【0014】
この場合、画像コードに含まれる文字コードが暗号化されているので、画像コードが権限のない第三者によってデコードされた場合でも、原稿の特定領域に記載された情報の流出を防止することができる。
【0015】
本発明に係る文書処理装置では、生成手段は、原稿における特定領域の位置及び範囲を示す情報を含む画像コードを生成することが好ましい。この場合、画像コードをデコードすることにより、原稿の特定領域に記載された文字と、原稿における特定領域の位置及び範囲が特定されるので、元の原稿を復元することが可能となる。
【0016】
本発明に係る文書処理装置では、読取手段によって生成された読取データに画像コードが含まれていた場合に、画像コードをデコードして文字コードを取得するデコード手段と、デコード手段によって取得された文字コードを用いて、特定領域に記載された情報を復元する復元手段とを備えることが好ましい。
【0017】
この好ましい構成によれば、原稿の特定領域が秘匿され、上記の画像コードが印刷された文書が、読取手段によって読み取られると、画像コードがデコード手段によってデコードされ、文字コードが取得される。そして、取得された文字コードを用いて特定領域に記載されていた情報が、文字情報として復元される。従って、特定領域が秘匿された文書から秘匿された情報を復元し、ユーザに復元した情報を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、原稿の特定領域に記載された情報が秘匿された文書であり、且つ、この秘匿された情報を復元可能な文書の印刷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る文書処理装置が搭載された複合機の構成を示すブロック図である。
【図2】複合機が有する制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】ユーザによって秘匿したい部分がマーキングされた原稿の一例である。
【図4】文書処理装置により生成された文書データが印刷された文書の一例である。
【図5】複合機の制御部による秘匿処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】複合機の制御部による復元処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、図1及び図2を用いて、実施形態に係る文書処理装置が搭載された複合機1の構成について説明する。図1は、実施形態に係る文書処理装置が搭載された複合機1の構成を示すブロック図である。図2は、複合機1が有する制御部20の構成を示すブロック図である。
【0021】
複合機1は、プリンタ、コピー、スキャナ、FAX、及びIFAX機能を有する。この複合機1は、原稿をスキャナで読み取りって読取データを生成し、読取データを用いて印刷処理、又は、FAX若しくはIFAXによる送信処理の対象となる文書データを生成する。複合機1は、原稿に秘匿すべき特定領域が含まれていると、特定領域を秘匿するための画像処理を読取データに施し、特定領域に記載された文字の情報を含むQRコード(登録商標、以下同様)を読取データに合成して文書データを生成する。
【0022】
複合機1は、上記機能を発揮するために、操作部11、表示部12、LANインターフェース13、スキャナ14、プリンタ15、NCU16、モデム17、IFAX制御部18、及び制御部20を備えている。なお、各部は通信線19で相互に通信可能に接続されている。以下、各構成要素について説明する。
【0023】
操作部11は、ユーザが複合機1を操作するために設けられた各種のファンクションキー等を備えている。表示部12は、LCD等を用いた表示装置であり、複合機1の動作状態、設定内容、及び各種のメッセージ等を表示する。ユーザは、表示部12の表示に応じて、操作部11を介した各種の操作を行うことができる。例えば、ユーザは、原稿を複合機1にセットした後、操作部11を用いてコピー、FAX、又はIFAX処理のいずれかの処理を指示する操作を行うことができる。
【0024】
LANインターフェース13は、パーソナルコンピュータ50が接続されたLAN51に接続されている。このため、複合機1は、パーソナルコンピュータ50を介してユーザから各種の操作を受け付けることができる。また、複合機1から出力される各種の情報をパーソナルコンピュータ50に設けられたディスプレイに表示させることができる。
【0025】
スキャナ14は、光学式の読取装置であり、原稿を読み取り、読取データを生成する。すなわち、スキャナ14は、特許請求の範囲に記載の読取手段として機能する。プリンタ15は、電子写真方式のプリンタであり、文書データを印刷処理する。すなわち、プリンタ15は、特許請求の範囲に記載の処理手段として機能する。その他、プリンタ15は、FAX及びIFAX機能により受信した文書データ等の印刷処理を行う。
【0026】
NCU16は、モデム17と接続されており、モデム17と公衆交換電話網(PSTN)52との接続を制御し、FAXの送受信を行う。NCU16は、文書データのFAX送信処理を行う。すなわち、NCU16は、特許請求の範囲に記載の処理手段として機能する。
【0027】
IFAX制御部18は、IFAXの送受信を制御する。IFAX制御部18は、設定された時間毎にサーバからLANインターフェース13を介して電子メールを受信する。また、IFAX制御部18は、文書データを電子メールに添付し、メールアドレス宛てに送信する。すなわち、IFAX制御部18は、特許請求の範囲に記載の処理手段として機能する。
【0028】
制御部20は、演算を行うマイクロプロセッサ、プログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、及びバックアップRAM等により構成されている。制御部20は、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、複合機1を構成するハードウェアを統合的に制御する。
【0029】
また、制御部20は、プログラムを実行することにより実現される機能的な構成要素として、抽出部21、文字認識部22、QRコード生成部23、合成部24、置換部25、デコード部26、及び復元部27を備える。このうち、抽出部21、文字認識部22、QRコード生成部23、合成部24、及び置換部25は、原稿の読取データを用いて、印刷処理等の対象となる文書データを生成するための構成要素である。デコード部26及び復元部27は、文書データが印刷された文書を元の原稿の読取データに復元するための構成要素である。以下、各要素について説明する。
【0030】
抽出部21は、スキャナ14によって読み取られた原稿の特定領域を文書データから抽出する。特定領域は、本実施形態では、原稿のマーキングされた領域である。図3を参照して、抽出部21によって抽出される特定領域について説明する。図3は、ユーザによって秘匿したい部分がマーキングされた原稿の一例を示す図である。
【0031】
図3に示されるように、原稿30には、「xxxx−yyyy」の文字が印字された特定領域31、「特許 太郎」の文字が印字された特定領域32、「XYZの試験結果」の文字が印字された特定領域33が、マーキングされている。例えば、ユーザが蛍光ペン等を用いて原稿上の任意の領域をマーキングすることができる。
【0032】
抽出部21は、原稿30を読み取って生成された読取データの中から矩形状の特定領域31〜33を抽出する。また、抽出部21は、抽出した特定領域31〜33の原稿上における位置及び範囲を示す情報を生成する。この位置及び範囲を示す情報は、例えば、矩形状の各特定領域31〜33について、原稿上における4隅の位置を示す座標データを用いることができる。
【0033】
文字認識部22は、抽出部21によって抽出された特定領域31〜33の画像データに対して、文字認識処理を実行する。文字認識処理によって、文字認識部22は、特定領域31〜33に記載された文字の文字コードと、文字のサイズを示す情報とを含む文字情報を生成する。すなわち、文字認識部22は、特許請求の範囲に記載の文字認識手段として機能する。なお、文字のサイズを示す情報は、文字の高さ及び幅を示す情報であってもよいし、予め記憶しているフォントデータを基準とした拡大率又は縮小率等を示す情報であってもよい。
【0034】
QRコード生成部23は、文字認識部22によって生成された文字情報と、抽出部21によって生成された特定領域31〜33の位置を示す座標データとを含むQRコードを生成する。すなわち、QRコード生成部23は、特許請求の範囲に記載の生成手段として機能する。
【0035】
図3に示す原稿30がスキャナ14によって読み取られた場合、QRコード生成部23によって生成されるQRコードには、特定領域31〜33についての文字情報及び座標データが含まれる。すなわち、QRコードには、特定領域31について「xxxx−yyyy」の文字を示す文字情報及び特定領域31の4隅の位置を示す座標データが含まれ、特定領域32について「特許 太郎」の文字を示す文字情報及び特定領域32の4隅の位置を示す座標データが含まれ、特定領域33について「XYZの試験結果」の文字を示す文字情報及び特定領域33の4隅の位置を示す座標データが含まれる。
【0036】
合成部24は、スキャナ14によって生成された読取データにQRコード生成部23によって生成されたQRコードを合成する。すなわち、合成部24は、特許請求の範囲に記載の合成手段として機能する。
【0037】
置換部25は、QRコードが合成された読取データにおいて、特定領域31〜33の画像データを、秘匿画像を示す秘匿画像データに置換して文書データを生成する。すなわち、置換部25は、特許請求の範囲に記載の置換手段として機能する。秘匿画像とは、特定領域31〜33に記載された情報を秘匿するための画像である。具体的には、秘匿画像は、特定領域31〜33に記載された文字を視認できないように、又は、視認し難くするための画像である。例えば、秘匿画像として、文字を削除した空白の画像、黒塗りの画像、文字の上に網掛けがなされた画像等を用いることができる。
【0038】
このQRコードの合成処理及び特定領域の置換処理が行われることにより生成された文書データについて、印刷処理、FAX送信処理、又はIFAX送信処理が行われる。このため、生成された文書データは、複合機1又はFAX若しくはIFAXの送信先の装置で印刷される。図4に印刷された文書の一例を示す。図4に示されるように、文書データが印刷された文書40は、特定領域31〜33が秘匿され、QRコード50が印刷されている。
【0039】
文書40において原稿30の特定領域31に相当する領域41は、網掛けが施されて、「xxxx−yyyy」の文字が視認し難くなっている。文書40において原稿30の特定領域32に相当する領域42は、空白となっており、原稿30に記載されていた文字「特許 太郎」は視認できない。文書40において原稿30の特定領域33に相当する領域43は、黒塗りされており、原稿30に記載されていた文字「XYZの試験結果」は視認できない。また、黒塗りや網掛けがされることにより、ユーザは領域41,43が秘匿化されていることを知ることができる。
【0040】
このように、文書40では、元の原稿30の全体イメージを崩さずに、特定領域31〜33に記載された文字が秘匿化されている。また、特定領域31〜33に記載された内容は、QRコード化されて文書40に印刷されている。ここで、この文書40を用いて特定領域31〜33に記載された内容を復元するデコード部26及び復元部27について説明する。
【0041】
デコード部26は、スキャナ14によって生成された文書データにQRコード50が含まれていると、QRコード50をデコードすることにより文字情報及び座標データを取得する。すなわち、デコード部26は、特許請求の範囲に記載のデコード手段として機能する。
【0042】
復元部27は、デコード部26によって取得された文字情報及び座標データを用いて、元の原稿30の読取データを復元する。すなわち、復元部27は、特許請求の範囲に記載の復元手段として機能する。
【0043】
具体的な処理を説明すると、復元部27は、文字情報から元の原稿30の特定領域31〜33に記載されていた文字と、その文字のサイズを特定する。また、復元部27は、座標データから文書40において特定領域31〜33に相当する領域41〜43を特定する。そして、復元部27は、文書40において特定領域31〜33に相当する領域41〜43の画像データを、文字情報によって示される文字を示す画像データに置換する。更に、復元部27は、QRコード50の画像データを削除する。以上の処理により、復元部27は、特定領域に記載された文字が秘匿化された文書40から元の原稿30の読取データを復元する。
【0044】
引き続いて、複合機1の動作を説明する。まず、原稿30の特定領域31〜33を秘匿化した文書40を印刷することができる文書データを生成する処理について説明する。この複合機1の制御部20による秘匿処理について、図5を用いて説明する。図5は、複合機1の制御部20による秘匿処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0045】
ユーザが原稿30を複合機1にセットし、コピー操作、FAX送信操作、又はIFAX送信操作を行うと、スキャナ14によって原稿30が読み取られ、読取データが生成される。ステップS101では、スキャナ14によって生成された読取データが読み込まれる。ステップS102では、原稿30にマーキングされた特定領域があるか否かが判断される。原稿30に特定領域がある場合は、ステップS103へ処理が進む。原稿30に特定領域がない場合は、ステップS106へ処理が進む。
【0046】
ステップS103では、読取データから特定領域31が抽出される。そして、ステップS104では、ステップS103で抽出された特定領域31に文字認識処理(OCR処理)を施すことにより文字情報を生成し、特定領域31の原稿30上の位置を示す座標データを生成する。ステップS105では、ステップS104で生成された文字情報及び座標データを一時保存する。次に再びステップS102へ処理が進み、全ての特定領域31〜33についてステップS103〜S105の処理が行われた後、ステップS106へ処理が進む。
【0047】
ステップS106では、ステップS105で一時保存された特定領域31〜33の文字情報及び座標データがあるか否かが判断される。ステップS105で一時保存された文字情報及び座標データがない場合は、ステップS110へ処理が進む。ステップS105で一時保存された文字情報及び座標データがある場合は、ステップS107へ処理が進む。
【0048】
ステップS107では、ステップS105において一時保存された文字情報及び座標データをQRコード化する。ステップS108では、ステップS107で生成したQRコード50を読取データに合成する。ステップS109では、特定領域31〜33を秘匿画像に置換することにより、特定領域31〜33を秘匿化するための画像処理を行う。
【0049】
ステップS110では、ステップS108でQRコード50が合成され、ステップS109で特定領域が置換されることにより生成された文書データが符号化圧縮される。そして、ステップS111では、符号化圧縮された文書データを蓄積する。これは、全てのページの原稿を処理するまで、一時的に文書データを保存するためである。なお、ステップS106で特定領域のデータがないと判断された場合は、ステップS110で読取データが処理対象の文書データとして符号化圧縮される。
【0050】
ステップS112では、次のページの原稿があるか否かが判断される。次のページの原稿がある場合は、ステップS101へ戻ってステップS101からステップS111までの処理が繰り返される。次のページの原稿がない場合は、ステップS113へ処理が進む。ステップS113では、ステップS111で蓄積された全ての文書データについて、ユーザの操作に応じた印刷処理、FAX送信処理、又はIFAX送信処理が行われる。
【0051】
以上の処理により印刷された文書40、又は、FAX若しくはIFAXの送信先の装置で印刷された文書40は、原稿30の特定領域31〜33が秘匿化され、特定領域31〜33に記載された文字の文字情報を含むQRコード50が印刷されている。この文書40から元の原稿30の読取データを復元する処理について、図6を用いて説明する。図6は、複合機1の制御部20による復元処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
ユーザが文書40を複合機1にセットし、復元処理を指示する操作を行うと、文書40がスキャナ14によって読み取られ、読取データが生成される。ステップS121では、スキャナ14によって生成された文書40の読取データが、読み込まれる。ステップS122では、読取データからQRコード50が抽出される。
【0053】
そして、ステップS123では、ステップS122で抽出されたQRコード50がデコードされ、特定領域31〜33の文字情報及び座標データが取得され、この取得された文字情報及び座標データを用いて、元の原稿30の読取データが復元される。ステップS124では、ステップS123で復元された元の原稿30の読取データが表示部12に表示される。これにより、文書40において秘匿されていた内容がユーザに提示される。
【0054】
続いて、ステップS125では、元の原稿30の読取データを印刷するか否かが判断される。ユーザから印刷をしない旨の指示を受け付けた場合は、処理が終了する。ユーザから印刷をする旨の指示を受け付けた場合は、ステップS126へ処理が進み、復元された元の原稿30の読取データを印刷する。これにより、原稿30が復元される。
【0055】
以上説明した本実施形態に係る複合機1によれば、原稿30の特定領域31〜33に記載された文字の文字情報を含むQRコード50が合成され、特定領域31〜33が秘匿画像に置換された文書データが生成される。この文書データが印刷された文書40は、原稿30の特定領域31〜33が秘匿画像に置換されているので、原稿30の特定領域31〜33に記載された内容を秘匿することができる。また、この文書40には、QRコード50が印刷されているので、このQRコード50をデコードすることにより、原稿30の特定領域31〜33に記載された文字を特定し、秘匿されていた情報を復元することができる。すなわち、本実施形態に係る複合機1によれば、原稿の特定領域に記載された情報が秘匿され、且つ、秘匿された情報の復元が可能な文書について、印刷、FAX送信、及びIFAX送信を行うことができる。
【0056】
また、複合機1では、原稿30のマーキングされた領域を特定領域31〜33として抽出するので、ユーザが原稿の秘匿したい部分を任意に設定することができる。
【0057】
更に、複合機1では、QRコード50が印刷された文書40が、スキャナ14によって読み取られると、QRコード50がデコードされ、文字情報及び座標データが取得される。そして、取得された文字情報及び座標データを用いて、元の原稿30の読取データを復元することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、原稿30のマーキングされた領域を特定領域としたが、これに限られない。原稿上で予め定められた位置及び範囲を特定領域として抽出してもよい。例えば、原稿上で予め定められた位置及び範囲を、原稿上における4隅の位置を示す座標データによって特定することができる。この場合、一定のフォーマットで作成された原稿の特定領域を秘匿する文書データを生成することができる。
【0059】
また、原稿において特定の文字列に続く領域を特定領域として抽出してもよい。この場合、スキャナ14によって生成された読取データの文字認識処理が行われた後、抽出部21が、生成された文字コードの中から特定の文字列を検出し、検出された特定の文字列に続く領域を特定領域として抽出する。例えば、原稿に記載された「氏名」の後に続く個人名が記載された領域を特定領域として抽出する。これにより、個人情報等、特定の情報を自動的に秘匿化することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、文字コードを含む文字情報をそのままQRコード化したが、文字コードを暗号化してからQRコード化してもよい。この場合、QRコードが権限のない第三者によってデコードされた場合でも、原稿の特定領域に記載された情報の流出を防止することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、文字情報をQRコード化したが、QRコードに限られず、文字コードを一見して内容が分からない程度に暗号化した画像コードであればよく、QRコード以外の二次元コード、又は、バーコードといった一次元コード等であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、文字コード、文字のサイズ情報、及び座標データをQRコードに含めることとしたが、これに限られず、QRコードに含める情報は文字コードだけであってもよい。この場合、QRコードをデコードすることにより、文字コードを取得し、秘匿領域に記載された情報を復元することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 複合機
11 操作部
12 表示部
13 LANインターフェース
14 スキャナ
15 プリンタ
16 NCU
17 モデム
18 IFAX制御部
20 制御部
21 抽出部
22 文字認識部
23 QRコード生成部
24 合成部
25 置換部
26 デコード部
27 復元部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取って読取データを生成する読取手段と、
前記読取手段によって読み取られた原稿の特定領域を前記読取データから抽出する抽出手段と、
前記読取データから文字を認識して、文字コードを生成する文字認識手段と、
前記特定領域内に記載された文字の文字コードを含む画像コードを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された画像コードを前記読取手段によって生成された読取データに合成する合成手段と、
前記抽出手段によって抽出された特定領域を、該特定領域を秘匿するための秘匿画像に置換する置換手段と、
前記合成手段による合成及び前記置換手段による置換がなされることにより生成された文書データを処理する処理手段と、
を備えることを特徴とする文書処理装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、前記原稿のマーキングされた領域を前記特定領域として抽出することを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、前記原稿上で予め定められた位置及び範囲を前記特定領域として抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載の文書処理装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記文字認識手段によって生成された文字コードの中から特定の文字列を検出し、該特定の文字列に続く領域を前記特定領域として抽出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の文書処理装置。
【請求項5】
前記文字認識手段によって生成された文字コードを暗号化する暗号化手段を備え、
前記生成手段は、前記暗号化手段によって暗号化された文字コードを含む画像コードを生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の文書処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記原稿における前記特定領域の位置及び範囲を示す情報を含む前記画像コードを生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の文書処理装置。
【請求項7】
前記読取手段によって生成された読取データに前記画像コードが含まれていた場合に、前記画像コードをデコードして前記文字コードを取得するデコード手段と、
前記デコード手段によって取得された文字コードを用いて、前記特定領域に記載された情報を復元する復元手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の文書処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−151469(P2011−151469A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9112(P2010−9112)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】