説明

斜めカット面への摩擦圧接方法及びその摩擦圧接機

【課題】ワークに任意角度のカット面を形成し、このカット面に他のワークを摩擦圧接できる機械及びこれを用いた摩擦圧接法の提供を目的とする。
【解決手段】Z軸方向にチャック中心を有するワークチャック保持手段と、X,Y軸方向制御及びB軸旋回制御されたスピンドルとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの斜めカット面に他のワークを摩擦圧接するのに適した摩擦圧接機及び摩擦圧接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク同士の接合面に回転摩擦力を生じさせ、この回転摩擦で生じた熱エネルギーを利用し、押圧固相接合する摩擦圧接法は公知である(特許文献1)。
しかし、従来の摩擦圧接は2つのワークを垂直カット面同士で接合するものであり、ワークの斜めカット面に他のワークを摩擦圧接できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−272834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ワークに任意角度のカット面を形成し、このカット面に他のワークを摩擦圧接できる機械及びこれを用いた摩擦圧接法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る摩擦圧接機は、Z軸方向にチャック中心を有するワークチャック保持手段と、X,Y軸方向制御及びB軸旋回制御されたスピンドルとを備えたことを特徴とする。
本発明は、ワークの斜めカット面に他のワークを摩擦圧接できることが特徴であるが、B軸旋回制御されたスピンドルの他に前記ワークチャック保持手段と対向して、第2のチャック保持手段を備え、対向配置したチャック保持手段の少なくとも一方にスピンドルを有し、且つ少なくともどちらか一方にZ軸方向送り制御手段を設けるとワークの垂直カット面と斜めカット面の両方を選択して摩擦圧接することも可能である。
【0006】
本発明に係る摩擦圧接方法は、Z軸方向にチャック中心を有するワークチャック保持手段と、X,Y軸方向制御及びB軸旋回制御されたスピンドルとを備え、ワークチャック保持手段にワークW1をチャック保持し、前記スピンドルに工具を取り付け、当該工具を用いてワークW1に接合面を切削形成し、次に、前記スピンドルに取り付けた工具とワークW2を交換し、当該スピンドルの回転及び加圧によりワークW2をワークW1の接合面に摩擦圧接することを特徴とする。
ここで、スピンドルの回転及び加圧は加圧プログラムによりサーボ制御されているのが好ましい。
さらには、加圧プログラムに、目標加圧力範囲と目標送り量範囲とが設定され、ワークW2への加圧力が目標範囲に到達していないのに送り量が目標範囲の上限に到達した場合には加圧力不足と判定し、ワークW2の加圧力が目標範囲の上限に到達しているのに送り量が目標範囲に到達していない場合には加圧量不足と判定することも可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る摩擦圧接機にあっては、Z軸方向にチャック中心を有するワークチャック保持手段にワークをチャック保持し、X,Y軸方向制御及びB軸旋回制御されたスピンドルを備えているので、スピンドルに切削工具を取り付けるとワークチャック保持手段にチャック保持した第1のワークの切削加工ができ、スピンドルに第2のワークを取り付けると第1のワークの切削面に第2のワークを摩擦圧接でき、スピンドルはB軸旋回制御されているので第1のワークのカット面はZ軸に対して任意の角度設定が可能である。
【0008】
また、スピンドルの送り制御をサーボ機構で行い、加圧プログラムに送り量の目標座標範囲及び目標加圧力範囲を設定入力することで、接合部の接合品質維持が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ワークW1に斜めカット面を形成し、次にこのカット面にワークW2を摩擦圧接する例を示す。
【図2】摩擦圧接機にスピンドルの他に刃物台を備えた例を示す。
【図3】本発明に係る摩擦圧接機の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る摩擦圧接機の実施例を図3に示す。
オペレーター手前側が下に向けて傾斜したスラント型ベース1の上に、左右対向してL側主軸20とR側主軸10を配置した例になっている。
L側主軸20は主軸モーターにて回転駆動制御されたL側チャック21を有し、R側主軸10は主軸モーターにて回転駆動制御されたR側チャックと、ボールネジ13とR側送りモーター12との組み合せによる送り制御手段を備えている。
ベース1の上部側にはベース面に沿ったX軸方向及びベース面と垂直方向のY軸方向に制御され、且つB軸旋回制御されたB軸旋回刃物台30を備えている。
このB軸旋回刃物台30はスピンドル31を有している。
また、本実施例では、主軸の下側にタレット41を有する刃物台40を備えた例になっている。
刃物台40はボールネジ42aと送りモーター42との組み合せにてZ軸方向移動制御され、送りモーター43,44によりX,Y軸方向に移動制御されている。
【0011】
次に図1に基づいて本発明に係る摩擦圧接法の実施例を説明する。
L側チャック21に第1のワークW1をチャック保持し、L側主軸は回転が停止固定されている。
本発明においてL側チャック21に回転機能が必ずしも必要でないが、L側チャック21もL側主軸モーターにて回転駆動制御されているとR側主軸とにて摩擦圧接や、旋削加工等が連続的に行うこともできる。
B軸旋回刃物台30に備えたスピンドル31にミーリングツール32を装着し、ワークW1のコーナーdをカットし、接合面aを任意の角度で形成する。
【0012】
次にスピンドル31からミーリングツール32を取り外し、ホルダー33を装着し、このホルダー33に第2のワークW2を取り付ける。
ワークW1の接合面aとワークW2とを接触させた状態でB軸旋回刃物台30を加圧プログラムに従って据え込み加圧力を加えつつ、スピンドル31を回転させる。
この際に、加圧プログラムには目標加圧力範囲と目標とする送り量範囲を示す目標座標範囲が入力されている。
目標加圧力範囲に到達する前に送り量が目標座標範囲の上限に到達した場合には、加圧力不足としてアラームが鳴り、目標加圧力範囲の上限に到達したが送り量が目標座標範囲まで到達していない場合には、加圧量不足としてアラームが鳴るようになっている。
これにより、所定の範囲の加圧力と加圧量が得られた場合は、接合面の据え込み状態が良好と判定され、次にスピンドルの回転が停止し、ワークW2にアプセット圧が加えられる。
このアプセット工程においても目標加圧力範囲と目標送り量範囲が加圧プログラムに入力設定され、加圧力又は加圧量が不足した場合には据え込み工程と同様にアラームが鳴るようになっている。
摩擦圧接が完了すると、図1(c)に示すようにスピンドルが後退する。
【0013】
本実施例では、刃物台40を有しているので図2(a)に示すようにバイトツール46等にて下加工した後に図2(b),(c)に示すように摩擦圧接することも可能である。
摩擦圧接する手順は図1にて説明した内容と同様なので説明を省略する。
【符号の説明】
【0014】
10 R軸主軸
11 R側チャック
12 R側送りモーター
13 ボールネジ
20 L側主軸
21 L側チャック
30 B軸旋回刃物台
31 スピンドル
40 刃物台
41 タレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z軸方向にチャック中心を有するワークチャック保持手段と、X,Y軸方向制御及びB軸旋回制御されたスピンドルとを備えたことを特徴とする摩擦圧接機。
【請求項2】
Z軸方向にチャック中心を有するワークチャック保持手段と、X,Y軸方向制御及びB軸旋回制御されたスピンドルとを備え、
ワークチャック保持手段にワークW1をチャック保持し、
前記スピンドルに工具を取り付け、当該工具を用いてワークW1に接合面を切削形成し、
次に、前記スピンドルに取り付けた工具とワークW2を交換し、当該スピンドルの回転及び加圧によりワークW2をワークW1の接合面に摩擦圧接することを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項3】
スピンドルの回転及び加圧は加圧プログラムによりサーボ制御されていることを特徴とする請求項2記載の摩擦圧接方法。
【請求項4】
加圧プログラムに、目標加圧力範囲と目標送り量範囲とが設定され、ワークW2への加圧力が目標範囲に到達していないのに送り量が目標範囲の上限に到達した場合には加圧力不足と判定し、ワークW2への加圧力が目標範囲の上限に到達しているのに送り量が目標範囲に到達していない場合には加圧量不足と判定することを特徴とする請求項3記載の摩擦圧接方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−269365(P2010−269365A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125341(P2009−125341)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000212566)中村留精密工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】