説明

断層撮影装置および断層撮影装置のための方法

【課題】検出器に実際に作用するX線強度を求めることを簡単に可能にする。
【解決手段】少なくとも1つの検出器要素(3)の検出器出力信号x(i,j)とX線放射器(1)の少なくとも1つの予め与えられたX線放射器入力値y(i)とから、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))の検出器要素に関係した係数sn(j)およびX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))のX線放射器に関係した係数qm(i)を計算する計算手段(4)を備え、係数sn(j),qm(i)の計算は、係数sn(j),qm(i)、検出器出力信号x(i,j)および少なくとも1つのX線放射器入力値y(i)を含む連立方程式(4.2)を解くことによって実行可能であり、連立方程式は、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))とX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))との間の関係を作る方程式を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線放射器と検出器出力信号を発生するための複数の検出器要素を含む検出器とを備えた断層撮影装置に関する。更に、本発明はこの種の断層撮影装置のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線放射器と検出器とを備えた断層撮影装置は公知である(例えば特許文献1参照)。検出器は、行および列からなる矩形の検出器アレイに配置されている多数の検出器要素を含んでいる。X線放射器はX線管であってよい。しかし、任意の他のX線放射源も考え得る。検出器要素はX線放射器から出射し測定領域を通過してくるX線の尺度としての検出器出力信号の発生に役立つ。検出器およびX線放射器は回転軸線の周りを回転できるように配置されている。測定領域に位置決めされた対象に関して種々の回転角位置から得られた検出器出力信号に基づいて、例えば患者体内の検査のために、ボリューム画像を再構成することができる。
【0003】
断層撮影装置では、例えばシンチレーション検出器または半導体検出器を使用することができる。公知のシンチレーション検出器の検出器要素は、それぞれ1つのシンチレータとこれに付設されたフォトダイオードとを有する(例えば特許文献2参照)。この種の検出器の場合、検出器出力信号は、シンチレータにおけるX線量子の吸収によって生じさせられる光パルスを介して間接的に発生させられる。これとは違って、公知の半導体検出器の検出器要素は、それぞれ、X線に対して感応する障壁層を有するpドープおよびnドープされた半導体材料を有する(例えば特許文献3参照)。このような半導体検出器の検出器出力信号は、X線量子によって障壁内に生じさせられた電荷キャリアから直接的に発生される。
【0004】
シンチレーション検出器は積分型検出器として作動すると好ましい。この作動様式では検出器出力信号が或る時間にわたって積分される。良好な画質は、特に検出器要素の回復時間が短い場合に得ることができる。
【0005】
これとは違って半導体検出器は計数型検出器として作動する。計数型検出器は、事象到来後、この事象を処理するための特定の時間すなわちデッドタイム(不感時間)を必要とする。この時間中に到来する他の全ての事象は失われる。計数型検出器の場合、検出器の特性は2つのケースに区別される。
【0006】
(1)非麻痺特性(non−paralysing):
事象検出後常に検出器は定まった時間τだけ感応しない。τはデッドタイムに相当する。検出器はこの時間中に到来する事象を記録することができない(「非拡張デッドタイム」)。
(2)麻痺特性(paralysing):
検出器はデッドタイムの期間中も感応する。それによってデッドタイムは他の事象の到来によって延長される(「拡張デッドタイム」)。
【0007】
大量のX線量子が入射する場合、測定された計数率と検出器に実際に作用する計数率との間に非線形の関係が存在する。
【0008】
測定された計数率と真の計数率との間の関係は、非麻痺特性を有する検出器についてはm=n/(1+n×τ)によって、麻痺特性を有する検出器についてはm=n×e-nτによって定められる。但し、mは測定された計数率、nは真の計数率、τは検出器要素のデッドタイムである。
【0009】
測定された計数率は測定されたX線強度として理解し、真の計数率は検出器要素に作用する真のX線強度として理解することもできる。従って、以下において、説明の簡単化のために計数率の代わりに一般的に記載する用語「強度」も使用する。
【0010】
断層撮影装置の検査時点または較正時点にそれぞれの検出器要素について求められたX線強度における誤差は、異なる回転角位置で記録された種々の投影画像に基づくボリューム画像の再構成時に得られる画質の悪化をもたらす。
【特許文献1】独国特許第19502574号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10051162号明細書
【特許文献3】米国特許第5777338号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、検出器に実際に作用するX線強度を求めることを簡単に可能にする断層撮影装置または断層撮影装置のための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
断層撮影装置に関する課題は独立請求項1の特徴事項によって解決される。断層撮影装置の有利な実施態様はそれぞれ従属請求項2乃至15に記載されている。
【0013】
断層撮影装置は、本発明によれば、少なくとも1つの検出器要素の検出器出力信号とX線放射器の少なくとも1つの予め与えられたX線放射器入力値とから、検出器出力信号に依存する強度関数の検出器要素に関係した係数およびX線放射器入力値に依存する強度関数のX線放射器に関係した係数を計算する計算手段を有する。この場合、係数の計算は、係数、検出器出力信号および少なくとも1つのX線放射器入力値を含む連立方程式を解くことによって実行可能であり、連立方程式は検出器出力信号に依存する強度関数とX線放射器入力値に依存する強度関数との間の関係を作る方程式を含む。
【0014】
本発明による断層撮影装置は検出器出力信号に依存する強度関数の検出器要素に関係した係数およびX線放射器入力値に依存する強度関数のX線放射器に関係した係数の簡単な計算を可能にするので、僅かな費用で検査前に実施可能な係数計算に引き続いていつでも検出器要素に作用するX線強度を求めることができる。係数計算は検出器出力信号および設定されたX線放射器入力値に基づいて行なわれるだけである。
【0015】
特定の検出器要素の位置におけるX線強度の計算は、本発明による断層撮影装置では、検出器要素に関係した係数の計算後に検査時点でも検出器出力信号に依存する強度関数と関連して可能である。測定範囲に検査対象が存在しない場合、検出器要素に作用する強度の計算は、X線放射器に関連する係数によりX線放射器入力値に依存する強度関数に関連して可能である。従って、実際に作用するX線強度を求めることは複雑な測定構成の必要性なしに行なわれる。
【0016】
本発明の有利な実施態様において、検出器要素に関係した係数は、検出器出力信号に依存する強度関数と関連して、検出器要素によって測定されたX線強度と検出器要素位置で実際に作用するX線強度との間の非線形関係を補正するために使用可能である。検出器出力信号のこのような補正により、隣接する検出器要素は、例えばデッドタイムが異なるように検出器要素特性が異なる場合でも、作用するX線の同じ強度に対して同じ結果を生じることが保証されている。従って、検出器出力信号の補正によって、特にボリューム画像の再構成時に得られる画質が改善される。
【0017】
更に、強度関数を求めることができる係数と関連した検出器出力信号に基づく非線形補正は非常に低コストで行い得る。なぜならば、信号補正のために、検出器要素特性に合わせるための電子構成要素の高価な特性揃えが必要でないからである。
【0018】
検査開始前に、一般には断層撮影装置の較正の枠内で高い画像コントラストを得るために、検査対象に依存するX線強度が調整される。X線放射器に関係した係数は、X線放射器入力値に依存する強度関数と関連して、検出器要素に作用するX線強度の非常に正確な調整のために使用可能であることが好ましく、それによって、X線撮影の得られる画質もしくは得られる画像コントラストを改善することができる。
【0019】
本発明による断層撮影装置の場合、X線放射器としてX線管が設けられ、X線放射器入力値yとして管電流が用いられるので、X線管から発生したX線強度は、調整された管電流を介して予め設定することができる。従って、この場合に管電流とX線強度との間の関数関係は、計算可能な管電流に関係した係数と関連して管電流に依存する強度関数からもたらされる。
【0020】
X線放射器入力値に依存する強度関数は、強度を求めることに関する精度要求または係数計算に関する計算時間要求に応じて異なる表現を有する。
【0021】
強度関数の係数が特に短い計算時間で計算可能である本発明による断層撮影装置の有利な実施態様において、X線放射器入力値に依存する強度関数は次の形を有する一次関数である。
Q1(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i) (1)
但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値である。
【0022】
一次関数に比べてX線放射器から発生したX線の強度をより正確に求められるX線放射器入力値に依存する強度関数の他の有利な表現は、次の二次関数の形を有する。
Q2(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)
+q2(i)×y(i)2 (2)
但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i),q2(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値である。
【0023】
X線放射器から発生したX線の強度の計算が非常に僅かの誤差で保証可能であるが、しかし係数を求めるためには長い計算時間を必要とするX線放射器入力値に依存する強度関数の有利な表現は、次の三次関数の形を有する。
Q3(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)+q2(i)×y(i)2
+q3(i)×y(i)3 (3)
但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i),q2(i),q3(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値である。
【0024】
1つの検出器要素の位置における検出器出力信号に依存する強度関数とX線放射器入力値に依存する強度関数との間の関係は、
Q(y(i))=S(x(i,j))
なる方程式によって与えられていると好ましい。但し、Q(y(i))はX線放射器入力値y(i)に依存する強度関数を一般形で表し、S(x(i,j))は検出器出力信号x(i,j)に依存する強度関数を一般形で表す。
【0025】
本発明による断層撮影装置の検出器は種々の作動様式で作動可能である。
【0026】
検出器、例えば半導体検出器は計数型検出器として作動可能であると好ましい。検出器出力信号に依存する強度関数は、非麻痺特性を有する計数型検出器については、次の有利な形を有する。
S1(x(i,j))=x(i,j)/(1−x(i,j)×τ(j)) (4)
但し、iは測定のためのインデックス、jは検出器要素のためのインデックス、x(i,j)は測定iにおけるj番目の検出器要素の検出器出力信号、τ(j)はj番目の検出器要素のデッドタイムである。
【0027】
デッドタイムτ(j)は、入射したX線量子を処理するために検出器要素が必要とする処理時間に相当する。この処理時間中、検出器要素によってさらに他のX線量子が記録されることはない。処理時間は検出器要素ごとに非常に異なっていることがあり、従って検出器に応じて、各検出器要素について個別に知るべきである。デッドタイムτ(j)は検出器要素に関係した係数に相当し、この係数により検出器要素特性、もしくは検出器出力信号と検出器要素に作用するX線強度との間の非線形関係を特徴付けることができる。
【0028】
本発明の有利な実施態様において、強度関数の係数を計算するために解かれる連立方程式は、計数型検出器について次の方程式
Q1(y(i))=S(x(i,j)) (5)
を形成可能であり、これは次の形にも相当する。
0(i)+q1(i)×y(i)=x(i,j)/(1−x(i,j)×τ(j))
【0029】
しかしながら、本発明による断層撮影装置については、積分型作動様式の検出器、例えばシンチレーション検出器も使用可能である。この場合、検出器出力信号に依存する強度関数は次の形を有する二次関数として表現可能あると好ましい。
S2(x(i,j))=s0(j)+s1(j)×x(i,j)
+s2(j)×x(i,j)2 (6)
但し、iは測定のためのインデックス、jは検出器要素のインデックス、x(i,j)は測定iにおけるj番目の検出器出力信号、s0(j),s1(j),s2(j)はj番目の検出器要素の検出器要素に関係した係数である。
【0030】
二次関数の形の、検出器出力信号に依存する強度関数は、僅かな誤差を持つ検出器要素特性を記述することを可能にすると同時に、係数を求めるためにこの関数により形成された連立方程式の高速かつ簡単な解法を保証する。
【0031】
検出器要素に関係した係数およびX線放射器に関係した係数を求めるために連立方程式を解くことは、非線形最適化法に基づいて実行可能であると好ましい。例えばシンプレックス法またはレベンバーグ・マーカード(Levenberg−Marquard)法のような非線形最適化法は、とりわけ探索される検出器要素に関係した係数およびX線放射器に関係した係数を効率的に求めることを僅かの費用で可能にする。
【0032】
本発明の有利な実施態様において、断層撮影装置は検出器要素に関係した係数およびX線放射器に関係した係数を記憶可能であるメモリを有する。このようにして計算後も、あらゆる時点で係数への直接アクセスを保証することができる。
【0033】
更に、断層撮影装置のための方法に関する課題は独立請求項16の特徴事項によって解決される。この方法の有利な実施態様はそれぞれ従属請求項17乃至30に記載されている。
【0034】
本発明によれば、断層撮影装置のための方法は次のステップを有する。
− X線放射器の少なくとも1つの予め設定可能なX線放射器入力値について少なくとも1つの検出器要素の検出器出力信号を求めること、
− 検出器出力信号に依存する強度関数の検出器要素に関係した係数およびX線放射器入力値に依存する強度関数のX線放射器に関係した係数を、求められた検出器出力信号および少なくとも1つのX線放射器入力値に基づいて計算し、しかも係数の計算は、係数、検出器出力信号および少なくとも1つのX線放射器入力値を含む連立方程式を解くことによって実行し、連立方程式は、検出器出力信号に依存する強度関数とX線放射器入力値に依存する強度関数との間の関係を作る方程式を含むこと。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の実施例および従属請求項による本発明の他の有利な実施態様が次の概略図に示されている。
図1は検出器およびX線放射器を有する本発明による断層撮影装置を一部は斜視図で一部はブロック図で示し、
図2は図1の計算手段を詳細図で示し、
図3は検出器出力信号補正およびボリューム画像の再構成のための本発明による方法をブロック図の形で示す。
【0036】
図1には、本発明による断層撮影装置がここではX線コンピュータ断層撮影装置の形で一部は斜視図で一部はブロック図で示されている。断層撮影装置は、主としてX線管1の形のX線放射器と、検出器アレイの行および列に配置された検出器要素3を有する検出器2と、検出器に関係した係数およびX線管に関係した係数を計算しX線強度を求めるための計算手段4と、再構成ユニット5と、表示ユニット6とを含む。X線管1の形のX線放射器により発生させられるX線は、管電流の形の予め設定可能なX線放射器入力値によって調整される。
【0037】
X線管1および検出器2は撮影システムの一部であり、図示されていない回転枠に、断層撮影装置の作動時に、X線管1の焦点Fから出射し且つ縁部ビーム12によって制限されたX線ビームが検出器2に入射するように互いに向かい合わせに取り付けられている。
【0038】
回転枠は図示されていない駆動装置により回転軸線Dを中心に回転移動させられる。回転軸線Dは図1に示された直交空間座標系のz軸に平行に延びている。測定テーブル13上に存在する図示されていない検査対象に対して、このようにしてボリューム画像を再構成するために撮影システムの異なる投影方向つまり回転角位置からX線撮影が行なわれる。
【0039】
制御ユニット8によって調整され且つ高電圧発生装置11によって変換された管電流により、X線管1から所定強度のX線が発生され、このX線が測定領域に位置決めされた検査対象を透過し、引続いて検出器2の検出器要素3に入射する。制御ユニット8によって調整された管電流は、キーボード9またはマウス10にて操作者によって予め設定可能である。検出器要素3から発生されて読出ユニット7によって読出された検出器出力信号は測定領域で吸収されたX線を表し、測定された強度は検出器要素3に実際に作用する強度とは互いに相違する。測定された強度と実際に作用する強度との間には非線形関係が存在し、この関係は関数原理と検出器2における信号処理に使用される電子構成素子とに依存する。
【0040】
この実施例において使用された検出器2は半導体検出器であり、nドープされた半導体材料とpドープされた半導体材料との間にX線に感応する障壁層を有する。この実施例における検出器は計数型の作動様式で作動する。
【0041】
計算手段4は読出ユニット7および制御ユニット8にそれぞれ接続線を介して接続されている。このようにして各測定時に読出された検出器出力信号および調整された管電流を計算手段4に伝送することができる。
【0042】
検出器要素に関係した係数およびX線管に関係した係数を求めるために、一般に、測定領域に検査対象が存在しない状態でそれぞれ異なる管電流による多数の測定が行なわれる。各測定で読出された検出器出力信号は管電流と共に計算手段4に伝送される。検出器出力信号および管電流がそれぞれ1つの測定シリーズを形成する。
【0043】
例えば、全部でM=3個の測定がy(i)=50mA,100mA,150mAの管電流で実施可能である。その都度検出器2における例えばN=3×3=9個の隣接する検出器要素3の検出器出力信号が読出されて計算手段4に伝送される。管電圧は上記実施例の場合には測定時にその都度一定であり、例えば80kVである。
【0044】
N個の隣接する検出器要素3はほぼ同一のX線強度に曝されるべきである。この条件は、検出器要素3によって検出された空間角が焦点Fと検出器要素3との間の距離に比べて比較的小さいことによって十分な形で満たされる。X線が形状フィルタを介して絞られる場合、係数計算のためにz軸に沿っている検出器要素3を使用すると好ましい。
【0045】
M個の測定のこのようにして求められた測定値に基づいて、計算手段4が検出器出力信号に依存する強度関数の検出器要素に関係した係数および管電流に依存する強度関数のX線管に関係した係数を計算する。
【0046】
検出器要素に関係した係数は、検出器出力信号に依存する強度関数と関連して、検出器要素によって測定された強度もしくは検出器出力信号と実際に作用するX線強度との間の非線形を補正するために使用可能である。従って、作用する強度と発生した検出器出力信号との間の関係を示す伝達関数に関する検出器要素間の差異は、例えば均一なX線強度分布において全ての検出器要素3が同じ結果をもたらすように補償可能である。
【0047】
計算手段に接続されているメモリSが検出器要素に関係した係数およびX線管に関係した係数の記憶を保証するので、係数への直接的なアクセスが、計算後にも、例えば測定領域内に運び込まれた検査対象の検査中にもあらゆる時点で可能である。
【0048】
計算手段4に接続されている再構成ユニット5は、異なる投影方向から検査対象の投影撮影が行なわれる検査において、補正された検出器出力信号に基づくボリューム画像の計算を可能にするので、得られる画質は改善されている。
【0049】
再構成ユニット5に接続された表示ユニット6はボリューム画像の表示に役立つ。
【0050】
図2においては、図1に示した計算手段4が詳細に示されている。検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))の検出器要素に関係した係数sn(j)および管電流に依存する強度関数Q(y(i))のX線管に関係した係数qm(i)の計算が、図1で既に説明したように、M個の測定に基づいて行なわれる。各測定について、N個の検出器出力信号x(i,j)および管電流y(i)から1つの測定シリーズが形成される。
【0051】
検出器要素3に実際に作用するX線強度は、検出器要素に関係したn個の未知の係数sn(j)を有する検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))によっても、X線管に関係したm個の未知の係数qm(i)を有する管電流に依存する強度関数Q(y(i))によっても決定可能である。まとめて関数は全部でn+m個の未知の係数を有する強度方程式を形成する。
S(x(i,j))=Q(y(i))
【0052】
この実施例において使用された半導体検出器における検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))は、例えば非麻痺特性を有する検出器の場合には、次の方程式によって与えられる。
S1(x(i,j))=x(i,j)/(1−x(i,j)×τ(j))
但し、iは測定についてのインデックス、jは検出器要素のインデックス、x(i,j)は測定iにおけるj番目の検出器要素の検出器出力信号、τ(j)はj番目の検出器要素における検出器要素に関係した係数sn(j)の1つである。
【0053】
管電流に依存する強度関数Q(y(i))は例えば特に簡単に次の形を有する一次関数によって与え得る。
Q1(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)
但し、iは測定についてのインデックス、q0(i),q1(i)は測定iにおける2つのX線管に関係した係数qm(i)、y(i)は測定iにおける管電流である。
【0054】
従って、強度方程式については、次の関係が成り立つ。
S1(x(i,j))=Q1(y(i)) もしくは
x(i,j)/(1−x(i,j)×τ(j))=q0(i)+q1(i)×y(i)
【0055】
ここに示された強度関数は典型的な特性だけを持ち、検出器2またはX線放射器1に応じて他の形または他の個数の検出器要素に関係した係数sn(j)およびX線管に関係した係数qm(i)を有することができる。
【0056】
測定から求められた測定シリーズは強度方程式に代入される。図3において4.2で示されている連立方程式は、全部でM×m+N×n個の未知数を有する。但し、Mは係数計算のために実行された測定の個数、Nは読出される検出器要素の個数、mはX線管に関係した係数qm(i)の個数、nは検出器要素に関係した係数sn(j)の個数である。
【0057】
連立方程式を解くことができるためには、
M×N ≧ M×m+N×n
なる関係が得られなければならない。この関係から直接に、連立方程式を解くために少なくとも2つの検出器要素が読出されなければならないことがもたらされる。
【0058】
検出器要素に関係した未知の係数sn(j)およびX線管に関係した未知の係数qm(i)の計算は、非線形最適化法4.3に基づいて連立方程式4.2を解くことにより行なわれる。典型的にはこのような連立方程式4.2は、「Kosmol:Optimierung und Approximation,De Gruyter 1991」から公知のシンプレックス法またはレベンバーグ・マーカード法に従って効率的且つ簡単に解くことができる。
【0059】
このようにして求め得る検出器要素に関係した係数sn(j)およびX線管に関係した係数qm(i)はメモリSに記憶可能であり、計算後も検出器出力信号x(i,j)の補正のために、あるいは管電流に基づく強度計算のために使用できる。
【0060】
計算された又はメモリSから読出された係数sn(j),qm(i)は、それぞれの強度関数S(x(i,j))もしくはQ(y(i))と関連して、それぞれの検出器要素3に作用するX線強度を求めるために使用可能である。検出器要素に関係した係数sn(j)は、このように検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))と共に、検出器出力信号x(i,j)の補正のために、補正された検出器出力信号が検出器要素3に実際に作用する強度に相当するように使用可能である。X線管に関係した係数qm(i)は、管電流に依存する強度関数Q(y(i))と共に、測定領域に位置決めされた検査対象のない状態で検出器要素3に作用するX線強度を調整するために使用可能である。
【0061】
検出器要素に関係した係数sn(j)は、測定時に読出された検出器要素に割り付けられている。計算時間の節約のために、検出器要素に関係した既知の係数sn(j)は、全ての検出器要素3が似た検出器要素特性を有するという前提のもとに、測定時に考慮されなかった検出器要素についても、補正に必要な検出器要素に関係した係数が例えば平均値形成によって算出されるために使用されるようにするとよい。このようにして、たとえ測定時に検出器要素の僅かな個数Nしか考慮されなくても、検出器2に付設された全検出器要素3の検出器出力信号x(i,j)の補正が可能である。
【0062】
補正された検出器出力信号は再構成ユニット5に伝達され、再構成ユニット5によって処理されてボリューム画像が形成される。結果画像の表示は再構成ユニット5に接続されている表示ユニット6により行なわれる。
【0063】
図3には、検出器要素に実際に作用するX線強度を計算するための方法もしくは検出器出力信号x(i,j)の補正およびボリューム画像の再構成を行なうための方法がブロック図の形で示されている。第1のステップV1では、検出器出力信号x(i,j)および撮影に属する管電流y(i)が図1に示された読出ユニット7および制御ユニット8により計算手段4に伝送される。第2のステップV2では、既に事前に計算された検出器要素に関係した係数sn(j)がメモリSから読出される。それぞれの検出器要素3に作用するX線強度が、次に続く第3のステップV3において、検出器要素に関係した係数sn(j)および検出器出力信号x(i,j)から、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))によりそれぞれ計算される。このようにして補正された検出器出力信号が第4のステップV4において再構成ユニット5に伝達され、ボリューム画像の算出に使用され、このボリューム画像が第5のステップV5において表示ユニット6に表示される。
【0064】
主たる本発明思想をまとめると次のとおりである。本発明による断層撮影装置もしくは断層撮影装置のための本発明による方法は、簡単且つ効率的に、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))の検出器要素に関係した係数sn(j)の計算およびX線放射器の入力値に依存する強度関数Q(y(i))のX線放射器に関係した係数qm(i)の計算を、測定された検出器出力信号x(i,j)および少なくとも1つのX線放射器入力値y(i)に基づいて可能にするので、X線放射器1から出射してそれぞれの検出器要素3に作用するX線強度を正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】検出器およびX線放射器を有する本発明による断層撮影装置の概略図
【図2】図1の計算手段の詳細図
【図3】検出器出力信号の補正およびボリューム画像の再構成のための本発明による方法を示すブロック図
【符号の説明】
【0066】
1 X線管(X線放射器)
2 検出器
3 検出器要素
4 計算手段
5 再構成ユニット
6 表示ユニット
7 読出ユニット
8 制御ユニット
9 キーボード
10 マウス
11 高電圧発生装置
12 縁部ビーム
13 測定テーブル
D 回転軸線
F 焦点
S メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線放射器(1)と、検出器出力信号x(i,j)を発生するための複数の検出器要素(3)を含む検出器(2)とを備えた断層撮影装置において、
少なくとも1つの検出器要素(3)の検出器出力信号x(i,j)とX線放射器(1)の少なくとも1つの予め設定可能なX線放射器入力値y(i)とから、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))の検出器要素に関係した係数sn(j)およびX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))のX線放射器に関係した係数qm(i)を計算する計算手段(4)を有し、
係数sn(j),qm(i)の計算は、係数sn(j),qm(i)、検出器出力信号x(i,j)および少なくとも1つのX線放射器入力値y(i)を含む連立方程式(4.2)を解くことによって実行可能であり、連立方程式は、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))とX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))との間の関係を作る方程式を含むことを特徴とする断層撮影装置。
【請求項2】
計算可能な、検出器要素に関係した係数sn(j)は、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))と関連して、検出器出力信号x(i,j)とX線放射器(1)から出射して検出器要素(3)に作用するX線の強度との間の非線形関係を補正するために使用可能であることを特徴とする請求項1記載の断層撮影装置。
【請求項3】
計算可能な、X線放射器に関係した係数qm(i)は、X線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))と関連して、X線放射器(1)から出射して検出器要素(3)に作用するX線の強度を調整するために使用可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の断層撮影装置。
【請求項4】
X線放射器(1)はX線管であり、X線放射器入力値y(i)は管電流であることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の断層撮影装置。
【請求項5】
X線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))は次の形を有する一次関数であることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の断層撮影装置。
Q1(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)
(但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値。)
【請求項6】
X線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))は次の形を有する二次関数であることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の断層撮影装置。
Q2(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)+q2(i)×y(i)2
(但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i),q2(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値。)
【請求項7】
X線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))は次の形を有する三次関数であることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の断層撮影装置、
Q3(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)+q2(i)×y(i)2
+q3(i)×y(i)3
(但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i),q2(i),q3(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値。)
【請求項8】
検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))とX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))との間の関係は
Q(y(i))=S(x(i,j))
なる方程式によって与えられていることを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の断層撮影装置。
【請求項9】
検出器(2)は計数型検出器として作動可能であることを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の断層撮影装置。
【請求項10】
検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))は、非麻痺特性を有する検出器の場合には、次の関数によって与えられていることを特徴とする請求項9記載の断層撮影装置。
S1(x(i,j))=x(i,j)/(1−x(i,j)×τ(j))
(但し、iは測定のためのインデックス、jは検出器要素のためのインデックス、x(i,j)は測定iにおけるj番目の検出器要素の検出器出力信号、τ(j)はj番目の検出器要素のデッドタイム。)
【請求項11】
検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))とX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))との間の関係は
Q1(y(i))=S1(x(i,j))
によって与えられていることを特徴とする請求項10記載の断層撮影装置。
【請求項12】
検出器(2)は積分型検出器として作動することを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の断層撮影装置。
【請求項13】
検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))は次の形を有する二次関数で表し得ることを特徴とする請求項12記載の断層撮影装置。
S2(x(i,j))=s0(j)+s1(j)×x(i,j)
+s2(j)×x(i,j)2
(但し、iは測定のためのインデックス、jは検出器要素のインデックス、x(i,j)は測定iにおけるj番目の検出器出力信号、s0(j),s1(j),s2(j)はj番目の検出器要素の検出器要素に関係した係数。)
【請求項14】
連立方程式(4.2)は非線形最適化法(4.3)に基づいて解き得ることを特徴とする請求項1乃至13の1つに記載の断層撮影装置。
【請求項15】
係数sn(j),qm(i)を記憶するためのメモリが設けられていることを特徴とする請求項1乃至14の1つに記載の断層撮影装置。
【請求項16】
X線放射器(1)と検出器出力信号x(i,j)を発生するための複数の検出器要素(3)を含む検出器(2)とを備えた断層撮影装置のための方法において、
− X線放射器(1)の少なくとも1つの予め設定可能なX線放射器入力値y(i)について少なくとも1つの検出器要素(3)の検出器出力信号x(i,j)を求め、
− 検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))の検出器要素に関係した係数sn(j)およびX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))のX線放射器に関係した係数qm(i)を、求められた検出器出力信号x(i,j)および少なくとも1つのX線放射器入力値y(i)に基づいて計算し、しかも係数sn(j),qm(i)の計算は、係数sn(j),qm(i)、検出器出力信号x(i,j)および少なくとも1つのX線放射器入力値y(i)を含む連立方程式(4.2)を解くことによって実行し、連立方程式は、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))とX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))との間の関係を作る方程式を含む
ことを特徴とする断層撮影装置のための方法。
【請求項17】
計算可能な、検出器要素に関係した係数sn(j)は、検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))と関連して、検出器出力信号x(i,j)とX線放射器(1)から出射して検出器要素(3)に作用するX線の強度との間の非線形関係を補正するために使用されることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
計算可能な、X線放射器に関係した係数qm(i)は、X線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))と関連して、X線放射器(1)から出射して検出器要素(3)に作用するX線の強度を調整するために使用されることを特徴とする請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
X線放射器(1)はX線管であり、X線放射器入力値y(i)は管電流であることを特徴とする請求項16乃至18の1つに記載の方法。
【請求項20】
X線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))は次の形を有する一次関数であることを特徴とする請求項16乃至19の1つに記載の方法。
Q1(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)
(但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値。)
【請求項21】
X線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))は次の形を有する二次関数であることを特徴とする請求項16乃至19の1つに記載の方法。
Q2(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)+q2(i)×y(i)2
(但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i),q2(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値。)
【請求項22】
X線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))は次の形を有する三次関数であることを特徴とする請求項16乃至19の1つに記載の方法、
Q3(y(i))=q0(i)+q1(i)×y(i)+q2(i)×y(i)2
+q3(i)×y(i)3
(但し、iは測定のためのインデックス、q0(i),q1(i),q2(i),q3(i)は測定iにおけるX線放射器に関係した係数、y(i)は測定iにおけるX線放射器入力値。)
【請求項23】
検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))とX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))との間の関係は
Q(y(i))=S(x(i,j))
によって与えられていることを特徴とする請求項16乃至22の1つに記載の方法。
【請求項24】
検出器(2)は計数型検出器として作動することを特徴とする請求項16乃至23の1つに記載の方法。
【請求項25】
検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))は、非麻痺特性を有する検出器の場合には、次の関数によって与えられていることを特徴とする請求項24記載の方法。
S1(x(i,j))=x(i,j)/(1−x(i,j)×τ(j))
(但し、iは測定のためのインデックス、jは検出器要素のためのインデックス、x(i,j)は測定iにおけるj番目の検出器要素の検出器出力信号、τ(j)はj番目の検出器要素のデッドタイム。)
【請求項26】
検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))とX線放射器入力値に依存する強度関数Q(y(i))との間の関係は
Q1(y(i))=S1(x(i,j))
によって与えられていることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
検出器(2)は積分型検出器として作動することを特徴とする請求項16乃至23の1つに記載の方法。
【請求項28】
検出器出力信号に依存する強度関数S(x(i,j))は次の形を有する二次関数で表し得ることを特徴とする請求項27記載の方法。
S2(x(i,j))=s0(j)+s1(j)×x(i,j)
+s2(j)×x(i,j)2
(但し、iは測定のためのインデックス、jは検出器要素のインデックス、x(i,j)は測定iにおけるj番目の検出器出力信号、s0(j),s1(j),s2(j)はj番目の検出器要素の検出器要素に関係した係数。)
【請求項29】
連立方程式(4.2)は非線形最適化法(4.3)に基づいて解き得ることを特徴とする請求項16乃至28の1つに記載の方法。
【請求項30】
係数sn(j),qm(i)を記憶するためのメモリが設けられていることを特徴とする請求項1乃至14の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−58296(P2006−58296A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232045(P2005−232045)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】