説明

断熱コップのためのリムおよび端部シールを形成する方法

【課題】断熱性板紙から紙コップなどの容器を製造するためのブランク、このブランクから紙コップを形成する方法、および、紙コップを提供する。
【解決手段】板紙のブランク10は、側端12、14を有し、これら側端は、ブランクの上縁16の末端から下に向かって互いに傾斜している。上縁16は、中高形状、下縁18は、くぼんだ形状である。圧縮された側部ストリップ12a、14aを重ね合わせ、従来の方式で互いに接着して固定し、紙コップの側部が形成される。ブランクの上縁16に隣接する部分は、それ自身、外側に向かって、続いて下に向かってカールしており、紙コップのような容器の上部の縁を形成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景技術
本発明は、紙コップ、より具体的には断熱性紙コップ、さらに具体的にはそのためのブランク(blank:板紙片)を形成する方法、および、そのブランクから紙コップを製造する方法に関する。
【0002】
熱い液体を供給するために紙コップが利用されるような用途において、紙コップに断熱性板紙が用いられている。耐熱性コップを作製するための板紙の断熱特性を向上させる多数の方法が開発されている。このような板紙の一つは、2006日6月6日付けでDonald D. Halabiskyに付与され、ウェアーハウザー社(Weyerhaeuser Company、ワシントン州フェデラルウェイ)に譲渡された米国特許第7,056,563号に開示されている。この’563号特許の断熱性板紙は、厚さを増すことによって板紙の断熱特性を強化するために、架橋繊維を有する少なくとも1つの層を含んでなる。
【0003】
紙コップを製造する際、紙コップは、単一のブランクから製造され、その端部分は重ね合わされ互いにシールされる。加えて、紙コップの上端部分を外側にカールさせ、続いて内側にカールさせてコップの縁を形成する。比較的厚い板紙を用いる場合、この重ね合わせた端の継目が厚くなる。さらに、比較的厚い板紙を用いる場合、縁の直径が、通常の板紙を利用する場合よりも大きくなる。
【0004】
発明の概要
本発明は、断熱性板紙から紙コップなどの容器を製造するためのブランク、このブランクから紙コップを形成する方法、および、紙コップそれ自身を提供する。このような容器のためのブランクには、所定の厚さを有する板紙のブランクが含まれる。また本ブランクはさらに、側端、上部端および底部端を有する。ブランクの側端および/または上部端の少なくとも一方に隣接する部分は、板紙のブランクそれ自身の所定の厚さ未満の厚さに圧縮される。
【0005】
板紙のブランクから容器を形成する方法は、所定の厚さを有する板紙のシートから板紙のブランクを形成し、切断することを含む。本ブランクは、側端、上部端および底部端を有する。続いて、好ましくはブランクの上部端に隣接する部分は圧縮され、所定の厚さ未満の厚さを有する板紙のストリップが形成される。その好ましい形態において、ブランクから容器を形成する際に、ブランクの容器側端に隣接する部分も圧縮されて、圧縮されたストリップを形成する(このストリップが重ね合わせた際の総厚さは、所定の厚さの2倍未満である)。加えて、容器の縁は、圧縮された板紙のストリップから形成され、それにより最終的な縁が提供され、この縁は、所定の厚さの板紙から形成される直径よりも小さい直径を有することができる。
【0006】
図面の簡単な説明
本発明の上記態様とそれによって得られる本発明の利点の多くは、以下の詳細な説明を参照することによってさらに理解することができるが、同様に、添付の図面を参照することによってさらに容易に理解できると思われる。
【0007】
図1は、本発明に従って形成された板紙のブランクの平面図であり;
図1Aは、図1のブランクの断面線1A−1Aに沿った断面図であり;
図2は、本発明に係るコップの製造方法の流れ図であり;
図3は、完成したコップの等角投影図であり;
図3Aは、断面線3A−3Aに沿ったコップの断面であり;
図3Bは、断面線3B−3Bに沿ったコップの断面線であり;および、
図4は、本発明に係る板紙を圧縮した後の、「厚さ」対「時間」のプロットである。
【0008】
発明の詳細な説明
図1を参照すると、本発明に係る紙コップなどの容器を形成するための断熱性板紙のブランク10は、セルロース系繊維などの容易に入手可能な繊維から従来の方式で製造される。本発明の板紙は、要望に応じてシングルプライ構造、2プライ構造またはその他のマルチプライ構造で作製することができる。
【0009】
板紙のプライの少なくとも1プライは、シングルプライ構造であてもマルチプライ構造であても、架橋繊維を含んでなる。架橋繊維は、板紙の嵩密度を増加させるので断熱特性を高める。本明細書で用いられる架橋繊維とは、捩れた、撚られた、カールしたセルロース系繊維である。しかしながら、このような繊維は、以下でより詳細に説明されるようにセルロース系繊維の繊維内架橋によって製造したものが好ましい。
【0010】
本発明の板紙は、広範な特徴を有し得る。例えば、その坪量は、200gsm〜500gsmの範囲が可能であり、より好ましくは250gsm〜400gsmの範囲である。最も好ましくは、板紙の坪量は、250gsmに等しいか、または250gsmより大きい。本発明の断熱特性を達成するためには、板紙が、0.5g/cc未満の密度を有することが好ましく、より好ましくは0.3g/cc〜0.45g/ccの密度、最も好ましくは0.35g/cc〜0.40g/ccの密度の密度を有する。
【0011】
板紙の少なくとも1つのプライが本発明に係る架橋繊維を含む場合、有利な温度の降下特性が達成される。これらの温度降下特性は、板紙に配合する架橋繊維の量を変更すること、板紙の坪量を調節すること、板紙を例えばニップロールを通過させて抄紙した後に板紙の厚さを調節することによって達成でき、そして当然ながら、板紙構造に組み込まれる追加のプライの数および厚さを変化させることによっても達成できる。この板紙は、0.5mmより大きい厚さ、またはそれに等しい厚さ、250gsmに等しい、またはそれより大きい坪量、および、0.5g/cc未満の密度を有することが好ましい。最も好ましい形態において、本発明の板紙は、厚さ0.64mmで10℃±2.3℃の熱水ΔT(温度低下)、厚さ1.25mmで14℃±2.3℃の熱水ΔTを示す。熱水ΔTの厚さに対する関係は、厚さ0.6mm〜1.25mmの間では直線関係であり、厚さが0.6mm未満に減少するか、厚さが1.25mmより大きく増加しても直線であり続ける。別の言い方をすれば、本発明に従って構築された0.3mmまたはそれより大きい厚さを有する板紙は、厚さ0.1mmあたり0.7℃±2.3℃の熱水ΔT(米国特許第7,056,563号で定義された通り)を示すと予想され、最も好ましくは、0.7℃±2.0℃の熱水ΔTを示すと予想される。
【0012】
本発明の板紙は、シングルプライ製品であってもよい。シングルプライ製品が用いられる場合、本発明の板紙の低密度特性により、適度な坪量でより厚い板紙の製造が可能になる。一般的な板紙を用いて同じ断熱特性を達成するためには、一般的な板紙厚さは、本発明の板紙厚さと比べて二倍になると予想される。本発明の架橋繊維を用いれば、一般的な板紙と同じ坪量を有する断熱性板紙を作製することができる。これは、小さな改変で、かつわずかな生産性の損失で、現存する板紙製造機で断熱性板紙を効果的に製造しうることを可能にする。その上、1プライの板紙は、全体の構造が低密度であるという利点を有する。その上、後述するように、本発明の低密度の板紙は、容易にエンボス加工することができる。
【0013】
あるいは、本発明の板紙は、マルチプライ製品であってもよく、2プライ、3プライまたはそれより多くのプライが挙げられる。シングルプライより多くを含む板紙は、乾燥の前か後のいずれかに各プライを組合わせることによって製造することができる。しかしながら、マルチプライの板紙は、湿式形成工程で連続的に配置された複数のヘッドボックスを用いるか、または、複数のパルプ完成紙料を受容し、積層できるバッフル付きヘッドボックスを用いて製造することがが好ましい。マルチプライ製品の個々のプライは、同一でも異なっていてもよい。
【0014】
本発明の板紙は、例えばロトフォーマー(Rotoformer)、長網抄紙機、傾斜ワイヤーデルタ抄紙機(inclined wire Delta former)、および、ツインワイヤー抄紙機などの通常の製紙機を用いて形成することができる。
【0015】
シングルプライの板紙を本発明に従って用いる場合、その組成が均一であることが好ましい。しかしながら、シングルプライは組成に関して階層化されていてもよく、架橋繊維を高濃度で含む一つの階層と、架橋していない繊維を高濃度で含むその他の階層とを有していてもよい。例えば、板紙の一方の表面が、その表面の嵩が強化されるように架橋繊維を高濃度で含んでいてもよいし、他方の表面が、滑らかで、より高密度で、多孔性がより低い表面が提供されるように架橋していない繊維を高濃度で含んでいてもよい。
【0016】
シングルプライの板紙の組成が均一であることが好ましい。架橋繊維は、一般的なセルロース系繊維と均一に混合される。例えば、ヘッドボックスの完成紙料において、断熱プライまたは断熱層中に存在する架橋繊維は、約25%〜約100%の量で、より好ましくは約30%〜約70%の量で存在することが好ましい。2プライ構造においては、例えば、第一のプライは、非架橋繊維を100%で含んでいてもよいが、一方、第二のプライは、架橋繊維を25%〜100%、好ましくは架橋繊維を30%〜70%で含んでいてもよい。3プライの層においては、例えば底部および上層は、非架橋繊維を100%で含んでもよいが、中間の層は、架橋繊維を約25%〜約100%、好ましくは架橋繊維を約30%〜約70%で含む。
【0017】
本発明に係る板紙に架橋繊維を用いると、製紙機から出る板紙を様々な程度に圧縮して、板紙を通過する温度の降下特性を調節し得ることが発見された。本発明によれば、板紙は、抄紙機を離れたら、厚さを50%以下、より好ましくは15%〜25%に圧縮または減少させることができる。このような本発明に従って作製された板紙の厚さを調節することによって、熱水ΔTを要望に応じて様々に変更することができる。これと同じ結果は、板紙の坪量を低くすることによっても達成できる。
【0018】
加えて、本発明の板紙は、様々な従来のエンボスローラーを用いてエンボス加工することができ、そうすることにより、従来の板紙の触覚とまったく異なる触覚を使用者に付与する板紙を製造することができる。エンボス加工された表面は、より優れたつかみ面を提供するだけでなく、人が板紙の外面に触れた際の板紙の表面から人への熱伝達が、現実的かつ感覚的に減少する。また、平坦なエンボス加工されたあて板も、板紙にエンボス加工されたパターンを形成するのに用いることができる。様々なエンボス加工されたパターンのいずれも用いることができる。しかしながら、板紙を、耐熱性を有するコップなどの容器として用いようとする場合、板紙の表面に触れる人の接触表面領域を有効に減少させる多数の小さい表面の刻み目が実質的に提供されるように、コップ外面に刻み目からなる微細なパターンをエンボス加工することが好ましい。これは、人が所定期間保持する耐熱性を有するコップなどの容器に板紙を用いる場合に特に有効である。接触域を減少させると、人の指に伝わる熱の量が減少するため、過剰に温度を感じることが少なくなる。例えば、板紙の1センチメートル四方の表面にある隆起とへこみの数は、6×6の配列からなっていてもよい。
【0019】
本発明の板紙は、断熱特性を有することが望ましい様々な構造物(具体的には容器)を作製するのに利用することができる。これらの容器の最も一般的なものの一種は、コーヒーやお茶などの熱い飲料のために利用される至る所に存在する耐熱コップである。また、麺類用のカップ、スープカップ、または、通常の紙皿などのその他の断熱容器にも、本発明の板紙を組み込むことができる。また、一般的に板紙または発泡材料で製造される持ち帰り用の容器にも、本発明の板紙を用いることができる。本発明に従って製造された耐熱性コップ型の容器は、1つまたはそれ以上のプライを含んでもよく、そのうちの1つは架橋繊維を含む。一実施態様において、架橋繊維は、内部プライに存在していてもよい。内部プライに、液体を浸透させない裏当てが積層されていてもよい。このような裏当ては、例えば、ポリエチレンなどの様々な熱可塑性プラスチック材料を含んでもよい。好ましくは、コップの底部で用いられる板紙は、架橋繊維を含まない。
【0020】
本発明での使用に適した非架橋セルロース系繊維は、他の源からも入手可能だが、主に木材パルプから誘導されたものである。本発明に従って使用するのに適した木材パルプ繊維は、周知の化学的方法から得ることができ、このような方法としては、例えばクラフト法および亜硫酸法が挙げられ、それに続いて漂白を行ってもよいし、行わなくてもよい。またパルプ繊維は、サーモメカニカル、ケミサーモメカニカル法、またはそれらの組み合わせで加工することもできる。好ましくは、化学的な方法によって製造されるパルプ繊維である。砕木繊維、リサイクルまたは二次木材パルプ繊維、ならびに漂白済みおよび無漂白の木材パルプ繊維を用いることができる。針葉樹(軟材:softwood)および広葉樹(硬材:hardwood)を用いることができる。木材パルプ繊維の選択の詳細は当業者に周知である。このような繊維は、本発明の譲受人であるウェアーハウザー社などの多数の会社から市販されている。例えば、サザンパインから製造され、本発明との使用に適した適切なセルロース繊維は、ウェアーハウザー社よりCF416、NF405、FR516、および、NB416という商品名で入手可能である。
【0021】
繊維系材料に加えて、本発明の板紙は、任意に結合剤を含んでいてもよい。適切な結合剤は、水溶性、水分散性のものか、または、水と懸濁液を形成するものである。適切な結合剤としては、このような製品に湿潤および乾燥引張強度ならびに引裂強度を付与するために製紙産業で一般的に使用される物質が挙げられる。適切な湿潤強度増強剤としては、窒素を含む基(例えばアミノ基)を有するカチオン性加工デンプン、例えば、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社(National Starch and Chemical Corp.,ブリッジウォーター,ニュージャージー州)より入手可能なもの;ラテックス;湿潤紙力増強樹脂、例えばポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂(例えば、キメン(KYMENE)557LX、ハーキュリーズ社(Hercules, Inc.,ウィルミントン,デラウェア州))、および、ポリアクリルアミド樹脂(例えば、米国特許第3,556,932号を参照、さらに、アメリカン・シアナミド社(American Cyanamid Co.,スタンフォード,コネチカット州)によって、パレツ(PAREZ)631NC)という商標名で販売されている市販のポリアクリルアミドも挙げられ;尿素ホルムアルデヒドおよびメラミンホルムアルデヒド樹脂;および、ポリエチレンイミン樹脂が挙げられる。紙分野で利用されており、本発明において全般的に適用できる湿潤紙力増強樹脂に関する一般的な考察は、TAPPIの研究論文シリーズ第29号の “Wet Strength in Paper and Paperboard”紙パルプ技術協会(Technical Association of the Pulp and Paper Industry,ニューヨーク,1965)に見出すことができる。
【0022】
その他の適切な結合剤としては、スターチ、加工デンプン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン/アクリル酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリアミン、グアーガム、酸化ポリエチレン、塩化ビニル、塩化ビニル/アクリル酸コポリマー、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー、および、ポリアクリロニトリルが挙げられる。これらのの多くは、水分散または水懸濁させるためにラテックスポリマーに形成されると予想される。
【0023】
本発明で使用するのに好ましい架橋繊維は、架橋されたセルロース系繊維である。層に含められる架橋繊維を提供するために、多数の架橋剤および架橋触媒のうちどれか一種を必要に応じて用いることができる。以下のものは、有用な架橋剤および触媒の代表例の一覧である。以下で言及される特許はそれぞれ、参照によりその全体を本明細書に記載されているものとする。
【0024】
適切な尿素ベースの架橋剤としては、置換された尿素、例えばメチロール化尿素、メチロール化環状尿素、メチロール化低級アルキル環状尿素、メチロール化ジヒドロキシ環状尿素、ジヒドロキシ環状尿素、および、低級アルキルで置換された環状尿素が挙げられる。具体的な尿素ベースの架橋剤としては、ジメチルジヒドロキシ尿素(DMDHU、1,3−ジメチル−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン)、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU、1,3−ジヒドロキシメチル−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン)、ジメチロール尿素(DMU、ビス[N−ヒドロキシメチル]尿素)、ジヒドロキシエチレン尿素(DHEU、4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン)、ジメチロールエチレン尿素(DMEU、1,3−ジヒドロキシメチル−2−イミダゾリジノン)、および、ジメチルジヒドロキシエチレン尿素(DMeDHEUまたはDDI、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)が挙げられる。
【0025】
適切な架橋剤としては、ジアルデヒド、例えばC〜Cジアルデヒド(例えば、グリオキサール)、少なくとも1個のアルデヒド基を有するC〜Cジアルデヒド酸類似体、ならびにこれらのアルデヒドおよびジアルデヒド酸類似体のオリゴマーが挙げられ、これらは米国特許第4,822,453号;4,888,093号;4,889,595号;4,889,596号;4,889,597号;および、4,898,642号で説明されている。その他の適切なジアルデヒド架橋剤としては、米国特許第4,853,086号; 4,900,324号;および、5,843,061号で説明されているものが挙げられる。その他の適切な架橋剤としては、アルデヒド、および、尿素ベースのホルムアルデヒド付加生成物が挙げられる。例えば、米国特許第3,224,926号;3,241,533号;3,932,209号;4,035,147号;3,756,913号;4,689,118号;4,822,453号;3,440,135号;4,935,022号;3,819,470号;および、3,658,613号を参照すること。また適切な架橋剤としては、尿素のグリオキサール付加物、例えば米国特許第4,968,774号、および、グリオキサール/環状尿素付加物、例えば米国特許第4,285,690号;4,332,586号;4,396,391号;4,455,416号;および、4,505,712号で説明されているものも挙げられる。
【0026】
その他の適切な架橋剤としては、カルボン酸系の架橋剤、例えばポリカルボン酸が挙げられる。ポリカルボン酸系の架橋剤(例えば、クエン酸、プロパントリカルボン酸、および、ブタンテトラカルボン酸)および触媒が、米国特許第3,526,048号;4,820,307号;4,936,865号;4,975,209号;および、5,221,285号で説明されている。架橋剤として、少なくとも3個のカルボキシル基を含むC〜Cのポリカルボン酸(例えば、クエン酸およびオキシ二コハク酸)を使用することが、米国特許第5,137,537号;5,183,707号;5,190,563号;5,562,740号;および、5,873,979号で説明されている。
【0027】
高分子量のポリカルボン酸もが適切な架橋剤である。適切な高分子量のポリカルボン酸系の架橋剤は、米国特許第4,391,878号;4,420,368号;4,431,481号;5,049,235号;5,160,789号;5,442,899号;5,698,074号;5,496,476号;5,496,477号;5,728,771号;5,705,475号;および、5,981,739号で説明されている。架橋剤としてのポリアクリル酸および関連するコポリマーは、米国特許第5,549,791号、および、5,998,511号で説明されている。ポリマレイン酸系の架橋剤は、米国特許第5,998,511号、および、米国特許出願第09/886,821号で説明されている。
【0028】
特に適切なポリカルボン酸系の架橋剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、酒石酸一コハク酸(tartrate monosuccinic acid)、マレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメチルビニルエーテル−コ−マレイン酸コポリマー、ポリメチルビニルエーテル−コ−イタコン酸コポリマー、アクリル酸のコポリマー、および、マレイン酸のコポリマーが挙げられる。その他の適切な架橋剤は、米国特許第5,225,047号;5,366,591号;5,556,976号;および、5,536,369号で説明されている。
【0029】
適切な架橋触媒としては、酸性塩、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、および、三価のリンを含む酸のアルカリ金属塩が挙げられる。一実施態様において、架橋触媒は、次亜リン酸ナトリウムである。
【0030】
架橋剤は、セルロース系繊維製造の際に、繊維内架橋をもたらすのに十分な量でセルロース系繊維に適用される。セルロース系繊維に適用される量は、繊維の総重量に基づき約1%〜約25重量%であり得る。一実施態様において、架橋剤は、繊維の総重量に基づき約4%〜約6重量%の量である。また、架橋剤と触媒との混合物またはブレンドを用いることもできる。
【0031】
さらに図1を参照すると、板紙のブランク10は、板紙のシートから切断された細長い台形形状の構成要素を含む。ブランク10は側端12および14を有し、これら側端は、ブランクの上縁16の末端から下に向かってへ互いに傾斜している。上縁16は、中高の形状である。ブランク10の下縁18は、くぼんだ形状である。ブランク10を従来の容器または紙コップ製造機械で円形に巻くと、端12および14に隣接する部分が重ね合わせ、互いに接着して固定し、紙コップの側部が形成される。ブランクの上縁16に隣接する部分は、それ自身、外側に向かって、続いて下に向かってカールしており、紙コップのような容器の上部の縁を形成する。底部端は、底部ブランク(図示せず)に接着している。
【0032】
本発明によれば、端部12および14少なくとも一方に沿ったストリップ12aおよび14a、ならびに上縁16に隣接するストリップ16aは、板紙のブランクの元の厚さ未満の厚さに圧縮される。通常、これらの圧縮されたストリップは、およそ5〜9mmの幅を有する。続いて図1Aを参照すると、右側の端14(それに隣接するストリップ14aと共に示される)は、板紙のブランクの元の厚さTより薄い厚さtに圧縮されている。
【0033】
板紙のブランクは、少なくとも1つのプライが架橋繊維(例えば上述した繊維)を含むシングルまたはマルチプライの板紙から製造されるため、ストリップ14aは、元の厚さTのおよそ40〜60%の深さまで容易に圧縮することができる。しかしながら、架橋繊維から作製された板紙をまず元の厚さTのおよそ40〜60%の厚さに圧縮すると、その板紙は元の厚さTのおよそ70〜80%の厚さにリバウンドすることから、架橋繊維から作製された板紙はいくらかリバウンドする傾向があることが見出された。当然ながらリバウンドの量は板紙中の架橋繊維の量に依存し、板紙中の架橋繊維の量が少なければ少ないほどリバウンドの量は少なくなる。
【0034】
典型的な3プライの板紙(中間のプライが、板紙の総乾燥重量に基づきおよそ35〜45%の架橋繊維を有する)は、およそ0.89mmの厚さを有すると予想される。このような材料が約0.46mmに圧縮される場合、これらは、およそ0.56〜0.76mmの厚さに、通常は約0.66mmの厚さにリバウンドすると予想される。これにより、板紙の元の厚さTと比較した場合、総体的な厚さが約25%減少すると予想される。
【0035】
図1に示されるブランクは、従来のコップ製造機でコップなどの容器に形成される。このような機械は、ペーパーマシーナリー社(Paper Machinery Corp.,8900ウェストブラッドレーロード,ミルウォーキー,ウィスコンシン州,米国)によって製造されている。コップ製造機は、コップの側端および上部端に隣接する板紙のストリップを圧縮する加圧ローラーまたは圧盤が備えられるように適合させることができる。当業者であれば、従来のコップ製造機を本発明に係る圧縮されたストリップを形成するために容易に適合させることができると思われる。
【0036】
図2を参照すると、コップは、まず、ブランクを、架橋繊維を含む板紙のストックから所望の形状に切断することによって製造される。続いて、コップの上部端および側端に隣接する領域を圧縮して、それぞれの端に沿って置かれた材料が圧縮されたストリップを形成する。次に、このブランクをコップ製造機で巻いてコップを形成し、重ね合わせた側部ストリップを接着し、その後、上縁のストリップをカールさせて縁を形成する。その後、従来の方式でコップの底部を側壁に取り付ける。本発明によれば、本ブランクは、一方のみの側端に隣接する圧縮されたストリップと共に形成してもよいし、または、両方の側端に隣接する圧縮されたストリップと共に形成してもよい。あるいは、コップの上縁に隣接する圧縮されたストリップを、側端に沿って圧縮されたストリップを形成しないで単独で形成してもよいし、または、上部端に沿って圧縮されたストリップを、1またはそれ以上の側端に沿って圧縮されたストリップと共に形成してもよい。側端および上縁全てに沿って圧縮されたストリップを形成することによって、断熱特性を有するが、それほど厚みのない側部継目と、それほど厚みのない上部縁を有する最適な紙コップが提供される。上記板紙は、4kPa〜25kPaの範囲の圧縮力、またはそれより高い圧縮力で、さらに、25℃〜200℃の範囲の温度で圧縮することができる。また、板紙の含水量も、約3%〜約10%の範囲で、板紙の圧縮性、または、反発力もしくは弾性の特性を有意に変化させることなく様々であってよい。
【0037】
図3を参照すると、本発明に従って製造されたコップが説明されており、このようなコップは、コップ上縁に隣接する材料のストリップが圧縮されている板紙から形成された上部の縁30を有する。図3Bを参照すると、縁30が、板紙10の側壁の元の厚さ未満の厚さを有する上部の縁の断面を示す。同様に、図3に示される紙コップは、重ね合わせた端のストリップ12aおよび14aから形成された側部の継目を有する。端12および14に隣接する圧縮された材料のストリップを重ね合わせ、従来の方式で互いに接着する。この構造は、元の板紙の厚さに等しいか、または、それよりわずかに大きい厚さを有する、重ね合わせた側部の継目を提供する。
【0038】
実施例
以下の実施例は、ウェアーハウザー社より入手可能なポリアクリル酸またはクエン酸架橋されたセルロース繊維などの架橋繊維を含む少なくとも1つのプライを有する板紙の圧縮性を説明することを目的とする。試験手順に従って、2、3プライの板紙サンプルAおよびBを上述した従来の方式で製造した。以下の表1に、板紙AおよびBの組成を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
パルプ中の非架橋繊維を、既定のカナダ標準濾水度(CSF)まで精製した。重量パーセンテージは、板紙の乾燥繊維の総重量に基づく。ポリビニルアルコール(PVOH)(セルヴォル(Celvol)165SF,セラニーズ社(Celanese Corporation,ダラス,テキサス州)製)を、中間プライの繊維の乾燥重量に基づく重量パーセンテージで添加した。加えて、表2に記載された通りの様々な添加剤量で板紙AおよびBそれぞれのサンプルを作製した。アクアペル(Aquapel)はサイズ剤であり、ハーキュリーズ社(Hercules Incorporated)の商標である。ハーコボンド(Hercobond)はアニオン性ポリアクリルアミド歩留まり向上剤であり、ハーキュリーズ社の商標である。添加剤を変えても、圧縮後の板紙ブランクの最終的な圧縮性および弾性に対して極めてわずかな作用しか及ぼさないことが見出された。
【0041】
【表2】

【0042】
板紙AおよびBの複数の試料を、10.1cm×20.3cmの長方形に切断することによってサンプルを作製した。試験試料の縦方向の端部に隣接する幅2.54cmのストリップで圧縮試験を行った。厚さを試験する地点として、ストリップそれぞれに沿って間隔を開けた位置に印を付けた。板紙AおよびBそれぞれのサンプルの3分の1を、20%、50%および65%の相対湿度に最低限24時間で調整した。サンプルそれぞれのストリップにおける最初の厚さを測定した。次に、サンプルを、周囲温度で、上部プライを上に向けて、圧盤の底部バーの位置に置いた。次に、複数回の実施中に、加圧バーを、所定の温度である約25.5℃、約139.1℃および約188.8℃に加熱した。4922kPa、9852kPa、17724kPa、および、24618kPaの圧縮力を用いた。幅約2.54cmの加熱した加圧バーを、底部バーに置かれた板紙に押し下げ加圧した。次に、複数の試料を、それぞれの異なる温度、圧力、および、異なる相対湿度で圧縮した。圧縮力、温度、相対湿度をより大きくすると、圧縮性がわずかに高くなり、厚さが薄くなることが見出された。温度、圧力および相対湿度がより高いと、より低い温度、圧力および相対湿度で圧縮した場合の厚さより約5〜10%薄い最終的な厚さが得られた。
【0043】
同様に、コントロールとして非架橋繊維を含む標準的な板紙を圧縮した。標準的な板紙は、0.46mmの最初の厚さを有していたが、板紙Aの平均厚さは約0.90mmであり、板紙Bの平均厚さは約0.87mmであった。十分に圧縮した場合の最小厚さを測定し、加えて圧縮バーを緩めて1分後、30分後および60分後の厚さを測定した。試験結果を平均して、図4に示した。
【0044】
図4を参照すると、標準的な板紙が、約0.46〜0.38mmに圧縮され、その後約0.41mmにリバウンドしたことがわかる。本発明に従って製造された板紙AおよびBを、元の約0.89mmから約0.43〜0.46mmに圧縮した。続いてこれらは、それぞれ約0.64〜0.69mmにリバウンドした。
【0045】
例示のための実施態様を図説し説明したが、当然のことながら、そこに本発明の本質および範囲から逸脱することなく様々な変化を施すことができる。
排他的な所有権ないし特権を請求する本発明の態様は、特許請求の範囲において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に従って形成された板紙のブランクの平面図であり;図1Aは、図1のブランクの断面線1A−1Aに沿った断面図である。
【図2】本発明に係るコップの製造方法の流れ図である。
【図3】完成したコップの等角投影図であり;図3Aは、断面線3A−3Aに沿ったコップの断面であり;図3Bは、断面線3B−3Bに沿ったコップの断面線である。
【図4】本発明に係る板紙を圧縮した後の、「厚さ」対「時間」のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を形成するためのブランクであって:
該ブランクは架橋繊維を含んでなる断熱性板紙のブランクを含み、該板紙のブランクは所定の厚さを有し、該板紙のブランクは、側端、上部端および底部端を有し、該ブランクの端の少なくとも1つに隣接する部分は、該所定の厚さ未満の厚さに圧縮される、上記ブランク。
【請求項2】
前記板紙のブランクが、前記側端の両方に沿って前記所定の厚さ未満の厚さに圧縮される、請求項1に記載のブランク。
【請求項3】
前記板紙のブランクの上部端に隣接する部分が、前記所定の厚さ未満の厚さに圧縮される、請求項2に記載のブランク。
【請求項4】
前記板紙のブランクの上部端に隣接する部分が、前記所定の厚さ未満の厚さに圧縮される、請求項1に記載のブランク。
【請求項5】
板紙のブランクから容器を形成する方法であって:
架橋繊維を含む断熱性板紙のブランクを板紙シートから切断して形成する工程、ここで、該板紙ブランクは所定の厚さを有し、該板紙のブランクは側端、上部端および底部端を有する;
該板紙のブランクの側端、上部端および底部端の少なくとも1つに隣接する部分を圧縮して、該所定の厚さ未満の厚さを有する板紙のストリップを形成する工程;および、
該ブランクから、カールした縁を有する容器を形成する工程、
を含む、上記方法。
【請求項6】
前記ブランクの側端の少なくとも一方に隣接する部分を圧縮して、前記所定の厚さ未満の厚さを有する側部ストリップを形成する工程;および、
前記側端に隣接する圧縮されたストリップの一方を、板紙の他方の前記側端に隣接する部分と重ね合わせて、それらを接着し、容器を形成する工程、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記板紙のブランクのもう一方の側端の隣接する部分も圧縮して、前記所定の厚さ未満の厚さを有する第二の圧縮されたストリップを形成する工程;および、
前記側端に隣接する圧縮されたストリップ同士を重ね合わせて、互いに接着し、コップの側壁を形成して、コップを形成する工程、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記板紙のブランクの上部端に隣接する部分を圧縮する工程、および、
前記上部端に隣接する圧縮した領域をカールさせて縁を形成する工程、
をさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
容器を形成する断熱性板紙のブランクを含み、該ブランクは架橋繊維を含んでなり、該ブランクは、第一および第二の側端、上部端、ならびに底部端を有し、該上部端、該第一の側端および該第二の側端の少なくとも1つに隣接する材料のストリップを、それらの長さ方向に沿って圧縮し、該側端に隣接する領域を互いに重ね合わせて接着して側面の継目を形成し、該上縁に隣接するストリップをカールさせて縁を形成してなる容器。
【請求項10】
前記上部端に隣接するストリップ、ならびに、第一の側端および第二の側端に隣接するストリップがそれぞれ、前記板紙のブランクの厚さ未満の厚さに圧縮される、請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記上部端に隣接するストリップと側端の少なくとも一方に隣接するストリップとが圧縮されている、請求項9に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−162700(P2008−162700A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335687(P2007−335687)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(302009279)ウェヤーハウザー・カンパニー (36)
【Fターム(参考)】