説明

断熱シート

【課題】電子部品に積層して使用可能な断熱シートにおいて、ノイズに対してその断熱シートがアンテナとして作用してしまうのを抑制すること。
【解決手段】ガスバリアフィルム3,5は、複数のスペーサ7を間に挟んで互いに積層して気密に貼り合わされている。各スペーサ7は、PTFE等のシートを略正方形に切断して構成され、中心に円形の穴7Aが穿設されている。ガスバリアフィルム3,5の対向面にホットメルト層を塗布し、スペーサ7を挟んで真空状態で貼り合わせることにより、穴7Aの内部が真空に保持された断熱シート1が得られる。ガスバリアフィルム3,5は非導電性であるので、電子部品に積層して使用しても、ノイズに対してその断熱シート1がアンテナとして作用してしまうのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空を利用して熱絶縁を行う断熱シートに関し、詳しくは、電子部品に積層して使用可能で、その電子部品が発生した熱が望ましくない箇所へ伝達されるのを抑制する断熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品に積層して使用される断熱シートは存在していないが、真空を利用した断熱技術として、ポリビニルアルコールのフィルムにアルミニウムを蒸着させてなるガスバリア性フィルムを多数積層してなる真空断熱構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−79762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1記載の真空断熱構造体では、アルミニウムが蒸着されたガスバリア性フィルムを使用しているので、電子部品のための断熱シートとして当該電子部品に積層して使用した場合、ノイズに対してアンテナとして作用してしまう可能性があった。そこで、本発明は、電子部品に積層して使用可能な断熱シートにおいて、ノイズに対してその断熱シートがアンテナとして作用してしまうのを抑制することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達するためになされた本発明の断熱シートは、積層して気密に貼り合わせられる一対の非導電性のガスバリアフィルムと、穴を有し、上記一対のガスバリアフィルムの間に配設されるスペーサと、を備え、上記一対のガスバリアフィルムは、上記スペーサを間に挟んで互いに貼り合わされ、上記スペーサの上記穴の内部が真空に保持されたことを特徴とする断熱シート。
【0006】
このように構成された本発明の断熱シートでは、一対の非導電性のガスバリアフィルムは、穴を有するスペーサを間に挟んで互いに積層して気密に貼り合わせられている。そして、このようにガスバリアフィルムが貼り合わせられることにより、上記スペーサの上記穴の内部は真空に保持されている。このため、本発明の断熱シートは、熱伝導率の低い真空を利用して熱絶縁を行うことができ、電子部品に積層して使用した場合には、その電子部品が発生した熱が望ましくない箇所へ伝達されるのを抑制することができる。また、上記一対のガスバリアフィルムは非導電性であるので、電子部品に積層して使用しても、ノイズに対してその断熱シートがアンテナとして作用してしまうのを抑制することができる。
【0007】
なお、上記スペーサは、上記一対のガスバリアフィルムの間に間隔を開けて複数配設されると共に各々が上記穴を有し、上記一対のガスバリアフィルムは、上記複数のスペーサの間を含む上記各スペーサの周囲で互いに貼り合わされてもよい。この場合、一方のガスバリアフィルムにスペーサを配置しておいて他方のガスバリアフィルムと貼り合わせれば、ヒートロール等によって連続成形することも可能となり、生産性が向上する。また、上記一対のガスバリアフィルムが互いに張り合わされることによって上記穴の内部の真空状態を一層良好に保持することができ、一層安定した断熱効果が得られる。更に、上記一対のガスバリアフィルムが貼り合わされた部分で切断すれば、上記穴の内部の真空状態は保持されるので、適宜の大きさに切り取って使用することもできる。
【0008】
また、本発明の断熱シートにおいて、上記各ガスバリアフィルムは、ガスバリア性を付与した透明樹脂で構成されてもよい。この場合、当該断熱シートを電子部品に積層する際に位置が確認し易い。また、積層後にICチップの番号を確認することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用された断熱シートの構成を表す平面図(A)、断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態を、図面と共に説明する。図1(A)は、本発明が適用された断熱シート1の構成を表す平面図であり、図1(B)はそのA−A線断面図である。図1に示すように、断熱シート1は、一対のガスバリアフィルム3,5を互いに貼り合わせて構成され、このガスバリアフィルム3,5は、複数のスペーサ7を間に挟んで互いに積層して気密に貼り合わされている。
【0011】
各スペーサ7は、PTFE等のシートを略正方形に切断して構成され、中心に円形の穴7Aが穿設されている。各ガスバリアフィルム3,5は、PETやポリイミドフィルムなどの基材フィルムの片面に、表面を平滑化するための市販のコーティング層(フッ素系,シリカ系等)を形成し、そのコーティング層の表面にガスバリア性を有する絶縁層を蒸着したものである。なお、絶縁層としては、酸化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化チタン,窒化ケイ素等のいずれか1つ以上を使用するとよい。上記コーティング層は、蒸着された絶縁層の内部応力を緩和して、当該絶縁層を保護することによりガスバリア性を保持するものである。
【0012】
このように構成されたガスバリアフィルム3,5の対向面(上記絶縁層を蒸着した側でもその反対側でもよい)にホットメルト層を塗布し、スペーサ7を挟んで真空状態で貼り合わせることにより、穴7Aの内部が真空に保持された断熱シート1が得られる。なお、穴7Aの面積は、スペーサ7の外形面積の40〜90%であると、その真空による断熱効果が良好に発揮される。
【0013】
また、ガスバリアフィルム3,5の貼り合わせに当っては、上記ホットメルト層を塗布し、下方に配設されるガスバリアフィルム5の表面にスペーサ7を間隔を開けて整列配置し、その表面に真空ラミネート用のヒートロール等を介して他方のガスバリアフィルム3を貼り合わせればよい。なお、透明性を確保するためには、ガスバリアフィルム3,5の全面にホットメルト層を塗布するのではなく、図1に示す貼り合わせ部9となる箇所にのみ、グラビア印刷,スクリーン印刷,スロットコート等の手法で塗布するのが望ましい。また、断熱性を確保するためには、上記ヒートロールの雰囲気を少なくとも10Pa(0.1Torr)程度まで減圧しておくことが望ましい。このような工程により、図1に示すように、ガスバリアフィルム3,5は、各スペーサ7の周囲で互いに貼り合わされて貼り合わせ部9を構成する。
【0014】
このように構成された本実施の形態の断熱シート1は、熱伝導率の低い真空を利用して熱絶縁を行うことができ、電子部品に積層して使用した場合には、その電子部品が発生した熱が望ましくない箇所へ伝達されるのを抑制することができる。また、一対のガスバリアフィルム3,5は非導電性であるので、電子部品に積層して使用しても、ノイズに対してその断熱シート1がアンテナとして作用してしまうのを抑制することができる。
【0015】
また、ガスバリアフィルム3,5は、上記複数のスペーサ7の間を含む各スペーサ7の周囲で互いに貼り合わされているので、穴7Aの内部の真空状態を一層良好に保持することができ、一層安定した断熱効果が得られる。更に、上記一対のガスバリアフィルム3,5の貼り合わせ部9で切断すれば、上記穴7Aの内部の真空状態は保持されるので、断熱シート1は適宜の大きさに切り取って使用することもできる。
【0016】
更に、上記各ガスバリアフィルム3,5及び上記各スペーサ7は透明樹脂で構成されているので、断熱シート1を電子部品に積層する際に位置が確認し易い。また、積層後にICチップの番号を確認することも可能となる。また更に、断熱シート1は、例えば厚さ100μmのPETフィルムをガスバリアフィルム3,5の基材フィルムとして使用することにより、全体としての厚さが1mm程度の薄型に形成することができ、曲げることもできるので、電子部品等に対する装着性が一層向上する。
【0017】
なお、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、スペーサは多孔質体であってもよく、断熱シートのほぼ全面に亘って配設されていてもよい。但し、上記のように、複数のスペーサ7を使用してガスバリアフィルム3,5を各スペーサ7の周囲で互いに貼り合わせる場合、前述のようにヒートロール等によって連続成形することも可能となり、生産性が向上する。
【0018】
また、穴7Aを例えば長尺状に形成して、水を入れたマイクロカプセルを予め含浸させたウイックと芯材とをその穴7Aに封入しておき、上記ヒートロールでマイクロカプセルを割るか貼り合わせ後に加熱によってマイクロカプセルを割るかすれば、ヒートパイプとして使用することもできる。
【符号の説明】
【0019】
1…断熱シート 3,5…ガスバリアフィルム
7…スペーサ 7A…穴
9…貼り合わせ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層して気密に貼り合わせられる一対の非導電性のガスバリアフィルムと、
穴を有し、上記一対のガスバリアフィルムの間に配設されるスペーサと、
を備え、
上記一対のガスバリアフィルムは、上記スペーサを間に挟んで互いに貼り合わされ、上記スペーサの上記穴の内部が真空に保持されたことを特徴とする断熱シート。
【請求項2】
上記スペーサは、上記一対のガスバリアフィルムの間に間隔を開けて複数配設されると共に各々が上記穴を有し、
上記一対のガスバリアフィルムは、上記複数のスペーサの間を含む上記各スペーサの周囲で互いに貼り合わされたことを特徴とする請求項1記載の断熱シート。
【請求項3】
上記各ガスバリアフィルムは、ガスバリア性を付与した透明樹脂で構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の断熱シート。

【図1】
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【公開番号】特開2011−99527(P2011−99527A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255560(P2009−255560)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】