説明

断熱外囲体

【課題】外囲板のはぜ締め作業を容易におこなうことができる断熱屋根、断熱外壁等の断熱外囲体を提供する。
【解決手段】断熱外囲体は、下地材(2)と、この下地材(2)に固定された吊子下部(10d)と、この吊子下部(10d)の結合部(10c)と脱着自在、且つスライド自在に結合可能な結合部(10e)を有する吊子上部(10h)と、この吊子下部(10d)間に配置された断熱材(6)と、この断熱材(6)の上面に、吊子上部(10h)間に位置して配置され、隣接する側部が吊子上部(10h)のはぜ部(10g)にはぜ締めされた長尺状の金属板からなる外囲板とから構成され、断熱材(6)の厚さと吊子下部(10d)の立ち上り部(10b)の高さを略同一とし、吊子下部(10d)の立ち上り部(10b)に形成された結合部(10c)が断熱材(6)の配列平面から若干突出するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の屋根や外壁に用いられる断熱外囲体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱屋根として、図2に示すように、下地材(2)に複数の吊子(4)を固定し、該吊子(4)間に断熱材(6)を配置し、該断熱材(6)の上に金属板からなる屋根材(8)を配置し、該屋根板(8)の側部を対向する吊子(4)にはぜ締めした構造のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−3522公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
断熱屋根を構築する場合、まず下地材(2)に吊子(4)を固定し、次に吊子(4)間に位置させて、屋根材(8)を断熱材(6)の平面上に展開し、屋根材(8)の側部を吊子(4)にはぜ締めする。断熱材(6)の上面に屋根材(8)を展開配置し、はぜ締めする作業は断熱材(6)の配列平面から吊子(4)の立ち上り部(4a)が多数、長く突き出した状態で行われる。この突出長さは通常5〜6cm位ある。そのため、大きく突出する多数のこの立ち上り部(4a)が作業者の歩行の邪魔になり、作業効率を低下させるとともに、作業者が立ち上り部(4a)に引掛かってころんだり、あるいは、この立ち上り部(4a)に足を引掛けると立ち上り部(4a)が変形してしまうことがある。
本発明は上記問題点を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明は、下地材(2)と、下位水平部(10a)と立ち上がり部(10b)と結合部(10c)を有し、前記下位水平部(10a)が、前記下地材(2)に固定される吊子下部(10d)と、前記吊子下部(10d)の結合部(10c)と脱着自在、且つスライド自在に結合可能な結合部(10e)と立ち上がり部(10f)とはぜ部(10g)とを有し、前記吊子下部(10d)の結合部(10c)に、脱着自在且つスライド自在に結合する吊子上部(10h)と、前記吊子下部(10d)間に配置される断熱材(6)と、前記断熱材(6)の上面に、前記吊子上部(10h)間に位置して配置される、隣接する側部が前記吊子上部(10h)のはぜ部(10g)にはぜ締めされる長尺状の金属板からなる外囲板(12)とから成り、前記断熱材(6)の厚さと前記吊子下部(10d)の立ち上り部(10b)の高さを略同一とし、前記吊子下部(10d)の結合部(10c)が断熱材(6)の配列平面から若干突出するようにしたものである。
また本発明は、前記吊子下部(10d)と吊子上部(10h)の結合部(10c)(10e)を、開口部を有する円形とし、前記吊子上部(10h)の結合部(10e)を前記吊子下部(10d)の結合部(10c)に引掛けることが可能なフック形状としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は断熱工法の屋根葺き、あるいは外壁構築作業を効率的に行うことができる。また、外囲板の熱膨張によるひずみや音鳴りを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施の形態を添付した図面を参照して詳細を説明する。
図1において、(2)は建物の屋根の下地材であり、鉄骨、木、コンクリートその他の部材により構成されている。(10)は、雨水の流れる方向に沿って、下地材(2)上に配置された長尺状の吊子であり、下位水平部(10a)と吊子下部立ち上がり部(10b)と吊子下部結合部(10c)とからなる吊子下部(10d)と、吊子上部結合部(10e)と吊子上部立ち上り部(10f)と吊子上部はぜ部(10g)とからなる吊子上部(10h)とより構成されている。
【0007】
前記結合部(10c)(10e)は、円形部と開口部とを有するフック形状となっており、互いに脱着自在に結合し得るように構成されている。吊子下部(10d)の立ち上り部(10b)の高さは、断熱材(6)の厚さと略同一に設定されている。前記吊子上部(10h)の開口縁(10i)を前記吊子下部(10b)の開口部に挿入することで、結合部(10e)内周面と結合部(10c)の外周面とが嵌合し、該嵌合状態で、吊子上部(10h)は、吊子下部(10d)に対して、該吊子下部(10d)の結合部(10c)に沿ってスライド自在となっている。
【0008】
(12)は、長尺状の金属板から成る外囲板であり、その両側部に傾斜部(12b)(12b)と立ち上り部(12c)(12c)と、上位水平部(12d)(12d)が形成され、外囲板(12)の一側面には、更にはぜ締め用の垂下片(12e)が形成されている。
次に、外囲体(12)を下地材(2)上に被覆し、屋根を構築する組み立て工法について説明する。尚、本発明は屋根以外にも建物の外壁にも応用することができる。
【0009】
まず、複数個の吊子の下部を(10d)を、下地材(2)上に、所定の間隔を存して、雨水の落下する方向と平行な方向に配列し、各吊子下部(10d)の、下位水平部(10a)をビスにより、下地材(2)に固定する(図1A参照)。
【0010】
次に、下地材(2)上に長方形状の断熱材(6)を敷き、各断熱材(6)の側面を対応する吊子下部(10d)の立ち上り部(10b)の側面に当接配置する(図1A参照)。下地材(2)上に断熱材(6)を敷いた状態において、吊子下部(10d)の結合部(10c)は、断熱材平面よりわずか(略10mm)に突出するように、結合部(10c)の寸法が破定されている。
【0011】
次に、吊子上部(10h)を吊子下部(10d)に引掛け結合しつつ、長尺状の、図1中、紙面垂直方向に伸びる外囲板(12)を断熱材(6)の上に置き、その立ち上り部(12c)を、吊子上部(10h)の立ち上り部(10f)に当接させる。このとき、外囲板(12)の垂下片(12e)が形成された上位水平部(12d)を、吊子上部(10h)のはぜ部(10g)の上面に重ね、外囲板(12)の他の側部の上位水平部(12d)を、吊子上部(10h)のはぜ部(10g)の下面に重ねる(図1c参照)。
【0012】
互いに隣接する一対の外囲板(12 )(12 )の傾斜部(12b)(12b)は三角形を形成し、この三角形の中に吊子下部(12d)と吊子上部(10h)の重なり合った結合部(10c)(10e)が収納配置される。上記の要領で順次、外囲板(12)を隣接配置し、最後に、外囲板(12)の垂下片(12e)を内側に折り曲げ、対応する吊子(10c)のはぜ部(10g)にはぜ締めし、互いに隣接する外囲板(12)を吊子(10)に固定する(図1D参照)。
【0013】
上記した施工工程において、断熱材(6)を吊子(10)間に落とし込んでも、断熱材平面から、吊子の上部がわずか10mm程度突出するだけなので、作業者の施工中の歩行や作業が容易となり、作業効率を向上させることができる。また、外囲板を吊子上部(10h)にはぜ締めにより固定しても、吊子上部(10h)は吊子下部(10d)に対してスライド自在なため、外囲板の熱膨張による変位をこのスライドにより吸収することができ、外囲板の熱膨張によるひずみや音鳴りの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の説明図である。
【図2】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0015】
2 下地材
4 吊子
6 断熱材
8 屋根材
10 吊子
10a 下位水平部
10b 下部立ち上り部
10c 下部結合部
10d 吊子下部
10e 吊子上部結合部
10f 吊子上部立ち上り
10g 吊子上部はぜ部
10h 吊子上部
10i 開口縁
12 外囲板
12b 傾斜部
12c 立ち上り部
12d 上位水平部
12e 垂下片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材(2)と、下位水平部(10a)と立ち上がり部(10b)と結合部(10c)を有し、前記下位水平部(10a)が、前記下地材(2)に固定される吊子下部(10d)と、前記吊子下部(10d)の結合部(10c)と脱着自在、且つスライド自在に結合可能な結合部(10e)と立ち上がり部(10f)とはぜ部(10g)とを有し、前記吊子下部(10d)の結合部(10c)に、脱着自在且つスライド自在に結合する吊子上部(10h)と、前記吊子下部(10d)間に配置される断熱材(6)と、前記断熱材(6)の上面に、前記吊子上部(10h)間に位置して配置される、隣接する側部が前記吊子上部(10h)のはぜ部(10g)にはぜ締めされる長尺状の金属板からなる外囲板(12)とから成り、前記断熱材(6)の厚さと前記吊子下部(10d)の立ち上り部(10b)の高さを略同一とし、前記吊子下部(10d)の結合部(10c)が断熱材(6)の配列平面から若干突出するようにしたことを特徴とする断熱外囲体。
【請求項2】
前記吊子下部(10d)と吊子上部(10h)の結合部(10c)(10e)を、開口部を有する円形とし、前記吊子上部(10h)の結合部(10e)を前記吊子下部(10d)の結合部(10c)に引掛けることが可能なフック形状としたことを特徴とする請求項1に記載の断熱外囲体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−2480(P2007−2480A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182536(P2005−182536)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(597090273)
【Fターム(参考)】