説明

断熱性紙容器

【課題】熱湯を注いで飲食するための紙製カップ又は電子レンジ等で保温を要する弁当箱等トレー状の断熱性紙容器において、廃棄物処理などに係わる環境負荷が少なく、製造エネルギーが嵩まず、断熱効果に優れかつ表面の美粧性に優れた断熱性紙容器の提供。
【解決手段】板紙でなる紙基材20の外面に発泡層22aが施された断熱性原紙2を用いて加熱発泡せしめた断熱性紙容器1であって、前記発泡層22aがポリビニルアルコール等水溶性樹脂の溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体23が1〜25重量%混合分散されている塗工液で塗工されていて、その発泡層22a上に発泡制御層がほどこされている断熱性紙容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱湯を注いで食する即席食品や飲料等用の断熱性紙カップあるいは電子レンジなどで加熱する弁当箱等用の紙製トレーのような断熱性紙容器に関するものであり、特に紙を主体とする基材上に発泡層を施した発泡用紙を用いて容器形状に成形後、加熱発泡させる断熱性紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、即席麺、即席みそ汁、即席スープ等の収容物に熱湯を注いで食するための発泡ポリスチレン等でなる断熱カップが知られているが、近年の廃棄物増加に伴って廃棄物処理に係わる環境問題や熱湯を注ぐことで環境ホルモンの溶出の恐れがあるなどの問題があり、易廃棄性および易焼却性で、かつ環境ホルモンが溶出する恐れのない断熱性紙カップが主流を占めるようになってきた。
【0003】
上記断熱性紙カップの事例として、例えば、図6(b)の部分切り欠き斜視図に示すように、紙製カップ本体(12)の周囲を断熱のための保護カバー(13)で覆った紙製断熱カップ(8)がある。さらに具体的には、上記図6(b)に示すように、側壁(14)と底壁(図示せず)とでなる紙製カップ本体(12)の側壁(14)の外側面に、例えば、図6(a)の断面図に示すように、ライナー紙(18)の片面にエンボス加工が施された扇形状のエンボス紙(16)と、さらにその上に薄紙(17)を貼着した断熱性の保護カバー(13)を巻き付け接着固定して紙製断熱カップ(8)とするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、上記の紙製断熱カップ(8)では、保護カバー(13)によってその断熱性は十分にあるが、紙製カップ本体(12)の側壁(14)外側面に巻付けられる断熱性を有する保護カバー(13)自体の材料とその製造コストが嵩むことに加え、その巻き付け等を含めた製造エネルギーが嵩むという難点のあるものであった。
【0005】
また、例えば、図7の部分切欠き正面図に示すように、紙製カップ本体(12)の外側面に、この紙製カップ本体(12)外側面に接する大きさで、下部内側に底カール(4)を有する紙製外側スリーブ(11)を被せて、この紙製外側スリーブ(11)の上部開口内面を紙製カップ本体(12)の上方カール(4)内になるように貼着して両者一体となるようにし、紙製カップ本体(12)の側壁(14)と紙製外側スリーブ(11)との間に空間層(5)を設けた二重容器型の断熱カップ(7)がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、上記二重容器型の断熱カップ(7)では、紙製外側スリーブ(11)自体の材料と製造コストが嵩むこととそれを紙製カップ本体(12)の外側に貼着するといった製造エネルギーが嵩むという難点に加え、その中に熱湯を注いだものはそのカップ上部が熱くなり、しかも手で持っている間に紙製外側スリーブ(13)自体が潰れて紙製外側スリーブ(13)と紙製カップ本体(12)との間の空間層(5)が少なくなり、その結果断熱効果が無くなるといった問題点があった。
【0007】
また、例えば、紙製カップ本体の外面に、エンボス紙を巻き付け貼着した断熱カップ(図示せず)があるが、この断熱カップでは、カップ外面に凹凸があるため、その凹部に記載された小さな文字(内容物の原材料名や栄養成分等)が読みにくく、かつ外観的にも見栄えが悪く美粧性に欠ける等の問題があった。
【0008】
上記問題点すなわち製造エネルギーの嵩みや断熱効果の薄れあるいは美粧性に欠ける等の問題点を解決するものとして、例えば、図8(a)の側断面図に示すように、表裏面にポリエチレン層(19)が施された多層(三層)抄き紙の中間層(15)に、熱発泡性のマイクロカプセル型発泡剤(6)が含有されている後発泡断熱紙(9)を用いた断熱紙製容器(図示せず)があり、この断熱紙製容器をオーブン等でそれを加熱処理することによって、図8(b)の側断面図に示すように、中間層(15)中のマイクロカプセル型発泡剤(6)からガスが発生してその中間層(15)が膨らみ断熱効果を奏するものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平8−58762号公報
【特許文献2】特開2003−191940号公報
【特許文献3】特開2002−254532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記マイクロカプセル型発泡剤(6)が含有の後発泡断熱紙(9)を用いた断熱紙製容器では、マイクロカプセル自体のほとんどが、塩化ビニルデン、アクリロニトリルを主成分とするもので、その残留モノマーの問題に加え、廃棄(焼却)時の塩素ガス、シアンガス、ダイオキシン等の発生の危惧があり、環境に係わる負荷が嵩むという問題点があった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、熱湯を注いで食する即席食品や即席飲料等の断熱性紙容器あるいは電子レンジ等で保温を要する弁当箱等トレー状の断熱性紙容器において、廃棄物処理などに係わる環境負荷が少なく、製造エネルギーが嵩まず、断熱効果に優れかつ表面の美粧性に優れた断熱性紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、紙基材の外面に発泡層が施された発泡紙を用い、加熱発泡せしめた断熱性紙容器であって、前記発泡層は水溶性樹脂溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体が混合分散している塗工液からなることを特徴とする断熱性紙容器としたものである。
【0013】
また、請求項2の発明では、前記塗工液中の水溶性樹脂は、ポリビニルアルコールまたは澱粉であることを特徴とする請求項1記載の断熱性紙容器としたものである。
【0014】
また、請求項3の発明では、前記塗工液に対する無機粉体の混合割合は、1〜25重量%の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の断熱性紙容器としたものである。
【0015】
また、請求項4の発明では、前記発泡層面に酸化珪素を含む発泡制御層が施されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の断熱性紙容器としたものである。
【0016】
さらにまた、請求項5の発明では、前記紙基材の内面に熱可塑性樹脂層が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の断熱性紙容器としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0018】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、紙基材の外面に発泡層が施された発泡原紙を用いて成形し、それを加熱発泡せしめた断熱性紙容器であって、前記発泡層は水溶性樹脂溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体が混合分散している塗工液からなるので、従来の2重容器などに比べ製造エネルギーが嵩まず、かつ発泡剤としての炭酸水素ナトリウムは良好な発泡性能を有していることに加え、食品等に触れても問題のない衛生性を保持し、加熱発泡時に発生するガスも二酸化炭素が主体であり安全性からも問題のない断熱性紙容器とすることができる。
【0019】
また、上記請求項2に係る発明によれば、前記塗工液中の水溶性樹脂を、ポリビニルアルコールまたは澱粉とすることによって、これら樹脂の溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体の分散性をより良好にして塗工適性に優れる塗工液とすることができ、かつこのポリビニルアルコールと澱粉は紙への塗工適性に優れる樹脂で、発泡層の形成にはより好適な水溶性樹脂でもある。
【0020】
また、上記請求項3に係る発明によれば、前記塗工液に対する無機粉体の混合割合を、1〜25重量%の範囲とすることによって、良好な断熱状態が得られる断熱性紙容器とすることができる。この無機粉体の混合割合が1重量%に満たないと、それを加熱処理して得られる断熱性が、例えばポリエチレンの発泡紙等にも劣るように乏しくなり、また、逆にこの無機粉体の混合割合が25重量%を越えると紙基材への塗布適性が悪くなるとともに、得られた発泡層が過発泡等による発泡を制御することが困難となり、その結果表面性が悪くなるなどといった問題点に加え、材料コストが嵩むという問題があるので好ましくない。
【0021】
また、上記請求項4に係る発明によれば、前記発泡層面に酸化珪素を含む発泡制御層が施されていることによって、この酸化珪素を含む発泡制御層がガスバリア性があるので、炭酸水素ナトリウムの加熱により発生するガスの透過を抑制(制御)し、部分的な過発泡による発泡層の割れや表面の荒れを防止し、表面平滑性に優れたものとすることができ、よってその上へ印刷される文字等に欠けなどのない美粧性にも優れる断熱性紙容器とすることができる。
【0022】
さらにまた、上記請求項5に係る発明によれば、前記紙基材の内面に熱可塑性樹脂層が施されていることによって、カップやトレーまたは紙製成形容器等に成形する際のシーラント層とすることができ、さらには紙製容器の耐水性を付与することもできる。
【0023】
従って本発明は、熱湯を注いで食する即席食品等の断熱性紙容器や電子レンジ等で保温を要する弁当箱等トレー状の断熱性紙容器において、廃棄物処理などに係わる環境負荷が少なく、製造エネルギーが嵩まず、断熱効果に優れかつ表面の印刷層に美粧性を付与する断熱性紙容器の如き用途において、優れた実用上の効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の断熱性紙容器の一事例を表す説明図であり、図2は、本発明の断熱性紙容器を構成する断熱紙の一事例を説明する模式図であり、図3は、本発明の断熱性紙容器を構成する断熱紙の発泡状態の一事例を説明する模式図である。また、図4は、本発明の断熱性紙容器の一事例の製造を説明するものであり、図5は、本発明の断熱性紙容器の他の事例を表す説明図である。
【0026】
本発明の断熱性紙容器は、例えば、図1(a)の一部を切欠断面とした断面図およびその切欠断面の一部を拡大した図1(b)に示すように、各種板紙等でなる紙基材(20)の外面に発泡前の発泡層(22a)が施された断熱性原紙(2)を用いた断熱性紙容器(1)を、オーブン等で加熱すると、図1(c)に示すように、発泡層が発泡して断熱性を有する発泡層(22b)とする断熱性紙容器(1)である。
【0027】
上記発泡前の発泡層(22a)は、水溶性樹脂溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体が混合されている塗工液で塗工されていることを特徴とする断熱性紙容器(1)であり、それをオーブン等で加熱すると、図1(c)の模式図に示すように、無機粉体(23)中の炭酸水素ナトリウムから発生するガス(主に炭酸ガス)によって、図1(b)に示す発泡層(22a)が発泡して断熱性を有する発泡層(22b)を形成する後発泡型の断熱性紙容器(1)である。
【0028】
このように、発泡前の発泡層(22a)として、紙基材(20)の外面に水溶性樹脂溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体(23)が混合分散されている塗工液で塗工することによって断熱性原紙(2)が得られるので、例えば、図7に示す従来の2重容器などに比べ製造に係るエネルギーコストが嵩まない断熱性紙容器(1)を得ることができる。また、発泡剤である炭酸水素ナトリウムを含む発泡前の発泡層(22a)をオーブン等で加熱処理で発泡させる時に発生するガスも無毒性の二酸化炭素が主体であるので安全性に対する問題のない断熱性紙容器(1)とすることができる。
【0029】
上記断熱性原紙(2)を構成する紙基材(20)としては、200〜300g/m2 程度の板紙で、特に食品用としては、蛍光染料等を含まない、バージンパルプで構成された紙であることが要求され、例えば、アイボリーやカップ原紙などが好適な板紙として挙げられる。
【0030】
また、上記発泡層(22a)を形成する水溶性樹脂溶液としての、その主原料としては、例えば澱粉系樹脂、セルロース系樹脂、たんぱく系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ラテックス系樹脂等水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−無水マレイン酸、水性シリコーン、リン酸塩、エチレンイミン系化合物、脂肪酸エステル等の水溶液またはその混合水溶液が挙げられる。
【0031】
しかし、上記本発明では、図1(b)に示す発泡層(22a)を形成する塗工液中の水溶性樹脂を、紙基材(20)への塗布適性などを考慮して、ポリビニルアルコールまたは澱粉とするものである。
【0032】
このように水溶性樹脂をポリビニルアルコールまたは澱粉とすることによって、これら樹脂の溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体の分散性をより良好にして塗工適性に優れる塗工液とすることができ、かつこのポリビニルアルコールと澱粉は紙への塗工適性に優れる樹脂であり、発泡層(22a)の形成にはより好適な水溶性樹脂でもある。さらにまた、これら樹脂は、図8(a)、(b)に示す従来のマイクロカプセル型発泡剤が含有の後発泡断熱紙(9)を用いた断熱紙製容器の場合に比べ、残留モノマーの問題や、廃棄(焼却)時の塩素ガス、シアンガス、ダイオキシン等の発生の危惧がなく、環境負荷が嵩むという問題点のないものとすることができる。
【0033】
また、上記無機粉体(23)としては、炭酸水素ナトリウムが主体であるが塗工適性や白色性などを考慮して体質顔料やシリカあるいは炭酸カルシウム等を混合したものとすることができるが、少なくとも炭酸水素ナトリウムは50重量%以上であることが発泡性と断熱性の点から好ましい。
【0034】
また、上記水溶性樹脂溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体が分散している塗工液に分散剤や消泡剤等助剤を混入して塗工適性を上げることもでき、この塗工液の塗布は、メイヤーバーコーター、ロールコーター、カーテンコーター、あるいはグラビアコーター等が挙げられ、紙基材(20)の状態(巻取り等)や塗布厚み等によって適宜選定して成すことができる。
【0035】
また、上記塗布で得られる発泡前の発泡層(22a)の厚みとしては、10〜100μm程度と比較的厚い方がよく、この程度の厚みより厚すぎると発泡の制御ができず、発泡膜割れが発生したり、また薄すぎると、発泡が不十分で断熱性が十分でなくなるので好ましくないものとなる。また、発泡前の発泡層(22a)は、JIS−P−8119のベック平滑度が10秒以上1000秒未満程度とすることが好ましい。
【0036】
また、例えば、図1(b)に示す上記厚みの発泡前の発泡層(22a)を所定の温度のオーブン等で所定の時間加熱処理すると、発泡層(22a)の炭酸水素ナトリウムの量や水溶性樹脂の種類等にもよるが、発泡前の発泡層(22a)に対し、図1(c)に示すように、約2倍程度に膨れ上がった発泡層(22b)とすることができる。
【0037】
また、上記本発明では、炭酸水素ナトリウムが主体とする無機粉体の混合割合を、発泡層(22a)の断熱性すなわち発泡性を考慮して、塗工液に対し1〜25重量%の範囲とするものである。
【0038】
このように、塗工液に対する無機粉体の混合割合を、1〜25重量%の範囲とすることによって、良好な断熱状態が得られる断熱性紙容器とすることができる。この無機粉体の混合割合が1重量%に満たないとその断熱性が乏しく、例えばポリエチレンの発泡紙等にも劣るようになり、逆に25重量%を越えると過発泡等による発泡の制御が困難となり、表面性が悪くなるなどといった問題点と材料のコストが嵩むという問題があるので好ましくない。
【0039】
また、上記本発明では、例えば、図2(a)の側断面図に示すように、紙基材(20)の外面にある発泡層(22a)面上にポリビニルアルコール等でなる水溶性樹脂と酸化珪素粉末を含む発泡制御層(25)が施された断熱性原紙(2)を用いた断熱性紙容器とするものである。
【0040】
このように、発泡層(22a)面にポリビニルアルコール等でなる水溶性樹脂と酸化珪素を含む発泡制御層(25)が施されていることによって、この酸化珪素を含む発泡制御層(25)がガスバリア性があるので、例えば、図2(a)の側断面図に示すように、加熱処理により発泡した発泡層(22b)が炭酸水素ナトリウムの加熱により発生するガスの透過を抑制(制御)し、部分的な過発泡等による発泡層の割れや表面の荒れを防止するので、表面平滑性に優れたものとすることができ、この発泡制御層(25)上に形成された印刷層(27)の画像、特に文字などの画線に欠けなどのない美粧性にも優れた断熱性紙容器(1)とすることができる。
【0041】
例えば、図3(a)の側断面図に示すように、発泡前の発泡層(22a)上にこの発泡制御層がないと、塗工液の状態(無機粉体の量や分散状態等)や加熱処理の過剰等により、例えば、図3(b)の側断面を表す模式図に示すように、加熱後の発泡層(22b)に部分的な過発泡による割れや表面の荒れが発生し、表面平滑性に劣るものとなる危惧があり、このように表面平滑性に劣ることによって、その上への印刷層(27)に文字欠けなどが発生することになる。
【0042】
上記酸化珪素を含む発泡制御層(25)は、シリカ蒸着のような蒸着膜でもよく、水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の水溶液に酸化珪素粉末を分散したものとすることもできる。
【0043】
上記発泡制御層(25)を構成する酸化珪素粉末のポリビニルアルコール等水溶性樹脂溶液に対する含有重量%は、特に限定するものではないが、塗工適性やガスバリア性等を考慮し、2〜30重量%程度であればよい。
【0044】
上記発泡制御層(25)の形成は、メイヤーバーコーター、ロールコーター、カーテンコーター、あるいはグラビアコーター等で成すことができ、その厚みとしては、特に限定するものではないが、3〜10μm程度であれば、上記のような発泡層の発泡を制御できるものとすることができる。
【0045】
さらにまた、上記本発明では、例えば、図2(a)に示すように、外面に発泡層(22a)が施された板紙等でなる紙基材(20)の内面に熱可塑性樹脂層(26)を積層した断熱性原紙(2)とするものである。
【0046】
このように紙基材(20)の内面に熱可塑性樹脂層(26)を積層した断熱性原紙(2)とすることによって、カップやトレー等を成形する際に紙へのヒートシール性を付与するシーラント層の役割をするとともに、紙製容器に耐水性を付与することもできるものである。
【0047】
上記熱可塑性樹脂層(26)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン系共重合樹脂等のオレフィン系樹脂、ナイロン、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール、アイノマー樹脂等が挙げられ、用途に応じて適宜選定される。
【0048】
上記熱可塑性樹脂層(26)の積層方法として、選定された熱可塑性樹脂を熱溶融して塗布する押し出しコーティング法、あるいは上記熱可塑性樹脂をフィルムにしたものを貼り合わせるラミネートする方法がある。
【0049】
また、例えば、図3(a)に示すような印刷層(27)は、必ずしも必要とするものではないが、紙基材(20)上の発泡前の発泡層(22a)の表面、あるいは図2(a)に示すような発泡制御層(25)の表面に施されるものであり、この印刷層(27)は、商品の説明等に用いる部分的に着色インキで印刷されるものと、全面を着色インキで印刷する場合とがあり、その印刷法として、オフセット印刷法やグラビア印刷法等公知の印刷法で得ることができるが、この印刷法からも、特に文字や絵柄等の画像の印刷には、前述のように発泡層(22a)の表面性が重要になってくる。
【0050】
以上のような断熱性原紙(2)を用い、例えば、図1(a)に示すような紙製カップを作製し、これをオーブン等で150℃、2分程度の加熱処理をすることによって後発泡型の断熱性紙容器(1)とすることができる。
【0051】
上記図1(a)に示すような断熱性の断熱性紙容器(1)の事例である紙製カップの作製に際し、例えば、図1(b)に示すような断熱性原紙(2)を用い、図4(a)に示すように、胴部を形成する扇形状のブランク(40)の左右端縁のうちの一方の貼合わせ部(42)を、図4(b)に示すように、一般的なヒートシールバー等でシールして胴部を形成すると、その貼合わせ部(42)の部分が発泡してしまい、その発泡して粗になった貼合わせ部(42)の内側端縁の露出している端面(43)から内容物の水分が侵入してエッジウイックが悪くなる危惧があるので、ヒートシールの方法が重要になり、このよう
にヒートシールでの発泡を抑制するためのシール方法として、例えば、圧力をかけながらシールする熱プレス法や超音波振動等による加工が好ましく用いられる。
【0052】
また、本発明の断熱性紙容器として、例えば、図5(b)の斜視図に示すような断熱性の紙箱(3)とすることもでき、断熱性で内容物を保温する弁当用紙箱などへの利用が可能となる。
【0053】
上記断熱性紙箱(3)の製造は、例えば、図5(a)の展開図に示すように、底板(50)と天板(52)とこれらに連設する4枚の側板(51)とでなり、左右2枚の側板の両端に貼合わせ部(42)を有する断熱性原紙を用いたブランクス(46)を用い、このブランクス(46)の貼合わせ部(42)と折り罫の部分を超音波シーラー振動子で発熱融着した後、図5(b)に示すように、その貼合わせ部(42)に接着剤を塗布して製函し、これを約150℃のオーブン中で2分間程度加熱して所望の断熱性の紙箱(3)とすることができる。
【0054】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0055】
10%濃度のポリビニルアルコール樹脂(完全けんかタイプ:クラレ社製)水溶液90重量部に炭酸水素ナトリウム粉体:セルボンSC−K(永和加成社製)10重量部を混入し分散せしめて発泡層用の塗工液を作成した。
【0056】
上記塗工液を、紙基材(20)としてバージンパルプを用いた260g/m2 のアイボリー紙の表面にメイヤーバーコーターにて塗工して発泡前の発泡層(22a)を形成した。その塗工量はウエットで40g/m2 とし、乾燥して断熱性原紙(2)を作製した。この断熱性原紙(2)を、通風オーブン150℃にて2分間処理して発泡せしめた発泡層(22b)を形成した発泡紙のサンプルとした。
【実施例2】
【0057】
上記水溶性樹脂を代えることによる発泡層(22b)の状態を比較するため、水溶性樹脂溶液を45%濃度の水性アクリル樹脂:ボンロン(三井化学社製)水溶液とした以外は実施例1と同様にして発泡紙のサンプルを作製した。
【0058】
上記実施例で得られたサンプルについて、以下の評価を行った結果、その発泡性としては、水溶性樹脂にポリビニルアルコールを使用した実施例1では厚み60μmの発泡前の発泡層(22a)が厚み約150μmに発泡された発泡層(22b)となり、過発泡現象もなく、均一な発泡層(22b)を得ることができた。これに対し、水溶性樹脂を水性アクリル樹脂に代えた実施例2では、塗工液の分散状態が悪く、一部混合した段階で反応し、厚み60μmの発泡前の発泡層(22a)が厚み約80μmに発泡された発泡層(22b)に留まり、膜割れ等もあるものであった。
【0059】
また、その断熱性としては、上記で得られた発泡紙のサンプルを紙製カップ本体に巻付け、約95℃の熱湯を注入後、3分経過した時点での表面の温度を測定した結果、実施例1のものでは、70℃であったのに対し、実施例2のものでは、79℃であった。
【0060】
以上のように、本発明の断熱性紙容器は、熱湯を注いで食する紙製カップやトレー、あるいは電子レンジ等で保温を要する弁当箱等の紙容器の如き用途において、優れた実用上の効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の断熱性紙容器の一実施の形態を説明するもので、(a)は、その一部を切欠断面とした断面図であり、(b)は、(a)の拡大断面図であり、(c)は、(a)の加熱処理後の拡大断面図である。
【図2】本発明の断熱性紙容器を構成する断熱性原紙の一事例を示すもので、(a)は、その発泡前の側断面図であり、(b)は、加熱処理後の断面図である。
【図3】本発明の断熱性紙容器を構成する断熱性原紙の他の一事例を示すもので、(a)は、その発泡前の側断面図であり、(b)は、加熱処理後の断面を表す模式図である。
【図4】本発明の断熱性紙容器の一事例の製造を説明するもので、(a)は、その容器の胴部を形成するブランクスの平面図であり、(b)は、その胴部を筒状に成形した時の部分断面図である。
【図5】本発明の断熱性紙容器の他の一事例を説明するもので、(a)は、そのブランクスの平面図であり、(b)は、そのブランクスを用いて作製した断熱性紙箱の斜視図である。
【図6】従来の紙製断熱カップの一事例を説明するもので、(a)は、それを構成する保護カバーの断面図であり、(b)は、その一部を切欠断面とした断面斜視図である。
【図7】従来の二重容器型の断熱カップの一事例を説明するもので、その一部を切欠断面とした斜視図である。
【図8】従来のマイクロカプセル型の断熱紙製容器を構成する断熱性原紙の一事例を説明するもので、(a)は、その発泡前の側断面図であり、(b)は、加熱処理後の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1‥‥断熱性紙容器
2‥‥断熱性原紙
3‥‥断熱性紙箱
4‥‥底カール
4a‥‥上方カール
5‥‥空間層
6‥‥マイクロカプセル型発泡剤
7‥‥断熱カップ
8‥‥断熱性紙カップ
9‥‥後発泡断熱紙
11‥‥紙製外側スリーブ
12‥‥紙製カップ本体
13‥‥保護カバー
14‥‥側壁
15‥‥中間層
16‥‥エンボス紙
17‥‥薄紙
19‥‥ポリエチレン層
20‥‥紙基材
22a‥‥発泡前の発泡層
22b‥‥加熱処理後の発泡層
23‥‥無機粉体
25‥‥発泡制御層
26‥‥熱可塑性樹脂層
27‥‥印刷層
40‥‥扇形状のブランクス
42‥‥貼合わせ部
43‥‥貼合わせ部の両側端部の端面
46‥‥紙箱のブランクス
50‥‥底板
51‥‥側板
52‥‥天板
53‥‥差し込み片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の外面に発泡層が施された発泡紙を用い、加熱発泡せしめた断熱性紙容器であって、前記発泡層は水溶性樹脂溶液に炭酸水素ナトリウムを主体とした無機粉体が混合分散している塗工液からなることを特徴とする断熱性紙容器。
【請求項2】
前記塗工液中の水溶性樹脂は、ポリビニルアルコールまたは澱粉であることを特徴とする請求項1記載の断熱性紙容器。
【請求項3】
前記塗工液に対する無機粉体の混合割合は、1〜25重量%の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の断熱性紙容器。
【請求項4】
前記発泡層面に酸化珪素を含む発泡制御層が施されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の断熱性紙容器。
【請求項5】
前記紙基材の内面に熱可塑性樹脂層が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の断熱性紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−247399(P2008−247399A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87537(P2007−87537)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】