説明

断熱性鉱物繊維ブランケットの製造プロセスからの水をリサイクルする方法

本発明は、繊維化と、典型的にはアクリルタイプの多価酸を含むバインダで前記繊維のコーティングとを特に含む鉱物繊維のブランケットを製造するプロセス中に回収される水溶液の腐食性レベルを制御する方法に関し、前記水溶液は少なくとも部分的に、前記樹脂を調製するための領域および/または製造プラントのスクラビング領域へリサイクルされ、前記方法は、リサイクル回路内の溶液のpHが、前記pHを変更するための試薬たとえば塩基を回路へ供給することによって最小値および最大値の間に保たれ、pH変更試薬の注入量または流量が、繊維形成プロセス中に注入された酸性バインダの量または流量によって直接調節されることを特徴とする。また、本発明は前記方法を実施するためのデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、鉱物繊維、特にグラスウールまたはロックウールタイプのミネラルウール繊維をベースとする材料の分野に関する。より具体的には、本発明は、典型的にはアクリルタイプの多価酸を含む酸性バインダを使用する場合に繊維化および形成プロセスにおいて回収される水をリサイクルする方法およびデバイスに関する。
【0002】
現在販売されている断熱材のほとんどの材料たとえばパネルまたはロールは、鉱物繊維たとえば有機バインダでコートしたガラス繊維を含むミネラルウールブランケットまたはフェルトからなる。
【0003】
このタイプの断熱材料を製造するのに必要とされる様々な工程およびデバイスは、従来技術によって十分によく知られている。典型的には、ガラス繊維ブランケットの形成は内部遠心分離繊維化プロセスを含んでおり、その実例はEP 0406107およびEP 0461995に記載されている。読者は本発明を実施するための既知の工程に関する詳細についてはこれらを参照するであろうから、それらをここで再度詳細に説明することは必要ない。
【0004】
より正確には、説明の残部において添付の図面を用いて例証するように、上述したブランケットまたはフェルトの形成では、新たに形成された繊維に、硬化後にこれらの繊維を互いに接着させるバインダの水溶液を噴霧することが一般的な実務である。ごく最近まで、使用されるバインダはほとんどがフェノールホルムアルデヒドタイプ(すなわち、フェノールホルムアルデヒドバインダ)であった。このようなプロセスにおいて、繊維化の後のコンベア上で、鉱物繊維の余熱と適切な手段によってこの繊維ブランケットを通して作られるブロー熱風は、最初のバインダ組成物に含まれていた過剰な水のほとんどを気化させて除去するのに十分である。その水分のほとんどが除去されたミネラルウールブランケットは、その後、乾燥作業を完了させてバインダを硬化させるために、エンクロージャーまたはオーブンへ送られる。この硬化は、公知の方法で、繊維間の接着により得られるブランケットの最終的な機械的完全性、およびその柔軟性すなわちそれを高度に圧縮する工程の後にその最初の形状および厚さを実質的に回復する能力(これはそれを梱包して運搬するために特に必要である)の両方を確保する条件下で行われる。
【0005】
フェノールホルムアルデヒド樹脂は、それらの優れたコスト性能比とそれらの調製および使用の相対的な容易さとのおかげで、上記機能を果たすために今までのところ最も使用されているものであった。また、現在のバインダ溶液は、たとえば尿素を含んでおり、繊維上に噴霧される前には、水溶液または固形分が30乃至60重量%である分散液の形態をとる。
【0006】
しかし、このようなバインダ調合物は、ミネラルウール製造プロセス中に本質的に、極めて僅かな量の揮発性有機化合物すなわちVOC、特にホルムアルデヒドを排出するという欠点を有するであろう。このような排出の許容限度が益々低くなるであろう状況に備えるために、より最近には新たなタイプのバインダが開発されている。
【0007】
最も具体的には、この分野においてアクリルバインダと一般的に呼ばれている、ポリカルボン酸またはその前駆体を組成物に組み込んだバインダの溶液が、有用な代替製品として現れた。具体的には、あるアクリルバインダ組成物を用いて得られるガラス繊維ブランケットの完全性および形状回復特性は、フェノールホルムアルデヒドバインダを用いて得られる特性に匹敵するように見える。たとえば、限定するものではないが、アクリルバインダ溶液は、たとえばUS 5661213に例示されているように、多価酸以外にポリアルコールおよび反応のための触媒たとえばリン酸含有有機酸も含んでいる。
【0008】
このタイプの樹脂の使用に関する主な問題は、繊維化チャンバ内で繊維上に噴霧されるバインダ溶液の酸性度にある。このため、適切な使用特性を有するブランケットを最終的に得るには、使用する樹脂のタイプに応じて、一般的には4未満であるかまたは、非常に多くの場合3もしくはさらに2.5未満である溶液のpHが必要とされる。
【0009】
したがって、繊維化プロセスからもたらされる水、特に繊維化の後の繊維搬送ベルトから回収される水は、非常に高い酸性度を有している。
【0010】
後に詳細に説明するように、繊維化ユニットの上流でバインダ溶液を製造するためおよび/または繊維化ラインを構成するデバイスを清浄化するために、この回収水の一部、好ましくはその全てをリサイクルして使用することが、この分野における一般的な実務である。このような構成は、特に、このプロセスから生じる排水を処理することを不必要にするか、または処理すべき量を非常に最小化することにより、このプラントのコストを非常に最小化するという利点を有している。従来技術において多くの場合に使用されている変形(これは本発明によれば好ましいが必須ではない)において、繊維化プロセスから生じる水をリサイクルするためのリサイクルループは、繊維ブランケットを得ることを可能にする装置の種々の構成要素をスクラビングするために、回収された水の少なくとも一部またはその全ての使用を組み込んでいてもよい。より正確には、これらの要素は、繊維化プロセス中にバインダ溶液および繊維に接触するものであり、特に繊維化チャンバもしくはフードの壁か、繊維化の後の繊維搬送手段か、または過剰な水を繊維ブランケットから除去するのに使用される排気手段である。また、このリサイクルループは、プロセス中に発生したフュームおよびガスたとえばバインダ硬化オーブンまたは繊維化ユニットから発生したガスをスクラビングするおよび/または冷却するために、回収された水の少なくとも一部またはその全ての使用を組み込んでいることもある。
【0011】
したがって、リサイクルラインなどの設備は非常に強い腐食作用にさらされるので、このようなリサイクルの状況では、リサイクルされる水の高い酸性度が大きな問題であることが理解されるであろう。結果として、それらの寿命は著しく短縮されるようになる。
【0012】
1つの考えられる自明な解決策は、耐食性が知られている金属たとえばステンレス鋼からなるパイプを使用することにある。しかし、この解決策は、実質的な間接費コストを招くものの、経時的に十分な有効性を保証せず、一方で特に回路内に存在する液体をパージまたは清浄化すべきである場合に、メンテナンスオペレータがこれらを処理しなければならないという問題を依然として有している。
【0013】
前記ラインの寿命を延ばすための他の解決策が提案されている。
【0014】
第1のアプローチによれば、特許出願US 2003/221457は、リサイクル回路の中央に設置された収集デバイス内で回収された水のpHを測定することを提案している。pHは、データをプロセッサへ連続的に送り出すpHプローブによって測定され、プロセッサそれ自身は塩基性溶液のリザーバに接続されている。この方法の動作原理によれば、回収された水のpHが8のpHを下回っていることをこのプローブが検知すると、プロセッサが回路への塩基の注入を起こす。
【0015】
特許出願US 2006/198954に記載された他のアプローチ(これは前記のアプローチの変形である)によれば、リサイクルラインの水収集デバイスの前もしくは後に、または後者の内部に設置された腐食検知デバイスを用いて、リサイクル回路の壁をなしている金属についての許容値に腐食レベルを保つ。
【0016】
また、特許US 7153437は、塩基性溶液をリサイクルラインに放出する制御ユニットによって与えられるpH設定がこのときに6乃至8であるという点で異なるが、特許出願US 2003/221457のものに極めて類似した解決策を記載している。
【0017】
このように、今までに提案された全ての解決策は、繊維化プロセスの水をリサイクルするための回路内を循環する水溶液の酸性度または腐食性を連続的に制御する手段を必要とする。これらの制御手段は、単位コストが高く、使用中に寿命が幾分短くなる比(pH、腐食)プローブの使用および較正を必要とする。
【0018】
結局、このようなコストは、その持続期間にわたって、このような制御によってもたらされる利益が、特にステンレス鋼パイプの使用と比較して制限されることを意味する。
【0019】
予想外なことに、従来技術の教示は、熟練者を、リサイクル回路内を循環する水の酸性度および/または腐食性の精密で連続的な調節を必要とする解決策に向けるが、出願人は、それほど複雑ではなく特にそれほど費用のかからない解決策が、前記リサイクル回路を構成しているパイプの腐食レベルを極めて良好に制御することを可能にすることを見出した。
【0020】
より具体的には、第1の態様によれば、出願人が行った実験は、持続期間中にパイプに大きな腐食の問題が観察されることなく、回路内のpHが中性付近の極めて広範に変化し得る、すなわち典型的には6より大きいかまたは6.5より大きく、9未満であるかまたは8.5未満であり得ることを示している。
【0021】
他の態様によれば、出願人は、pHまたは腐食レベルの測定のための高価なプローブおよび関連する制御手段の使用が、回路の腐食レベルを適切に制御するために必ずしも価値があるわけではないことを見出した。
【0022】
より正確には、かつ驚くべきことに、出願人は、リサイクル回路内の回収された水のpHの酸性度レベルを、装置の比較的長い使用期間にわたって、繊維化製品に注入される酸性バインダの流量とリサイクル水に注入される塩基性溶液の流量との間の単純な関係に基づいて十分に制御することが可能であることを実験によって示した。
【0023】
その最も包括的な態様において、本発明の主題は、鉱物繊維のブランケットを製造するプロセス中に回収される水溶液の腐食性レベルを制御する方法であって、前記プロセスは、繊維化と、典型的にはアクリルタイプの多価酸を含むバインダによる前記繊維のコーティングとを特に含み、前記水溶液は、少なくとも部分的に、前記バインダが調製される領域および/または製造プラントのスクラビング領域へリサイクルされ、前記方法は、リサイクル回路内の溶液のpHが、前記pHを変更するための試薬たとえば塩基を前記回路へ注入することによって最小値および最大値の間に保たれ、pH変更試薬の流量が、繊維化プロセス中に注入される酸性バインダの流量に応じて直接調節されることを特徴とする方法である。
【0024】
最も簡単には、リサイクル回路におけるpH変更試薬の流量は、繊維化プロセスにおいて注入される酸性バインダの流量に正比例してもよい。
【0025】
本発明によれば、比Rは、リサイクル回路における回収された水のpHのスポット測定により、一定間隔で調節されてもよい。
【0026】
典型的には、pHの値は、約6乃至約9である。
【0027】
本発明によれば、繊維化プロセスの水は少なくとも部分的に、前記繊維化の後の繊維搬送ベルト上で回収される。
【0028】
また、繊維化プロセスの水は少なくとも部分的に、鉱物繊維架橋オーブンにおいて回収されてもよい。
【0029】
有利には、回収された水は、繊維ブランケットを得るためのデバイスの構成要素のうちの少なくとも1つ、特に、繊維化チャンバもしくはフードの壁、繊維搬送手段、過剰な水を繊維ブランケットから除去するために使用される排気手段、または繊維架橋エンクロージャーをスクラビングするために、少なくとも部分的に使用される。
【0030】
たとえば、pH変更試薬は、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩タイプのアルカリ性塩基から選択される。
【0031】
一般には、多価酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸および桂皮酸の群からなるポリカルボン酸から選択される。
【0032】
更には、本発明は、繊維ブランケットを製造するためのプラントであって、典型的にはアクリルタイプの多価酸を含むバインダの溶液を、新たに形成された繊維上に噴霧する手段を組み込んだ繊維化ユニットと、バインダを含浸した繊維を収集してそれらを架橋エンクロージャーへ搬送する手段と、過剰なバインダおよび水を含む水溶液を、搬送手段上に収集された繊維ブランケットから吸引する吸引手段とを具備しており、前記吸引手段は、前記水溶液を、噴霧手段に供給されるバインダ溶液を調製するためのステーションおよび/またはプラントをスクラビングする手段へリサイクルするためのリサイクルループに流体連絡しており、前記プラントは、pH変更試薬たとえば塩基の制御された量を注入して調節する手段を更に含み、前記調節手段は繊維化ユニットへ注入される多価酸の量に応じて較正される制御手段に従属していることを特徴とするプラントに関する。
【0033】
他の詳細、特徴または利点は、添付の図1乃至4を参照しながら説明する、本発明の以下の態様によって例証されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、それ自身が知られており酸性バインダの使用を組み込んでいる、グラスウールブランケットのための繊維化デバイスを詳細に図示している。
【図2】図2は、本発明に係る、グラスウール製の断熱パネルを製造するための製造ラインであって、繊維化デバイスから生じる過剰な水をリサイクルするためのリサイクル回路を組み込んだラインの概略図である。
【図3】図3は、リサイクル回路が繊維化フードの壁をスクラビングする手段を更に含んでいる点で、図2と異なる。
【図4】図4は、リサイクル回路が架橋オーブンから生じたフュームをスクラビングする手段を更に含んでいる点で、図3と異なる。
【0035】
図1は、たとえば内部遠心分離繊維化プロセスによってグラスウールを繊維化するのに従来から使用されている、本出願人が開発したデバイスを示している。このデバイスの実例は、EP 0406107およびEP 0461995に記載されている。実際の繊維化ユニット1は、よく知られている。この繊維化ユニットは、フード(図1には図示していない)を具備しており、その上に、1つ以上のスピナー2、2’がある。各スピナーは、溶融ガラスを回収するためのバスケット(図1には図示していない)と、側壁に多数の穴を備えた皿状部分23とを具備している。作業中、流れ3として溶融炉(図示していない)から供給されて、スピナーのバスケット内にまず収集された溶融ガラスは、皿23の穴を通して、多数の回転されているフィラメントの形態で出て行く。また、スピナー2は、環状バーナー4に囲まれており、この環状バーナー4は、グラスフィラメントを引き延ばして繊維にし、トーラス17を形成するのに十分高い温度にある高速ガス流を、このスピナーの壁の周囲付近に作り出す。このプロセスによれば、繊維化は完全なものであり、製造された繊維の100%を使用することができる。このプロセスは更に、この繊維が長く柔軟であることを保証する。
【0036】
矢印6により概略的に示したように、トーラス17は、加圧下で注入された空気の気体流に囲い込まれている。このトーラス17は、典型的にはアクリルタイプの多価酸の水溶液を含むバインダを噴霧するためのデバイスに囲まれているが、図1には、これらのうちの2つの要素7のみを示している。考えられるバインダ水溶液は、たとえば、刊行物US 2003/221457、US 2006/198954およびUS 7153437に記載されているものである。
【0037】
繊維化フードの下部には、ガスおよび水を透過させることが可能なエンドレスベルトを組み込んでいるコンベア9を具備した繊維収集デバイス9が形成されており、その下に上述した繊維化プロセスによって得られた新たに形成されたブランケットに含まれた流体を吸出して分離するための吸引ボックス10がある。吸引ボックス10は、たとえば真空をそこで保つことが可能なファン(図1には図示していない)に接続されている。流体は、空気およびフュームなどのガス、並びに過剰なバインダおよび微粉を取り込んでいる過剰な水溶液相である。バインダと緊密に混合されたグラスウール繊維のブランケット11がコンベア9のベルト上に形成される。ブランケット11は、コンベアによって架橋オーブンまたはエンクロージャー12へ運ばれる。このエンクロージャー12は、通常、一連のボックスまたはコンパートメントを含む密閉チャンバからなり、これらにはファン(図1には図示していない)により循環される熱風が、バーナーによって供給される。このエンクロージャーを通過しているのは、たとえば搬送および厚みの設定を目的とした2つの補完的なコンベア13、14である。
【0038】
熱いガスを通してバインダを迅速に硬化させるのを可能にする一方、コンベア13、14はブランケットを圧縮してそれに所望の厚さを与える。例を挙げると、ロール状フェルトについては、この厚さは典型的には10乃至150mmであり、グラスウール層の密度はたとえば10乃至100kg/m3である。エンクロージャー12での硬化は、残留していた水をこのエンクロージャーの出口において回収されて処理されるフュームの形態で蒸発させ、ブランケットの繊維の間にあるバインダを架橋させる。
【0039】
図1は、エンドレスベルトシステムを含む、繊維を収集して搬送するシステムを示している。しかし、本プロセスを各々が1つ以上の繊維化マシーンを有する幾つかの対応する収集領域を含むシステムによって実施してもよく、各々の収集領域はたとえばEP 0406107に例示された原理に従う、逆回転する一対のドラムからなる。
【0040】
図2のダイアグラムは、本発明に係る1つの態様のグラスウール製の断熱パネルを製造するためのラインを有する図1に従う繊維化デバイスを組み込んでおり、上述した繊維化デバイスからもたらされる過剰な水をリサイクルするためのリサイクル回路を組み込んでいる模式的で概略的な図である。
【0041】
図1乃至4において、同一の構成要素または同様の性質を有した構成要素には、同一の参照番号を付している。図1に関連して説明したように、繊維化デバイス1をエンドレスベルトコンベア9上でアクリル溶液を含浸した繊維のブランケットを得るのに使用し、次にこのブランケットを公知の技術を利用する多様なデバイス102の内部で、エッジトリミング、縦および/横方向のスリッティング、表面処理などのよく知られた他の作業に供する前に、エンクロージャー12において成形して硬化する。破線の矢印は、プラントを通る繊維ブランケットの進行方向を示している。
【0042】
上述したように、コンベア9のエンドレスベルトはボックス10によって吸出されるフュームおよび過剰な水などの流体を透過させることが可能である。過剰なバインダおよび微粉を取り込んでいる水溶液相を収集する手段210は、吸引手段10の下に設置されている。本発明によれば、この手段210は水を繊維化デバイス1へリサイクルするためのリサイクル回路300に流体連絡している。図2では、リサイクル回路300のパイプを実線で示しており、矢印はパイプ内の水溶液の流れ方向を示している。次に、収集手段210によって回収された水は、500ミクロンより大きい径を有する粒子および繊維を除去するように設計されているろ過デバイス103へ運ばれる。デバイス103を出ると、水溶液相は攪拌タンク104へ運ばれる。タンク104は、たとえば刊行物US 2003/221457、US 2006/198954およびUS 7153437などに記載された塩基性溶液を収容したリザーバ105に流体連絡していてもよい。この塩基性溶液は、ポンプおよび/またはバルブなどの制御手段106によってタンク104へ注入される。本発明によれば、注入される塩基の量はpHを回路300のパイプをなす金属を維持しておくための値の範囲内に保つのに使用される。本発明によれば、このpHの範囲は、装置が時間と共に悪影響を実質的に受けることなく、中性付近でくつかのpH単位だけ変化し得ることがわかった。塩基を注入した後に最終的に得られる溶液は、次に少なくとも部分的にアクリルバインダ水溶液を調製するためのステーション101へリサイクルされ、溶液の他の一部は任意に、ボックス10または繊維化フードの可動壁をスクラビングするのに使用される。好ましくは、タンク104の下流に設置された第2ろ過デバイス107が50ミクロンを上回る径を有する粒子および繊維を除去するのに使用される。
【0043】
バインダ水溶液を調製するためのステーション101には多価酸樹脂が供給され、これは一般的には既に予備希釈された水溶液の形態、典型的には約50重量%の固形物を含む水溶液の形態でコンテナ100内に貯蔵されている。このような組成物の例は、たとえばUS 2003/221457、US 2006/198954およびUS 7153437に記載されている。
【0044】
噴霧デバイス7(図1参照)によって注入されるバインダ水溶液は、ステーション101においてコンテナ100によって送出される溶液から調製され、前記溶液の力価はよく知られている。この初期溶液は、ステーション101において繊維化プロセスを実施するのに必要な割合に希釈される。本発明によれば、この希釈はリサイクル回路300からもたらされる水溶液を少なくとも部分的に使用して行われる。もちろん、図2には示していないが、清浄化液を補給する手段が、更にステーション101もしくはリサイクル回路300の1つの構成要素、またはタンク104に設けられる。
【0045】
一般に、アクリル系サイズ剤組成物は、フェノールホルムアルデヒドタイプの溶液よりも多量の水によって特徴づけられ、このサイズ剤組成物における固体バインダの固形分の重量百分率は一般には20重量%を超えず、これは回路300内を循環する水の量が比較的多いこと、およびこのようなリサイクルが経済的および環境的に重要であることを説明している。
【0046】
本発明によれば、コンテナ100内に収容された酸性バインダの流量すなわち注入量は測定および制御デバイス110によって調節される。塩基の流量を調節する手段106はデバイス110に従属している。本発明によれば、デバイス110は、樹脂/酸バインダの流量の測定値に応じて手段106の使用により、タンク104への塩基の注入を酸性バインダの流量と塩基性溶液の流量との間の単純な関係に従って決められた量に制御する。本発明によれば、繊維化プロセスの所要時間を通じ、特に注入される酸性バインダの流量を前記プロセスの要件のために変更しなければならない場合、注入される塩基の流量が、従来技術において記載されたようなプローブもセンサも必要とすることなく、この新しい値に従って直接調節される。したがって、本発明によれば、バインダおよびpH変更試薬のそれぞれの流量の測定のみに基づいて、繊維化プロセスの所要時間を通じてリサイクル回路を維持しておくことが可能である。特に、本発明によれば、繊維化プロセス中の酸性バインダの流量のあらゆる変化が、pH変更試薬の流量を変更/調節し、リサイクル回路内のpHを、単純、正確かつ安価に制御することを可能にする。デバイス110は、たとえばセンサ、たとえば論理デバイスおよびアクチュエータを伴う流量計、たとえば制御バルブまたはバリエータタイプのものを備えている。後者の2つのシステムは、塩基性溶液の制御された流量を設定する。もちろん、デバイス110はこの態様のみに限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、あらゆる等価物または代替物のデバイスまたはシステムを使用することが可能である。
【0047】
それによって本発明が限定されることはないが、驚くべきことに、上述した原理によれば、この回路300を維持しておくのに許容されるレベルに回路内を循環する水の酸性度を保つには、単純な関係たとえば酸性バインダの流量と塩基性溶液の流量との比Rの形の比例関係で十分であることが出願人によって見出された。この比Rは、サイズ剤組成物の構成成分の化学的特徴(このサイズ剤の構成成分によって提供される酸性官能基の数およびそれに関連する酸性度定数pKA)とプロセス(希釈水注入)およびプラント(効率)のパラメータ、並びに中和剤として使用される塩基のタイプ(塩基性度定数pKB)に応じて決めてもよい。
【0048】
本発明のある有利な態様によれば、酸性バインダの流量の塩基性溶液の流量に対する比Rは主にリサイクル回路の1つ以上の場所での水溶液のpHのポイント測定によって調節または再設定することができる。しかし、出願人が行った試験により、ライン300において数分もしくは数十分または場合により数時間の間隔をあけて行われたpH測定はあらゆる傾向を検出し修正するのに十分であり、結果としてパイプの腐食のリスクを排除することが判明した。pHのこの設定は過度な精度を要求するものではなく、オペレータが単純なpH試験紙をリサイクル回路300における任意の点で採取した液体アリコットに浸すことによって行ってもよい。したがって、リサイクル水のpHは装置がさほど劣化することなく、製造工程中に広範囲にわたってすなわち約6乃至約9にわたって、自由に変動できることが確認された。
【0049】
もちろん、特に回路300におけるpH範囲の変動がより小さいことが望まれる場合には、本発明の範囲を逸脱することなく、単純な比例関係よりも複雑な関係を使用してもよい。特に、ある考えられる態様によれば、酸性バインダの流量と塩基性溶液の流量との間の関係を、予め作成されたチャートの形たとえば実際のプラントの特徴に関するチャートの形で表してもよい。
【0050】
図3はある代替的な態様を示しており、ここでは繊維化プロセスから生じた水をリサイクルするためのリサイクルループ300が、繊維化チャンバまたはフードの壁をスクラビングするために回収された水の一部の使用を組み込んでいる。追加の収集手段201は繊維化フードの壁をスクラビングするための水を回収することを可能にする。この手段201は追加のパイプ301を介して吸引ボックス10からの水をリサイクルするためのリサイクル回路300へ接続されている。収集手段201および210から回収された水は回路300においてこのようにして混合される。本発明の範囲から逸脱することなく、回路300内の回収された水の一部は、繊維化ユニット1から発生したガスをスクラビングするためのユニットからもたらされたものでもよい。図2に関連して既に説明した原理によれば、回収された水はデバイス103においてろ過され、タンク104で中和される。処理された水の一部は、次に図2に関連して上で説明したようにステーション101へ送られ、一方で他の一部は繊維化フード1の壁をスクラビングするために再利用される前に溜り108に収集される。
【0051】
図4は、繊維化プロセスから生じた水をリサイクルするためのループ300が繊維化チャンバまたはフードの壁をスクラビングすることおよびオーブン12内に残留したバインダおよび繊維を除去することの両方のために、回収した水の一部の使用を組み込んでいることを除き、先の態様と同一の態様を示している。この目的のために、図4に図示したように、オーブン12および/またはそこから発生するフュームをスクラビングするのに使用される水を回収する手段212が追加のパイプ302と共に追加で設けられており、一方で回収された水をループ300へ注入すること、他方でタンク104内において処理された水の一部をオーブン12へまたはそこから発生するフュームをスクラビングするためのシステムへ再注入することを可能にする。
【0052】
従来の教示に反して、上述した図1乃至図4において概略的に示したようなプラントにおいて出願人が行った試験は、腐食による回路のパイプの急速な劣化を防ぐのにpHまたは腐食レベルを測定するプローブを連続的に制御する制御デバイスを使用することは少しも必要ないことを証明している。最も具体的には、上述の解決策または以下の特許請求の範囲に記載した解決策は単純で以前に記載されたものよりも高価でない解決策であるが、申し分のない程度に結果を得ることを可能にする。
【0053】
一例を挙げれば、図4に概略的に示したタイプのプラントにおいて、アクリルバインダの使用を組み込んだプロセスの水リサイクル回路のpHを、外的な処置もデバイス110の初期動作条件のいかなる変更も必要とせずに、測定によって、数時間にわたって6乃至9のpH範囲内に維持することができることを示すことができた。この例では、リザーバ105から回路へ(すなわちタンク106へ)注入される水酸化ナトリウム溶液の量の、噴霧デバイス7においてこのプロセスに注入されるバインダ溶液の量に対する比についての設定値をデバイス110に入力している。
【0054】
実験の条件は、以下の通りであった。
−注入される純粋な水酸化ナトリウムの量の、注入される樹脂の量に対する体積比R(希釈液を除く):R=0.1;
−樹脂の希釈:5体積%;
−水酸化ナトリウムの希釈:50体積%;
−噴霧デバイスにより放出されるほぼ一定な流量:200l/時;
−ポンプ106によりタンク104へ放出される水酸化ナトリウムの一定な流量:2l/時。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物繊維のブランケットを製造するプロセス中に回収される水溶液の腐食性レベルを制御する方法であって、前記プロセスは、繊維化と、典型的にはアクリルタイプの多価酸を含むバインダによる前記繊維のコーティングとを特に含み、前記水溶液は、少なくとも部分的に、前記バインダが調製される領域および/または製造プラントのスクラビング領域へリサイクルされ、前記方法は、リサイクル回路内の前記溶液のpHが、前記pHを変更するための試薬たとえば塩基を前記回路へ注入することによって最小値および最大値の間に保たれ、前記pH変更試薬の流量が、前記繊維化プロセス中に注入された酸性バインダの流量に応じて直接調節されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記リサイクル回路における前記pH変更試薬の流量は、前記繊維化プロセスに注入される酸性バインダの流量に正比例する請求項1記載の制御方法。
【請求項3】
比Rは、前記リサイクル回路において回収された水のpHのスポット測定により、一定間隔で調節される請求項2記載の制御方法。
【請求項4】
前記pHの値は、約6乃至約9である請求項1乃至3の何れか1項記載の制御方法。
【請求項5】
前記繊維化プロセスの水は少なくとも部分的に、前記繊維化の後の繊維搬送ベルト上で回収される請求項1乃至4の何れか1項記載の制御方法。
【請求項6】
前記繊維化プロセスの水は少なくとも部分的に、鉱物繊維架橋オーブンにおいて回収される請求項1乃至5の何れか1項記載の制御方法。
【請求項7】
前記回収された水は、前記繊維ブランケットを得るためのデバイスの構成要素のうちの少なくとも1つ、特に、繊維化チャンバもしくはフードの壁、繊維搬送手段、過剰な水を前記繊維ブランケットから除去するために使用される排気手段、または繊維架橋エンクロージャーをスクラビングするために、少なくとも部分的に使用される請求項1乃至6の何れか1項記載の制御方法。
【請求項8】
前記pH変更試薬は、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩タイプのアルカリ性塩基から選択される請求項1乃至7の何れか1項記載の制御方法。
【請求項9】
前記多価酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸および桂皮酸の群からなるポリカルボン酸から選択される請求項1乃至8の何れか1項記載の制御方法。
【請求項10】
繊維ブランケットを製造するためのプラントであって、新たに形成された繊維上に典型的にはアクリルタイプの多価酸を含むバインダの溶液を噴霧する手段(7)を組み込んだ繊維化ユニット(1)と、バインダを含浸した繊維を収集してそれらを架橋エンクロージャー(12)へ搬送する手段(9)と、過剰なバインダおよび水を含む水溶液を、搬送手段(9)上に収集された繊維ブランケットから吸引する吸引手段(10)とを具備しており、前記吸引手段(10)は、前記水溶液を噴霧手段(7)に供給されるバインダ溶液を調製するためのステーション(101)および/または前記プラントをスクラビングする手段へリサイクルするためのリサイクルループ(300)に流体連絡しており、前記プラントはpH変更試薬たとえば塩基の制御された量を注入して調節する手段(105、106)を更に含み、前記調節手段(105、106)は前記繊維化ユニットへ注入される多価酸の量に応じて較正される制御手段(110)に従属していることを特徴とするプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−532739(P2010−532739A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514078(P2010−514078)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051230
【国際公開番号】WO2009/007648
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(501085706)サン−ゴバン・イソベール (46)
【Fターム(参考)】