説明

断続発泡繊維およびその製造方法並びに釣り用仕掛け

【課題】比重調整が容易で高強度を有し、特に釣り用仕掛けに適した芯鞘複合型発泡繊維およびその効率的な製造方法の提供。
【解決手段】繊維断面が発泡性の鞘樹脂と非発泡性の芯繊維よりなる芯鞘複合型発泡繊維であって、鞘樹脂からなる被覆部が芯繊維を断続的に被覆して、この芯繊維に非被覆部を形成していることを特徴とする。被覆部の長さが0.5〜10cm、非被覆部の長さが5〜50cmであり、被覆部と非被覆部が連続的に存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比重調整が容易で高強度を有し、特に釣り用仕掛けに適した芯鞘複合型発泡繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鯛釣りにおける釣法は多種多様であり、その一つに「落とし込み」と呼ばれる釣法がある。そして、この「落とし込み」では、水面からの深さを測るために、釣り糸に目印を複数取り付けるが、この目印には深さを測る目的の他に、餌の沈降速度を調整する役割がある。従来、目印の取り付け法としては、薄手の発泡シートを任意の幅、間隔で道糸に巻き付け接着剤で固定する方法が用いられていた。
【0003】
例えば、軟質の発泡ゴムや発泡合成樹脂材を所定寸法の棒状に成型し、棒の軸方向に切欠きを設け、その切欠きに釣り糸を通した後、切欠き部を潰すか、もしくは接着剤により棒状の成型体と釣り糸を固定する方法(例えば、特許文献1参照)が知られているが、この方法では、浮力体の固定を1つ1つ手作業で行う必要があるため、生産性が低いという問題があった。
【0004】
そこで、上記の低生産性を改善するために、合成繊維の発泡技術の適用が検討されており、例えば、合成高重合体、特にポリエステル、発泡剤および添加物から発泡繊維を製造する方法において、発泡剤として炭酸ナトリウムおよびクエン酸を、添加剤としてポリカーボネートを使用した発泡繊維を釣り糸の目印とする方法(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、この方法では得られる発泡繊維の力学特性が不十分であるばかりか、この発泡繊維は連続した発泡状態であるため、釣り用仕掛けに用いたときに浮力が大きすぎるという問題があった。
【0005】
また、発泡剤を含む繊維材料と発泡剤を含まない繊維材料を複合紡糸し、紡糸された繊維の発泡剤を発泡させた発泡繊維を釣り糸の目印とする方法(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、この方法では高強度の発泡繊維が得られるものの、この発泡繊維は連続した発泡状態であるため、釣り用仕掛けに用いたとき浮力が大きすぎるという問題があった。
【特許文献1】実用新案登録 第3000975号公報
【特許文献2】特開平4−214407号公報
【特許文献3】特開平10−183425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、比重調整が容易で高強度を有し、特に釣り用仕掛けに適した芯鞘複合型発泡繊維およびその効率的な製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明によれば、繊維断面が発泡性の鞘樹脂と非発泡性の芯繊維よりなる芯鞘複合型発泡繊維であって、前記鞘樹脂からなる被覆部が前記芯繊維を断続的に被覆して、この芯繊維に非被覆部を形成していることを特徴とする芯鞘複合型発泡繊維が提供される。
【0008】
そして、本発明の芯鞘複合型発泡繊維においては、前記被覆部の長さが0.5〜10cm、前記非被覆部の長さが5〜50cmであり、これらの被覆部と非被覆部とが繊維の長手方向に連続的に存在することが好ましい条件として挙げられる。
【0009】
また、上記本発明の芯鞘複合型発泡繊維の製造方法は、溶融被覆装置で非発泡性の芯繊維の表面に発泡性樹脂からなる被覆部を被覆する溶融被覆法において、前記芯繊維の走行速度を周期的に変化させることにより、前記被覆部の断続被覆状態を発現させることを特徴とし、周期的に開閉する2枚の摩擦パット間に前記芯繊維を通すことにより、この芯繊維の走行速度を周期的に変化させることが好ましい条件である。
【0010】
さらに、本発明の釣り用仕掛けは、上記の芯鞘複合型発泡繊維を少なくとも1部に使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、比重調整が容易で高強度を有し、特に落とし込みに使用する釣り用仕掛けに適した浮力を有する芯鞘複合型発泡繊維を得ることができる。
【0012】
また、上記の優れた特性を有する芯鞘複合型発泡繊維を、効率的かつ安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の芯鞘複合型発泡繊維は、繊維断面が発泡性の鞘樹脂と非発泡性の芯繊維よりなる芯鞘複合型発泡繊維であって、前記鞘樹脂からなる被覆部が前記芯繊維を断続的に被覆して、この芯繊維に非被覆部を形成していることを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明の芯鞘複合型発泡繊維においては、その被覆部存在部分の繊維軸に垂直な断面が、図1に示したように、被覆部(鞘樹脂)1と非被覆部(芯繊維)2とで形成されている。
【0015】
そして、この芯鞘複合型発泡繊維においては、前記被覆部1の長さが0.5〜10cm、前記非被覆部2の長さが5〜50cmであり、これらの被覆部1と非被覆部2とが繊維の長手方向に連続的に存在することが好ましい。
【0016】
被覆部の長さが0.5cmよりも短い場合には、浮力が小さく、餌を着けた釣り針の沈降速度が大きすぎる傾向となる。一方、被覆部の長さが10cmよりも長い場合には、浮力が大きくなり沈降速度が遅くなりすぎるか、もしくは餌が沈まないという問題を発生する傾向を生じる。
【0017】
また、非被覆部の長さが10cmよりも短い場合には、糸全体の被覆部比率が高くなるため浮力が大きくなり、沈降速度が遅くなりすぎるか、もしくは餌が沈まないという問題が発生する傾向を生じる。一方、非被覆部の長さが50cmよりも長い場合には、浮力が小さく、餌を着けた釣り針の沈降速度が大きくなるばかりか、糸の沈み方が不自然になるため、魚が警戒して釣果が低下する傾向となる。
【0018】
本発明の芯鞘複合型発泡繊維を構成する非発泡性の芯繊維としては、一般的に釣り糸に使用される合成繊維、例えばポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等のホモポリマまたは共重合体やブレンドポリマ等からなる繊維、ポリアラミド繊維、具体的には、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維("ケブラ−"および"トワロン")およびポリ−p−フェニレンテレフタルアミドと3,4−ジアミノジフェニルエ−テルの共重合体繊維("テクノ−ラ")、全芳香族ポリエステル繊維、具体的にはp−ヒドロキシ安息香酸と2,6−ヒドロメキシナフトエ酸の共重合体繊維("ベクトラン")、ポリ−p−フェニレンベンゾチアゾ−ル繊維、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾ−ル("ザイロン")、高強力高弾性率ポリエチレン繊維("ダイニ−マ"、"スペクトラ")、高強力高弾性率ポリビニルアルコ−ル繊維等が挙げられる。
【0019】
上記繊維の中でマルチフィラメントを芯に用いる場合は、使用中にばらけることを防ぐために、撚糸や製紐等の処理をして用いることが好ましい。
【0020】
本発明の芯鞘複合型発泡繊維を構成する非発泡性の芯繊維の太さは特に限定されないが、「落とし込み」釣り用仕掛けとしては、直径0.1〜1mmのものが好ましく用いられる。
【0021】
本発明の芯鞘複合型発泡繊維を構成する発泡性の鞘樹脂に使用する材料は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6/66共重合体などのポリアミド樹脂またはその共重合体、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリエステル類またはその共重合体、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン共重合体などのフッ素樹脂類、ポリカーボネート類、ポリフェニレンサルファィド、ポリスルホン、非晶ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアリルエーテルニトリル、液晶ポリエステル等が挙げられる。
【0022】
鞘樹脂を発泡させる方法としては、炭酸ガスや窒素などの不活性ガスを押し出し機に注入する方法、および鞘部樹脂と発泡剤のブレンド物を溶融押出し、押出し時の加熱で発泡剤を分解させてガスを発生させる方法等がある。なかでも鞘樹脂に発泡剤をブレンドする方法は、特殊な装置が必要ないことから好ましく使用される。
【0023】
発泡剤としては、押し出し時の加熱により分解して炭酸ガスや窒素等の気体を発生するもの、例えば、重炭酸ナトリウム等の無機系発泡剤、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド系化合物、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等の発泡剤が例示でき、これらの混合物、発泡剤と、これに適した発泡助剤を組み合わせた組成物の使用も好ましい。
【0024】
本発明の芯鞘複合型発泡繊維における鞘樹脂の比重はとくに限定されないが、「落とし込み」釣り用仕掛けとしては0.5〜1.0、好ましくは0.7〜0.9の範囲であることが好ましい。比重が0.5未満では、気泡を形成する樹脂が薄いため使用時の擦過により気泡が破壊されやすく、比重が変化しやすい傾向となる。一方、比重が1.0以上では、得られる芯鞘複合型発泡繊維の比重が大きく、浮力が不足する傾向となる。
【0025】
本発明の芯鞘複合型発泡繊維において、にかかる発泡性鞘樹脂による被覆部の直径は特に限定されないが、「落とし込み」釣り用仕掛けとしては、被覆厚さ0.1〜1mm(片側)の範囲が好ましい。厚さが0.1mm未満では、浮力の不足ならびに使用中の擦過により被覆層が損傷を受けやすい傾向となる。また、厚さが1mmを越える場合は、竿捌き性が悪化する傾向を生じる。
【0026】
次に、本発明の芯鞘複合型発泡繊維の製造方法について説明する。
【0027】
本発明の芯鞘複合型発泡繊維を製造するに際しては、図2に示したように、まず別途に溶融紡糸、延伸、必要により熱処理することにより、芯繊維2を準備し、この芯繊維2を、送り出し機3、送り出しロール4、速度変化装置5、加熱ヒーター6を経てクロスヘッド7へ送り、このクロスヘッド7で被覆部(鞘樹脂)1を断続的に被覆することにより、効率的に製造することができる。
【0028】
ここで、加熱ヒーター6は、芯繊維2と鞘樹脂1との接着性を高めるために、被覆部の直前で繊維を加熱するために機能する。
【0029】
クロスヘッド7は、図3に示したように、エクストルーダー型押出機12、ブレーカープレート13、ニップル14、ダイス15からなり、非発泡性の芯繊維2の表面に発泡剤を含む鞘樹脂1を断続的に溶融被覆するように構成されている。
【0030】
すなわち、エクストルーダー型押出機12により押し出された被覆成分である発泡性樹脂(鞘樹脂)1は、ブレーカープレート13を通過してクロスヘッド内部に流入した後、ニップル14とダイス15の隙間を通過し、芯繊維2はダイス15で発泡性樹脂1と合流して、鞘樹脂1が被覆されるのである。
【0031】
そして、芯繊維2に鞘樹脂1を断続被覆された繊維は、次いで、冷却水槽8で被覆した鞘樹脂が冷却・固化され、巻き取りロール9を経て、油剤付与ロール10により繊維表面に油剤が付与され、巻取り機11に巻き取られる。
【0032】
ここで、上述の発泡剤により発泡樹脂被覆層を形成するには、発泡剤を含有した鞘樹脂を押出機12に供給し、溶融樹脂を芯繊維2に被覆するに際し、溶融温度を発泡剤の分解温度以上に設定して被覆と同時に鞘樹脂を発泡させる方法、および溶融温度を発泡剤の分解温度よりも低く設定して未発泡状態で被覆した後で熱処理により鞘樹脂を発泡させる方法のいずれもが可能である。
【0033】
また、発泡性の鞘樹脂1を芯繊維2に断続被覆させるには、ポリマ温度を低めに設定して溶融粘度が高い状態で芯繊維2を高速で引き取ることにより芯繊維2に追従できない被覆ポリマが千切れることで断続被覆状態にする方法、および被覆中に芯繊維速度を変化させることで断続被覆状態にする方法等があるが、生産安定性ならびに被覆部長さ・非被覆部長さの調整容易性の観点からは、芯繊維速度を変化させる方法が好ましい。
【0034】
断続的に走行させる方法、すなわち芯繊維2の走行速度を周期的に変更する方法としては、クロスヘッド7の入り側で周期的に開閉する2枚の摩擦パット(ゴム等)16間に芯繊維を通す方法(図4参照)、送り出し機3と、巻き取りロール9の回転数を周期的に変化させる方法、および送り出し機3と、引き取りロール9とを一定回転とし、ロール形状を楕円化する方法等があるが、速度変更の容易性、変更範囲の広さの観点からは、周期的に開閉する2枚の摩擦パット16間に芯繊維2を通す方法が好ましい。
【0035】
溶融被覆する際の各種条件は使用する鞘樹脂の種類によって異なるが、ポリマ温度は100〜400℃、押出圧力1〜30MPa、被覆速度1〜1000m/分、冷却水温5〜90℃などの条件を適宜選択することができる。なお、ポリマ温度が高くなると、鞘樹脂の溶融粘度が低下し、芯繊維に追従しやすくなるので被覆が断続的になりにくいことがある。
【0036】
このようにして得られる本発明の芯鞘複合型発泡繊維は、発泡被覆部・非被覆部の長さを任意に調整できることから、浮力を任意に調整できるため、「落とし込み」釣法における道糸の釣り用仕掛けとしてきわめて有効である。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、実施例における芯鞘複合型発泡繊維の評価は以下の方法に準じて行った。
【0038】
[直径]
アンリツ(株)製レーザー外径測定機”KL−151A”を使用した。被覆部、非被覆部ともに5点を測定し、それぞれの平均直径を算出した。
【0039】
[沈降速度]
サンプルを被覆部端面から1cmの点を起点として52cmの長さにカットし、1.85gの鉛製重錘(ガン玉5B号相当)を起点から1cmの非被覆部に取り付ける。55cmの深さまで蒸留水を満たした幅90cm×奥行き45cm×深さ60cmの水槽の壁面に、サンプルを起点から51cmの点を水面高さで固定し、重錘をピンセットで挟み、水面と平行に張った状態から重錘を水中に落下させる。重錘が解放されてから水槽壁面に当たるまでの時間(沈降時間)をストップウォッチで測定し、次式1により見かけの沈降速度を算出した。
沈降速度(cm/秒) = 50(cm)/沈降時間(秒)。
【0040】
[実釣評価]
リールから引き出した太さ2.5号の道糸に長さ2mにカットしたサンプルを結び、サンプルの先端に長さ1m、太さ1.5号のハリス、釣り針を結び、「落とし込み」用仕掛けを製作し、実釣評価した。餌の沈降速度、アタリの取り易さ、竿さばき性を評価ポイントとし、以下のように3段階評価した。
◎:優れている、要求特性以上、
○:使用可能レベル、要求特性程度、
×:使用不可、要求特性以下。
【0041】
[実施例1]
硫酸相対粘度3.7のナイロン6樹脂を285℃の1軸エクストルーダー式押出機に連続的に供給し連続的に溶融した。溶融ポリマを285℃の配管を通じてギヤポンプにて計量し、285℃の紡糸パックに導き、パック内では30ミクロンカットのフィルターを通過させ、孔径0.7mm孔長1.6mmの単孔が15個穿孔された口金より押し出し、口金下に設けた冷却浴に導き20℃の水により冷却固化させた後、20m/分で引き取り、連続して103℃の加熱蒸気中で4倍延伸、さらに300℃の熱風中で1.5倍延伸、200℃の熱風中で0.95倍、油剤を付与して巻き取り、直径0.235mmのナイロン6モノフィラメントを得た。
【0042】
JIS K 6922−2に準拠して測定したMFRが4.0g/10minである低分子量ポリエチレン樹脂(融点110℃)100重量部に対し、発泡剤として重炭酸ナトリウム(分解温度150℃)を4.0重量部添加し、発泡性鞘樹脂とする。
【0043】
この発泡性鞘樹脂をエクストルーダー型押出機へ供給し、樹脂温度が185℃となるように加熱し、吐出量1.2g/分で押出し、直径0.6mmのダイス、直径0.45mmのニップルをセットしたクロスヘッド部で速度100m/分で走行する芯モノフィラメントに溶融被覆した。断続被覆状態を発現させるために、クロスヘッド入り側において8.3Hzで開閉する2枚のゴム製摩擦パット間に芯繊維を通過させることにより、断続被覆発泡繊維を得た。溶融被覆条件を表1、物性評価結果を表3に示す。
【0044】
[実施例2]
芯モノフィラメントの走行速度を200m/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表1、物性評価結果を表3に示す。
【0045】
[実施例3]
発泡性鞘樹脂の吐出量を6.0g/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表1、物性評価結果を表3に示す。
【0046】
[実施例4]
発泡性鞘樹脂の吐出量を6.0g/分、芯モノフィラメントの走行速度を200m/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表1、物性評価結果を表3に示す。
【0047】
[実施例5]
発泡性鞘樹脂の吐出量を9.6g/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表1、物性評価結果を表3に示す。
【0048】
[実施例6]
発泡性鞘樹脂の吐出量を9.6g/分、芯モノフィラメントの走行速度を200m/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表1、物性評価結果を表3に示す。
【0049】
[比較例1]
発泡性鞘樹脂の吐出量を1.05g/分、芯モノフィラメントの走行速度を60m/分、摩擦パットの開閉周期を20Hzに変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表2、物性評価結果を表4に示す。
【0050】
[比較例2]
発泡性鞘樹脂の吐出量を0.33g/分、芯モノフィラメントの走行速度を100m/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表2、物性評価結果を表4に示す。
【0051】
[比較例3]
発泡性鞘樹脂の吐出量を0.33g/分、芯モノフィラメントの走行速度を300m/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表2、物性評価結果を表4に示す。
【0052】
[比較例4]
発泡性鞘樹脂の吐出量を17.5g/分、芯モノフィラメントの走行速度を100m/分、摩擦パットの開閉周期を20Hzに変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表2、物性評価結果を表4に示す。
【0053】
[比較例5]
発泡性鞘樹脂の吐出量を5.5g/分、芯モノフィラメントの走行速度を300m/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表2、物性評価結果を表4に示す。
【0054】
[比較例6]
発泡性鞘樹脂の吐出量を70g/分、摩擦パットの開閉周期を20Hzに変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表2、物性評価結果を表4に示す。
【0055】
[比較例7]
発泡性鞘樹脂の吐出量を22g/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表2、物性評価結果を表4に示す。
【0056】
[比較例8]
発泡性鞘樹脂の吐出量を22g/分、芯モノフィラメントの走行速度を300m/分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で断続被覆発泡繊維を得た。製造条件を表2、物性評価結果を表4に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
上記の結果から明らかなように、実施例1〜6の芯鞘複合型発泡繊維は、いずれも「落とし込み」釣法に適した沈降速度であり、実釣試験結果ではいずれも現行の手作業により製作される既存の「落とし込み」仕掛けの釣果と同等ないしは優れた釣果が得られた。
【0062】
比較例1〜3の芯鞘複合型発泡繊維は、被覆部分が短く、十分な浮力が得られないため沈降速度が速くなり、釣果が低下した。
【0063】
比較例4、6〜8の芯鞘複合型発泡繊維は、非被覆部に対する被覆部長さが長く、浮力が大きいため竿捌きが悪くなり、また沈降速度が遅いため目標とする水深に餌が届くまでの時間がかかるため「餌取り」と呼ばれる目的外の魚種に餌を取られたため釣果が低下した。
【0064】
比較例5の芯鞘複合型発泡繊維は、「落とし込み」釣法に適した沈降速度であるが、浮力体となる被覆部と被覆部の間が空きすぎているため餌の沈み方が不自然となり、魚の警戒心をあおり、釣果が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の発泡性の鞘樹脂で断続的に溶融被覆された芯鞘型複合発泡繊維は、芯繊維の強度と、鞘の浮力を活かして、主に釣り用仕掛けとして使用することができ、例えば黒鯛釣りの「落とし込み」釣法に好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の芯鞘複合型発泡繊維の一例を繊維軸に垂直な断面で示した模式図である。
【図2】本発明の芯鞘複合型発泡繊維を製造するために使用する被覆装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の芯鞘複合型発泡繊維を製造するために使用する被覆装置クロスヘッド部の一例を示す拡大図である。
【図4】本発明の芯鞘複合型発泡繊維を製造するために使用する芯繊維速度変更装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0067】
1.発泡性樹脂(被覆部)
2.芯繊維
3.送り出し機
4.送り出しロール
5.速度変化装置
6.加熱ヒーター
7.クロスヘッド
8.冷却水槽
9.巻取りロール
10.油剤付与ロール
11.巻取り機
12.エクストルーダー型押出機
13.ブレーカープレート
14.ニップル
15.ダイス
16.摩擦パット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維断面が発泡性の鞘樹脂と非発泡性の芯繊維よりなる芯鞘複合型発泡繊維において、前記鞘樹脂からなる被覆部が前記芯繊維を断続的に被覆して、この芯繊維に非被覆部を形成しており、前記被覆部の長さが0.5〜10cm、前記非被覆部の長さが5〜50cmであって、これらの被覆部と非被覆部とが繊維の長手方向に連続的に存在することを特徴とする芯鞘複合型発泡繊維。
【請求項2】
溶融被覆装置で非発泡性の芯繊維の表面に発泡性樹脂からなる被覆部を被覆する溶融被覆法において、前記芯繊維の走行速度を周期的に変化させることにより、前記被覆部の断続被覆状態を発現させることを特徴とする請求項1に記載の芯鞘複合型発泡繊維の製造方法。
【請求項3】
周期的に開閉する2枚の摩擦パット間に前記芯繊維を通すことにより、この芯繊維の走行速度を周期的に変化させることを特徴とする請求項2に記載の芯鞘複合型発泡繊維の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の芯鞘複合型発泡繊維を少なくとも1部に使用したことを特徴とする釣り用仕掛け。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−107124(P2007−107124A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297808(P2005−297808)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】