断面観察方法
【課題】顕微鏡観察をする際に試料を固定するための治具に関する。特に断面切削装置に
て断面出しをおこなった試料の断面構造を高精度に観察することが可能な観察用治具に関
する。
【解決手段】
断面切削装置にて断面出しをおこなった断面切削装置用試料ホルダーに固定された試料
を断面切削装置用試料ホルダーから取り外すことなく、顕微鏡で前記試料断面を観察する
ための顕微鏡観察用治具であって、該顕微鏡観察用固定治具が平板状であり、且つ、前記
断面切削用試料ホルダーの断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入することがで
き、該断面切削用試料ホルダーを挿入した状態で前記断面切削用試料ホルダーに固定され
た試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転可能とす
るための穴を有していることを特徴とする顕微鏡観察用固定治具である。
て断面出しをおこなった試料の断面構造を高精度に観察することが可能な観察用治具に関
する。
【解決手段】
断面切削装置にて断面出しをおこなった断面切削装置用試料ホルダーに固定された試料
を断面切削装置用試料ホルダーから取り外すことなく、顕微鏡で前記試料断面を観察する
ための顕微鏡観察用治具であって、該顕微鏡観察用固定治具が平板状であり、且つ、前記
断面切削用試料ホルダーの断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入することがで
き、該断面切削用試料ホルダーを挿入した状態で前記断面切削用試料ホルダーに固定され
た試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転可能とす
るための穴を有していることを特徴とする顕微鏡観察用固定治具である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、顕微鏡観察をする際に断面観察試料を固定するための治具に関する。特に断面切削装置にて断面出しをおこなった断面試料の断面構造を高精度に観察することが可能な観察用治具に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、顕微鏡で試料、特にシート状、フィルム状の試料の断面を観察し、試料の層構成や膜厚を測定する場合、断面切削装置で断面出しを行うことが多くなってきている（特許文献１）。このとき、試料の断面構造を顕微鏡で観察する際、断面切削装置で試料を切削した試料薄片をスライドガラス上に保持して顕微鏡観察が行われる。
【０００３】
また、断面切削装置で断面を切削した断面試料を、断面切削用試料ホルダーから取り外して粘土などでスライドガラス上に固定するか、または、断面試料を断面切削用試料ホルダーに装着したままスライドガラス上に置いて顕微鏡観察を行っている。
【０００４】
しかしながら、断面切削装置により試料から切り出されスライスされた試料薄片は、薄片自体の内部応力による反りの発生や、試料の層構成に起因した不均一な厚みになりやすく、高精度の観察が困難である。
【０００５】
また、断面切削用試料ホルダーから取り外した試料ブロックの切削面をスライドガラスに対して水平に保つことも技術を要し、高精度の観察が困難である。
【０００６】
さらに、切削用試料ホルダーに装着したままの試料の切削面は、スライドガラスに対して水平に保てるが、安定性が悪く、顕微鏡観察時における視野移動や回転に対するハンドリングが悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開２００１−５９８０１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、断面切削装置で切削した試料断面を、切削用試料ホルダーから取り外すことなく、断面切削用ホルダーの断面切削装置への固定部の一部を顕微鏡観察用固定治具の穴に挿入することで、試料の切削面を顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ち、かつ、回転可能で、ハンドリングも向上できる顕微鏡観察用固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項１に係る発明は、
断面切削装置にて断面出しをおこなった断面切削装置用試料ホルダーに固定された試料を断面切削装置用試料ホルダーから取り外すことなく、顕微鏡で前記試料断面を観察するための顕微鏡観察用治具であって、
該顕微鏡観察用固定治具が平板状であり、且つ、前記断面切削用試料ホルダーの断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入することができ、該断面切削用試料ホルダーを挿入した状態で前記断面切削用試料ホルダーに固定された試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転可能とするための穴を有していることを特徴とする顕微鏡観察用固定治具である。
【００１０】
次に、本発明の請求項２に係る発明は、
前記断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための前記顕微鏡観察用固定治具には、前記断面切削用試料ホルダーの固定部の外径に対して１０〜１００ｕｍ大きい内径の穴を有していることを特徴とする請求項１に記載の顕微鏡観察用固定治具である。
【００１１】
次に、本発明の請求項３に係る発明は、
前記断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための穴の周縁部に、該断面切削用試料ホルダーの回転角度を確認するための目盛りが設けてあることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の顕微鏡観察用固定治具である。
【００１２】
次に、本発明の請求項４に係る発明は、
前記顕微鏡観察用固定治具の厚みが１〜２０ｍｍであり、縦７０〜８０ｍｍ、横２０〜３０ｍｍの長方形の平板であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の顕微鏡観察用固定治具である。
【発明の効果】
【００１３】
本発明の顕微鏡観察用固定治具は以上の構成からなるので、断面切削装置用試料ホルダーに固定された試料を断面切削装置用試料ホルダーから取り外すことなく、平板状の顕微鏡観察用固定治具に前記断面切削用試料ホルダーの断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入する。そして、前記断面切削用試料ホルダーに固定された試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転させ、高精度の顕微鏡観察を行うことができる。
【００１４】
また、本発明の顕微鏡観察用固定治具に、前記断面切削用試料ホルダーの固定部の外径に対して１０〜１００ｕｍ大きい内径の穴を有することで、ハンドリング性の高い試料の回転作業が出来る。さらに、試料回転時の観察視野からの試料の逃げを防止することができる。
【００１５】
また、断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための穴の周縁部に、該断面切削用試料ホルダーの回転角度を確認するための目盛りが設けてあることにより、観察視野の位置あわせ作業を効率化することが出来る。
【００１６】
さらに、既存の顕微鏡の試料ステージに前記顕微鏡観察用固定治具を固定することが可能である。そして、試料微動のハンドリング性を高くすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明の顕微鏡観察用固定治具の使用状態の一実施例の概略を示す概略図である。
【図２】本発明の顕微鏡観察用固定治具の断面切削装置用試料ホルダーの一実施例の概略を示す斜視図である。
【図３】本発明の顕微鏡観察用固定治具の概略を説明するための斜視図である。
【図４】本発明の顕微鏡観察用固定治具１１が用いられる顕微鏡１４で断面観察試料３の切削面を観察する状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【００１８】
本発明の顕微鏡観察用固定治具を実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。図１は、本発明の顕微鏡観察用固定治具の使用状態の一実施例の概略を示す概略図である。
【００１９】
図１に示す断面切削装置用試料ホルダー１に固定される試料としては、シートないしフィルム状の試料を用いることができる。そして、シートないしフィルム状の試料としては、建築資材用化粧シート、包装資材用ラミネートフィルム、バリアフィルム、ディスプレイ用光学フィルム等が挙げられる。
【００２０】
前記シートないしフィルム状試料は、多層構造を有しており、これらの層構造を観察する上で断面を顕微鏡で観察する必要がある。また、シートないしフィルム状試料が、十分な厚みを有さず断面切削するための十分な強度が得られない場合は、接着剤や、紫外線硬化樹脂等に試料を包埋することも出来る。
【００２１】
前記断面切削装置としては、例えば、ウルトラミクロトームがあげられる。この装置は図１に示すように試料を断面切削用試料ホルダー１に保持した後、断面試料ホルダー１の固定部２を断面切削装置５の試料ホルダー固定アーム６に固定する。
【００２２】
次に、試料の断面出しを、断面切削装置５に固定した切削用ナイフ４で行う。そして、本発明の顕微鏡観察用固定治具に用いられる切削用ナイフ４としては、ダイヤモンドナイフ、ガラスナイフ、金属ナイフが挙げられる。
【００２３】
通常、断面切削をする際には、安価なガラスナイフ等により断面加工を行う。そして、得られた断面が十分な平滑性を有さない場合には、高価なダイヤモンドナイフ等により断面加工を行い、より平滑で鏡面を有する断面観察試料とすることができる。
【００２４】
また、断面切削装置用試料ホルダー１と試料ホルダー固定アーム６の動きを図１の矢印にて示した。そして、試料ホルダー固定アーム６が上から下へ移動するとき、試料の先端が切削用ナイフ４に接触して断面を切り出す。その後、試料ホルダー固定アーム６は、試料に切削用ナイフ４が接触しない程度後退して、下から上に移動する。
【００２５】
そして、試料ホルダー固定アーム６が断面切削装置５で設定した切削厚み分前進し、再び、上から下に移動して試料の断面出しを行う。試料の断面出しは、この繰り返しによっておこなわれ、切削を複数回行うことにより、より鏡面に近い平滑な断面を有する断面観察試料とすることができる。
【００２６】
次に、図２は本発明の顕微鏡観察用固定治具の断面切削装置用試料ホルダーの一実施例の概略を示す斜視図である。
【００２７】
図２に示す断面切削用試料ホルダー１としては、ウルトラミクロトームの試料ホルダー、または、試料固定ネジ８を締めることにより、固定板９と移動板１０の間に試料を固定させる機能を有するホルダーが挙げられる。これらの断面切削用試料ホルダー１は、その固定部２が断面切削装置の固定アーム６に取り付けられる。そして、断面切削用試料ホルダー１の固定部２と断面切削装置の固定アーム６は、通常、固定アーム６の側部からネジを差し込むことにより固定される。
【００２８】
次に、図３は、本発明の顕微鏡観察用固定治具の概略を説明するための斜視図である。図３に示すように本発明の顕微鏡観察用固定治具１１は、平板状に形成されており、前記断面切削用試料ホルダー１の断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入することができる。そして、該断面切削用試料ホルダー１を挿入した状態で前記断面切削用試料ホルダーに固定された試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転可能とするための穴を有していることを特徴とする。
【００２９】
また、図３の顕微鏡観察用固定治具１１において、その中央には貫通穴１２が備われている。そして、断面切削装置用試料ホルダー１の固定部２を挿入することができる。さらに図３に示すように、本発明の顕微鏡観察用固定治具１１の穴１２として貫通穴１２を示しているが、本発明の顕微鏡観察用固定治具は貫通していない穴であっても良い。ただし、穴が十分な深さを持たない場合、断面切削装置用試料ホルダー１を安定的に水平に保ちながら回転することが困難となるため注意を要する。
【００３０】
また、本発明の顕微鏡観察用固定治具の貫通穴１２は、断面切削装置用試料ホルダー１の固定部２の外径よりも１０〜１００μｍ大きな口径を有することが好ましい。さらに、顕微鏡観察用固定治具の口径と断面切削装置用試料ホルダーの固定部２の外径との差が１０μｍに満たない場合、断面切削装置用試料ホルダー１の固定部２を顕微鏡観察用固定治具１１の穴に容易に挿入することが困難となってしまう。
【００３１】
また、顕微鏡観察用固定治具１１の口径と断面切削装置用試料ホルダー１の固定部２の外径との差が１００μｍを超えるような場合には、顕微鏡観察時において顕微鏡観察用固定治具１１に挿入したまま断面観察試料３を備える断面切削装置用試料ホルダー１を回転させた際に、顕微鏡の視野から断面観察試料３が大きく外れてしまい、作業効率か低下することとなる。
【００３２】
本発明の顕微鏡観察用固定治具１１を形成する材料としては、公知のものであれば構わない。例えば、ステンレス、アルミニウム、プラスチックなどの加工のしやすい材料を用いることができる。
【００３３】
また、顕微鏡観察用固定治具１１は、縦７０〜８０ｍｍ、横２０〜３０ｍｍ、厚み１〜２０ｍｍの長方形であることが好ましい。上記サイズはガラスプレートの大きさとほぼ同一である。
【００３４】
また、顕微鏡の中でも光学顕微鏡にあっては、ガラスプレート上の観察試料を観察するために、固定するためのストッパーが顕微鏡試料ステージ上に設けられている。そして、ストッパーはダイヤルにて観察箇所を移動することが可能な試料移動機構を有している。
【００３５】
前記ダイヤル操作によって観察箇所の微小な移動を容易に行うことができる。すなわち、本発明においては顕微鏡観察用固定治具１１をガラスプレートの大きさとほぼ同一とすることにより、顕微鏡ステージ上のストッパーに顕微鏡観察用固定治具１１を容易に固定することができる。
【００３６】
また、顕微鏡観察用固定治具１１の上面には、貫通穴１２の周囲に位置合わせ用の目盛り１３が設けられている。目盛り１３を設けることにより、顕微鏡観察時において容易に顕微鏡観察用固定治具１１と断面観察試料３が固定された断面切削装置用試料ホルダー１の回転角度を確認することができる。
【００３７】
図４は、本発明の顕微鏡観察用固定治具１１が用いられる顕微鏡１４で断面観察試料３の切削面を観察する状態を示す概略図である。本発明の顕微鏡観察用固定治具１１が用いられる顕微鏡としては、光学顕微鏡、実体顕微鏡が挙げられる。図４に示すように顕微鏡１４は、落射光１７、または、透過光１８を顕微鏡試料ステージ１６上に搭載した観察対象物に照射し、対物レンズ１５の任意の倍率を選択することにより、数倍から数千倍の画像が得られる。
【００３８】
また、本発明の顕微鏡観察用固定治具１１を用いて切削面を観察するには、主に落射光１７を使用する。断面観察試料３の回転は、顕微鏡観察用固定治具１１に沿って行う。さらに、観察像の上下左右の移動は、顕微鏡試料ステージ１６のダイヤル操作を用いて微小な移動を行う。なお、顕微鏡１４の顕微鏡試料ステージ１６がダイヤル操作ではない場合は、観察像の上下左右の移動を手動で行う。
【産業上の利用可能性】
【００３９】
本発明の顕微鏡観察用固定治具はシートないしフイルム状の試料断面を顕微鏡で観察する際、容易に、且つ、高精度で、できることはもとより、積層医薬部材等の研究開発にも使用できる素晴らしい発明である。
【符号の説明】
【００４０】
１…断面切削装置用試料ホルダー
２…断面切削装置用試料ホルダーの固定部
３…断面観察試料
４…切削用ナイフ
５…断面切削装置
６…試料ホルダー固定アーム
７…試料ホルダーの目盛り
８…試料固定ネジ
９…固定板
１０…移動板
１１…顕微鏡観察用固定治具
１２…貫通穴
１３…目盛り
１４…顕微鏡本体
１５…対物レンズ
１６…顕微鏡試料ステージ
１７…落射光
１８…透過光
【技術分野】
【０００１】
本発明は、顕微鏡観察をする際に断面観察試料を固定するための治具に関する。特に断面切削装置にて断面出しをおこなった断面試料の断面構造を高精度に観察することが可能な観察用治具に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、顕微鏡で試料、特にシート状、フィルム状の試料の断面を観察し、試料の層構成や膜厚を測定する場合、断面切削装置で断面出しを行うことが多くなってきている（特許文献１）。このとき、試料の断面構造を顕微鏡で観察する際、断面切削装置で試料を切削した試料薄片をスライドガラス上に保持して顕微鏡観察が行われる。
【０００３】
また、断面切削装置で断面を切削した断面試料を、断面切削用試料ホルダーから取り外して粘土などでスライドガラス上に固定するか、または、断面試料を断面切削用試料ホルダーに装着したままスライドガラス上に置いて顕微鏡観察を行っている。
【０００４】
しかしながら、断面切削装置により試料から切り出されスライスされた試料薄片は、薄片自体の内部応力による反りの発生や、試料の層構成に起因した不均一な厚みになりやすく、高精度の観察が困難である。
【０００５】
また、断面切削用試料ホルダーから取り外した試料ブロックの切削面をスライドガラスに対して水平に保つことも技術を要し、高精度の観察が困難である。
【０００６】
さらに、切削用試料ホルダーに装着したままの試料の切削面は、スライドガラスに対して水平に保てるが、安定性が悪く、顕微鏡観察時における視野移動や回転に対するハンドリングが悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開２００１−５９８０１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、断面切削装置で切削した試料断面を、切削用試料ホルダーから取り外すことなく、断面切削用ホルダーの断面切削装置への固定部の一部を顕微鏡観察用固定治具の穴に挿入することで、試料の切削面を顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ち、かつ、回転可能で、ハンドリングも向上できる顕微鏡観察用固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項１に係る発明は、
断面切削装置にて断面出しをおこなった断面切削装置用試料ホルダーに固定された試料を断面切削装置用試料ホルダーから取り外すことなく、顕微鏡で前記試料断面を観察するための顕微鏡観察用治具であって、
該顕微鏡観察用固定治具が平板状であり、且つ、前記断面切削用試料ホルダーの断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入することができ、該断面切削用試料ホルダーを挿入した状態で前記断面切削用試料ホルダーに固定された試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転可能とするための穴を有していることを特徴とする顕微鏡観察用固定治具である。
【００１０】
次に、本発明の請求項２に係る発明は、
前記断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための前記顕微鏡観察用固定治具には、前記断面切削用試料ホルダーの固定部の外径に対して１０〜１００ｕｍ大きい内径の穴を有していることを特徴とする請求項１に記載の顕微鏡観察用固定治具である。
【００１１】
次に、本発明の請求項３に係る発明は、
前記断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための穴の周縁部に、該断面切削用試料ホルダーの回転角度を確認するための目盛りが設けてあることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の顕微鏡観察用固定治具である。
【００１２】
次に、本発明の請求項４に係る発明は、
前記顕微鏡観察用固定治具の厚みが１〜２０ｍｍであり、縦７０〜８０ｍｍ、横２０〜３０ｍｍの長方形の平板であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の顕微鏡観察用固定治具である。
【発明の効果】
【００１３】
本発明の顕微鏡観察用固定治具は以上の構成からなるので、断面切削装置用試料ホルダーに固定された試料を断面切削装置用試料ホルダーから取り外すことなく、平板状の顕微鏡観察用固定治具に前記断面切削用試料ホルダーの断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入する。そして、前記断面切削用試料ホルダーに固定された試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転させ、高精度の顕微鏡観察を行うことができる。
【００１４】
また、本発明の顕微鏡観察用固定治具に、前記断面切削用試料ホルダーの固定部の外径に対して１０〜１００ｕｍ大きい内径の穴を有することで、ハンドリング性の高い試料の回転作業が出来る。さらに、試料回転時の観察視野からの試料の逃げを防止することができる。
【００１５】
また、断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための穴の周縁部に、該断面切削用試料ホルダーの回転角度を確認するための目盛りが設けてあることにより、観察視野の位置あわせ作業を効率化することが出来る。
【００１６】
さらに、既存の顕微鏡の試料ステージに前記顕微鏡観察用固定治具を固定することが可能である。そして、試料微動のハンドリング性を高くすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明の顕微鏡観察用固定治具の使用状態の一実施例の概略を示す概略図である。
【図２】本発明の顕微鏡観察用固定治具の断面切削装置用試料ホルダーの一実施例の概略を示す斜視図である。
【図３】本発明の顕微鏡観察用固定治具の概略を説明するための斜視図である。
【図４】本発明の顕微鏡観察用固定治具１１が用いられる顕微鏡１４で断面観察試料３の切削面を観察する状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【００１８】
本発明の顕微鏡観察用固定治具を実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。図１は、本発明の顕微鏡観察用固定治具の使用状態の一実施例の概略を示す概略図である。
【００１９】
図１に示す断面切削装置用試料ホルダー１に固定される試料としては、シートないしフィルム状の試料を用いることができる。そして、シートないしフィルム状の試料としては、建築資材用化粧シート、包装資材用ラミネートフィルム、バリアフィルム、ディスプレイ用光学フィルム等が挙げられる。
【００２０】
前記シートないしフィルム状試料は、多層構造を有しており、これらの層構造を観察する上で断面を顕微鏡で観察する必要がある。また、シートないしフィルム状試料が、十分な厚みを有さず断面切削するための十分な強度が得られない場合は、接着剤や、紫外線硬化樹脂等に試料を包埋することも出来る。
【００２１】
前記断面切削装置としては、例えば、ウルトラミクロトームがあげられる。この装置は図１に示すように試料を断面切削用試料ホルダー１に保持した後、断面試料ホルダー１の固定部２を断面切削装置５の試料ホルダー固定アーム６に固定する。
【００２２】
次に、試料の断面出しを、断面切削装置５に固定した切削用ナイフ４で行う。そして、本発明の顕微鏡観察用固定治具に用いられる切削用ナイフ４としては、ダイヤモンドナイフ、ガラスナイフ、金属ナイフが挙げられる。
【００２３】
通常、断面切削をする際には、安価なガラスナイフ等により断面加工を行う。そして、得られた断面が十分な平滑性を有さない場合には、高価なダイヤモンドナイフ等により断面加工を行い、より平滑で鏡面を有する断面観察試料とすることができる。
【００２４】
また、断面切削装置用試料ホルダー１と試料ホルダー固定アーム６の動きを図１の矢印にて示した。そして、試料ホルダー固定アーム６が上から下へ移動するとき、試料の先端が切削用ナイフ４に接触して断面を切り出す。その後、試料ホルダー固定アーム６は、試料に切削用ナイフ４が接触しない程度後退して、下から上に移動する。
【００２５】
そして、試料ホルダー固定アーム６が断面切削装置５で設定した切削厚み分前進し、再び、上から下に移動して試料の断面出しを行う。試料の断面出しは、この繰り返しによっておこなわれ、切削を複数回行うことにより、より鏡面に近い平滑な断面を有する断面観察試料とすることができる。
【００２６】
次に、図２は本発明の顕微鏡観察用固定治具の断面切削装置用試料ホルダーの一実施例の概略を示す斜視図である。
【００２７】
図２に示す断面切削用試料ホルダー１としては、ウルトラミクロトームの試料ホルダー、または、試料固定ネジ８を締めることにより、固定板９と移動板１０の間に試料を固定させる機能を有するホルダーが挙げられる。これらの断面切削用試料ホルダー１は、その固定部２が断面切削装置の固定アーム６に取り付けられる。そして、断面切削用試料ホルダー１の固定部２と断面切削装置の固定アーム６は、通常、固定アーム６の側部からネジを差し込むことにより固定される。
【００２８】
次に、図３は、本発明の顕微鏡観察用固定治具の概略を説明するための斜視図である。図３に示すように本発明の顕微鏡観察用固定治具１１は、平板状に形成されており、前記断面切削用試料ホルダー１の断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入することができる。そして、該断面切削用試料ホルダー１を挿入した状態で前記断面切削用試料ホルダーに固定された試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転可能とするための穴を有していることを特徴とする。
【００２９】
また、図３の顕微鏡観察用固定治具１１において、その中央には貫通穴１２が備われている。そして、断面切削装置用試料ホルダー１の固定部２を挿入することができる。さらに図３に示すように、本発明の顕微鏡観察用固定治具１１の穴１２として貫通穴１２を示しているが、本発明の顕微鏡観察用固定治具は貫通していない穴であっても良い。ただし、穴が十分な深さを持たない場合、断面切削装置用試料ホルダー１を安定的に水平に保ちながら回転することが困難となるため注意を要する。
【００３０】
また、本発明の顕微鏡観察用固定治具の貫通穴１２は、断面切削装置用試料ホルダー１の固定部２の外径よりも１０〜１００μｍ大きな口径を有することが好ましい。さらに、顕微鏡観察用固定治具の口径と断面切削装置用試料ホルダーの固定部２の外径との差が１０μｍに満たない場合、断面切削装置用試料ホルダー１の固定部２を顕微鏡観察用固定治具１１の穴に容易に挿入することが困難となってしまう。
【００３１】
また、顕微鏡観察用固定治具１１の口径と断面切削装置用試料ホルダー１の固定部２の外径との差が１００μｍを超えるような場合には、顕微鏡観察時において顕微鏡観察用固定治具１１に挿入したまま断面観察試料３を備える断面切削装置用試料ホルダー１を回転させた際に、顕微鏡の視野から断面観察試料３が大きく外れてしまい、作業効率か低下することとなる。
【００３２】
本発明の顕微鏡観察用固定治具１１を形成する材料としては、公知のものであれば構わない。例えば、ステンレス、アルミニウム、プラスチックなどの加工のしやすい材料を用いることができる。
【００３３】
また、顕微鏡観察用固定治具１１は、縦７０〜８０ｍｍ、横２０〜３０ｍｍ、厚み１〜２０ｍｍの長方形であることが好ましい。上記サイズはガラスプレートの大きさとほぼ同一である。
【００３４】
また、顕微鏡の中でも光学顕微鏡にあっては、ガラスプレート上の観察試料を観察するために、固定するためのストッパーが顕微鏡試料ステージ上に設けられている。そして、ストッパーはダイヤルにて観察箇所を移動することが可能な試料移動機構を有している。
【００３５】
前記ダイヤル操作によって観察箇所の微小な移動を容易に行うことができる。すなわち、本発明においては顕微鏡観察用固定治具１１をガラスプレートの大きさとほぼ同一とすることにより、顕微鏡ステージ上のストッパーに顕微鏡観察用固定治具１１を容易に固定することができる。
【００３６】
また、顕微鏡観察用固定治具１１の上面には、貫通穴１２の周囲に位置合わせ用の目盛り１３が設けられている。目盛り１３を設けることにより、顕微鏡観察時において容易に顕微鏡観察用固定治具１１と断面観察試料３が固定された断面切削装置用試料ホルダー１の回転角度を確認することができる。
【００３７】
図４は、本発明の顕微鏡観察用固定治具１１が用いられる顕微鏡１４で断面観察試料３の切削面を観察する状態を示す概略図である。本発明の顕微鏡観察用固定治具１１が用いられる顕微鏡としては、光学顕微鏡、実体顕微鏡が挙げられる。図４に示すように顕微鏡１４は、落射光１７、または、透過光１８を顕微鏡試料ステージ１６上に搭載した観察対象物に照射し、対物レンズ１５の任意の倍率を選択することにより、数倍から数千倍の画像が得られる。
【００３８】
また、本発明の顕微鏡観察用固定治具１１を用いて切削面を観察するには、主に落射光１７を使用する。断面観察試料３の回転は、顕微鏡観察用固定治具１１に沿って行う。さらに、観察像の上下左右の移動は、顕微鏡試料ステージ１６のダイヤル操作を用いて微小な移動を行う。なお、顕微鏡１４の顕微鏡試料ステージ１６がダイヤル操作ではない場合は、観察像の上下左右の移動を手動で行う。
【産業上の利用可能性】
【００３９】
本発明の顕微鏡観察用固定治具はシートないしフイルム状の試料断面を顕微鏡で観察する際、容易に、且つ、高精度で、できることはもとより、積層医薬部材等の研究開発にも使用できる素晴らしい発明である。
【符号の説明】
【００４０】
１…断面切削装置用試料ホルダー
２…断面切削装置用試料ホルダーの固定部
３…断面観察試料
４…切削用ナイフ
５…断面切削装置
６…試料ホルダー固定アーム
７…試料ホルダーの目盛り
８…試料固定ネジ
９…固定板
１０…移動板
１１…顕微鏡観察用固定治具
１２…貫通穴
１３…目盛り
１４…顕微鏡本体
１５…対物レンズ
１６…顕微鏡試料ステージ
１７…落射光
１８…透過光
【特許請求の範囲】
【請求項１】
断面切削装置にて断面出しをおこなった断面切削装置用試料ホルダーに固定された試料を断面切削装置用試料ホルダーから取り外すことなく、顕微鏡で前記試料断面を観察するための顕微鏡観察用治具であって、
該顕微鏡観察用固定治具が平板状であり、且つ、前記断面切削用試料ホルダーの断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入することができ、該断面切削用試料ホルダーを挿入した状態で前記断面切削用試料ホルダーに固定された試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転可能とするための穴を有していることを特徴とする顕微鏡観察用固定治具。
【請求項２】
前記断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための前記顕微鏡観察用固定治具には、前記断面切削用試料ホルダーの固定部の外径に対して１０〜１００ｕｍ大きい内径の穴を有していることを特徴とする請求項１に記載の顕微鏡観察用固定治具。
【請求項３】
前記断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための穴の周縁部に、該断面切削用試料ホルダーの回転角度を確認するための目盛りが設けてあることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の顕微鏡観察用固定治具。
【請求項４】
前記顕微鏡観察用固定治具の厚みが１〜２０ｍｍであり、縦７０〜８０ｍｍ、横２０〜３０ｍｍの長方形の平板であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の顕微鏡観察用固定治具。
【請求項１】
断面切削装置にて断面出しをおこなった断面切削装置用試料ホルダーに固定された試料を断面切削装置用試料ホルダーから取り外すことなく、顕微鏡で前記試料断面を観察するための顕微鏡観察用治具であって、
該顕微鏡観察用固定治具が平板状であり、且つ、前記断面切削用試料ホルダーの断面切削装置への固定部の少なくとも一部を挿入することができ、該断面切削用試料ホルダーを挿入した状態で前記断面切削用試料ホルダーに固定された試料の断面切削面を前記顕微鏡観察用固定治具に対して水平に保ちながら回転可能とするための穴を有していることを特徴とする顕微鏡観察用固定治具。
【請求項２】
前記断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための前記顕微鏡観察用固定治具には、前記断面切削用試料ホルダーの固定部の外径に対して１０〜１００ｕｍ大きい内径の穴を有していることを特徴とする請求項１に記載の顕微鏡観察用固定治具。
【請求項３】
前記断面切削用試料ホルダーを回転可能とするための穴の周縁部に、該断面切削用試料ホルダーの回転角度を確認するための目盛りが設けてあることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の顕微鏡観察用固定治具。
【請求項４】
前記顕微鏡観察用固定治具の厚みが１〜２０ｍｍであり、縦７０〜８０ｍｍ、横２０〜３０ｍｍの長方形の平板であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の顕微鏡観察用固定治具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００９−１３３８７４（Ｐ２００９−１３３８７４Ａ）
【公開日】平成２１年６月１８日（２００９．６．１８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−６６０４１（Ｐ２００９−６６０４１）
【出願日】平成２１年３月１８日（２００９．３．１８）
【分割の表示】特願２００６−２５８７８４（Ｐ２００６−２５８７８４）の分割
【原出願日】平成１８年９月２５日（２００６．９．２５）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年６月１８日（２００９．６．１８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年３月１８日（２００９．３．１８）
【分割の表示】特願２００６−２５８７８４（Ｐ２００６−２５８７８４）の分割
【原出願日】平成１８年９月２５日（２００６．９．２５）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
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