説明

新たなハイブリッドオリゴマー、それらの製造方法およびそれらを含有する医薬組成物

本発明は、組成物、及び治療オリゴマー化合物の製造方法に関する。一つの局面で、本発明は、哺乳動物における疾患、例えば、真菌感染症、細菌感染症、または癌の治療および予防のための該オリゴマー化合物の投与方法に関する。特に、本発明は、様々な新規オリゴマー化合物およびその薬学的に許容される塩を含む医薬に関する。本発明の化合物を、場合により、少なくとも1種類の薬学的に許容される賦形剤、薬理活性物質、またはそれらの組み合わせと共に投与してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
35U.S.C.§119(e)に基づき、本出願は、2005年3月18日出願の米国仮出願第60/662785号の利益を主張するものであり、引用によりその全体を本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野
本発明は、哺乳動物における疾患の治療および予防のための組成物および方法に関するものである。特に本発明は、様々な新規オリゴマー化合物およびその薬学的に許容される塩を含む医薬に関するものである。本発明化合物は、場合により少なくとも1種類の薬学的に許容される賦形剤、薬理活性物質、またはそれらの組み合わせと共に投与することができる。
【0003】
背景技術
1950−1970年代には多くのクラスの抗生物質の発見がなされ、それらを医薬品へと開発することにより、単純な細菌感染が、生命を脅かすものから取るに足りないものへと変わった。この抗生物質の黄金期は、細菌感染が死因から速やかに排除されるであろうと一般的に考えられるという楽観的考えを産んだ。不運なことに、まもなく全てのクラスの抗生物質に対して細菌の耐性が出現した。この時代の終焉から30年になる現在、薬物耐性細菌は病院内に遍在し、米国だけでも毎年90000人がこのような感染症で死亡している。最もしばしば院内感染を引き起こす細菌の四分の一は推奨される抗生物質治療に耐性であり、驚くべきことに院内感染の70%が少なくとも一つの抗生物質に対して耐性である。
【0004】
メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)は院内で最も一般的な薬物耐性細菌であり、全ての院内感染の30%以上を占める。MRSAはまた市中感染も起こり得、重篤な疾病や死亡までも惹起することがある。さらに、Klebsiella臨床分離株の産生する広域スペクトルラクタマーゼ(ESBL)の出現が過去数年間に着実に増加しており、これはラクタム抗生物質の有効性を大幅に抑制している。最も憂慮すべき事態は恐らく、集中治療室における腸球菌の三分の一が、しばしば抗生物質の最後の砦とみなされているバンコマイシン耐性であるという最近の推定である。
【0005】
薬剤耐性病原体のリストは広範囲に及び、且つ拡大しつつある。これらの細菌感染は、高齢の、衰弱したまたは免疫抑制状態にある患者において特に懸念される。薬剤耐性細菌感染症に接触した結核、AIDS、サルモネラ症、淋病、またはマラリアをもつ個体は、抗菌薬感受性感染症の個体より入院期間が長く、その2倍以上の死亡率を有する。したがって、耐性菌は医療を複雑化するのみならず、毎年数十億ドルの医療費を上乗せする。
【0006】
抗生物質に対する細菌の耐性の問題は、抗菌性物質の発見と開発の減少傾向によって悪化する。FDAにより承認された年間の抗生物質数は、ここ20年間で56%減少している。事実、大製薬企業により生産された僅か6種類の抗生物質が現在治験後期にあるに過ぎず、しかもこれらは全て既知抗生物質の誘導体である。主要製薬企業で多くの抗菌剤プログラムが休止している理由は無数にあるが、殆どの細菌感染が急性である(慢性でない)こと、そして副作用が無いことに対する社会の期待が、他の疾患領域に比べて抗菌剤の研究をより低収益性且つ困難にしている。
【0007】
この領域における研究活動は主に、抗菌活性を持つ両親媒性らせんβペプチドの設計およびインビトロ研究に集中している。高い傾向のらせんコンホメーション、および蛋白分解に対するそれらの抵抗性を鑑みると、βペプチドは有望な抗菌性候補物質である。
【0008】
細胞膜に結合する時にカチオン性両親媒性αヘリックス構造をとる抗菌性αペプチド(例えば、ミツバチ毒素由来のメリチン、カエル皮膚由来のマガイニン、ブタ小腸由来のセクロピン)は自然界に遍在しており(Antimicrobial Sequences Database, http://www.bbcm.units.it/~tossi/pag1.htm)、これらは先天性免疫の重要なエフェクター分子である。これらのペプチドは一般に、膜の脂質成分との相互作用(細菌において膜の外葉は、本質上、負に荷電した燐脂質頭基を有する脂質で構成されているが、植物および動物においてこれは殆ど中性である)、およびこれに続く膜透過性上昇という二工程のメカニズムによって細胞死を惹起する。膜透過性上昇には、一過性の小孔形成(「ビア樽板モデル」)または膜の洗浄剤様破壊(「カーペットモデル」)といった幾つかのメカニズムが想定されている。両親媒性抗菌性ペプチドの溶菌活性は、ヘリックスの安定性、両親媒性(疎水性モーメント)、疎水性、ヘリックスの親水性と疎水性面との相対幅、および正味の電荷といった性質に強い影響を受ける。数多くの構造活性研究にも拘わらず、αペプチドの配列修飾は一般に同時に幾つかのパラメータに影響を及ぼすため、先導的な最適化は依然として困難である。さらに、ヒト細胞膜に対して活性が低いことは、細胞溶解性ペプチドを治療的価値のあるものとする必須条件であり、また、高い膜選択性を持つ膜溶解性らせんペプチドのデノボ設計には、これら5つの異なるパラメータ間のさらに綿密な調整が必要となる。
【0009】
抗菌性β−ペプチドの設計に好適な314および2.512らせんバックボーンが発見された。このヘリックスの一つの面に極性残基をクラスター化させるため、疎水性−カチオン性−疎水性または疎水性−疎水性−カチオン性残基の三つ組みから両親媒性314−ヘリカルβ−ペプチドが組み立てられた。
【0010】
C末端アミドを有する幾つかのβ3−ノナペプチドが、グラム陽性(S. AureusおよびE.Faecium株は、各々ペニシリンおよびバンコマイシンに耐性の臨床分離株であった)およびグラム陰性菌に対して活性であり、抗菌性αペプチドメリチンおよび[Ala8,13,18]−マガイニンIIアミド(天然マガイニンIIの極めて強力な合成類似体)に匹敵するMIC値(1.6−12.5mg/mL)を有することが判明した。これらの化合物の幾つかは水中ではらせんの形成を示さないが、一般に、40%水性TFE(両親媒性αペプチドのらせん性を促進することでも知られる溶媒系)中で最大のらせん性を示す。
【0011】
発明の要約
本発明は、哺乳動物、例えばヒトの疾患の治療および/または予防に有効な化合物およびそれを合成する方法に関するものである。別の局面では、本発明は微生物または細菌感染および関連疾患の治療および/または予防に有用な化合物に関するものである。
【0012】
一つの局面では、本発明は本発明方法を用いて合成する新規なオリゴマー化合物に関するものである。本発明はさらに、該化合物の有効量を含む医薬組成物に関するものである。別の局面では、本発明は、それを必要とする哺乳動物に本発明化合物の有効量を投与することを含む、治療方法に関するものである。
【0013】
一つの局面では、本発明は、オリゴマー化合物、および式I:
【0014】
【化19】

【0015】
{式中、nは1〜10の整数であり;
【0016】
tは1〜nの整数であり;
【0017】
Dは、式II:
【0018】
【化20】

【0019】
[式中、i、j、およびkは、独立して選ばれる0〜10の整数であり;そしてi+j+kの和は少なくとも2の整数に等しく、i+kの和は少なくとも1の整数に等しく;
【0020】
pは、1〜iの整数であり;
【0021】
qは、1〜jの整数であり;
【0022】
rは、1〜kの整数であり;
【0023】
Aは、式III:
【0024】
【化21】

【0025】
(式中、RおよびR’は、水素原子、アミノ酸側鎖、(C1−C10)アルキル、(C1−C10)アルケニル、(C1−C10)アルキニル、(C5−C12)単環式もしくは二環式アリール、(C5−C14)単環式もしくは二環式アラルキル、(C5−C14)単環式もしくは二環式ヘテロアルキル、および(C1−C10)単環式もしくは二環式ヘテロアリール基(N、O、およびSから選ばれる最大5個のヘテロ原子を含む)より成る群から独立して選ばれるが、これらの基は、非置換かまたはハロゲン原子、NO、OH、アミジン、ベンズアミジン、イミダゾール、アルコキシ、(C1−C4)アルキル、NH、CN、トリハロメチル、(C1−C4)アシルオキシ、(C1−C4)モノアルキルアミノ、(C1−C4)ジアルキルアミノ、グアニジノ基、ビスアルキル化もしくはビスアシル化グアニド基より成る群からさらに選ばれる1〜6個の置換基で置換されることもでき;
【0026】
は、NH、CH、またはOである)
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれ;
【0027】
Bは、α、β、またはγアミノ酸残基より成る群から選ばれる成員であり;
【0028】
Cは、式IV:
【0029】
【化22】

【0030】
(式中、RおよびR’は、RおよびR’と同じ群から独立して選ばれ;
【0031】
は、NH、CH、またはOである)
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれる]
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれ;
【0032】
Xは、水素原子、ビオチニル基、システイン残基、RαCO、RαOCO、RαNHCO、RαSO、またはRαNHCS
【0033】
(式中、Rαは、フルオレセインまたは(C1−C6)ピリジルジチオアルキル、(C1−C6)ニトロピリジルジチオアルキル、(C1−C10)アルキル、(C1−C10)アルケニル、(C1−C10)アルキニル、(C5−C12)アリール、(C5−C14)アラルキル、(C1−C5)ヘテロアリール基より成る群から選ばれるが、これらの基は、非置換かまたはハロゲン原子、NO、OH、(C1−C4)アルキル、NH、CN、トリハロメチル、(C1−C4)アシルオキシ、(C1−C4)ジアルキルアミノ、グアニジノ基、SH基、マレイミド基から選ばれる1〜6個の置換基で置換されることもできる)
より成る群から選ばれ;
【0034】
Yは、NH、またはNHRβ、ORβ、およびNRβγ基(RβおよびRγは前記Rαと同意義である)から選ばれる基を表し;そして、
【0035】
j=0である時、基Aのうち少なくとも一つは式(III)(式中、Z=CHである)で示される基であるか、または基Cのうち少なくとも一つは式(IV)(式中、Z=CHである)で示される基である}
で示される新規オリゴマー化合物を合成する方法に関するものである。
【0036】
一つの態様では、上記の式(V)においてi+k=1である時、jは1より大であるか、または1に等しい。
【0037】
任意の好ましい態様において、本発明は、上の式で示されるオリゴマー化合物の遊離塩基または酸の形態、ならびにその塩を包含する。本発明はさらに、上の式で示される化合物の光学異性体、類似体、および誘導体を包含する。本発明のさらなる態様では、単一の製造工程、組み合わせ、または相互変換で生成するエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物が包含される。本発明のさらに別の態様では、式Iで示される化合物が薬学的に許容される形態に含まれ、そして場合により少なくとも一つの他の成分、例えば適当な担体、賦形剤、別の薬学的に活性な成分またはその組み合わせを含む。
【0038】
本発明はさらに、上記オリゴマー化合物のプロドラッグ形態を提供し、このプロドラッグは、インビボで代謝されて上に開示した類似体または誘導体を生成する。事実、記載した化合物の幾つかは別の類似体または誘導体のプロドラッグとなり得る。「プロドラッグ」という語は当技術分野で良く理解されており、哺乳動物系において本発明に係る薬学的に活性な化合物に変換される化合物を包含する。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 1980, vol.16, Mack Publishing Company,Easton, Pa., 61 and 424を参照されたい。
【0039】
本発明の別の局面では、上に記載の化合物を含有する組成物が提供される。好ましくはこの組成物は、適当な担体または賦形剤を含有させることにより、薬学または農業使用に好適となるよう調合される。
【0040】
本発明のさらに別の局面では、疾患の治療および/または予防のために、本明細書に記載の化合物を、それを必要とする哺乳動物、例えばヒトに薬学的に許容される形態で適当量投与するための方法が提供される。一つの態様では、本発明は、微生物または細菌感染および関連疾患の治療および/または予防のために、本明細書に記載の化合物を、それを必要とする哺乳動物に薬学的に許容される形態で適当量投与するための方法を含む。
【0041】
本発明の系、方法およびプロセスに関連するさらなる好都合な特徴および機能は、以下に述べる詳細な説明から明白である。
【0042】
発明の詳細な説明
本発明の化合物、組成物および方法を説明する際、別途指摘のない限り、以下の用語は以下の意義を有する。
【0043】
「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の生物学的有効性および性質を保持し、且つ投与される用法で生物学的にもその他の点でも有害でない塩を意味する。本発明化合物は、それぞれアミノおよびカルボキシ基が存在するため、酸性および塩基性塩の両方を形成できる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基から製造できる。無機塩基から誘導される塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウム塩を包含するがこれらに限定されない。有機塩基から誘導される塩は、第一、第二および第三アミン、置換アミン(天然の置換アミンを包含する)、および環状アミン、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、およびN−エチルピペリジンなどの塩を包含するがこれらに限定されない。その他のカルボン酸誘導体、例えばカルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジ(低級アルキル)カルボキサミドなどのようなカルボン酸アミドもまた本発明の実施に有用であることを理解すべきである。
【0044】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機および有機酸から製造できる。無機酸から誘導される塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを包含する。有機酸から誘導される塩は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、蓚酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などを包含する。
【0045】
本明細書で使用する「治療」という語は、動物、特に哺乳動物、より詳細にはヒトの状態または疾患の任意の処置を包含し、(i)疾患の素因があるかも知れないがまだ罹患していると診断されていない対象において該疾患または状態の発現を防止すること;(ii)疾患または状態の阻止、即ち、その進行を停止させる;疾患または状態の軽減、即ち、その状態の後退を惹起する;または、その疾患により引き起こされる状態、即ち、その疾患の症状の軽減、を包含する。
【0046】
「治療有効量」という語は、当該治療を必要とする哺乳動物に投与した場合に本明細書の定義による治療を奏功させるに充分な量を指す。治療有効量は、治療される対象および疾患状態、罹患の重篤度および投与方法によって変化し、当業者によって日常的に決定され得る。
【0047】
「ヘテロ環」とは、4〜9個の炭素原子およびN、OまたはSより成る群から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を有するヘテロ環式基を指す。
【0048】
「アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する分岐または非分岐アルキル基、1〜6個の炭素原子を有する分岐または非分岐アルケニル基、1〜6個の炭素原子を有する分岐または非分岐アルキニル基を指す。
【0049】
「ヒドロキシ」とは、有機化合物中の置換基である時、官能基−OHを指す。
【0050】
「ヘテロ環式基」は、場合により、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロ環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、オキソ(=O)、および−SO−ヘテロアリールより成る群から選ばれる、1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基で置換されていてもよい。このようなヘテロ環式基は、単一の環または複数の縮合した環を持つことができる。好ましいヘテロ環はモルホリノ、ピペリジニルなどを包含する。
【0051】
窒素ヘテロ環およびヘテロアリールの例は、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、モルホリノ、ピペリジニル、テトラヒドロフラニルなど、およびN−アルコキシ−窒素含有ヘテロ環を包含するがこれらに限定されない。
【0052】
「チオール」という語は、基−SHを指す。
【0053】
「チオアルコキシ」という語は、基−S−アルキルを指す。
【0054】
「アミノ酸」は、アミノおよびカルボン酸官能基の両者を含む任意の分子を指し、D、L、またはDL型の任意の天然アミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)を包含する。天然アミノ酸の側鎖は当分野で周知であり、例えば水素(例えばグリシンの場合)、アルキル(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンの場合)、置換アルキル(例えば、スレオニン、セリン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、およびリジンの場合)、アルカリル(例えば、フェニルアラニンおよびトリプトファンの場合)、置換アリールアルキル(例えばチロシンの場合)、およびヘテロアリールアルキル(例えばヒスチジンの場合)を包含する。
【0055】
「アミジン」とは、1個の炭素−窒素二重結合を有する同じ炭素原子に結合した2個のアミノ基を有する官能基:HN=CR’−NH''を指す。
【0056】
「アルコキシ」とは、酸素に結合したアルキル基、即ちR−O−[式中、Rはアルキルである]を指す。
【0057】
「置換アルキル」とは、1〜10個の炭素原子を有し、ヒドロキシ、メルカプト、カルビルメルカプト、ハロゲン、カルビルオキシ、アミノ、アミド、カルボキシ、シクロアルキル、スルホまたはアシルより成る群から選ばれる1以上の置換基で置換されている、分岐または非分岐アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す。これら置換基の一般的基は、本明細書に定義した対応する基の定義と同じ意義を有する。
【0058】
「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、およびヨウ素原子を指す。
【0059】
「アシル」とは、基−C(O)R[式中、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキルであり、これらの一般的基は、この説明において定義した対応する基の定義と同じ意義を有する]を指す。
【0060】
「アシルオキシ」とは、基−OAc[式中、Acは、アシル、置換アシル、ヘテロアシルまたは置換ヘテロアシルであり、これらの一般的基は、この説明において定義した対応する基の定義と同じ意義を有する]を指す。
【0061】
「アルキルアミノ」とは、基−NR[式中、互いに独立しているRおよびRは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールを表し、これらの一般的置換基は、本明細書で定義した対応する基の定義と同じ意義を有する]を指す。
【0062】
「アリール」とは、1〜18個の炭素原子を持つ、少なくとも1個の芳香環または多縮合環(その少なくとも1個は芳香環である)より成る芳香族炭素環式基を指す。
【0063】
「置換アリール」とは、1〜18個の炭素原子を持つ、少なくとも1個の芳香環または多縮合環(その少なくとも1個は芳香環である)より成る芳香族炭素環式基を指す。この環は、場合により、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、カルビルメルカプト、アルキルアミノ、カルビルオキシ、アミノ、アミド、カルボキシ、ニトロ、メルカプトまたはスルホより成る群から選ばれる1以上の置換基で置換され、これらの一般的置換基は、この説明において定義した対応する基の定義と同じ意義を有する。
【0064】
「ヘテロアリール」とは、4〜9個の炭素原子およびN、OまたはSより成る群から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を有し、この基の少なくとも1個の環が芳香環である、ヘテロ環式基を指す。
【0065】
「置換ヘテロアリール」とは、4〜9個の炭素原子およびN、OまたはSより成る群から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を有し、この基の少なくとも1個の環が芳香環であって、この基が、ハロゲン、アルキル、カルビルオキシ、カルビルメルカプト、アルキルアミノ、アミド、カルボキシ、ヒドロキシ、ニトロ、メルカプトまたはスルホより成る群から選ばれる1以上の置換基で置換されている、ヘテロ環式基を指す。これらの一般的置換基は、この説明において定義した対応する基の定義と同じ意義を有する。
【0066】
「カルボキシ」とは、基−C(O)OR[式中、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり、これらの一般的置換基は、本明細書において定義した対応する基の定義と同じ意義を有する]を指す。
【0067】
「シクロアルキル」とは、3〜15個の炭素原子を含む単環式または多環式アルキル基を指す。
【0068】
「置換シクロアルキル」とは、3〜15個の炭素原子を含み、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、カルビルオキシ、カルビルメルカプト、アリール、ニトロ、メルカプトまたはスルホより成る群から選ばれる1以上の置換基で置換されている、単環式または多環式アルキル基を指す。これらの一般的置換基は、この説明において定義した対応する基の定義と同じ意義を有する。
【0069】
「ヘテロシクロアルキル」とは、その環構造の少なくとも1個の環炭素原子がN、O、SまたはPより成る群から選ばれるヘテロ原子に置き換えられている、3〜15個の炭素原子を含む単環式または多環式アルキル基を指す。
【0070】
「置換ヘテロシクロアルキル」とは、その環構造の少なくとも1個の環炭素原子がN、O、SまたはPより成る群から選ばれるヘテロ原子に置き換えられている、3〜15個の炭素原子を含む単環式または多環式アルキル基を指し、この基は、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、カルビルオキシ、カルビルメルカプト、アリール、ニトロ、メルカプトまたはスルホより成る群から選ばれる1以上の置換基を含んでいる。これらの一般的置換基は、この説明において定義した対応する基の定義と同じ意義を有する。
【0071】
「アリール」という語は、1個の環(例えばフェニル)または複数の縮合した(融合した)環を有する6〜20個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環式基を指し、ここで、少なくとも1個の環は芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、またはアントリル)である。好ましいアリールは、フェニル、ナフチルなどを包含する。
【0072】
「アルケニル」という語は、好ましくは2〜40個の炭素原子、より好ましくは2〜10個の炭素原子、さらに好ましくは2から6個の炭素原子を有する分岐または非分岐不飽和炭化水素基のモノラジカルを指す。好ましいアルケニル基には、エテニル(−CH=CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソ−プロペニル(−C(CH)=CH)などがある。
【0073】
「イミダゾール」とは、一般式:Cのヘテロ環式塩基を指す。
【0074】
「アラルキル基」とは、例えば6〜10個の炭素原子を有する1または2個の芳香族炭化水素環に結合したC1−C6アルキル基であって合計7〜14個の炭素原子を有する基、例えばベンジル、α−ナフチルメチル、インデニルメチル、ジフェニルメチル、2−フェネチル、2−α−ナフチルエチル、3−フェニルプロピル、3−α−ナフチルプロピル、フェニルブチル、4−α−ナフチルブチルまたは5−フェニルペンチル基を指す。
【0075】
「グアニジン」とは一般に炭酸アミドのアミジンを指し、一般式:C(NHを有する。
【0076】
「アラルキル」および「ヘテロアリールアルキル」という語は、それぞれ、上記定義による、アリールまたはヘテロアリールならびにアルキルおよび/またはヘテロアルキルおよび/または炭素環式および/またはヘテロシクロアルキル環系の両者を含む基を指す。
【0077】
記載した工程中の中間体および所望化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、および種々のクロマトグラフィーによって単離精製することができる。中間体は精製せずに次の反応に供することもできる。
【0078】
一つの態様では、本発明は、オリゴマー化合物、および、式I:
【0079】
【化23】

【0080】
{式中、nは1〜10の整数であり;
【0081】
tは1〜nの整数であり;
【0082】
Dは、式II:
【0083】
【化24】

【0084】
[式中、i、j、およびkは、独立して選ばれる0〜10の整数であり;そしてi+j+kの和は少なくとも2の整数に等しく、i+kの和は少なくとも1の整数に等しく;
【0085】
pは、1〜iの整数であり;
【0086】
qは、1〜jの整数であり;
【0087】
rは、1〜kの整数であり;
【0088】
Aは、式III:
【0089】
【化25】

【0090】
(式中、RおよびR’は、水素原子、アミノ酸側鎖、(C1−C10)アルキル、(C1−C10)アルケニル、(C1−C10)アルキニル、(C5−C12)単環式もしくは二環式アリール、(C5−C14)単環式もしくは二環式アラルキル、(C5−C14)単環式もしくは二環式ヘテロアルキル、および(C1−C10)単環式もしくは二環式ヘテロアリール基(N、O、およびSから選ばれる最大5個のヘテロ原子を含む)より成る群から独立して選ばれるが、これらの基は、非置換かまたはハロゲン原子、NO、OH、アミジン、ベンズアミジン、イミダゾール、アルコキシ、(C1−C4)アルキル、NH、CN、トリハロメチル、(C1−C4)アシルオキシ、(C1−C4)モノアルキルアミノ、(C1−C4)ジアルキルアミノ、グアニジノ基、ビスアルキル化もしくはビスアシル化グアニド基より成る群からさらに選ばれる1〜6個の置換基で置換されることもでき;
【0091】
は、NH、CH、またはOである)
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれ;
【0092】
Bは、α、β、またはγアミノ酸残基より成る群から選ばれる成員であり;
【0093】
Cは、式IV:
【0094】
【化26】

【0095】
(式中、RおよびR’は、RおよびR’と同じ群から独立して選ばれ;
【0096】
は、NH、CH、またはOである)
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれる]
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれ;
【0097】
Xは、水素原子、ビオチニル基、システイン残基、RαCO、RαOCO、RαNHCO、RαSO、またはRαNHCS
【0098】
(式中、Rαは、フルオレセインまたは(C1−C6)ピリジルジチオアルキル、(C1−C6)ニトロピリジルジチオアルキル、(C1−C10)アルキル、(C1−C10)アルケニル、(C1−C10)アルキニル、(C5−C12)アリール、(C5−C14)アラルキル、(C1−C5)ヘテロアリール基より成る群から選ばれるが、これらの基は、非置換かまたはハロゲン原子、NO、OH、(C1−C4)アルキル、NH、CN、トリハロメチル、(C1−C4)アシルオキシ、(C1−C4)ジアルキルアミノ、グアニジノ基、SH基、マレイミド基から選ばれる1〜6個の置換基で置換されることもできる)
より成る群から選ばれ;
【0099】
Yは、NH、またはNHRβ、ORβ、およびNRβγ基(RβおよびRγは前記Rαと同意義である)から選ばれる基を表し;そして、
【0100】
j=0である時、基Aのうち少なくとも一つは式(III)(式中、Z=CHである)で示される基であるか、または基Cのうち少なくとも一つは式(IV)(式中、Z=CHである)で示される基である}
で示される新規オリゴマー化合物を合成する方法に関するものである。
【0101】
本発明は、互変異性体およびその混合物を含む全ての可能な異性体を包含する。キラル炭素が二つの異なるエナンチオマーに寄与する場合、両方のエナンチオマーが意図され、この二つのエナンチオマーを分離する方法もまた意図される。
【0102】
ある化合物の塩が所望され、その化合物を所望の塩の形態で製造する場合、これをそのまま精製に付すことができる。ある化合物が遊離状態で製造され、その塩が所望される場合、その化合物を適当な有機溶媒に溶解または懸濁し、その後、酸または塩基を添加して塩を形成させる。
【0103】
本発明はさらに、式Iの化合物の薬学的に許容される塩、ラセミ化合物、および光学異性体に関するものである。本発明化合物は典型的には1以上のキラル中心を含む。したがって本発明は、ラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマーおよび1以上の立体異性体に富む混合物の包含を意図する。記載した、そして特許請求した本発明の範囲は、当該化合物のラセミ型ならびにその個別エナンチオマーおよび非ラセミ混合物を包含する。
【0104】
本発明のさらなる側面において、上記の類似体および誘導体ならびに組成物の使用方法を提供する。これらの方法は、ヒトおよび農業的疾患および状態を治療するための本発明化合物の使用を包含する。ヒトの疾患および状態の例には、炎症、組織移植、癌性疾患、マラリア、アフリカ睡眠病、シャーガス病、トキソプラスマ症、乾癬、再狭窄、消化性潰瘍の治療、緑内障、IBD、クローン病およびその他の炎症性腸疾患、真菌性、細菌性、微生物性、ウイルス性、および寄生虫性疾患があるが、これらに限定される訳ではない。
【0105】
本明細書で使用する「細菌性疾患」とは、細菌によって引き起こされる感染症を指し、例えば以下のものを包含する:Legionella、レジオネラ症に関連する細菌;Escherichia coli O157:H7:1982年に発見され、通常は汚染食物によって伝播するこの細菌は、溶血性尿毒症症候群の発病原因である;Borrelia burgdorferi:1982年に米国で発見され、ライム病の原因であると確認されている;Vibrio cholerae O139:真性コレラに関連する新しい菌株;Helicobacter pyroli:消化管潰瘍に関連する細菌。いっそう広範囲の抗生物質に耐性となりつつある細菌に関連する感染症もまた指摘されている。したがって、多くの地域において、最初に意図した安価な抗生物質は、以下の細菌に関連する感染症に対して有効性を失ってしまっている:Bacillus anthracis、Escherichia coli、Streptococcus pneumoniae、Enterococcus faecalis、Mycobacterium tuberculosis、Pseudomonas aeruginosa、Neisseria gonorrhoca、Pneumococcus、Shigella、Staphylococcus aureus(ブドウ球菌性トキシックショックに関連)およびMoraxella catarrhalis。
【0106】
本発明の任意の態様によれば、本発明化合物によって治療される細菌感染症は、例えばSalmonella typhi、Shigella dysenteria、Pseudomonas cepacia、Bacillus cereus、Salmonella、Clostridium perfringens、Campylobacter、Listeria monocytogenes、Vibrio parahaemolyticus、Clostridium botulinum、Variola major、Francisella tularensis、Yersinia pestis、Staphylococcus aureusの多剤耐性株またはEnterococcus faecalisのバンコマイシン耐性株を包含する。
【0107】
「真菌疾患」とは、例えばカンジダ症に関連するCandida albicans、Aspergillus nidulans、アスペルギルス症に関連するAspergillus parasiticus、およびNeurospora crassaを包含する病原性真菌によって引き起こされる感染症を表す。真菌疾患は、病原性真菌、特に不完全菌類、とりわけmonilialesの科、またはhyprocrealesもしくはsphaerialesの科の真菌によって引き起こされる疾患を包含する。
【0108】
「癌性疾患」とは、特に癌腫、とりわけ消化器系(肝、腸、食道、膵臓など)、泌尿生殖器系(子宮、前立腺、腎、膀胱など)、内分泌腺、眼、皮膚、乳房、骨、神経系、胸郭(肺など)の腫瘍を表す。
【0109】
治療的投与
【0110】
本発明のもう一つの好ましい態様は、本発明化合物を薬学的に許容される形態で含む治療用組成物を包含する。さらに別の好ましい態様では、本発明は、有効量の本発明化合物を薬学的に許容される形態で投与することを含む、哺乳動物、例えばヒトにおいて疾患の治療および/または予防をするための方法を包含する。本発明化合物は場合により、少なくとも一つの担体、賦形剤、別の生物活性物質またはそれらの任意の組み合わせと共に投与できる。
【0111】
好適な投与経路は、経口(oral)、経口(peroral)、直腸、vassal、局所(眼内、バッカルおよび舌下を包含する)、膣および非経口(皮下、筋肉内、硝子体内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を包含する)を包含する。好ましい投与経路は、臨床医の知悉する事柄の中でも、患者の状態、化合物の毒性および感染部位に依拠する。
【0112】
本発明の治療用組成物は、約1%〜約95%の活性成分を含み、単一用量剤型では好ましくは約20%〜約90%の活性成分、そして単一用量でない剤型では好ましくは約5%〜約20%の活性成分を含む。単位用量形態は、例えば被覆錠剤、錠剤、アンプル、バイアル、坐剤またはカプセル剤である。他の剤型は、例えば軟膏、クリーム、ペースト、泡剤、チンキ剤、リップスティック、点滴剤、スプレー、分散剤などである。例として、活性成分約0.05g〜約1.0gを含有するカプセル剤がある。
【0113】
本発明の医薬組成物は、それ自体既知の方法、例えば常套的混合、造粒、被覆、溶解または凍結乾燥工程により製造する。
【0114】
好ましくは、活性成分の溶液、さらに懸濁液または分散液、特に等張水溶液、分散液または懸濁液を使用し、例えば活性物質を単独で、または担体、例えばマンニトールと共に含む凍結乾燥組成物の場合、これらを使用前に調製することが可能である。この医薬組成物は滅菌することができ、そして/または賦形剤、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節用塩類および/または緩衝剤を含むことができ、これらは、それ自体既知の方法、例えば常套的溶解または凍結乾燥工程によって製造する。前記の溶液または懸濁液は、増粘物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンを含むことができる。
【0115】
薬学的に許容される形態は、例えばゲル、ローション、スプレー、散剤、丸剤、錠剤、制御放出錠剤、持続放出錠剤、放出速度制御錠剤、腸溶錠、エマルジョン、液体、塩、ペースト、ゼリー、エアロゾル、軟膏、カプセル剤、ゲルカプセル剤、または当業者にとって明らかなその他任意の適当な形態を包含する。
【0116】
油中懸濁液は、油性成分として、注射目的に常用される植物油、合成油または半合成油を含む。言及できる油は特に、酸成分として8−22、特に12−22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸、例えばラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、または対応する不飽和酸、例えばオレイン酸、エライジン酸、尿酸、ブラシジン酸またはリノール酸を含む液体脂肪酸エステルであり、抗酸化剤、例えばビタミンE、β−カロテンまたは3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを適宜添加する。これらの脂肪酸エステルのアルコール成分は、6個以上の炭素原子を含まず、一価または多価、例えば一価、二価または三価アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、もしくはペンタノール、またはそれらの異性体であるが、特にグリコールおよびグリセロールである。したがって脂肪酸エステルは、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、「Labrafil M 2375」(Gattefosee(パリ)製ポリオキシエチレングリセロールトリオレアート)、「Labrafil M 1944」(アプリコット核油のアルコーリシスにより製造された、そしてグリセリドおよびポリエチレングリコールエステルで構成された不飽和ポリグリコール化グリセリド;Gattefosee(パリ)製)、「Labrasol」(TCMのアルコーリシスにより製造された、そしてグリセリドおよびポリエチレングリコールエステルで構成された飽和ポリグリコール化グリセリド;Gattefosee(パリ)製)、および/または「Miglyol 812」(Huls AG(ドイツ)製の鎖長C.sub.8〜C.sub.12の飽和脂肪酸のトリグリセリド)、ならびに特に植物油、例えば綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油、そして特に落花生油である。
【0117】
注射用組成物の製造は無菌条件下で常法により実施し、例えばアンプルまたはバイアル中へ充填し、容器を密封するなどのように実施する。
【0118】
例えば、経口使用のための医薬組成物は、活性成分を1以上の固体担体と混合し、得られた混合物を適宜造粒し、そして所望によりこの混合物または顆粒を、適宜さらなる賦形剤を添加して錠剤または被覆錠剤核に加工することによって得ることができる。
【0119】
好適な担体は特に、増量剤、例えば糖、例えば乳糖、蔗糖、マンニトールまたはソルビトールセルロース製品および/または燐酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウム、もしくはリン酸水素カルシウム、ならびにさらなる結合剤、例えば澱粉、例えばトウモロコシ、小麦、米または馬鈴薯澱粉、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、ならびに/または所望により崩壊剤、例えば上記の澱粉、およびさらなるカルボキシメチル澱粉、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。さらなる賦形剤は特に、流動調節剤および潤滑剤、例えばサリチル酸、タルク、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコール、またはその誘導体である。
【0120】
被覆錠剤核には、適切ならば胃液に抵抗性のある適当な被覆を施すことができ、使用される被覆はとりわけ、適切ならばアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタンを含む濃縮糖溶液、適当な有機溶媒もしくは溶媒混合物中の被覆剤溶液、または、胃液抵抗性の被覆を製造するためには、適当なセルロース製品、例えばフタル酸アセチルセルロースもしくはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの溶液である。
【0121】
本発明の目的のために、「制御放出」という語は、治療活性化合物が、その製剤から、制御された速度で、または特定部位、例えば腸で、またはその両方で放出され、その結果、治療上有益な血中レベル(但し毒性レベル未満)が長時間維持されることを意味する(例えば12時間または24時間剤型)。
【0122】
本明細書で使用する「速度制御ポリマー」という語は、当該化合物のインビボ放出を遅延させることのできる、親水性ポリマー、疎水性ポリマーまたは親水性および/または疎水性ポリマーの混合物を包含する。さらに、薬物、薬物懸濁液、または薬物マトリックスの腸溶被覆を作るため、このような多くのポリマーが利用できる。過度の実験をせずに被覆材の厚さ、透過性、および溶解性を改変して所望の制御放出プロファイル(例えば、薬物放出速度および位置)を得ることは、当業者の技術の範囲内にある。
【0123】
本発明に使用される好適な制御放出ポリマーの例は、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリ(エチレン)オキシド;エチルセルロースおよびメチルセルロースといったアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース;親水性セルロース誘導体;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドン;酢酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;酢酸フタル酸セルロース;酢酸トリメリット酸セルロース;酢酸フタル酸ポリビニル;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリ(アルキルメタクリラート);およびポリ(ビニルアセタート)を包含する。その他の好適な疎水性ポリマーには、アクリル酸またはメタクリル酸エステルから誘導されるポリマーまたはコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマー、ゼイン、ロウ、シェラックおよび硬化植物油がある。
【0124】
正しい放出速度を確実とするため、本発明に係る制御放出製剤は、約5および75重量%、好ましくは約20および50重量%、より好ましくは約30〜45重量%の制御放出ポリマー、および、約1〜40重量%、好ましくは約3〜25重量%の活性化合物を含有する。本発明の制御放出製剤は、好ましくは助剤、例えば希釈剤、滑沢剤および/または融解結合剤を含む。好ましくは、賦形剤はその製剤の水分が最小となるように選択する。好ましくは、製剤は抗酸化剤を含む。好適な希釈剤は、薬学的に許容される不活性増量剤、例えば微結晶セルロース、乳糖、二塩基性燐酸カルシウム、単糖類、および/または前記の任意のものの混合物を包含する。希釈剤は水溶性希釈剤が適当である。希釈剤の例には、微結晶セルロース、例えばAvicel ph112、Avicel pH101およびAvicel pH102;乳糖、例えば乳糖一水和物、無水乳糖、およびPharmatose DCL21;二塩基性燐酸カルシウム、例えばEmcompress;マンニトール;澱粉;ソルビトール;蔗糖;およびグルコースがある。希釈剤は、圧縮性に留意しながら個々の製剤に適合するよう注意深く選択する。圧縮しようとする粉末の流動性に作用する物質を包含する、好適な滑沢剤は、例えばコロイド状二酸化珪素、例えばAerosil 200;タルク;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸カルシウムである。好適な低融点結合剤には、ポリエチレングリコール、例えばPEG 6000;セトステアリルアルコール;セチルアルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ステアリン酸ポリオキシエチレン;ポロキサマー;およびロウがある。
【0125】
制御放出製剤中での安定性を改善するため、抗酸化化合物を配合できる。好適な抗酸化剤には、メタ重亜硫酸ナトリウム;トコフェロール、例えばα、β、またはδ−トコフェロールトコフェロールエステルおよびα−トコフェロールアセタート;アスコルビン酸またはその薬学的に許容される塩;パルミチン酸アスコルビル;没食子酸アルキル、例えば没食子酸プロピル、Tenox PG、Tenox s-1;亜硫酸塩または薬学的に許容されるその塩;BHA;BHT;およびモノチオグリセロールがある。
【0126】
本発明に係る制御放出製剤は、好ましくは、当該化合物を、制御放出ポリマーおよび補助的賦形剤と混和し、その後直接圧縮することによって製造できる。この製剤を製造する別の方法には、溶融造粒がある。好ましい溶融造粒技術は、速度制御ポリマーおよび希釈剤と共に溶融造粒し、その後この顆粒を圧縮すること、そして、速度制御ポリマーおよび希釈剤と引き続き混合しながら溶融造粒し、その後この混合物を圧縮することを包含する。所望により圧縮前に、混合物および/または顆粒を篩過し、そして/または助剤と混合し、容易に流動する均質な混合物を取得する。
【0127】
本発明に係る経口投与形態の制御放出製剤は、錠剤、被覆錠剤、腸溶被覆錠剤の形態とすることができ、または、ペレットもしくはミニ錠剤形態のような多粒子とすることができる。所望により、硬または軟ゼラチンカプセル剤のようなカプセル剤にこの多粒子を入れることもできる。所望によりこの多粒子経口投与形態は、異なったインビトロおよび/またはインビボ制御放出プロファイルを有する少なくとも二集団のペレットまたはミニ錠剤の混合物を含むことができる。所望により、このペレットまたはミニ錠剤の集団のうち一方が、即時放出多粒子、例えば従来手段で製造された多粒子を含むことができる。
【0128】
所望により、本発明に係る制御放出マトリックス錠剤または多粒子を、制御放出ポリマー層で被覆し、さらなる制御放出性を与えることができる。この制御放出層を形成するために使用できる好適なポリマーは、上に列挙した速度制御ポリマーを包含する。
【0129】
所望により本発明の錠剤、ペレットまたはミニ錠剤に、遮光および/または化粧品用薄膜コーティング、例えば薄膜形成剤、顔料、抗付着剤および可塑剤を提供することができる。このような薄膜形成剤は、速溶性成分、例えば低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えばMethocel E5もしくはD14またはPharmacoat 606(Shin-Etsu)から成っていてよい。薄膜コーティングはさらに、薄膜コーティング方法に常用される賦形剤、例えば遮光性顔料、例えば酸化鉄、または二酸化チタン、抗付着剤、例えばタルク、ならびに適当な可塑剤、例えばPEG 400、PEG 6000、およびフタル酸ジエチルまたはクエン酸トリエチルを含有させることもできる。
【0130】
本発明の制御放出ポリマーはヒドロゲルマトリックスで構成されていてよい。例えば、この化合物を、速度制御ポリマー、例えばHPMC、または湿潤時に膨潤してヒドロゲルを形成するポリマーの混合物を含有する剤型に圧縮することができる。この剤型からの放出速度は、膨潤した錠剤塊からの拡散と、錠剤表面の経時的な浸食の両者によって制御される。放出速度は、錠剤あたりのポリマー量および使用ポリマーの固有粘度の両者によって制御され得る。
【0131】
例えば異なる用量の活性成分を識別または特徴付けるため、色素または顔料を錠剤または被覆錠剤の被覆に混合できる。
【0132】
経口使用できる医薬組成物はさらに、硬ゼラチンカプセル剤ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールを含む密封した軟ゼラチンカプセル剤である。硬カプセル剤は、例えば増量剤、例えばトウモロコシ澱粉、結合剤および/または潤滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、ならびに適当ならば安定剤と混合した、顆粒形態の活性成分を含有できる。軟カプセル剤では、活性成分を好ましくは適当な液体賦形剤、例えば脂肪性油、パラフィン油または液体ポリエチレングリコールまたはエチレングリコールもしくはプロピレングリコールの脂肪酸エステルに溶解または懸濁し、例えばポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル型の安定剤および洗浄剤を添加することもまた同様に可能である。
【0133】
その他の経口投与剤型は、例えば常法で製造したシロップ剤であり、これは例えば活性成分を懸濁形態で約5%〜20%、好ましくは約10%、または、例えば5または10mlを量り取った時に適当な個別用量となるような類似濃度で含む。例えば牛乳中のシェークを調製するための粉末または液体濃縮剤の剤型もある。このような濃縮剤は単位用量に包装することもできる。
【0134】
直腸に使用できる医薬組成物は、例えば活性成分を坐剤用基剤と組み合わせて含む坐剤である。好適な坐剤用基剤は、例えば天然または合成トリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコールまたは高級アルカノールである。
【0135】
非経口投与に好適な組成物は、水溶性形態の活性成分、例えば水溶性塩の水溶液、または水性注射用懸濁液であり、これらは増粘性物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストラン、そして適当ならば安定剤を含む。活性成分は、適当ならば賦形剤と共に、凍結乾燥品の形態で提供し、非経口投与前に適当な溶媒を加えて溶解することもできる。例えば非経口投与に使用できる溶液は、注入溶液としても使用できる。好ましい保存剤は、例えば、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、または抗微生物剤、例えばソルビン酸もしくは安息香酸である。
【0136】
軟膏は、70%以下の、但し好ましくは20〜50%の水または水相を含む、水中油型エマルジョンである。油相は特に、炭化水素、例えばワセリン、パラフィン油または固形パラフィンより成り、好ましくは適当なヒドロキシ化合物、例えば脂肪族アルコールまたはそのエステル、例えばセチルアルコールまたは羊毛脂アルコール、例えば羊毛脂を、水結合能を改善するために含む。乳化剤は、対応する親油性物質、例えばソルビタン脂肪酸エステル(Span)、例えばオレイン酸ソルビタンおよび/またはイソステアリン酸ソルビタンである。水相への添加剤は、例えば保湿剤、例えば多価アルコール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールおよび/またはポリエチレングリコール、または保存剤および香気物質である。
【0137】
油性軟膏は無水性であって、基剤として特に炭化水素、例えばパラフィン、ワセリンまたはパラフィン油、さらに天然または半合成脂肪、例えば水素化ココナツ脂肪酸トリグリセリド、または好ましくは硬化油、例えば硬化落花生油またはヒマシ油、そしてさらに、グリセロールの脂肪酸部分エステル、例えばグリセロールモノ−および/またはジステアラート、および例えば脂肪族アルコールを含む。これらもまた、乳化剤および/または、水の取り込みを増やす軟膏に関して述べた添加物を含有する。
【0138】
クリームは、50%以上の水を含む水中油型エマルジョンである。使用する油性基剤は特に、脂肪族アルコール、例えばラウリル、セチルもしくはステアリルアルコール、脂肪酸、例えばパルミチン酸もしくはステアリン酸、液体ないし固体ロウ、例えばミリスチン酸イソプロピル、羊毛脂もしくは蜜ロウ、および/または炭化水素、例えばワセリン(流動パラフィン)もしくはパラフィン油である。乳化剤は、主に親水性を持つ界面活性物質であり、例えば、対応する非イオン性乳化剤、例えば多価アルコールの脂肪酸エステルまたはそのエチレンオキシ付加物、例えばポリグリセリン酸脂肪酸エステルまたはポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、およびさらに、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテルまたはポリオキシエチレン脂肪酸エステル、または対応するイオン性乳化剤、例えば脂肪族アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムまたはステアリル硫酸ナトリウム(これらは通常、脂肪族アルコール、例えばセチルステアリルアルコールまたはステアリルアルコールの存在下で使用する)がある。水相への添加物は特に、クリームが乾燥するのを防ぐ物質、例えば多価アルコール、例えばグリセロール、ソルビトール、プロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコール、ならびにさらに保存剤および香気物質である。
【0139】
ペーストとは、分泌物吸収粉末成分、例えば金属オキシド、例えば酸化チタンまたは酸化亜鉛、そしてさらにタルクおよび/または珪酸アルミニウム(これらは存在する水分または分泌物を結合させる役割を有する)を含むクリームおよび軟膏である。
【0140】
泡剤は加圧容器から投与され、エアロゾル中に存在する水中油型液体エマルジョンである。推進剤ガスとして、ハロゲン化炭化水素、例えばクロロフルオロ低級アルカン、例えばジクロロフルオロメタンおよびジクロロテトラフルオロエタン、または好ましくは非ハロゲン化気体状炭化水素、空気、N.sub.2.O、または二酸化炭素が使用される。使用される油相は特に、軟膏およびクリームに対して上に記載したものであり、そこに記載した添加剤もまた同様に使用される。
【0141】
チンキ剤および液剤は通常、水性エタノール性基剤を含み、ここに、蒸発を減じる保湿剤、例えば多価アルコール、例えばグリセロール、グリコールおよび/またはポリエチレングリコール、ならびにリオイリング物質、例えば低級ポリエチレングリコールを伴う脂肪酸エステル、即ち、エタノールと共に皮膚から除去された油性物質を補うための、水性混合物に可溶な親油性物質、そして、必要ならばその他の賦形剤および添加剤を混合する。
【0142】
本発明はさらに、上に述べた疾患状態を治療するためのプロセスまたは方法に関するものである。本化合物は、予防的または治療的に、そのまままたは医薬組成物の形態で、好ましくは記載の疾患に有効な量で投与できる。そのような治療を必要とする温血動物、例えばヒトに対しては、本化合物を、特に医薬組成物の形態で使用する。日用量で約0.1〜約5g、好ましくは0.5g〜約2gの本発明化合物を、約70kgの体重に対して投与する。
【0143】
本明細書に記載の実施例および態様は例示目的であるに過ぎず、それらを考慮した様々な置き換え、修飾または変更が、当業者に示唆され、且つそれらが本出願の精神および範囲内に包含され、付記する請求項の範囲内にあると考えられるという事は明白である。以下の実施例は、好ましい態様の例として記載するものであり、決して本発明を限定するものと解してはならない。例えば、成分の相対量は様々な所望効果を達成するために変更することができ、追加の成分を加えることができ、そして/または記載した1以上の成分の代わりに類似成分を使用できる。本明細書に引用する全ての刊行物、特許、および特許出願は、引用によりその全内容を本明細書の一部とする。
【0144】
本発明化合物の合成(表3を参照されたい)
【0145】
Mol−6およびMol−7(Z=CH
【0146】
本発明化合物の製造方法は、γアミノ酸からのペプチド合成の既知方法の遂行を含み、このアミノ酸はFmocまたはBocによってN保護されている。この合成法はαペプチドについて知られている方法と同一である。
【0147】
N保護γアミノ酸の製造は、既に先行文献に記載されている(Hintermann et al., Helv. Chim. Acta 1998, 41, 983-1002)。
【0148】
本発明方法の有利な一態様によれば、γアミノ酸を、Smrcina et al., Tetrahedron, 1997, 53, 12867-12874に従って製造する。
【0149】
本発明の方法の遂行に使用されるN−Boc−保護γアミノ酸は、対応する天然αアミノ酸から製造される。このアミノ酸を、まずカルボジイミド(例えばEDC)および4−ジメチルアミノピリジンの存在下にメルドラム酸でアシル化することによって変換する。ジクロロメタンおよび酢酸の混合物中、NaBHで還元した後、得られた化合物をトルエン中のピロリドン中で110℃で4時間環化する。塩基性媒質(MeOH中のNaOH)中で開環した後、このγアミノ酸が15〜60%の収率で得られる。
【0150】
好ましいγアミノ酸は以下のとおりである:
【0151】
【表1】

【0152】
次に、ポリスチレン型のMBHA(4−メチルベンズヒドリルアミン)樹脂上で、25マイクロモルスケールの半自動モードペプチドシンセサイザーを用いてペプチド鎖の組み立てを行う。標準的Boc−アミノ酸の代わりにN−Boc−保護γアミノ酸(3当量)を使用し、これらを、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムの混合物を用いる古典的カップリング法を用いて組み込む。
【0153】
in situ中和を実施するため、ジイソプロピルエチルアミン(12当量)の存在下にヘキサフルオロホスファート)/HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)(3当量/3当量)。二重カップリングを系統的に実施する。このカップリング反応の終了を、ニンヒドリンを用いるカイザー試験で確認する。合成が終了したならば、樹脂をジクロロメタンおよびエーテルで洗浄し、減圧乾燥する。次いでこのペプチド/樹脂を1時間のHF(フッ化水素酸)処理によって開裂し、ペプチドをエーテルを用いて沈殿させると粗製ペプチドが得られ、その後これをHPLC精製し、凍結乾燥する。各ペプチドの同一性を質量分析によって管理する。合成されたペプチドの純度は、C18型逆相カラムで水/アセトニトリル混合物を用いるHPLC分析ベースで94%以上である。
【0154】
Mol−1、Mol−2、Mol−3、Mol−4、およびMol−5(Z=NH)
【0155】
ポリスチレン型のMBHA樹脂上で、25マイクロモルスケールの半自動モードペプチドシンセサイザーを用いてペプチド鎖の組み立てを行う。in situ中和を実施するため、ジイソプロピルエチルアミン(12当量)の存在下に混合物BOP/HOBt(3当量/3当量)による古典的カップリング法を用いて、N−Boc−保護γアミノ酸(3当量)を組み込む。二重カップリングを系統的に実施する。このカップリング反応の終了を、ニンヒドリンを用いるカイザー試験で確認する。カップリングの後、TFA(トリフルオロ酢酸)処理によってBoc基を除去する。
【0156】
以下のモノマーは、(1)Kim, J. M.; Bi, Y.; Paikoff, S. J.; Schultz, P. G., Tetrahedron Lett., (1996) 37, 5305、(2)Boeijen, A., van Ameijde, J.; Liskamp, R. M. J., J. Org. Chem., (2001), 66, 8454および(3)Guichard, G.; Semetey, V.; Didierjean, C.; Aubry, A.; Briand, J. -P.; Rodriguez, M., J. Org. Chem., (1999) 64, 8702に従って製造された保護ジアミンから誘導される、スクシンイミジルまたはパラニトロフェニルカルバメートである。
【0157】
これらのモノマーのカップリングは一般に、DMF(ジメチルホルムアミド)(4当量、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)(4当量)中2x2時間)中で実施する。最後のBoc基を脱保護した後、同条件で樹脂をイソプロピルイソシアナートで処理する。
【0158】
合成が終了したならば、樹脂をジクロロメタンおよびエーテルで洗浄し、減圧乾燥する。次にこのペプチド/樹脂を1時間のHF処理によって開裂し、ペプチドをエーテルを用いて沈殿させると粗製オリゴマーMol−1〜Mol−5が得られ、その後これらをHPLC精製し、凍結乾燥する。各ペプチドの同一性を質量分析によって管理する。合成されたペプチドの純度は、C18型逆相カラムで水/アセトニトリル混合物を用いるHPLC分析ベースで94%以上である。
【0159】
Z=Oである本発明化合物については、Cho, C. Y.; Youngquist, R. S.; Paikoff, S. J.; Beresini, M. H.; Hebert, A. R.; Berleau, L. T.; Liu, C. W.; Wemmer, D. E.; Keough, T.; Schultz, P. G.; J. Am. Chem. Soc. (1998) 120(31); 7706-7718に従ってモノマーGP−D−Wを製造する。
【0160】
好気性細菌のインビトロ感受性
【0161】
材料および方法
【0162】
4種類の菌株を選択した:Escherichia Coli ATCC25922、Staphylococcus Aureus ATCC25923、Pseudomonas Aeruginosa ATCC27853および臨床分離されたメチシリン耐性Staphylococcus Aureus株。最小阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)を決定するため、ミューラー・ヒントンブロス中での希釈法によって当該分子の抗菌活性を調べた。少なくとも二つの独立したアッセイを行った。分子の粉末を蒸留水で2.56mg/mL濃度に溶解して保存溶液を得、連続2倍希釈溶液を調製した。0.5マクファーランド標準に合致する濁度に調節した生理食塩水中の一夜増殖物由来の直接コロニー懸濁液を使用して、細菌接種物を標準化し、10CFU/mLおよび10CFU/mLの間の密度が得られるよう希釈した。分子溶液100μLと共に接種物900μLを入れた管を空気中、37℃で18〜20時間インキュベートした。純度および接種物密度ならびに透明な管中の生菌パーセンテージを、ヒツジ血液寒天上でのプレート計数によって確認した。生物の生存性についての対照として、分子溶液を含有しないブロスに、選択した各菌株を接種した(増殖対照)。バンコマイシンに対するS.Aureus株の感受性を、内部対照およびメリチンの活性として使用した。
【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
Mol−8は、式:
【0166】
【化27】

【0167】
で示される尿素オリゴマーである。
【0168】
これらの結果は、ハイブリッドオリゴマーMol−4が、対応する尿素オリゴマーMol−8より強力であることを示す。よってこれらの結果は、C末端へのγアミノ酸残基の挿入が、抗菌化合物の力価の増大に重要であることを示す。本発明の好ましい態様を本明細書に示し説明してきたが、このような態様は当然の事ながら例示のためにのみ提供されている。本発明の精神を逸脱することなく、数多くの変法、変更および置換が当業者には想起できるであろう。したがって、付記する請求項はそれらの変法が全て本発明の精神および範囲内に包含されることを意図している。
【0169】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


{式中、nは1〜10の整数であり;
tは1〜nの整数であり;
Dは、式II:
【化2】


[式中、i、j、およびkは、独立して選ばれる0〜10の整数であり;そして、i+j+kの和は少なくとも2に等しい整数であり、i+kの和は少なくとも1に等しい整数であり;
pは、1〜iの整数であり;
qは、1〜jの整数であり;
rは、1〜kの整数であり;
Aは、式III:
【化3】


(式中、RおよびR’は、水素原子、アミノ酸側鎖、(C1−C10)アルキル、(C1−C10)アルケニル、(C1−C10)アルキニル、(C5−C12)単環式もしくは二環式アリール、(C5−C14)単環式もしくは二環式アラルキル、(C5−C14)単環式もしくは二環式ヘテロアルキル、および(C1−C10)単環式もしくは二環式ヘテロアリール基(N、O、およびSから選ばれる最大5個のヘテロ原子を含む)より成る群から独立して選ばれるが、これらの基は、非置換かまたはハロゲン原子、NO、OH、アミジン、ベンズアミジン、イミダゾール、アルコキシ、(C1−C4)アルキル、NH、CN、トリハロメチル、(C1−C4)アシルオキシ、(C1−C4)モノアルキルアミノ、(C1−C4)ジアルキルアミノ、グアニジノ基、ビスアルキル化もしくはビスアシル化グアニド基より成る群からさらに選ばれる1〜6個の置換基で置換されることもでき;
は、NH、CH、またはOである)
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれ;
Bは、α、β、またはγアミノ酸残基より成る群から選ばれる成員であり;
Cは、式IV:
【化4】


(式中、RおよびR’は、RおよびR’と同じ群から独立して選ばれ;
は、NH、CH、またはOである)
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれる]
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれ;
Xは、水素原子、ビオチニル基、システイン残基、RαCO、RαOCO、RαNHCO、RαSO、またはRαNHCS
(式中、Rαは、フルオレセインまたは(C1−C6)ピリジルジチオアルキル、(C1−C6)ニトロピリジルジチオアルキル、(C1−C10)アルキル、(C1−C10)アルケニル、(C1−C10)アルキニル、(C5−C12)アリール、(C5−C14)アラルキル、(C1−C5)ヘテロアリール基より成る群から選ばれるが、これらの基は、非置換かまたはハロゲン原子、NO、OH、(C1−C4)アルキル、NH、CN、トリハロメチル、(C1−C4)アシルオキシ、(C1−C4)ジアルキルアミノ、グアニジノ基、SH基、マレイミド基から選ばれる1〜6個の置換基で置換されることもできる)
より成る群から選ばれ;
Yは、NH、またはNHRβ、ORβ、およびNRβγ基(RβおよびRγは前記Rαと同意義である)から選ばれる基を表し;そして、
j=0である時、基Aのうち少なくとも一つは式(III)(式中、Z=CHである)で示される基であるか、または基Cのうち少なくとも一つは式(IV)(式中、Z=CHである)で示される基である}
で示されるオリゴマー化合物。
【請求項2】
式(II)においてi+k=1であり、jが1より大であるかまたは1に等しい、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項3】
式I:
【化5】


{式中、nは1〜10の整数であり;
tは1〜nの整数であり;
Dは、式II:
【化6】


[式中、i、j、およびkは、独立して選ばれる0〜10の整数であり;そして、i+j+kの和は少なくとも2に等しい整数であり、i+kの和は少なくとも1に等しい整数であり;
pは、1〜iの整数であり;
qは、1〜jの整数であり;
rは、1〜kの整数であり;
Aは、式(V)および(VI):
【化7】


(式中、Rは、水素原子、アミノ酸側鎖、(C1−C10)アルキル、(C1−C10)アルケニル、(C1−C10)アルキニル、(C5−C12)単環式もしくは二環式アリール、(C5−C14)単環式もしくは二環式アラルキル、(C5−C14)単環式もしくは二環式ヘテロアルキルおよび(C1−C10)単環式もしくは二環式ヘテロアリール基(N、O、およびSから選ばれる最大5個のヘテロ原子を含む)より成る群から選ばれる成員であるが、これらの基は、非置換かまたはハロゲン原子、NO、OH、アミジン、ベンズアミジン、イミダゾール、アルコキシ、(C1−C4)アルキル、NH、CN、トリハロメチル、(C1−C4)アシルオキシ、(C1−C4)モノアルキルアミノ、(C1−C4)ジアルキルアミノ、グアニジノ基、ビスアルキル化もしくはビスアシル化グアニド基より成る群からさらに選ばれる1〜6個の置換基で置換されることもでき;
は、NH、CH、またはOである]
より成る群から選ばれ;
Bは、α、β、またはγアミノ酸残基より成る群から選ばれる成員であり;
Cは、式VIIおよびVIII:
【化8】


(式中、Rは、Rと同じ群から独立して選ばれ;
は、NH、CH、またはOである)
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれる]
で示される部分より成る群の成員から独立して選ばれ;
Xは、水素原子、ビオチニル基、システイン残基、RαCO、RαOCO、RαNHCO、RαSO、またはRαNHCS:
(式中、Rαは、フルオレセインまたは(C1−C6)ピリジルジチオアルキル、(C1−C6)ニトロピリジルジチオアルキル、(C1−C10)アルキル、(C1−C10)アルケニル、(C1−C10)アルキニル、(C5−C12)アリール、(C5−C14)アラルキル、(C1−C5)ヘテロアリール基より成る群から選ばれるか、これらの基は、非置換かまたはハロゲン原子、NO、OH、(C1−C4)アルキル、NH、CN、トリハロメチル、(C1−C4)アシルオキシ、(C1−C4)ジアルキルアミノ、グアニジノ基、SH基、マレイミド基から選ばれる1〜6個の置換基で置換されることもできる)
より成る群から選ばれ;
Yは、NH、またはNHRβ、ORβ、およびNRβγ基(RβおよびRγは前記Rαと同意義である)から選ばれる基を表し;そして、
j=0である時、基Aのうち少なくとも一つは式(III)または(IV)(式中、Z=CHである)で示される基であるか、または基Cのうち少なくとも一つは式(V)または(VI)(式中、Z=CHである)で示される基である]
で示される、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項4】
式Iが、X−[(A)−(B)−(C)−Yを含む、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項5】
Bが、式(IX):
【化9】


[式中、Rは、請求項1に記載のRを定義する群から独立して選ばれ、mは0、1または2である]
で示される部分を含む、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項6】
基R、R、およびRの少なくとも約10%が塩基性側鎖を含み、残りのパーセンテージが芳香族側鎖を含む、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項7】
基R、R、およびRの約20%〜約70%が塩基性側鎖を含む、請求項6に記載のオリゴマー化合物。
【請求項8】
基R、R、およびRの約30%〜約60%が塩基性側鎖を含む、請求項7に記載のオリゴマー化合物。
【請求項9】
塩基性側鎖が、リジン、アルギニン、ホモアルギニン、オルニチンの塩基性アミノ酸側鎖;第一、第二もしくは第三アミノ基を含むアルキルまたはアラルキル鎖;イミダゾール;グアニジン;アミジン;ベンズアミジン;およびそれらの組み合わせより成る群から選ばれる成員である、請求項8に記載のオリゴマー化合物。
【請求項10】
芳香族側鎖が、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンの芳香族アミノ酸側鎖;メチル、イソプロピル、tert−ブチル、sec−ブチル、ブチル、およびプロピルより成る群から選ばれる脂肪族鎖;アルキル;アルケニル;アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、およびそれらの組み合わせより成る群から選ばれる成員である、請求項9に記載のオリゴマー化合物。
【請求項11】
、R、またはRがフェニルアラニンの側鎖を含む時、R、R、またはRがベンジル基に相当する、請求項10に記載のオリゴマー化合物。
【請求項12】
、R、またはRがチロシンの側鎖を含む時、R、R、またはRが4−ヒドロキシベンジル基に相当する、請求項10に記載のオリゴマー化合物。
【請求項13】
、R、またはRがトリプトファンの側鎖を含む時、R、R、またはRが(3−インドリル)メチル基に相当する、請求項10に記載のオリゴマー化合物。
【請求項14】
Bが式(IX)で示されるαアミノ酸残基を含み、m=0である、請求項5に記載のオリゴマー化合物。
【請求項15】
Bが式(IX)で示されるβアミノ酸残基を含み、m=1である、請求項5に記載のオリゴマー化合物。
【請求項16】
Bが式(IX)で示されるγアミノ酸残基を含み、m=2である、請求項5に記載のオリゴマー化合物。
【請求項17】
Aが式(V)または(VI)で示される基を含み、ZがNHまたはCHである、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項18】
Bが式(IX):
【化10】


[式中、Rは、請求項1に記載のRを定義する群から独立して選ばれ、mは0、1または2である]
で示される部分を含む、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項19】
Bが式(IX)で示されるγアミノ酸残基を含み、m=2である、請求項18に記載のオリゴマー化合物。
【請求項20】
、R、またはRが天然アミノ酸の側鎖を含む、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項21】
(i+j+k)・n≦15である、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項22】
(i+j+k)・n=約6〜約13の整数である、請求項21に記載のオリゴマー化合物。
【請求項23】
(i+j+k)・n=約7〜約10の整数である、請求項22に記載のオリゴマー化合物。
【請求項24】
(i+j+k)・n=8である、請求項23に記載のオリゴマー化合物。
【請求項25】
n=1、i=7、j=1、そしてk=0である、請求項24に記載のオリゴマー化合物。
【請求項26】
式(I)が、X−(A−(B−Yを含む、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項27】
式(I)が、X−(A−B−Yを含み、pが1〜7まで変化する、請求項26に記載のオリゴマー化合物。
【請求項28】
がNHまたはCHを含む、請求項27に記載のオリゴマー化合物。
【請求項29】
式(I)が、
X−(Anb−(A−(Anb−(A−(A−(Anb−(A−(Bnb−Y
を含み、R、R、RおよびRが塩基性側鎖である、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項30】
式(I)が、
X−(A−(Anb−(A−(Anb−(Anb−(A−(Anb−(B−Y
を含み、R、R、RおよびRが塩基性側鎖である、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項31】
式(I)が、
X−(Anb−(A−(Anb−(Anb−(A−(Anb−(A−(Bnb−Y
を含み、R、R、およびRが塩基性側鎖である、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項32】
式(I)が、
X−(Anb−(A−(Anb−(A−(Anb−(Anb−(A−(Bnb−Y
を含み、R、R、およびRが塩基性側鎖である、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項33】
(i+j+k)・n=9である、請求項23に記載のオリゴマー化合物。
【請求項34】
n=1、i=8、j=1、そしてk=0である、請求項33に記載のオリゴマー化合物。
【請求項35】
式(I)が、X−(A−B−Yを含み、pが1〜8まで変化し、Z=NHまたはCHである、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項36】
式(I)が、
X−(Anb−(A−(Anb−(A−(Anb−(Anb−(A−(Anb−(B−Y
を含み、R、R、RおよびRが塩基性側鎖である、請求項35に記載のオリゴマー化合物。
【請求項37】
式(I)が、
X−(A−(Anb−(A−(Anb−(Anb−(A−(Anb−(A−(Bnb−Y
を含み、R、R、RおよびRが塩基性側鎖である、請求項35に記載のオリゴマー化合物。
【請求項38】
式(I)が、
X−(A−(Anb−(Anb−(A−(Anb−(A−(Anb−(Anb−(B−Y
を含み、R、R、R、およびRが塩基性側鎖である、請求項35に記載のオリゴマー化合物。
【請求項39】
式(I)が、
X−(Anb−(A−(Anb−(Anb−(A−(Anb−(A−(Anb−(Bnb−Y
を含み、R、R、およびRが塩基性側鎖である、請求項35に記載のオリゴマー化合物。
【請求項40】
式:
【化11】


[式中、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZ10は、独立してNHまたはCHを表し;mは、0、1または2であり;そしてRa、R、およびRは、請求項3に記載のRを定義する群から独立して選ばれる]
を有する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項41】
およびRがトリプトファンの側鎖に相当し、そしてRおよびRがリジンの側鎖に相当する、請求項40に記載のオリゴマー化合物。
【請求項42】
式:
【化12】


[式中、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは、独立してNHまたはCHを表し、mは、0、1または2であり;そしてR、R、R、およびRは、請求項3に記載のRを定義する群から独立して選ばれる]
を有する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項43】
およびRがトリプトファンの側鎖に相当し、そしてR、R、R、およびRがリジンの側鎖に相当する、請求項42に記載のオリゴマー化合物。
【請求項44】
式:
【化13】


[式中、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは、独立してNHまたはCHを表し、mは、0、1または2であり;そしてR、R、R、およびRは、請求項3に記載のRを定義する群から独立して選ばれる]
を有する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項45】
およびRがトリプトファンの側鎖に相当し、そしてR、R、R、およびRがリジンの側鎖に相当する、請求項44に記載のオリゴマー化合物。
【請求項46】
式:
【化14】


[式中、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは、独立してNHまたはCHを表し、mは、0、1または2であり;そしてR、R、およびRは、請求項3に記載のRを定義する群から独立して選ばれる]
を有する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項47】
およびRがトリプトファンの側鎖に相当し、そしてR、R、およびRがリジンの側鎖に相当する、請求項46に記載のオリゴマー化合物。
【請求項48】
式:
【化15】


[式中、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZ10は、独立してNHまたはCHを表し、mは、0、1または2であり、そしてR、R、R、およびR10は、請求項3に記載のRを定義する群から独立して選ばれる]
を有する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項49】
、R、およびRがトリプトファンの側鎖に相当し、そしてR、R、R、およびRがイソプロピル鎖に相当する、請求項48に記載のオリゴマー化合物。
【請求項50】
式:
【化16】


[式中、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは、独立してNHまたはCHを表し、mは、0、1または2であり、そしてR、R、R、およびRは、請求項3に記載のRを定義する群から独立して選ばれる]
を有する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項51】
およびRがトリプトファンの側鎖に相当し、そしてR、R、R、およびRがイソプロピル鎖に相当する、請求項50に記載のオリゴマー化合物。
【請求項52】
式:
【化17】


[式中、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは、独立してNHまたはCHを表し、mは、0、1または2であり、そしてR、R、R、およびRは、請求項3に記載のRを定義する群から独立して選ばれる]
を有する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項53】
およびRがトリプトファンの側鎖に相当し、そしてR、R、R、およびRがイソプロピル鎖に相当する、請求項52に記載のオリゴマー化合物。
【請求項54】
式:
【化18】


[式中、Z、Z、Z、Z、Z、Z、およびZは、独立してNHまたはCHを表し、mは、0、1または2であり、そしてR、R、およびRは、請求項3に記載のRを定義する群から独立して選ばれる]
を有する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項55】
およびRがトリプトファンの側鎖に相当し、そしてR、R、およびRがイソプロピル鎖に相当する、請求項54に記載のオリゴマー化合物。
【請求項56】
iが10であり;jが1であり;Xが−CO−NH−Rα[式中、Rαはイソプロピル基である]であり;YがNHであり;Aが式(V)[式中、Z=NHである]で示される基であり;Bが式(IX)[式中、m=2である]で示される部分であり;Rがイソプロピル基であり;R、R、およびRがトリプトファンの側鎖に相当し;R、R、およびRがイソプロピル基に相当し;そしてR、R、R、およびR10がリジンの側鎖に相当する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項57】
iが9であり;jが1であり;Xが−CO−NH−Rα[式中、Rαはイソプロピル基である]であり;YがNHであり;Aが式(V)[式中、Z=NHである]で示される基であり;Bが式(IX)[式中、m=2である]で示される部分であり;Rがイソプロピル基であり;R、R、R、およびR10がイソプロピル基に相当し;R、およびRがトリプトファンの側鎖に相当し;そして、R、R、RおよびRがリジンの側鎖に相当する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項58】
iが9であり;jが1であり;Xが−CO−NH−Rα[式中、Rαはイソプロピル基である]であり;YがNHであり;Aが式(V)[式中、Z=NHである]で示される基であり;Bが式(IX)[式中、m=2である]で示される部分であり;Rがリジンの側鎖であり;R、R、R、およびRがイソプロピル基に相当し;RおよびRがトリプトファンの側鎖に相当し;そしてR、R、およびRがリジンの側鎖に相当する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項59】
Xが−CO−NH−Rα[式中、Rαはイソプロピル基である]であり;YがNHであり;Aが式(V)[式中、Z=NHである]で示される基であり;Bが式(IX)[式中、m=2である]で示される部分であり;Rがイソプロピル基であり;RおよびRがイソプロピル基に相当し;RおよびRがトリプトファンの側鎖に相当し;そしてR、R、およびRがリジンの側鎖に相当する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項60】
Xが−CO−NH−Rα[式中、Rαはイソプロピル基である]であり;YがNHであり;Aが式(V)[式中、Z=NHである]で示される基であり;Bが式(IX)[式中、m=2である]で示される部分であり;Rがイソプロピル基であり;RおよびRがイソプロピル基に相当し;RおよびRがトリプトファンの側鎖に相当し;そしてR、R、およびRがアルギニンの側鎖に相当する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項61】
Xが−CO−NH−Rα[式中、Rαはイソプロピル基である]であり;YがNHであり;Aが式(V)[式中、Z=CHである]で示される基であり;Bが式(IX)[式中、m=2である]で示される部分であり;Rがイソプロピル基であり;RおよびRがイソプロピル基に相当し;RおよびRがトリプトファンの側鎖に相当し;そしてR、R、およびRがリジンの側鎖に相当する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項62】
Xが−CO−NH−Rα[式中、Rαはイソプロピル基である]であり;YがNHであり;Aが式(V)[式中、Z=CHである]で示される基であり;Bが式(IX)[式中、m=2である]で示される部分であり;Rがイソプロピル基であり;RおよびRがイソプロピル基に相当し;RおよびRがトリプトファンの側鎖に相当し;そしてR、R、およびRがアルギニンの側鎖に相当する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項63】
化合物が薬学的に許容される賦形剤と組み合わされて存在する、請求項3に記載のオリゴマー化合物。
【請求項64】
その組み合わせが、単位用量あたり約10〜約2000mgの請求項3に記載の化合物を含む、請求項63に記載のオリゴマー化合物。
【請求項65】
薬理活性分子にコンジュゲートさせた請求項3に記載のオリゴマー化合物を含む、薬学的化合物。
【請求項66】
薬理活性分子がオリゴマー化合物の末端にコンジュゲートしている、請求項65に記載の薬学的化合物。
【請求項67】
請求項3に記載のオリゴマー化合物の有効量を含む、細菌性、真菌性または癌性疾患、特にアスペルギルス症およびカンジダ症のような真菌感染症、ならびに耐性細菌感染症の治療または予防のための医薬。
【請求項68】
請求項3に記載のオリゴマー化合物を含む組成物を提供し;そして該オリゴマー化合物の有効量を薬学的に許容される形態で個体に投与する(この個体は、真菌感染症、細菌感染症、癌性疾患またはそれらの組み合わせに罹患している)ことを含む、個体の疾患を治療または予防するための方法。
【請求項69】
真菌感染症がアスペルギルス症およびカンジダ症を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
式(I)で示されるオリゴマー化合物の製造方法であって、
(a)式GP−D−W[式中、GPは、Fmoc、Teoc、フタルイミド、Alloc、BOCおよびCbzより成る群から選ばれる保護基であり;Dは、請求項1に定義のとおりであり;Wは、OHであるかまたはN−ヒドロキシスクシンイミド、フェノール、ペンタフルオロフェノール、ペンタクロロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジクロロ−6−ニトロフェノール、ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−オキソ−2−ヒドロキシジヒドロベンゾ−トリアジン(HODhbt)、7−アザ−1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOAt)、4−アザ−1−ヒドロキシベンゾ−トリアゾール(4−HOAt)、イミダゾール、テトラゾール、WANG樹脂より成るW−H基から選ばれる成員である]で示されるモノマーを前活性化し;
(b)上の定義のGP−D−Wを支持体のアミン官能基上にカップリングさせ(この工程は該支持体のアミン官能基への−D−GP基の移植を可能にさせる);
(c)GP基を適当な条件の下に開裂させ;
(d)n個のD基が該支持体に移植されるまで工程(a)および(b)を反復し;
(e)ビオチニル基またはRαCO、RαOCO、RαNHCO、RαNHCSもしくはRαSO基[式中、Rαは請求項1に定義のとおりである]を導入し;そして、
(f)適切な手段で式(I)の化合物を支持体から開裂させ、それにより、樹脂の除去および請求項1に定義されたY基の遊離を可能にする、
ことを含む方法。
【請求項71】
工程(b)を、DIEA、コリジン、NMMおよびルチジンより成る群から選ばれる三級塩基の存在下または不在下で;そして触媒の存在下または不在下で実施する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
触媒がHOBtである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
工程(b)を、DMF、CHCl、THF、およびN−メチルピロリドンより成る群から選ばれる溶媒中で実施する、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
式(I)で示されるオリゴマー化合物の製造方法であって、
(a)式GP−D−W[式中、GPは、Fmoc、Teoc、フタルイミド、Alloc、BOCおよびCbzより成る群から選ばれる保護基であり;Dは、請求項1に定義のとおりであり;Wは、OHであるかまたはN−ヒドロキシスクシンイミド、フェノール、ペンタフルオロフェノール、ペンタクロロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジクロロ−6−ニトロフェノール、ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−オキソ−2−ヒドロキシジヒドロベンゾ−トリアジン(HODhbt)、7−アザ−1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOAt)、4−アザ−1−ヒドロキシベンゾ−トリアゾール(4−HOAt)、イミダゾール、テトラゾールより成るW−H基から選ばれる成員である]で示されるモノマーを前活性化し;
(b)上の定義のGP−D−Wを、H−D−Y誘導体のD基のアミン官能基上でカップリングさせ;
(c)GP基を適当な条件の下に開裂させ;
(d)n個のD基が上記のアミン官能基に移植されるまで工程(a)および(b)を反復し;
(e)ビオチニル基またはRαCO、RαOCO、RαNHCO、RαNHCSもしくはRαSO基[式中、Rαは請求項1に定義のとおりである]を導入し;そして、
(f)適切な手段で式(I)の化合物を開裂させる、
ことを含む方法。

【公表番号】特表2008−533126(P2008−533126A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501450(P2008−501450)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001779
【国際公開番号】WO2006/131833
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(507311991)イミュファルマ(フランス)・エスアー (4)
【氏名又は名称原語表記】IMMUPHARMA(FRANCE)SA
【Fターム(参考)】