説明

新規なアミノグリコシド類および遺伝子疾患の治療におけるその使用

本発明によって、真核生物細胞に対して、有効な終止−コドン突然変異抑制活性と、低い毒性と選択性とを示すパロモマイシン由来アミノグリコシド類(式I)の新規なクラスが提供される。また、本発明によって、これらのパロモマイシン由来アミノグリコシド類およびその中間体を製造する方法、ならびにそれを含む医薬組成物、嚢胞性線維症などの遺伝子疾患の治療におけるその使用が提供される。パロモマイシンの構造的特徴の操作は、潜在的な毒性を減らし、突然変異リードスルー活性を改善するために慎重に選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノグリコシド類の新規なクラスおよび遺伝子疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのヒトの遺伝子疾患はナンセンス突然変異に起因し、そこでは3種類の終止コドン(UAA、UAGまたはUGA)の1つがアミノ酸をコードするコドンと置換し、翻訳の中途終了をもたらし、結局、末端切断された不活性タンパク質に至る。現在、何百ものそのようなナンセンス突然変異が知られており、そして、いくつかは嚢胞性線維症(CF)、デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィー(DMD)、毛細血管拡張性運動失調、ハーラー(Hurler)症候群、血友病A、血友病B、テイ−サックス(Tay−Sachs)病および多くの疾患を含む致命的疾患の特定の症例を説明することが示された[1、2]。それらの疾病の多くについては、有効な治療は現在のところなく、そして、遺伝子治療が遺伝子疾患の可能な解決法のように見えるが、この技術がヒトで使用されることができる前に、まだ多くの重大な障害を解決する必要がある。
【0003】
この数年の間に、アミノグリコシド類は、リボソームをリードスルー(読み過ごし)終止コドンの突然変異に誘導し、mRNA分子の一部から全長タンパク質を生成するそれらの能力のために、いくつかの遺伝子疾患の治療で治療的価値を有することが示されている[3−6]。
【0004】
アミノグリコシド類は、致命的な感染症の治療のために一般に使われている非常に強力な広範囲スペクトルを有する抗生物質である[7、8]。2−デオキシストレプタミン(2−DOS)アミノグリコシド抗生物質(背景技術の図1に示される)[9]は、選択的に原核生物のリボソームを標的として、16SリボソームRNAの解読A−領域と結合することによって、タンパク質翻訳阻害および翻訳の正確性への妨害をもたらす[7、10−12]。最も研究されたアミノグリコシド類の1つは、パロモマイシン(その硫酸塩は、Humatinの商品名で知られている)であり、それは腸アメーバ症に対して使われる抗菌性の薬物である。それはインドでの内臓リーシュマニア症(カラアザール)に対する薬物としてインド医薬品管理局により承認されて、米国では2005年に「希少疾病用医薬品」の地位を与えられた。パロモマイシンは、16SサブユニットのリボソームRNAと結合することによってタンパク質合成を阻害することが知られている。
【0005】
細菌のリボソーム構造の決定[13−17]のいくつかの業績は、細菌のA−部位のオリゴヌクレオチドモデルの結晶およびNMR構造とともに[18−22]、原核生物細胞での解読メカニズムを理解するために、およびアミノグリコシド類がどのようにして遺伝暗号の有害な読み誤りをもたらすかについて理解するために役立つ情報を提供した。解読の間、アミノアシル−tRNA選択における重要な工程は、mRNAのコドンと同系統のアミノアシル−tRNAのアンチコドンとの間でのミニヘリックス形成に基づく。このプロセスでは、A−部位の形態は、「オフ」状態(2つの保存されたアデニンA1492とA1493とがヘリックス内で折り返されている)から「オン」状態(A1492とA1493とは、A−部位からフリップアウトされて、同系統のコドン−アンチコドンのミニヘリックスと相互作用する)に変化する[11、15]。この構造的な変化は、非可逆的な方法で翻訳の継続を決める分子スイッチである。パロモマイシンおよびゲンタマイシンなどのアミノグリコシド類の細菌のA−部位への結合は、同系統のtRNA−mRNA複合体がない状態でさえ「オン」構造を安定化する。したがって、非同系統のmRNA−tRNA複合体に対するA−部位の親和性は、アミノグリコシド結合により増大し、リボソームが非系統および同系統の複合体を効率的に区別するのを妨げている。
【0006】
タンパク質合成の終了は、mRNA中の終止コドンの存在によってシグナル化されて、放出因子タンパク質によって媒介される。翻訳終了の効率は、通常非常に高く、完全な細胞では、終止コドン(抑制)でのアミノ酸の誤編入が、通常約10−4の低い頻度で生じる。真核生物でのアミノグリコシド類による停止抑制の強化は、タンパク質合成中に翻訳の正確性を妨害する際に、アミノグリコシドの活性に類似したメカニズムで起こると考えられる。すなわち、ある特定のアミノグリコシド類のリボソームA−部位への結合は、恐らく放出因子を挿入する代わりに、ほぼ同系統のmRNA−tRNA複合体を安定させる細胞構造変化を引き起こす。アミノグリコシド類は、顕著に異なる効率でいろいろな終止コドンを抑制(UGA>UAG>UAA)し、その抑制効果は、終止コドンのすぐ下流の4番目のヌクレオチドの同一性のみならず、終止コドン付近のローカル配列コンテキストにさらに依存する(C>U>A≧G)[6、23]。
【0007】
アミノグリコシド類が哺乳動物細胞の中途ナンセンス突然変異を抑制することができたという事実は、1985年にBurkeおよびMoggによって最初に実証され、彼らはまた、これらの薬物の遺伝子疾患治療における治療の可能性に注目した[3]。研究された最初の遺伝子疾患は、嚢胞性線維症(CF)であり、コーカサス人集団で最も優勢な常染色体劣性疾患であり、それは2,500人の新生児あたり1人に影響を及ぼす。CFは、嚢胞性線維性膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質における突然変異に起因する。現在では、CFTR遺伝子に1,000を超えるCFをもたらす異なる突然変異が確認されたが、その突然変異の5〜10%は、中途終止コドンである。中部・東部ヨーロッパのユダヤ人において、W1282X突然変異および他のナンセンス突然変異は、すべてのCFTR変異体対立遺伝子の64%を占める[5]。
【0008】
CFTR終止突然変異のアミノグリコシド媒介抑制についての最初の実験は、CFTR遺伝子で見られる中途終止突然変異がG−418およびゲンタマイシン(背景技術の図1参照)によって、気管支の上皮細胞株で全長の機能性CFTRの出現により測定されるように抑制されることができることを証明した[24、25]。ヒトCFTR−G542X組み換え遺伝子を保有するCFTR−/−トランスジェニックマウス変異体からの腸組織の抑制実験は、ゲンタマイシンおよびより効果の少ないトブラマイシンでの処置マウスの腺にヒトCFTRタンパク質が出現したことを証明した[26]。最も重要なことに、二重盲検・偽薬対照・交差試験を使用する臨床研究は、ゲンタマイシンが罹患患者で終止突然変異を抑制することができることを示し、そしてゲンタマイシン治療は、CFTR終止突然変異を保有する19人の患者の群で鼻粘膜を通過する膜コンダクタンスを改善した[27]。インビトロの系の培養細胞株または動物モデルで試験されたアミノグリコシド類の治療可能性についての他の遺伝子疾患は、DMD[28]、Hurler症候群[29]、尿崩症[30]、腎症性シスチン蓄積症[31]、色素性網膜炎[32]、および毛細血管拡張性運動失調[33]を含む。
【0009】
しかしながら、アミノグリコシドの医薬としての使用における主な限界のうちの1つは、典型的には腎臓(腎毒性)および耳に関連する(内耳神経毒性)病気で発現する哺乳動物に対するそれらの高い毒性である。この毒性の原因は、異なる要因とメカニズム(例えばリン脂質に対する相互作用、ホスホリパーゼの阻害およびフリーラジカルの形成)との組み合わせに起因すると推定される[34、35]。細菌のリボソームに対しては選択的であると考えられたが、大部分のアミノグリコシド類は、また、真核生物のA−部位とも結合するが、それは細菌のA−部位に対するよりも低い親和性である[36]。哺乳動物細胞での翻訳の阻害は、また、これらの薬物の高い毒性に関して可能性のある原因のうちの1つでもある。それらの細胞毒性を増している別の因子は、ミトコンドリア12SのrRNAのA−部位へのそれらの結合であり、その配列は細菌のA−部位に非常に類似している[37]。
【0010】
多くの研究が、アミノグリコシド類と関連した毒性を理解し軽減する方法を提供するために試みられたが[38]、それはフリーラジカル濃度を低下させるために抗酸化剤[39、40]を使用すること、同様にアミノグリコシド類がリン脂質と相互作用する能力を低下させるためのポリ−L−アスパラギン酸塩[41、42]およびダプトマイシン[43、44]を使用することを含む。アミノグリコシド類の取り込みの際のメガリン(特に腎臓近位尿細管および内耳で豊富であるマルチリガンドのエンドサイトーシス受容体)の役割が、最近、証明された[35]。メガリンへのアミノグリコシドの結合と競合するアゴニストの投与はまた、アミノグリコシドの取り込みおよび毒性の減少をもたらした[45]。さらに、アミノグリコシドが投与される投与計画および/または方法を変えることが、毒性を減らす手段として検討されてきた[46、47]。
【0011】
アミノグリコシドの毒性を減らす広範囲な努力にもかかわらず、投与計画の変更以外に、殆どの結果は、終止突然変異を抑制するためのアミノグリコシド類の投与に関する標準的な臨床実務および手順へと成熟していなかった。例えば、臨床試験でのゲンタマイシンの弱毒性用量の使用が、インビトロ系と比較してインビボ系実験で得られた減少したリードスルー効率を恐らく引き起こした[48]。アミノグリコシドであるgeneticin(登録商標)(G−418硫酸塩、背景技術の図1参照)は、インビトロでの翻訳−転写系[6]において最良の終止抑制活性を示したが、それが非常に低い濃度でさえ致命的であるので、治療剤としてのその使用が可能でないことを明らかにした。例えば、ヒト繊維芽細胞に対するG−418のLD50は、ゲンタマイシン、ネオマイシンおよびカナマイシンの2.5〜5.0mg/mlと比較して、0.04mg/mlである[49]。
【0012】
若干のアミノグリコシド系薬物(例えばG−418およびゲンタマイシンなど)への真核生物リボソームの増加した感受性は魅力的であるが、真核生物リボソームとのそれらの相互作用に関する十分な構造データの不足のために、今日まで合理的に説明することができなかった。G−418は、非常に低い濃度でさえ非常に有毒であるので、現在、ゲンタマイシンは様々な動物モデルおよび臨床試験で試験される唯一のアミノグリコシドである。培養細胞のそれらの比較的より低い毒性により、アミカシン[50]およびパロモマイシン[51]が、終止突然変異抑制治療用ゲンタマイシンの代替品を代表することができることをいくつかの研究は示したが、これらのアミノグリコシド類による臨床試験はまだ報告されていない。
【0013】
現在まで、ほとんど全ての抑制実験は、臨床的に、市販品のアミノグリコシド類[6]を用いて実施されており、終止コドンリードスルー誘因としてそれらの活性を最適化させる努力は何もされてこなかった。現在では、限られた数のアミノグリコシド類(ゲンタマイシン、アミカシンおよびトブラマイシンを含む)のみが、ヒトの体内投与用の抗生物質として臨床的に使用されている。これらのうち、トブラマイシンは終止突然変異抑制活性を持たず、ゲンタマイシンが動物モデルおよび臨床試験で終止突然変異抑制活性に関して試験された唯一のアミノグリコシドである。近年、ネアミン誘導体の1群が脊髄筋萎縮症(SPA)患者に由来する線維芽細胞でSMNタンパク質のリードスルーを促進することが示された;しかしながら、これらの化合物は抗生物質として当初設計され、これらの誘導体のリードスルー活性のさらなる改善のためには、何らの結論も引き出されなかった[52]。
【0014】
本出願譲受人による米国特許出願番号第11/073649号(それは引用により本明細書に完全に記載されたように組み込まれる)は、一連のアミノグリコシド類(これらのアミノグリコシド類が非常に強力かつ効果的な抗生物質であるようにしうる共通した骨格構造の特徴を有し、一方で、それに対する抗生物質耐性を減らすか、または妨げる)を教示している。米国特許出願番号第11/073649号で教示されるアミノグリコシド誘導体は、炭疽菌などの細菌性感染症に対する有効な抗生物質として、また遺伝子疾患(例えば嚢胞性線維症)の治療のための治療剤としても示されている。
【0015】
より詳しくは、米国特許出願番号第11/073649号で教示された化合物は、細菌のrRNAの16Sサブユニット上での解読A−部位を選択的に認識し、結合することによりこれらの抗菌活性を発揮する既知のアミノグリコシド抗生物質に基づいて設計された。このように、これらの化合物は、現在利用できるアミノグリコシド類の半合成類似体であり、アミノグリコシドの所定の位置は、rRNAのリン酸ジエステル結合およびそれと平行して致死因子(LF)の活性部位におけるAsp/GluおよびAsn/Glnクラスタの認識を強化するために修飾されてきており、それによって高められた抗菌性能を発揮する。これらの修飾は、さらに化合物に酵素触媒に対する耐性を提供して、このようにそれらの生物学的利用能とそれゆえに抗菌性能とを向上させる。さらにまた、アミノグリコシドの化学的修飾を通して設計された構造に導入された立体障害は、最も広く見受けられる耐性の原因である酵素(APH(3’)−IIIa)に対して、これらの化合物に劣った基質を付与し、したがってそれに対する耐性の進行を妨げる。
【0016】
これらの構造の設計および二機能性の活性については、Mariana Hainrichsonら、Bioorganic and Medicinal Chemistry 13(2005)5797−5807にも記載されている。
【0017】
米国特許出願番号第11/073649号で教示された化合物は、中途終止コドンをブロックし、したがって遺伝子疾患を治療することに効果的であることがさらに判明した。しかしながら、以下に詳述されるように、これらの化合物の強化された抗菌活性は、遺伝子疾患を治療するのに用いられるとき、好ましくない場合がある。他の修飾アミノグリコシド類および構造的に関連した抗生物質が提案され製造されたが[53−61]、それでも、その終止コドンリードスルー治療活性については、記載されなかったし、示唆も試験もされなかった。
【0018】
効果的なリードスルー薬物の望ましい特徴は経口投与であること、および細菌に対してはほとんど効果がないか、全く効果を有しないことである。リードスルー薬物の抗菌活性は、特に胃腸(GI)生物相に関して、GI生物相平衡の逆転に起因する副作用および耐性の発現により、抗生物質の不必要な使用として望ましくない。この点で、上述の制限に加えて、臨床アミノグリコシド類の大多数は、細菌のリボソームに対して非常に選択的であり、ヒト細胞の細胞質リボソームに対しては著しい影響を及ぼさない。
【0019】
上述の制限を回避する努力において、生物薬物会社のPTC Therapeutics(NY、USA)は、現在、ナンセンスリードスルー活性のための大きな化学ライブラリーをスクリーニングすることによって新しい終止突然変異抑制薬物を発見しようと試みている。このアプローチを使って、新規な非アミノグリコシド化合物であるPTC124が発見された[62]。この薬物の正確な化学構造は、今まで公表されなかったが、それが抗菌活性と報告された毒性とを有しないという事実は、リボソームに及ぼすその作用メカニズムがアミノグリコシド類のそれとは異なることを示唆する。FDAは、ナンセンス突然変異によって引き起こされたCFおよびDMDの両方の治療のためにPTC124に早期承認および希少薬の指定を与え、そして、CFおよびDMD患者の第II相臨床試験の予備結果は、有望のように思われる[63]。
【0020】
要約すると、上で提示された総体的なデータは、改善された終止突然変異抑制活性、哺乳動物細胞への低い毒性、および限られた抗菌活性また非抗菌活性を有する新規なアミノグリコシド誘導体に関する組織的探索は、それらが臨床的に使用されうる点にまでアミノグリコシド誘導体の研究の手段を開発するために必要であることを示唆している。
【0021】
したがって、上記の制限がない、遺伝子疾患の治療において有用なアミノグリコシド誘導体に対して広く認識された必要性があり、それを有することは非常に有益となるであろう。
【発明の開示】
【0022】
本発明は、パロモマイシン由来アミノグリコシド類の新規なクラスに関し、それらは高い中途終止−コドン突然変異のリードスルー活性を示す一方で、哺乳動物細胞での低毒性と低い抗菌性とを発揮することにより、遺伝子疾患(例えば嚢胞性線維症)の治療において有益に使用することができる。
【0023】
したがって、本発明の一態様によれば、一般式I:

(式中:
、RおよびRの各々は、独立して、単糖類部分、ハライド、ヒドロキシル、アミンまたはオリゴ糖類部分であり、
Xは、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
破線は、R配置またはS配置を示し;但し、化合物は、

アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンからなる群から選択されない)
を有する化合物またはその医薬的に許容される塩が提供される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、ここに記載される化合物および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0025】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、医薬組成物は包装材で包装されて、遺伝子疾患の治療で使用するために、包装材料中にまたは包装材料上に印刷されて識別される。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、医薬組成物は経口投与のために製剤化される。
【0027】
本発明のなお別の態様によれば、遺伝子疾患を治療する方法が提供され、その方法は、一般式Iを有する治療上有効量の化合物を、それを必要とする被験体に投与することを含む。但し、その化合物は、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンからなる群から選択されない。
【0028】
以下に記載する本発明の好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、該化合物は経口投与される。
【0029】
本発明のさらに別の態様によれば、遺伝子疾患を治療するための医薬の製造において、一般式Iを有する化合物の使用を提供し、但し、該化合物は、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンからなる群から選択されない。
【0030】
以下に記載する本発明の好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、遺伝子疾患は、末端切断の突然変異を有するタンパク質を含む。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、遺伝子疾患は、嚢胞性線維症(CF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、毛細血管拡張性運動失調、ハーラー症候群、血友病A、血友病B、アッシャー症候群(Usher Syndrome)およびテイ−サックス病からなる群から選択される。好ましくは、遺伝子疾患は、嚢胞性線維症(CF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびハーラー症候群からなる群から選択される。
【0032】
以下に記載する本発明の好ましい実施形態における特徴によれば、式I中のXは、酸素である。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式I中のRは、ヒドロキシルである。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式I中のYは、水素である。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式I中のR、RおよびRの少なくとも1つは、単糖類部分である。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは単糖類部分である。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0038】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは単糖類部分である。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは単糖類部分である。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、単糖類部分は、一般式II:

を有し、式中、
破線は、R配置またはS配置を示し;および
、RおよびRの各々は、独立して、ヒドロキシルおよびアミンからなる群から選択される。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式II中のRおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式II中のRは、アミンである。
【0045】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式II中のRは、ヒドロキシルである。
【0046】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは、アミンであり、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0047】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R、RおよびRの少なくとも1つは、オリゴ糖類部分である。
【0048】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは、オリゴ糖類部分である。好ましくは、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0049】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは、オリゴ糖類部分である。好ましくは、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0050】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは、オリゴ糖類部分である。好ましくは、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0051】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、オリゴ糖類部分は、二糖類部分である。
【0052】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、二糖類部分は、一般式I

であり、式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
、RおよびRの各々は、独立して、ハライド、ヒドロキシル、アミンであり、または一般式Iを有する化合物に結合しており、但し、R、RおよびRの少なくとも1つは、上記一般式Iを有する化合物に結合しており;
は、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)部分であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;および
は、水素、アルキルまたはアリールである。
【0053】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、オリゴ糖類部分は、リンカーをさらに含む。
【0054】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、RおよびYは、それぞれ水素である。
【0055】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、RはAHBである。
【0056】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rはヒドロキシルおよびアミンからなる群から選択され、Yはアルキルである。
【0057】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書に示される化合物の各々は、原核細胞よりも真核細胞に選択的な活性を有する。記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書に示される化合物の各々は、抗菌活性を有さない。
【0058】
本発明のなお別の態様によれば、本明細書に記載される一般式Iを有する化合物を製造する方法が提供され、式I中のRは単糖類部分であり、RおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、該方法は、
(a)一般式III:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)を有する化合物を、1”位に結合した脱離基ならびにヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを有する単糖類の誘導体とカップリングさせること、ならびに
(b)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それにより該化合物を得ること
を含む。
【0059】
以下に記載する本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、T−Tの各々は、シクロヘキサノンジメチルケタ−ルである。
【0060】
本発明のなお別の態様によれば、本明細書に記載される一般式Iを有する化合物を製造する方法が提供され、式I中のRは単糖類部分であり、RおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、該方法は、
(a)一般式IV:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)を有する化合物を、1”位に結合した脱離基ならびにヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを有する単糖類の誘導体とカップリングさせること、ならびに
(b)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それにより該化合物を得ること
を含む。
【0061】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、T−Tの各々は、O−アセチルである。
【0062】
本発明のなお別の態様によれば、本明細書に記載される一般式Iを有する化合物を製造する方法が提供され、式I中のRは単糖類部分であり、RおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、該方法は、
(a)一般式V:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)を有する化合物を、1”位に結合した脱離基ならびにヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを有する単糖類の誘導体とカップリングさせること、ならびに
(b)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それにより該化合物を得ること
を含む。
【0063】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、Tは4−メトキシ−1−メチルベンゼンであり、TはO−ベンゾイルである。
【0064】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、保護された単糖類は、一般式VI:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
、ZおよびZの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基からなる群から選択され;および
Lは脱離基である)を有する。
【0065】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、式VI中のLは、p−トリルスルフィド(p−チオトルエン)、チオエチルおよびトリクロロアセチミデートからなる群から選択される。
【0066】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式VI中のZ−Zの各々は、ヒドロキシル保護基である。
【0067】
本発明のなお別の態様によれば、本明細書に記載される一般式Iを有する化合物を製造する方法が提供され、Rはアミンであり、ならびにRおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、該方法は、
(a)一般式IIIを有する化合物をトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させ、それによりその3’位にトリフルオロ−メタンスルホネート基を得ること:
(b)その3’位にトリフルオロ−メタンスルホネート基を有する化合物をナトリウムアジドと反応させること;ならびに
(c)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それにより該化合物を得ること
を含む。
【0068】
本発明のなお別の態様によれば、本明細書に記載される一般式Iを有する化合物を製造する方法が提供され、Rは一般式Iを有する二糖類部分であり、ならびにRおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、該方法は、
(a)一般式IIIを有する化合物を、一般式III

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
は、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
は、酸素または硫黄である)の化合物とカップリングさせること;ならびに
(b)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それにより該化合物を得ること
を含む。
【0069】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、カップリングはリンカーを介して行われ、リンカーはアルキルが好ましい。
【0070】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、アミン保護基の各々は、アジド基およびN−フタルイミド基からなる群から選択される。
【0071】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、ヒドロキシル保護基は、O−アセチル、O−クロロアセチルおよびO−ベンゾイルからなる群から選択される。
【0072】
本発明は、嚢胞性繊維症および他の遺伝子疾患を治療するための治療剤として、終止コドン突然変異抑制、低い細胞毒性および低い抗菌活性など(これらすべては化合物を当該分野で公知の他のアミノグリコシド化合物よりはるかに優れたものとする)の有益な特徴を有するアミノグリコシド化合物を提供することにより、現在知られている配置の欠点に成功裡に対処している。
【0073】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0075】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0076】
本明細書中で使用される、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1種の化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0077】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0078】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0079】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0080】
図1は、背景技術で記載された抗菌性アミノグリコシド類の化学構造を示す。
【0081】
図2は、本実施形態による例示的な化合物を得るための化学構造および一般的な合成経路を示し、それらはパロマミンの骨格に基づき、他の既知のアミノグリコシドと比較して、終止−コドン突然変異のリードスルー活性および低下した毒性を発揮するように設計した。
【0082】
図3A−Dは、試験化合物および[35S]−メチオニンの存在下、オープンリーディングフレーム(ORF)をコードする25−kDaのポリペプチドとORFをコードする10−kDaのポリペプチドとの間のTGA Cナンセンス終止突然変異を含むプラスミド系レポーター構築物の発現により、例示的な化合物3およびパロモマイシンに関して測定されたインビトロでの突然変異抑制および翻訳比較アッセイの結果を示し、化合物3(図3A)およびパロモマイシン(図3C)に対するSDS−PAGEによって分離され、phosphor−imagerを用いて定量化された反応生成物、および比較プロットを示し、そこでは変異抑制値(黒い点で示される)と翻訳値(白い点で示される)とをその不在下で発現される全タンパク質からの試験化合物の各濃度における全タンパク質の相対的な割合として算出し、化合物3(図3B)およびパロモマイシン(図3D)に関しては3通り測定した。
【0083】
図4は、COS−7細胞で発現されたウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子とホタルルシフェラーゼ遺伝子との間のポリリンカー中でのTGA Cナンセンス突然変異を含むp2Lucプラスミドを使用して、パロモマイシンとゲンタマイシンと比較した、本実施形態による例示化合物、すなわち化合物3によって発現されるナンセンス変異のエクスビボでの抑制を示し、それは異なる濃度の各試験化合物に対して3以上の独立した実験の平均として算出された抑制レベルを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
本発明は、アミノグリコシド類の新規なクラスに関し、それは、例えば、遺伝子疾患の治療において有益に使用されうる。具体的には、本発明は、パロモマイシン由来の化合物の新規なクラスに関し、それらは高い中途終止−コドン突然変異のリードスルー活性を示し、一方で哺乳動物細胞において低毒性を発揮する。したがって、本発明はこれらの化合物を含む医薬組成物および嚢胞性線維症などの遺伝子疾患の治療におけるそれらの使用に関する。本発明は、さらにこれらの化合物を製造する方法に関する。
【0085】
本発明の原理および作用が、図面および付随する説明を参照してより十分に理解されることができる。
【0086】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであって、限定であると見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0087】
上で議論したように、過去10年にわたって、天然アミノグリコシド類の多くの類似体が、病原性細菌でこれらの薬物に対する抗菌性の耐性の急速な広がりを克服するために設計、合成されており、それによって抗生物質アミノグリコシド類のうちのいくつかは、終止コドン突然変異抑制活性を有することが示された。しかし、ヒト遺伝子疾患の治療でのこれらのアミノグリコシド類の可能性のある用途に関して、ほとんど全ての終止コドン突然変異抑制実験は、市販のアミノグリコシド類で行われており、そして、終止コドンリードスルー誘因としてこれらのアミノグリコシド類の活性を最適化させるための努力は殆どされてこなかった。
【0088】
現在まで、あるアミノグリコシド類が終止抑制を誘導するのに対して、他のものがそうしない理由についての疑問に対する明瞭な答えはまだない。哺乳類系でのいくつかの市販のアミノグリコシド類のインビトロでの抑制活性は、環I上にC6’ヒドロキシル基を有するG−418およびパロモマイシン(参照:図1)などのアミノグリコシド類が通常、同じ位置にアミンを有するものよりも一般的により効果的であることを明らかにした[6、51]。
【0089】
終止−コドン突然変異抑制に関してアミノグリコシド類の効果をさらに探索している間に、減少した毒性と同様に改善された終止−コドンリードスルー活性を示すであろうアミノグリコシド類似体を見出す目的で、本発明者らは、抗菌活性および/または終止−コドン突然変異抑制活性のために必要であるものから毒性を誘発するアミノグリコシド構造の要素を切り離すことがこの効果に有益であろうと予想した。臨床的に使用されたアミノグリコシド類および若干の設計された構造(参照:図1)に関して利用できる毒性データから、アミノグリコシド類の毒性に大きく影響する2つの主な因子は、アミノ基の数の減少(脱アミノ化)および/または環上ヒドロキシル基の欠失(脱酸素化)であると仮定された。
【0090】
脱アミノ化(アミノ基の除去)の結果としてのアミノグリコシドの低減された毒性が、例えば、パロモマイシン(ネオマイシンよりアミノ基が1つ少なく、より毒性が小さいという点で、ネオマイシンと異なる)(ネオマイシンのLD50=24、パロモマイシン=160)で観察された。したがって、1個の電荷(生理的pHでの正に帯電したアミン基による)のこの違いは、2つの化合物の毒性に大きな違いを生じる。同様に、カナマイシンB(LD50=132)とカナマイシンA(LD50=280)およびカナマイシンC(LD50=225)との1個の電荷の違いは、後者の2つをカナマイシンBより低毒性とした。いかなる特定の理論にも束縛されないが、帯電したアミノ基の減少によるアミノグリコシド類の毒性のそのような減少は、他の細胞成分との非特異的な相互作用の減少により、およびフリーラジカルの減少した生成により説明することができると推測されてきた。アミノグリコシド類の毒性に影響を及ぼすことが注目されたさらなる因子は、2−DOS環のN1−アミンの(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)基によるアシル化であるが、この効果の範囲はアミノグリコシド構造(例えば、ネアミンのLD50=125対N1−AHB−ネアミンのLD50=260;およびカナマイシンAのLD50=280対アミカシンのLD50=300)に依存することが示された。
【0091】
脱酸素化(ヒドロキシル基の除去)の結果としてのアミノグリコシド類の増加した毒性は、例えば、トブラマイシン(LD50=79)を与える、カナマイシンB(LD50=132)中の3’−OHの除去において観察されたが、それは親のカナマイシンBよりも非常に有毒である。どんな特定の理論によっても束縛されないが、この現象は、3’−OHに隣接した2’−NHの塩基性の減少によって説明することができる。確証的な結果は、カナマイシンBおよびいくつかのその臨床的誘導体における5−OHを5−フッ素で置換することによって提供された[64−66]。このように、トブラマイシン(3’−デオキシ)、ゲンタマイシン(3’,4’−ジデオキシ)、ジベカシン(3’,4’−ジデオキシ)およびアルベカシン(3’,4’−ジデオキシ)などの臨床的薬物の非常に高い毒性は、主としてC3’−酸素原子またはC3’,C4’−酸素原子の欠失により生じるこれらの薬物における2−NH基(環I)の増加した塩基性に帰することができた。
【0092】
米国特許出願番号第11/073649号で示されるアミノグリコシド類似体に導入された構造操作は、特にリジッド糖環の付加を含む。アミノグリコシド骨格へのリジッド糖環の付加は、耐性を引き起こす酵素との相互作用に影響を及ぼし、したがって酵素の触媒作用および引き続く耐性の出現のために必要な3次元複合体の形成の抑制に貢献した。
【0093】
本発明を実施する間、本発明者らは効果的な突然変異抑制活性および低減された毒性を示す新規な化合物を設計し、成功裡に製造および使用した。これらの化合物は、パロマミン骨格(パロモマイシンから、その2つの単糖類部分を除いて得られた)に基づき、それに対して新しい構造的特徴が導入された。パロモマイシンの構造的特徴の操作は、潜在的な毒性を減らし、突然変異リードスルー活性を改善するために慎重に選択された。
【0094】
したがって、本発明の一態様によれば、一般式I:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
、RおよびRの各々は、独立して、単糖類部分、ハライド、ヒドロキシル、アミンまたはオリゴ糖類部分であり、
Xは、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)部分であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;そして
Yは、水素、アルキルまたはアリールである)
を有する化合物が提供される。
【0095】
本明細書中で使用される用語「単糖類」は、当該分野で周知であり、加水分解によってさらに分解することができない単一の糖質分子からなる糖の単純な形態を指す。単糖類の最も一般的な例は、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ガラクトース、およびリボースを含む。単糖類は、炭水化物の炭素原子の数によって分類することができる:つまり、3個の炭素原子を有するトリオース(例えば、グリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトン);4個の炭素原子を有するテトロース(例えば、エリトロース、トレオースおよびエリトルロース);5個の炭素原子を有するペントース(例えば、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、リブロースおよびキシルロース);6個の炭素原子を有するヘキソース(例えば、アロース、アルトロース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボースおよびタガトース);7個の炭素原子を有するヘプトース(例えば、マンノヘプチュロース、およびセドヘプチュロース);8個の炭素原子を有するオクトース(例えば、2−ケト−3−デオキシ−マンノ−オクトネート);9個の炭素原子を有するノノース(例えば、シアロース);および10個の炭素原子を有するデコースである。単糖類は、蔗糖(一般の砂糖)および他の多糖類(例えば、セルロースおよび澱粉)のようなオリゴ糖類の構築ブロックである。
【0096】
本明細書中で使用される場合、用語「部分」は、化学物質の一部および好ましくは主要部を言うのであって、それは化学反応を経て、今度は別の分子実体に共有結合で結合されている分子または基である。
【0097】
本明細書中で使用される場合、用語「ハライド」(本明細書において「ハロ」とも呼ばれる)は、フッ素、塩素、臭素、または沃素の原子を記載し、本明細書においてフッ化物、塩化物、臭化物および沃化物とも呼ばれる。
【0098】
本明細書中で使用される用語「ヒドロキシル」は−OH基を示す。
【0099】
本明細書中で使用される用語「アミン」は−NR’R’’基を記載し、ここでR’およびR’’のそれぞれは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロ脂環式環、アリール、またはヘテロアリールであり、これらの用語は本明細書中で定義される。
【0100】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子、より好ましくは1個〜10個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜10個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの10個までの炭素原子を含むということを意味する。アルキルは置換または非置換でありうる。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシ、アルコキシ、およびヒドロキシアルキルであることができ、これらの用語は本明細書中下記で定義される。本明細書中で使用される用語「アルキル」はまた、飽和または不飽和の炭化水素を包含するので、この用語はアルケニルおよびアルキニルをさらに包含する。
【0101】
用語「アルケニル」は、本明細書中に定義されるように、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和なアルキルを記載する。アルケニルは、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
【0102】
用語「アルキニル」は、本明細書中に定義されるように、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる不飽和アルキルを示す。アルキニルは、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
【0103】
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべてが炭素の単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基は、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
【0104】
用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。代表的な例は、チアジアゾール、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0105】
上記の式Iで示される二環式構造は、ここではパロマミン骨格として言及される。
【0106】
本発明の好ましい実施形態によれば、Xは酸素である。
【0107】
さらに好ましくは、Rはヒドロキシルである。
【0108】
さらに好ましくは、Yは水素またはアルキルであり、より好ましくは、Yはメチルである。
【0109】
本発明の一実施形態では、上記の式Iで示されるパロマミン骨格は、それに結合した1つ以上のさらなる単糖類部分を含む。
【0110】
上記の式Iで理解できるように、単糖類部分がパロマミン骨格に結合できるいくつかの位置がある。好ましい実施形態によれば、R、RおよびRとして示される3つの位置があり、それは単糖類部分をパロマミン骨格に導入するために好ましい。
【0111】
1つの好ましい実施形態では、R、RおよびRの少なくとも1つは、単糖類部分である。
【0112】
好ましくは、1つの単糖類のみが、R、RまたはRの任意の1つに導入される。そのような場合、好ましくは、他の位置は、ヒドロキシルである。
【0113】
より好ましくは、単糖類部分はRの位置に導入され、RおよびRは好ましくは、それぞれヒドロキシルである。
【0114】
同様に、単糖類部分がRの位置に導入される場合、RおよびRは好ましくは、それぞれヒドロキシルであり、そして単糖類部分がRの位置に導入される場合、RおよびRは好ましくは、それぞれヒドロキシルである。
【0115】
好ましい実施形態によれば、R、RおよびRの少なくとも1つは、単糖類部分である。好ましくは、単糖類はペントース(例えば、フラノースなど)、またはヘキソース(例えば、ピラノースなど)である。本実施形態による好ましい単糖類部分は、一般式II:

によって総称的に表すことができ、式中、R、RおよびRの各々は、ヒドロキシルおよびアミンからなる群から独立して選択され、破線はR配置またはS配置を示す。曲線は、パロマミン骨格に結合している単糖類部分の位置を示す。
【0116】
好ましくは、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0117】
後続の実施例の部分(参照:表18)で示され、証明されるように、Rの位置の置換基は、生成する化合物の切断変異リードスルー活性および抗菌活性に影響を及ぼすことが分かった。したがって、上記の式IIによって表わされる単糖類部分を有する好ましい化合物は、Rの位置にアミン基またはヒドロキシル基、より好ましくはアミン基を有している。
【0118】
本発明の一実施形態では、上記の式Iで示されるパロマミン骨格は、好ましくはR、RとRの位置で、それに結合した1つ以上のさらなるオリゴ糖類部分を含む。したがって、好ましい実施形態によれば、R、RおよびRの少なくとも1つは、オリゴ糖類部分である。好ましくは、1つのオリゴ糖類部分のみが、R、RまたはRのいずれか1つに導入される。そのような場合、好ましくは、他の位置は、ヒドロキシルである。
【0119】
好ましくは、オリゴ糖類部分はRの位置に結合し、一方、他の2つの位置、RおよびRは好ましくは、それぞれヒドロキシルである。あるいはまた、オリゴ糖類部分はRの位置に結合し、好ましくは、RおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、またはオリゴ糖類部分はRの位置に結合し、そして好ましくはRおよびRはそれぞれヒドロキシルである。
【0120】
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴ糖類」は、2つ以上の単糖類単位(これらは本明細書で定義されている)を含む化合物を指す。好ましくは、オリゴ糖類は、2〜6個の単糖類を含み、より好ましくは、オリゴ糖類は2〜4個の単糖類を含み、そして最も好ましくは、オリゴ糖類は2つの単糖類単位を有する二糖類部分である。
【0121】
好ましい実施形態によれば、一般式Iを有する化合物に結合した二糖類は、以下のような一般式I

であり、式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
、RおよびRの各々は、独立して、ハライド、ヒドロキシル、アミンであり、または一般式Iを有する化合物に結合しており、但し、R、RおよびRの少なくとも1つは、上記一般式Iを有する化合物に結合しており;
は、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)部分であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;および
は、水素、アルキルまたはアリールである。
【0122】
したがって、そのような「二量体」は、それらの対応するR、R、R、R、RまたはRの位置でそれらの任意の組み合わせにより互いに結合した2つの化合物を含み、例えば、R−RもしくはR−R結合二量体、R−RもしくはR−R結合二量体、R−RもしくはR−R結合二量体、R−R結合二量体、R−R結合二量体またはR−R結合二量体が挙げられる。好ましくは、それはR−R結合二量体である。
【0123】
2つの部分の間の結合は、リンカーまたは結合部分を介することができる。本明細書中で使用される用語「リンカー」は、少なくとも2つの他の化学部分に結合している化学部分を指し、したがって、それらの間を結合する。本実施形態では、リンカーは好ましくは、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルであり、より好ましくはメチレンである。
【0124】
先に議論したように、パロマミン骨格上のアミン基の数を増加させることは、毒性に関して否定的な効果を有する場合があるが、元の置換されたヒドロキシルと比較して、逆の立体化学でRの位置にアミン基を有するパロマミン類似体は、逆の配置で付加されるアミンの影響を調べる試みにおいて後続の実施例の部分に示されるように製造された。
【0125】
後続の実施例の部分で証明されるように、ヒドロキシルを置換し逆の配置を有するRの位置にアミンを有する本実施形態による例示的な化合物、つまり化合物8が製造されて、パロモマイシンと比較して6〜16倍の低い抗菌活性を示した(参照:下記の表18)。
【0126】
したがって、本発明の別の実施形態においては、Rはアミンである。好ましくは、RおよびRは、それぞれヒドロキシルである。
【0127】
上記の化合物は、R、RおよびYの位置における置換基にしたがって、いくつかの部分集合にさらに分類することができる。上記で定義されるように、Rは水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)部分であり、Rはヒドロキシルまたはアミンであり、そしてYは水素またはアルキル(好ましくは、メチル)であることができ、R、RおよびYに関して化合物の6つの好ましい部分集合をともに与える。
【0128】
、RおよびYに関して、1つの部分集合では、RおよびYの各々は水素であり、そしてRはヒドロキシルであり、図2に示される化合物を与える。この点での他の2つの部分集合において、Rは水素かAHBのいずれかであり、Rの位置のアミンおよびYの位置のメチルが存在し、これらの化合物の各々において、Rの位置はRかSの立体配置であると推測することができる。
【0129】
上記の部分集合の各々は、そのR置換基(水素またはAHB部分のいずれかである)によって、さらに分けることができる。あるいはまた、AHB部分は、α−ヒドロキシ−β−アミノプロピオニル(AHP)部分により置換することができる。
【0130】
本実施形態による現在最も好ましい化合物は、上記の一般式IおよびR、RまたはRの1つとして単糖類部分(例えばリボフラノース)を有する。
【0131】
上記の一般式Iを有する化合物(式中、Yが水素であり、Rが水素またはAHB部分であり、そしてR−Rの1つが、リボフラノースまたはピラノース部分である)はまた、ここでは化合物3および37〜41を指す(参照:下記のスキーム7);上記の一般式Iを有する化合物(式中、Rがヒドロキシルであり、Rが水素またはAHB部分であり、R−Rの1つが、リボフラノースまたはピラノース部分であり、そしてYがメチルである)はまた、ここでは化合物42〜47を指す(参照:下記のスキーム8);および上記の一般式Iを有する化合物(式中、Rがアミンであり、Rが水素またはAHB部分であり、Yがメチルであり、そしてR−Rのうちの1つが、リボフラノースまたはピラノース部分である)はまた、ここでは化合物48〜53を指す(参照:下記のスキーム8)。
【0132】
本実施形態によれば、(3S,4R,5S,6S)−5−アミノ−6−((1R,2R,3R,4R)−4,6−ジアミノ−2−((2S,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロフラン−2−イルオキシ)−3−ヒドロキシシクロヘキシルオキシ)−2−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4−ジオール(以下、化合物2と称す)、(3S,4R,5S,6S)−5−アミノ−6−((1R,2S,3R,4R)−4,6−ジアミノ−3−((2R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロフラン−2−イルオキシ)−2−ヒドロキシシクロヘキシルオキシ)−2−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4−ジオール(以下、化合物4と称す)、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびそれらの名前に加えた接尾辞を有するそれらの任意の変形体(例えば、ゲンタマイシンC1、ゲンタマイシンC1A、ゲンタマイシンC2、ゲンタマイシンD、カナマイシンA、カナマイシンB、ブチロシンA、ハイグロマイシンB、ネオマイシンB、他)は、上記されており、したがって、本発明のこの態様の範囲から除外される。これらもまた、2つ以上の単糖類単位を有する任意の他のアミノグリコシド類似体を含み、それらは上記されている。

【0133】
それにもかかわらず、化合物2および化合物4は、それらの治療活性について一般的に、いうまでもなく遺伝子疾患の治療に関連しては、また特に終止−コドン突然変異抑制に関連しては、記載も試験もされなかったので、したがって、本発明の他の態様からは除外されない。
【0134】
本実施形態は、さらに本明細書に記載された化合物の任意のエナンチオマー、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、および/または医薬的に許容される塩類を包含する。
【0135】
本明細書中で使用される場合、用語「エナンチオマー」は、互いの完全な反転/反射(鏡像)によるのみでその対応物に関して重ね合わせられる化合物の立体異性体を指す。エナンチオマーは、それらが右手および左手のように互いを指すので、「掌性」を持つと言われている。エナンチオマーは、全生物系などの、掌性を単独で有する環境に存在する場合を除き、同一の化学的および物理的性質を有する。
【0136】
用語「プロドラッグ」は、インビボで活性化合物(活性な親薬物)に変換される薬物を指す。プロドラッグは、親薬物の投与を促進するのに典型的に役立つ。それらは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であるが、親薬物はそうではない。プロドラッグは、医薬組成物で親薬物と比較して改善された溶解度を有することができる。プロドラッグはまた、インビボで活性化合物の徐放を達成するためにもしばしば用いられる。制限されることなく、プロドラッグの例としては、1つ以上のカルボン酸部分を有し、エステル(「プロドラッグ」)として投与される本発明の化合物が挙げられるであろう。そのようなプロドラッグは、インビボで加水分解され、それによって遊離した化合物(親薬物)を提供する。選択されたエステルは、プロドラッグの溶解度特性および加水分解率の両方に影響を及ぼす可能性がある。
【0137】
用語「溶媒和物」は、可変化学量論(例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサなど)の複合体を指し、それは溶質(本発明の化合物)および溶媒によって形成され、それによって溶媒は溶質の生物学的活性を妨げない。適切な溶媒は、例えば、エタノール、酢酸などを含む。
【0138】
用語「水和物」は、上記で定義されたように、溶媒和物を指し、溶媒は水である。
【0139】
用語「医薬的に許容される塩」は、親化合物およびその対イオンの荷電種を指し、それは親化合物の溶解度特性を改変するために、および/または親化合物による生物体への任意の大きな刺激を減少させるために典型的に用いられ、一方で、投与された化合物の生物学的活性および特性を維持する。非限定的な医薬的に許容される塩の例としては、カルボキシレートアニオンおよびカチオン(非制限的に例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウムなど)が挙げられる。
【0140】
さらに本発明によれば、本明細書に記載される化合物を製造する方法が提供される。
【0141】
本明細書で記載される合成経路は、受容体と供与体との間の反応を含み、それにより用語「受容体」は、本明細書ではパロマミンに由来する骨格の構造を記載するために使われ、それはC5、C6およびC3’などの位置で少なくとも1個の、好ましくは選択的に選ばれた利用可能な(保護されていない)ヒドロキシル基を有し、それはグリコシド化反応の間は反応性であって、グリコシルを受け入れることができ、そして、用語「供与体」は、本明細書ではグリコシルを記載するために使用される。
【0142】
本明細書中で使用される場合、用語「グリコシル」は、単糖類のヘミアセタール官能基からヒドロキシル基を除去することによって、および低級オリゴ糖類の拡張によって得られる化学基を指す。
【0143】
供与体および受容体は、望ましい化合物を形成するために設計される。以下は、本発明のこの態様の好ましい実施形態を記載し、本明細書に記載される化合物の例示的な部分集合を製造する例示的な方法を提示する。
【0144】
本実施形態の化合物の合成は、一般に、(i)パロマミン骨格に存在する選択された位置で1個以上のヒドロキシルおよびアミンの選択的な保護によって受容体化合物を製造し、そして、1つまたは2つの位置を未保護のままとし、したがって上記で定義したように供与体(グリコシル)化合物を自由に受け入れることができるようにすること;(ii)例えば、受容体上の保護されていない位置への適切に保護された供与体化合物とのカップリング反応により、または水酸基をアミン基と置換し、場合によりアミンの配置を反転することにより、所望の位置での受容体の構造的特徴を操作すること;および(iii)全ての保護基を除去することを含む。
【0145】
本明細書中で使用される場合、用語「保護基」は、特定の官能性をブロックまたは保護し、一方で化合物上の他の官能基を反応させる一般的に使用される置換基を指す。例えば、「アミノ保護基」は、化合物中のアミン官能性をブロックまたは保護する、アミノ基に結合した置換基を指す。適切なアミノ保護基は、アジ化物(アジド)、N−フタルイミド、N−アセチル、N−トリフルオロアセチル、N−t−ブトキシカルボニル(BOC)、N−ベンジルオキシカルボニル(CBz)およびN−9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)を含む。同様に、「ヒドロキシル保護基」は、ヒドロキシル官能基をブロックまたは保護するヒドロキシル基の置換基を指す。適切な保護基は、シクロヘキサノンジメチルケタール(2つの隣接したヒドロキシル基との1,3−ジオキサンを形成する)、4−メトキシ−1−メチルベンゼン(2つの隣接したヒドロキシル基との1,3−ジオキサンを形成する)、O−アセチル、O−クロロアセチル、O−ベンゾイルおよびO−シリルを含む。保護基の一般的な記載およびそれらの使用については、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,New York,1991を参照されたい。
【0146】
以下に示される好ましい実施形態によれば、アミン保護基は、アジド基および/またはN−フタルイミド基を含み、そしてヒドロキシル−保護基は、O−アセチル、O−クロロアセチルおよび/またはO−ベンゾイルを含む。
【0147】
一実施形態において、本明細書で示される一般式Iを有する化合物の例示的な部分集合を製造する方法が提供され、単糖類はRの位置に結合し、RおよびRはそれぞれヒドロキシルである。本実施形態によれば、該方法は、適切に保護された受容体化合物と適切に保護された供与体化合物とを製造して、これらの2つの化合物を互いにカップリングさせて、その後、生成する化合物からすべての保護基を除去することにより実施される。
【0148】
この実施形態によれば、受容体は、特定の位置に保護基を有するパロマミンの1つの型である一般式III:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)を有する。
【0149】
保護基は、それらが容易に結合し、適切な条件下で除去されるように選択され、そしてパロマミンの種々のアミンおよび水酸基の異なる反応性にしたがって、Rの位置の水酸基は未保護のままとし、カップリング反応のために遊離であるように選択される。
【0150】
好ましい実施形態によると、T−Tの各々は、シクロヘキサノンジメチルケタール保護基であり、Tの場合、2つの隣接した水酸基によって1,3−ジオキサンを形成し、Tの場合、1,3−ジオキソランを形成する。
【0151】
供与体化合物は、その1”の位置に脱離基を有する保護された単糖類である。そのような保護された単糖類は、一般式VI:

によって総称的に表すことができ、式中、
、ZおよびZの各々は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基から独立して選択され、Lは脱離基であり、破線は、R配置またはS配置を示す。
【0152】
本明細書中で使用される場合、用語「脱離基」は、化学反応の間、有機分子からの脱離を容易に受ける不安定な原子、基または化学的部分を言い、一方で脱離はその上で脱離する原子、基または部分の相対的な安定性によって促進される。典型的には、強酸の共役塩基である任意の基は、脱離基として作用することができる。したがって、本実施形態に従う適切な脱離基の代表例は、非制限的にハライド、アセテート、トシレート、トリフレート、スルホネート、アジド、ヒドロキシ、チオヒドロキシ、アルコキシ、シアネート、チオシアネート、ニトロ、およびシアノを含む。
【0153】
用語「アセテート」は、酢酸アニオンを指す。
【0154】
用語「トシレート」は、トルエン−4−スルホン酸アニオンを指す。
【0155】
用語「トリフレート」は、トリフルオロ−メタンスルホン酸アニオンを指す。
【0156】
用語「アジド」は、Nを指す。
【0157】
用語「ヒドロキシ」および「チオヒドロキシ」は、OHおよびSHアニオンをそれぞれ指す。
【0158】
用語「シアネート」および「チオシアネート」は、[O=C=N]および[S=C=N]アニオンをそれぞれ指す。
【0159】
用語「ニトロ」は、NOを指す。
【0160】
用語「シアノ」は、[C≡N]を指す。
【0161】
好ましくは、Lはp−トリルスルフィド(p−チオトルエン)、チオエチルおよびトリクロロアセチミデートであり、さらに好ましくは、Z−Zの各々は、ヒドロキシル保護基である。
【0162】
したがって、該方法は、
(a)上記の受容体化合物を上記の供与体化合物とカップリングさせること;および、
(b)続いて保護基の各々を除去すること
により実施される。
【0163】
本実施形態によって製造された例示的な化合物は、後続の実施例の部分で示されるように、化合物6および化合物7を含む。
【0164】
この基本的な方法は、所望の位置で供与体と相互作用するように設計された受容体を利用して、本実施形態による化合物の他の例示的な部分集合を製造するために使用される。
【0165】
したがって、本発明の別の実施形態によれば、本明細書に記載される一般式Iを有する化合物の例示的部分集合を製造する方法が提供され、単糖類はRの位置に結合され、RおよびRはそれぞれヒドロキシルである。このような方法は、
(a)一般式IV:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)を有する化合物を、1”位に結合した脱離基ならびにヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを有する単糖類の誘導体とカップリングさせること、ならびに
(b)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それにより該化合物を得ること
によって行われる。
【0166】
好ましくは、T−Tの各々は、O−アセチルである。
【0167】
既に示された実施形態におけるように、単糖類の誘導体は保護された単糖類であり、それは本明細書において上記で示されたような一般式VIを有する。
【0168】
本実施形態によって製造された例示的な化合物は、後続の実施例の部分に示されるように、化合物2および化合物3を含む。
【0169】
本発明のなお別の実施形態によれば、本明細書に示される一般式Iを有する化合物の例示的部分集合を製造する方法が提供され、単糖類はRの位置に結合され、RおよびRはそれぞれヒドロキシルである。このような方法は、
(a)一般式V:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)を有する化合物を、1”位に結合した脱離基ならびにヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを有する単糖類の誘導体とカップリングさせること、ならびに
(b)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それにより該化合物を得ること
によって行われる。
【0170】
好ましくは、Tは4−メトキシ−1−メチルベンゼンであり、TはO−ベンゾイルである。
【0171】
本実施形態によって製造された例示的な化合物は、後続の実施例の部分に示されるように、化合物4および化合物5を含む。
【0172】
他の実施形態において、本明細書において上記に示される受容体は、一般式Iを有する化合物の他の部分集合の製造において利用される。
【0173】
従って、なお別の実施形態において、本明細書において上記に示される一般式Iを有する化合物を製造する方法が提供され、Rは親のパロマミン化合物における対応するヒドロキシル基と比べて反転された立体配置を示すアミンであり、RおよびRはそれぞれヒドロキシルである。このような方法は、
(a)一般式III:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)
を有する化合物をトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させ、それによりその3’位にトリフルオロ−メタンスルホネート基を得ること:
(b)その3’位にトリフルオロ−メタンスルホネート基を有する化合物をナトリウムアジドと反応させること;ならびに
(c)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それによりRの位置にアミンを有する化合物を得ること
によって行われる。
【0174】
本実施形態によって製造された例示的な化合物は、後続の実施例の部分に示されるように、化合物8を含む。
【0175】
さらなる実施形態によれば、本明細書において上記に示される一般式Iを有する二量体化合物を製造する方法が提供され、Rは本明細書において上記に示される一般式Iを有する二糖類部分であり、ならびにRおよびRはそれぞれヒドロキシルである。このような方法は、
(a)一般式IIIを有する化合物を、一般式III

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
は、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
は、酸素または硫黄である)を有する別の化合物とカップリングさせること;ならびに
(b)ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の各々を除去し、それにより二量体化合物を得ること
によって行われる。
【0176】
二量体化合物は、ホモ二量体化合物であってよく、2つの二糖類が互いに同一である(すなわち、Y、X、Q、Q、Q、TおよびTならびにY、X、Q、Q、Q、TおよびTは、それぞれ同一である)か、またはヘテロ二量体であり、2つの二糖類がその中で1つ以上の特徴において異なる。
【0177】
本態様の他の好ましい実施形態によると、カップリングは、リンカー(該用語は先に定義されている)を介して実施される。好ましくは、リンカーはアルキルであり、より好ましくは、低級アルキルであり、そして最も好ましくは、リンカーはメチレン基である。
【0178】
このように、カップリングは二官能性化合物、好ましくは、二官能性アルキル(例えばメチレン)の存在下で実施され、それは2個の遊離(未保護の)ヒドロキシル基と反応し、それによりその間のカップリングに影響を及ぼす。本明細書で定義されるように、そのような二官能性化合物は、好ましくは2個の脱離基を有する。
【0179】
本実施形態によって製造された例示的な化合物は、後続の実施例の部分に示されるように、化合物9を含む。
【0180】
後続の実施例の部分で証明されるように、本明細書で示される化合物は、切断変異抑制活性、すなわち終止−コドン突然変異のリードスルーを誘発する能力を有するように設計され、そして実際にそれが示された。そのような活性は、これらの化合物を遺伝子疾患、特に切断変異により特徴づけられる疾患の治療のための治療的に活性な薬物としての使用に適した化合物とする。
【0181】
このように、本発明の別の態様によれば、遺伝子疾患を治療する方法が提供される。その方法は、本発明のこの態様にしたがって、それを必要とする被験体に、一般式Iを有する治療上有効量の1つ以上の本明細書で示される化合物を投与することにより実施される。
【0182】
本発明の本態様の範囲から除外されるのは、本明細書で上記のように、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよび上記された類似体または変形体である。
【0183】
本明細書中で使用される場合、用語「治療すること」および「治療」は、病態の進行を止めるか、実質的に阻害するか、遅らせるか、または後退させるか、病態の臨床的または感覚的な徴候を実質的に改善するか、または病態の臨床的または感覚的な徴候の出現を実質的に防止することを含む。
【0184】
本明細書中で使用される場合、用語「治療上有効量」は、治療されている病態の徴候の1つ以上をある程度まで取り除いてくれる、投与された高分子の量を言う。
【0185】
用語「遺伝子疾患」は、本明細書中で使用される場合、両親からしばしば継承される1つ以上の欠陥遺伝子に起因し、欠陥のある劣性遺伝子の2人の健康なキャリアが子供をつくる場合あるいは欠陥遺伝子が優性である場合に予想外に出現しうる慢性疾患を指す。遺伝子疾患は、異なる遺伝様式で現れ、それは遺伝子の1つの変異したコピーだけが子孫が影響を受けるのに必要である常染色体優性様式、および遺伝子の2つのコピーが子孫が影響を受けるのに変異される必要がある常染色体劣性様式を含むことができる。
【0186】
好ましい実施形態によれば、遺伝子疾患は、その不適切な翻訳をもたらす切断変異を有する遺伝子を含む。不適切な翻訳は、必須タンパク質の合成の減少または中止を引き起こす。
【0187】
そのような遺伝子疾患の例示として、非制限的には、嚢胞性線維症(CF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、毛細血管拡張性運動失調、ハーラー症候群、血友病A、血友病B、アッシャー症候群およびテイ−サックス病が挙げられる。
【0188】
したがって、遺伝子疾患を治療するための医薬の製造において、本明細書で示される一般式Iを有する化合物の使用が提供される。
【0189】
本明細書で記載された方法および使用のいずれにおいても、本明細書に記載される化合物は、それ自身で利用されうるし、または医薬組成物の一部を形成することができ、さらに医薬的に許容される担体を含む。
【0190】
このように、さらに本発明によれば、活性成分としての本明細書で記載の新規化合物のいずれかおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0191】
遺伝子疾患(定義により慢性である)の治療に主として向けられているので、本明細書で示される化合物またはそれを含む医薬組成物は、治療される被験体の一生の間、投与されることが予想される。したがって、その化合物を含む医薬組成物の投与様式は、投与のために容易かつ快適であること、好ましくは自己投与による必要があり、それに患者の幸福および生涯のためにできるだけ少額の料金を取るようになっている必要がある。
【0192】
本明細書で示された化合物およびそれを含む医薬組成物の反復投与および定期的投与は、例えば、1日単位で、つまり、1日に1度で達成することができ、より好ましくは、投与は週単位で、つまり、週に1度で達成され、より好ましくは、投与は月単位で、つまり、月に1度で達成され、最も好ましくは、投与は数か月に1度(例えば1.5か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、またはさらに6か月毎)に達成される。
【0193】
上記で議論したように、切断突然変異リードスルー薬物としての現在公知のアミノグリコシド類の使用に関するいくつかの限界は、それらが主に抗菌性(抗生物質薬物として使われる)であるという事実と関係している。任意の抗菌剤の慢性的な使用は非常に容認され難く、生命さえ脅かされる。それというのもそれが腸内細菌叢を変えて、炎症性腸疾患の紅班などの他の病状を引き起す場合があり、または悪化させる場合があり[67]、また微生物の若干の病理学的な菌株の耐性の出現を引き起こす場合がある[68−71]からである。
【0194】
本明細書で示された化合物は、好ましくは、抗菌活性を有しない。「非抗菌活性」により、特定の細菌株に関するその最小阻害濃度(MIC)は、この菌株に関して抗生物質と考えられる化合物の濃度より非常に高いことを意味する。さらに好ましくは、これらの化合物のMICは、切断変異抑制活性を発揮するために必要な濃度よりかなり高い。
【0195】
好ましくは非抗菌性であるので、本明細書で示される化合物は、前記の制限に悩まされず、したがって吸収経路を経由して投与することができ、該経路は、標的とされず、したがってそれらの維持さえ必要である場合がある良性および/または有益な微生物を含むことができる。本明細書で示される化合物の重要な特徴は、慢性病状に対してこれらの化合物を特に効果的な薬物とする。それというのも、それらは繰り返して、生涯の間、いかなる副作用、蓄積作用をもたらすことなく投与することができ、さらに経口的または経腸的に、つまり消化管を通して投与することができ、それは慢性疾患を治療することに向けられた薬物のための非常に役に立つ、重要な特性であるからである。
【0196】
好ましい実施形態によれば、本明細書で示される化合物は、真核生物細胞対原核生物細胞に対して選択的であり、すなわち、該化合物は原核生物細胞(例えば、細菌などの細胞)における活性に比べて、真核生物細胞(例えば、哺乳類(ヒト)などの細胞)でより高い活性を示す。どんな特定の理論にも束縛されることなく、本明細書で示される化合物(16SリボソームRNAのA−部位と結合することによって作用し、一方でリボソームは、遺伝子を翻訳することに関与することが知られている)は、真核生物のリボソームA−部位へのより高い親和性を有するか、さもなければ真核生物のリボソームA−部位対原核生物のリボソームA−部位に対して選択的であると推定される。
【0197】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に示される化合物と、他の化学的成分(例えば、医薬的に許容されかつ好適な担体および賦形剤)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物体に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0198】
以降、用語「医薬的に許容される担体」は、生物体に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的活性および生物学的性質を阻害しない担体または希釈剤を示す。担体の非限定的な例には、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルジョン、および有機溶媒と水の混合物、ならびに固体の担体(例えば、粉末状の担体)およびガス状の担体がある。
【0199】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0200】
薬物の配合および投与のための様々な技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0201】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々な方法によって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来の方法によって製造することができる。
【0202】
本発明に従って使用するための医薬組成物は、本明細書中に示される化合物を医薬として使用可能な製剤にする加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む一つ以上の医薬的に許容される担体を使用して従来のように配合されてもよい。適切な配合は選択された投与経路に依存する。
【0203】
好ましい実施形態によれば、最も好ましい投与経路は経口的に達成される。経口投与の場合、本明細書中に示される化合物は、化合物を、この分野で十分に知られている薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に配合することができる。そのような担体により、本明細書中に示される化合物は、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される薬学的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0204】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された活性成分を含有し得る。軟カプセルでは、本明細書中に示される化合物を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0205】
注射の場合、本明細書中に示される化合物は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る、緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩水緩衝液など)であって、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの如き有機溶媒を含むまたは含まない緩衝液において配合することができる。
【0206】
経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0207】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性なアミノグリコシド化合物の量を明らかにするために、または活性なアミノグリコシド化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0208】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0209】
吸入による投与の場合、本明細書中に示される化合物は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物(典型的には、粉末状の担体、液状の担体、および/またはガス状の担体を含む)の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器で使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、本明細書中に示される化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0210】
本明細書中に示される化合物は非経口投与、例えばボーラス注射または連続点滴のために配合されることができる。注射のための配合は、単位用量形態(例えばアンプルまたは多用量コンテナ)で提供されることができ、これらには所望により保存剤が添加されている。組成物は懸濁物、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルジョンであることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤の如き配合剤を含むことができる。
【0211】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態における化合物調製物の水溶液が含まれる。さらに、本明細書中に示される化合物の懸濁物を、適切なオイル状の注射用懸濁物およびエマルジョン(例えば、油中水型、水中油型、または油エマルジョン中の油中水型)として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有し得る。場合により、懸濁物はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするために本明細書中に示される化合物の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有し得る。
【0212】
あるいは、本明細書中に示される化合物は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌されたパイロジェン非含有水)を用いて構成される粉末形態にする。
【0213】
本明細書中に示される化合物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0214】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、固相またはゲル相の好適な担体または賦形剤を含むことができる。そのような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0215】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、活性成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果がある量は、処置されている被験体の疾患の症状を防止、軽減または改善するために、あるいは、処置されている被験体の生存を延ばすために効果的な本明細書中に示される化合物の量を意味する。
【0216】
治療効果がある量の決定は十分に当業者の範囲内であり、特に本願明細書で与えられる詳細な開示に鑑みればそうである。
【0217】
本実施形態の方法に使用される本明細書中に示される化合物に対して、治療的に有効な量または用量は最初に動物における活性アッセイから推定されることができる。例えば、活性アッセイによって測定されるような変異抑制レベルを含む循環濃度範囲(例えば切断変異の実質的なリードスルーを達成する試験化合物の濃度)を達成するために、用量は動物モデルで配合されることができ、かかる情報は人間に有用な用量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0218】
本明細書中に示される化合物の毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば対象化合物についてEC50(最大効果の50%が観察される化合物の濃度)およびLD50(試験された動物の50%の死を生ずる致死量)を測定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。
【0219】
投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」(第1章、1頁)を参照のこと)。
【0220】
投薬量および投薬間隔を、望ましい効果を維持するために十分である本明細書中に示される化合物の血漿中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータ(例えば、切断変異、すなわち変異コドンのリードスルーを有する遺伝子全体の発現の50%〜90%を達成するために必要な化合物の濃度)から推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
【0221】
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、時間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを越える血漿中レベルを維持する治療法を使用して投与されなければならない。
【0222】
処置される慢性状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は上述の徐放性組成物の単回投与であることも可能であり、処置の経過が、数日から数週間まで、あるいは、定期的な処置の間に十分な改善が達成されるまで、または、定期的な処置の間に疾患状態の実質的な縮小が達成されるまで続く。
【0223】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている被験体、苦痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。
【0224】
本発明の組成物は、所望される場合には、活性成分を含有する1つまたは複数の単位用量形態を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA(食品医薬品局)承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックまたは(吸入用の)加圧容器などである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴うことがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用担体に配合された本実施形態による化合物を含む組成物はまた、本明細書において上記に詳述されるように、適応される状態の処置または診断をするために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。
【0225】
従って、好ましい実施形態において、医薬組成物は、本明細書で規定されたように、包装材で包装されて、遺伝子疾患の治療で使用するために、包装材料中にまたは包装材料上に印刷されて識別される。
【0226】
本明細書において記載される組成物、方法および使用のいずれにおいても、化合物は遺伝子疾患の治療に有用な他の薬剤と組み合わせて利用されることができる。
【0227】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0228】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0229】
実施例1
化学合成
材料および方法:
H NMR、13C NMR、分極移動による無歪感度増大法(1D DEPT)、全相関分光法(TOCSY)、異種核多量子相関法(HMQC)および異核種間遠隔相関分光法(HMBC)のスペクトルを、Bruker Avance(商標)500分光計で記録した。ppmで報告される化学シフトは、溶媒としてCDClを用いた内部標準MeSi(δ=0.0)および溶媒としてDOを用いたHOD(水素オンデマンド、δ=4.63)に相対的である。
【0230】
質量分光分析を、電気噴霧電離質量測定(ESIMS)条件のためのBruker Daltonix Apex 3の質量分析計で、またはMALDI−TOF条件下、TSQ−70B質量分光計(Finnigan Mat)MALDI微細質量分光計で、α−シアノ−4−ヒドロキシケイヒ酸マトリックスを使用して行った。
【0231】
反応をシリカゲル(ゲル60 F254、0.25mm、メルク)上でTLCによってモニタリングし、スポットを10%HSO(800ml)中(NHMo24・4HO(120グラム)と(NHCe(NO(5グラム)とを含む黄色溶液で炭化することによって視覚化した。
【0232】
フラッシュカラムクロマトグラフィを、シリカゲル「ゲル60」(70〜230メッシュ)で実施した。
【0233】
反応を全てアルゴン雰囲気下で実施し、特に明記しない限り、無水溶媒を使用した。
【0234】
化学薬品は全て、特に明記しない限り、一般の販売業者から得た。
【0235】
一般的な合成概要:
一連の新規化合物を、中途終止突然変異に起因するヒトの遺伝子疾患の治療のために、本実施形態にしたがって設計した。全ての化合物を、パロモマイシンに由来するパロマミンから誘導した。
【0236】
化合物2〜9を、図2に示す経路に従って合成した。図2で分かるように、基本的な合成は、二糖類パロマミン(ここでは、化合物1と称される)へのルイス酸で促進されたパロモマイシンの直接的な切断を含み、したがって、設計された化合物の製造に共通の出発原料として使用される。下記の合成で使用される保護基を、結合および除去のそれらの容易性、ならびに反応条件下でのそれらの安定性に基づいて選択した。N−ヨードスクシンイミド(NIS)[72]を用いるチオグリコシドのグリコシド化方法およびBF[73]を用いるトリクロロアセチミデートのグリコシド化方法は、迅速かつ効率的の両方であることが分かった。リボフラノシド供与体である化合物14a、14b、15aおよび15b(下記スキーム1参照)のC−2位でのベンゾアートエステルによる保護は、化合物2〜7における隣接基関与により、環IIIとパロマミン部分との間での選択的なβ−グリコシド結合形成が可能となるように特別に設計した。

【0237】
上記のスキーム1で見られる試薬および条件は以下を含む:(a)TfN、EtN、CuSO(CHCl/MeOH/HO中、3:10:3);(b)AcO(4.2当量)、ピリジン、−6℃;(c)シクロヘキサノンジメチルケタール、CSA、DMF、110℃;(d)BzCl、ピリジン;(e)TFA/HOの5:3、THF、40℃;(f)アニスアルデヒド−ジメチルアセタール、CSA、DMF、50℃;および略語は以下の通りである:Tf=トリフルオロメタンスルホニル、CSA=カンファースルホン酸、DMF=ジメチルホルムアミド、Bz=ベンゾイル、TFA=トリフルオロ酢酸、PMP=p−メトキシフェニル。
【0238】
化合物2〜7の製造は、3つの適切に保護された異なるパロマミン受容体、すなわち、化合物11〜13を使い、それらはC5、C6、およびC3’位でパロマミン部分のヒドロキシル基をグリコシド化反応に対して選択的に露出し、C5ヒドロキシル基を反応に対して最も感受性とし、C3’ヒドロキシル基を最も弱い感受性とした。これらの受容体分子は、上記のスキーム1中で示されるようにパロマミン(化合物1)から容易に入手できた。
【0239】
化合物10の無水酢酸による低温での位置選択的アシル化は、受容体化合物11を65%の収率で与えた[74]。別の経路では、シクロヘキサノンジメチルケタールによる化合物10の処理は、第2の受容体である化合物12を与え、C3’位のヒドロキシル基を除いて、すべての官能基を保護した。化合物12のベンゾイル化の後に酸加水分解およびベンジリデンアセタール形成工程が続いて、第3の受容体である化合物13を全3工程に対して86%の単離収率で得た。
【0240】
次いで、パロマミン受容体化合物11〜13を、2組のグリコシル供与体、すなわち化合物14a〜14bと化合物15a〜15bとを用いてグリコシル化反応に別々に付して、下記のスキーム2で示されるように、設計された保護誘導体化合物16〜18を68〜95%の全収率で提供した。以下に示されるように、化合物16〜18の構造を、HMQC、HMBC、2D−COSY、および1D TOCSY NMR分光法を含むいろいろな分光技術の組合せによって確認した。次いで、これらの保護された化合物を、2段階または3段階のいずれかの脱離反応に付した:メチルアミン(EtOH中33%溶液)処理によるすべてのエステルの除去、Staudinger反応によるすべてのアジド基の還元反応、ならびにトリフルオロ酢酸水溶液でのO−ベンジリデンアセタールおよびシクロヘキシリデンケタールの加水分解は、下記のスキーム2で見られるように、最終的な化合物2〜7を優れた純度および単離収率で与えた。

【0241】
上記スキーム2で見られる試薬および条件は、以下を含む:(a)化合物15aまたは化合物15b、BF−EtO(触媒量)、CHCl、4Åのモレキュラーシ−ブ、化合物11→化合物16a(85%)、化合物11→化合物16b(71%)、化合物12→化合物18a(95%)、化合物12→化合物18b(93%);(b)(i)MeNH(EtOH中33%溶液)、(ii)PMe(THF中1M)、NaOH 0.1M、THF、室温;化合物16a→化合物2(84%)、化合物16b→化合物3(91%)、化合物17a→化合物4(2工程に対して75%)、化合物17b→化合物5(44%)、化合物18a→化合物6(84%)、化合物18b→化合物7(75%);(c)化合物14aまたは化合物14b NIS、TfOH(触媒量)、CHCl、4Åのモレキュラーシ−ブ、化合物13→化合物17a(68%)、化合物13→化合物17b(76%);(d)化合物17aに関してAcOH/HO 6:1、THF 50℃、化合物17b(52%)に関してTFA/HO 3:2、THF、60℃°、化合物18a(75%)に関してAcOH/HO 10:3、1,4−ジオキサン、化合物18b(82%)に関してTFA/HO 5:1、THF、50℃;および略語は次のとおりである:PMP=p−メトキシフェニル、NIS=N−ヨードスクシンイミド、Tf=トリフルオロメタンスルホニル、CSA=カンファースルホン酸、DMF=ジメチルホルムアミド、Bz=ベンゾイル,TFA=トリフルオロ酢酸。
【0242】
下記のスキーム3は、化合物8〜9の製造を示す。D−アロ配置を有する化合物8中の環Iを、C3’位で選択的に配置を反転することによって、化合物1から製造した。化合物12におけるC3’位のヒドロキシル基のトリフルオロメタンスルホニル化の後に、アジドによる求核的置換により対応するシス−ジアジド化合物19を2工程に対して82%の収率で得た。シクロヘキシリデンケタールの酢酸水溶液による加水分解、次いで上記したような2段階脱保護により、設計された化合物8を68%の収率で提供した。同じ受容体化合物12をNaHの存在下、CHBrで処理して、保護された二量体化合物20を82%の収率で得て、化合物19の場合のように同様の3段階脱保護により、所望の二量体化合物9を86%の収率で得た。

【0243】
上記スキーム2で見られる試薬および条件は次を含む:(a)TfO、ピリジン、(92%);(b)NaN、DMF、HMPA、(72%)、(c)化合物19に対してはAcOH/HO 8:1、1、4−ジオキサン、75℃、(60%)、化合物20に対しては、TFA/HO 5:6、THF、60℃、(90%);(d)(i)MeNH(EtOH中33%溶液)、(ii)PMe(THF中1M)、NaOH 0.1M、THF、室温;化合物19→化合物8(76%)、化合物20→化合物9(81%)、(e)CHBr、NaH、DMF/HMPA 2:1、4Åモレキュラーシ−ブ、(82%)、および略語は次のとおりである:HMPA=ヘキサメチルホスホルアミド。
【0244】
化合物10に基づいて、中間体化合物10−AHB(参照:下記のスキーム4)は、パロマミン核を有しているが、さらに、それはN1位での(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)置換を含む。N1−AHB置換は、リードスルー活性および毒性の両方をさらに改善することが期待される。この期待は、アミカシンがCFTRタンパク質の修復に対してゲンタマイシンより良好に機能するという最近の観察[75]により支持される。カナマイシンA(N1位でのAHB置換の不在のみがアミカシンと異なる)は、何らのリードスルー活性も示さない[6]。
【0245】
中間体化合物21および23(参照:下記のスキーム4)は、それぞれG−418およびゲンタマイシンに対応する。化合物21および23は、より良好な腎毒性および細胞毒性を達成するためにC6’−ジアステレオマーの混合物と分離されたC6’−ジアステレオマーとを製造するのに用いる。この立体化学の問題は、ゲンタマイシンCで試験[64]したが、G−418のC6’−ジアステレオマーは文献に見当たらない。3’−OH基および4’−OH基を、ゲンタマイシンCに関して観察されるようにさらに毒性を減らす試みにおいて、化合物23に付加する。構造−活性研究のために、中間体化合物21および23の環IIをさらに修飾するための試みにおいて、中間体化合物22および24は、G−418およびアミカシン(化合物22に対応する)またはゲンタマイシンおよびアミカシン(化合物24に対応する)の官能基を1つの分子中で組み合わせている。

【0246】
5つの全ての化合物10−AHB、21、22、23および24の製造は、共通の出発原料としてパロモマイシンから容易に入手できるパロマミン(化合物1)を用いて開始する[76]:CbzによるN2’およびN3における化合物1の選択的保護、続いて公開された手順[77−80]にしたがって、化合物1の対応するN1−AHB誘導体を得るために、AHB(NOS−AHB−Cbz)の活性エステルで処理し、この中間体をPd/Hで処理して化合物10−AHBを得る。
【0247】
パロマミン1へのAHBの導入のための類似した工程、引き続く選択的なアセチル化によりC5−受容体化合物25を与え、化合物25と5”−アジドリボース[76]のトリクロロアセタミデ−ト供与体とのカップリング、続いての脱保護工程により、下記のスキーム5に示すように設計された擬似三糖類化合物26を与える。G−418へのAHBの導入のための類似した工程およびその後の脱保護工程は、そのN1−AHB類似体化合物27を与える(参照:スキーム5)。

【0248】
上記スキーム5で見られる試薬および条件は次を含む:(a)(i)Cu(OAc)、Ni(OAc)、Cbz−NOS;(ii)NOS−AHB−Cbz、DCC、HOBT;(iii)4.2当量のAcO、Py、−7℃;(b)(i)BF−OEt、DCM/MeCN;(ii)MeNH(EtOH中33%溶液);(iii)Pd/C、H、ジオキサン、AcOH;(c)(i)Zn(OAc)、Cbz−NOS;(ii)NOS−AHB−Cbz、DCC、HOBT;および(d)Pd/C、H、ジオキサン、AcOH。
【0249】
化合物21の製造のために、下記のスキーム6で示されるように、パロマミンを一連の7つの工程に付して化合物28をC6’−ジアステレオマー混合物として得る。これらのジアステレオマー混合物の絶対立体化学を決定するために、各々をベンズアルデヒドジメチルアセタールで処理して対応するベンジリデンアセタールの化合物29(エクアトリアルまたはアキシアルのC6’−メチル基を有する)を与える。各々のジアステレオマー中のC6’−プロトンのカップリング定数とともに、C5’−プロトンを有するこれらのメチレン基のNOEスペクトルは、C6’−中心での絶対配置の決定を可能にする。同様に、ゲンタマイシン誘導体化合物23のC6’位における絶対配置を決定する。この趣旨で、化合物28を最初に対応するアミン化合物30に変換して、Trocによる保護およびNaHによる処理の後に、対応する環状のオキサゾリジノン化合物31を与える。化合物28および化合物30の各々のジアステレオマーを、その後、Staudinger反応に付し、上記スキーム5で示されているように、同様の一連の反応により対応するN1−AHB誘導体化合物22および化合物24を与える。

【0250】
上記スキーム6で見られる試薬および条件は次を含む:(a)(i)TfN、Cu(II);(ii)TIPSCl、Py;(iii)PMBCl、NaH、DMF;(iv)HF/Py;(v)Swern酸化;(vi)MeMgBr、EtO;(vii)TFA;(b)Ph(OMe)、CSA;(c)(i)シクロヘキサノンジメチルケタール、CSA;(ii)Swern酸化;(iii)NH、NaBCNH、MeOH;(iv)AcOH、MeOH/HO;および(d)(i)TrocCl、DCM、EtN;(ii)NaH、DMF。
【0251】
類似した合成経路を用いて、下記スキーム7およびスキーム8で示される3系列の化合物を、化合物の各系列に対する対応する受容体化合物、すなわち第1系列に対する中間体化合物32(スキーム7)、第2系列に対する中間体化合物33および第3系列に対する中間体化合物34(スキーム8)ならびに3つの異なる供与体化合物14b、35および36を用いて製造する。供与体化合物35および36を、所望の1,2−シス−グリコシド結合形成を可能にするために、C2−OHの位置でのエーテル保護(化合物35ではp−メトキシベンジルおよび化合物36ではベンジル)により特別に設計する。

【0252】
供与体化合物35を、以下の工程でゲンタマイシンから良好な単離収率で得た:MeOH、AcCl、還流(90%収率);TrocCl、NaHCO、CHC1/HO(93%収率);BzCl、Py(70%収率);TolSH、BF−EtO(53%収率);EtOH中MeNH(90%収率);NaH、PMBCl、TBAI(82%収率)。化合物35でのオキサゾリジノン保護は、標準的なグリコシル化反応の下では非常に効率的であることが分かった。このオキサゾリジノン環は、加熱しながらの塩基性(NaOH)Staudinger条件下で、自発的な開環を受ける。このように、上記スキーム7で概して示すように、受容体32の供与体14b、35または36のいずれかとのカップリング、続いての脱保護工程は、所望の化合物3、37〜41を与えた。
【0253】
供与体化合物35を、以下の工程でゲンタマイシンから良好な単離収率で得た:MeOH、AcCl、還流(90%収率);TrocCl、NaHCO、CHC1/HO(93%収率);BzCl、Py(70%収率);TolSH、BF−EtO(53%収率);EtOH中MeNH(90%収率);NaH、PMBCl、TBAI(82%収率)。化合物35でのオキサゾリジノン保護は、標準的なグリコシル化反応の下では非常に効率的であることが分かった。このオキサゾリジノン環は、加熱しながらの塩基性(NaOH)Staudinger条件下で、自発的な開環を受ける。このように、上記スキーム7で示すように、受容体32と供与体、すなわち化合物14b、35または36のいずれかとのカップリング、続いての脱保護工程は、所望の化合物3、37〜41を与える。
【0254】
同様に、これらの供与体(化合物14b、35および36)と適切な受容体、すなわち化合物33または34とのカップリング(NIS、AgOTf、EtO/CHCl)は、対応する保護された化合物を提供し、これらは標準的な脱保護工程の後で、下記のスキーム8で示すように、化合物42〜53の所望のC5−およびC6−結合誘導体を与える。

【0255】
次の例は、スキーム1〜3で先に概説されるように、化合物2〜9に至る化合物を製造するための詳細な合成手順を示す。
【0256】
パロマミン(化合物1)の製造:

化合物1を、Swayzeおよび共同研究者らの発表された手順[74]をいくらか改変して、ルイス酸促進によるパロモマイシンの直接的切断により製造した。
【0257】
塩化アセチル(35ml)を、0℃で10分間かけて無水メタノール(215ml)の攪拌溶液に添加した。さらに約15分間攪拌した後、市販のパロモマイシン硫酸塩サンプル(25グラム、31.0mmol)を添加し、反応は70℃で加熱還流した。反応の進行は、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を用いてTLCによってモニタリングし、4時間後に反応の完了を示した。反応混合物を冷凍庫で約2時間冷却し、濾過し、残渣を最小量の水に溶解させた。この濃縮水溶液を冷エタノール(500ml、0℃)に滴下して加え、生成したエマルジョンを冷凍庫に約2時間置いた。混合物を濾過し、残渣を真空乾燥して化合物1を白色固体(12.5g、94%収率)として得た。
【0258】
化合物1のH NMR(500MHz、DO、pH=3.5)データは、下記の表1に要約される。

【0259】

1225 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:347.2;実測値 m/e:347.2。
【0260】
化合物10の製造:

化合物10を、化合物1の全てのアミン基をTfNで処理して対応するアジド基に同時変換して化合物10を90%の収率で得る発表された手順[81]に従って、化合物1(パロマミン)から製造した。
【0261】
化合物11の製造:

化合物11を、Swayzesおよび共同研究者らの発表された手順[74]に以下の改変をおこなって、過アジド誘導体である化合物10から無水酢酸による位置選択的アセチル化により低温で製造した。
【0262】
発表された手順[81]によって製造された化合物10(2グラム、5mmol)を乾燥ピリジン(5ml)に溶解し、得られた混合物を−6℃に冷却し、その後、無水酢酸(4.2当量、2.65ml)をそれへ添加した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、2:3)によってモニタリングし、8時間後に反応の終了を示した。反応物をEtOAcで希釈して、HCl(2%)、飽和NaHCO水溶液とおよび塩水で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン)によって精製して化合物11(1.84グラム、65%収率)を得た。
【0263】
202711 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:592.2;実測値 m/e:592.2。
【0264】
化合物12の製造:

シクロヘキサノンジメチルケタール(30ml、200mmol)および触媒量のカンファースルホン酸(CSA)を、化合物10(8.9グラム、22.2mmol)の乾燥DMF(30ml)溶液に加えた。反応系を50℃で1時間攪拌し、反応の進行をTLC(100%EtOAc)によってモニタリングし、出発原料の完全な消費を示した。その後、反応系を油浴中で110℃まで加熱し、反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、2:3)によってモニタリングし、4時間後に反応の完了を示した。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液および塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィによって精製して化合物12(8.5グラム、67%収率)を得た。
【0265】

【0266】
13C NMR(125MHz,CDCl):δ=(そうでないことを示さない場合、22.4〜37.8の範囲はシクロヘキサノン炭素原子に関する)22.5,22.8,23.7(2C),24.9,25.5,27.8,33.9,36.0,36.3,37.8,57.2,60.4,61.5(C−6’),61.9,64.0,68.7,73.7,76.8,79.3,79.4,97.0(C−1’),99.1(OCO シクロヘキサノンケタール),113.7(OCO シクロヘキサノンケタール)。
【0267】
2435 Naに対するESIMS([M+Na])m/eの計算値:584.3;実測値 m/e:584.3。
【0268】
化合物13eの製造:

化合物12(2.5グラム、4.45mmol)を乾燥ピリジン(20ml)に溶解し、4−ジメチルアミノピリジン(0.5グラム、4.6mmol)を添加した。反応混合物を室温で5分間攪拌し、その後、塩化ベンゾイル(1.3ml、0.9mmol)を加えた。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、1:4)によってモニタリングし、約8時間後に反応の終了を示した。反応混合物をEtOAcで希釈し、HCl(2%)、HOおよび塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、減圧濃縮した。
【0269】
粗生成物をTFA(5ml)と水(3ml)とを加えたTHF(20ml)に溶解した。反応混合物を40℃で8時間攪拌し、その間、反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、7:3)によってモニタリングした。反応混合物をさらに処理することなくフラッシュクロマトグラフィ(シリカ、EtOAc/ヘキサン)によって直接精製して化合物13e(2グラム、89%の全収率)を得た。
【0270】

【0271】

【0272】
1923 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:528.2;実測値 m/e:528.2。
【0273】
化合物13の製造:

1−(ジメトキシメチル)−4−メトキシベンゼン(1.3ml、7.6mmol)および触媒量のCSAを、乾燥DMF(10ml)に溶解された化合物13e(1.93グラム、3.82mmol)の溶液に加えた。反応混合物を50℃で攪拌し、反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、1:1)によってモニタリングし、8時間後に反応の完了を示した。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液および塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィによって精製して化合物13(2グラム、84%収率)を得た。
【0274】

【0275】

【0276】
2729 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:623.2;実測値 m/e:623.2。
【0277】
p−メチルフェニル−2,3,5−トリ−O−ベンゾイル−1−チオ−D−リボフラノース(化合物14a)の製造:

4−メチルベンゼンチオール(0.6グラム、4.83mmol)およびBF−EtO(1.5ml)を、CHCl(25ml)に溶解された1−O−アセチル−2,3,5−トリ−O−ベンゾイル−β−D−リボフラノース(2.0グラム、3.96mmol)の溶液に加えた。得られた混合物をアルゴン雰囲気下、室温で攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、1:4)によってモニタリングし、8時間後に反応の完了を示した。反応混合物をEtOAc(200ml)で希釈し、飽和NaHCOで中和し、塩水で洗浄した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン)によって精製して化合物14a(2.0グラム、89%収率)をアノマー混合物(α/β 3:5)として得た。
【0278】
αアノマーのスペクトル分析:

【0279】
βアノマーのスペクトル分析:

【0280】
3328S Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:591.2;実測値 m/e:591.3。
【0281】
5−デオキシ−5−アジド−2,3−ジ−O−ベンゾイル−1−O−トリクロロアセチミド−D−リボフラノース(化合物15b)の製造:

N−ブロモスクシンイミド(NBS、0.8g、4.41mmol)を化合物14b(1.8グラム、3.67mmol)(発表された手順[82]に従って製造された)の−10℃に冷却されたアセトン(30ml)溶液に加え、反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、3:7)によってモニタリングし、2時間後に反応の完了を示した。反応混合物をEtOAc(200ml)で希釈し、NHClおよび塩水で洗浄した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧留去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン)によって精製して所望のアノマーアルコールを得た。
【0282】
該中間体アルコールを乾燥CHCl(10ml)に溶解し、CClCN(1.7ml、11.8mmol)およびKCO(200mg、1.4mmol)をそれに加えた。混合物を室温で攪拌し、反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、3:7)によってモニタリングし、8時間後に反応の完了を示した。反応混合物をCHClで希釈し、セライトで濾過した。セライトをCHClで十分に洗浄し、蒸発乾固して化合物15b(1.89グラム、97%の合計収率)をアノマー混合物(α/β 1:9)として得た。
【0283】
αアノマーのスペクトル分析:

【0284】
1917 Naに対するESIMS([M−CNCl+Na])m/eの計算値:406.1;実測値 m/e:406.1。
【0285】
化合物16aの製造:

無水CHCl(5ml)を粉末状の火炎乾燥した4Åモレキュラーシーブ(500mg)に加え、受容体化合物11(300mg、0.527 mmol)(上記に示されるように製造された)および供与体化合物15a(1.15グラム、1.896mmol)(公表された手順[82]に従って製造された)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、次に、−40℃まで冷却した。その後、触媒量のBF−EtO(10μl)を反応混合物に加え、−15℃で攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、3:7)によってモニタリングし、1.5時間後に反応の完了を示した。反応混合物をCHClで希釈し、セライトで濾過した。セライトをCHClで十分に洗浄後、洗液を合わせ、飽和NaHCO水溶液、塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィによって精製して化合物16a(452mg、85%の収率)を得た。
【0286】
化合物16aのH NMR(500MHz、CDCl)データは、下記の表2に要約される。

【0287】

【0288】

【0289】
464718 Kに対するMALDI TOFMS([M+K])m/eの計算値:1052.3;実測値 m/e:1052.4。
【0290】
化合物16bの製造:

【0291】
無水CHCl(5ml)を粉末状の火炎乾燥した4Åモレキュラーシーブ(500mg)に加え、受容体化合物11(300mg、0.527mmol)および供与体化合物15b(1グラム、1.896mmol)(ともに上記に示されるように製造された)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、次に、−40℃まで冷却した。その後、触媒量のBF−EtO(10μl)を反応混合物に加え、−15℃で攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、3:7)によってモニタリングし、1.5時間後に反応の完了を示した。反応混合物をCHClで希釈し、セライトで濾過した。セライトをCHClで十分に洗浄後、洗液を合わせ、飽和NaHCO水溶液、塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィによって精製して化合物16b(350mg、71%の収率)を得た。
【0292】
化合物16bのH NMR(500MHz、CDCl)データは、下記の表3に要約される。

【0293】

【0294】

39421216 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:957.3;実測値 m/e:957.5。
【0295】
化合物17aの製造:

無水CHCl(5ml)を粉末状の火炎乾燥した4Åモレキュラーシーブ(800mg)に加え、受容体化合物13(420mg、0.674mmol)および供与体化合物14a(334mg、0.808mmol)(ともに上記に示されるように製造された)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、次に、N−ヨードスクシニミド(NIS、290mg、0.129mmol)を反応混合物に加え、室温で5分間攪拌した。その後、反応混合物を−40℃まで冷却し、触媒量のTfOH(10μl)を反応混合物に加えた。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、2:3)によってモニタリングし、2時間後に反応の完了を示した。反応混合物をCHClで希釈し、セライトで濾過した。セライトをEtOAcで十分に洗浄後、洗液を合わせ、Na(10%)、飽和NaHCO水溶液、塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィによって精製して化合物17a(490mg、68%の収率)を得た。
【0296】
化合物17aのH NMR(500MHz、CDCl)データは、下記の表4に要約される。

【0297】

【0298】

【0299】
534916 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:1090.3;実測値 m/e:1090.3。
【0300】
化合物17bの製造:

無水CHCl(5ml)を粉末状の火炎乾燥した4Åモレキュラーシーブ(500mg)に加え、受容体化合物13(350mg、0.561mmol)および供与体化合物14b(334mg、0.682mmol)(ともに上記に示されるように製造された)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、次に、NIS(290mg、0.129mmol)を反応混合物に加え、室温で5分間攪拌した。その後、反応混合物を−40℃まで冷却し、触媒量のTfOH(10μl)を反応混合物に加えた。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、2:3)によってモニタリングし、2時間後に反応の完了を示した。反応混合物をCHClで希釈し、セライトで濾過した。セライトをEtOAcで十分に洗浄後、洗液を合わせ、Na(10%)、飽和NaHCO水溶液、塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィによって精製して化合物17b(420mg、76%の収率)をアノマー混合物(α/β 1:5)として得た。
【0301】
化合物17bのH NMR(500MHz、CDCl)データは、下記の表5に要約される。

【0302】

【0303】

【0304】
46441214 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:1011.3;実測値 m/e:1011.6。
【0305】
化合物18aの製造:

無水CHCl(5ml)を粉末状の火炎乾燥した4Åモレキュラーシーブ(500mg)に加え、受容体化合物12(200mg、0.356mmol)および供与体化合物15a(300mg、0.494mmol)(ともに上記に示されるように製造された)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、次に、−40℃まで冷却した。その後、触媒量のBF−EtO(10μl)を反応混合物に加え、−20℃で攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、15:85)によってモニタリングし、3時間後に反応の完了を示した。反応混合物をCHClで希釈し、セライトで濾過した。セライトをCHClで十分に洗浄後、洗液を合わせ、飽和NaHCO水溶液、塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィによって精製して化合物18a(340mg、95%の収率)を得た。
【0306】
化合物18aのH NMR(500MHz、CDCl)データは、下記の表6に要約される。

【0307】

【0308】

【0309】
505514 Naに対するESIMS([M+Na])m/eの計算値:1044.4;実測値 m/e:1044.4。
【0310】
化合物18bの製造:

無水CHCl(5ml)を粉末状の火炎乾燥した4Åモレキュラーシーブ(500mg)に加え、受容体化合物12(340mg、0.605mmol)および供与体化合物15b(600mg、1.107mmol)(ともに上記に示されるように製造された)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、次に、−20℃まで冷却した。その後、触媒量のBF−EtO(10μl)を反応混合物に加え、−20℃で攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、15:85)によってモニタリングし、3時間後に反応の完了を示した。反応混合物をCHClで希釈し、セライトで濾過した。セライトをCHClで十分に洗浄後、洗液を合わせ、飽和NaHCO水溶液、塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィによって精製して化合物18b(520mg、93%の収率)を得た。
【0311】
化合物18bのH NMR(500MHz、CDCl)データは、下記の表7に要約される。

【0312】

【0313】

【0314】
43501212 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:949.4;実測値 m/e:949.3。
【0315】
化合物19aの製造:

化合物12(300mg、0.534mmol)をCHCl(3ml)に溶解し、乾燥ピリジン(5ml)に加えた。反応混合物を室温で5分間攪拌し、氷浴中で−15℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO、300mg、1.067mmol)を5分かけて滴下して加えた。15分後氷浴を除き、反応混合物を室温まで加熱した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン 1:4)によってモニタリングし、1.5時間後に反応の終了を示した。反応物をCHClで希釈し、飽和NaHCO水溶液、HCl(2%)および塩水で抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィにより精製して化合物19a(340mg、92%の収率)を得た。
【0316】

【0317】
13C NMR(125MHz,CDCl):δ=(そうでないことを示さない場合、22.4〜37.6の範囲はシクロヘキサノン環炭素原子に関する)22.1,22.2,23.7(2C),24.8,25.5,27.7,33.7(C−2),36.0,36.3,37.6,57.2,60.2,61.0,61.3(C−6’),64.4,70.9,77.7,78.1,78.3,79.2,83.2(C−3’),97.7(C−1’),100.7(OCO シクロヘキサノンケタール),114.0(OCO シクロヘキサノンケタール)。
【0318】
2534S Naに対するESIMS([M+Na])m/eの計算値:716.2;実測値 m/e:716.2。
【0319】
化合物19の製造:

上記で示したように製造された化合物19a(330mg、0.476mmol)をDMF(2ml)およびヘキサメチルホスホルトリアミド(HMPA、1ml)に溶解し、NaN(310mg、4.77mmol)を添加し、反応混合物を80℃で攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン 15:85)によってモニタリングし、2時間後に反応の完了を示した。反応物をCHClで希釈し、塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィにより精製して化合物19(200mg、72%の収率)を得た。
【0320】
化合物19のH NMR(500MHz、CDCl)データは、下記の表8に要約される。

【0321】
化合物19に対するさらなるH NMR(500MHz、CDCl)データは:δ=1.26−1.93(m,20H,シクロヘキサン環)を含んでいた。
【0322】
13C NMR(125MHz,CDCl):δ=(そうでないことを示さない場合、22.6〜37.6の範囲はシクロヘキサン環炭素原子に関する)22.6(2C),23.7(2C),24.9,25.5,27.8,34.2(C−2),35.9,36.3,37.6,56.9,57.3,59.8,60.4,60.8,61.4(C−6’),70.9,77.1,79.3(2C),96.5(C−1’),100.0(OCO シクロヘキサノンケタール),113.6(OCO シクロヘキサノンケタール)。
【0323】
243412 Naに対するESIMS([M+Na])m/eの計算値:609.3;実測値 m/e:609.3。
【0324】
化合物19cの製造:

上記で示したように製造された化合物19(200mg、0.352mmol)をジオキサン(3ml)に溶解し、酢酸(8ml)および水(1ml)に加え、反応混合物を75℃で攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン 7:3)によってモニタリングし、3時間後に反応の完了を示した。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液および塩水で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧濃縮し、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ、EtOAc/ヘキサン)により精製して化合物19c(90mg、60%の収率)を得た。
【0325】

【0326】

【0327】
121912に対するMALDI TOFMS([M+H])m/eの計算値:427.3;実測値 m/e:427.3。
【0328】
化合物20の製造:

DMF/HMPA(2:1、3ml)の乾燥混合物を粉状の火炎乾燥した4Åモレキュラーシーブ(500mg)に加え、ジブロモメタン(19μl、0.26mmol)と上記で示したように製造された受容体化合物12(290mg、0.516mmol)とを添加した。反応混合物を室温で10分間攪拌し、−10℃に冷却し、次いでNaH(19mg、0.792mmol)をそれに加えた。15分間攪拌後に、反応混合物を40℃に加熱した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、15:85)によってモニタリングし、2時間後に反応の完了を示した。反応混合物をEtOAcで希釈し、セライトで濾過した。セライトをEtOAcで十分に洗浄後、洗液を合わせ、塩水で抽出し、MgSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗製物をフラッシュクロマトグラフィにより精製して化合物20(240mg、82%の収率)を得た。
【0329】
化合物20のH NMR(500MHz、CDCl)データは、下記の表9に要約される。

【0330】
化合物20に対するさらなるH NMR(500MHz、CDCl)データは:δ=1.23−1.70(m,40H,シクロヘキサン環),5.21(s,2H,H−1”)を含んでいた。
【0331】
13C NMR(125MHz,CDCl):δ=(そうでないことを示さない場合、22.4〜37.6の範囲はシクロヘキサン環炭素原子に関する)22.4,23.5(2C),24.7,25.4,27.5(C−2),33.7,35.8,36.1,37.6,57.0,60.4,61.5(C−6’),62.1,63.9,73.6,74.1,78.0,78.2,96.6(C−1” 他の半分),97.0(C−1’),99.6(OCO シクロヘキサノンケタール),115.4(OCO シクロヘキサノンケタール)。
【0332】
49701814 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:1157.5;実測値 m/e:1157.4。
【0333】
化合物20cの製造:

【0334】
化合物20(240mg)(上記で示したように製造された)をTHF(5ml)に溶解し、TFA(1ml)と水(1.2ml)との混合物に加えた。反応混合物を60℃で2時間攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、9:1)によってモニタリングした。反応混合物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカ、EtOAc/ヘキサン)により精製して化合物20c(155mg、90%の収率)を得た。
【0335】

【0336】

【0337】
25381814 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:837.3;実測値 m/e:837.2。
【0338】
化合物2の製造:

【0339】
化合物2を下記のスキーム9で示すチャートに従って製造した。化合物10から出発し、化合物11に変換して、化合物15aとカップリングして上記で示した化合物16aを得た。

【0340】
上記で示されるように製造された化合物16a(450mg、0.444mmol)をMeNH(30mlのEtOH中、33%溶液)の溶液で処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、7:3)によってモニタリングし、8時間後に反応の完了を示した。反応混合物を減圧下で蒸発乾固し、残渣をTHF(5ml)とNaOH水溶液(0.1M、3.5ml)との混合物に溶解した。この混合物を室温で10分間攪拌し、その後、PMe(THF中1M溶液、2.66mlのTHF、2.66mmol)をそれに加えた。反応の進行を、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を使用して、TLCによってモニタリングし、5時間後に反応の完了を示した。
【0341】
反応混合物をシリカゲルの短いカラム上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。カラムを以下の溶媒で洗浄した:THF(100ml)、CHCl(200ml)、EtOH(100ml)、およびMeOH(150ml)。生成物をMeNH(EtOH中33%溶液)とMeOHとの1:4の比率の混合物により溶出した。生成物を含む画分を合わせ、減圧下で蒸発し、少量の水に再溶解し、減圧下で再び蒸発した。この手順を2〜3回繰り返して、化合物2(170mg、84%の収率)の遊離アミン形態を得た。この生成物を水に溶解し、pHをHSO(0.01M)で6.5に調整し、凍結乾燥して化合物2の硫酸塩を得た。
【0342】
化合物2のH NMR(500MHz、DO,pH=3.5)データは、下記の表10に要約される。

【0343】

173311 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:478.2;実測値 m/e:478.2。
【0344】
化合物3の製造:

化合物3を下記のスキーム10で示すチャートに従って製造した。化合物10および化合物14bから出発し、化合物11および化合物15bにそれぞれ変換して、互いにカップリングして上記で示した化合物16bを得た。

【0345】
上記で示されるように製造された化合物16b(320mg、0.342mmol)をMeNH(30mlのEtOH中、33%溶液)の溶液で処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、7:3)によってモニタリングし、8時間後に反応の完了を示した。反応混合物を減圧下で蒸発乾固し、残渣をTHF(3.7ml)とNaOH水溶液(0.1M、2.5ml)との混合物に溶解した。この混合物を室温で10分間攪拌し、その後、PMe(THF中1M溶液、2.74mlのTHF、2.74mmol)をそれに加えた。反応の進行を、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を使用して、TLCによってモニタリングし、5時間後に反応の完了を示した。
【0346】
生成物を化合物2について上記に示されるように精製し、遊離アミンとして化合物3(142mg、91%の収率)を得た。
【0347】
化合物3のH NMR(500MHz、DO,pH=3.5)データは、下記の表11に要約される。

【0348】

【0349】
173310 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:477.2;実測値 m/e:477.5。
【0350】
化合物4の製造:

化合物4を下記のスキーム11で示すチャートに従って製造した。化合物10から出発し、化合物13に変換して、化合物14aとカップリングさせて上記で示した化合物17aを得た。

【0351】
化合物17a(460mg、0.43mmol)をTHF(3ml)に溶解し、酢酸(4.5ml)および水(0.75ml)を加えた。反応混合物を50℃で3時間攪拌し、反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、3:2)によってモニタリングした。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCOおよび塩水で洗浄した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、混合物を減圧下で蒸発乾固した。
【0352】
残渣をTHF(4ml)に溶解し、NaOH(0.1M、3ml)の溶液を加えた。混合物を室温で10分間攪拌し、その後、PMe(THF中1M溶液、2.85ml、2.85mmol)を加えた。反応の進行を、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を使用して、TLCによってモニタリングし、5時間後に反応の完了を示した。反応混合物をシリカゲルの短いカラム上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。カラムを以下の溶媒で洗浄した:THF(100ml)、CHCl(200ml)、EtOH(100ml)、およびMeOH(150ml)。生成物をMeNH(EtOH中33%溶液)とMeOHとの1:4の比率の混合物で溶出した。生成物を含む画分を減圧下で蒸発し、水に再溶解し、減圧下で再び蒸発させた。この手順を2〜3回繰り返して、化合物4(147mg、75%の全収率)の遊離アミン形態を得た。該生成物を水に溶解し、pHをHSO(0.01M)で6.65に調整し、凍結乾燥して化合物4の硫酸塩を黄色泡状固体として得た。
【0353】
化合物4のH NMR(500MHz、DO,pH=3.0,HSO 0.01Mによって調整された)データは、下記の表12に要約される。

【0354】

【0355】
173310 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:478.2;実測値 m/e:478.2。
【0356】
化合物5dの製造:

化合物17b(400mg、0.40mmol)をTHF(3ml)に溶解し、TFA(1.5ml)と水(1ml)との混合物に添加した。反応混合物を50℃で2時間攪拌し、その間、反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、1:1)によってモニタリングした。反応混合物を直接シリカゲルカラムに適用し、フラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン)により精製して化合物5d(180mg、51.6%の収率)を得た。
【0357】

【0358】

【0359】
38381213 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:893.3;実測値 m/e:893.2。
【0360】
化合物5の製造:

化合物5を下記のスキーム12で示すチャートに従って製造した。化合物10から出発し、化合物13に変換して、化合物14bとカップリングして化合物17bを得、上記に示される化合物5dに変換した。

【0361】
化合物5d(140mg、0.16mmol)をTHF(3ml)に溶解して、NaOH(0.1M、2ml)の溶液に加えた。反応混合物を室温で10分間攪拌し、その後、PMe(THF中、1M溶液、1.65ml、1.65mmol)をそれに加えた。反応の進行を、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を使用して、TLCによってモニタリングし、5時間後に反応の完了を示した。反応混合物をシリカゲルの短いカラム上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。カラムを以下の溶媒で洗浄した:THF(100ml)、CHCl(200ml)、EtOH(100ml)、およびMeOH(150ml)。生成物をMeNH(EtOH中33%溶液)とMeOHとの1:4の比率の混合物で溶出した。生成物を含む画分を減圧下で蒸発し、水に再溶解し、減圧下で蒸発した。この手順を2〜3回繰り返して、化合物5の遊離アミン形態(32mg、44%の収率)を得た。このアミンを水に溶解し、pHをHSO(0.01M)で6.5に調整し、凍結乾燥して化合物5の硫酸塩を黄色泡状固体として得た。
【0362】
化合物5のH NMR(500MHz、DO,pH=3.0)データは、下記の表13に要約される。

【0363】

173410に対するTOF APMS([M+H])m/eの計算値:455.2;実測値 m/e:455.2。
【0364】
化合物6aの製造:

【0365】
化合物18a(240mg、0.24mmol)をジオキサン(6ml)に溶解して、酢酸(10ml)と水(3ml)との混合物に加えた。反応混合物を70℃で5時間攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、7:3)によってモニタリングした。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCOおよび塩水で洗浄した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下で蒸発し、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ、EtOAc/ヘキサン)により精製して化合物6a(215mg、75%の収率)を得た。
【0366】

【0367】

【0368】
383914 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:868.3;実測値 m/e:868.4。
【0369】
化合物6の製造:

化合物6を下記のスキーム13で示すチャートに従って製造した。化合物10から出発し、化合物12に変換して、化合物15aとカップリングして化合物18aを得、上記に示される化合物6aに変換した。

【0370】
化合物6a(200mg、0.236mmol)をTHF(3ml)に溶解して、NaOH(0.1M、1.5ml)の溶液に加えた。反応混合物を室温で10分間攪拌し、その後、PMe(THF中、1M溶液、1.4ml、1.4mmol)をそれに加えた。反応の進行を、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を使用して、TLCによってモニタリングし、5時間後に反応の完了を示した。反応混合物をシリカゲルの短いカラム上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。カラムを以下の溶媒で洗浄した:THF(100ml)、CHCl(200ml)、EtOH(100ml)、およびMeOH(150ml)。生成物をMeNH(EtOH中33%溶液)とMeOHとの1:4の比率の混合物で溶出した。生成物を含む画分を減圧下で蒸発し、水に再溶解し、減圧下で蒸発した。この手順を2〜3回繰り返して、化合物6の遊離アミン形態(90mg、84%の収率)を得た。このアミンを水に溶解し、pHをHSO(0.01M)で6.5に調整し、凍結乾燥して化合物6の硫酸塩を白色泡状固体として得た。
【0371】
化合物6のH NMR(500MHz、DO,pH=3.5)データは、下記の表14に要約される。

【0372】

【0373】
173310 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:478.2;実測値 m/e:478.4。
【0374】
化合物7aの製造:

化合物18b(500mg)をTHF(5ml)に溶解して、TFA(1ml)と水(1ml)との混合物に加えた。反応混合物を50℃で2時間攪拌した。反応の進行をTLC(EtOAc/ヘキサン、7:3)によってモニタリングした。反応混合物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ、EtOAc/ヘキサン)により精製して化合物7a(340mg、82%の収率)を得た。
【0375】

【0376】

【0377】
31341212 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:789.2;実測値 m/e:789.2。
【0378】
化合物7の製造:

化合物7を下記のスキーム14で示すチャートに従って製造した。化合物10および化合物14bから出発し、化合物12および化合物15bにそれぞれ変換して、それらを互いにカップリングして化合物18bを得、上記に示される化合物7aに変換した。

【0379】
化合物7a(300mg、0.391mmol)をTHF(3ml)に溶解して、NaOH(0.1M、2ml)の溶液に加えた。反応混合物を室温で10分間攪拌し、その後、PMe(THF中、1M溶液、3.3ml、3.3mmol)をそれに加えた。反応の進行を、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を使用して、TLCによってモニタリングし、5時間後に反応の完了を示した。反応混合物をシリカゲルの短いカラム上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。カラムを以下の溶媒で洗浄した:THF(100ml)、CHCl(200ml)、EtOH(100ml)、およびMeOH(150ml)。生成物をMeNH(EtOH中33%溶液,40ml)とMeOHとの1:4の比率の混合物で溶出した。生成物を含む画分を減圧下で蒸発し、水に再溶解し、減圧下で蒸発した。この手順を2〜3回繰り返して、化合物7の遊離アミン形態(134mg、75%の収率)を得た。このアミンを水に溶解し、pHをHSO(0.01M)で6.6に調整し、凍結乾燥して化合物7の硫酸塩を白色泡状固体として得た。
【0380】
化合物7のH NMR(500MHz、DO,pH=3.5)データは、下記の表15に要約される。

【0381】

【0382】
173310 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:477.2;実測値 m/e:477.2。
【0383】
化合物8の製造:

化合物8を下記のスキーム15で示すチャートに従って製造した。化合物10から出発し、上記で示した化合物19cに変換した。

【0384】
化合物19c(90mg、0.211mmol)をTHF(3ml)に溶解して、NaOH(0.1M、2ml)の溶液に加えた。反応混合物を室温で10分間攪拌し、その後、PMe(THF中、1M溶液、1.69ml、1.69mmol)をそれに加えた。反応の進行を、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を使用して、TLCによってモニタリングし、5時間後に反応の完了を示した。反応混合物をシリカゲルの短いカラム上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。カラムを以下の溶媒で洗浄した:THF(100ml)、CHCl(200ml)、EtOH(100ml)、およびMeOH(150ml)。生成物をMeNH(EtOH中33%溶液,30ml)とMeOHとの1:4の比率の混合物で溶出した。生成物を含む画分を減圧下で蒸発し、水に再溶解し、減圧下で蒸発した。この手順を2〜3回繰り返して、化合物8の遊離アミン形態(52.0mg、76.5%の収率)を得た。この生成物を水に溶解し、pHをHSO(0.01M)で6.6に調整し、凍結乾燥して化合物8の硫酸塩を得た。
【0385】
化合物8のH NMR(500MHz、DO,pH=3.5)データは、下記の表16に要約される。

【0386】

【0387】
1226 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:345.2;実測値 m/e:345.2。
【0388】
化合物9の製造:

化合物9を下記のスキーム16で示すチャートに従って製造した。化合物10から出発し、上記で示した化合物20cに変換した。

【0389】
化合物20c(155mg、0.208mmol)をTHF(3ml)に溶解して、NaOH(0.1M、2ml)の溶液に加えた。反応混合物を室温で10分間攪拌し、その後、PMe(THF中、1M溶液、2.28ml、2.28mmol)をそれに加えた。反応の進行を、溶離剤としてエタノール中33%溶液に希釈された10:15:6:15の相対的な比率のCHCl/MeOH/HO/MeNH混合物を使用して、TLCによってモニタリングし、5時間後に反応の完了を示した。反応混合物をシリカゲルの短いカラム上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。カラムを以下の溶媒で洗浄した:THF(100ml)、CHCl(200ml)、EtOH(100ml)、およびMeOH(150ml)。生成物をMeNH(EtOH中33%溶液,30ml)とMeOHとの1:4の比率の混合物で溶出した。生成物を含む画分を減圧下で蒸発し、水に再溶解し、減圧下で蒸発した。この手順を2〜3回繰り返して、化合物9の遊離アミン形態(102mg、81.4%の収率)を得た。このアミンを水に溶解し、pHをHSO(0.01M)で6.5に調整し、凍結乾燥して化合物9の硫酸塩を黄色泡状固体として得た。
【0390】
化合物9のH NMR(500MHz、DO,pH=3.75)データは、下記の表17に要約される。

【0391】
化合物9に対するさらなるH NMR(500MHz、DO,pH=3.75)データは:δ=5.12(s,1H)を含んでいた。
【0392】

【0393】
255014 Naに対するMALDI TOFMS([M+Na])m/eの計算値:681.3;実測値 m/e:681.6。
【0394】
実施例2
生物学的活性のアッセイ
本明細書で提示された化合物、すなわち、化合物2〜9のリードスルー終止コドン突然変異に対する能力を、哺乳動物の培養細胞においてインビボおよびエクスビボで検討した。
【0395】
化学薬品および試薬はすべて、特に明記しない限り一般の市販品から得た。市販抗生物質であるパロモマイシンおよびゲンタマイシンは、Sigmaから入手した。
【0396】
インビトロでの翻訳反応ならびに抑制および翻訳の定量化:
突然変異抑制活性のアッセイを「UGA C」突然変異に関して行なった。この突然変異は、アミノグリコシド媒介抑制に対して最も感受性であることが示されている。最初に、化合物1〜9について、インビトロでこのナンセンス突然変異を抑制するそれらの能力について、PCDH15遺伝子のR3Xナンセンス突然変異(中途UGA C終止コドン)を保持するレポーター構築物を使って試験した。プロトカドヘリン15をコードするPCDH15遺伝子の突然変異は、1型アッシャー症候群(USH1)の原因となり、それは言語習得前の深刻な難聴、前庭反射消失、および色素性網膜炎の思春期前の発症(RP)[83]によって特徴づけられる。4つの異なるPCDH15 USH1起因ナンセンス突然変異(R3X、R245X、R643X、およびR929X)は、ヒトで報告されている。興味深いことに、PCDH15の上記のナンセンス突然変異はUSH1を引き起こすが、一方で同じ遺伝子中の特定のミスセンス突然変異は非症候性難聴のみをもたらし、RPを伴わない。そのような観察は、この遺伝子によってコードされたタンパク質の部分的な、または低レベルの活性が通常の網膜機能に十分である場合があることを示唆しており、本明細書で提示される化合物のいずれをもリードスルー治療の適切な候補にする。
【0397】
化合物1〜9によるナンセンス突然変異の抑制について、PCDH15遺伝子のR3X突然変異[84]を保持しているレポータープラスミドを使って、インビトロで試験した。このプラスミドを作るために、オリゴヌクレオチドGATCCATGTTTTGACAGTTTTATCTCTGGACAおよびAGCTTGTCCAGAGATAAAACTGTCAAAACATGを互いにアニーリングし、プラスミドpDB650[6]のBamHIおよびHindIII部位内に挿入した。
【0398】
得られたレポータープラスミドpDB650−R3Xは、オープンリーディングフレーム(ORF)をコードする25−kDaのポリペプチドとORFをコードする10−kDaのポリペプチドとの間のTGA Cナンセンス終止突然変異を含んでいた。したがって、終止コドンでの効率的な翻訳終了は、25−kDaのポリペプチドの産生をもたらし、一方、ここで試験された化合物によるナンセンス突然変異の抑制は、より長い35−kDaタンパク質の合成を可能にした。
【0399】
プラスミドを、[35S]−メチオニンの存在下、ウサギ網状赤血球溶解液結合転写/翻訳システム(プロメガ)で転写、翻訳して、反応生成物をSDS−PAGEによって分離して、PhosphorImager分析を用いて定量した。突然変異抑制レベルを全タンパク質(35−kDaおよび25−kDaの合計)からの35−kDa生成物の相対的な割合として算出し、翻訳レベルを、試験化合物の不在下、全タンパク質からの各試験化合物濃度における全タンパク質の相対的な割合として算出した。
【0400】
パロモマイシンおよびゲンタマイシンの突然変異抑制活性を測定し、本明細書で提示される化合物の活性に対する標準として使用した。パロモマイシンの試験濃度は、0、5、10、20、30および40μg/mlであり、ゲンタマイシンの試験濃度は、0、5、10、20および30μg/mlであり、化合物1〜9の試験濃度は、0〜160μg/mlの範囲であった。最大限の抑制レベルを観察した濃度は、下記の表18に示される。
【0401】
試験および分析に関して類似した方法を使用して、上記で示されたN1−AHB基を示す化合物について、突然変異抑制活性に関して試験する。
【0402】
表18は、R3X突然変異の最大インビトロ突然変異抑制および翻訳レベルを、化合物1〜9に対して測定されたMIC値とともに示す。表18中の結果は、少なくとも3つの独立した実験の平均として報告される。

【0403】
表18において理解できるように、パロモマイシン中に存在する1つの環(すなわち、化合物2の場合のように環IV)、またはパロモマイシン中に存在する2つの環(すなわち、化合物1の場合のように環IIIおよびIV)のいずれかの除去は、インビトロでのリードスルー活性を49%抑制から1.6%(化合物2)および6.2%(化合物1)まで劇的に減少させる。これらのデータのみから、パロモマイシンの環IVは、哺乳類のA−部位のその適切な認識のために、およびその後のリードスルー活性のために非常に重要であることを示している。化合物2(1.6%)の抑制レベルと比較して、化合物1(6.2%)の実質的により高い抑制レベルは、化合物1(パロマミン)が、哺乳類のリボソームによって優先して認識され且つ著しい抑制活性を有するパロモマイシンの最小構造モチーフを表すことを意味している。
【0404】
表18からさらに結論づけることができるように、化合物8のように1個の余分のアミンの付加、または化合物9のようにパロマミン二量体化に伴った、化合物4のようにC6位での、または化合物6のようにC3位でのパロマミン骨格へのプレーンリボースの結合は、パロマミン自体のそれより低い抑制レベルを与えた。
【0405】
しかしながら、最も重要な結果は、プレーンリボースの代わりに5−アミノリボース(リボサミン)が異なる位置でパロマミン部分に結合されている場合に観察された。さらに表18で理解することができるように、化合物3、5および7の観察された突然変異抑制レベルは、同じ位置でプレーンリボース環を含んでいる対応する化合物(すなわち、化合物2、4、および6)よりもそれぞれ高いものであった。さらに、化合物3、5、および7のシリーズでは、パロマミン骨格上のリボサミンの位置の特定の影響がC5(化合物3)>>C6(化合物5)>C3’(化合物7)であることが観察され、これは、化合物3での親のパロモマイシン(環I−III)の擬似三糖類コア構造の保存が効率的なリードスルー活性にとって重要であることを示唆している。
【0406】
化合物1〜9の突然変異抑制データは、化合物2〜7のシリーズにおいて、各ペア中のアミノ基の増加した数は改善されたリードスルー活性に結びつくが、化合物8および化合物9で得られたデータは、たとえ原核生物および真核生物のrRNAの両方へのこれらの類似体の結合親和性が増加しているようであっても[36および85]、パロマミン骨格上のアミノ基の数の単なる増加がリードスルー活性の増加に必ずしも至らないことを示している。それにもかかわらず、対応するリボース化合物2のそれと比較して化合物3の観察された13倍高い抑制レベル、および化合物1のそれと比較して3倍超の高い抑制レベルは、化合物3でのC5”−NH基の存在がその高いリードスルー活性の原因であることを示唆する。
【0407】
図3A−Dは、試験化合物および[35S]−メチオニンの存在下、オープンリーディングフレーム(ORF)をコードする25−kDaのポリペプチドとORFをコードする10−kDaのポリペプチドとの間のTGA Cナンセンス終止突然変異を含むプラスミド系レポーター構築物の発現により、例示的な化合物3およびパロモマイシンに関して測定されたインビトロでの変異抑制および翻訳比較アッセイの結果を示し、化合物3(図3A)およびパロモマイシン(図3C)に対するSDS−PAGEによって分離され且つphosphor−imagerで定量化された反応生成物、ならびに比較プロットを示し、そこでは変異抑制値(黒い点で示される)および翻訳値(白い点で示される)をその不在下で発現される全タンパク質からの試験化合物の各濃度における全タンパク質の相対的な割合として算出し、化合物3(図3B)およびパロモマイシン(図3D)に関して3組測定した。
【0408】
表18および図3A−Dで分かるように、その非常に重要なリードスルー活性の他に、化合物3はまた、各試験化合物が最大限の抑制率に達した濃度で、パロモマイシン(約40%)またはゲンタマイシン(約40%)のいずれかよりも約2倍高い翻訳レベル(約80%、参照:表18)を保持した。化合物3による翻訳阻害のそのような減少は、親のパロモマイシンまたはゲンタマイシン化合物のそれと比較して、化合物3の減少した毒性と解釈することができた。このように、上記の濃度でパロモマイシンによって誘発された抑制は化合物3のそれより高いが、化合物3の場合に生産される全タンパク質の量はより大きい。
【0409】
アミノグリコシド抗生物質によって誘導されるエクスビボでの突然変異抑制:
本発明をさらに実施化する際、化合物3によって示されるタンパク質生産の向上は、観察された抑制率においてでさえ、ナンセンスコドンを含有する遺伝子から産生される機能的タンパク質の総量を増やすことによって、哺乳動物の細胞系での薬物誘発ナンセンス抑制の効率を原則として増やすことができると結論された。プロモーター活性化剤によるナンセンスコドンを含有する遺伝子からの機能的タンパク質産生の向上についての最近の研究は、この推定を支持する[33]。この可能性を試験するために、化合物3を、パロモマイシンおよびゲンタマイシンとともに、二重ルシフェラ−ゼリポーター系を用いた培養細胞においてUGA C終止コドンのリードスルー活性に関して評価した。
【0410】
化合物1〜9によるナンセンス突然変異の抑制を、二重ルシフェラーゼレポータープラスミド[86]を用いてエクスビボで試験した。UGAC突然変異を保持するp2LUCプラスミドをLipofectamine2000(Invitrogen)でCOS−7細胞にトランスフェクションし、試験化合物の添加を15時間後に実施した。ルシフェラーゼ活性をDual Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いて培養24時間後に測定し、終止コドンリードスルーを上記のように算出した。
【0411】
試験および分析するための同様の方法を用いて、先に示されたN1−AHB基を示す化合物についてエクスビボでの突然変異抑制活性を試験する。
【0412】
図4は、COS−7細胞で発現されたウミシイタケルシフェラーゼおよびホタルルシフェラーゼ遺伝子の間のポリリンカーにTGA Cナンセンス変異を含むp2Lucプラスミドを用い、例示的な化合物3、パロモマイシンおよびゲンタマイシンよって発現されるナンセンス突然変異のエクスビボでの抑制を示し、これは、異なる濃度の各試験化合物に対して3以上の独立した実験の平均として算出された抑制レベルを示す。
【0413】
図4で理解できるように、化合物3の活性は、すべての試験された濃度においてパロモマイシンおよびゲンタマイシンのそれより優れている。試験化合物では、誘導されたリードスルー活性は、試験化合物の増加した濃度とともに増加したが、この増加は、化合物3の場合において他の2つの臨床的に使われた薬物よりもより有意であった。図4でさらに理解できるように、ゲンタマイシン(患者においてナンセンス突然変異を抑制する能力があることが示される現在唯一の臨床的に関連したアミノグリコシドである)は、パロモマイシンまたは化合物3のいずれよりも有効ではなかった。パロモマイシンおよびゲンタマイシンに対する化合物3のそのような増加したリードスルー効果は、培養細胞に関してその低い毒性のためである可能性が高い。
【0414】
抗菌活性:
その抗菌活性に対する哺乳動物細胞で観察されたアミノグリコシド誘発終止コドンリードスルー活性を比較するために、化合物1〜9をグラム陰性細菌(大腸菌(E.coli))およびグラム陽性細菌(バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis))の両方に対する抗菌剤としてさらに検討し、最小阻止濃度(MIC)値を、対照としてパロモマイシンおよびゲンタマイシンを用いる微量液体希釈法により決定し、結果を上記の表18に示す。
【0415】
使用された細菌株は、エシェリキア・コリATCC 25922およびバチルス・サブチリスATCC 6633であった。MIC値を、米国臨床検査標準委員会(NCCLS)[87]に準拠した2倍微量希釈法により、384μg/mlおよび512μg/mlの2つの異なる出発濃度で測定した。すべての実験を3通り実施し、類似した結果が2〜4つの異なる実験で得られた。
【0416】
試験および分析に関して同様の方法を使用して、先に示したN1−AHB基を示す化合物を抗菌活性について試験する。
【0417】
表18で示されるMIC値から推論できるように、ここに示されるすべての化合物の抗菌活性は、親化合物のパロモマイシンのそれより、大腸菌で8〜43およびバチルス・サブチリスで6〜64の範囲の遺伝因子により著しく低いのに対して、ゲンタマイシンおよびパロモマイシンは両方の細菌株に対して優れた抗菌活性を示した。
【0418】
最も重要なことに、パロモマイシンの抗菌性と比較して、化合物3のかなり低い抗菌活性は、化合物3の真核生物細胞に対する選択性が、親のパロモマイシンのそれより非常に高いことを示す。したがって、化合物3が有意な抗菌活性を示すことができないという観察された能力は、GI生物相平衡を逆転したり、抗生物質耐性の出現を増やしたりすることなく、選択的に哺乳類のリボソームに作用することができて、効果的な終止コドン抑制を引き起こすことができるアミノグリコシド類の新規な変形体の設計のために本明細書で概説される戦略の一般的な適用性という意味において陽性の結果として解釈される必要がある。
【0419】
哺乳類系における細胞毒性:
市販され、臨床的に使用されたアミノグリコシド類に関して、化合物3の減少した毒性をさらに確かめるために、一連の細胞毒性アッセイが3つの腎臓由来細胞株、すなわちHEK−293(ヒト胎児腎臓)、COS−7(サルの腎臓)およびMDCK(イヌの腎臓)を用いて、下記のように実施した。
【0420】
HEK−293、COS−7またはMDCKは、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%グルタミン(Biological Industries)を含むDMEM培地で、37℃、5%COで、96−ウェルプレート(5000細胞/ウェル)で一晩成長させた。1日後に、培地を、ストレプトマイシンを含まない培地に変えて、異なる濃度の試験化合物を加えた。48時間後、メーカーの指示に従って5時間のインキュベーションプロトコルを使用して、細胞増殖アッセイ(XTTに基づく比色分析、Biological Industries)を実施した。光学密度(OD)を、Eiisaプレートリーダを利用して記録された。細胞生存率を、試験化合物の存在下で成長させた培養物中の生細胞数対試験化合物なしで成長させた対応する細胞培養物の間の比率として算出した。細胞に対する半数最大致死濃度(LC50)は、Grafit5ソフトウェアを使用して、濃度−応答曲線を少なくとも2つの独立した実験データに適合させることから得られた[R.J.Leatherbarrow,Erithacus Software Ltd.,Horley、U.K.2001](参照:下記の表19)。
【0421】
試験および分析に関する同様の方法を用いて、先に示したN1−AHB基を示す化合物を細胞毒性について試験する。

【0422】
表19で理解できるように、化合物3に対して得られたLC50値は、3つの全ての細胞株で試験した場合、LC50値が臨床的に使われるアミノグリコシドであるゲンタマイシンおよびパロモマイシンに対して得られたLC50値よりも6倍〜15倍高かった。
【0423】
要約すると、本発明者らによって合成、試験されたパロマミン誘導体である化合物2〜9は、インビトロおよびエクスビボの両方での哺乳類翻訳システムにおける中途終止コドン抑制に対する合成アミノグリコシド類の組織的研究を提供する。パロマミン(化合物1)は、臨床的に重要な薬物パロモマイシンの最小構造モチーフとして同定され、潜在的な終止コドンリードスルー誘発剤として多様な構造の構築のための骨格として使用した。これらの化合物は、培養細胞中で親パロモマイシンと比較して、有意に高い終止コドンリードスルー活性およびより低い毒性を示した。COS−7細胞では、これらの化合物の活性はまた、ゲンタマイシン(これまでに患者においてナンセンス突然変異を抑制する能力があることが示された唯一のアミノグリコシド)のそれよりも高かった。グラム陰性細菌株およびグラム陽性細菌株に対する抗菌性試験は、これらの化合物が真核生物細胞でそれらの作用において非常に選択的なことを示す。
【0424】
先に示した実験結果に基づいて、本実施形態による化合物の突然変異リードスルー誘発活性は、哺乳動物細胞においてエクスビボで測定されるとき、また商業的に入手でき、臨床的に使用されたアミノグリコシド類のリードスルー活性と比較して、顕著に改善されることが理解できる。さらに、ここに示される化合物の減少した毒性は、それらのナンセンス突然変異抑制活性と組み合わされて、商業的に入手でき、臨床的に使用されるアミノグリコシド類と比較して、それはより少ない、より小さな副作用を伴うことが期待されるのでそれらの使用を非常に有益にしている。これらの観察は、本明細書で示される化合物を、切断変異に起因する遺伝子疾患の治療のための可能性がある新規治療剤と見なすことができることを明らかに証明している。
【0425】
総合すると、これらの結果は、本明細書に示される化合物が突然変異抑制療法に関してゲンタマイシンおよびパロモマイシンの代替物を表すことができたことを示唆し、したがって、中途終止突然変異のアミノグリコシド誘発抑制の効率を最適化することによって選択的に哺乳動物細胞を標的とする新規なアミノグリコシドに基づく小分子の開発をするための新しい方向を提供する。
【0426】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0427】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0428】









【図面の簡単な説明】
【0429】
【図1】背景技術で記載された抗菌性アミノグリコシド類の化学構造を示す。
【図2】本実施形態による例示的な化合物を得るための化学構造および一般的な合成経路を示す。
【図3】試験化合物および[35S]−メチオニンの存在下、オープンリーディングフレーム(ORF)をコードする25−kDaのポリペプチドとORFをコードする10−kDaのポリペプチドとの間のTGA Cナンセンス終止突然変異を含むプラスミド系レポーター構築物の発現により、例示的な化合物3およびパロモマイシンに関して測定されたインビトロでの突然変異抑制および翻訳比較アッセイの結果を示す。
【図4】COS−7細胞で発現されたウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子とホタルルシフェラーゼ遺伝子との間のポリリンカー中でのTGA Cナンセンス突然変異を含むp2Lucプラスミドを使用して、パロモマイシンとゲンタマイシンと比較した、本実施形態による例示化合物、すなわち化合物3によって発現されるナンセンス変異のエクスビボでの抑制を示し、それは異なる濃度の各試験化合物に対して3以上の独立した実験の平均として算出された抑制レベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:

(式中:
、RおよびRの各々は、独立して、単糖類部分、ハライド、ヒドロキシル、アミンまたはオリゴ糖類部分であり、
Xは、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
破線は、R配置またはS配置を示し;但し、化合物は、

アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンからなる群から選択されない)
を有する化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
一般式I:

(式中:
、RおよびRの各々は、独立して、単糖類部分、ハライド、ヒドロキシル、アミンまたはオリゴ糖類部分であり、
Xは、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
破線は、R配置またはS配置を示し;但し、化合物は、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンからなる群から選択されない)
を有する化合物またはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項3】
包装材で包装されて、遺伝子疾患の治療で使用するために、前記包装材料中にまたは前記包装材料上に印刷されて識別される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
遺伝子疾患を治療する方法であって、一般式I:

(式中:
、RおよびRの各々は、独立して、単糖類部分、ハライド、ヒドロキシル、アミンまたはオリゴ糖類部分であり、
Xは、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
破線は、R配置またはS配置を示し;但し、化合物は、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンからなる群から選択されない)
を有する治療上有効量の化合物またはその医薬的に許容される塩を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項5】
遺伝子疾患を治療するための医薬の製造における、一般式I:

(式中:
、RおよびRの各々は、独立して、単糖類部分、ハライド、ヒドロキシル、アミンまたはオリゴ糖類部分であり、
Xは、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
破線は、R配置またはS配置を示し;但し、化合物は、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、G−418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、ハベカシン、ネチルマイシン、イスタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネアミン、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンからなる群から選択されない)
を有する化合物またはその医薬的に許容される塩の使用。
【請求項6】
Xは酸素である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項7】
はヒドロキシルである、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項8】
Yは水素である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項9】
、RおよびRの少なくとも1つは、単糖類部分である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項10】
は前記単糖類部分である、請求項9に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項11】
およびRはそれぞれヒドロキシルである、請求項10に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項12】
は前記単糖類部分である、請求項9に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項13】
およびRはそれぞれヒドロキシルである、請求項12に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項14】
は前記単糖類部分である、請求項9に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項15】
およびRはそれぞれヒドロキシルである、請求項14に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項16】
前記単糖類部分は、一般式II:

を有し、式中、
破線は、R配置またはS配置を示し;および
、RおよびRの各々は、独立して、ヒドロキシルおよびアミンからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項17】
およびRはそれぞれヒドロキシルである、請求項16に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項18】
はアミンである、請求項16に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項19】
はヒドロキシルである、請求項16に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項20】
はアミンである、請求項1〜15のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項21】
およびRはそれぞれヒドロキシルである、請求項20に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項22】
、RおよびRの少なくとも1つは、オリゴ糖類部分である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項23】
は前記オリゴ糖類部分である、請求項22に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項24】
およびRはそれぞれヒドロキシルである、請求項23に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項25】
は前記オリゴ糖類部分である、請求項22に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項26】
およびRはそれぞれヒドロキシルである、請求項25に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項27】
は前記オリゴ糖類部分である、請求項20に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項28】
およびRはそれぞれヒドロキシルである、請求項27に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項29】
前記オリゴ糖類部分は二糖類部分である、請求項22〜28のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項30】
前記二糖類部分は、一般式I

を有し、式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
、RおよびRの各々は、独立して、ハライド、ヒドロキシル、アミンであり、または一般式Iを有する化合物に結合しており、但し、R、RおよびRの少なくとも1つは、上記一般式Iを有する化合物に結合しており;
は、酸素または硫黄であり;
は、水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)部分であり;
は、ヒドロキシルまたはアミンであり;および
は、水素、アルキルまたはアリールである、請求項29に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項31】
前記オリゴ糖類部分はリンカーをさらに含む、請求項22〜29のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項32】
およびYはそれぞれ水素である、請求項1〜31のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項33】
はヒドロキシルおよびアミンからなる群から選択され、Yはアルキルである、請求項1〜31のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項34】
はAHBである、請求項1〜31のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項35】
はヒドロキシルおよびアミンからなる群から選択され、Yはアルキルである、請求項34に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項36】
化合物は、原核細胞よりも真核細胞に選択的な活性を有する、請求項1〜31のいずれかに記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項37】
化合物は抗菌活性を有さない、請求項36に記載の化合物、組成物、方法または使用。
【請求項38】
前記遺伝子疾患は、末端切断の突然変異を有するタンパク質を含む、請求項3〜5のいずれかに記載の組成物、方法または使用。
【請求項39】
前記遺伝子疾患は、嚢胞性線維症(CF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、毛細血管拡張性運動失調、ハーラー症候群、血友病A、血友病B、アッシャー症候群およびテイ−サックス病からなる群から選択される、請求項3〜5のいずれかに記載の組成物、方法または使用。
【請求項40】
前記遺伝子疾患は嚢胞性線維症である、請求項39に記載の組成物、方法または使用。
【請求項41】
経口投与のために製剤化される、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項42】
前記投与は経口的に行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項43】
請求項1に記載の化合物を製造する方法であって、Rは前記単糖類部分であり、RおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、
(a)一般式III:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、前記AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)
を有する化合物を、1”位に結合した脱離基ならびにヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを有する単糖類の誘導体とカップリングさせること、ならびに
(b)前記ヒドロキシル保護基および前記アミン保護基の各々を除去し、それにより化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項44】
−Tの各々は、シクロヘキサノンジメチルケタ−ルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の化合物を製造する方法であって、Rは前記単糖類部分であり、RおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、
(a)一般式IV:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、前記AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)
を有する化合物を、1”位に結合した脱離基ならびにヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを有する単糖類の誘導体とカップリングさせること、ならびに
(b)前記ヒドロキシル保護基および前記アミン保護基の各々を除去し、それにより化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項46】
−Tの各々は、O−アセチルである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1に記載の化合物を製造する方法であって、Rは前記単糖類部分であり、RおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、
(a)一般式V:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、前記AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)
を有する化合物を、1”位に結合した脱離基ならびにヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを有する単糖類の誘導体とカップリングさせること、ならびに
(b)前記ヒドロキシル保護基および前記アミン保護基の各々を除去し、それにより化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項48】
は4−メトキシ−1−メチルベンゼンであり、TはO−ベンゾイルである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記保護された単糖類は、一般式VI:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
、ZおよびZの各々は、独立して、前記ヒドロキシル保護基および前記アミン保護基からなる群から選択され;および
Lは前記脱離基である)
を有する、請求項43〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
Lは、p−トリルスルフィド(p−チオトルエン)、チオエチルおよびトリクロロアセチミデートからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
−Zの各々は、ヒドロキシル保護基である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
請求項1に記載の化合物を製造する方法であって、Rはアミンであり、ならびにRおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、
(a)一般式III:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、前記AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)
を有する化合物をトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させ、それによりその3’位にトリフルオロ−メタンスルホネート基を得ること:
(b)その3’位に前記トリフルオロ−メタンスルホネート基を有する前記化合物をナトリウムアジドと反応させること;ならびに
(c)前記ヒドロキシル保護基および前記アミン保護基の各々を除去し、それにより化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項53】
請求項1に記載の化合物を製造する方法であって、Rは前記一般式I部分を有する前記二糖類部分であり、ならびにRおよびRはそれぞれヒドロキシルであり、
(a)一般式III:

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
Yは、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、前記AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
Xは、酸素または硫黄である)
を有する化合物を、一般式III

(式中:
破線は、R配置またはS配置を示し;
は、水素、アルキルまたはアリールであり;
−Tの各々は、独立して、ヒドロキシル保護基であり;
およびQの各々は、独立して、アミン保護基であり;
は、アミン保護基およびAHB部分からなる群から選択され、前記AHB部分は、ヒドロキシル保護基およびアミン保護基の少なくとも1つを含み;および
は、酸素または硫黄である)
を有する化合物とカップリングさせること;ならびに
(b)前記ヒドロキシル保護基および前記アミン保護基の各々を除去し、それにより化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項54】
前記カップリングはリンカーを介して行われる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記リンカーはアルキルである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記アミン保護基の各々は、アジド基およびN−フタルイミド基からなる群から選択される、請求項43〜55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記ヒドロキシル保護基は、O−アセチル、O−クロロアセチルおよびO−ベンゾイルからなる群から選択される、請求項43〜55のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−532461(P2009−532461A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503741(P2009−503741)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000463
【国際公開番号】WO2007/113841
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(504127647)テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデーション リミテッド (20)
【Fターム(参考)】