説明

新規なエポプロステノール製剤およびその製造方法

本発明は、市販のIV輸液剤と組合せ可能でありかつ24時間超にわたり約15〜30℃の周囲条件下で再構成形態および/または希釈形態で投与可能である安定なエポプロステノール組成物に関する。本組成物は、好ましくは、(a)エポプロステノールまたはその塩と、(b)アルカリ化剤と、(c)および再構成時にまたは溶解状態で溶液がpH>11を有するような塩基を含む。凍結乾燥組成物の製造方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年2月3日出願の米国仮特許出願第60/764,769号明細書、2006年2月13日出願の同第60/772,563号明細書、および2006年3月20日出願の同第60/783,429号明細書(これらは参照により本明細書に援用されるものとする)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、24時間超にわたる約15〜30℃の環境条件下での非経口投与に供すべく市販のIV輸液剤と組合せ可能である安定なエポプロステノール組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓血管の障害および疾患ならびにこれらに関連する合併症は、米国および西欧の人々の心身障害および死亡の主原因である。たとえば、近年、冠状動脈疾患の結果として米国だけでも毎年500,000件超の死亡例が発生しており、さらに700,000人の患者が心筋梗塞で入院している。
【0004】
心臓および動脈の障害および疾患、たとえば、アテローム硬化症、動脈硬化症、鬱血性心不全、狭心症、ならびに心臓血管系に関連する他の障害および疾患に有効な長期治療の探索が進められてきた。このような障害または疾患に対する従来の治療としては、たとえば、血管拡張剤の投与、血管形成術、およびバイパス手術を含む。このような治療は、種々の治療により得られる利点はあるが危険を伴うため同意が得られないという事態に遭遇してきた。さらに、このような治療は、長期有効性に関して重大な欠点を有する。心臓、中枢および末梢の血管系の急性および慢性の閉塞性血管疾患に対する血管拡張剤および機械的治療の使用は、これまで、好ましい長期的な結果を得るのに有効ではなかった。疾患または障害の初期分子的原因に対してよりはむしろ基礎疾患過程の結果に対して治療が行われるので、現在の治療では転帰にごくわずかな影響を与えるにすぎない。
【0005】
例えば、血管作用剤の原理は、血管および/または心臓の平滑筋に直接的または間接的に作用して、血管抵抗および血流異常を低減させることにより血圧を下げることである。このような薬剤は、血圧の上昇および異常血流の初期原因に対処するものではない。むしろ、これらは疾患または障害により生じる影響を低減させようとするものである。このような薬剤は、圧受容器反射を介して交感神経系を活性化させ、心拍数および心筋収縮力の増大を引き起こすが、必ずしも常に有益な作用であるとは限らない。このような薬剤の他の副作用としては、頭痛、心臓動悸、不安、軽度鬱病、口渇、口内不快味、悪心、嘔吐、狭心症、心筋梗塞、鬱血性心不全、心拍出量減少、体液鬱滞、疲労、衰弱などを含む。ほとんどの疾患の薬理学的治療は、疾患活動性の初期分子的原因に対するその作用が非常に特異的であるわけではなく、多因子性の疾患の非常に限られた範囲内の影響に対処するものである。
【0006】
さらなる例として、アテローム性動脈硬化性血管疾患では、このような改善された転帰は、脂質障害に対するコレステロール低下薬剤治療を行ったときにみられる。しかしながら、これらの治療は、心臓発作および脳卒中を引き起こす近因事象であることが知られているこれらの疾患状態に関連する凝固異常を治療するものではない。これらは、血小板、マクロファージ、好中球、リンパ球、平滑筋細胞、ならびにアテローム硬化症およびこの疾患の合併症に関与することが知られている他の細胞タイプに起因する細胞反応または分子反応を防止しない。
【0007】
同様に、血栓溶解療法、血管形成術、およびバイパス手術は、長期でごくわずかに奏効するにすぎない。現在の機械的および薬理学的な治療は、特定の部分閉塞、完全閉塞または閉塞血管に焦点をあてており、この場合、特定の部位で閉塞を除去するか、または血管の結合によりバイパスするかのいずれかが行われる。これらの治療は、閉塞過程の開始および進行を引き起こす正常恒常系の生理学的撹乱に対して対処不能である。同様に、これらは、恒常性撹乱の多中心性に対して対処不能である。こうした対処不能の結果として、多くの場合、最初に治療を受けた血管で再発閉塞を生じたり、治療を受けた閉塞部位の血栓の不完全な消散から微小塞栓を生じたりする。現在利用可能な不十分な技術的方法に対処する治療は、不適切な閉塞状態または狭窄状態にあると判断される部位に利用できない。
【0008】
正常な恒常性制御の不能を回避したり、撹乱の発生開始後にこうした制御を回復させたりする治療の必要性が依然として高い。内因性調節系および細胞ドメインを健常状態に回復させれば、このような撹乱の結果として起こる狭窄過程、閉塞過程、血栓形成過程、および血栓塞栓過程を回避することが可能である。恒常性を微調節する正常な分子過程で制御の持続的および一時的な回復を行うことにより、アテローム硬化症、その異型、高血圧症、鬱血性心不全、巨大・微小血栓症および血栓塞栓症、ならびにこれらの疾患過程の合併症、たとえば、心筋梗塞、脳血管偶発症候、関連腎疾患、関連中枢・末梢神経系障害、および他の細胞系の関連疾患(ただし、これらに限定されるものではない)を予防することが可能である。そのほかに、有害過程の加速および蓄積の後で恒常性制御の迅速な回復を行うことにより、原子レベル、分子レベル、膜レベル、細胞レベル、および器官レベルで影響の度合いおよび持続期間のいずれをも最小限に抑えることが可能である。
【0009】
アラキドン酸の代謝産物であるエポプロステノール(PGI、PGX、プロスタサイクリン)は、強力な血管拡張活性および血小板凝集阻害活性を有する、天然に存在するプロスタグランジン化合物である。エポプロステノールとは、(5Z,9(α),11(α),13E,15S)−6,9−エポキシ−1,15−ジヒドロキシプロスタ−5,13−ジエン−1−酸のことである。エポプロステノールナトリウムは、374.45の分子量およびC2031INaOの分子式を有し、心臓閉塞性肺疾患の患者を治療するために1995年9月20日にフローラン(グラクソスミスクラインにより販売)として米国FDAにより承認された。
【0010】
注射用フローランは、静脈内(IV)投与に供すべく製剤化されたエポプロステノールの滅菌ナトリウム塩である。凍結乾燥されたフローラン入りバイアルはそれぞれ、0.5mgもしくは1.5mgのエポプロステノールと等価なエポプロステノールナトリウム、3.76mgのグリシン、2.93mgの塩化ナトリウム、および50mgのマンニトールを含む。pHを調整するために水酸化ナトリウムが添加されることもある。
【0011】
フローランは、フローラン用滅菌希釈剤で再構成しなければならない白色〜灰白色の粉末である。フローラン用滅菌希釈剤は、94mgのグリシン、73.5mgの塩化ナトリウム、適量の水酸化ナトリウム(pHを調整するために添加される)を50mlの注射用水(USP)に添加して含むガラスバイアルの形態で供給される。フローランの再構成溶液は、10.2〜10.8のpHを有し、pHが低いほど不安定性が増大する。
【0012】
環外ビニルエーテル化合物であるエポプロステノールナトリウム(式I)は、pH依存的に急速に加水分解して6−ケト−PGF(式II)になる。式Iおよび式IIは以下のとおりである。
【化1】

【0013】
エポプロステノールの化学的性質とくに潜在的加水分解反応活性は、強固な製剤の開発を非常に困難にしている。PGI−Naのビニルエーテル部分は、塩基性条件(>pH8.8)下で緩衝化させることにより溶解状態で最もよく安定化される。水中におけるエポプロステノールナトリウムの半減期、すなわち、効力の50%が消失するまでに要する時間を、pHの関数として以下の表1にまとめて示す。
【0014】
【表1】

【0015】
上記の表1に示されるように、エポプロステノールの50%は、23℃、pH9.3において約10時間で分解する。無菌製剤を製造するために、化合物は、好ましくは周囲条件下で少なくとも12時間効力を消失してはならない。これが達成できない場合、化合物は、冷却条件下で処理するために4℃で約12時間安定でなければならない。
【0016】
フローランは、グリシンで緩衝化されかつ塩化ナトリウムで等張化された50mlの専用希釈剤で構成された付属バイアルと共に凍結乾燥バイアルとして供給される。等張液のpHは、水酸化ナトリウムで10.2〜10.8の範囲に調整される。凍結乾燥バイアルは、専用希釈剤で再構成され、心臓血管障害を患う患者に投与される。
【0017】
フローランは、このフローラン用滅菌希釈剤だけで再構成しなければならない。フローランの再構成溶液は、他の非経口溶液剤や非経口医薬剤で希釈したり、これらと共に投与したりしてはならない。フローランの再構成溶液は、光から保護しなければならず、かつ即使用しないのであれば2〜8℃(36〜46°F)で冷蔵しなければならない。しかしながら、冷蔵溶液は、わずか2日間しか持続せず、その後、廃棄しなければならない。さらに、再構成溶液は凍結させることができず、凍結した場合、溶液を廃棄しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、市販のIV輸液剤を用いて再構成可能でありかつ再構成後使用時まで冷蔵を必要としないエポプロステノール製剤が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、予期せずして、アルカリ化剤および高pH(>11)の存在下のエポプロステノール溶液がフローランと比較して非常に安定であることを見いだした。したがって、本発明の1つの目的は、pH>11でエポプロステノールまたはその塩と少なくとも1種のアルカリ化剤とを含む医薬組成物を提供することである。組成物は、市販の静脈内(IV)輸液剤を用いて再構成したときの改良された安定性により特徴付けられる。市販のIV輸液剤中に再構成および/または希釈した場合、本製剤の安定性は、15〜30℃で24〜48時間後に元のエポプロステノールの少なくとも90%が残存することにより特徴付けられる。
【0020】
本発明の他の目的は、エポプロステノールとアルカリ化剤とを有する凍結乾燥医薬組成物の製造方法を提供することである。このような凍結乾燥組成物は、再構成時、pH>11を有する。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、高pHでエポプロステノールとアルカリ化剤とを有する再構成凍結乾燥医薬組成物の使用方法を提供することである。再構成溶液は、好ましくは、アテローム硬化症、動脈硬化症、鬱血性心不全、狭心症、心臓閉塞性肺疾患、および高血圧症のような心臓血管疾患を治療するために使用される。
【0022】
本発明の主な利点としては、再構成溶液および/または希釈溶液の血液適合性および自己保存作用(保存剤を存在させることなくUSP保存有効性試験に合格する能力)を含む。通常、化学物質を静脈内投与する場合、血液に適合しなければならず、かつ血液細胞溶解を引き起こしてはならない。一般に、高pH製剤および/または低張溶液剤は、投与時に血液細胞溶解を引き起こす。本エポプロステノール製剤は高pH(>11)で投与されるので、血液細胞溶解が予想される。しかしながら、意外にも、血液細胞溶解は起こらずかつ本発明に係るエポプロステノール溶液は本発明者らの試験で通常生理食塩水と同一の血液適合性を示すことを見いだした。このほか、再構成溶液および/または希釈溶液は、微生物耐性が高く、USP保存有効性試験に合格可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る組成物は、エポプロステノールまたはその塩とアルカリ化剤とを含む。これ以降で使用される場合、「エポプロステノール」という用語は、エポプロステノールの遊離酸または塩のいずれかを意味する。エポプロステノール:アルカリ化剤の比は、重量基準で好ましくは約1:25〜約1:200、より好ましくは約1:25〜1:100、最も好ましくは1:33.3である。最も好ましい製剤は、1バイアルあたり0.5mgのエポプロステノールと50mgのアルギニンとを含むか、または1.5mgのエポプロステノールと50mgのアルギニンとを含むかのいずれかである。組成物はまた、好ましくは、再構成時および/または希釈時に希釈溶液のpHが>11になるように十分な塩基を含む。
【0024】
アルカリ化剤とは、本明細書中で使用される場合、エポプロステノールをアルカリ化剤と共に水に溶解させた場合にアルカリ性環境(pH>7)を提供する作用剤を意味する。さらに、アルカリ化剤は、アルカリ性環境を提供するとはいえ、塩基性水酸基を含むものではないが、水または水/有機溶媒混合物に溶解させたときに水からプロトンを受容する少なくとも1個の官能基を含みうる。アルカリ化剤は、少なくとも1つの9.0超のpKaを有することが望ましい。好ましくは、アルカリ化剤は、固相状態でありかつ水性媒体に可溶である。アルカリ化剤は、アルギニン、リシン、メグルミン、N−メチルグルコサミン(N−methyl glucosomine)、9.0以上のpKaを有する任意の他のアミノ酸、リン酸三ナトリウムなどのアルカリ性リン酸塩、炭酸ナトリウムなどの無機炭酸塩、EDTA四ナトリウムなどのカルボン酸のナトリウム塩、またはこれらの組合せでありうるが、これらに限定されるものではない。最も好ましいアルカリ化剤は、アルギニンおよび炭酸ナトリウムである。
【0025】
特定の実施形態では、アルカリ化剤は、クエン酸、リン酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、重炭酸、ピルビン酸、および炭酸アニオンの種々の塩形、酸性形、または塩基性形をはじめとする通常の緩衝剤でありうるが、これらに限定されるものではない。使用可能なこれらの緩衝剤の代表的な塩は、注射可能な組成物の状態で塩および量が生理学的に適合しうるのであれば、ナトリウム型およびカリウム型である。これらの緩衝剤の混合物を使用することも可能である。
【0026】
組成物の高pH(>11)(再構成時)は、好ましくは、無機塩基を添加することにより達成される。本明細書中で使用される場合、無機塩基とは、水からプロトンを自然に受容可能な遊離の水酸化物イオンを含み、かつバルク溶液のpHを目標値に調整するために使用される化学物質として定義されるものである。好ましい無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、他のアルカリ性水酸化物、水酸化マグネシウムなどの二価水酸化物、および水酸化アンモニウムなどの揮発性水酸化物である。また、有機塩基、たとえば、第一級、第二級、および第三級アミン、芳香族アミン(たとえばアニリン)、ならびに芳香族アルコール(たとえばフェノール)を使用することが可能である。有機塩基および無機塩基の両者の組合せもまた、本発明に適合する。好ましくは、塩基は、バルク溶液のpHが11超、好ましくは12超、最も好ましくは13超になるように添加される。本発明で使用するのに好ましい塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0027】
組成物は、好ましくは、エポプロステノールまたはその塩およびアルギニンを含むバルク溶液をフリーズドライ(凍結乾燥)することにより生成される凍結乾燥物である。バルク溶液のpHは、水酸化ナトリウムを添加することにより、好ましくは約12.5〜13.5、最も好ましくは13に調整される。
【0028】
「凍結乾燥する」という用語は、本医薬製剤に関するかぎり、それぞれユニット用量の本発明に係るエポプロステノール製剤の入った複数のバイアルを減圧下で凍結乾燥することを意味するものとする。以上に記載の凍結乾燥を行う凍結乾燥機は市販されており、当業者であれば容易に操作可能である。本発明の一実施形態では、バルク溶液は凍結乾燥される。好ましい凍結乾燥工程は、凍結サイクル、一次乾燥サイクル、および二次乾燥サイクルの3つのサイクルを含む。凍結サイクルは以下の工程を含む。
1. 約0.5〜0.7℃/分の速度で約−30℃以下に棚を冷却させ、約30〜45分間にわたりまたは生成物の温度が約−25℃以下に達するまで棚をこの温度に保持する工程。
2. 生成物の温度が約−38±2℃以下に達するまで棚温度を約−45℃±2℃以下に低下させる工程。
3. 約6時間以上にわたり生成物をこの温度に保持する工程。
4. チャンバー圧力が50ミリトール以下の領域に達するまで真空を適用する工程。
5. 真空適用後も約45分間以上にわたり棚温度を約−45±2℃に保持する工程。
【0029】
凍結サイクルの後、生成物は、以下の工程を含む一次乾燥サイクルで乾燥される。
1. 真空下に保持しながら約20±2℃/時の加熱速度で約0℃±2℃に棚温度を上昇させ、生成物温度が約−3±2℃以上に達するまで乾燥を継続する工程。
2. 真空下に保持しながら約25±2℃に棚温度を上昇させて乾燥サイクルを継続し、生成物の温度が約20±2℃以上に達するまで乾燥を継続する工程。
【0030】
一次乾燥サイクルの後、約3±2℃/時の速度で約45±2℃に棚温度を上昇させ、生成物が約38±2℃以上に達するまで乾燥を継続することにより、二次乾燥サイクルにおいて真空下で生成物をさらに乾燥させる。この際、好ましくは、約25±2℃から約40±2℃に達するのに要する時間が約5時間になるように乾燥速度を非常に遅い速度に設定する。
【0031】
他の製薬上許容しうる賦形剤を組成物に使用することも可能である。こうした賦形剤としては、保存剤(約0.1〜0.5%の割合で存在する)、担体(約1〜5%の割合で存在する)、張度調節剤(溶液を等張にするのに十分な量)、増量剤(約1〜10%の割合で存在する)、および医薬組成物の製剤化に使用される他の従来成分が含みうるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、これらの賦形剤は、製剤の基本的特性に実質的な影響を及ぼさない。
【0032】
使用すると考えられる特定の保存剤としては、ベンジルアルコール、パラベン類、フェノール、フェノール誘導体、ベンザルコニウムクロリド、およびこれらの混合物を含みうる。利用される特定の保存剤に依存して保存剤の量は異なりうる。保存剤は、好ましくは約0.1〜0.5%、最も好ましくは0.2%の割合で存在する。
【0033】
張度調節剤の代表例としては、塩化ナトリウム、マンニトール、デキストロース、グルコース、ラクトース、およびスクロースを含む。張度調節剤の量は、溶液を等張にするのに十分でなければならない。この量は、溶液および張度調節剤のタイプによって異なる。しかしながら、当業者であれば、特定の溶液を等張にする張度調節剤の量を決定できる。
【0034】
増量剤の代表例としては、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、ソルビトール、ラクトース、デキストラン、マルトース、マンノース、リボース、スクロース、マンニトール、トレハロース、ラクトース、デキストラン、シクロデキストリンなどの糖類、他のモノもしくはポリサッカリド類、グリシン、ポリビニルピロリジン(PVP)、またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。増量剤は、約1〜10%、好ましくは1〜5%、最も好ましくは5%の割合で存在しうる。
【0035】
好ましい実施形態では、安定な凍結乾燥製剤は、エポプロステノール(またはその塩たとえばエポプロステノールナトリウム)、マンニトールおよびアルギニンを含む。エポプロステノール:アルギニンの比は、約1:25〜約1:200、より好ましくは約1:25〜約1:100、最も好ましくは約1:33.3である。アルギニン:マンニトールの比は、約5:1〜約1:5、好ましくは約3:1〜約1:3、最も好ましくは約1:1である。好ましい製剤は、1バイアルあたり0.5mgのエポプロステノール、各50mgのアルギニンおよびマンニトールを含むか、または1.5mgのエポプロステノール、各50mgのアルギニンおよびマンニトールを含むかのいずれかである。凍結乾燥用のバルク溶液は、1mlあたり0.5mgのエポプロステノール、各50mgのマンニトールおよびアルギニンを含むか、または1.5mgのエポプロステノール、各50mgのアルギニンおよびマンニトールを含むかのいずれかである。バルク溶液のpHは、凍結乾燥前、水酸化ナトリウムで>11に調整される。
【0036】
他の実施形態では、本組成の組成物は、エポプロステノール(またはその塩、たとえばエポプロステノールナトリウム)およびアルギニンを含む。組成物は、水酸化ナトリウムなどの無機塩基または有機塩基、もしくは有機塩基および無機塩基の両者の組合せである塩基も含みうる。塩基は、バルク溶液のpHが11超、好ましくは12超、最も好ましくは13以上になるように添加される。
【0037】
他の実施形態では、本発明により、エポプロステノール(またはその塩、たとえばエポプロステノールナトリウム)、マンニトールおよび塩基を好ましくは約1:25〜約1:200(エポプロステノール:マンニトール)、より好ましくは1:100、最も好ましくは1:33.3の比で含む安定な凍結乾燥製剤を開発した。好ましい製剤は、1バイアルあたり0.5mgのエポプロステノールおよび50mgのマンニトールを含むか、または1.5mgのエポプロステノールおよび50mgのマンニトールを含むかのいずれかである。凍結乾燥用のバルク溶液は、1mlあたり0.5mgのエポプロステノールおよび50mgのマンニトールの両方を含むか、または1.5mgのエポプロステノールおよび50mgのマンニトールの両方を含むかのいずれかである。バルク溶液のpHは、塩基で13.0に調整される。
【0038】
凍結乾燥組成物は、市販のIV輸液剤を用いて再構成可能である。このような輸液剤としては、静菌WFIおよび滅菌WFIなどの注射用水(WFI)、0.9%塩化ナトリウム溶液(通常生理食塩水)、乳酸加リンゲル液、リンゲル液、炭酸ナトリウム溶液、重炭酸塩溶液、アミノ酸溶液ならびに類似の容易に入手可能な医薬希釈剤を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい希釈剤は、通常生理食塩水または乳酸加リンゲル液である。再構成時および/または希釈時、再構成溶液のpHは、約11超、好ましくは約11.3超、より好ましくは約11.5超、最も好ましくは約11.8超である。
【0039】
本発明に係る医薬組成物は、ユニット用量またはマルチ用量の形態で製剤化され、溶液剤、懸濁剤、またはエマルジョン剤のような注射可能または注入可能な形態をとりうる。好ましくは、IV投与経路をはじめとする種々の方法のいずれかにより投与する前に液体溶液剤、懸濁剤、またはエマルジョン剤の形態に再構成可能な乾燥状態の凍結乾燥粉末剤として調製される。好ましくは、凍結乾燥組成物は、投与に供すべく100〜10μg/ml、好ましくは10μg/mlになるように再構成される。この希釈溶液は、15〜30℃で24〜48時間後、90%安定である(元のエポプロステノールの90%が残存する)。
【0040】
さらに説明するまでもなく、当業者であれば以上の説明および以下の例示的な実施例を用いて本発明に係る化合物の製造および利用ならびに特許請求された方法の実施が可能であると考えられる。以下に実施例を示して本発明について具体的に説明する。当然のことながら、本発明は、これらの実施例に記載の特定の条件や詳細事項に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1: 注射用フローランの安定性
現在市販されているエポプロステノールの一形態(フローラン)の安定性を理解するために、本発明者らは、凍結乾燥されたエポプロステノール入りバイアルおよび希釈剤を、Physician’s Desk Reference(PDR)に記載の組成に従って調製した。注射用フローランは、静脈内(IV)投与に供すべく製剤化された滅菌ナトリウム塩である。凍結乾燥されたフローラン入りバイアルはそれぞれ、0.5mgまたは1.5mgのエポプロステノールと等価なエポプロステノールナトリウム、3.76mgのグリシン、2.93mgの塩化ナトリウム、および50mgのマンニトールを含む。pHを調整するために水酸化ナトリウムが添加されていることもある。本発明者らは、この処方を用いてフローラン模擬製品を作製した。
【0042】
フローランは、フローラン専用に作製された滅菌希釈剤で再構成しなければならない。フローラン用滅菌希釈剤は、94mgのグリシン、73.5mgの塩化ナトリウム、適量の水酸化ナトリウム(pHを調整するために添加される)を50mlの注射用水(USP)に添加して含むガラスバイアルの形態で供給される。PDRに記載の希釈剤のpH範囲は10.2〜10.8であるので、本発明者らは以上のように希釈剤を調製し、希釈剤のpHを10.5に調整した。本発明者らの模擬製品入りバイアルをPDRの使用説明に従って希釈剤で再構成し、希釈液の安定性を5±1℃でモニターした。安定性データを以下の表2にまとめる。PDRにはまた、<25℃で希釈溶液を投与しなければならないと記載されている。注入ポンプを介して連続的に薬剤が注入されるので、溶液パウチは、通常、8時間ごとに交換が必要なアイスパック中に保持される。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示されるように、製品は、最初の39時間では3時間ごとに約0.5〜1%の速度で分解するので、24時間で約4〜8%分解する。時間がさらに経過すると、さらに速い分解速度を示す。
【0045】
本発明者らは、29±1℃におけるフローラン製剤の溶液安定性についても調べた。フローラン製剤では、1時間で4%をわずかに超えて分解したが(表3に示される)、当該発明に係る製剤では、24時間で2%をわずかに超える薬剤が消失した(表7に示される)。
【0046】
【表3】

【0047】
実施例2: アルギニンを併用したときのエポプロステノールの安定性
エポプロステノールと50mg/mlのアルギニンとを含む溶液を調製し、5℃におけるこの溶液の安定性を調べた。得られたデータを表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
表4に示されるように、組成物は、53時間で効力がわずか1.4%消失したにすぎなかったが、フローラン製剤(表2)は、この時間にわたり約20%の効力消失を示した。十分な量および無菌性が確保されるのであればリザーバー内の溶液を交換することなく5日間にわたりエポプロステノール溶液を連続投与しうることがデータから示唆される。ポンプリザーバー内のフローラン溶液は12時間ごとの交換が必要なので、これはフローランを超える有意な改良である。
【0050】
同一の製剤の安定性をpH11.2でも調べた。データを以下の表5にまとめる。
【0051】
【表5】

【0052】
pH11.2でさえもフローラン製剤よりも良好な安定性であることが、データから示唆される(表2)。
【0053】
実施例3: 再構成凍結乾燥物の安定性
次の一連の実験では、エポプロステノールおよびアルギニンを含む溶液のpHを水酸化ナトリウムで13.0に調整し、凍結乾燥させた。1mlの注射用水で凍結乾燥物を再構成した後、再構成溶液は、50mg/mlのアルギニンおよび0.5mg/mlのエポプロステノールを含む。溶液のpHは13.0である。安定性データを5℃については表6に、29℃については以下の表7に示す。
【0054】
【表6】

【0055】
したがって、本発明では、5℃に保持した場合、480時間にわたりわずか3.4%または平均で0.007%/時の効力消失を示すにすぎない。
【0056】
そのほかに、本発明の利点は、製剤が専用希釈剤を必要としないことである。凍結乾燥製剤は、5ng/ml程度の低濃度に注射用水で再構成可能であり、溶液のpHは、13.2および10.8の塩基性pKを有するアルギニンの緩衝能とpH調整のために添加される追加の塩基とにより、依然として11.0超に保持される。
【0057】
【表7】

【0058】
最終的に、29℃において12時間でわずか1.5%の分解が観測されたにすぎないので、バルク溶液を5℃に冷却させることなく非経口用設備で本製剤を製造できると考えられる。このことは、現在入手可能な製品では不可能であろう。なぜなら、バルク溶液のpHが10.5であり、かつ製品を5±1℃で12時間以内に製造しなければならないであろうし、さもなければ有意な分解が起こるからである。
【0059】
実施例4: 種々エポプロステノール組成物の比較
次の開発段階で、本発明者らは、凍結乾燥用のバルク溶液のpHを10.5〜13.0に調整して異なる賦形剤の存在下でいくつかの凍結乾燥製剤をスクリーニングした。試験製剤の組成を表8に詳細に示し、安定性データを以下の表9にまとめる。
【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
凍結乾燥時、いくつかのバッチを一緒に凍結乾燥させてさまざまな湿分含有率を得た。また、選択されたサンプル(EPP−19、20.26、および38)の湿分含有率を測定した。以上の表8に示されるように、エポプロステノールの安定性は、pH13ではより低いpHのサンプルと比較してより良好である。マンニトール/HES、マンニトール/アルギニンまたはHES/炭酸ナトリウムを含む製剤は、優れた安定性を示した。
【0063】
次の工程で、バルク溶液のpHが13に調整されたアルギニン/マンニトールを含む製剤を凍結乾燥に供すべく選択した。湿分含有率がバッチ間で異なるので、以上で論述した三サイクル凍結乾燥工程を用いて、湿分含有率が終始一貫して12%未満になるように凍結乾燥サイクルを最適化した。最適化凍結乾燥工程を用いて、以下の製剤を作製した。
1. 1バイアルあたりエポプロステノール(0.5mg)/アルギニン(50mg)/マンニトール(50mg)/pH13を含むものを3バッチ
2. 1バイアルあたりエポプロステノール(0.5mg)/アルギニン(50mg)/マンニトール(50mg)/pH12を含むものを1バッチ
3. 1バイアルあたりエポプロステノール(0.5mg)/アルギニン(50mg)/トレハロース(50mg)/pH13を含むものを2バッチ
4. 1バイアルあたりエポプロステノール(0.5mg)/アルギニン(50mg)/トレハロース(50mg)/pH12を含むものを1バッチ
5. pH12および13に調整されたフローラン組成物を含むものを1バッチずつ。
これらの各バッチの湿分含有率は、7〜10%の範囲内であった。
【0064】
選択された製剤の3ヶ月間固体状態安定性データを以下の表10〜18に示す。
【0065】
【表10】

【0066】
【表11】

【0067】
【表12】

【0068】
【表13】

【0069】
【表14】

【0070】
【表15】

【0071】
【表16】

【0072】
【表17】

【0073】
【表18】

【0074】
以上のデータからわかるように、エポプロステノールは、マンニトール/アルギニン含有製剤ではバルク溶液のpHを13に調整したときが最も安定である。このことは、凍結乾燥用のバルク溶液がpH13に調整されたアルギニン/トレハロース製剤についてもあてはまる。より低いpH条件でアルギニンを有するトレハロース製剤やマンニトール製剤はいずれも、pH13の製剤と比較して40℃においてそれほど安定ではない。模擬凍結乾燥フローラン製剤は、pH12では、1ヶ月間/40℃でほとんど完全に分解した。pH13では、より良好な安定性を示したが、マンニトール/アルギニン/pH13の製剤ほど良好ではなかった。
【0075】
実施例5: 10μg/mlに希釈された種々の再構成エポプロステノールの安定性
本発明に係る製剤が室温におけるIV注入に適しているかを調べるために、希釈試験をも行った。種々の大量非経口溶液剤中において24時間にわたる注入時の温度を模倣すべく25℃および30℃で安定性試験を行った。
【0076】
この目的のために、通常生理食塩水中10μg/mlに再構成および希釈が行われたエポプロステノール凍結乾燥物の安定性を25℃および30℃で48時間にわたり安定性モニターした。3つの主要な製剤バッチすべての希釈安定性を通常生理食塩水中25℃および30℃で調べた。これらの試験に加えて、5%デキストロース(D5W)中、WFI(自社製)中、および乳酸加リンゲル液中、25℃および30℃で、主要な製剤バッチの1ロットについて希釈安定性試験を行った。
【0077】
希釈試験のために、各バイアルを5mlの希釈剤で再構成した。透明溶液を50mlメスフラスコ中に移した。バイアルを5mlの希釈剤で3回濯ぎ、濯ぎ液をフラスコに移した。フラスコの内容物を希釈剤でさらに希釈して標線まで希釈剤で増量させた。希釈溶液のpHを測定して記録した。フラスコの内容物を記載の温度に保持し、所定の時間間隔で分析した。種々の希釈剤中における希釈安定性データを以下の表19〜30に示す。
【0078】
【表19】

【0079】
【表20】

【0080】
【表21】

【0081】
【表22】

【0082】
【表23】

【0083】
【表24】

【0084】
表19〜24に示されるように、エポプロステノールの希釈溶液は、25℃および30℃できわめて安定であり、少なくとも24時間にわたり90%超の効力を保持した。試験したバッチはすべて、両方の温度で安定性の最小限のバッチ間変動を呈した。観察された唯一の分解生成物は、6−ケトPGFであった。
【0085】
【表25】

【0086】
【表26】

【0087】
エポプロステノールは、生理食塩水中よりも5%デキストロース溶液(D5W)中のほうが多く分解した。6−ケトPGFレベルは非常に低く、しかも他のピークは観察されなかった。この際、8時間後、薬剤の約84%は分解したが、他のピークは分解生成物として検出されなかった。
【0088】
pH低下が予想以上に大きかったため、D5W中における不安定性は部分的にはpHの著しい低下に起因しうる。このようなpH低下を生じる場合、D5Wは、当該発明に係る再構成/希釈に使用することはできない。
【0089】
【表27】

【0090】
【表28】

【0091】
興味深いことに、水中および通常生理食塩水中25℃におけるエポプロステノールの安定性は類似していた。しかしながら、水中のエポプロステノールは、30℃では通常生理食塩水中よりも急速に分解した。しかしながら、90%超の効力は、18時間超にわたり保持された。分解は、24時間後の時間点で加速した。
【0092】
乳酸加リンゲル液中における希釈安定性試験
乳酸加リンゲル液中における希釈安定性についても調べ、以下の表29〜30に示した。
【0093】
【表29】

【0094】
【表30】

【0095】
乳酸加リンゲル液中におけるエポプロステノールの安定性は、試験した両方の温度で通常生理食塩水中のものに匹敵する。
【0096】
本発明の特定の現時点で好ましい実施形態を本明細書に記載してきたが、本明細書に提示および説明されている種々の実施形態に対して本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変更および修正を加えうることは、本発明の関連する技術分野の当業者には自明なことであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲および適用可能な法規則により規定される範囲にのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)エポプロステノールまたはその塩と(ii)アルカリ化剤とを含むバルク溶液を提供する工程と、
(b)前記バルク溶液のpHを>11に調整する工程と、
を含む、エポプロステノール組成物の製造方法。
【請求項2】
(c)前記バルク溶液を凍結乾燥させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)が凍結サイクルとそれに続く一次乾燥サイクルおよび二次乾燥サイクルとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記凍結サイクルが、
(i)凍結乾燥チャンバー内の棚上に前記バルク溶液を配置する工程と、
(ii)約0.5〜0.7℃/分の速度で約−30℃以下に前記棚を冷却させる工程と、
(iii)約30分間にわたりまたは前記バルク溶液の温度が約−25℃以下に達するまで約−30℃以下に保持する工程と、
(iv)前記バルク溶液の温度がおよそ約−38±2℃に達するまで前記棚の温度を約−45±2℃に低下させる工程と、
(v)前記バルク溶液を約6時間以上にわたり約−38±2℃に保持する工程と、
(vi)前記チャンバーの圧力が約50ミリトール以下に達するまで真空を適用する工程と、
(vii)真空適用後約45分間以上にわたり前記棚の温度を約−45±2℃に保持する工程と、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一次乾燥サイクルが、
(i)毎時約20±2℃の加熱速度で約0±2℃に前記棚の温度を上昇させ、生成物の温度が約−3±2℃以上に達するまで真空下で乾燥を継続する工程と、
(ii)約25±2℃に前記棚の温度を上昇させ、前記生成物の温度が約20℃以上に達するまで乾燥を継続する工程と、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記二次乾燥サイクルが、
(i)約3±2℃/時の速度で約45±2℃に前記棚の温度を上昇させ、前記生成物の温度が約38±2℃以上に達するまで乾燥を継続する工程と、
(ii)前記チャンバーの圧力を窒素で増加させながら真空を解除する工程と、
(iii)前記チャンバーの圧力が大気圧に達した場合、窒素ブリーディングを中断し、窒素雰囲気下に前記組成物を閉じ込める工程と、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
エポプロステノールまたはその塩とアルカリ化剤との比が約1:25〜約1:200である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ化剤が、アルギニン、リシン、メグルミン、N−メチルグルコサミン、9.0以上のpKaを有するアミノ酸、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびEDTA四ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バルク溶液が増量剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記増量剤が、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、ソルビトール、ラクトース、デキストラン、マルトース、マンノース、リボース、スクロース、マンニトール、トレハロース、ラクトース、デキストラン、シクロデキストリン、グリシン、およびポリビニルピロリジン(PVP)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記増量剤が約1〜10%の割合で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記塩がエポプロステノールナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)が、有機塩基または無機塩基を添加することにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記無機塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化アンモニウムからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有機塩基が、芳香族アミン類および芳香族アルコール類からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
組成物が再構成された場合、再構成溶液のpHが>11である、(a)エポプロステノールまたはその塩と(b)アルカリ化剤とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
塩基をさらに含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
エポプロステノールとアルカリ化剤との比が約1:25〜約1:200である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記アルカリ化剤が、アルギニン、リシン、メグルミン、N−メチルグルコサミン、9.0以上のpKaを有するアミノ酸、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびEDTA四ナトリウムからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
増量剤をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記増量剤が、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、ソルビトール、ラクトース、デキストラン、マルトース、マンノース、リボース、スクロース、マンニトール、トレハロース、ラクトース、デキストラン、シクロデキストリン、グリシン、およびポリビニルピロリジン(PVP)からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記増量剤が約1〜10%の割合で存在する、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記塩がエポプロステノールナトリウムである、請求項16に記載の組成物。
【請求項24】
前記塩基が有機塩基および無機塩基である、請求項16に記載の組成物。
【請求項25】
前記無機塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化アンモニウムからなる群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記有機塩基が、芳香族アミン類および芳香族アルコール類からなる群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が凍結乾燥されている、請求項16に記載の組成物。
【請求項28】
密封滅菌バイアル内に入っている、請求項16に記載の組成物。
【請求項29】
溶液が>11のpHを有する、(a)エポプロステノールまたはその塩と、(b)アルカリ化剤と、および(c)水を含む、安定な溶液。
【請求項30】
塩基をさらに含む、請求項29に記載の溶液。
【請求項31】
エポプロステノールナトリウムとアルカリ化剤との比が約1:25〜約1:200である、請求項29に記載の溶液。
【請求項32】
前記アルカリ化剤が、アルギニン、リシン、メグルミン、N−メチルグルコサミン、9.0以上のpKaを有するアミノ酸、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびEDTA四ナトリウムからなる群から選択される、請求項29に記載の溶液。
【請求項33】
増量剤をさらに含む、請求項29に記載の溶液。
【請求項34】
前記増量剤が、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、ソルビトール、ラクトース、デキストラン、マルトース、マンノース、リボース、スクロース、マンニトール、トレハロース、ラクトース、デキストラン、シクロデキストリン、グリシン、およびポリビニルピロリジン(PVP)からなる群から選択される、請求項33に記載の溶液。
【請求項35】
前記増量剤が約1〜10%の割合で存在する、請求項33に記載の溶液。
【請求項36】
前記塩がエポプロステノールナトリウムである、請求項29に記載の溶液。
【請求項37】
前記塩基が有機塩基および無機塩基である、請求項30に記載の溶液。
【請求項38】
前記無機塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化アンモニウムからなる群から選択される、請求項37に記載の溶液。
【請求項39】
前記有機塩基が、芳香族アミン類および芳香族アルコール類からなる群から選択される、請求項37に記載の溶液。
【請求項40】
アテローム硬化症、動脈硬化症、鬱血性心不全、狭心症、および高血圧症からなる群から選択される疾患を患う患者を治療する方法であって、有効量の請求項16に記載の組成物を患者に投与する工程を含む方法。
【請求項41】
再構成溶液を形成するために前記投与する工程の前に第1の希釈剤で前記組成物を再構成することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の希釈剤が、注射用水、0.9%塩化ナトリウム溶液、乳酸加リンゲル液、リンゲル液、炭酸ナトリウム溶液、または重炭酸塩溶液である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
希釈溶液を形成するために第2の希釈剤で前記再構成溶液を希釈する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記希釈溶液が血液適合性である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記再構成溶液が自己保存される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
組成物が再構成された場合、再構成溶液のpHが>11である、(a)エポプロステノールまたはその塩と、(b)マンニトールと、および(c)塩基を含む、医薬組成物。
【請求項47】
エポプロステノールまたはその塩とマンニトールとの比が約1:25〜約1:200である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記塩がエポプロステノールナトリウムである、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
前記塩基が有機塩基および無機塩基である、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
前記無機塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウムからなる群から選択される、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記有機塩基が、芳香族アミン類および芳香族アルコール類からなる群から選択される、請求項49に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物が凍結乾燥されている、請求項46に記載の組成物。
【請求項53】
密封滅菌バイアル内に入っている、請求項46に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−525344(P2009−525344A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553381(P2008−553381)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/002948
【国際公開番号】WO2007/092343
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508233489)サイドーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】