説明

新規なジオバチルス微生物

【課題】工業用途に適した耐熱性リパーゼを効率的に生産する。
【解決手段】耐熱性T1リパーゼ遺伝子を有するジオバチルス属T1株およびその単離方法、シグナルペプチドを含むもしくは含まない、またはGSTタグが融合されたもしくはされていない耐熱性T1リパーゼを発現する形質転換体およびその作製方法、および、同菌株または形質転換体を用いて耐熱性T1リパーゼを産生する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な微生物およびその製造方法に関する。より具体的には、本発明は耐熱性リパーゼT1を産生する新規な微生物に関する。
【背景技術】
【0002】
リパーゼは、通常の生物体のための極めて重要な代謝酵素であり、脂肪を加水分解して遊離脂肪酸を産生することができる。リパーゼまたはアシルグリセロールヒドロラーゼは、長鎖トリグリセリドを、ジアシルグリセリド、モノグリセリド、グリセロールおよび遊離脂肪酸に加水分解する酵素である。しかしながら、リパーゼはまた、アルコールおよび脂肪酸からの、またはエステル交換を介してのエステルの形成において、加水分解の逆反応を触媒することもできる。
【0003】
リパーゼは、食品加工において風味ある乳製品に対しての、医薬において消化剤としての、脂肪および油の改善などのための酵素として、幅広く用いられている。リパーゼは、各用途のために種々の特性を有することが要求されており、耐熱性リパーゼは、広範な分野に適用され、様々に用いられることが要求されている。
【0004】
微生物細胞外リパーゼは、通常、動物性または植物性リパーゼよりもより耐熱性である。微生物細胞外リパーゼは、工業および診断薬において潜在的な用途を有する。商業用酵素における主要な要求は熱安定性であるが、これは、熱変性が酵素不活性化の一般的な原因であるからである。さらに、酵素の熱安定性を高めることにより、より高温で酵素反応を行うことができるようになるが、これは変換速度、基質溶解性を増大させ、そして微生物の増殖の可能性および反応媒体の粘度を低減する一助となる。
【0005】
好熱菌は、耐熱性酵素を産生するよい候補となり得るが、収率が低いことや、高温発酵装置が必要となる可能性があることから、実用的でない場合が多い。この問題を克服するために、遺伝子工学による分子学的アプローチが、原核細胞系を介した経済的な大量生産のための高レベルの発現を達成する良好な代替手段となっている。これまでのところ、数種の耐熱性リパーゼのクローニングおよび異種宿主の細胞内での発現に成功している。
【0006】
基礎研究および商業的目的において、原核細胞系における外来タンパク質の発現が、高レベルの発現を達成するために最も広く用いられている。発現ベクターおよび宿主は、クローニングされた遺伝子の最大限の発現を達成するのに重要な問題であり、外来遺伝子の分子学的クローニングは当該遺伝子の発現の成功を保証するものではない。
【非特許文献1】Leow et al., Biosci Biotechnol Biochem. 2004;68(1):96〜103
【非特許文献2】Frangioni and Neel, Anal Biochem. 1993;210(1):179〜87
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、工業用途に適した耐熱性リパーゼを効率的に産生することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術による耐熱性リパーゼの迅速なクローニング、および様々な種類のプロモーターを用いて原核細胞系により発現される耐熱性リパーゼT1遺伝子の操作を提供する。
【0009】
本発明において用いられる細菌株、ジオバチルス属T1株(Geobacillus sp.T1株)は、耐熱性T1リパーゼ遺伝子を提供するものであり、本発明はこれを製造する方法を含む。本発明はまた、耐熱性T1リパーゼ遺伝子を発現する宿主細胞を包含する形質転換体、およびその製造方法を提供する。
【0010】
すなわち、本発明は、パーム油廃液から単離され、リパーゼを産生することができる細菌、ジオバチルスT1株の生物学的に純粋な菌株であって、該細菌が、以下の特性を有するものに関する:
a)活動温度範囲および活動温度
活動温度範囲が20℃から75℃であり、最適温度が少なくとも70℃であり、
b)活動pH
pH5〜6の範囲の活動pHを有し、
c)形態学的および生理学的活性
好気性、グラム陽性、内生胞子形成性の桿菌状細菌であり、幅0.8〜1.0μmおよび長さ2.5〜6.0μmを有し、2%のNaClに耐性であり、クエン酸および硝酸塩試験について陽性であり、
d)酸性活性
作用糖類として、D−フルクトース、L−アラビノースおよびD−キシロースを有し、このうちD−フルクトースに対して高い酸性活性を有し、
f)細胞脂肪酸
イソ分枝ペンタデカン酸(イソC15)、ヘキサデカン酸(イソC16)およびヘプタデカン酸(イソC17)を78.33%の割合で有し、このうちイソC15およびイソC17が豊富であり、
g)分類学的同定
Geobacillus kaustophilus(DSM7263)と64.9%の類似性を有し、およびGeobacillus thermoleovorans (DSM5366)と68.8%の類似性を有し、
h)種の同定
リボプリント(RiboPrint)パターンを用いた場合、種の同一性は0%である。
【0011】
本発明はまた、ジオバチルスT1株が、パーム油廃液から、NaClを含むpH7.0の強化培地中に60℃の温度にて単離されたものである、上記菌株に関する。
本発明はさらに、ジオバチルスT1株が、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen:ドイツ微生物・細胞カルチャーコレクション)に、DSM17139として寄託されたものである、上記菌株に関する。
本発明はさらにまた、ジオバチルスT1株を同定する方法であって、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を含み、ここで耐熱性T1リパーゼ遺伝子のPCR増幅が、以下の工程:
a)少なくとも94℃での少なくとも4分間の予備変性工程、
b)少なくとも94℃での少なくとも1分間の変性工程、
c)56℃〜70℃での少なくとも2分間のアニーリング工程、
d)少なくとも72℃での少なくとも1分間の伸長工程、
e)少なくとも94℃での少なくとも7分間の最終伸長工程
を含む方法に関する。
【0012】
また、本発明は、PCR増幅サイクルが、25〜45サイクル反復される、上記同定方法に関する。
さらに、本発明は、ジオバチルスT1株を、栄養ブロス0.8%、寒天1.5%、ビクトリアブルー0.01%、トリオレイン0.25%(v/v)を含むトリオレイン寒天にて培養することを含む、リパーゼを産生する方法に関する。
さらにまた、本発明は、pGEX−4T1ベクターを用いて、単離された組換え耐熱性T1リパーゼ遺伝子を作製する方法に関する。
【0013】
本発明はまた、以下の特徴を有する、シグナルペプチドを有する融合タンパク質を製造する方法に関する:
a)pBAD、pGEX−4T1、pRSET CまたはpET22b(+)ベクターを含む原核細胞系における、シグナルペプチドを有する耐熱性T1リパーゼの発現、
b)araC、T7、T7lacまたはtacプロモーターを有すること、
c)tacプロモーターにより制御されているpGEX−4T1からの高レベルの発現を有すること、
d)0.05mMのIPTGで少なくとも8時間誘導した場合に、11,708U/lのリパーゼ活性を有すること、
e)20%〜28%のT1リパーゼ回収率および少なくとも7.3倍のT1リパーゼ精製倍率を有すること、
f)少なくとも30.192U/mgの精製融合リパーゼ活性を有すること。
【0014】
本発明はさらに、以下の特徴を有する、シグナルペプチドを有しない融合タンパク質を製造する方法に関する:
a)0.025mMのIPTGで少なくとも12時間誘導した場合に41,902U/lのリパーゼ活性を有すること、
b)少なくとも279倍の発現レベルの増加を有すること、
c)70%〜75%のリパーゼ回収率、および少なくとも2.87倍の精製倍率を有すること、
d)少なくとも297.929U/mgの精製融合リパーゼ活性を有すること、
e)T1成熟リパーゼを有すること。
【0015】
本発明はさらにまた、以下の特徴を有する、T1成熟リパーゼを製造する方法に関する:
a)活動温度活性および安定性
60℃〜80℃の範囲の温度で活動し、最適温度が約70℃であること、
b)活動pH活性および安定性
pH6〜10で30分間活動し安定であり、最適なアルカリpHが9であること、
c)作用金属イオン
Na、Mn2+、K、Mg2+、Mn2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Cu2+で作用し、
Mn2+、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+に対して少なくとも30分間安定であり、
Cu2+およびFe2+で、それぞれ約52%および60%のリパーゼ活性を少なくとも30分間有すること、
d)作用界面活性剤のリパーゼ活性への影響
63%〜88%の割合で、0〜30分間作用すること、
e)基質特異性
オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、パーム油およびトリグリセリドなどの天然油に作用し、天然油が好ましい基質であること、
f)リパーゼ阻害剤
金属キレート剤、還元剤、セリンプロテアーゼ阻害剤およびアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤と共に作用し、かつ触媒メカニズムがセリンおよびアスパラギン酸残基に関連すること。
【0016】
また、本発明は、工業用途における触媒として使用するための、ジオバチルスT1株から単離された耐熱性T1リパーゼの製造方法に関する。
さらに、本発明は、以下の特性を有する、安定性のある耐熱性T1リパーゼを製造する方法に関する:
a)融合リパーゼについては65℃、成熟リパーゼについては70℃の最適温度を有すること、
b)8〜9の間の最適pHを有すること、
c)pH6〜12で安定性を有すること。
さらにまた、本発明は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)を有する融合リパーゼT1を製造する方法であって、該融合リパーゼT1が約63kDaの分子量を有する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ジオバチルス属T1株のスクリーニング
ジオバチルス属T1株の単離および同定は好熱菌種に関する本発明の基礎となるものである。ジオバチルス属T1株の培養物は、Enzyme and Microbial Technology Research Department of Biochemistry and Microbiology, Faculty of Science and Environmental Studies, Universiti Putra Malaysiaから得ることができる。
【0018】
マレーシアのパーム油廃液からリパーゼ産生菌をスクリーニングする過程で、トリオレイン寒天プレートにおいて陽性の結果をもたらすT1を単離した。このリパーゼ産生菌の系統学的な位置を確認するために、形態学的および生理学的特徴、16S rRNA分析、細胞脂肪酸分析、DNA組成分析、DNA/DNAハイブリダイゼーション分析およびリボプリント分析を行った。
【0019】
ジオバチルス属T1株の単離および同定
サンプルは、マレーシアのセランゴールにて、パーム油廃液から採取した。ジオバチルス属T1株は、60℃、150rpmの振盪条件下の、NaCl 0.2%、MgSO.7HO 0.04%、MgCl・6HO 0.07%、CaCl・2HO 0.05%、KHPO 0.03%、KHPO 0.03%、(NHSO 0.05%、そして唯一の炭素源としてオリーブ油(2%)を含む強化培地から単離した。これを、リパーゼ産生菌のスクリーニングのためにトリオレイン寒天プレート上に播種した。
【0020】
本発明の別な態様においては、ジオバチルスT1株は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を含む方法により同定することができる。典型的には耐熱性T1リパーゼ遺伝子をPCR増幅する。PCR増幅は、
a)少なくとも94℃での少なくとも4分間の予備変性工程、
b)少なくとも94℃での少なくとも1分間の変性工程、
c)56℃〜70℃での少なくとも2分間のアニーリング工程、
d)少なくとも72℃での少なくとも1分間の伸長工程、
e)少なくとも94℃での少なくとも7分間の最終伸長工程
の各工程を含むことができる。また、PCR増幅サイクルは、25〜45サイクル反復してもよい。
【0021】
形態学的研究のために、純粋な細菌株を栄養寒天プレート上に画線し、60℃でインキュベートした後、グラム染色を施し、染色結果を光学顕微鏡で観察した。形態学的および生理学的特徴を、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen:ドイツ微生物・細胞カルチャーコレクション)に送付し、本菌株は同機関に、DMS17139として寄託された。生理学的特徴の検討は、カタラーゼおよびオキシダーゼ試験、嫌気性増殖、Voges-Proskauer試験、30℃、40℃および70℃での増殖、pH5.7、NaCl2%、5%またはリゾチームブロスを含む培地での増殖、D−グルコース、L−アラビノース、D−キシロース、D−マンニトールおよびD−フルクトースの発酵、デンプン、ゼラチン、カゼインおよびTween80の加水分解、チロシンの分解、クエン酸塩およびプロピオン酸塩の利用、硝酸塩の還元、インドールの産生、フェニルアラニンデアミナーゼおよびアルギニンジヒドロラーゼ試験を行った。脂肪酸は、Sherlock微生物同定システムの指示書にしたがって抽出および分析した。
【0022】
16S rDNAを、2個のユニバーサルプライマーを用いてPCRにより増幅し、PCR産物を精製した。精製したPCR産物を、TOPO TA PCR 2.1クローニングベクター(Invitrogen)にクローニングした。組換えプラスミドを抽出し、そして次に、ABI PRISM 377 DNAシーケンサー(Applied Biosystems)を用いてシーケンシングした。
【0023】
染色体DNAを単離および精製し、そしてG+C含量を、クロマトグラフィー条件を用いて決定した。DNAを加水分解し、そして得られたヌクレオチドを逆相HPLCで分析した。DNA/DNAハイブリダイゼーションは、2600型分光光度計を用いて分析した。
【0024】
標準化自動リボタイピング(standarized, automated ribotyping)は、Qualicon(登録商標)リボプリンター(RiboPrinter)システムを用いて行った。リボプリンターシステムは、リボタイピングのための分子処理工程を、独立した自動機器内で組み合わせたものである。工程は、細胞溶解、制限酵素EcoR1による染色体DNAの消化、電気泳動による断片の分離、DNA断片のナイロンメンブレンへのトランスファー、大腸菌由来のrrnBオペロンから生成したプローブへのハイブリダイゼーション、rrnオペロン配列を含む断片に対するプローブの化学発光による検出、画像検出およびリボプリントパターンのコンピュータ解析を含む。
【0025】
単離したT1株は、好気性、グラム陽性、内生胞子形成性の桿菌であった(幅0.8〜1.0μmおよび長さ2.5〜6.0μm)(図1)。T1株のDNA塩基組成は、およそ52.6%molG+Cであった。円筒形の内生胞子は、菌端の膨大した胞子嚢に出現する。T1株は70℃でさえも増殖するが、30℃および40℃では増殖は認められなかった。同株は、2%までのNaClの存在に耐性であった。酸は、D−フルクトースからは産生されたが、D−グルコースおよびD−マンニトールからは産生されなかった。クエン酸塩および硝酸塩試験の結果は陽性を示した。形態学的および生理学的特徴は、表1および2に示してある。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

+:陽性、−:陰性、w:弱い反応、n.d.:検出せず、n.g.:増殖せず
【0028】
【表3】

+:陽性、−:陰性、w:弱い反応、n.d.:検出せず、C:円筒形、O:楕円形、T:菌端。分類は以下のように示した:1.Geobacillus zalihaii、2.Geobacillus thermoleovorans(Zarilla & Perry, Syst Appl Microbiol. 1987;9:258〜264)、3.Geobacillus kaustophilus(White et al., Antonie Van Leeuwenhoek. 1993-94;64(3-4):357〜86)。
【0029】
1519bpの完全16SrDNA配列(AY166603:配列番号1)は、以下のように決定した。
【表4】

【0030】
T1株の細胞脂肪酸の大半はイソ脂肪酸であった(表3)。このうち、イソ分枝ペンタデカン酸(イソC15)、ヘキサデカン酸(イソC16)およびヘプタデカン酸(イソC17)が、全脂肪酸の78.33%を占めており、特にイソC15およびイソC17が豊富であった。この脂肪酸プロファイルにより、ジオバチルス属は、Bacillus Alicyclobacillus、Brevibacillus、Aneurinibacillus、SulfobacillusおよびThermobacillus属の他の中温菌および好熱菌と明確に区別される。T1株およびGeobacillus thermoleovorans DSM5366は、Bacillus rRNA群5の典型的な脂肪酸プロファイルを共有するが、表3に示すとおり、イソC16の脂肪酸組成における%により区別することができる。
【0031】
【表5】

【0032】
DNA/DNAハイブリダイゼーションの検討を、T1株と系統学的な近縁種との間の分類上の関連性を確認するために行った。T1株と標準株Geobacillus kaustophilus DSM7263およびGeobacillus thermoleovorans DSM5366との間のゲノムDNA/DNAの近縁性は、それぞれ64.9および68.8であった(表4)。
【表6】

【0033】
DNA/DNA再会合値は、種の定義のためのDNA/DNA類似性の閾値である70%を下回った。リボプリント分析を、T1株の近縁関係(affiliation)の決定のために行った。しかしながら、T1株のリボプリントパターンは、Dupont同定ライブラリーによっては、種のレベルでの同定(>0.85)がなされるようには同定されなかった。そのリボプリントパターンは、Geobacillus kaustophilus DSM7263に対して最も高い類似性を示した(0.69)。Geobacillus therleovorans DSM5366のパターンの類似性はいくらか低かった(0.57)。Geobacillus kaustophilus DSM7263およびGeobacillus thermoleovorans DSM5366のパターンは、0.64のバイナリーな類似性(binary similarity)を示した。
【0034】
結果として、T1株は、形態学的および生理学的検討、細胞脂肪酸組成、DNA組成、DNA/DNAハイブリダイゼーションおよびリボプリント分析により、新種の成員として認められるに値するものである。したがって、我々は、T1株について、新種、Geobacillus zalihae sp. nov.の創設を提案する(za.li.’hae N.L. gen. n. zalihae of zalihaは、極限微生物について多大な貢献を行ったUniversiti Putra Malaysiaの科学者に敬意を表したものである)。細胞は桿菌状であり、幅0.8〜1.0μm、長さ2.5〜6.0μmの、グラム陽性細菌である。菌端芽胞は円筒形であり、胞子嚢は膨大している。T1株のDNA塩基組成は、およそ52.6%molG+Cであった。同株は、多量のイソ脂肪酸を含んでおり、このうちイソC15およびイソC17が豊富であった(77.19%)。増殖は好気性であり、70℃でも増殖し続け、2%までのNaClに耐性があるが、嫌気性に増殖することはできない。カタラーゼおよび硝酸塩試験は陽性である。D−グルコースおよびD−マンニトールから酸は産生しないが、クエン酸塩を利用することができる。デンプンを加水分解するが、ゼラチンおよびカゼインは加水分解しない。
【0035】
ジオバチルス属T1株からの耐熱性リパーゼ遺伝子のクローニングおよびシーケンシング
細菌株およびプラスミド
耐熱性T1リパーゼ遺伝子を有する組換えプラスミドpBAD/T1(非特許文献1)を、サブクローニングの給源として用いた。大腸菌株はLB培地中、37℃で増殖させた。pRSET C(Invitrogen)、pET22b(+)(Novagen)およびpGEX−4T1(Amersham Bioscience、United Kingdom、England)を、サブクローニングおよび発現に用いた。
【0036】
DNA操作
プラスミドDNAは、QIAGEN miniprep spin kit(QIAGEN、Hilden、Germany)により、製造者の説明書にしたがって単離した。PCR産物は、GeneClean Kit(Qbiogene、Carlsbad、USA)により、供給者の説明通りに精製した。大腸菌のコンピテント細胞は、慣用のCaCl法により調製した。
【0037】
耐熱性T1リパーゼ遺伝子のサブクローニングおよび発現
T1リパーゼ遺伝子のサブクローニングは、制限酵素サイトBamH1/EcoR1を組み込んだプライマーのセット、すなわち、T1リパーゼのオープンリーディングフレームをサブクローニングするためのpGEX−For:5’-GAA GGG ATC CGT GAT GAA ATG CTG TCG GAT TAT G-3’(配列番号2)およびpGEX−Rev:5’-AAT AGA ATT CTT AAG GCT GCA AGC TCG CCA A-3’(配列番号3)、およびT1成熟リパーゼ遺伝子をサブクローニングするためのEH2−For:5’-GAC GGG ATC CGC ATC CCT ACG CGC CAA TGA T-3’(配列番号4)およびpGEX−Rev:5’-AAT AGA ATT CTT AAG GCT GCA AGC TCG CCA A-3’(配列番号3)を設計することにより行った。ライゲーションしたプラスミドを大腸菌株を形質転換するのに用い、適切な抗生物質を含むトリブチリンLB寒天プレートによりスクリーニングした。組換えプラスミドを含む大腸菌BL21(De3)plysSを、100μg/mlのアンピシリンおよび35μg/mlのクロラムフェニコールを添加した200mlのLB培地を含む1lのブルーキャップボトル中、ロータリーシェーカー上(200rpm)、37℃で増殖させた。
【0038】
シグナルペプチドを有する組換えクローンとシグナルペプチドを有しない組換えクローンとを、1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)により、OD600nm〜0.5にて、様々な誘導期間(0、4、8、12、20、28、36および44時間)誘導した。これを、IPTGの濃度(w/o、0.025、0.05、0.1、0.5、1.0、1.5および2.0mM)および誘導OD600nm(0.25、0.50、0.75および1.00)を変化させることにより、さらに最適化した。培養物(10ml)を遠心分離により回収し、50mMのリン酸カルシウムバッファー(pH7.0)2mlで再懸濁し、その後超音波処理(Branson 250 sonifier:出力2、デューティサイクル30%、2分)を施し、遠心分離(12,000rpm、20分)により澄明化した。粗製透明溶解液をリパーゼアッセイに用いた。
【0039】
電気泳動
SDS−PAGEを12%のゲル上で行い、これによりタンパク質を分析した。広範囲のタンパク質標準物質(MBI Fermentas、St. Leon-Rot、Germany)を、分子量マーカーとして用いた。
【0040】
T1リパーゼの精製
400mlの組換え培養物を遠心分離により回収し、超音波処理の前に40mlに濃縮した。粗製細胞溶解液を、10mlのカラム容積を有する、PBS(pH7.3)で平衡化したグルタチオン−セファロースHPカラム(XK16/20)に、0.2ml/分の流速で負荷した。カラムは、タンパク質が検出されなくなるまで同じバッファーで洗浄した。結合したリパーゼは、10mMの還元グルタチオンが添加されたトロンビン開裂バッファー(20mMのTris−HCl、100mlのNaClおよび0.33mMのCaCl、pH8.4)により溶出した。融合タンパク質を20ーCにて20時間トロンビン開裂に供し、そしてバッファーをセファデックスG−25に交換した後、PBS(pH7.3)に対して透析した。GSTタグおよびトロンビン酵素は、グルタチオン−セファロースHP、HiTrapグルタチオン4FFおよびHiTrapベンズアミジンを連続的に用いることによりさらに除去した。
【0041】
シグナルペプチドを含むT1リパーゼの発現は、それぞれaraC、T7、T7lacまたはtacプロモーターの制御下にある、pBAD、pRSET C、pET22b(+)またはpGEX−4T1を含む原核細胞系によって行った。これらのうち、高レベルの発現を誘導することに関して、tacプロモーターの制御下にあるpGEX−4T1発現系により比較的高レベルの発現が達成され、これをさらなる研究のために選択した。シグナルペプチドを有する組換えプラスミドpGEX−4T1を含む組換えクローンの可溶性たんぱく質を増大させるために、簡単な最適化を行った。合計11,708Uのリパーゼ活性が、0.05mMのIPTGによりOD600nm〜0.5にて8時間誘導した場合に検出され、このときの比活性は30.192U/mgであった(表5)。
【0042】
【表7】

注記:組換えプラスミドpGEX/T1またはpGEX/T1Sを含む宿主BL21(De3)plysSを、1mMのIPTGによりOD600nm〜0.5にて種々の時間誘導した。括弧内の数字はそれぞれのパラメータの最適値を示す。総活性は、1lの培養物をベースに算出した。
【0043】
理論的には、T1リパーゼをGST融合タンパク質として原核細胞系で発現させることにより、アフィニティークロマトグラフィーを用いた組換えリパーゼの迅速な精製が可能となる。しかしながら、我々は、高レベルの活性が検出されたにもかかわらず、組換えリパーゼの可溶性画分がグルタチオンセファロース4FFに結合しなかったため、これを精製することができなかった。これは、GSTおよびシグナルペプチドの高疎水性領域により、立体構造の変化やGSTドメインの不適切な折畳みが起こるためと思われた。幾つかのケースでは、GST融合タンパク質は、完全にまたは部分的に不溶性であった。さらに、高レベルの発現が、部分的な、高度に不溶性の融合タンパク質の不適切な折畳みに寄与し、それにより融合タンパク質のアフィニティーカラムへの結合が妨げられる可能性があった。
【0044】
FrangioniおよびNeel(非特許文献2)によれば、GST融合タンパク質の不溶性はよく起こるものである。このため、サルコシル溶解法を、部分的に不適切に折り畳まれた活性なT1融合リパーゼを可溶化するのに用いた。可溶化融合タンパク質を正しい折畳みに折畳み直し、これによりGST融合タンパク質がアフィニティーグルタチオンセファロース4FFに結合できるようにする目的で、非イオン界面活性剤TritonX−100を、サルコシルを抑制(sequester)するために用いた。表6に示すとおり、融合タンパク質を陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤とで処理することにより、約25%の回収率、および7.3培の精製倍率が得られた。
【0045】
【表8】

注記:融合タンパク質を、アフィニティークロマトグラフィーでの結合のために、2%の陰イオン界面活性剤サルコシルと1%の非イオン界面活性剤TritonX−100とにより可溶化した。
【0046】
シグナルペプチドは、真核細胞および原核細胞の両方において、ほぼすべてのタンパク質が分泌経路に入るのを制御しており、タンパク質が膜を介して輸送されるときに切除される。しかしながら、シグナルペプチドは、耐熱性T1リパーゼの構造遺伝子に寄与しない。したがって、我々は、マトリックス支持体に不動化されたグルタチオンへのGST融合タンパク質のアフィニティー結合を妨げることなく、GSTタグおよびT1成熟リパーゼの折畳みおよび相互作用を改善する目的で、シグナルペプチドを除いてT1リパーゼを発現させることを試みた。
【0047】
合計28個のアミノ酸残基がGST部分をカバーするT1リパーゼの動きを制限していたため、シグナルペプチドの除去は融合リパーゼを硬化させた。T1リパーゼ遺伝子の操作は、発現レベルを、誘導時間および誘導剤濃度について、それぞれ4.25倍および2.70倍と顕著に改善した(表5)。発現のさらなる最適化により、0.025mMのIPTGでOD600nm〜0.75にて12時間誘導した場合、培養物において41,902U/lの発現レベルが得られた。これは、野生型ジオバチルス属T1株と比較した場合、発現レベルの約279倍の増加である。
【0048】
融合タンパク質からシグナルペプチドを除去することにより、活性なT1リパーゼの収率が改善されるばかりでなく、また、グルタチオンセファロース4FFカラムでのアフィニティークロマトグラフィーによる、均質になるまでの精製が簡易化された(図2)。表7に示すとおり、およそ72.55%の回収率と、2.87倍の精製倍率が得られた。融合リパーゼの精製により、比活性が103.762U/mg(粗製細胞溶解液)から297.929U/mg(精製融合リパーゼ)へと増加した。
【0049】
T1成熟リパーゼは、次の精製工程により得た(表8)。融合リパーゼは、トロンビンプロテアーゼにより、20℃、20時間で切断し、そして透析の前に、バッファーをPBS(pH7.3)に交換し、かつ遊離グルタチオンを除去するためにセファデックスG−25に供した。GSTタグおよびトロンビン酵素を除去するために、これをグルタチオンセファロースHP、HiTrapグルタチオンセファロース4FFおよびベンズアミジンFF(high sub)でのアフィニティークロマトグラフィーに順次供した。
【0050】
【表9】

注記:融合タンパク質の直接精製は、界面活性剤を一切含まないアフィニティーグルタチオンセファロース4FFカラムにより行った。
【0051】
【表10】

注記:T1成熟リパーゼの精製は、アフィニティークロマトグラフィーによって行った。アフィニティー1は、グルタチオンセファロースHPを表す。アフィニティー2は、連続して設置されたグルタチオンセファロースHP、HiTrapグルタチオンセファロース4FFおよびHitrapベンズアミジン(high sub)を表す。
【0052】
T1融合リパーゼおよびT1成熟リパーゼの特徴化
T1リパーゼを、40℃から80℃までの範囲の5℃間隔の温度で、30分間、酵素活性について試験した。温度安定性試験は、種々の温度で様々な時間について行った。組換えT1リパーゼはまた、pH活性および安定性の決定のためにpH4〜12の範囲の広範囲のpH値に保った。バッファー系として、50mMの酢酸バッファー(pH4〜6)、リン酸カルシウムバッファー(pH6〜8)、Tris−HClバッファー(pH8〜9)、グリシン−NaOHバッファー(pH9〜11)、およびNaHPO/NaOHバッファー(pH11〜12)を用いた。エフェクター(金属イオン、界面活性剤)および阻害剤の効果は、ペプスタチン(1.0mM)を除き、それぞれ1mMおよび5mMの濃度で、50℃、30分の条件で検討した。
【0053】
温度の活性および安定性に対する影響は、種々の温度で30分間試験した。60℃〜80℃の温度範囲で最も活性が高く、最大活性は70℃で得られた(図2)。リパーゼの活性および安定性に対するpHの影響は、種々のpHで30分間、振盪条件下で試験した。図3に示すとおり、広いpH範囲、特にpH6〜10で活性があり、オリーブ油を基質に用いた場合、最適pHは9であった。pHによる処理により、T1成熟リパーゼがアルカリpHで比較的安定であることが示された(図4)。
【0054】
終濃度1mMの金属イオンの影響を、50℃、30分間の処理で試験した。図5に示すとおり、Na、Mn2+およびKは、リパーゼ活性を、15分間の処理の後で若干高めた。Mg2+、Mn2+、Ca2+、KおよびZn2+、特にCa2+は、30分間の処理の後でさえ、酵素活性を有意に低下させることなく安定化効果を示した。しかしながら、Fe2+およびCu2+は、30分後にリパーゼ活性を60%および52%と、強く抑制した。リパーゼ活性への界面活性剤の影響は、0.1%の濃度で検討した(図6)。0.1%のTweenの添加により明確な向上が見られ、特にTween80は、0および30分の処理の後、リパーゼ活性をそれぞれ63%および88%増加させた。
【0055】
基質のリパーゼ活性への影響について、種々のトリグリセリドおよび天然油を、基質特異性を検討するために用いた。図7は、T1リパーゼにとって、天然油が、トリグリセリドに比べて基質として好ましいことを示している。同酵素は、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油およびパーム油などの長い炭素鎖を有する天然油に対してより選択的であった。これは、T1リパーゼの工業用触媒としての良好な可能性を示すものである。
【0056】
いくつかの金属キレート剤、還元剤、セリンプロテアーゼ阻害剤およびアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤などの阻害剤のリパーゼ活性への影響を、T1成熟リパーゼに対する抑制効果の検討に用いた。EDTAが5mMにおいてもリパーゼ活性にわずかな影響しか示さなかったことから、同酵素は金属酵素ではなかった。また、β−メルカプトエタノールおよびDTTなどの還元剤は、T1リパーゼに対し、わずかな抑制効果しか示さなかった。一方、同リパーゼは、5mMのPMSFおよび1mMのペプスタチンの添加により強く抑制され、これはセリンおよびアスパラギン酸残基が触媒メカニズムに重要な役割を演じていることを示すものである(図8)。なお、Bacillus stearothermophilusからのP1リパーゼは、10mMのPMSFにより77%の抑制を示した(Sunchaikul et al., Protein Expr Purif. 2001;22(3):388〜98)。
【0057】
精製したT1融合リパーゼおよびT1成熟リパーゼの特性を、リパーゼ活性に対するGSTタグの影響を検討するために比較した。両方のリパーゼを精製し、その生理化学的特性を検討した(表9)。融合パートナーの存在により、最適温度およびpHは、それぞれ65℃およびpH8と若干低下した。一方、金属イオンおよび基質については、有意な差異は観察されなかった。しかしながら、Tween20〜80は、T1成熟リパーゼに対して向上効果をもたらしたが、融合パートナーの存在下でのみ安定であった。いずれのリパーゼも、試験した濃度のセリンプロテアーゼ阻害剤およびアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤により抑制された。
【0058】
【表11】

【0059】
GSTタグは、シグナルペプチドを有しないT1成熟リパーゼに硬く融合されているため、3次元構造および生物活性に最小限の影響を与えたにすぎず、生理化学的特性に有意な変化をもたらさなかった。T1成熟リパーゼの方が、わずかにpH1単位および5℃高かった最適pHおよび最適温度以外は、T1融合リパーゼおよび成熟リパーゼとの間に有意な差異はなかった。T1融合リパーゼおよび成熟リパーゼの、セリンプロテアーゼ阻害剤およびアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤に対する挙動は同じであった。このことから、我々は、融合タンパク質の精製が簡易化され、より大量かつ経済的に製造されるGSTタグと融合したT1リパーゼを、工業用途、特に温水洗濯用の洗剤向けに提案する。さらに、高濃度の融合リパーゼにおける凝集により形成される融合タンパク質の沈殿は、これを、融合リパーゼのpIからかけ離れたpH9のバッファーに溶解することにより、容易に可溶化された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によるT1リパーゼ、特にT1融合リパーゼは、耐熱性であり、精製が容易であるため、工業用途、特に温水洗濯用の洗剤などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】T1株の顕微鏡写真を示す写真図である。
【図2】成熟T1リパーゼの温度による活性を示す図である。精製T1リパーゼを、種々の温度で30分間、250rpmの振盪速度で、オリーブ油を基質としてアッセイした。
【図3】T1リパーゼの活性試験を示す図である。同酵素を、pH4〜pH12の様々なpHで、比色法によりアッセイした。用いた記号は以下のとおりである。◆:酢酸バッファー、△:リン酸カルシウムバッファー、■:Tris−HClバッファー、×:グリシンバッファー、○:NaHPO/NaOHバッファー。安定性試験では、T1リパーゼは、様々なpH(1:1、v/v)でのプレインキュベーションの後に、70℃で30分間アッセイした。
【0062】
【図4】T1リパーゼの安定性を示す図である。同酵素を、pH4からpH12までの様々なpHで30分間前処理した後に、T1リパーゼの残存活性をアッセイした。用いた記号は以下のとおりである。◆:酢酸バッファー、△:リン酸カルシウムバッファー、■:Tris−HClバッファー、×:グリシンバッファー、○:NaHPO/NaOHバッファー。安定性試験では、T1リパーゼは、様々なpH(1:1、v/v)でのプレインキュベーションの後に、70℃で30分間アッセイした。
【図5】リパーゼ活性に対する金属イオンの影響を示した図である。
【図6】リパーゼ活性に対する界面活性剤の影響を示した図である。
【図7】リパーゼ活性に対する基質の影響を示した図である。
【図8】リパーゼ活性に対する阻害剤の影響を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーム油廃液から単離され、リパーゼを産生することができる細菌、ジオバチルスT1株の生物学的に純粋な菌株であって、該細菌が、以下の特性を有する前記菌株:
a)活動温度範囲および活動温度
活動温度範囲が20℃から75℃であり、最適温度が少なくとも70℃であり、
b)活動pH
pH5〜6の範囲の活動pHを有し、
c)形態学的および生理学的活性
好気性、グラム陽性、内生胞子形成性の桿菌状細菌であり、幅0.8〜1.0μmおよび長さ2.5〜6.0μmを有し、2%のNaClに耐性であり、クエン酸および硝酸塩試験について陽性であり、
d)酸性活性
作用糖類として、D−フルクトース、L−アラビノースおよびD−キシロースを有し、このうちD−フルクトースに対して高い酸性活性を有し、
f)細胞脂肪酸
イソ分枝ペンタデカン酸(イソC15)、ヘキサデカン酸(イソC16)およびヘプタデカン酸(イソC17)を78.33%の割合で有し、このうちイソC15およびイソC17が豊富であり、
g)分類学的同定
Geobacillus kaustophilus(DSM7263)と64.9%の類似性を有し、およびGeobacillus thermoleovorans (DSM5366)と68.8%の類似性を有し、
h)種の同定
リボプリントパターンを用いた場合、種の同一性は0%である。
【請求項2】
ジオバチルスT1株が、パーム油廃液から、NaClを含むpH7.0の強化培地中に60℃の温度にて単離されたものである、請求項1に記載の生物学的に純粋な菌株。
【請求項3】
ジオバチルスT1株が、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen:ドイツ微生物・細胞カルチャーコレクション)に、DSM17139として寄託されたものである、請求項1に記載の生物学的に純粋な菌株。
【請求項4】
ジオバチルスT1株を同定する方法であって、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を含み、ここで耐熱性T1リパーゼ遺伝子のPCR増幅が、以下の工程:
a)少なくとも94℃での少なくとも4分間の予備変性工程、
b)少なくとも94℃での少なくとも1分間の変性工程、
c)56℃〜70℃での少なくとも2分間のアニーリング工程、
d)少なくとも72℃での少なくとも1分間の伸長工程、
e)少なくとも94℃での少なくとも7分間の最終伸長工程
を含む、前記方法。
【請求項5】
PCR増幅サイクルが、25〜45サイクル反復される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ジオバチルスT1株を、栄養ブロス0.8%、寒天1.5%、ビクトリアブルー0.01%、トリオレイン0.25%(v/v)を含むトリオレイン寒天にて培養することを含む、リパーゼを産生する方法。
【請求項7】
pGEX−4T1ベクターを用いて、単離された組換え耐熱性T1リパーゼ遺伝子を作製する方法。
【請求項8】
以下の特徴を有する、シグナルペプチドを有する融合タンパク質を製造する方法:
a)pBAD、pGEX−4T1、pRSET CまたはpET22b(+)ベクターを含む原核細胞系における、シグナルペプチドを有する耐熱性T1リパーゼの発現、
b)araC、T7、T7lacまたはtacプロモーターを有すること、
c)tacプロモーターにより制御されているpGEX−4T1からの高レベルの発現を有すること、
d)0.05mMのIPTGで少なくとも8時間誘導した場合に、11,708U/lのリパーゼ活性を有すること、
e)20%〜28%のT1リパーゼ回収率および少なくとも7.3倍のT1リパーゼ精製倍率を有すること、
f)少なくとも30.192U/mgの精製融合リパーゼ活性を有すること。
【請求項9】
以下の特徴を有する、シグナルペプチドを有しない融合タンパク質を製造する方法:
a)0.025mMのIPTGで少なくとも12時間誘導した場合に41,902U/lのリパーゼ活性を有すること、
b)少なくとも279倍の発現レベルの増加を有すること、
c)70%〜75%のリパーゼ回収率、および少なくとも2.87倍の精製倍率を有すること、
d)少なくとも297.929U/mgの精製融合リパーゼ活性を有すること、
e)T1成熟リパーゼを有すること。
【請求項10】
以下の特徴を有する、T1成熟リパーゼを製造する方法:
a)活動温度活性および安定性
60℃〜80℃の範囲の温度で活動し、最適温度が約70℃であること、
b)活動pH活性および安定性
pH6〜10で30分間活動し安定であり、最適なアルカリpHが9であること、
c)作用金属イオン
Na、Mn2+、K、Mg2+、Mn2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Cu2+で作用し、
Mn2+、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+に対して少なくとも30分間安定であり、
Cu2+およびFe2+で、それぞれ約52%および60%のリパーゼ活性を少なくとも30分間有すること、
d)作用界面活性剤のリパーゼ活性への影響
63%〜88%の割合で、0〜30分間作用すること、
e)基質特異性
オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、パーム油およびトリグリセリドなどの天然油に作用し、天然油が好ましい基質であること、
f)リパーゼ阻害剤
金属キレート剤、還元剤、セリンプロテアーゼ阻害剤およびアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤と共に作用し、かつ触媒メカニズムがセリンおよびアスパラギン酸残基に関連すること。
【請求項11】
工業用途における触媒として使用するための、ジオバチルスT1株から単離された耐熱性T1リパーゼの製造方法。
【請求項12】
以下の特性を有する、安定性のある耐熱性T1リパーゼを製造する方法:
a)融合リパーゼについては65℃、成熟リパーゼについては70℃の最適温度を有すること、
b)8〜9の間の最適pHを有すること、
c)pH6〜12で安定性を有すること。
【請求項13】
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)を有する融合リパーゼT1を製造する方法であって、該融合リパーゼT1が約63kDaの分子量を有する、前記方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2006−42820(P2006−42820A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223872(P2005−223872)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(505291413)ユニバーシティー プトラ マレーシア (11)
【Fターム(参考)】