説明

新規なバクテリオファージ及びそれを含む抗菌組成物

本発明は、新規なバクテリオファージに関し、詳細には、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラムからなる群から選択される1つまたはそれ以上のサルモネラ属菌に対して特異的死滅能を持ち、有益菌は死滅させない。また、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラムによって誘発されるサルモネラ症、サルモネラ菌食中毒、家禽チフス、及び雛白痢を含む感染性疾病の予防及び治療用またはサルモネラ菌統制用組成物、家畜用飼料または家畜用飲用水、洗浄剤及び消毒剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なバクテリオファージ(bacteriophage)に関する。
【背景技術】
【0002】
サルモネラ菌は、腸内菌科(family)の属(genus)であって、グラム陰性の条件嫌気性細菌で芽胞を形成しない桿菌として特徴され、大部分菌株は鞭毛による運動性を持つ。サルモネラ菌の平均ゲノムGC含量は50−52%で、大腸菌(Escherichia coli)やシゲラ(Shigella)と類似する。サルモネラ属は人だけでなく、家畜に感染して疾病などを誘発する病原性の微生物である。サルモネラ菌種であるサルモネラエンテリカ(Salmonella enterica)は血清学的区分を介してガリナルム(gallinarum)、プローラム(pullorum)、チフィムリウム(typhimurium)、エンテリティディス(enteritidis)、チフィ(typhi)、コレレスイス(choleraesuis)、ダービー(derby)などを含む多様な血清型(serovar)を持つ(Bopp CA, Brenner FW, Wells JG, Strokebine NA. Escherichia, Shigella, Salmonella. In Murry PR, Baron EJ, et al., eds. Manual of Clinical Microbiology. 7th ed. Washington DC American Society for Microbiology 1999;467-74 ; Ryan KJ. Ray CG (editors) (2004). Sherris Medical Microbiology (4th ed). McGraw Hill. ISBN 0-8385-8529-9.)。これらのうち、サルモネラガリナルムとサルモネラプローラムは家禽−適応した病原体であり、サルモネラチフィは人−適応した病原体であり、サルモネラコレレスイスとサルモネラダービーは豚−適応した病原体であり、サルモネラエンテリティディスとサルモネラチフィムリウムは人らと家畜などに対する病原体である。各血清種は、それぞれの種内で疾病を誘発して農家と消費者に莫大な被害を与えたりする。
【0003】
家禽でサルモネラ菌が誘発する疾病である家禽チフス(FT)は、サルモネラガリナルム(以下、"SG"という)が原因体である。家禽チフス(FT)は、鶏及び七面鳥のような家禽の敗血症疾病であり、急性または慢性の高い斃死率が進行され得る。最近にヨーロッパ、南米、アフリカ及び東南アジアなどでは家禽チフスの発生頻度が高いことで報告され、毎年その被害が増加されている。韓国では1992年以来でFTの発生を報告して来たし、茶色産卵鶏内FTによって誘発された経済的損失が非常に深刻である(クォンヨングク。2000年度鳥類疾病検索結果分析。国立獣医科学検疫院情報誌。2001年3月;ギムエラン外、2003年国内原種鷄及び種鶏の雛白痢(Pullorum disease)−家禽チフス感染実態、Korean J Vet Res(2006) 46(4): 347〜353)。
【0004】
雛白痢もサルモネラ菌の菌株であるサルモネラプローラム(以下、"SP"という)によって誘発される。雛白痢は、一齢または季節にかかわらず発病するが、疾病に対して初生雛時期に最も感受性が高い。過去1世紀の間、1−2週齢またはその未満一齢の初生雛ひよこで深刻な疾病であった。1980年代以来、その発生が非常に減少した。しかし、1990年代中半以来再び増加する趨勢にある(クォン・ヨングック.2000年度鳥類疾病検索結果分析.国立獣医科学検疫院情報誌.2001年3月;ギム・エラン外、2003年国内原種鷄及び種鶏の雛白痢(Pullorum disease)−家禽チフス感染実態、Korean J Vet Res(2006) 46(4): 347〜353)。
【0005】
韓国では、1990年代以来家禽チフスと雛白痢の発生が増加している趨勢で農家に経済的損失を与えている。このために、2004年から弱毒化されたSG生菌ワクチンをブロイラー(broiler)に使用して家禽チフスに対して予防しようとした(キムエラン外、2003年国内原種鶏及び種鶏の雛白痢−家禽チフス感染実態、Korean J Vet Res(2006) 46(4): 347〜353)。この効果に対する疑心と、産卵鶏において繼代伝染リスクで生菌ワクチンの使用が不許されている。残念ながら、家禽チフスと違って、雛白痢の場合には相変らず商業的に使用可能な予防策がない。したがって、家禽チフスと雛白痢を予防することができる新しい方法に対する模索が至急である。
【0006】
一方、サルモネラエンテリティディス(以下、"SE"という)とサルモネラチフィムリウム(以下、"ST"という)は、SGやSPと違って、宿主特異性ない人獣共通伝染菌である(Zoobises Report; United Kingdom 2003)。
【0007】
SEとSTは家禽、養豚、及び牛でサルモネラ症(salmonellosis)の原因になる。サルモネラ症は、家畜でサルモネラ菌によって急性または慢性の消化器伝染病に誘発され、発熱、腸炎及び敗血症を主症として示し、時々肺炎、関節炎、流産及び乳房炎も示す。サルモネラ症は全世界的に発生され、主に夏に最も頻繁に発病する(T.R. Callaway et al. Gastrointestinal microbial ecology and the safety of the food supply as related to Salmonella. J Anim Sci 2008.86:E163-E172)。牛の場合、典型的な症状として食慾不振、発熱、濃褐色下痢または粘血を含む。子牛の急性感染時、数日内に斃死され、姙娠中の感染は敗血症によって胎牛(fetal)が斃死されるので、早流産が発生し得る(www.livestock.co.kr)。養豚の場合、サルモネラ症は臨床的に3つの主要な症侯群として特徴される:急性敗血症型、急性腸炎型と慢性腸炎型。急性敗血症型は2〜4ヶ月齢の子豚で発生し、症状の開始2〜4日以内に大部分斃死される。急性腸炎型は肥育期の間に発生し、下痢と高熱、肺炎、及び神経徴候(nerves sign)を伴う。一部重症の場合、皮膚変色が起こる。慢性腸炎型の場合は持続的な下痢を伴う(www.livestock.co.kr)。
【0008】
SE及びSTによって家禽、養豚、及び牛でサルモネラ症が発生すると、治療薬剤だけで完治させ難い。これはサルモネラ菌が多様な薬剤に強い耐性を有し、臨床症状を示す間に抗生剤が侵透できない細胞内に寄生するからである。現在まで抗生剤を含んでSEとSTによって発病されるサルモネラ症を治療するための効果的な方法がない(www.lhca.or.kr)。
【0009】
家畜でのように、SE及びSTは家畜及びその製品を介して人に感染を誘発し、サルモネラ菌食中毒を起こすことができる。感染した、不十分に調理された家畜製品(例えば、肉類製品、家禽類製品、卵及びその副産物)を摂取した時に人体に感染する。人にサルモネラ菌食中毒は普通、頭痛と発熱、ひどい腹痛、下痢、悪心、及び嘔吐の即刻な発病を伴う。症状はたびたび感染してから6−72時間内に現れ、4−7日間またはそれ以上持続するかもしれない(NSW+HEALTH.2008.01.14.)。
【0010】
CDC(疾病管理センター、米国)統計によると、2005年から2008年の間に発生された人の食中毒の16%をサルモネラ菌のせいとして見て、その中でもSEとSTがそれぞれ20%と18%の原因である。1973年から1984年の間の人のサルモネラ菌食中毒に対して、伝染の食品媒介体として作用した場合が鶏は5%、牛肉は19%、豚肉は7%、酪農製品が6%、及び七面鳥が9%であったと報告した事がある。1974〜1984年屠鷄処理段階の間ブロイラーで微生物学的汚染調査は、サルモネラ菌の35%以上またはそれ以上の発生率を示した。1983年には鶏の50.6%、七面鳥の68.8%、ガチョウの60%、豚肉の11.6%、牛肉の1.5%においてサルモネラ菌が分離された。さらに、2007年の統計によると、生家禽肉5.5%と生豚肉1.1%においてサルモネラ菌が発見されたと報告された。特に、SEは大部分汚染された卵や汚染された家禽肉から由来し、STは汚染された豚肉、家禽肉、及び牛肉から由来されると明らかにされた(www.cdc.gov) (Centers for Disease Control and Prevention (CDC))。一例として、1988年以来米国、カナダ、及びヨーロッパではSEによる食中毒事例が急激に増加して来たことが見られるが、疫学的な追跡結果、卵や卵を含む食品が原因であることを立証した(Agre-Food Safety Information Service(AGROS).国内外食中毒発生及び管理動向.2008.02)。また、2002年FAOとWHOが行ったリスク評価では、卵と家禽肉を通して伝播されたサルモネラ症の人発病率が観察された家禽類のサルモネラ有病率と密接な関係を現われると明らかにした。すなわち、家禽類のサルモネラ有病率が減少すると、人のサルモネラ症発病率も減少するという意味である(Salmonella control at the source; World Health Organization. International Food Safety Authorities Network (INFOSAN) Information Note No. 03/2007)。最近ではピーナッツ、ほうれん草、トマト、ピスタチオ、胡椒、及び最も最近ではクッキー生地のように多様な材料からサルモネラ菌の発生によって飲食物安全に対する心配が提起されている(Jane Black and Ed O'Keefe. Overhaul of Food Safety Rules in the Works. Washington Post Staff Writers Wednesday,July 8,2009)。
【0011】
これらの理由のため、ドイツではサルモネラ菌による感染を報告しなければならない(ドイツ感染疾患予防法、Infektionsschutzgesetzに6項、7項に基づく)。1990年から2005年まで約20万件から約5万件に公式的記録の数は減少された。ドイツで毎5人のうち、1人程度がサルモネラ菌保菌者として推定されている。米国では毎年サルモネラ菌感染がおおよそ約4万件程度報告されている(en.wikipedia.org/wiki/Salmonella#cite_note-2)。
【0012】
したがって、家畜及び人にサルモネラ症を起こすことができるSEとSTの統制方法に対する模索が至急である。USDAとFDAの共同努力は、米国国内で100万件が超える食物−由来感染を誘発する原因であるサルモネラ症を予防するための多様の効果的な措置などを開発したものである。中でもFDAによって提起された最終法案が卵で汚染を減少するためのものである。FDAは現在、卵の製造社などが致命的なサルモネラ菌に対する定期的な試験を卵生産、保存及び運送の間に要求するでしょう。その結果、毎年汚染された卵によって誘発される7万9000件及び死亡30件の推定値を防止することができるでしょう(Jane Black and Ed O'Keefe. Overhaul of Food Safety Rules in the Works. Washington Post Staff Writers Wednesday,July 8,2009)。デンマークで、生産分野内サルモネラ菌管理費用対比サルモネラ症の総公衆衛生費用と比較した費用効果分析結果から、サルモネラ菌を管理することによって、2001年度の一年に最小1410万USドル推定値を節約することができたという提案があった(Salmonella control at the source. World Health Organization. International Food Safety Authorities Network(INFOSAN) Information Note No. 03/2007)。
【0013】
一方、バクテリオファージは細菌のみに感染及び破壊する細菌特異的ウイルスであって、宿主細菌内のみで自家増殖が可能である。バクテリオファージはタンパク質外被が取り囲まれている単一あるいは二重鎖のDNAまたはRNA形態の遺伝物質からなる。バクテリオファージは3つの基本形構造に分類される:20面体(20-sided)の頭に尾がある形態;20面体の頭に尾がない形態;及びフィラメント形。最も豊富な形態である20面体の頭に尾がある形態のバクテリオファージは、その尾の特性に応じて:それぞれ収縮性尾のマイオウイルス科(Myoviridae)、長くて非収縮性尾のシホウイルス科(Siphoviridae)、及び短くて非収縮性尾のポドウイルス科(Podoviridae)でさらに分類され得る。20面体の頭に尾のないバクテリオファージは、その頭の形態、頭の構成成分及び外皮の有無に基づいて分類される。DNAをその遺伝物質として持つフィラメント形態のバクテリオファージは、そのサイズ、形状、外被及びフィラメント構成成分に基づいて分類される(H.W.Ackermann. Frequency of morphological phage descriptions in the year 2000; Arch Virol (2001) 146:843-857; Elizabeth Kutter et al. Bacteriophages biology and application; CRC press)。
【0014】
感染させる時、バクテリオファージは、細菌にくっついて自分の遺伝物質を細胞内に注入する。バクテリオファージは、後に溶菌性(lytic)または溶原性(lysogenic)の2つの生活週期のうち、1つを帯びるようになる。溶菌性バクテリオファージの場合、細胞の機構などを占めてファージ構造物などを作る。その後、新しいファージ粒子などを放出させることによって細胞を破壊するとか溶解する。溶原性バクテリオファージの場合、自分の核酸を宿主細胞の染色体に組み込ませて細胞を破壊せず一つの単位(unit)として共に複製される。一定の条件下で、溶原性バクテリオファージが溶菌性に従うように誘導され得る(Elizabeth Kutter et al. Bacteriophages biology and application. CRC Press)。
【0015】
バクテリオファージの発見の以後、これを感染疾病治療剤として用いるための研究が進行された。しかし、広範囲な範囲を有する抗生剤が主に使用されながら、宿主特異性(specific target spectrum)を有するバクテリオファージは不要なもののように見えた。しかし、抗生剤の誤用または濫用で抗生剤耐性及び食品内の抗生剤残留の有害な影響に対する憂慮が加わっている(Cislo, M et al. Bacteriophage treatment of suppurative skin infections. Arch Immunol.Ther.Exp. 1987.2:175-183; Kim sung-hun et al., Bacteriophage; New Alternative Antibiotics. Biological research information center (BRIC))。特に、成長促進のために家畜用飼料に添加する抗微生物成長促進剤(AGP)が抗生剤耐性誘発の原因であることが明らかになったことに応じて抗微生物成長促進剤(AGP)の使用を禁止する政策などが最近立案されている。ヨーロッパ連合は、2006年からすべての抗微生物成長促進剤(AGP)の使用が禁止された。韓国は2009年から一部AGPの使用禁止が施行されており、今後にすべてのAGPの使用の全面禁止が予想されている。
【0016】
これらの抗生剤使用に対する増加する疑問が、抗生剤の代案としてバクテリオファージに対する関心の復活を引き起こした。E.coliO157:H菌を統制するためのバクテリオファージ7つが米国登録特許第6,485,902号に記述された(Use of bacteriophage for control of Escherichia coli O157,2002年度に登録される)。多様な種の微生物を統制するバクテリオファージの2種に対して米国登録特許第6,942,858号に記述された(Nymox社から2005年度に)。多くの産業界においてバクテリオファージを用いる多様な製品を開発するために活発に努力中である。EBI Food System社(ヨーロッパ)は、米国FDAの承認を受けた最初のバクテリオファージを用いた製品である、リステリア菌(Listeria monocytogenes)によって誘発される食中毒を防止する食品添加剤製品であるListex−P100を開発した。リステリア菌統制食品添加型ファージ−ベース製品であるLMP−102も開発してGRAS(Generally Regarded As Safe)の認証を受けた。2007年には、OmniLytics社で屠畜過程中にE.coliO157が牛肉で汚染されることを防ぐためのファージ−ベース洗浄液製品が開発され、米国農務省の食品安全検査局(FSIS)から承認された。ヨーロッパで、Clostridium sporogenes phage NCIMB 30008とClostridium tyrobutiricum phage NCIMB 30008とはそれぞれ2003年と2005年に飼料内のクロストリジウム(Clostridium)菌の汚染に対する飼料保存剤として登録された。このような研究は、家畜製品内の人獣共通伝染菌に対してバクテリオファージが抗生剤として使用され、持続的に研究が進行中であることを示している。
【0017】
しかし、大部分のファージ生物防除(biocontrol)研究が大腸菌、リステリア菌、及びクロストリジウム菌を統制するのに力を注いでいる。サルモネラ菌も人獣共通伝染菌であって、この伝染菌による被害が減っていない。前述のように、SEとSTは多薬剤耐性が存在するため、現在、韓国では伝染病予防法施行令(大統領令第16961号)、伝染病予防法施行規則(保健福祉部令第179号)、及び国立保健院職制(大統領令第17164号)によって全国的な抗菌耐性監視を実施している。したがって、サルモネラ菌を統制できるバクテリオファージの開発が必要である。
【発明の開示】
【技術的課題】
【0018】
本発明によれば、家禽病原体サルモネラに感染する、自然界から分離したバクテリオファージに対する集中的で徹底的な研究を本発明者らが行って、広範囲な抗生剤の誤用または濫用によって発生された問題、例えば、薬物または多薬剤耐性バクテリア、薬物残余物などを解決するための目的で、サルモネラエンテリティディス(SE)、サルモネラチフィムリウム(ST)、サルモネラガリナルム(SG)及びサルモネラプローラム(SP)に対して特異的死滅能を持ち、有益菌には影響を与えない分離されたバクテリオファージの一部を結果的に見付けることができ、さらにこれらの形態学的、生化学的及び遺伝学的特性を確認したところ、耐酸性と耐熱性及び耐乾性が優れたことを示し、したがって、前記バクテリオファージをサルモネラエンテリティディスまたはサルモネラチフィムリウム誘発された疾病である、例えば、家畜サルモネラ症及びサルモネラ菌食中毒、及びサルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラム誘発された疾病である、特に家禽チフス及び雛白痢の予防または治療用組成物の有効成分として用いることができる。また、本発明に応じるバクテリオファージは、家畜用飼料添加剤、家畜用飲用水、畜舎消毒剤(sanitizer)及び肉加工用洗浄剤を含むサルモネラ菌統制用の多様な製品に適用され得る。
【技術的解決方法】
【0019】
本発明の一つの目的は、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムからなる群から選択される1つまたはそれ以上のサルモネラ属菌に対して特異的死滅能を持つ新規なバクテリオファージを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、前記バクテリオファージを有効成分として含むサルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムからなる群から選択される1つまたはそれ以上のサルモネラ属菌によって誘発された感染性疾病の予防または治療用組成物を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、家畜用飼料添加剤及び家畜用飲用水を提供することである。
【0022】
本発明のまださらなる目的は、前記バクテリオファージを有効成分として含む洗浄剤及び消毒剤を提供することである。
【0023】
本発明のまだ別の目的は、前記バクテリオファージを有効成分として含む組成物を用いてサルモネラエンテリティスまたはサルモネラチフィムリウムによって誘発されるサルモネラ症またはサルモネラ菌食中毒を予防または治療する方法を提供することである。また、本発明は、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラムによって誘発される家禽チフス及び雛白痢を予防または治療する方法を提供することである。
【有利な効果】
【0024】
本発明の新規なバクテリオファージは、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムからなる群から選択される1つまたはそれ以上のサルモネラ菌株に対して特異的死滅能を持ち、さらに優れた耐酸性及び耐熱性並びに耐乾性を示す。このような理由で、本発明の前記新規なバクテリオファージは、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラムによって誘発されるサルモネラ症、サルモネラ菌食中毒、家禽チフス及び雛白痢を含む感染性疾病の予防または治療用途として用いることができるだけでなく、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムの統制用途として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、ΦCJ7の電子顕微鏡の写真であり、ΦCJ7が20面体の頭(isometric capsid)と長くて非収縮性の尾(long non-contractile tail)として特徴されるシホウイルス科(Siphoviridae)形態型群に属することを示す;
【図2】図2は、ΦCJ7のサルモネラ菌に対する溶菌斑形成有無写真である:A:SE;B:ST;C:SG;D:SP;E:SA;F:SB;G:SC;H:SD。SE、ST、SG及びSPでは溶菌斑を形成するが、SA、SB、SC及びSDでは溶菌斑を形成しない。
【図3】図3は、分離されたバクテリオファージΦCJ7のSDS−PAGEの結果であり、バクテリオファージのタンパク質パターンを示したものであって、38kDa、63kDa、52kDa及び12kDaの主要タンパク質を観察した(Invitrogen社のSee-blue plus 2 prestained-standardをマーカーとして使用した);
【図4】図4は、分離されたバクテリオファージΦCJ7のPFGEの結果であり、ΦCJ7の全体ゲノムのサイズは、約39.2kbpから44.1kbpまでの間であることを示し、Bio-rad社の5kbpDNA size standardをサイズマーカーとして使用した;
【図5】図5は、ΦCJ7のゲノムDNAの各プライマーセットを用いたPCRの結果を示したものである:A:配列番号5と6のプライマーセット;B:配列番号7と8のプライマーセット;C:配列番号9と10のプライマーセット;及びD:配列番号11と12のプライマーセット。すべてのPCR産出物は500bp〜3kbpの長さであった;
【図6】図6は、バクテリオファージΦCJ7の耐酸性実験の結果であって、pH2.1、2.5、3.0、3.5、4.0、5.5、6.4、6.9、7.4、8.0、9.0、9.8及び11.0での生存バクテリオファージの数を示す。対照群と比較して、pH3.0まではバクテリオファージΦCJ7の活性を失わないが、pH2.5またはそれ以下ではその活性を完全に失う;
【図7】図7は、バクテリオファージΦCJ7の耐熱性実験結果であり、37、45、53、60、70及び80℃で0、10、30、60及び120分毎の生存バクテリオファージの数を示す。バクテリオファージΦCJ7は、70℃で2時間まではその活性を維持し、80℃で10分さらされる時はその活性を少し失ったし、それ以上の時間にさらされる後にはその活性を完全に失った;
【図8】図8は、speed−dryer(Lab Plant社)を用いたバクテリオファージΦCJ7の耐乾性実験の結果であり、乾燥前タイター(titer)と比較して、乾燥条件下でタイター変化を測定したものであって、活性が100%維持されることが分かった;
【図9】図9は、投与前、投与後1、3、7、10及び14日に対するラットの体重グラフである。対照群と比較して、バクテリオファージΦCJ7と体重で有意な差は観察されなかった(■;雄の対照群、□;ΦCJ7を投与した雄の試験群、●;雌の対照群、○;ΦCJ7を投与した雌の試験群)。;及び
【図10】図10は、ΦCJ7の消毒能を示すグラフである。ΦCJ7は軽水、有機物希釈液、及び軽水+牛乳20%の条件でいずれも効果があることを示した。特に、ΦCJ7処理2.5時間後、効果が最も良いこととして示された。比較実験のために、陽性対照群として現在商業的に使用可能な製品であるハラソル(Harasol)(柳韓洋行、韓国)の場合、軽水の条件では非常に効果が良いが、有機物希釈液の条件では効果がなかったし、軽水+牛乳20%の条件でも効果が非常に減少することが分かった
【化1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
一つの側面から、本発明はサルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラムに特異的死滅能を持つ新規な分離されたバクテリオファージに関する。
【0027】
本発明のバクテリオファージは、形態学的構造上、20面体の頭と長くて非収縮性の尾からなる形態型B1シホウイルス科に属し、全体のゲノムサイズが38〜45kbpであり、37〜40kDa、62〜65kDa、51〜54kDa及び10〜13kDaサイズ範囲の主要構造タンパク質で特徴される。
【0028】
好ましい態様において、本発明のバクテリオファージは、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラムのみを選択的に感染させる種特異性を持つ。
【0029】
好ましい態様において、本発明のバクテリオファージは、全体のゲノムサイズが約38〜45kbpであり、好ましくは約39.2〜44.1kbpである。さらに、バクテリオファージは、配列番号1〜4からなる群から選択される1つまたはそれ以上の核酸分子をゲノムの一部として含むことができる。好ましくは、バクテリオファージは、配列番号1〜4からなる核酸分子をゲノムの一部として含む。
【0030】
本発明のバクテリオファージのゲノムを鋳型として用いて配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10及び配列番号11と12の中から選択されるプライマーセットの存在下でPCRを行った場合、PCR産出物は、それぞれ500bp〜3kbpの長さである。好ましくは、前記言及したプライマーセットそれぞれの存在下でPCRを行った場合、それぞれのPCR産出物は、500bp〜3kbpの長さである。
【0031】
本発明において用語"核酸分子"は、DNA(gDNAとcDNA)及びRNA分子を含む意味である。核酸分子の構成単位を作るのに共に組み合わせられる、用語"ヌクレオチド"は、自然のヌクレオチドだけでなく、糖または塩基部位が変形された類似体を含む。
【0032】
本発明のバクテリオファージは、37〜40kDa、62〜65kDa、51〜54kDa及び10〜13kDaサイズ範囲の主要構造タンパク質を持ち、好ましくは、約38kDa、63kDa、52kDa及び12kDaそれぞれのサイズに相応する。
【0033】
さらに、本発明のバクテリオファージは、耐酸性、耐熱性及び耐乾性である生化学的特徴を示す。
【0034】
より具体的に、本発明のバクテリオファージは、酸と熱に優れた耐性を示し、これはpH3.0〜pH11.0の広いpH範囲及び、37℃〜70℃の広い熱範囲にかけて生存することができる。また、その耐乾性に関して、バクテリオファージは、120℃/70℃の高温乾燥した条件下でも生存を維持することができる。このような優れた耐酸性、耐熱性及び耐乾性は、本発明のバクテリオファージを家畜疾病及び家畜−由来された人疾病の予防及び治療用組成物並びに製品として適用することにおいて、広い温度及びpH範囲の利用が可能になる。
【0035】
屠鷄場(chicken slaughterhouse)の下水から試料を分離してSG、SP、ST及びSEに対する特異的死滅能を持ち、前記のような特徴を有する本発明のバクテリオファージを同定し、これをΦCJ7と命名し、2009年8月14日韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、ソウル市西大門区弘済1洞361−221)に受託番号第KCCM11030P号で寄託した。
【0036】
本発明の一実施例によれば、屠鷄場から下水試料を採取し、これを用いて宿主細胞であるSEを溶菌するバクテリオファージを分離した。これらがまたSG、SP及びSTを溶菌させることができることを確認した(図2及び表1)。バクテリオファージ(ΦCJ7)を電子顕微鏡下で形態学的に観察した結果、形態型B1のシホウイルス科に属することを確認した(図1)。
【0037】
タンパク質パターン分析で測定した結果、本発明のバクテリオファージΦCJ7は、約38kDa、63kDa、52kDa及び12kDaの構造タンパク質を持つこととして示された(図3)。
【0038】
さらに、ゲノム分析は、ΦCJ7が約44.1〜39.1kbpの全体のゲノムサイズを持ち(図4)、配列番号1〜4の核酸分子を全体ゲノムの一部として含むことを示した(実施例6)。また、本発明のバクテリオファージの他の種間の遺伝的類似性を比較して測定した結果、現在まで知られているバクテリオファージと非常に低い遺伝的相補性を示すことによって、本発明のバクテリオファージは新規なバクテリオファージであることを確認した(表2)。より具体的に、ΦCJ7に対して設計された、配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10及び配列番号11と12のプライマーセットを用いてPCRを行った時、得られたPCR産出物は500bp〜3kbpサイズであった(図5)。
【0039】
また、ΦCJ7をSE、ST、SG及びSPに感染させた結果から生じた、溶菌斑(ソフトアガーでファージによって細胞が溶菌されて形成される透明な地域)のサイズと濁度などが同一であることを確認した(図2)。
【0040】
ΦCJ7を広範囲なpH、温度及び乾燥下で安定性を調査した。前記バクテリオファージはpH3.0〜11.0の範囲(図6)及び37℃〜70℃の温度範囲にかけて生存する(図7)だけでなく、高温乾燥(120℃/70℃)後でも安定に生存を維持することを確認した(図8)。
【0041】
また、ΦCJ7の宿主細胞範囲に野生分離株SE、ST、SG及びSPがまた属することを確認することができた(表3)。
【0042】
ΦCJ7を経口投与した結果、ラットで体重変化なしに維持されたし(図9)、死亡個体数、一般症状(表4)、及び臓器異常(表5)が観察されなかった。
【0043】
また、家畜農場においてバクテリオファージΦCJ7を使用する時、洗浄能実験の結果、陽性対照群として通常の洗浄剤と比較した時、サルモネラ菌を効率的に統制し(表7)、多様な条件下でサルモネラ菌株に対する優れて一貫した死滅能があることを確認した(表7)。
【0044】
これらのデータは、本発明のバクテリオファージΦCJ7がサルモネラ菌を統制することができる多様な製品への適用が容易であるということを意味するものである。
【0045】
また別の側面から、本発明は、前記バクテリオファージを有効成分として含むサルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムからなる群から選択される1つまたは2つ以上のサルモネラ菌に誘発された感染性疾病の予防または治療用組成物に関する。
【0046】
好ましい一態様において、前記組成物は、抗生剤を含むことができる。
【0047】
本発明のバクテリオファージは、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムに対して特異的死滅能を持つので、前記菌などによって誘発される疾病に対して予防するとかまたは治療するための目的に用いられる。好ましくは、感染性疾病の例は、サルモネラエンテリティディスまたはサルモネラチフィムリウムによるサルモネラ症及びサルモネラ菌食中毒、サルモネラガリナルムによる家禽チフス、及びサルモネラプローラムによる雛白痢を含むことができるが、これに制限されるのではない。
【0048】
本発明において用語"サルモネラ症"は、サルモネラ菌感染による発熱、頭痛、下痢、及び嘔吐のような症状を言う。すなわち、サルモネラ症は、サルモネラ菌属の細菌による感染を総称し、2つの代表的な症状:腸チフスのような敗血症型;及び食中毒、腸炎、急性菌血症のような急性胃腸炎型を伴う。
【0049】
本発明において用語"予防"とは、組成物の投与を通して疾病を抑制させるとか発病を遅延させるすべての行為を含むことを意味する。本発明において用語"治療"とは、組成物の投与を通して患者の症状が好転するとか有利に変更されるすべての行為を含むことを意味する。
【0050】
本発明の前記組成物は、5×10〜5×1012pfu/ml量のΦCJ7を含み、好ましくは1×10〜1×1010pfu/ml量のΦCJ7を含む。
【0051】
本発明の前記組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、担体とともに製剤化されて食品、医薬品及び飼料添加剤として提供され得る。
【0052】
本発明において用語"薬学的に許容可能な担体"とは、生物体に著しい刺激を誘発せず、投与された有効成分の生物学的活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤を言う。液状剤形に製剤化される組成物において、薬剤学的に許容される担体としては、滅菌及び生体適合性に適合しなければならない。例えば、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝生理食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、及びエタノールを含む。これらは単独または任意のその組み合わせで使用され得る。必要によって、抗酸化剤、緩衝額、静菌剤などのような別の通常の添加剤を組成物に添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に混合して、本発明の組成物を水溶液、懸濁液及び乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0053】
本発明の予防または治療用組成物は、疾患部位に塗布または噴霧を介して局所的に用いることができる。
【0054】
これとは異なり、本発明の組成物は、経口または非経口経路を通して投与することもできる。非経口経路の場合、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または局部で投与可能である。
【0055】
本発明の前記組成物の適合した塗布、噴霧または投与用量は、製剤化方法、投与方式、対象になる動物または患者の年齢、体重、性別、症状及び食餌、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応敏感度のような多様な要因を含むことに依存して変わる。熟練された当業者が患者に薬学的組成物を投与する時、正しい医学的判断の範囲内で医師や獣医師によって適合した総1日容量を容易に決定できるということは自明なことである。
【0056】
本発明の組成物の経口投与用剤形としては、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水溶性または乳性懸濁液、粉末または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤の形態であり得る。錠剤及びカプセルのような経口投与用剤形は、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アミロペクチン、セルロースまたはゼラチンのような結合剤、リン酸二カルシウムのような賦形剤、トウモロコシ澱粉またはサツマイモ澱粉のような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはポリエチレングリコールワックスのような潤滑油を含むことができる。カプセル剤形の場合、脂肪油のような液体担体をさらに使用することができる。
【0057】
本発明の組成物の非経口投与用剤形としては、皮下、静脈または筋肉内経路を介した注射用、坐剤用または呼吸器を経て吸入が可能にさせるエアゾール剤のようなスプレー用に製剤化することができる。注射用剤形は、本発明の組成物を水で安定剤または緩衝剤と共に溶解または懸濁させ、前記溶液または懸濁液をアンプルまたはバイアルの単位形態で積載して製剤化することができる。エアゾール剤のようなスプレー用は、水分散された濃縮物または湿潤粉末が分散するように推進剤などが添加剤とともに配合され得る。
【0058】
本発明において用語"抗生剤"は、動物に投与されて細菌を死滅させるとかその成長を阻害することができる物質または化合物をいい、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤を含むことを意味する。前記動物は人を含む哺乳動物である。本発明のバクテリオファージは、既存の抗生剤に比べてサルモネラ菌に対する特異性が非常に高いので、有益菌に影響せず、特定病源菌だけ死滅させることができる。さらに、本発明のバクテリオファージは薬物耐性を誘導しなくて、製品寿命が長い新規な抗生剤として提供され得る。
【0059】
さらに別の側面から、本発明は前記バクテリオファージを有効成分として含む家畜用飼料または飲用水に関する。
【0060】
水産業及び畜産業で飼料添加用抗生剤の使用は、感染予防を意味する。しかし、現在使用可能な飼料添加用抗生剤の大部分は、耐性菌株の発生を誘導することができ、家畜用製品に残留して人に伝染しやすいという問題がある。このような残留抗生剤の摂取は、人病原体の抗生剤耐性を誘発して、結果的に疾病の拡散を招くこともできる。さらに、家畜用飼料に一般的に混合して食べさせる飼料添加用抗生剤の種類が多く、これは多薬剤耐性菌の発生を誘発することができる。したがって、自然親和的なら前記問題を解決するのに十分な飼料添加剤用抗生物質として本発明の前記バクテリオファージを用いることができるのである。
【0061】
本発明に応じる家畜用飼料は、バクテリオファージを直接添加するとか飼料添加剤形態で別に製造して家畜用飼料に混合させて製造することができる。本発明の家畜用飼料内のバクテリオファージは、液状または乾燥状態であることができ、好ましくは乾燥した粉末として存在する。この点から、本発明のバクテリオファージは、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥または凍結乾燥で乾燥され得るが、本発明にこれらの乾燥工程が制限されるのではない。本発明のバクテリオファージは、粉末として家畜用飼料の総重量に基づいて、0.05〜10重量%の量、好ましくは0.1〜2重量%の量で添加され得る。前記家畜用飼料は、本発明のバクテリオファージだけでなく、その保存性を高めることができる通常の他の添加剤などを含むことができる。
【0062】
本発明の飼料添加剤には、非病原性の別の微生物が添加され得る。添加され得る微生物としては、タンパク質分解酵素、脂肪分解酵素及び糖転化酵素を生産できるバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、牛の胃のような嫌気的条件で生理的活性及び分解能があるラクトバチルス菌株 (Lactobacillus sp.)、家畜の体重を増加させて牛乳の産乳量を増やし、飼料の消化及び吸収率を高める効果を示すアスペルギルスオリゼー(Aspergillus oryzae)を含む糸状菌(J Animal Sci 43:910-926,1976)及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母(JAnimSci56:735-739,1983)からなる群から選択され得る。
【0063】
本発明によるΦCJ7を含む家畜用飼料には、植物性−ベース飼料としては穀物類、ナッツ類、食品副産物類、海藻類、纎維質類、製薬副産物類、油脂類、澱粉類、ミール(meal)類、及び穀物副産物類、動物性−ベース飼料としてはタンパク質類、無機物類、油脂類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類、食品廃棄物類を含むことができ、これに限定されたのではない。
【0064】
本発明によるΦCJ7を含む飼料添加剤には、品質低下を防止するために添加する結合剤、乳化剤及び保存剤などがあり、効用増大のために添加するアミノ酸剤、ビタミン剤、酵素剤、生菌剤、香味剤、非タンパク窒素、珪酸塩剤、緩衝剤、着色剤、抽出剤、及びオリゴ糖などがあり、これに限定されたのではない。
【0065】
本発明のバクテリオファージを含む飲用水を供給する時、家畜は持続的にその家畜の腸内サルモネラ菌の数字を減少させ得る。その結果として、サルモネラ菌清浄家畜生産ができる。
【0066】
追加の側面によれば、本発明は、前記バクテリオファージを有効成分として含む洗浄剤または消毒剤に関する。
【0067】
前記バクテリオファージを有効成分として含む消毒剤は、例えば、食中毒に対する食品衛生に非常に有用である。具体的に、消毒剤をサルモネラ菌汚染防止の製剤または食品添加物としてのみ用いることだけでなく、サルモネラ菌清浄家畜生産にも使用することができる。サルモネラ菌除去のために消毒剤を生活下水処理場及び家禽畜舍、家畜屠殺場、家畜斃死地域、調理場所と設備、及び任意の家禽活動領域に撒布され得る。
【0068】
さらに、前記バクテリオファージを有効成分として含む洗浄剤は、既に、または潜在的にサルモネラ菌で汚染可能な皮膚、羽毛などのような生きている家畜の身体部位に使用され得る。
【0069】
まだ別の側面から、本発明は、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラムに対して特異的死滅能を持つバクテリオファージを必要とする動物に投与する段階を含むサルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラム誘発された感染性疾病を予防または治療する方法に関する。
【0070】
さらにもう一つの側面から、本発明は、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラム誘発された疾病の予防または治療用組成物を必要とする動物に投与する段階を含むサルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラム誘発された感染性疾病を予防または治療する方法に関する。
【0071】
本発明の前記組成物は、薬学的製剤の形態で動物に投与され得るとか、家畜用飼料または飲用水に混合して動物によって摂取されることができ、好ましくは家畜用飼料混合物としてあり得る。本発明で、前記動物は牛、豚、鶏、家禽類、及び人を含むが、これに制限されるのではない。
【0072】
目的組職に逹することができる限り、どのような経路、経口または非経口で本発明の組成物が投与され得る。具体的に、本発明の組成物は、口腔、直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻腔内、及び吸入経路を介して投与され得る。
【0073】
本発明に応じる疾病の治療方法は、本発明の組成物を薬学的有効量で投与することを含む。総1日容量は、正しい医学的判断の範囲内で医師や獣医師によって決定され得るということは熟練した当業者に自明なことである。与えられた患者に対する治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別及び食餌、投与時間と投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物とともに使用されるとか使用されない薬物などを含む医薬分野で公知の多様な因子に応じて変化することができる。
【0074】
以下、実施例を介して本発明をより詳細に説明しようとする。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるのではない。
【発明の実施のための形態】
【0075】
実施例1:サルモネラ菌バクテリオファージの分離
1−1.バクテリオファージスクリーニング及び単一バクテリオファージ分離
屠鷄場及び辺い下水終末処理場からの試料50mlのそれぞれを遠心分離管に移して4000rpmで10分間遠心分離した後、上澄液を0.45μmフィルターを用いてろ過した。サルモネラエンテリティディス(以下、"SE"という)振盪培養液(OD600=2)150μlと10×Luria−Bertani培地(以下、"LB培地"という、トリップトン10g;酵母抽出物5g;NaCl10g;最終体積が1Lになるように)2mlに試料ろ過液18mlを混合した。この混合液を37℃で18時間培養した後、4000rpmで10分間遠心分離し、その上澄液を0.2μmフィルターを用いてろ過した。別に、0.7%アガー(w/v)3ml及びSE振盪培養液(OD600=2)150μlを混合してLBプレートに注いで固めた。そのプレートの上に試料培養ろ過液10μlを塗抹し、引き継いで37℃で18時間培養した(0.7%アガーは"トップアガー"として使用しったし、トップアガーでバクテリオファージ溶菌のタイター測定(titration)を行うことをソフトアガーオーバーレイ(soft agar overlay)方法であると定義する)。
【0076】
ファージ溶菌が生じた試料培養ろ過液を希釈してSE振盪培養液(OD600=2)150μlを混合した後、ソフトアガーオーバーレイ試験を行って単一溶菌斑を得た。1つの溶菌斑は、同一のバクテリオファージからなったとみるので、単一バクテリオファージを分離するために、1つの溶菌斑を取って400μlSM溶液(NaCl、5.8g;MgSO7H0.2g;1M Tris−Cl(pH7.5)、50ml;HO、最終体積が1Lになるように)に溶解し、4時間室温に放置した。分離されたバクテリオファージを大量確保するために単一バクテリオファージ溶液の上澄液100μlを取った後、0.7%アガー12mlとSE振盪培養液500μlを混合して、LBプレート(150mm直径)でソフトアガーオーバーレイ試験を実施した。完全に溶菌が生じたプレートに15mlSM溶液を注いだ後、前記プレートを4時間室温で静かに振盪してトップアガーからバクテリオファージを溶出させた。溶出されたバクテリオファージを含むSM溶液を回収した後、最終体積の1%に相応する量のクロロホルムを添加して10分間よく混合した。その後、4000rpmで10分間遠心分離し、ここで得られた上澄液を0.2μmフィルターでろ過し、使用時まで冷蔵保管した。
【0077】
1−2.バクテリオファージの大量バッチ
選別されたバクテリオファージをSEを用いて大量培養した。SEを振盪培養した。1.5×1010cfu(colony forming unit)になるように分株くて4000rpmで10分間遠心分離した後、この沈殿物(pellet)を4mlのSM溶液に再懸濁させた。前記再懸濁物にバクテリオファージを7.5×10pfu(plaque forming unit)で接種し、0.005のMOI(multiplicity of infection)に作った後、引き継いで37℃で20分間培養した。この溶液を150mlLB培地が入っているフラスコに接種した後、5時間37℃で培養した。最終体積の1%に相応する量のクロロホルムを添加して培養液を20分間振盪した。DNaseIとRNaseAをそれぞれ最終濃度1μg/mlになるように添加した。前記溶液を30分間37℃で放置させた。最終濃度がそれぞれ1Mと10%(w/v)になるようにNaClとPEG(polyethylene glycol)を入れた後、4℃で3時間さらに放置させた。前記溶液を4℃で12000rpmで20分間遠心分離後、上澄液を除去した。5mlのSM溶液で沈殿物を再懸濁させた後、20分間室温に放置させ、4mlのクロロホルムでよく混合した。4℃で4000rpmで20分間遠心分離した後、上澄液を0.2μmフィルターでろ過し、グリセロール密度勾配法(密度:40%、5%グリセロール)を用いた超遠心分離(35、000rpm、4℃、1時間)を介してΦCJ7を精製した。精製したΦCJ7は300μlのSM溶液に再懸濁し、引き継いでタイターを測定した。前記ΦCJ7は2009年8月14日韓国微生物保存センター(ソウル市西大門区弘済1洞361−221)に受託番号第KCCM11030P号として寄託した。
【0078】
実施例2:ΦCJ7のサルモネラ菌感染可否の調査
選別されたバクテリオファージがSEの外に他の種のサルモネラ菌に対して溶菌活性を持つのか確認するために他の種のサルモネラ菌に交差感染を試みた。その結果、ΦCJ7は、SC(Salmonella choleraesuis)、SD(Salmonella derby)、SA(Salmonella arizonae)及びSB(Salmonella bongori)には感染しなかったが、SE(Salmonella Enteritidis)、ST(Salmonella Typhimurium)、SG(Salmonella Gallinarum)及びSP(Salmonella Pullorum)に感染した(実施例11参照)。その結果を下記表1及び図2に示した。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例3:バクテリオファージΦCJ7の形態
精製されたΦCJ7を0.01%ゼラチン溶液で希釈した後、2.5%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)溶液で固定した。この試料を炭素被覆マイカプレート(carbon-coated mica plate、ca.2.5×2.5mm)に滴下して10分間適応させた後、滅菌蒸溜水で洗浄した。カーボンフィルムを銅グリッドに挟んで4%酢酸ウラニルで30〜60秒間染色し、乾燥を行った。JEM−1011透過電子顕微鏡(80kV、倍率×120、000〜×200、000)で検査し、図1に示すように、精製されたΦCJ7は、形態学上に20面体の頭と長くて非収縮性の尾からなった、形態型B1のシホウイルス科に属することが分かった。
【0081】
実施例4:ΦCJ7のタンパク質パターン分析
1012pfu/mlタイターの精製されたΦCJ7溶液15μlと5×SDS試料溶液3μlを混合した後、5分間加熱した。ΦCJ7の全体タンパク質を4〜12%NuPAGE Bis−Tris(Invitrogen社)ゲルにおいて展開した。そして、ゲルをクマシーブル(coomassie blue)で1時間室温で染色した。主要なバンドは、図3に示すように、約38kDa、63kDa、52kDa及び12kDaで観察された。
【0082】
実施例5:ΦCJ7の全体ゲノムDNAサイズ
超遠心分離を用いてΦCJ7のゲノムDNAを抽出した。この点と係わって、精製されたΦCJ7培養液にEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid(pH8.0))、プロテイナーゼK、及びSDS(sodium dodecyl sulfate)をそれぞれ最終濃度が20mM、50μg/ml、及び0.5%(w/v)になるように添加した後、引き継いで50℃で1時間培養した。同一量のフェノール(pH8.0)を添加した後、よく混合した。室温で12、000rpmで10分間遠心分離した後、上澄液を同一量のPCI(phenol:chloroform:isoamylalhocol=25:24:1)とよく混合した。室温で12、000rpmで10分間再び遠心分離して生成された上澄液に1/10体積の3Mの酢酸ナトリウムと2倍量の冷たい95%エタノールを添加した後、−20℃で1時間放置させた。その後、0℃で10分間12、000rpmで遠心分離した後、上澄液を完全に除去した後、DNA沈殿物を50μlのTE(Tris-EDTA(pH8.0))に溶解させた。抽出したDNAを10倍希釈し、OD260で吸光度を測定して濃度を測定した。1μg全体ゲノムDNAを1%PFGE(pulse-field gel electrophoresis)アガローズゲルにローディングした後、BIORAD PFGEシステム7番プログラム(size range 25-100kbp; switch time ramp 0.4-2.0 seconds、 linear shape; forward voltage 180V; reverse voltage 120V)を用いて室温で20時間展開した。ΦCJ7のゲノムDNAは図4に示すように、約39.2kbpから44.1kbpまでの長さだった。
【0083】
実施例6:ΦCJ7の遺伝的分析
精製されたΦCJ7の遺伝的分析のために、ΦCJ7のゲノムDNA5μgをStuIとNruI、AfeIとHinCII、及びSnaBIとPvuII制限酵素で同時に処理(double digestion)した。ベクターpCL1920(Promega社)をSmaIで切った後、CIP(calf intestinal alkaline phosphatase)処理した。T−bluntベクター(Solgent社)も使用した。切片されたゲノムDNAとベクターの量が3:1になるように合わせて混合した後、16℃で2時間ライゲーションした。得られた組換えベクターをE.coliDH5αに形質転換させ、青白選別法のためにそれぞれスペクチノマイシン(spectinomycin)またはカナマイシン及びX−gal(5-bromo-4-chloro-3-indolyl-beta-D-galactopyranoside)を含むLBプレートに付けた。選別されたコロニーをそれぞれの抗生剤が含まれた培養培地で16時間振盪培養した。そして、プラスミド精製キット(Promega社)を用いてプラスミドを抽出した。
【0084】
前記プラスミドなどをFTR135とFTR136(配列番号13と14)、及びM13forwardとM13reverse(配列番号15と16)プライマーセットを用いてPCRでクローニング可否を確認したし、挿入断片が1kbまたはそれ以上になるサイズのものだけ選択した。前記プライマーセットを用いて塩基配列を分析した。このように得た塩基配列をそれぞれ配列番号1〜4で示し、それぞれは500bp〜3kbpの長さであり、これをNCBI blastxプログラムを用いて配列類似性を分析し、その結果を下記表2に示した。
【0085】
【表2】

【0086】
実施例7:ΦCJ7特異的プライマー配列製作
ΦCJ7を同定するために、ΦCJ7特異的なプライマーを配列番号1〜4に基づいて製作した。配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10及び配列番号11と12をそれぞれプライマーセットとして用いてPCRを行った。0.1μgのバクテリオファージゲノムDNAと0.5pmoleのプライマーそれぞれをpre−mix(Bioneer社)に添加し、最終体積が20μlになるように合わせた。30サイクルの変性;94℃30秒、アニーリング;60℃30秒、重合;72℃1分30秒でPCRを行った。配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10及び配列番号11と12のプライマーセットで全部約500bp〜3kbp長さのPCR産物を得た。その結果を図5に示した。
【0087】
実施例8:バクテリオファージのpH安定性
ΦCJ7が鶏の胃腸内低いpH環境で生存できるかどうかを確認するために、広いpH範囲(pH2.1、2.5、3.0、3.5、4.0、5.5、6.4、6.9、7.4、8.2、9.0、9.8及び11.0)で安定性を試した。多様なpH溶液(酢酸ナトリウム溶液(pH4.0、pH5.5、及びpH6.4)、クエン酸ナトリウム溶液(pH2.5、pH3.0及びpH3.5)、リン酸ナトリウム溶液(pH6.9及びpH7.4)、及びTris−HCl溶液(pH8.2、pH9.0、pH10.0及びpH11.0)を0.2M濃度を持つように製造した。それぞれのpH溶液180μlとバクテリオファージ溶液(1.0×1011pfu/ml)20μlを混合して各pH溶液の濃度が1Mになるようにした後、引き継いで2時間室温で培養した。この反応液を段階的に(serially)希釈し、ソフトアガーオーバーレイ方法を用いて各段階の希釈液10μlを37℃で18時間培養してファージ溶菌のタイターを測定した。0時間のΦCJ7のタイターと比較してpHに応じるタイター変化測定を介してバクテリオファージのpHに対する安定性を確認した。その結果、バクテリオファージはpH3.0まではその活性を失わないで安定性を維持することが分かった。しかし、pH2.5またはそれ以下のpHではその活性を失った。その結果を図6に示した。
【0088】
実施例9:バクテリオファージの熱安定性
飼料添加剤として用いるために、バクテリオファージの剤形工程で発生する熱に対する安定性試験を行った。この点と係わって、1.0×1011pfu/mlタイターのΦCJ7の溶液200μlを37℃、45℃、53℃、60℃、70℃または80℃で0分、10分、30分、60分及び120分間培養した。この溶液を段階的に希釈し、ソフトアガーオーバーレイ方法を用いて各段階の希釈液10μlを37℃で18時間培養してファージ溶菌のタイターを測定した。0時間及び37℃でのタイターと比較して温度及び露出時間によるタイター変化測定を介してバクテリオファージの熱に対する安定性を確認した。その結果、バクテリオファージは70℃で2時間までではその活性を失わなかったし、80℃で10分露出された時はその活性が少し失ったが、80℃で10分以上露出された場合には活性を完全に失ってしまうことを確認することができた。その結果を図7に示した。
【0089】
実施例10:バクテリオファージの乾燥耐性
飼料添加剤として用いるために、バクテリオファージの剤形工程で発生する乾燥条件に対する耐性を試した。熱安定性試験から得た結果に基づいて、噴霧乾燥機(Lab Plant社)を用いて乾燥試験を行った。
【0090】
1.0×1011pfu/mlタイターのΦCJ7の溶液50mlに安定化剤として作用するデキストリンと砂糖をそれぞれ40%(w/v)と2%(w/v)の量で添加した。得られた溶液を入口温度及び出口温度をそれぞれ120℃及び70℃に維持して噴霧乾燥機内部に噴射させた。その後、得られた粉末0.3gを2mlのSM溶液に再懸濁させた後、タイター値を測定した。乾燥後、乾燥前のタイターと比較した時、バクテリオファージは活性が全然減少しないことが分かった。その結果を図8に示した。
【0091】
実施例11:バクテリオファージの野生分離株に対する感染の範囲
ΦCJ7が本発明で使用されたSE(SGSC SE2282)、ST(ATCC ST14028)、SG(SGSC SG2293)、及びSP(SGSC SP2295)菌株の他にさらに、韓国ソウル大学校獣医科大学鳥類疾病学室、国立獣医科学検疫院及び疾病管理本部から入手した韓国の野生分離株サルモネラエンテリティディス(36株)、サルモネラチフィムリウム(22株)、サルモネラガリナルム(56株)、サルモネラプローラム(19株)、サルモネラコレレスイス(2株)、サルモネラダービー(4株)及びサルモネラアリゾナ(1株)とサルモネラボンゴール(1株)に対して溶菌活性があるかどうかを試した。各菌株の振盪培養液(OD600=2)150μlを混合し、ソフトアガーオーバーレイ方法を用いてΦCJ7の溶液(1010pfu/ml)10μlを37℃で18時間培養して溶菌斑形成有無を観察した。SE、ST、SG及びSPのすべてに対してバクテリオファージΦCJ7が94%の溶菌活性を示すことを確認することができた。その結果を下記表3に要約した。
【0092】
【表3】



【0093】
実施例12:バクテリオファージの毒性試験
サルモネラ症、サルモネラ菌食中毒、家禽チフス及び雛白痢予防用バクテリオファージで安全使用のために、生体内(in vivo)毒性試験を行った。毒性試験は単回経口投与で行なわれた。この試験は、ラットに単回のΦCJ7を経口投与し、おおよそのΦCJ7の致死濃度を確認するために急性毒性を調査した。このために、特定病原体不在(SPF)ラット(SD)7週齢雄と雌のそれぞれ10匹をΦCJ7投与前24時間絶食させた。投与当日、経口投与用ゾンデ(sonde)を用いて1×1012pfu/mlタイターのΦCJ7を雄と雌のそれぞれ5匹に10ml/kg量で経口投与する一方、対照群として5匹には20mMTris−HClと2mMMgCl混合溶液を経口投与する。経口投与した後4時間後にラットに飼料を提供した。投与当日には投与後30分に観察を始めて4時間まで毎時間観察した。その時から、14日間は1日1回一般症状を調査した。死亡個体は発生しなかった。ΦCJ7による毒性症状と目立っている臨床症状も発生しなかった。その結果は、下記表4と表5に要約した。投与前、投与後1、3、7、10及び14日に体重を測定して記録した。有意性のある体重変化の差は観察されず、ΦCJ7が食欲を減少させるとか体重を変化させるのに十分な毒性反応を誘発しないことが分かった。この結果は、図9に示した。剖検して肉眼ですべての臓器を検査した結果、目立っている異常は観察されなかった。したがって、新規なバクテリオファージΦCJ7は、毒性がないことを確認することができた。
【0094】
【表4】

【表5】

a:異常が検出されない
【0095】
実施例13:バクテリオファージの効能
サルモネラ菌−誘発された疾病に対する予防及び治療使用のためのΦCJ7の効能を評価するために、サルモネラ菌感染に対して厳格な条件で飼育されている種鶏2万匹の養鶏農場でバクテリオファージのサルモネラ菌統制の可能性を試した。
【0096】
ΦCJ7を10pful濃度で含む飲用水を総25日供給した。1次で17日間供給した。その後、2次で再びΦCJ7を含む飲用水を8日間供給する前にΦCJ7がない飲用水を10日間供給した。ΦCJ7供給前後でねわら、ほこりを介するサルモネラ菌環境モニタリングと雛、羽毛、卵殻を介した発生サンプルサルモネラ菌環境モニタリングを行った。ΦCJ7を供給する以前に孵化場羽毛及び雛でサルモネラ菌が検出されたし、これはサルモネラ菌を厳格に統制するといっても実際に大きい農場ではサルモネラ菌の統制が易しくないということが分かった。対照的に、ΦCJ7を供給した後には持続的にサルモネラ菌が環境及び発生サンプルで検出されなかった。したがって、飲用水の形態でΦCJ7の供給時にサルモネラ菌排出抑制及びサルモネラ菌統制効能を示すことが分かった。その結果を下記表6に要約して示した。
【0097】
【表6】

【0098】
実施例14:バクテリオファージの消毒効能
サルモネラ菌に対する洗浄剤としてのバクテリオファージの効能を評価した。軽水、有機物、及び牛乳の条件下でハラソル(畜舎、築堤及び飲用水消毒剤、次亜塩素酸ナトリウム4.6%、柳韓洋行)を対照群として使用して比較した。
【0099】
10pfu/mlタイターを持つΦCJ7、ハラソル(次亜塩素酸ナトリウム4.6%)、そして、SE菌株を準備した。O.D.=0.5になるように培養した後、SEを軽水で5倍希釈し、O.D.が0.1になるようにした。それぞれ50mlの軽水、有機物希釈液、または軽水+牛乳20%希釈液を含む250mlフラスコを2つ準備した。一つのフラスコに10pfu量のバクテリオファージを添加する一方、他の一つにハラソル1/240希釈液を添加した。それぞれのフラスコにO.D.=0.1である菌株培養液を2mlずつ添加した後、引き継いで37℃で200rpmの条件で培養しながら0.5時間、2.5時間、6時間、及び10時間目にサンプリングした。この試料を段階的に希釈してLBプレートに塗抹した。その後、死滅能を確認するために37℃で18時間培養して細胞を数えた。軽水の使用時、既存の消毒剤の場合、条件に応じて抗菌力偏差が非常に大きく示された。対照的に、バクテリオファージの場合、多様な条件でも抗菌力が均一に示された。この結果は図10に示した。
【0100】
実施例15:バクテリオファージの洗浄効能
肉加工洗浄剤として使用するために、バクテリオファージのサルモネラ菌統制能力を評価するために、既存の洗浄剤(4〜6%の次亜塩素酸ナトリウム)と比較する試験を行った。この点と係わって、ストアで鶏の胸肉塊50gを購買した。SE振盪培養液(O.D.=2)を10cfu/ml濃度に調節した後、鶏胸肉塊当り200μlを均一に塗布して室温で12分間乾燥させた。バクテリオファージΦCJ7は10pfu/l、1010pfu/l、及び1011pfu/l濃度で入れたし、洗浄剤塩素は、噴霧器内50ppm濃度で合わせてそれぞれの噴霧器に50ppmずつ入れた。1回/秒の速度で10秒間噴霧した。処理された鶏の胸肉塊はそれぞれの衛生パックに入れ、そして、30mlのSM溶液を添加した。 そのパックを半円を描きながら振盪した。得られたWCR(whole carcass rinse)を段階的に希釈し、その希釈液をLB培地に塗抹した後、引き継いでSE数を確認するために37℃で18時間培養した。それらでそれぞれ処理した直後、洗浄剤にはまだサルモネラ菌が残っていることを確認した。しかし、バクテリオファージΦCJ7は非常に効果が良いことを確認することができた。さらに、時間の経過によって、前記化学物に比べて前記バクテリオファージは持続的に洗浄能を示した。この結果は、下記表7に要約して示した。
【0101】
【表7】

【産業上利用の可能性】
【0102】
本発明の新規なバクテリオファージは、サルモネラエンテリティディス(SE)、サルモネラチフィムリウム(ST)、サルモネラガリナルム(SG)及びサルモネラプローラム(SP)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のサルモネラ属菌に対して特異的死滅能を持ち、有益菌は死滅させず、さらに優れた耐酸性、耐熱性及び耐乾性を示すので、今まで記載されたように、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルムまたはサルモネラプローラムによって誘発されるサルモネラ症、サルモネラ菌食中毒、家禽チフス、及び雛白痢を含む感染性疾病を予防及び治療する目的で治療剤、家畜用飼料または家畜用飲用水、洗浄剤及び消毒剤などに有効成分として広く利用され得る。
【0103】
例示的な説明の目的のために、本発明の好ましい態様を記述したが、付随の特許請求の範囲に記述された本発明の範囲と精神から逸脱せず、熟練された当業者が多様な変形、添加及び置換が可能であるということは自明である。
【化2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムからなる群から選択される1つまたはそれ以上のサルモネラ属菌に対して特異的死滅能を持ち、形態型B1シホウイルス科に属し、
1)全体のゲノムサイズが38〜45kbであるバクテリオファージ;
2)配列番号1〜4のうちから選択される少なくとも1つの核酸配列をゲノムの一部として含むバクテリオファージ;及び
3)37〜40kDa、62〜65kDa、51〜54kDa及び10〜13kDaサイズ範囲の構造タンパク質を持つバクテリオファージのうち1つ以上の特性を含むことを特徴とする分離されたバクテリオファージ。
【請求項2】
20面体の頭及び長くて非収縮性の尾を含む形態学構造を持つ、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項3】
前記バクテリオファージのゲノムを鋳型にして、配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10及び配列番号11と12のうちから選択される1つのプライマーセットの存在下でPCRを行った場合、それぞれPCR産出物が500bp〜3kbpの長さである、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項4】
1)pH3.0〜pH11.0範囲で耐性;
2)37℃〜70℃範囲で耐熱性;及び
3)120℃/70℃条件下で耐乾性であるもののうち、少なくとも1つの特性を示す、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項5】
受託番号KCCM11030Pで同定された、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバクテリオファージを有効成分として含むサルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムからなる群から選択される1つまたはそれ以上のサルモネラ属菌株によって誘発される感染性疾病の予防または治療用組成物。
【請求項7】
前記サルモネラエンテリティディスまたはサルモネラチフィムリウム感染性疾病はサルモネラ症及びサルモネラ菌食中毒であり、サルモネラガリナルム感染性疾病は家禽チフスであり、サルモネラプローラム感染性疾病は雛白痢である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
抗生剤として使用される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバクテリオファージを有効成分として含む家畜用飼料または飲用水。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバクテリオファージを有効成分として含む消毒剤及び洗浄剤。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバクテリオファージを必要とする動物に投与する段階を含む、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムからなる群から選択される1つまたはそれ以上のサルモネラ菌株によって誘発された感染性疾病を予防または治療する方法。
【請求項12】
請求項6に記載のバクテリオファージを必要とする動物に投与する段階を含む、サルモネラエンテリティディス、サルモネラチフィムリウム、サルモネラガリナルム及びサルモネラプローラムからなる群から選択される1つ以上のサルモネラ菌株によって誘発される感染性疾病を予防または治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−503628(P2013−503628A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527830(P2012−527830)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005999
【国際公開番号】WO2011/028059
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(511153921)シージェイ チェイルジェダング コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】