説明

新規なヘテロポリ酸系触媒及びその製造方法

本発明は、メタクロレイン(methacrolein)を気相酸化反応させてメタクリル酸(methacrylic acid)を製造する工程に使われるヘテロポリ酸系触媒及びこれの製造方法に関する。本発明は、メタクロレインの転換率、メタクリル酸の選択度及び収率が優秀な新規なヘテロポリ酸系触媒を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘテロポリ酸系触媒及びこれの製造方法に関し、より詳細には、メタクロレインを気相酸化反応させてメタクリル酸を製造するための、新規なヘテロポリ酸系触媒及びこれの製造方法に関する。本発明によれば、優秀な、メタクロレインの転換率、メタクリル酸の選択度、及び収率が得られる。
【背景技術】
【0002】
世界のメチルメタクリレート(Methyl Methacrylate, MMA)市場は総需要が200万トンを上回っており、アジア、米国及びヨーロッパが世界市場を主導している。この中でアジアにおけるMMAの需要は2000年度に前年比4乃至5%増加した約75万トンであった。このうち、日本40万トン、台湾11万トン、韓国9万トン、中国8万トン、その他約7万トンが集計されている。このようなアジアMMA市場は、中国を含めた各国の需要伸張及び日本の国内需要増加傾向により、これからも年平均4乃至5%の伸び率を記録する見込みである。
【0003】
アジアにおいてMMA単量体は、主として、アクリロニトリル−スチレン(acrylonitrile−styrene, AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(acrylonitrile−butadiene−styrene, ABS)などの共重合樹脂、建築及び車両用塗料、紙コーティング、プラスチック、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(methylmethacrylate−butadiene−styrene, MBS)などの樹脂改質剤などの用途で使われている。
【0004】
MMAの需要が増加しているにも関わらず、アクリロニトリルの副生により生産量が低減されている。新しい製造工法の開発を模索した結果、1982年に日本触媒が世界最初にイソブチレンを原料にする気相酸化反応生産工程を開発した。以後、三菱レイヨン(Mitsubishi Rayon)、住友化学、クラレイ/三井ケミカル(Kuraray/三井化学)などが気相酸化反応を利用したMMA単量体の商業化を推進し、旭化成はメタクリロニトリル(methacrylonitrile, MAN)を応用した直メタ法を開発した。 そして、三菱ガスケミカル(Mitsubishi Gas Chemical)は廃酸が副生されない親アセトンシアノヒドリン(ACH)法を利用して商業化に成功した。台湾のKMC、FPCはACH法を、韓国のLGMMA及び湖南石油化学、タイMMA、シンガポールMMAモノマーは気相酸化反応法を利用してMMAを生産している。
【0005】
前記のような、気相酸化反応によってメタクロレインをメタクリル酸で部分酸化させる際に使用される、ヘテロポリ酸を活性成分として含む触媒についての研究は、1980年代商業化以後からずっと続いて進行されている。
【0006】
ヘテロポリ酸を製造する方法としては、MoOとVの前駆体をHPOと共に水溶媒下、80℃以上の温度で反応させる方法、および、アンモニウムパラモリブデート(ammonium paramolybdate)とアンモニウムパラバナデート(ammonium paravanadate)とを水に溶解させる方法など様々な方法がある。これらの詳しい製造方法はTsigdinosなどの報告に記録されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
(特許文献1)には、Mo(式中、Aは、As,Sb、Ge、Bi、Zr及びSeからなる群から1種以上選択される元素であり、Bは、Cu、Fe、Cr、Ni、Mn、Co、Sn、Ag、Zn及びRhからなる群から1種以上選択される元素であり、Cは、V、W及びNbからなる群から1種以上選択される元素であり、Dは、アルカリ金属、アルカリ土金属及びTlからなる群から1種以上選択される元素であり、aは12であり、bは0.5〜4であり、cは0〜5であり、dは0〜3であり、eは0〜4であり、fは0.01〜4であり、xは各元素の酸化状態を満足する値である)で定義される触媒が開示されている。前記のような組成を持つ触媒は、乾燥過程を通した後、一定の形態に成形する過程を経て、さらに酸素または窒素雰囲気下で300乃至500℃で焼成されて最終的な触媒になる。一般に、直径5mm、長さ5mmほどのペレット(pellet)の形態に成形され、分解可能なアンモニウムまたは硝酸塩が分解されて、最終的に所望の構造と組成を持つ触媒になる。
【0008】
(特許文献2)には、ヘテロポリ酸系触媒製造の際に、窒素を含む物質であるピリジン(pyridine)、ピペリジン(piperidine)、またはピペラジン(piperazine)などを追加的に使用して、成形性、物理的強度、および触媒製造の再現性を高める製造方法が開示されている。
【0009】
このようなヘテロポリ酸系触媒を製造する方法には、金属成分の前駆体形態により異なるが、一般に硝酸塩(NO3-)が主に使われる。
【0010】
(特許文献3)には、アンモニウムパラモリブデート(ammonium paramolybdate)とアンモニウムパラバナデート(ammonium paravanadate)とを加熱された水に溶解させ、撹拌した後、ここに適切な量の85%のHPOを添加し、硝酸セシウム(cesium nitrate)およに硝酸銅(II)(copper nitrate)を添加して製造した溶液を、加熱、乾燥して触媒を製造する方法が開示されている。
【0011】
(特許文献4)には、アンモニウムパラモリブデート(ammonium paramolybdate)、アンモニウムメタバナデート(ammonium metavanadate)、およびピリジン(pyridine)を、85%HPOに添加した後、ここに硝酸、硝酸セシウム(cesium nitrate)、および硝酸銅(II)(copper nitrate)を添加し共沈させ、これを加熱、乾燥して触媒を製造する方法が開示されている。この特許によれば、前駆体に含まれるNH/Mo12比およびNH/NO比が、触媒の活性および選択度に影響を与えることが提唱されている。
【0012】
このように、ヘテロポリ酸系触媒についての様々な従来の技術にもかかわらず、現在までも既存のヘテロポリ酸系触媒の活性は低く、メタクロレインの気相酸化反応での転換率または選択度の改善が必要であり、また、触媒の製造においても低い収率に起因して生産性に劣るという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4、558、028号(1985.12.10登録)
【特許文献2】米国特許第4、621、155号(1986.11.04登録)
【特許文献3】米国特許第6、333、293号(2001.12.25登録)
【特許文献3】米国特許第6、458、740号(2002.10.01登録)
【0014】
【非特許文献1】Inorganic Chemistry, 7 (3), p437 (1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記のような従来の技術の問題点を解決するために、本発明は、メタクロレインの転換率、メタクリル酸の選択度及び収率が優秀な、新規なヘテロポリ酸系触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の前記目的及びその他の目的は下記に説明する本発明によって全て達成されることができる。
【0017】
前記の目的を果たすために、本発明は、下記化学式1で定義される新規なヘテロポリ酸系触媒を提供する。
PMo12Cs(Q(PO (化学式1)
前記化学式1において、
Xは、Cu、Ag、Co、Pb、Mn及びTlから選択される1種以上の金属成分であり、Yは、As、Sb、Bi、Zn及びNbから選択される1種以上の金属成分であり、Qは、Cr、La、Ce、Fe、Ni及びMgから選択される1種以上の金属成分であり、aは0.1<a<3であり、bは0.5<b<3であり、cは0<c<1であり、dは0<d<3であり、eは0<e<3であり、fは0.5<f<3であり、gは0.001<g<3であり、xはa、b、c、d、e、f及びgの原子価条件を満足する数である。
【0018】
また、本発明は
(a)MoO、V及びHPOを蒸溜水と混合して水溶液を製造する工程;
(b)製造した前記水溶液に、Cs及びK前駆体、金属前駆体、及びピリジンを混合することにより製造した水溶液を添加することによって、スラリーを製造する工程;及び
(c)製造した前記スラリーを、乾燥、焼成する工程
を含むヘテロポリ酸系触媒の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明者らはヘテロポリ酸系触媒について研究する中、アルカリ金属としてCs及びKを共に混合して使い、遷移金属成分としてリン酸塩(PO)形態の前駆体を使って製造したヘテロポリ酸系触媒が、金属成分の電子的特性に優れ、触媒の活性及び選択度が向上することを確認し、これに基づいて本発明を完成するようになった。
【0021】
本発明のヘテロポリ酸系触媒は前記化学式1で定義される。
【0022】
前記ヘテロポリ酸系触媒は、P、Mo及びVを含み、アルカリ金属としてCs及びKを共に含み、さらに、前記化学式1においてXで表される金属成分としてCu、Ag、Co、Pb、Mn及びTlから選択される1種以上の金属成分、Yで表される金属成分としてAs、Sb、Bi、Zn及びNbから選択される1種以上の金属成分、及びQで表される金属成分としてCr、La、Ce、Fe、Ni及びMgから選択される1種以上の金属成分を含む。
【0023】
前記アルカリ金属及び前記化学式1において、X及びYで表される金属成分は炭酸塩形態の前駆体で含まれていてもよい。
【0024】
また、前記Qで表される金属成分は、Q(POで表されるリン酸塩形態の前駆体で含まれることが好ましい。具体的に、CrPO、LaPO、CePO、FePO、Ni(PO、Mg、及びこれらの水和物などのリン酸塩前駆体で含まれていてもよい。
【0025】
前記アルカリ金属成分の中で、Kは、炭酸塩形態の前駆体で含まれていても良い。あるいは、Kは、炭酸塩前駆体とSbKC(酒石酸カリウムアンチモン)との混合物の形態で、前記化学式1においてYで表される金属成分の中に、Sbと共に含まれても良い。
【0026】
前記化学式1のヘテロポリ酸系触媒は、一般式HPMo1240で表されるホスホモリブデート(phospomolybdate)を基本骨格とする。この基本骨格は、1つのフォスフェート(phosphate)の周りの12個の端(edge)部分を、8面体(octahedral)構造を有する酸化物の形態のモリブデン(Mo)が共有する、ケギン(keggin)構造である。ここでモリブデン(Mo)は、Xで表される金属成分の酸化物によって一部または全部置換されることができる。即ち、ヘテロポリ酸の構造はホスホモリブデートと同一であるが、電子的な影響によって触媒の活性などを変化させることができる。また、Moは、その置換酸化数と量によって結合される陽イオンの数が決まる。例えば、Mo+6をV+5で置換すると、陽イオンの数が3から4に増加する。また、水素イオンを、アルカリ金属、アルカリ土金属または遷移金属、アンモニウムイオン、またはピリジンイオンで置換する形態が可能である。このような陽イオンの置換によって、2次構造及び3次構造が生成され、これを通じて、触媒の表面積、気孔容積、気孔分布などの触媒物性を調節し、触媒の性能を向上させることができる。
【0027】
このようなヘテロポリ酸系触媒は、通常、100乃至150℃で乾燥した後、押出機で圧出して一定の形態を有する触媒とすることができる。この時、圧出工程は触媒の物理的強度を決めるため非常に重要な過程であり、適量の蒸溜水、および触媒の強度強化のためのガラス繊維を、添加することもできる。ガラス繊維を添加する場合、これを溶解して分析すると、Ca、Si、Alなどの元素が検出されるが、これらの元素は、本発明が主張する触媒の効果を発揮するための元素から除外する。
【0028】
圧出された触媒は、直径約5mm、長さ約5mmほどの円筒形態になる。円筒形態の触媒を、焼成炉に入れ、空気または窒素雰囲気下、350乃至500℃にて一定時間焼成工程を経る。この焼成工程で、触媒の前駆体に含まれた揮発性物質が除去される。ピリジンも、焼成過程で一部除去され、結晶水形態で残っていた蒸溜水も、徐々に除去される。
【0029】
Y.Wangら(Catal. Today 93 (2004) 155. )により、FePOが、550℃以上の温度で還元されることが、水素を流しながら物質の還元を観察するTPR(Temperature Programed Reduction)実験で確認されたことが報告されている。還元雰囲気でFeが一部生成されるが、これは、酸素が少量だけでも存在すれば、安定なFePOに変化する。したがって、FePOは、本発明の酸化雰囲気と触媒熱処理温度である400℃でも安定した状態で存在すると考えられる。POを陰イオンでとして有する他の金属も、全て700℃以上において安定した物質として知られている。
【0030】
本発明のヘテロポリ酸系触媒の製造方法は、
(a)MoO、V及びHPOを蒸溜水と混合して水溶液を製造する工程;
(b)製造した前記水溶液に、Cs及びKの前駆体、金属前駆体、及びピリジンを混合することによって製造した水溶液を添加することによって、スラリーを製造する工程;及び
(c)製造した前記スラリーを乾燥、焼成する工程
を含む。
【0031】
前記工程(a)では、MoO、V及びHPOを、蒸溜水と混合し、80℃以上の温度で加熱して24時間以上反応させて、水溶液を製造する。このように製造した水溶液は未反応固体を含有する。この未反応固体を分離し、水溶液の量と未反応金属の含量から、反応により生成したHPMoV形態のヘテロポリ酸の組成を決める。
【0032】
前記工程(b)は、Cs及びKの前駆体、金属前駆体、及びピリジンを蒸溜水と混合して水溶液を製造した後、これを、前記(a)工程で製造した水溶液に、20乃至60℃に撹拌しながら添加することによって、スラリーを製造する工程である。製造したスラリーを70℃で反応させた後、常温に冷却して反応を終了する。
【0033】
前記工程(b)の金属前駆体は、Cu、Ag、Co、Pb、Mn及びTlから選択される1種以上の金属成分X;As、Sb、Bi、Zn及びNbから選択される1種以上の金属成分Y;またはCr、La、Ce、Fe、Ni及びMgから選択される1種以上の金属成分Q;の前駆体である。
【0034】
前記Cs及びKの前駆体は、炭酸塩形態の前駆体であってよい。
【0035】
前記金属成分Kは、炭酸塩形態の前駆体であってよい。炭酸塩形態の前駆体及び前記化学式1においてYで表される金属成分として、Sb含有前駆体、例えば、SbKC(酒石酸カリウムアンチモン)を使うことができる。この時、SbとKとの当量が等しい場合には、SbKC(酒石酸カリウムアンチモン)を単独で使うことができるし、当量が異なる場合にはKCOを追加して当量を調節することができる。また、Sbの当量がより多い場合には、Sbおよび酒石酸の混合溶液を添加して当量を調節することができる。
【0036】
前記X及びYで表される金属成分は、炭酸塩形態の前駆体を使うことができ、Qで表される金属成分は、Q(POで表されるリン酸塩形態の前駆体を使うことが好ましい。具体的には、CrPO、LaPO、CePO、FePO、Ni(PO、Mg、及びこれらの水和物などのリン酸塩前駆体を用いることができる。
【0037】
前記のCs及びK前駆体と金属前駆体とを含む水溶液は、20乃至60℃の温度で添加することが好ましい。前記温度範囲では、不必要な冷却による損失がなく、反応温度が60℃以上になると徐々に起こる炭酸塩の分解反応が起こらないため反応速度を容易に調節することができるため、優れた触媒を製造することができる。
【0038】
前記工程(c)では、前記工程(b)から製造したスラリーを、乾燥した後、焼成して、触媒を製造する。
【0039】
前記スラリーは、溶媒として使われた蒸溜水を除去するために濾過し、真空乾燥またはオーブンにおける熱乾燥などの方法により乾燥することができる。
【0040】
乾燥した前記スラリーを、粉砕した後、ガラス繊維(glass fiber)と共に混合し、5mm×5mmの大きさのペレット(pellet)形態に圧出した後、空気雰囲気下、300乃至500℃にて焼成して、最終の触媒を得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び変形が可能であることは当業者において明白であり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に包含されることも当然である。
【0042】
[実施例1]
蒸溜水1L中で、モリブデンオキサイド(molybdenum oxide, MoO3)200gとバナジウムオキサイド(vanadium oxide, V2O5)5.27gと85%HPO14.69gとを混合し、撹拌しながら80℃で36時間反応させた。その後、常温に冷却して反応を終了し、未反応固体であるMoO30.9gが存在する水溶液993.33mlを得た。
【0043】
前記水溶液を撹拌機が装着された2Lの反応槽に投入した後、温度を50℃に維持した。ここに、蒸溜水300ml中で、CsCO23.92g、Cu(OH)・CuCO2.16g、SbKC3.27g、KCO0.34g、FePO・2HO0.34gとピリジン34gを混合して製造した水溶液を添加することによって、スラリーを製造した。製造した前記スラリーを70℃で3時間反応させた後、常温に冷却して反応を終了した。
【0044】
製造した前記スラリーを濾過して分離した後、120℃のオーブン(oven)で12時間乾燥した。乾燥した前記スラリーを、粉砕した後、ガラス繊維(Glass fiber)5wt%を添加し、5mm×5mmの大きさのペレット(pellet)形態に圧出した後、400℃で5時間焼成して触媒を得た。
【0045】
製造した前記触媒の組成は、PMo120.5Cs1.50.15Cu0.2Sb0.1(FePO0.035Oxであった。この時、ガラス繊維から検出されるCa、Si、またはAlなどの元素は、触媒組成から除外した。
【0046】
[実施例2]
本実施例は、1.02gのKCOを使用し、SbKCの代わりに、蒸溜水10cc中にSb1.69gおよび酒石酸5gを溶解させて製造した溶液を使用したことを除いて、前記実施例1と同一の方法で実施した。
【0047】
製造した前記触媒の組成は、PMo120.5Cs1.50.15Cu0.2Sb0.1(FePO0.035Oxであった。
【0048】
[実施例3]
本実施例は、FePO・2HO0.34gの代わりにLaPO・2HO0.53gを使用したことを除いて、前記実施例1と同一の方法で実施した。
【0049】
製造した前記触媒の組成は、PMo120.5Cs1.50.15Cu0.2Sb0.1(LaPO0.035Oxであった。
【0050】
[比較例1]
本比較例は、FePO・2HO0.34gの代わりにFe(NO・9HO0.37gを使用したことを除いて、前記実施例1と同一の方法で実施した。
【0051】
製造した前記触媒の組成は、PMo120.5Cs1.50.15Cu0.2Sb0.1Fe0.035Oxであった。
【0052】
[試験例]
実施例1乃至3及び比較例1から製造したヘテロポリ酸系触媒を、下記の方法でメタクロレインの気相酸化反応に使用した。
【0053】
製造した前記触媒を、それぞれ独立に温度が制御された長さ15cmの電気炉3個に取り囲まれた3/4インチのスチール製反応管に充填した。反応工程1から得られた生成物気体と、メタクロレイン3.6体積%、酸素9.2体積%、窒素76.9体積%、及び水蒸気10.3体積%になるように追加的な空気、窒素及び水蒸気を混合した原料ガスとを、常圧下に反応槽の入口へ連続的に注入した。反応槽の温度を、スチール製反応管の熱調節装置によって290℃に維持し、空間速度は960h−1(STP)の条件で酸化反応を実施し、生成物をリアルタイムでガスクロマトグラフィー(GC)に注入して分析した。
【0054】
メタクロレイン転換率、メタクリル酸選択度、及び収率を下記数学式1乃至3で計算し、その結果を下記表1に示した。
(数学式1):
メタクロレイン転換率(%)=[反応したメタクロレインのモル数/供給したメタクロレインのモル数]×100
(数学式2):
メタクリル酸選択度(%)=[生成したメタクリル酸のモル数/反応したメタクロレインのモル数]×100
(数学式3):
収率(%)=[生成したメタクリル酸のモル数/供給したメタクロレインのモル数]×100=転換率×選択度
【表1】

【0055】
前記表1を通じて、本発明によって製造した実施例1乃至3のヘテロポリ酸系触媒は、アルカリ金属としてCs及びKを共に含み、リン酸塩形態の遷移金属を含み、比較例1に比べてメタクロレインの転換率及びメタクリル酸の選択度に優れていることが分かった。
【0056】
このように、本発明により、メタクロレインの転換率、メタクリル酸の選択度及び収率に優れた新規なヘテロポリ酸系触媒が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1
(化学式1):
PMo12Cs(Q(PO
〔前記化学式1において、
Xは、Cu、Ag、Co、Pb、Mn及びTlから選択される1種以上の金属成分であり、Yは、As、Sb、Bi、Zn及びNbから選択される1種以上の金属成分であり、Qは、Cr、La、Ce、Fe、Ni及びMgから選択される1種以上の金属成分であり、aは0.1<a<3であり、bは0.5<b<3であり、cは0<c<1であり、dは0<d<3であり、eは0<e<3であり、fは0.5<f<3であり、gは0.001<g<3であり、xはa、b、c、d、e、f及びgの原子価条件を満足する数である〕
で表されることを特徴とするヘテロポリ酸系触媒。
【請求項2】
前記Qで表される金属成分が、Q(POで表されるリン酸塩形態の前駆体として含まれることを特徴とする、請求項1に記載のヘテロポリ酸系触媒。
【請求項3】
前記リン酸塩形態の前駆体が、CrPO、LaPO、CePO、FePO、Ni(PO、Mg、及びこれらの水和物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項2に記載のヘテロポリ酸系触媒。
【請求項4】
請求項1に記載のヘテロポリ酸系触媒の製造方法であって、
(a)MoO、V及びHPOを蒸溜水と混合して水溶液を製造する工程;
(b)製造した前記水溶液に、Cs及びK前駆体、金属前駆体、及びピリジンを混合することにより製造した水溶液を添加することによって、スラリーを製造する工程;及び
(c)製造した前記スラリーを、乾燥、焼成する工程
を含むことを特徴とする、ヘテロポリ酸系触媒の製造方法。
【請求項5】
前記工程(b)の金属前駆体が、
Cu、Ag、Co、Pb、Mn及びTlから選択される1種以上の金属成分X;
As、Sb、Bi、Zn及びNbから選択される1種以上の金属成分Y;又は
Cr、La、Ce、Fe、Ni及びMgから選択される1種以上の金属成分Q
の前駆体であることを特徴とする、請求項4に記載のヘテロポリ酸系触媒の製造方法。
【請求項6】
前記金属成分Qの前駆体が、Q(POで表されるリン酸塩前駆体であり、かつ、CrPO、LaPO、CePO、FePO、Ni(PO、Mg及びこれらの水和物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項5に記載のヘテロポリ酸系触媒の製造方法。
【請求項7】
前記工程(b)のK前駆体が、炭酸塩形態の前駆体であるか、または炭酸塩形態の前駆体とSbKCとの混合物であることを特徴とする、請求項4に記載のヘテロポリ酸系触媒の製造方法。

【公表番号】特表2010−510882(P2010−510882A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539184(P2009−539184)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006081
【国際公開番号】WO2008/066329
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】