説明

新規なポリアリーレン組成物

繊維以外の形態の少なくとも1種のポリアリーレン(P1)、および少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含むブレンド物(B)。ブレンド物(B)を含む物品または物品の一部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、以下の出願の利益を主張するものである:(i)PCT出願番号第PCT/EP2006/060535号(出願日:2006年3月7日)、(ii)米国特許出願第60/836,946号(出願日:2006年8月11日)、(iii)米国特許出願第60/842,369号(出願日:2006年9月6日)、(iv)米国特許出願第60/842,367号(出願日:2006年9月6日)、(v)米国特許出願第60/842,368号(出願日:2006年9月6日)、(vi)米国特許出願第60/842,366号(出願日:2006年9月6日)、および(vii)米国特許出願第60/842,365号(出願日:2006年9月6日)。これらの出願の内容のすべてを、参考として引用し本明細書に組み入れる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、新規なポリアリーレン組成物ならびに、それらから製造される物品および物品の一部に関する。
さらに詳しくは、本明細書に記載されているのは、ポリアリーレンおよびポリ(アリールエーテルケトン)を含むブレンド物である。
【背景技術】
【0003】
ポリアリーレン、特にポリフェニレンは、いくつもの傑出した性能特性、たとえば例外的に高い強度、剛性、硬度、耐引掻性、および寸法安定性を示す。残念なことには、ポリアリーレンには、靱性に関わる性質、特に耐衝撃性および伸び性の点でいくらかの限度がある。それらは高い粘度を有しているために、溶融加工性においても限界があり、たとえば射出成形のように高い剪断力の下で溶融加工すると、異方性を示す傾向がある。さらに、それらは耐薬品性の面においてもいくらかの限度がある。さらに、耐熱性の面でもいくらかの限度があって、そのために、極めて高い温度(380℃程度)に暴露させると、望ましくないガス放出(質量損失)を起こす可能性がある。
【0004】
ポリ(アリールエーテルケトン)、特にポリエーテルエーテルケトンもまた、いくつもの傑出した性質、たとえば例外的に高い融点、優れた耐薬品性(耐環境応力亀裂性を含む)、および優れた熱安定性を示す。それらはさらに、ポリアリーレンよりは幾分低いものの、高い強度、剛性、ならびに極めて良好な伸び性を有している。その一方で、ポリアリーレンの場合と同様に、耐衝撃性の面ではいくらかの限度がある。
【0005】
ポリマーブレンド物は、当業界では広く知られており、採用されてきた。この表現法は広くあてはまってはいるものの、ポリマーをブレンドするということは依然として半実験的な技量であって、特定の性質を付与するためのブレンド物へのポリマーの選択は、主として、エジソン式(Edisonian−like)選択法である。ポリマーブレンド物のある種の特質は、その他のものよりもユニークである。あるブレンド物においてよりユニークな特質が見出されれば、予想もしなかった性質が得られる可能性がある。ZollerおよびHoehnは、Journal of Polymer Science,Polymer Physics Edition,vol.20,p.1385〜1397(1982)に、次のように記している:「ポリマーをブレンドするということは、熱可塑性材料において、単一のポリマーでは容易に達成することができないような性質を得るのに有用な方法である。実質的にすべての技術的に重要な性質は、この方法によって改良することが可能であるが、より重要な性質をいくつか挙げれば、流動性、機械的性質(特に衝撃強度)、熱安定性、および価格などである。(中略)。究極的には、そのようなモデル化および相関の研究のゴールは、純粋な成分単独の性質から、ブレンド物の性質を予測するものであるべきである。我々が、そのようなゴールに達するにはまだはるかに遠いところにいるのは間違いない。」
【0006】
ポリマーブレンド物の混和性(miscibility)または相溶性(compatibility)の分野においては、材料に関する検討がかなり進んでいるにもかかわらず、当業界では、予測をすることは実現不可能であると考えられてきた。権威者は次のように言っている:「熱可塑性ポリマーの混合に関しては、非相溶性であるのが通例であって、混和性、さらには部分混和性は例外的なことであるということがよく知られている。ほとんどの熱可塑性ポリマーは他の熱可塑性ポリマーの中には非混和性であるので、2種以上の熱可塑性ポリマーの均質混合物または部分混和性混合物を見出すということに関しては、本当のところ、信頼性のある予測をすることは本来不可能である」(たとえば、P.J.Flory,Principles of Polymer Chemistry,Cornell University Press,1953,Chapter 13,p.555を参照されたい)。
【0007】
米国特許第5,654,392号明細書には、可溶化側基を含むフェニレン単位を有するポリフェニレンポリマーの一つのタイプが記載されているが、その側基があるために、そのものは、剛直棒状(rigid−rod)成分と可撓性成分とをブレンドして安定な均一相とするための問題を克服するのにいくぶんかは役立つと教示されている(第2カラム、第60〜63行参照)。米国特許第’392号明細書によれば、剛直棒状ポリマーを、熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ゴム、エラストマー、または各種の天然もしくは合成ポリマー材料とブレンドすることができる(第4カラム、16〜第20行)。米国特許第’392号では、そのようなブレンド物におけるポリマーの混和性および相溶性については何の記載もない。以下のことに注目すると興味深い:米国特許第’392号明細書においては、小量(多くとも10質量%)のポリフェニレンとある種の特定のポリマー[ポリブチレン(実施例23)、ナイロン−6(実施例24)、ポリスチレンおよびPPO(実施例24および25)、ポリエチレンおよびポリプロピレン(実施例25)]とを含むポリマーブレンド物のみが溶融プロセスによって調製することが可能であって、それに対して、より高い量のポリフェニレンを含むブレンド物[ポリスチレン(実施例26)およびポリカーボネート(実施例27)とのブレンド物]は溶液混合法で調製された。このことは、そのようなブレンド物に含まれるポリマーは、多くのその他のポリマーの組合せの場合と同様に、相互的な混和性/相溶性に極めて乏しいか、さらには、完全に非混和性/非相溶性であるということを示唆している。
【0008】
同じ特許の実施例13には、溶融状態でのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と可溶化基を有する高分子量の剛直棒状ポリパラフェニレン、すなわちポリ1,4−(4’−フェノキシベンゾイルフェニレン)の繊維とを含む引抜き成形プロセスの予言的な記述(現在時制を使用すれば証明できるが、詳細な操作条件が欠けている)が存在する。したがって、ポリパラフェフェニレン繊維からなる繊維のトウを、PEEK溶融物の中を通過させて連続的に引抜き、ダイを通して共押出しをしてリブ付きパネルを形成させるが、このものは、個別の相互関連した一部としての、PEEKマトリックスと相互関連させた実質的に平行なポリフェニレン繊維からなり、全体として統一された形態となった複合材料と考えることができる。引抜き成形プロセスにおいては、所望の性質、特に高モジュラスおよび強度を有する材料が得られるように、それらの繊維の繊維的な性質が維持されるのが必須である。この予言的な実施例においてその繊維の繊維的な性質が維持されるということは、そのパネルがリブ化された特性を有すること(それらのリブはポリフェニレン繊維と考えられる)、およびさらには(特性が定義されていない)熱可塑性プラスチックと共にポリフェニレン繊維を引抜き成形することについての米国特許第’392号の第21カラム、第54行から第22カラム、第3行までの一般的な教示によって確認される:「押出し法に関連するのが引抜き成形法であって、そこでは、押出し加工されたポリマーに対して連続的に繊維補強が加えられる。(中略)本発明のポリマーは、低い加工温度を有する熱可塑性プラスチックを引抜き成形するための繊維として使用できる。(中略)中程度のモジュラスおよび強度を有する低コストの熱可塑性プラスチックは、剛直棒状またはセグメント化剛直棒状ポリフェニレン繊維を組み込むことによって、高いモジュラスおよび強度を有する複合材料に成形することができる。そのような複合材料は、補強繊維そのものが熱可塑性プラスチックであり、そして、その繊維のTgよりも高い温度でさらに加工することによって、繊維が物理的および/または化学的にマトリックスと混合されているという新規な構造が得られる、という点でユニークである。」具体的に実施例13に戻ると、かなり長時間の間、ポリフェニレン繊維の繊維的性質に悪影響を与えることなく、ポリフェニレン繊維(そのTgは約160℃と低い)を溶融PEEK(約340℃を超える温度のPEEK)と接触させることが必要とされることを含む引抜き成形プロセスを主張することによって、米国特許第’392号は、ポリフェニレンがPEEKとも非相溶性かつ非混和性であることをも主張することとなっており、そのために、繊維以外の形態のポリフェニレンを大量のPEEKと混合して、価値の高いブレンド物を得ようとすることを当業者に放棄させることとなったが、その理由は、そのような場合には、相分離を極めて起こしやすい、不安的な物理的ブレンド物が得られることになると強く予想されるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのために、以下の性質の一部または全部を含めた、優れたバランスの性能が得られるような材料が依然として熱望されている:
極めて高い強度;
極めて高い剛性;
良好な伸び性;
良好な溶融加工性(特に、良好な射出成形性);
高い耐薬品性;
傑出した耐熱性[材料を極めて高い温度(380℃程度)に暴露させても、望ましくないガス放出性を抑制することが可能]、望ましくはニートのポリ(アリールエーテルケトン)と同程度に高い耐熱性;および
傑出した耐衝撃性、標準的なノッチなしアイゾッド試験(ASTM D−4810)によって特徴付けることが可能であって、望ましくはニートのポリアリーレンおよびニートのポリ(アリールエーテルケトン)よりも高い耐衝撃性。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その主たる態様において、本発明は以下のものを含むブレンド物(B)を目的とする:
繊維以外の形態の、少なくとも1種のポリアリーレン(P1)、および
少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)。
本発明のまた別な態様は、繊維以外の形態の少なくとも1種のポリアリーレン(P1)を少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)と、そのポリアリーレン(P1)の溶融温度およびそのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の溶融温度よりも高い温度で混合すること含む、上述のようなブレンド物(B)を調製するための方法を目的としている。
本発明のさらに別な態様は、上述のようなブレンド物(B)を含むかもしくは上述のような方法によって得られる、成形物品もしくは成形物品の一部を目的としている。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含むポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の添加物として、少なくとも1種のポリアリーレン(P1)を使用することを目的としており、それは、ノッチなしアイゾッド試験(ASTM D−4810)によって測定した場合、ポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の耐衝撃性のレベルおよび、ポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の中で、質量対質量で、すべてのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)をポリアリーレン(P1)によって置き換えることにより得られるポリアリーレン組成物(C1)の耐衝撃性のレベルのいずれよりも高いレベルにまで、そのポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の耐衝撃性のレベルを向上させるためであり、
また、その逆で、
少なくとも1種のポリアリーレン(P1)を含むポリアリーレン組成物(C1)の添加物として、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を使用することであって、それは、ノッチなしアイゾッド試験(ASTM D−4810)によって測定した場合、ポリアリーレン組成物(C1)の耐衝撃性のレベルおよび、ポリアリーレン組成物(C1)の中で、質量対質量で、すべてのポリアリーレン(P1)をポリ(アリールエーテルケトン)(P2)によって置き換えることにより得られるポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の耐衝撃性のレベルのいずれよりも高いレベルにまで、そのポリアリーレン組成物(C1)の耐衝撃性のレベルを向上させるためである。
【0012】
上述の態様においては、そのブレンド物(B)は特に、成形物品または成形物品の一部の形態であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ポリアリーレン(P1)とポリ(アリールエーテルケトン)(P2)との合計質量を基準にして、ポリアリーレン(P1)の質量は、有利には少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%である。その一方で、ポリアリーレン(P1)とポリ(アリールエーテルケトン)(P2)との合計質量を基準にして、ポリアリーレン(P1)の質量は、有利には多くとも90%、好ましくは多くとも80%、より好ましくは多くとも70%である。
ポリアリーレン(P1)とポリ(アリールエーテルケトン)(P2)との合計質量は、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、有利には25%を超える、好ましくは50%を超える、より好ましくは80%を超える、さらにより好ましくは95%を超える。ブレンド物(B)が、ポリアリーレン(P1)およびポリ(アリールエーテルケトン)(P2)から実質的になるか、またはそれらからなる場合に、優れた結果が得られた。
【0014】
ブレンド物(B)の合計質量を基準にして、ポリアリーレン(P1)の質量は、有利には少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%である。その一方で、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、ポリアリーレン(P1)の質量は、有利には多くとも90%、好ましくは多くとも80%、さらにより好ましくは多くとも70%である。
【0015】
ブレンド物(B)の全質量を基準にして、ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の質量は、有利には少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%である。その一方で、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の質量は、有利には多くとも85%、好ましくは多くとも70%、より好ましくは多くとも60%、さらにより好ましくは多くとも50%、最も好ましくは多くとも40%である。
【0016】
ポリアリーレン(P1)
本発明の目的においては、アリーレン基は、1個のベンゼン系の環からなるか、または2個以上の隣接する環炭素原子を共有することにより縮合された複数のベンゼン系の環から構成される一つのコアからなり、2個の末端を有する炭化水素の2価の基である。
アリーレン基の例を非限定的に挙げれば、フェニレン、ナフチレン、アントリレン、フェナントリレン、テトラセニレン、トリフェニリレン、ピレニレン、およびペリレニレンなどである。アリーレン基(特に環炭素原子の付番)は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第64版、p.C1〜C44、特にC11〜C12の推奨に従って名付けた。
【0017】
アリーレン基は通常、ある程度のレベルの芳香族性を示し、そのため、芳香族基と呼ばれることも多い。アリーレン基の芳香族性のレベルは、そのアリーレン基の性質に依存する。Chem.Rev.、2003、103、p.3449〜3605、Aromaticity of Polycyclic Conjugated Hydrocarbonsに詳しく説明されているとおり、多環芳香族炭化水素の芳香族性のレベルは、「ベンゼン特性指数(index of benzene character)」Bによってうまく定量化することが可能である(上述文献のp.3531に定義されている)、大きい多環芳香族炭化水素のセットについてのBの値が、同じページの表40に示されている。
【0018】
アリーレン基の末端は、アリーレン基の(その)ベンゼン系の環の中に含まれる炭素原子の遊離電子であるが、ここで、前記炭素原子に結合されている水素原子は除去されている。アリーレン基のそれぞれの末端は、他の化学基との結合を形成することができる。アリーレン基の末端、あるいはより詳しくは、前記末端により形成され得る結合は、方向およびセンス(sense)によって特徴づけることができる。本発明の目的では、アリーレン基の末端のセンスとは、アリーレン基のコアの内側から前記コアの外側へ向かうことと定義される。より正確には、その末端が同じ方向を有するアリーレン基に関しては、そのような末端は同一のセンスまたは逆向きのセンスのいずれであってもよく、さらには、それらの末端が互いに直線的に先行していてもよい(their ends can be in the straight foregoing of each other)し、あるいはそうでなくても(言い方を変えれば、それらが離別していて(disjoint)もよい。
【0019】
ポリアリーレンは、以下において定義されるポリ(アリールエーテルケトン)とは異なる、ポリマーを表すものと意図され、そこでは、繰り返し単位の25質量%超が、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる1つまたは複数の式の繰り返し単位(R1)であるが、ただし、前記の場合により置換されていてもよいアリーレン基は、その二つの末端のそれぞれによって、他の二つの場合により置換されていてもよいアリーレン基に、直接的なC−C結合を介して結合されている。場合により置換されていてもよいアリーレン基が、その二つの末端のそれぞれによって、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に直接的なC−C結合を介して結合されていることにより結合されているということは、繰り返し単位(R1)の本質的な特徴である。したがって、その二つの末端の内の少なくとも一つによって、下記のフェニレン繰り返し単位φ1、φ2およびφ2'のようなアリーレン基以外の基に結合されているアリーレン繰り返し単位:
−O−φ1−S(=O)2−、
−O−φ2−φ2'−O−
は本発明の意味合いにおいては繰り返し単位(R1)ではない。
【0020】
繰り返し単位(R1)からなるアリーレン基は、非置換であってもよい。別な方法で、少なくとも1個の1価の置換基によってそれらが置換されていてもよい。
その1価の置換基は通常、本質的には高分子量ではなく、その分子量は、好ましく500未満、より好ましくは300未満、さらにより好ましくは200未満、最も好ましくは150未満である。
その1価の置換基が可溶化基であるのが有利である。可溶化基とは、少なくとも1種の有機溶媒の中、特に、溶液重合プロセスによってポリアリーレン(P1)を合成する際の溶媒として使用することが可能なジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ベンゼン、テトラヒドロフランおよびジメトキシエタンの内の少なくとも1種の中への、ポリアリーレン(P1)の溶解性を向上させるものである。
その1価の置換基はさらに、ポリアリーレン(P1)の可融性(fusibility)を増大させる、すなわちそれが、そのガラス転移温度およびその溶融粘度を低下させて、望ましくは加熱加工するのに好適なポリアリーレン(P1)を生成させるような基であるのが有利である。
【0021】
好ましくは、1価の置換基は以下のものから選択する:
ヒドロカルビル、たとえばアルキル、アリール、アルキルアリール、およびアラルキル;
ハロゲン、たとえば−Cl、−Br、−F、および−I;
少なくとも1種のハロゲン原子によって部分的または全面的に置換されたヒドロカルビル基、たとえばハロゲノアルキル、ハロゲノアリール、ハロゲノアルキルアリール、およびハロゲノアラルキル;
ヒドロキシル;
少なくとも1個のヒドロキシル基によって置換されたヒドロカルビル基、たとえばヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキルアリール、およびヒドロキシアラルキル;
ヒドロカルビルオキシ[−O−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、およびアラルキルオキシ;
【0022】
アミノ(−NH2);
少なくとも1個のアミノ基によって置換されたヒドロカルビル基、たとえばアミノアルキル、およびアミノアリール;
ヒドロカルビルアミン[−NHRまたは−NR2、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルアミンおよびアリールアミン;
【0023】
カルボン酸およびその金属塩またはアンモニウム塩、カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物;
カルボン酸、その金属塩もしくはアンモニウム塩、カルボン酸ハライドおよびカルボン酸無水物の少なくとも1種によって置換されたヒドロカルビル基、たとえば−R−C(=O)OH(ここでRは、アルキルまたはアリール基である);
ヒドロカルビルエステル[−C(=O)ORまたは−O−C(=O)R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルエステル、アリールエステル、アルキルアリールエステル、およびアラルキルエステル;
【0024】
アミド[−C(=O)NH2];
少なくとも1個のアミド基によって置換されたヒドロカルビル基;
ヒドロカルビルアミドモノエステル[−C(=O)NHRまたは−NH−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルアミド、アリールアミド、アルキルアリールアミド、およびアラルキルアミド、ならびに、ヒドロカルビルアミドジエステル[−C(=O)NR2または−N−C(=O)R2、ここでRはヒドロカルビル基である]たとえば、ジアルキルアミド、およびジアリールアミド;
スルフィン酸(−SO2H)、スルホン酸(−SO3H)、それらの金属塩またはアンモニウム塩;
ヒドロカルビルスルホン[−S(=O)2−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアリールスルホン、アラルキルスルホン;
アルデヒド[−C(=O)H]およびハロホルミル[−C(=O)X、ここでXはハロゲン原子である];
【0025】
ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルケトン、アリールケトン、アルキルアリールケトン、およびアラルキルケトン;
ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は、2価の炭化水素基、たとえばアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレンもしくはアラルキレン、好ましくはC1〜C18アルキレン、フェニレン、少なくとも1個のアルキル基によって置換されたフェニレン基、または少なくとも1個のフェニル基によって置換されたアルキレン基であり、そしてR2は、ヒドロカルビル基、たとえばアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアラルキル基である]、たとえばアルキルオキシアルキルケトン、アルキルオキシアリールケトン、アルキルオキシアルキルアリールケトン、アルキルオキシアラルキルケトン、アリールオキシアルキルケトン、アリールオキシアリールケトン、アリールオキシアルキルアリールケトン、およびアリールオキシアラルキルケトン;
【0026】
少なくとも1個のヒドロカルビル基もしくは2価の炭化水素基R1を含む上述の基のいずれかであって、ここで前記ヒドロカルビル基または前記R1がそれ自体、上述の1価の置換基の少なくとも1個によって置換されている、たとえばアリールケトン−C(=O)−R(ここでRは、1個のヒドロキシル基によって置換されたアリール基である)であるが;
ここで:
そのヒドロカルビル基には、好ましくは1〜30個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子が含まれ;
そのアルキル基には、好ましくは1〜18個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子が含まれるが、極めて好ましくは、それらはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、およびtert−ブチルから選択され;
そのアリール基は、一つの末端と、1個のベンゼン系の環(たとえばフェニル基)からなるか、または、炭素−炭素結合を介してそれぞれが直接結合されるか(たとえばビフェニル基)もしくは2個以上の隣接する環炭素原子を共有することにより互いに縮合された(たとえばナフチル基)、複数のベンゼン系の環からなる一つコアとからなる1価の基として定義されるが、ここで、その環炭素原子が少なくとも1個の窒素、酸素または硫黄原子によって置換されていてもよいが、アリール基において、環炭素原子が置換されていないのが好ましく;
そのアリール基には、好ましくは6〜30個の炭素原子を含み、より好ましくは、それらがフェニル基であり;
そのアルキルアリール基の中に含まれるアルキル基は、先に挙げたアルキル基の好ましい条件に適合し;
そのアラルキル基の中に含まれるアリール基は、先に挙げたアリール基の好ましい条件に適合する。
【0027】
より好ましくは、その1価の置換基は、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択されるが、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、非置換であっても、あるいは少なくとも1個の上述の1価の置換基によって置換されていてもよい。
【0028】
さらにより好ましくは、その1価の置換基は、アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンから選択され、前記アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンは、非置換であっても、あるいは少なくとも1個の上述の1価の置換基によって置換されていてもよい。
【0029】
最も好ましくは、その1価の置換基は、(非置換の)アリールケトンであり、特にフェニルケトン[−C(=O)−フェニル]である。
【0030】
その繰り返し単位(R1)の場合により置換されていてもよいアリーレン基のコアは、好ましくは多くとも3、より好ましくは多くとも2、さらにより好ましくは多くとも1個のベンゼン系の環からなる。さらに、その繰り返し単位(R1)の場合により置換されていてもよいアリーレン基のコアが1個のベンゼン系の環からなる場合には、その繰り返し単位(R1)は、場合により置換されていてもよいフェニレン基からなる1個または複数の式のものであるが、ただし、前記の場合により置換されていてもよいフェニレン基は、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されている。
【0031】
先に説明したように、繰り返し単位(R1)の場合により置換されていてもよいアリーレン基は、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されている。それが、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して、二つの他の場合により置換されていてもよいフェニレン基と結合されているのが好ましい。
これもまた先に説明したように、繰り返し単位(R1)の場合により置換されていてもよいアリーレン基の両方の末端を、方向およびセンスによって明確に特徴づけることができる。
【0032】
繰り返し単位(R1)として適切な繰り返し単位の第一のセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなるが、その末端が、
同じ方向を有し、
逆向きのセンスであり、そして
互いに、直線的に先行している
[以後、繰り返し単位(R1−a)と呼ぶ]。
【0033】
そのような、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:1,4−フェニレン(p−フェニレンとも呼ばれる);1,4−ナフチレン;1,4−および2,7−フェナントリレン;1,4−および9,10−アントリレン;2,7−ピレニレン;1,4−および5,12−ナフタセニレン;1,4−クリセニレン;1,4−および2,7−トリフェニリレン;1,4−、5,14−および6,13−ペンタセニレン;1,6−コロネニレン;1,4−、2,9−および5,18−トリナフチレニレン;ならびに、先に定義されたような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換されたそれらの各種の基。
【0034】
繰り返し単位(R1−a)が、場合により置換されていてもよいp−フェニレンである場合に、良好な結果が得られた。
繰り返し単位(R1−a)がポリアリーレン(P1)中に含まれていると、直鎖ポリマー鎖が得られ、傑出した剛性を示す。この理由から、そのようなポリアリーレン(P1)は一般に、「剛直棒状ポリマー(rigid−rod polymer)」と呼ばれる。
【0035】
繰り返し(R1)として適切な繰り返し単位の第二のセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなるが、その末端が、
いずれもが異なった方向を有していて、そのために互いに0〜180度を形成するが、前記角度は鋭角であっても鈍角であってもよいか、または
同一の方向および同一のセンスを有するか、または
同一の方向を有し、逆向きのセンスであって、離別している(すなわち、互いに直線的に先行していない)
[以後全体的に、繰り返し単位(R1−b)と呼ぶ]。
【0036】
次いで、繰り返し単位(R1)として適切な繰り返し単位(R1−b)の第一のサブセットは、その末端が異なった方向を有していて、互いに鋭角を形成している、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる[繰り返し単位(R1−b1)]。その両末端が互いに異なった方向を有している、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:1,2−フェニレン(またはo−フェニレン);1,2−、2,3−および1,7−ナフチレン;1,2−、1,8−、1,9−、2,3−、2,5−および2,10−フェナントリレン;1,2−および1,7−アントリレン;ならびに、先に定義されたような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換されたそれらの各種の基。
【0037】
繰り返し単位(R1)として適切な繰り返し単位(R1−b)の第二のサブセットは、その末端が異なった方向を有していて、鈍角を形成している、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる[繰り返し単位(R1−b2)]。その両末端が互いに異なった方向を有している、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:1,3−フェニレン(またはm−フェニレン);1,3−および1,6−ナフチレン;1,3−、1,5−、1,7−、2,4−、2,9−および3,10−フェナントリレン;1,3−および1,6−アントリレン;ならびに、先に定義されたような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換されたそれらの各種の基。
【0038】
繰り返し単位(R1−b)の第三のサブセットは、その末端が同一の方向と同一のセンスを有する、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる[繰り返し単位(R1−b3)]。その両末端が同一の方向と同一のセンスを有する、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:1,8−ナフチレン;1,10−および3,5−フェナントリレン;1,8−および1,9−アントリレン;ならびに、先に定義されたような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換されたそれらの各種の基。
【0039】
繰り返し単位(R1−b)の第四のサブセットは、その末端が同一の方向を有し、センスが逆方向で、離別している、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる[繰り返し単位(R1−b4)]。そのような、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:1,5−および2,6−ナフチレン;1,6−、3,9−および4,10−フェナントリレン;ならびに1,5−、1,10−および2,6−アントリレン;ならびに、先に定義されたような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換されたそれらの各種の基など。
【0040】
繰り返し単位(R1−b)が、繰り返し単位(R1−b1)、繰り返し単位(R1−b2)および繰り返し単位(R1−b4)から選択されるのが好ましい。繰り返し単位(R1−b)が、繰り返し単位(R1−b1)および繰り返し単位(R1−b2)から選択されれば、より好ましい。繰り返し単位(R1−b)が繰り返し単位(R1−b1)から選択されれば、さらにより好ましい。繰り返し単位(R1−b)が、場合により置換されていてもよいm−フェニレンである場合に、良好な結果が得られた。
【0041】
繰り返し単位(R1−b)が、ポリアリーレン(P1)の中に含まれていると、多少なりともキンク化された(kinked)ポリマー鎖となり、直鎖ポリマー鎖よりも高い溶解性および可融性を示すようになる。この理由から、そのようなポリアリーレン(P1)は一般に、「キンク化ポリマー(kinked polymer)」と呼ばれる。
【0042】
繰り返し単位(R1)は好ましくは、以下のものから選択される:
少なくとも1個の1価の置換基によって置換された繰り返し単位(R1−a)[選択(A)];および
少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもされていなくてもよい繰り返し単位(R1−a)と、少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもされていなくてもよい繰り返し単位(R1−b)との混合物[選択(B)]。
一般的には、選択(B)の方が選択Aよりは好ましい。
【0043】
選択(A)
選択(A)の繰り返し単位は、少なくとも1個の1価の置換基によって置換された繰り返し単位(R1−a)である。
前記の繰り返し単位が少なくとも1個の1価の置換基によって置換されたp−フェニレンであれば好ましい。
【0044】
それらが、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されたp−フェニレンであれば極めて好ましいが、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、それら自体、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。
それらが、アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンから選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されたp−フェニレンであれば、さらにより好ましいが、前記アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンは、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。
それらが、アリールケトン基、特にフェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンであれば、最も好ましい。
【0045】
選択(B)
選択(B)の繰り返し単位は、少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもされていなくてもよい繰り返し単位(R1−a)と、少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもされていなくてもよい繰り返し単位(R1−b)との混合物である。そのような繰り返し単位の混合物がポリアリーレン(P1)の中に含まれる場合、前記ポリアリーレン(P1)は一般に、「キンク化剛直棒状ポリマー(kinked rigid−rod polymer)」と呼ばれる。
【0046】
選択(B)の繰り返し単位は、場合により置換されていてもよいp−フェニレンから選択される繰り返し単位(R1−a)と、(i)場合により置換されていてもよいm−フェニレンおよび(ii)場合により置換されていてもよいm−フェニレンと場合により置換されていてもよいo−フェニレンとの混合物から選択される繰り返し単位(R1−b)との混合物(MB)であるのが好ましい。
【0047】
混合物(MB)の繰り返し単位(R1−a)は、少なくとも1個の置換基によって置換されたp−フェニレン単位であるのが好ましい。混合物(MB)の繰り返し単位(R1−a)が、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されたp−フェニレンであればより好ましいが、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、それら自体、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。混合物(MB)の繰り返し単位(R1−a)が、アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンから選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されたp−フェニレンであれば、さらにより好ましいが、前記アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンは、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。それらが、アリールケトン基、特にフェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンであれば、最も好ましい。
【0048】
混合物(MB)の繰り返し単位(R1−b)の全部ではないとしても、実質的に全部が、場合により少なくとも1個の置換基によって置換されていてもよいm−フェニレン単位である。混合物(MB)の繰り返し単位(R1−b)の全部ではないとしても、実質的に全部がm−フェニレンであるのがより好ましいが、それは場合により、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよく、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、それら自体、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。混合物(MB)の繰り返し単位(R1−b)の全部ではないとしても、実質的に全部が、非置換のm−フェニレン単位であれば、さらにより好ましい。繰り返し単位(R1−b)のすべてはm−フェニレン単位であるのが最も好ましい。
【0049】
混合物(MB)の中において、繰り返し単位(R1−a)および(R1−b)の合計モル数を基準にした繰り返し単位(R1−b)のモル比は、通常少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%である。その一方で、混合物(MB)の中において、繰り返し単位(R1−a)および(R1−b)の合計モル数を基準にした繰り返し単位(R1−b)のモル比は、通常多くとも99%、好ましくは多くとも95%、より好ましくは多くとも80%、さらにより好ましくは多くとも70%、最も好ましくは多くとも60%である。
オプション(B)の繰り返し単位が、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンのモル比約50:50の混合物である場合に、良好な結果が得られた。
【0050】
ポリアリーレン(P1)は特に、ホモポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマーまたはブロックコポリマーであってよい。
場合により、ポリアリーレン(P1)には、繰り返し単位(R1)とは異なる繰り返し単位(R1*)がさらに含まれていてもよい。
【0051】
繰り返し単位(R1*)には、アリーレン基の両端それぞれに結合された、少なくとも1個の強い2価の電子吸引性基が含まれていても、含まれていなくてもよい。そのような強い2価の電子吸引性基を含まない、繰り返し単位(R1*)の非限定的な例は以下のものである:
【化1】

および
【化2】

【0052】
繰り返し単位(R1*)には、アリーレン基、特にp−フェニレン基に対してその両端のそれぞれに結合された好ましくは少なくとも1個の強い2価の電子吸引性基が含まれる。その2価の電子吸引性基は、スルホン基[−S(=O)2−]、カルボニル基[−C(=O)−]、ビニレン基[−CH=CH−]、スルホキシド基[−S(=O)−]、アゾ基[−N=N−]、飽和フルオロカーボン基たとえば−C(CF32−、有機ホスフィンオキシド基[−P(=O)(=Rh)−、ここでRhはヒドロカルビル基である]、およびエチリデン基[−C(=CA2)−、ここでAは水素またはハロゲンであってよい]から選択するのが好ましい。2価の電子吸引性基がスルホン基およびカルボニル基から選択されるのがより好ましい。繰り返し単位(R1*)が以下のものから選択されれば、さらにより好ましい:
【0053】
(i)次式の繰り返し単位
【化3】

【0054】
(ii)次式の繰り返し単位
【化4】

(ここで、Qは以下のものから選択される基である)、
【化5】

ここでRは以下のものである
【化6】

(nは、1〜6の整数であり、n’は2〜6の整数である)、
Qは、以下のものから選択するのが好ましく、
【化7】

【0055】
(iii)次式の繰り返し単位
【化8】

【0056】
(iv)式(6)の繰り返し単位、前記繰り返し単位は式(4)のものと同じであるが、ただし式(4)そのものの中で両方のスルホン基がカルボニル基によって置換されたものである。
【0057】
ポリアリーレン(P1)の繰り返し単位の中の繰り返し単位(R1)が、25質量%を超えれば好ましく、50質量%を超えればより好ましく、90質量%を超えればさらにより好ましい。ポリアリーレン(P1)の繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が繰り返し単位(R1)であるのが最も好ましい。
【0058】
そのポリアリーレン(P1)の全部ではないとしても実質的に全部が、その繰り返し単位が、p−フェニレン:m−フェニレンのモル比が(5:95)から(95:5)まで、好ましくは(70:30)から(30:70)まで、より好ましくは(60:40)から(40:60)まで、さらにより好ましくは約50:50であるような、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとの混合物からなる、ポリフェニレンコポリマーであった場合に、優れた結果が得られた。そのようなポリフェニレンコポリマーは、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.からPRIMOSPIRE(商標)PR−250ポリフェニレンとして市販されている。
【0059】
そのポリアリーレン(P1)は、500より大の数平均分子量を有していれば有利であるが、1000、2000、3000、5000、10000、そして15000と、大きくなるほど好適度が向上する。その一方で、ポリアリーレン(P1)の数平均分子量は通常100000未満、好ましくは70000未満である。ある種の実施態様においては、ポリアリーレン(P1)の数平均分子量が35000よりも高い。また別な実施態様においては、それが多くとも35000であり、この実施態様においては、多くの場合多くとも25000、場合によっては多くとも20000である。ポリアリーレンの数平均分子量、特にポリアリーレン(P1)のそれは:(1)ポリスチレン較正標準を使用し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってそのポリアリーレンの「相対的な」数平均分子量を測定してから、(2)そのようにして求めた「相対的」数平均分子量を係数2で割り算することによって求めるのが好都合である。そのようにして実施する理由は、ポリアリーレンの専門家である当業者ならば、GPCで測定した場合、その「相対的な」数平均分子量は通常、約2倍にずれていることを知っているからであり、上述の分子量の下限および上限はすべてこの補正係数ですでに処理したものである。
【0060】
ポリアリーレン(P1)は非晶質(すなわち、融点を有さない)であっても、半晶質(すなわち、融点を有する)であってもよい。非晶質であるのが好ましい。
ポリアリーレン(P1)は、有利には50℃を超える、好ましくは120℃を超える、より好ましくは150℃を超えるガラス転移温度を有する。
【0061】
ポリアリーレン(P1)を調製するにはいかなる方法を用いてもよい。ポリアリーレン(P1)を調製するための当業者に公知の方法は、特に米国特許第5,227,457号明細書;米国特許第5,539,048号明細書;米国特許第5,565,543号明細書;米国特許第5,646,231号明細書;米国特許第5,654,392、米国特許第5,565,543号明細書、米国特許第5,659,005号明細書、米国特許第5,565,543号明細書、米国特許第5,668,245号明細書;米国特許第5,670,564号明細書;米国特許第5,721,335号明細書;米国特許第5,756,581号明細書;米国特許第5,760,131号明細書;米国特許第5,824,744号明細書;米国特許第5,827,927号明細書;米国特許第5,869,592号明細書;米国特許第5,886,130号明細書;および米国特許第6,087,467号明細書に記載されている(これらの特許のすべての内容を参考として引用し本明細書に組み入れることとする)。ポリアリーレン(P1)を調製するための好適な方法には、その両末端のそれぞれの上で、1個のハロゲン原子たとえば塩素、臭素、ヨウ素に結合された、1個の、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる少なくとも1個のジハロアリーレン分子化合物を、好ましくは還元カップリング法によって重合させることが含まれる。ジハロアリーレン分子化合物から両方のハロゲン原子を除去すると、ポリアリーレン(P1)の繰り返し単位(R1)として好適な、場合により置換されていてもよいアリーレン基が生成する。
【0062】
したがって、たとえば:
p−ジクロロベンゼン、p−ジクロロビフェニルおよびそれらの同族化合物の一般式Cl−(φ)N−Cl(ここで、Nは3〜10の整数)の一つの分子から両方の塩素原子を除去すると、それぞれ1、2またはNの隣接したp−フェニレン単位が形成され、そのために、p−ジクロロベンゼン、p−ジクロロビフェニルおよびそれらの同族化合物の一般式Cl−(φ)N−Cl(ここで、Nは上で定義されたもの)は、重合させてp−フェニレン単位を形成させることができる;
2,5−ジクロロベンゾフェノン(p−ジクロロベンゾフェノン)を重合させて、1,4−(ベンゾイルフェニレン)単位を形成させることができる;
2,5−ジクロロ−4’−フェノキシベンゾフェノンを重合させて、1,4−(4’−フェノキシベンゾイルフェニレン)単位を形成させることができる;
m−ジクロロベンゼンを重合させて、m−フェニレン単位を形成させることができる。
【0063】
ブレンド物(B)には、1種の、そして1種だけのポリアリーレン(P1)が含まれていてよい。別な方法では、それには2種、3種、さらには4種以上のポリアリーレン(P1)が含まれていてもよい。
ブレンド物(B)においては、ポリアリーレン(P1)はいかなる形態であってもよいが、ただし繊維は除く。より一般的には、ブレンド物(B)は通常、繊維の形態のポリアリーレンは一切含まない。
【0064】
そのポリアリーレン(P1)が、次の二つの形態の内の少なくとも一つであるのが好ましい:
ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含む相、できればブレンド物(B)のマトリックス相の中に可溶化されたポリアリーレン(P1);
分散相、できればブレンド物(B)マトリックス相を形成するポリアリーレン(P1)であって、前記分散相が、その中に分散された可溶化された状態でのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含む;
ならびに、できればそれに加えて、以下の形態の一つまたは複数:
ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含む相、できればブレンド物(B)のマトリックス相の中に分散されたポリアリーレン(P1)のノジュール;
分散相、できればブレンド物(B)のマトリックス相を形成するポリアリーレン(P1)であって、前記分散相が、その中に分散された、ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)のノジュールを含む。
【0065】
そのポリアリーレン(P1)が以下の形態であれば、極めて好ましい:
ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含む相、できればブレンド物(B)のマトリックス相の中に可溶化されたポリアリーレン(P1);
ならびに、できればそれに加えて、次の形態:
ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含む相、できればブレンド物(B)のマトリックス相の中に分散されたポリアリーレン(P1)のノジュール;
ここで;
ポリアリーレン(P1)中のある程度のノジュールは、ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)をまったく含んでいなくてよく、そして
ポリアリーレン(P1)のある程度の他のノジュールが、マトリックス相とは別に、それ自体で、その中に分散された、可溶化された状態および/またはサブノジュールの形態にあるポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含む分散相を形成してもよい。
【0066】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)
先にも述べたように、ブレンド物(B)には少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含む。
【0067】
本発明の目的においては、「ポリ(アリールエーテルケトン)」という用語は、その繰り返し単位の50質量%超が、2個のアリーレン基の間に少なくとも1個のカルボニル基を含む繰り返し単位(R2)であって、前記繰り返し単位(R2)が次式の1種または複数であるような、各種のポリマーを表すものとする:
【化9】

[ここで;
Arは独立して、フェニレン、ビフェニレンまたはナフチレンから選択される2価の芳香族ラジカルであり、
Xは独立して、O、C(=O)または単結合(direct bond)であり、
nは、0〜3の整数であり、
b、c、dおよびeは、0または1であり、
aは、1〜4の整数であり、そして
好ましくは、bが1の場合にはdが0である。]
【0068】
繰り返し単位(R2)は、特には、以下のものから選択するのがよい:
【化10】

【化11】

および
【化12】

【0069】
好ましくは、繰り返し(R2)は以下から選択される。
【化13】

および
【化14】

【0070】
より好ましくは、繰り返し単位(R2)は次式のものである。
【化15】

【0071】
本発明の目的においては、ポリエーテルエーテルケトンは、その繰り返し単位の50質量%超が、式(VII)の繰り返し単位(R2)である各種ポリマーを表すものとする。
【0072】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の繰り返し単位の好ましくは70質量%超、より好ましくは85質量%超が、繰り返し単位(R2)である。さらにより好ましくは、ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の実質的に全部の繰り返し単位が繰り返し単位(R2)である。最も好ましくは、ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の全部の繰り返し単位が繰り返し単位(R2)である。
【0073】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)がポリエーテルエーテルケトンホモポリマーである、すなわち、ポリマーの内で完全に全部ではなくても、実質的に全部で、その繰り返し単位が式(VII)であるような場合には、優れた結果が得られた。Victrex Manufacturing Ltd.製のVICTREX(登録商標)150PおよびVICTREX(登録商標)450P PEEK、ならびにSolvay Advanced Polymers,L.L.C.製のKETASPIRE(商標)およびGATONE(登録商標)PEEKは、ポリエーテルエーテルケトンホモポリマーの例である。
【0074】
そのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)が、95〜98%硫酸(d=1.84g/mL)中、ポリ(アリールエーテルケトン)濃度1g/100mLで測定して、少なくとも0.60dL/gの還元粘度(RV)を有しているのが好都合である。その測定は、No.50 Cannon−Fleske粘度計を使用して実施する。スルホン化を避けるために、溶解後4時間までの間に、25℃でRVを測定する。ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)のRVは、好ましくは少なくとも0.65dL/g、より好ましくは0.70dL/gである。さらに、ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)のRVは、有利には多くとも1.20dL/g、好ましくは多くとも1.10、さらにより好ましくは多くとも1.00dL/gである。
【0075】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)は非晶質(すなわち、融点を有さない)であっても、半晶質(すなわち、融点を有する)であってもよい。それは通常は半晶質であり、その場合、そのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の融点は、有利には150℃よりも高く、好ましくは250℃よりも高く、より好ましくは300℃よりも高く、さらにより好ましくは325℃よりも高い。
【0076】
ポリ(アリールケトン)(P2)は各種の方法で調整することができる。
【0077】
当業者に周知の一つの方法には、少なくとも1種のビスフェノールと少なくとも1種のジハロベンゾイド化合物または少なくとも1種のハロフェノール化合物との実質的に等モルの混合物を反応させることが含まれる(カナダ国特許第847,963号明細書に記載あり)。そのようなプロセスにおいて有用なビスフェノールの例を非限定的に挙げれば、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよび4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどであり;そのようなプロセスにおいて有用なジハロベンゾイド化合物の例を非限定的に挙げれば、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンおよび4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノンなどであり;そのようなプロセスにおいて有用なハロフェノール化合物の例を非限定的に挙げれば、4−(4−クロロベンゾイル)フェノールおよび(4−フルオロベンゾイル)フェノールなどである。したがって、PEEKホモポリマーは主として、たとえば米国特許第4,176,222号明細書に記載されているような求核プロセスによって製造することができる(その内容のすべてを参考として引用し、本明細書に組み入れる)。
【0078】
PEEKホモポリマーを製造するための、当業者に周知のまた別な方法には、溶媒としてアルカンスルホン酸を使用し縮合剤の存在下に、フェノキシフェノキシ安息香酸を求電子的に重合させることが含まれるが、そのようなプロセスは、米国特許第6,566,484号明細書に記載がある(その内容のすべてを参考として引用し、本明細書に組み入れる)。その他のポリ(アリールエーテルケトン)も、たとえば米国特許出願公開第2003/0130476号明細書に記載があるように、フェノキシフェノキシ安息香酸とは異なったモノマーから出発して、同じ方法で製造することができる(その内容のすべてもまた参考として引用し、本明細書に組み入れる)。
【0079】
ブレンド物(B)には、1種の、そして1種だけのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)が含まれていてよい。別な方法では、それには2種、3種、さらには4種以上のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)が含まれていてもよい。ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)のある種の好適な混合物として以下のものが挙げられる:
(i)その繰り返し単位の50質量%超、好ましくはその繰り返し単位の実質的に全部、さらにより好ましくはその繰り返し単位の全部が次式である、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2a)と、
【化16】

(ii)その繰り返し単位の50質量%超、好ましくはその繰り返し単位の実質的に全部、さらにより好ましくはその繰り返し単位の全部が次式である、少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2b)と、
【化17】

場合によりさらに、(iii)ポリ(アリールエーテルケトン)(P2a)および(P2b)とは異なる少なくとも1種の他のポリ(アリールエーテルケトン)(P2c)と、
からなる混合物;
好ましくは、(i)その繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が式(VII)である少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2a)と、(ii)その繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が式(IX)である少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2b)と、からなる混合物;
さらにより好ましくは、(i)その繰り返し単位の全部が式(VII)である1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2a)と、(ii)その繰り返し単位の全部が式(IX)である1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2b)と、からなる2成分混合物。
【0080】
実施態様(E*
本発明(E*)の具体的な実施態様においては、ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)がポリ(アリールエーテルスルホン)、すなわち、その繰り返し単位の少なくとも5質量%が、少なくとも1個のアリーレン基、少なくとも1個のエーテル基(−O−)および少なくとも1個のスルホン基[−S(=O)2−]を含む1つまたは複数の式の繰り返し単位であるポリマーである。
【0081】
実施態様(E*)においては、そのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)には以下のものが含まれていてよい:
(i)エーテルおよび/またはチオエーテルを介して結合された、繰り返し単位(PhSO2Ph)n(ここでnは1〜3であるが、この範囲内の分数であってもよい)、および(ii)そのように結合された構造単位(Ph)k(ここで、Phはフェニレン(特にパラ−フェニレン)であり、「k」は1〜3であるが、この範囲内の分数であってもよく、そしてそのようなフェニレンの少なくとも一部は、2価の−CO−基を介して直鎖状に結合され、そのようなフェニレンの残りの部分は、もし存在するならば、縮合されているか、あるいは単化学結合またはSO2および−CO−以外の2価の基を介して結合されている)。
【0082】
「分数」という表現は、各種の「n」または「k」の値を有する単位を含む所定のポリマー鎖についての平均値を指している。
【0083】
実施態様(E*)においては、そのポリアリーレン(P1)は、本明細書に記載のポリアリーレン(P1)の特性と矛盾しない限りにおいて、PCT/EP2006/060535号に記載されているポリフェニレンの特性のすべてに適合しているのがよい。
【0084】
当業者の良く理解するところであろうが、本発明はこの特定の実施態様(E*)に限定されるものではなく、本明細書に記載される(E*)以外の各種の実施態様もまた包含される。さらに、本明細書に記載の実施態様に対する各種の修正も当業者には容易に自明であり、本明細書において定義された包括的な原理は、本発明の精神および範囲から外れることなく、他の実施態様にも適用できるであろう。したがって、本発明はまた、全ての示された実施態様に限定されるものではなく、本明細書において開示された原理と特徴と矛盾しない最も広い範囲が当てられるものとする。
【0085】
ブレンド物(B)の任意成分
ブレンド物(B)には、各種のその他のポリマー、添加剤、充填剤など(総称的に「構成成分」と呼ぶ)がさらに含まれていてもよい。ポリアリーレンおよびポリ(アリールエーテルケトン)組成物に慣用される構成成分としては、繊維質強化材、微粒子状充填剤および成核剤たとえばタルクおよびシリカ、接着促進剤、相溶化剤、硬化剤、潤滑剤、金属粒子、離型剤、有機および/または無機顔料たとえばTiO2およびカーボンブラック、染料、難燃剤、発煙抑制剤、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、強靱化剤たとえばゴム、可塑剤、静電防止剤、溶融粘度低下剤たとえば液晶性ポリマーなどが挙げられる。
【0086】
前記任意の構成成分の質量は、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、有利には75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、さらにより好ましくは10%未満である。ブレンド物(B)が、前記任意構成成分を実質的に含まないか、あるいは完全に含まない場合に、優れた結果が得られた。
【0087】
具体的には、そのブレンド物(B)が、繊維質強化材、特に無機繊維質強化材たとえばガラス繊維および炭素繊維をさらに含んでいてもよい。したがって、ある種の特に好ましくない実施態様においては、そのブレンド物(B)には、10〜50質量%、特には20〜30質量%の強化材が含まれる(パーセントはすべて、ブレンド物の全質量を基準としたものである)。そのようなブレンド物の一例は、35質量%のキンク化剛直棒状ポリフェニレンホモポリマー、35質量%のポリエーテルエーテルケトンホモポリマー、および30質量%のガラス繊維からなるものである。その一方では、ブレンド物(B)の全質量を基準にして、繊維質強化材の質量が、10%、好ましくは5%未満であるブレンド物(B)が好ましく、ブレンド物(B)が、繊維質強化材を実質的に含まないか、あるいは完全に含まない場合に、優れた結果が得られた。
【0088】
本発明のブレンド物の調製法
ブレンド物(B)を調製するにはいかなる方法を用いてもよい。
本発明の一つの態様は、繊維以外の形態の少なくとも1種のポリアリーレン(P1)を少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)と、そのポリアリーレン(P1)の溶融温度およびそのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の溶融温度よりも高い温度で混合すること含む、上述のようなブレンド物(B)を調製するための方法を目的としている。
本発明の目的においては、ポリマーの溶融温度は、前記ポリマーが非晶質である場合にはそのガラス転移温度、前記ポリマーが半晶質である場合にはその融点である。
【0089】
ポリアリーレン(P1)の溶融温度およびポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の溶融温度は、当業者に公知の各種の方法によって測定することができる。たとえば、Universal V3.7A Instruments DSC熱量計を使用した、示差走査熱量測定法によって測定されることが極めて多い。この目的においては、その熱量計が較正サンプルの手段によって適切に較正されているかどうかを予めチェックする。次いで、その溶融温度を測定するべきポリマー[ポリマー(P1)または(P2)]を、以下の加熱/冷却サイクルにかける:室温(20℃)からTmaxまで10℃/分の速度で1回目の加熱、次いでTmaxから室温まで20℃/分の速度で冷却、次いで室温からTmaxまで10℃/分の速度で2回目の加熱。ここで、Tmaxはそのサイクルの最高温度を表しており、Tmaxは、測定にかけるポリマーの溶融温度よりは充分に高いが、そのポリマーが分解を始める温度よりは充分に低くなるように選択するが、Tmaxの値を溶融温度よりも約30℃〜約100℃高くするのが一般的には適切であり、ポリアリーレン(P1)の溶融温度、具体的にはガラス転移温度を測定する目的では、約220℃のTmaxの値が適切であるが、それに対して、ポリフェニレン(P2)の溶融温度、具体的には融点を測定する目的では、約400℃のTmaxが適切であろう。
【0090】
溶融温度は、2回目の加熱のときに測定する。
ポリマー(P1)または(P2)の溶融温度がその融点である場合には、溶融は吸熱の一次転移であるので、DSCスキャンでは負のピークとして現れる。融点は、熱流量曲線上でのある種の作図手順によって求めるのが好都合である。ピークの両側の変曲点における接線の2本の直線の交点を、ピーク温度すなわち融点と定義する。
【0091】
ポリマー(P1)または(P2)のガラス転移温度がそのガラス転移温度である場合には、このものは、熱流量曲線上でのある種の作図手順によって求めるのが好都合である。転移領域より上の曲線に対する第一の接線を引き、転移領域より下の曲線に対する第二の接線も引き、それら2本の接線の間の中間の曲線上の温度、すなわち1/2デルタCpが、ガラス転移温度である。
【0092】
ポリアリーレン(P1)をポリ(アリールエーテルケトン)(P2)と混合することは、各種適切な手段によって実施することができる。その混合は、充分に高い剪断力の下で実施して、ブレンド物(B)中で両方のポリマーの高い程度での混合が達成できるようにするのが好都合である(「剪断混合」)。その混合は特に、一つの所望のやり方として、ポリアリーレン(P1)をポリ(アリールエーテルケトン)(P2)と、そのポリアリーレン(P1)の溶融温度およびそのポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の溶融温度よりも高い温度で押出し加工して、ブレンド物(B)のストランドが得られるようにして実施することができる。そのようにして得られたストランドを次いで切断してペレットとするのが極めて好ましい。
【0093】
本発明の方法には、ポリアリーレン(P1)をポリ(アリールエーテルケトン)(P2)と、好ましくは粉体または粒状体の形態で、ポリアリーレン(P1)の溶融温度およびポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の溶融温度よりも低い温度でドライブレンドする工程がさらに含まれているのが好ましく、その後で混合工程にかける。
【0094】
本発明のブレンド物の最終用途
先にも説明したように、本発明のまた別な態様は、上述のようなブレンド物(B)を含む成形物品または成形物品の一部を目的としている。
【0095】
本発明に従った成形物品または成形物品の一部の非限定的な例としては、以下のようなものが挙げられる:
フィルム
フィルムを形成させるには、多くの各種方法が使用できる。連続プロセス、バッチプロセスのいずれを使用してもよい。
フィルムを溶液から形成させてもよい。その溶液には一般に、有機液体(溶媒)が含まれていて、それが、有利には、ポリアリーレン(P1)およびポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を溶解させる。
フィルムを、ブレンド物(B)の溶融物から形成させてもよい。フィルムは、スリットを通して溶融物を押出し加工してもよい。フィルムは、インフレーション法によって形成させてもよい。さらに、延伸法および/またはアニーリング法によってフィルムをさらに加工することもできる。二層フィルム、積層フィルム、多孔質フィルム、型押しフィルムなどのような特殊なフィルムも、当業者公知の方法によって製造することができる。
ブレンド物(B)を含むフィルムを、延伸によって配向させてもよい。一次元での延伸では、一軸配向が得られるであろう。二次元での延伸では、二軸配向が得られるであろう。ガラス転移温度近くにまで加熱することによって、延伸を助けてもよい。可塑剤によって延伸を助けることもできる。本発明のブレンド物に、延伸とアニリーングを交互サイクルで適用するような、もっと複雑なプロセスを使用してもよい。
【0096】
コーティング
一般的にはコーティングされないフィルムの場合とは対照的に、コーティングは通常、基材の上に塗布される。「基材の上へのコーティング」という表現は、その常識的な意味合い、すなわちそのコーティングが基材の表面上に被覆を形成すると理解されるべきであり、したがって、コーティングを達成するために使用されるプロセスに関しては何の限定も含まれない。基材の表面は、そのコーティングによって部分的に被覆されていても、全面的に被覆されてもよい。
【0097】
コーティングの厚みは、通常少なくとも1μm、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μm、さらにより好ましくは少なくとも20μmである。さらに、コーティングの厚みは、通常多くとも10000μm、好ましくは多くとも1000μm、より好ましくは多くとも500μmである。ある種の実施態様においては、コーティングの厚みは、200μm以下、さらには100μm以下であってもよい。
コーティングは公知の方法で形成されてもよく、たとえば、粉体コーティング法、予備成形フィルムの積層法、溶液からのコーティング法、溶融物からのコーティング法などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0098】
本発明の一つの態様は、その上に上述のコーティングが塗布された、基材を含む物品である。
特に高い技術的関心をひく本発明の具体的な態様は、防摩(ablative insulation)のために上述のコーティングを使用することを目的としている。それによれば、そのコーティングを基材たとえば金属の上に塗布し、コーティングを部分的または全面的に破壊するような攻撃的因子(aggresive agent)にそのコーティングを暴露させると、そのコーティングが「犠牲」層として使われて、その基材をその攻撃的因子から防御する。攻撃的因子の第一のタイプは、そのコーティングに対して相対的な運動をして、コーティングをこするような物体であり、その物体は通常、コーティングそのものよりも研磨性が強い。また別なタイプの攻撃的因子は炎の中にあり、炎の調節の有無にかかわらないが、特に燃料の緩燃焼(deliberate combustion)で発生する。さらにまた別なタイプの攻撃的因子は、化学物質から選択される。これら異種のタイプの攻撃的因子を組み合わせたものもまた、包含される。
【0099】

ブレンド物(B)を加工して、混合気体、液体および固体を分離するための膜とすることができる。
【0100】
その他の成形物品または成形物品の一部
ブレンド物(B)を加工して、シート、ならびに各種の三次元成形物品および成形物品の一部としてもよい。
【0101】
ブレンド物(B)から成形物品を成形するためには、各種の成形法が使用できる。
成形法
ブレンド物(B)の粉体、ペレット、ビーズ、フレーク、粉砕再生物質またはその他の形態のものを、液体またはその他の添加剤の存在下または非存在下に、成形したり、プレミックスしたり、あるいは個別にフィードしたりすることができる。具体的な実施態様においては、ブレンド物(B)を圧縮成形してもよい。小型のサンプルの成形をトライアルアンドエラーで実施して、正確な条件を決めればよい。温度の上限は、たとえば熱重量分析のような熱分析から推測することができる。温度の下限は、たとえば動的機械熱分析(DMTA)、示差走査熱量測定(DSC)などの方法によって測定したTgから推測することができる。ブレンド物(B)は射出成形することも可能である。そのブレンド物(B)が分解せずに数回再溶融させることが可能であるならば、成形プロセスからのリグラインド(粉砕再生)を使用することも望ましい。当業者のよく認識するところであるが、その物質の応力緩和性および溶融粘度の温度依存性などのその他の因子もまた射出成形性に影響する。
【0102】
押出法
ブレンド物(B)を押出し成形することも可能である。非限定的な例としては、アングル材、チャンネル材、六角材、中空材、I形材、接合帯材、筒材、矩形筒材、棒材、シート、プレート、角材、角筒材、T形材、薄壁筒材、ミクロチューブ、ストランド、矩形ストランド、その他特定の用途のために必要とされるその他の形状などが挙げられる。押出しに関連するものとして引抜き成形があるが、その場合には繊維強化材たとえばガラスまたは炭素繊維を、溶融状態で押出し加工されたブレンド物(B)のマトリックスに連続的に添加する。例外的に大きなモジュラスと圧縮強度を有する複合材料が得られるであろう。
【0103】
熱成形
シート素材を、切断したり、圧断したり、融着したり、加熱成形したりしてもよい。たとえば、印刷配線板をシートまたは厚いフィルムから加工することもできるが、そのためのプロセスでは、銅を片面または両面の上に析出させ、標準的なフォトリソグラフィー法によってパターン化し、エッチングし、次いで孔を開け、数枚のそのようなシートを合わせて積層させて、最終的なボードを形成させる。シートおよびフィルムは、熱成形することで、各種のハウジング、キャビネット、容器、カバー、シャーシー、プレート、パネル、フェンダー、フードなどとすることもできる。
【0104】
以下において、実施例を参照しながら本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0105】
本発明の予想外のメリット
驚くべきことには、それらの分子構造においては実質的に不一致があるにもかかわらず、ブレンド物(B)の中に含まれるポリアリーレン(P1)およびポリ(アリールエーテルケトン)(P2)は、一般的には、相互の間で少なくとも部分的には混和性があり、両方のポリマーの混和部分が単一相を形成している[両方のポリマーの相対的な量に依存して、(P1)が(P2)の中に可溶化されるか、その逆となる]ということが判った。
【0106】
さらに驚くべきことには、そのブレンド物(B)が以下のような性質を優れたバランスで示す:
極めて高い強度、
極めて高い剛性、
良好な伸び性、
良好な溶融加工性(特に、それらは射出成形用途によく適している)、および
高い耐薬品性。
【0107】
より驚くべきことには、本発明のブレンド物(B)は、傑出した耐熱性を示し、それによって、極めて高い温度(380℃程度)に暴露させた場合であっても望ましくないガス放出性が抑制される。本発明のブレンド物の耐熱性は一般的に、ニートのポリ(アリールエーテルケトン)のそれと同程度に高く、本発明のブレンド物中に小量のポリ(アリールエーテルケトン)が含まれている場合であってさえもそうである。
【0108】
さらにより驚くべきことには、本発明のブレンド物(B)は、標準的なノッチなしアイゾッド試験(ASTM D−4810)によって特徴付けられるような、傑出した耐衝撃性を示す。本発明のブレンド物の耐衝撃性は一般的に、それぞれ個別に測定したニートのポリアリーレンおよびニートのポリ(アリールエーテルケトン)のそれよりも高い。この相乗的な挙動は、極めて高く、最適化されたブレンド物では、ASTM D−4810において定義されたノッチなしアイゾッド試験により測定された耐衝撃性が、それぞれ個別に測定したポリアリーレンおよびポリ(アリールエーテルケトン)のそれの2倍またはそれ以上に高い。
【実施例】
【0109】
使用したポリマーは下記のものである:
ポリフェニレンコポリマーであって、その全部ではないとしても、実質的に全部の繰り返し単位が、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとのp−フェニレン:m−フェニレンのモル比が約50:50のものからなり、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.から、PRIMOSPIRE(商標)PR−250ポリフェニレンとして市販されているもの、
および
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ホモポリマーであって、その全部ではないとしても、実質的に全部の繰り返し単位が式(VII)のものであって、
【化18】

Victrex Manufacturing Ltd.からVICTREX(登録商標)150Pとして市販されているもの。
【0110】
本発明によるブレンド物[(E1)、(E2)および(E3)]、さらにはニートのポリフェニレンおよびPEEK対照物[(CE1)および(CE2)]はすべて、Berstorff 25mm二軸スクリュー共回転かみあい押出機上でコンパウンディングした。
二つのニートのポリマー対照物(CE1)および(CE2)の場合には、そのコンパウンディング工程では、それらの樹脂を粉体からペレットの形態へと転化させ、そのベースポリマーに、ブレンド物に見られるのと同じ熱履歴を与えるようにした。
機械的性質の試験は、厚み3.2mmのASTM試験片を用いて、ASTM試験法に従って実施した。
等温熱重量分析(TGA)重量損失速度は、窒素中で、380℃(100℃/分)まで急昇温させた後、40分の保持時間をとることにより測定した。重量損失速度(ppm/分)は、40〜60分の時間間隔全体において、温度プロットに対するTGAの質量の勾配から計算した。
【0111】
それらの結果を次の表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
ブレンド物(E1)〜(E3)(本発明による)、特にブレンド物(E2)および(E3)は、極めて高い強度、極めて高い剛性も含めて、優れた性能のバランスを示した。
それらはさらに、70質量部もの高い量のポリフェニレンが使用された場合(ブレンド物(E3)の場合である)であっても、良好な伸び性を示した。
【0114】
ブレンド物(E1)〜(E3)はさらに傑出した耐熱性も示し、それによって、極めて高い温度(380℃程度)に暴露させた場合であっても望ましくないガス放出性が抑制された。本発明のブレンド物の耐熱性は実に、ニートのポリ(アリールエーテルケトン)のそれと同程度に高く、そのようなポリ(アリールエーテルケトン)が30質量部もの低い量で使用された場合(ブレンド物(E3)の場合である)であっても、そうであった。
【0115】
本発明のブレンド物(E1)、(E2)および(E3)は、標準的なノッチなしアイゾッド試験(ASTM D−4810)で特徴付けられる、傑出した耐衝撃性を示した。調製したブレンド物すべての耐衝撃性が、それぞれ個別に測定したニートのポリアリーレンおよびニートのポリ(アリールエーテルケトン)のそれよりも遙かに高かった(強い相乗効果)。特に、ASTM D−4810において定義されるノッチなしアイゾッド試験で測定したブレンド物(E2)および(E3)の耐衝撃性は、耐衝撃性の点でそのブレンド物の中のよい方のポリマー(この場合ポリフェニレン)の耐衝撃性のそれの1.5倍よりも高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維以外の形態の、少なくとも1種のポリアリーレン(P1)、および
少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)
を含むブレンド物(B)。
【請求項2】
前記ポリアリーレン(P1)および前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の合計質量を基準にして、前記ポリアリーレン(P1)の質量が少なくとも50%であることを特徴とする、請求項1に記載のブレンド物。
【請求項3】
前記ポリアリーレン(P1)および前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の合計質量を基準にして、前記ポリアリーレン(P1)の質量が多くとも70%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のブレンド物。
【請求項4】
前記ブレンド物(B)の全質量を基準にして、前記ポリアリーレン(P1)および前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の合計質量が、95%を超えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブレンド物。
【請求項5】
前記ポリアリーレン(P1)がポリフェニレンコポリマーであり、その繰り返し単位の実質的に全部が、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとの混合物からなり、p−フェニレン:m−フェニレンのモル比が(5:95)から(95:5)までであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のブレンド物。
【請求項6】
前記p−フェニレン:m−フェニレンのモル比が、(30:70)から(70:30)までであることを特徴とする、請求項5に記載のブレンド物。
【請求項7】
前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の繰り返し単位の50質量%超が、下記から選択される繰り返し単位(R2)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のブレンド物。
【化1】

【化2】

【化3】

および
【化4】

【請求項8】
前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)が、その繰り返し単位の実質的に全部が次式のものであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ホモポリマーであることを特徴とする、請求項7に記載のブレンド物。
【化5】

【請求項9】
繊維以外の形態の少なくとも1種のポリアリーレン(P1)を少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)と、前記ポリアリーレン(P1)の溶融温度および前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の溶融温度よりも高い温度で混合することを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のブレンド物を調製するための方法。
【請求項10】
前記ポリアリーレン(P1)を前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)と共に、前記ポリアリーレン(P1)の溶融温度および前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の溶融温度よりも高い温度で押出し加工して、ブレンド物(B)のストランドを得ることを含むことを特徴とする、請求項9に記載のブレンド物を調製するための方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のブレンド物を含むか、または請求項9もしくは10に記載の方法によって調製される成形物品または成形物品の一部。
【請求項12】
フィルム、コーティング、膜、およびシートから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の成形物品または成形物品の一部。
【請求項13】
三次元形状であることを特徴とする、請求項11に記載の成形物品または成形物品の一部。
【請求項14】
前記ブレンド物(B)を射出成形することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の成形物品または成形物品の一部を調製するための方法。
【請求項15】
少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を含むポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の添加物としての少なくとも1種のポリアリーレン(P1)の使用であって、ノッチなしアイゾッド試験(ASTM D−4810)によって測定した場合、前記ポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の耐衝撃性のレベルおよび、前記ポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の中で、質量対質量で、すべての前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)を前記ポリアリーレン(P1)によって置き換えることにより得られるポリアリーレン組成物(C1)の耐衝撃性のレベルのいずれよりも高いレベルにまで、前記ポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の耐衝撃性のレベルを向上させるための使用。
【請求項16】
少なくとも1種のポリアリーレン(P1)を含むポリアリーレン組成物(C1)の添加物としての少なくとも1種のポリ(アリールエーテルケトン)(P2)の使用であって、ノッチなしアイゾッド試験(ASTM D−4810)によって測定した場合、前記ポリアリーレン組成物(C1)の耐衝撃性のレベルおよび、前記ポリアリーレン組成物(C1)の中で、質量対質量で、すべての前記ポリアリーレン(P1)を前記ポリ(アリールエーテルケトン)(P2)によって置き換えることにより得られるポリ(アリールエーテルケトン)組成物(C2)の耐衝撃性のレベルのいずれよりも高いレベルにまで、前記ポリアリーレン組成物(C1)の耐衝撃性のレベルを向上させるための使用。

【公表番号】特表2009−529079(P2009−529079A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557751(P2008−557751)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052102
【国際公開番号】WO2007/101857
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】