説明

新規なポリイミド共重合体及びそれを成形してなるポリイミド成形体

【課題】
高透明性、高靭性及び高耐熱性を有する新規なポリイミド樹脂の提供、及び各種電子デバイスの電気絶縁膜やガラス基板代替用として有用なプラスチック基板を提供する。
【解決手段】
ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンを、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとのモル比が5:95〜95:5の範囲でイミド化反応する。得られたポリイミド樹脂は、透明性、靭性及び耐熱性を有しているので、ガラス基板代替用プラスチック基板、電子デバイスの電気絶縁膜、光学材料、太陽電池パネル等の保護フィルム、光導波路など種々の用途に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリイミド共重合体及びそのワニス、ポリイミド前駆体及びそのワニス、並びにそれらを成形して得られるポリイミド成形体、更に該成形体からなるプラスチック基板及びその基板を備えた電気・電子部品に関する。
該ポリイミド共重合体は、高透明性、高靭性及びガラス転移温度を有するので、特にガラス基板代替用として、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板に有用である。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレーにはガラス基板が用いられているが、近年の大画面化の動向に伴い、軽量化および生産性向上の問題が深刻化している。その解決策として、重いガラス基板の代わりにより軽量でより成形加工が容易なプラスチック基板が提案されている。ガラスと同等の高透明性で高靭性のプラスチック基板が開発されれば、収納可能なフレキシブルフィルム液晶パネルが実現可能となる。
【0003】
しかしながら、プラスチック基板はガラス基板に比べて耐熱性に劣るという欠点を有する。例えば、パネル用プラスチック基板をフルカラーTFT型液晶パネルに適用する場合、その製造工程の制約から当該プラスチック基板は220℃程度の耐熱性が必要である。
【0004】
プラスチック材料としては、ポリメタクリル酸メチルに代表されるビニルポリマーやポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。しかしながら、ビニルポリマーやポリカーボネートは透明性が高いもののガラス転移温度が150℃以下と耐熱性に劣る。ポリエーテルスルホンは、透明性及び靭性に優れているもののガラス転移温度が220℃と耐熱性の点では十分に満足できるとは言えない。
【0005】
また、耐熱性に優れたプラスチック材料として、ポリイミド樹脂が挙げられる。一般にポリイミド樹脂の成形体は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを非プロトン性極性有機溶媒中で高分子量のポリイミド前駆体を調製し、膜状、フィルム状又はシート状に成形加工後に加熱等によりイミド化して得られる。
このような全芳香族ポリイミド樹脂は優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、機械的性質などの特性を併せ持つことから、フレキシブルプリント配線回路用基板、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。
しかしながら、一般に多用されている全芳香族ポリイミド樹脂は紫外領域から可視光領域にかけて強い電子吸収遷移を有するためフィルムの透明性が極端に低いという特性を有している。これは、ポリイミド鎖における芳香族基を通じた分子内共役及び分子内・分子間電荷移動相互作用によるものである(非特許文献1参照)。
【0006】
この対応策として、テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分のいずれか一方若しくは両方を非芳香族モノマーとすることが提案されている(特許文献1参照)。この方法により、前記分子内共役及び電荷移動相互作用が妨げられるので、紫外線領域から可視光領域におけるポリイミド樹脂の透明性の向上が期待される。
非芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’ ,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3c−カルボキシメチルシクロペンタンー1r,2c,4c−トリカルボン酸1,4:2,3−二無水物等が挙げられる。
しかしながら、これらモノマーはそれらのポリアミド酸の重合反応性が低いので、高分子量のポリイミド樹脂が得られにくい傾向がある。そのために、機械的強度が十分に得られない虞がある。
【0007】
他方、非芳香族ジアミンンとして脂肪族ジアミンを用いた場合、ポリイミド樹脂の耐熱性の低下を招く虞がある。
【0008】
更に、非芳香族ジアミンンとして脂環族ジアミンを用いた場合には、当該ポリイミド前駆体は、そのポリアミド酸の生成の初期段階で、先にアミン塩を形成して反応溶媒に対する溶解度が低下する。その為に、仕込みモル比に誤差が生じて、ポリアミド酸の重合度が上がりにくくなる。その結果、高分子量のポリイミド樹脂が得られにくくなる。又、そのままポリアミド酸の重合反応を続けても、反応溶媒に対するアミン塩の溶解度は低いので反応時間が長時間要し、生産性や再現性の低下を招くことがある。
例えば、ピロメリット酸二無水物とトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンからポリイミド前駆体を製造する場合、極めて強固なアミン塩を形成するのでポリイミド前駆体(ポリアミド酸)は全く生成しない。
このような現象は、脂肪族又は脂環族ジアミンの塩基性が芳香族ジアミンの塩基性に比べて極めて高いことに起因し、脂肪族又は脂環族ジアミンを用いた高分子量のポリイミド樹脂の製造の困難さに繋がる。
【0009】
上述した通り、現状ではフレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板としての要求特性である透明性、靭性及び耐熱性を同時に満足する材料は未だ知られていない。
【0010】
【非特許文献1】Prog. Polym. Sci., 26, 259 (2001)
【特許文献1】特開2000−204245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高透明性、高靭性及び高ガラス転移温度を有する新規なポリイミド共重合体及びそのワニス、ポリイミド前駆体及びそのワニス、並びにそれらを成形して得られるポリイミド成形体、更に該成形体からなるプラスチック基板及びその基板を備えた電気・電子部品を提供することである。
前記基板は、各種電子デバイスの電気絶縁膜やガラス基板代替用として、液晶ディスプレー用プラスチック基板、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用プラスチック基板、電子ペーパー用プラスチック基板、太陽電池用プラスチック基板、特にフレキシブルフィルム液晶ディスプレー用プラスチック基板に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を鑑み、鋭意研究をした結果、
(i)ピロメリット酸二無水物、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンをアミド化反応してポリイミド前駆体を製造する際、通常の挙動と異なり、当該アミン塩の形成が著しく抑制されて、高重合度のポリイミド前駆体が得られる。そして、高分子量のポリイミド共重合体が得られること、
(ii)高重合度のポリイミド前駆体が、生産性良く、低コストで製造することが可能であること、
(iii)前記前駆体をイミド化反応して得られたポリイミド共重合体は、高透明性、高靭性及び高ガラス転移温度を有すること、
(iv)該ポリイミド共重合体が、ガラス基板代替用として、電気絶縁膜やフレキシブルフィルム液晶ディスプレー用プラスチック基板に好適な材料であること
を見出し、更に検討を積み重ねて、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下の項目を提供する。
【0014】
(項1)ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンをイミド化反応して得られるポリイミド共重合体であって、
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとのモル比が5:95〜95:5であることを特徴とするポリイミド共重合体。
【0015】
(項2)一般式(1)
【化1】

で表される構造単位、
一般式(2)
【化2】

で表される構造単位、
一般式(3)
【化3】

で表される構造単位、及び
一般式(4)
【化4】

で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種を主な構造単位として含有し、且つ、一般式(1)で表される構造単位と一般式(3)で表される構造単位の合計と一般式(2)で表される構造単位と一般式(4)で表される構造単位の合計とのモル比が5:95〜95:5であることを特徴とするポリイミド共重合体。
【0016】
(項3)イミド化反応が、
反応溶媒存在下、ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンをアミド化反応してポリイミド前駆体を得、次いで、該前駆体溶液を加熱脱水若しくは脱水試薬によりイミド化する反応方法である上記項1又は項2に記載のポリイミド共重合体。
【0017】
(項4)上記ポリイミド前駆体が、固有粘度0.4dL/g以上のものである上記項3に記載のポリイミド共重合体。
【0018】
(項5)上記ポリイミド前駆体が、実質的にアミン塩類を含有していないものである上記項3又は項4に記載のポリイミド共重合体。
【0019】
(項6)ポリイミド共重合体が、ガラス転移温度300℃以上、400nmにおける光透過率50%以上及び破断伸び10%以上を有するものである上記項1〜5のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【0020】
(項7)ポリイミド共重合体が、ガラス転移温度300℃以上、400nmにおける光透過率80%以上、複屈折率0.01以下及び破断伸び10%以上を有するものである上記項1〜5のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【0021】
(項8)更に、ポリイミド共重合体が、カットオフ波長360nm以下、弾性率1.2GPa以上を有するものである上記項6又は項7に記載のポリイミド共重合体。
【0022】
(項9)上記項1〜8のいずれかに記載のポリイミド共重合体及び有機溶媒を含有するポリイミド共重合体ワニス。
【0023】
(項10)ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンとから得られるポリイミド前駆体であって、
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとのモル比が5:95〜95:5であることを特徴とするポリイミド前駆体。
【0024】
(項11)上記項10に記載のポリイミド前駆体及び有機溶媒を含有するポリイミド前駆体ワニス。
【0025】
(項12)上記項1〜8のいずれかに記載のポリイミド共重合体、上記項9に記載のポリイミド共重合体ワニス、上記項10に記載のポリイミド前駆体、又は上記項11に記載のポリイミド前駆体ワニスを成形して得られるポリイミド成形体。
【0026】
(項13)成形方法が、
(A)該ポリイミド共重合体ワニスを、膜状、フィルム状又はシート状に塗布若しくは成形した後、該ワニスから有機溶媒を除去して、ポリイミド成形体に成形する方法、又は
(B)該ポリイミド前駆体ワニスを、膜状、フィルム状又はシート状に塗布若しくは成形した後、該ワニスから有機溶媒を除去し、次いで加熱脱水若しくは脱水試薬によりイミド化して、ポリイミド成形体に成形する方法
である上記項12に記載のポリイミド成形体。
【0027】
(項14)ポリイミド成形体が、膜状、フィルム状又はシート状の形態である上記項12又は項13に記載のポリイミド成形体。
【0028】
(項15)上記項12〜14のいずれかに記載のポリイミド成形体からなるプラスチック基板。
【0029】
(項16)上記項15に記載のプラスチック基板を備えた電気・電子部品。
【0030】
(項17)電気・電子部品が、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパー、太陽電池、電気絶縁膜である上記項16に記載の電気・電子部品。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高透明性、高靭性及び高ガラス転移温度を有する新規なポリイミド共重合体が得られる。さらに該共重合体の原料モノマーのモル比を調整することにより、溶剤溶解性の高いポリイミド共重合体が得られる。
該成形体からなるプラスチック基板は、各種電子デバイスの電気絶縁膜やガラス基板代替用プラスチック基板として有用であり、フレキシブルフィルム液晶ディスプレー用プラスチック基板等に応用することができる。
又、本発明によれば、高重合度のポリイミド前駆体が得られ、その前駆体は貯蔵安定性に優れる。さらにアミン塩の形成が著しく抑制されるので、前駆体の生産性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ポリイミド共重合体
本発明のポリイミド共重合体は、ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンをイミド化反応して得られるポリイミド共重合体であって、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとのモル比が5:95〜95:5であることを特徴とする。
【0033】
本発明に係るピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)は、本発明の効果を損なわない限り、従来公知の製造方法で得られるものが使用でき、又市販品を使用することもできる。
ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)の純度は高純度であることが好ましく、具体的には好ましくは99重量%以上、より好ましくは99.5重量%以上が推奨される。不純物として当該無水物の有水酸が含有していても良いが、本ポリイミド共重合体がポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を経由して製造される場合、その含有量は1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下が推奨される。
【0034】
ピロメリット酸二無水物と9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)との使用比率は、ピロメリット酸二無水物と9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライドとのモル比が、好ましくは100:0〜50:50であり、より好ましくは100:0〜60:40、特に100:0〜80:20である。
ピロメリット酸二無水物に9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)が併用されている場合、ポリイミド共重合体の溶剤溶解性が向上する。
【0035】
本発明において、ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の芳香族テトラカルボン酸二無水物を併用することができる。
【0036】
例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらは、共重合成分として単独で又は2種以上を適宜組み合わせて併用することができる。
【0037】
他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の使用量は、通常、ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)を含む全ての酸二無水物のモル数に対して、好ましくは40モル%以下、より好ましくは20モル%以下、特に10モル%以下が推奨される。
【0038】
本発明に係る4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンは、本発明の効果を損なわない限り、従来公知の製造方法で得られるものが使用でき、また市販品を使用することもできる。
前記ジアミンの純度は高純度であることが好ましく、具体的には99%以上、好ましくは99.5%以上が推奨される。
【0039】
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとの使用比率は、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとのモル比が5:95〜95:5であり、好ましくは40:60〜95:5である。
ポリイミド共重合体の有機溶媒への溶解性を重視する場合、好ましくは5:95〜80:20、特に40:60〜80:20が推奨される。また、ポリイミド共重合体の靭性を重視する場合、好ましくは40:60〜95:5、より好ましくは60:40〜95:5、特に65:35〜90:10が推奨される。
【0040】
本発明において、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンの他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンを併用することができる。
【0041】
例えば、脂肪族ジアミンとしては、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等、
【0042】
芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が挙げられる。これらは、ポリイミドの共重合成分として単独で又は2種以上を適宜組み合わせて併用することができる。
【0043】
他の脂肪族ジアミン及び芳香族ジアミンの使用量は、通常、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンを含む全てのジアミンのモル数に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、特に5モル%以下が推奨される。
【0044】
本発明のポリイミド共重合体は、上記一般式(1)〜(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種を主な構造単位として含有し、且つ、一般式(1)で表される構造単位と一般式(3)で表される構造単位の合計と、一般式(2)で表される構造単位と一般式(4)で表される構造単位の合計とのモル比が5:95〜95:5であり、好ましくは40:60〜95:5であるポリイミド共重合体を包含する。
【0045】
本発明のポリイミド共重合体のガラス転移温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは320℃以上である。
前記ガラス転移温度が300℃以上の場合、液晶ディスプレー等の作製時に要求される短期耐熱性としては十分な特性である。
【0046】
本発明のポリイミド共重合体の400nmにおける光透過率は、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、特に85%以上である。
【0047】
本発明のポリイミド共重合体のカットオフ波長は、好ましくは360nm以下、より好ましくは350nm以下である。
【0048】
本発明のポリイミド共重合体の複屈折率は、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.008以下である。
【0049】
本発明のポリイミド共重合体の弾性率は、好ましくは1.2GPa以上、より好ましくは1.6GPa以上である。
【0050】
本発明のポリイミド共重合体の破断伸びは、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さら好ましくは40%以上、特に50%以上である。
【0051】
本発明のポリイミド共重合体の線熱膨張係数は、好ましくは60ppm/K以下、より好ましくは55ppm/K以下である。
【0052】
所望の目的・用途によって、ポリイミド共重合体の原料モノマーのモル比を調整してポリイミド共重合体の物性のバランスを図ることが推奨される。
例えば、本発明のポリイミド共重合体をガラス基板代替用プラスチック基板用途に使用する場合、ポリイミド共重合体のガラス転移温度300℃以上、400nmにおける光透過率50%以上、好ましくは80%以上、及び破断伸び10%以上、好ましくは30%以上が推奨され、その上に複屈折率0.01以下及び/又はカットオフ波長360nm以下、弾性率1.2GPa以上が好ましい。
【0053】
ポリイミド共重合体の製造方法
本発明に係るイミド化反応は、特に限定はなく、従来公知のイミド化方法が使用できる。例えば、(i)反応溶媒存在下、当該テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分を直接高温下で加熱脱水又は脱水試薬によりイミド化反応を方法、(ii)反応溶媒存在下、当該テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分をアミド化反応させて、高重合度のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を得た後、次いで、該前駆体を加熱脱水又は脱水剤によりイミド化反応を行う方法などが挙げられる。高分子量のポリイミド共重合体を得やすいことから、前記(ii)の方法が推奨される。
本ポリイミド共重合体が電子・電気部品材料に使用される場合、塩素成分を発生させる虞があるイミド化方法は避けることが好ましい。これは、ポリイミド共重合体に残留する痕跡量の塩素成分などが金属部材を腐食する虞があるからである。
尚、本特許請求の範囲及び明細書における「酸二無水物」とは、文字通りの酸二無水物の他にその有水酸であるテトラカルボン酸、該テトラカルボン酸の酸塩化物、該テトラカルボン酸と炭素数1〜4の低級アルコールとのエステル等の誘導体等を包含する。これら化合物は、単独で又は2種を混合して使用することができる。特に、上記(ii)のイミド化反応を考慮すれば、「酸二無水物」は文字通りのテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。
【0054】
上記(i)のイミド化反応の具体的な手順としては、例えば、所定量の4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)およびイソホロンジアミンを反応溶媒に溶解し、次に所定量のピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)を徐々に添加後、メカニカルスターラーで撹拌しながら、反応温度を上げて、好ましくは150℃〜400℃、より好ましくは180℃〜350℃で、直接加熱脱水してイミド化反応させるか又は脱水試薬と反応させて化学的にイミド化させる。
【0055】
上記(ii)のイミド化反応の具体的な手順としては、例えば、所定量の4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)およびイソホロンジアミンを反応溶媒に溶解し、次に所定量のピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用いて、室温で1〜72時間攪拌して、ポリイミド前駆体ワニスを製造する。次に、好ましくは150℃〜400℃、より好ましくは180℃〜350℃で加熱脱水してイミド化反応させるか又は脱水試薬と反応させて化学的にイミド化させる。所望の目的・用途に応じて、該前駆体ワニスは成形を施した後にイミド化させても良い。
【0056】
本発明に係るイミド化反応における、ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)を含む全ての酸二無水物のモル数と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンを含む全ジアミンのモル数との比率は、好ましくは1:0.9〜1.1、より好ましくは1:0.95〜1.05、特に1:0.98〜1.02が推奨される。
【0057】
上記反応溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホオキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン-ビス(2−メトキシエチル)エーテル、テロラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のプロトン性溶媒が使用可能である。これらは、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0058】
ポリイミド前駆体ワニス
本発明のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)は、ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンをアミド化反応して得られるポリイミド前駆体であって、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとのモル比が5:95〜95:5、好ましくは40:60〜95:5であることを特徴とする。
【0059】
本発明のポリイミド前駆体の固有粘度は、好ましくは0.4dL/g以上、より好ましくは1.0dL/g以上である。0.4dL/g未満では製膜性が悪くなる傾向があり、キャスト膜にひび割れ等が生じる虞がある。
【0060】
本発明のポリイミド前駆体は、イミド化反応の観点から、実質的にアミン塩類を含有していないものが好ましい。
【0061】
本発明のポリイミド前駆体ワニスは、前記ポリイミド前駆体及び有機溶媒を含有するものである。該有機溶媒は、上記反応溶媒と同じ種類のものであり、ポリイミド前駆体の製造の際に使用する反応溶媒と同じものとすることで溶媒置換などの煩雑な操作が不要となり好ましい。
【0062】
ポリイミド前駆体若しくはポリイミド前駆体ワニスは、上記(ii)のイミド化反応で述べた製造方法で、容易に得ることができる。その時のモノマー濃度は、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%である。このモノマー濃度の範囲で重合を行うことにより、より均一で高重合度のポリイミド前駆体ワニスを得ることができる。モノマー濃度5重量%未満で重合を行う場合、ポリアミド酸の重合度が十分高くならず、最終的に得られるポリイミド共重合体が脆弱になる虞がある。また、モノマー濃度30重量%を越えて重合反応を行う場合、本発明ではアミン塩類の形成が著しく抑制されているものの、少量形成されるアミン塩類が溶解、消失するまでにより長い反応時間を必要とし、生産性が低下する虞がある。
【0063】
ポリイミド共重合体ワニス
本発明のポリイミド共重合体ワニスは、本発明のポリイミド共重合体及び有機溶媒を含有するものである。本発明のポリイミド共重合体ワニスは、上記のポリイミド共重合を単体で得た後に所望の有機溶媒に溶解させるか、或いはポリイミド共重合体の製造時に使用する反応溶媒をそのままワニス用の有機溶媒として使用することにより、容易に得ることができる。該有機溶媒は、ポリイミド共重合体を製造時の反応溶媒と同じものとすることで溶媒置換などの煩雑な操作が不要となり好ましい。
【0064】
ポリイミド成形体及びプラスチック基板
ポリイミド成形体は、本発明のポリイミド共重合体ワニス(又はポリイミド共重合体)、ポリイミド前駆体ワニス(又はポリイミド前駆体)を成形して得られる。成形する方法としては、特に制限なく従来公知の方法が使用できる。
例えば、(A)該ポリイミド共重合体ワニスを、膜状、フィルム状又はシート状に塗布若しくは成形した後、該ワニスから有機溶媒を除去して、膜状、フィルム状又はシート状のポリイミド成形体に成形する方法、(B)該ポリイミド前駆体ワニスを、膜状、フィルム状又はシート状に塗布若しくは成形した後、該ワニスから有機溶媒を除去し、次いで加熱脱水若しくは脱水試薬によりイミド化して、膜状、フィルム状又はシート状のポリイミド成形体に成形する方法などが例示される。
【0065】
本発明のプラスチック基板は、上記ポリイミド成形体からなることを特徴とする。該プラスチック基板の製造方法は、所望のプラスチック基板が得られれば特に限定されない。
例えば、支持基板上に膜状にポリイミド前駆体ワニスを塗布し、それを50℃〜150℃で乾燥する。この膜を支持基板上で200℃〜400℃、好ましくは250℃〜350℃の温度で処理することにより加熱脱水させて、フィルム状のガラス基板代替用プラスチック基板が得られる。これは、前記のポリイミド成形体の製造方法の例示でもある。
加熱脱水を行う温度が、400℃を越えるとポリイミド共重合体は著しく着色する虞がある。該着色を抑制するために、加熱脱水によりイミド化させる場合には真空中又は窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことが推奨される。比較的低温で前記処理を行う場合には空気中で行っても、比較的着色が抑制される傾向がある。また、イミド化反応は、加熱脱水による方法の他に脱水試薬を用いて化学的に行うこともできる。
【0066】
本発明のポリイミド共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて酸化安定剤、末端封止剤、フィラー、シランカップリング剤、架橋剤、感光剤、光重合開始剤および増感剤等の添加物が混合されていても差し支えない。
【0067】
かくして得られた本発明のプラスチック基板は、電気・電子部品分野で使用されている、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用、電子デバイスの電気絶縁膜用などのガラス基板代替用プラスチック基板として好適に用いることができる。
また、本発明のポリイミド共重合体は、ガラス基板代替用プラスチック基板の他に、光学材料、太陽電池パネル等の保護フィルム、光導波路など種々の用途に使用できる。
【実施例】
【0068】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、これに限定されるものではない。尚、各実施例及び比較例における分析値は以下の方法により求めた。
【0069】
固有粘度
30℃でオストワルド粘度計を用いて、0.5重量%ポリイミド前駆体ワニスの30℃における固有粘度(dL/g)を求めた。
【0070】
ポリイミド前駆体ワニスの貯蔵安定性
−20℃及び室温で、ポリイミド前駆体ワニスを30日間貯蔵して、貯蔵安定性試験前後の外観の変化(例えば沈殿、増粘、ゲル化)を、下記の判定基準で貯蔵安定性を目視で判定した。
◎:変化無し。
○:極微少の変化(微白濁、沈殿等)が認められた。
△:微量の沈殿や僅かな増粘が認められた。
×:沈殿やゲル化が認められた。
【0071】
ガラス転移温度
動的粘弾性測定装置(機種名:TMA4010、マックサイエンス社製)を用いて、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分の条件下で測定して損失ピークを求め、その値からガラス転移温度(℃)を求めた。
【0072】
線熱膨張係数
動的粘弾性測定装置(機種名:TMA4010、マックサイエンス社製)を用いて、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分の条件下で測定して得られた試験片の伸びから、測定温度100〜200℃の範囲における平均値として線熱膨張係数(ppm/K)を求めた。
【0073】
光透過率(透明性)
紫外可視分光光度計V−520(日本分光(株)製)を用いて、400nmにおける光透過率(%)を測定した。光透過率が高い程、透明性が良好であることを意味する。
【0074】
カットオフ波長(透明性)
紫外可視分光光度計V−520(日本分光(株)製)を用いて、200〜900nmの紫外線領域から可視光領域の光透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長をカットオフ波長(nm)と定義し、透明性の評価の一つの指標とした。カットオフ波長が短い程、透明性が良好であることを意味する。
【0075】
複屈折率
屈折計(機種:アッベ屈折計4T、(株)アタゴ社製)を用いて、複屈折率を測定した。複屈折率の値が小さい程、光学材料としての性能が高いことを意味する。
【0076】
弾性率、破断伸び
引張試験機(機種名:テンシロンUTM−II、東洋ボールドウィン社製)を用いて、延伸速度8mm/分の条件下で試験片(3mm×30mm)の引張り試験を行った。得られた応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率(GPa)を、試験片が破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高い程、試験片の靭性が高いことを意味する。
【0077】
溶剤溶解性
サンプル0.1gをm−クレゾール又はN−メチル−2−ピロリドン10gに添加して70℃で溶解させ、下記の判定基準で溶剤溶解性を目視で判定した。
◎:完全に溶解した。
○:殆ど溶解した。
△:完全に溶解はしないが、脆化した状態となった。
×:溶解しなかった。
【0078】
(実施例1)
十分に乾燥させた攪拌機付密閉反応容器中に4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(9.5mmol)およびイソホロンジアミン(0.5mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、この溶液にピロメリット酸二無水物粉末(10mmol)を徐々に加え、室温で2時間撹拌し透明で粘稠なポリイミド前駆体ワニス(モノマー濃度:13重量%)を得た。
このポリイミド前駆体ワニスの貯蔵安定性の評価結果及び固有粘度の測定結果を表1に示した。
次に、そのポリイミド前駆体ワニスをガラス支持基板に塗布して膜状に成形し、60℃、1時間で乾燥して膜状のポリイミド前駆体を得た。そのポリイミド前駆体を支持基板で、減圧下200℃で30分、250℃で30分、更に300℃で1時間と段階的に加熱温度を変えて加熱脱水させてイミド化反応を行い、本発明の膜厚20μmの膜状のポリイミド共重合体(ポリイミド成形体)を得た。
残留歪を除去するために、支持基板からポリイミド共重合体を剥がし、更に310℃で1時間アニーリング処理した。得られたフィルム状のポリイミド共重合体の各物性値(ガラス転移温度、カットオフ波長、光透過率、弾性率、破断伸び、複屈折率、線熱膨張係数、溶剤溶解性)の測定結果を表1に示した。
【0079】
(実施例2〜7)
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)およびイソホロンジアミンの使用量を表1に記載した使用量に変えた他は実施例1と同様に行って、本発明のポリイミド前駆体ワニスを得た。得られたポリイミド前駆体ワニスの貯蔵安定性の評価結果及び固有粘度の測定結果を表1に示した。
更に、実施例1と同様に行って、本発明のポリイミド共重合体(ポリイミド成形体)を得た。得られたポリイミド共重合体の各物性値の測定結果を表1に示した。
【0080】
(比較例1)
ジアミン成分である4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)およびイソホロンジアミンを、ジアミン成分として4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)のみに代えた他は実施例1と同様に行って、本発明外のポリイミド前駆体ワニスを得た。
該ポリイミド前駆体ワニスの製造過程で、その反応初期にアミン塩類が析出した。N,N−ジメチルアセトアミドに対するそのアミン塩類の溶解度が著しく低い為、均一なポリイミド前駆体ワニス溶液が得られるまで48時間の反応時間を要した。
得られたポリイミド前駆体ワニスの貯蔵安定性の評価結果及び固有粘度の測定結果を表1に示した。
更に、実施例1と同様に行って、本発明外のポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂フィルムの各物性値の測定結果を表1に示した。
【0081】
(比較例2)
ジアミン成分である4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)およびイソホロンジアミンを、ジアミン成分としてイソホロンジアミンのみに代えた他は実施例1と同様に行って、本発明外のポリイミド前駆体ワニスを得た。得られたポリイミド前駆体ワニスの貯蔵安定性の評価結果及び固有粘度の測定結果を表1に示した。
更に、実施例1と同様にイミド化反応を行ったが、膜中に細かい亀裂が生じて、ポリイミド樹脂フィルムを得ることができなかった。
【0082】
(比較例3)
ジアミン成分である4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)およびイソホロンジアミンを、ジアミン成分としてトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンのみに代えた他は実施例1と同様に行った。
しかしながら、ポリイミド前駆体ワニスの製造過程で、その反応初期にアミン塩類が析出した。このアミン塩類が、如何なる条件下でもN,N−ジメチルアセトアミドに溶解しなく、ポリアミド酸の重合反応は全く進行しなかった。
【0083】
【表1】

【0084】
表1から明らかなように、本ポリイミド共重合体(ポリイミド性成形体)は、ガラス基板代替用としてプラスチック基板に必要な特性を満足している。
また、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとを組み合わせることで、アミン塩類の副生が抑制され、高重合度のポリアミド酸を製造でき、且つ、その反応時間が著しく短縮されており、目的の特性を有したポリイミド樹脂を効率よく生産できる可能性を示している。
【0085】
(実施例8)
ポリイミド共重合体の原料の仕込み量を、ピロメリット酸二無水物:9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)=70:30及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン):イソホロンジアミン=70:30のモル比とした他は実施例1と同様に行って、本発明のポリイミド前駆体ワニスを得た。得られたポリイミド前駆体ワニスの貯蔵安定性の評価結果及び固有粘度の測定結果を表2に示した。
更に、実施例1と同様に行って、本発明のポリイミド共重合体(ポリイミド成形体)を得た。得られたポリイミド共重合体の各物性値の測定結果を表2に示した。
得られたポリイミド膜(ポリイミド成形体)は透明であり、180°折り曲げ試験により、破断せず可撓性を示した。またN−メチル−2−ピロリドン等の汎用溶媒に溶解性を示し、溶解性が大きく改善された。これはポリイミド主鎖中に嵩高い立体構造を持つフルオレニル基を含有するためである。
【0086】
(実施例9)
ポリイミド共重合体の原料の仕込み量を、ピロメリット酸二無水物:9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)=60:40及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン):イソホロンジアミン=80:20のモル比とした他は実施例1と同様に行って、本発明のポリイミド前駆体ワニスを得た。得られたポリイミド前駆体ワニスの貯蔵安定性の評価結果及び固有粘度の測定結果を表2に示した。
更に、実施例1と同様に行って、本発明のポリイミド共重合体(ポリイミド成形体)を得た。得られたポリイミド共重合体の各物性値の測定結果を表2に示した。
得られたポリイミド膜(ポリイミド成形体)は透明であり、180°折り曲げ試験により、破断せず可撓性を示した。またN−メチル−2−ピロリドン等の汎用溶媒に溶解性を示し、溶解性が大きく改善された。これはポリイミド主鎖中に嵩高い立体構造を持つフルオレニル基を含有するためである。
【0087】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリイミド共重合体は、電気・電子部品分野で使用されているガラス基板の代替用としてのプラスチック基板の材料として有用であり、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用などのガラス基板代替用プラスチック基板、電子デバイスの電気絶縁膜、光学材料、太陽電池パネル等の保護フィルム、光導波路など種々の用途に使用できる。特に、本発明のポリイミド共重合体の特性でもある高い靭性を有しているので、特にフレキシブルフィルムとしての応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】ポリイミド前駆体の赤外スペクトルのチャートである。(実施例8)
【図2】ポリイミド共重合体の赤外スペクトルのチャートである。(実施例8)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンをイミド化反応して得られるポリイミド共重合体であって、
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとのモル比が5:95〜95:5であることを特徴とするポリイミド共重合体。
【請求項2】
一般式(1)
【化1】

で表される構造単位、
一般式(2)
【化2】

で表される構造単位、
一般式(3)
【化3】

で表される構造単位、及び
一般式(4)
【化4】

で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種を主な構造単位として含有し、且つ、一般式(1)で表される構造単位と一般式(3)で表される構造単位の合計と一般式(2)で表される構造単位と一般式(4)で表される構造単位の合計とのモル比が5:95〜95:5であることを特徴とするポリイミド共重合体。
【請求項3】
ポリイミド共重合体が、ガラス転移温度300℃以上、400nmにおける光透過率50%以上及び破断伸び10%以上を有するものである請求項1又は請求項2に記載のポリイミド共重合体。
【請求項4】
ポリイミド共重合体が、ガラス転移温度300℃以上、400nmにおける光透過率80%以上、複屈折率0.01以下及び破断伸び10%以上を有するものである請求項1又は請求項2に記載のポリイミド共重合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド共重合体及び有機溶媒を含有するポリイミド共重合体ワニス。
【請求項6】
ピロメリット酸二無水物及び9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン−ビス(トリメリテート アンハイドライド)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及びイソホロンジアミンとから得られるポリイミド前駆体であって、
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)とイソホロンジアミンとのモル比が5:95〜95:5であることを特徴とするポリイミド前駆体。
【請求項7】
請求項6に記載のポリイミド前駆体及び有機溶媒を含有するポリイミド前駆体ワニス。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド共重合体、請求項5に記載のポリイミド共重合体ワニス、請求項6に記載のポリイミド前駆体、又は請求項7に記載のポリイミド前駆体ワニスを成形して得られるポリイミド成形体。
【請求項9】
ポリイミド成形体が、膜状、フィルム状又はシート状の形態である請求項8に記載のポリイミド成形体。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のポリイミド成形体からなるプラスチック基板。
【請求項11】
請求項10に記載のプラスチック基板を備えた電気・電子部品。
【請求項12】
電気・電子部品が、液晶ディスプレー、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパー、太陽電池又は電気絶縁膜である請求項11に記載の電気・電子部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−336009(P2006−336009A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128325(P2006−128325)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】