説明

新規な樹脂被覆金属顔料

【課題】光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの色調低下が少なく、かつ密着性、耐薬品性に優れたメタリック塗膜を与えることができる新規な樹脂被覆金属顔料を提供する。
【解決手段】金属顔料100重量部に対して0.1〜50重量部の樹脂が前記金属顔料の表面に付着している樹脂被覆金属顔料であって、前記樹脂被覆金属顔料の粒子の平均粒径と樹脂被覆前の金属顔料の粒子の平均粒径との差が0より大きく5μm以下である、樹脂被覆金属顔料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な樹脂被覆金属顔料に関し、さらに詳しくは、塗料用顔料として使用したとき、これまでにない優れた金属光沢、意匠性を維持しながら密着性、耐薬品性においても優れたメタリック塗膜を与える金属顔料に関するものである。
また、上記金属顔料、塗料用樹脂、および希釈剤からなる新規なメタリック塗料、さらにこれまでにない優れた金属光沢、意匠性を維持しながら密着性、耐薬品性においても優れたメタリック塗膜を与える塗料及びメタリックインキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からメタリック塗料用、印刷インキ用、プラスチック練り込み用等に、メタリック感を重視する美粧効果を得る目的で金属顔料が使用されている。ただし、表面に何らの処理も施していないアルミニウム顔料は、金属感や意匠性が高い反面、塗料及び印刷インキの樹脂系によっては塗膜中での樹脂との密着性が劣るため、セロハンテープ剥離による密着性試験を行った場合に多量に剥離してしまうこと、また、薬品に対する保護機能もないことという欠点を有していた。
【0003】
これはアルミニウム顔料表面と塗料及び印刷インキ樹脂との相溶性、濡れ性が不十分であるためと考えられるが、この改善策として、アルミニウム顔料の表面処理を行う方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、アルミニウム顔料であるフレーク状アルミニウム粉末、またはフレーク状アルミニウム粉末のペーストを有機溶媒中に分散し、はじめにラジカル重合性不飽和カルボン酸等を吸着せしめ、次いでラジカル重合性二重結合を3個以上有する単量体から生成される重合体によって表面被覆する方法が提案されている。しかしこの方法は、密着性は改善されるもののメタリック塗膜の耐薬品性実現を本来の主な目的としているため、被覆させる単量体を相当量添加することが必要となり、このとき同時に金属感の低下をもたらし、意匠性が著しく低下してしまうという問題点を有している。
【0005】
特許文献2には、樹脂被覆金属顔料の色調低下を防止し、かつ更に耐薬品性、耐候性を改良するために、表面被覆の方法を改良し、均一で高度に三次元架橋した被覆膜を形成させる方法が提案されている。しかしこの方法でも、金属感、意匠性の低下はある程度改善されるものの、表面被覆処理を施していない金属顔料の色調よりはかなり劣り、十分でない。
【0006】
また、最近特に高意匠性が求められている平均粒径が10μm以下の領域では、樹脂被覆処理後の平均粒径が処理前と比較して著しく大きくなり、塗膜にしたときの光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの色調が著しく低下してしまうという問題点を有している。
【0007】
【特許文献1】特公平1−49746号公報
【特許文献2】国際公開公報WO96/38506
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を排除した新規な樹脂被覆金属顔料を提供すること、すなわち、樹脂被覆したことによる光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの色調低下が少なく、かつ優れた密着性、耐薬品性を有する新規な樹脂被覆金属顔料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来検討されたことのない樹脂被覆処理中に振動および超音波照射といった外的作用を付加することにより優れた色調、密着性、耐薬品性とを兼ね備えた新規な樹脂被覆金属顔料を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の通りである。
【0010】
(1)金属顔料100重量部に対して0.1〜50重量部の樹脂が前記金属顔料の表面に付着している樹脂被覆金属顔料であって、前記樹脂被覆金属顔料の粒子の平均粒径と樹脂被覆前の金属顔料の粒子の平均粒径との差が0より大きく5μm以下である、樹脂被覆金属顔料。
(2)前記樹脂被覆金属顔料中の、(A)2個以上の一次粒子で形成されている粒子凝集体の粒子数と(B)凝集していない一次粒子の粒子数との関係、B/(A+B)が0.3〜1である、(1)に記載の樹脂被覆金属顔料。
(3)前記樹脂被覆金属顔料の製造における樹脂被覆処理中に、振動的外的作用を付加することを特徴とする(1)又は(2)に記載の樹脂被覆金属顔料。
(4)前記樹脂被覆金属顔料の製造における樹脂被覆処理中に、超音波による振動処理を付加することを特徴とする(1)から(3)のいずれか一つに記載の樹脂被覆金属顔料。
(5)(1)から(4)のいずれか一つに記載の樹脂被覆金属顔料を含有するメタリック塗料組成物。
(6)(1)から(4)のいずれか一つに記載の樹脂被覆金属顔料を含有するメタリックインキ組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂被覆金属顔料は、樹脂被覆処理中に振動および超音波照射といった外的作用を付加することにより得られた、優れた色調、密着性、耐薬品性とを兼ね備えた新規な樹脂被覆金属顔料である。本発明の樹脂被覆金属顔料を、塗料に用いた場合、色調は、樹脂被覆前の金属顔料を用いた場合の色調とほとんど変わらず、かつ、密着性、耐薬品に優れた塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0013】
樹脂被覆金属顔料の製造方法は、溶剤中に金属顔料粒子を分散させ、振動的外的作用を付加しながら、分子内に一個以上の二重結合を有する単量体及び/又はオリゴマーを加え、さらに重合開始剤を加えて重合反応を行い、樹脂を金属顔料粒子の表面に被覆させることからなる。重合反応条件は50℃〜150℃の温度で5分〜12時間の間で行うことが望ましい。重合効率を高めるために窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で重合することが望ましい。重合終了は有機溶剤を濾別し、不揮発分を20〜80%に調整し、必要に応じて他の溶剤、添加剤などを加えてペースト状にしてもよい。
【0014】
本発明に用いる金属顔料としては、アルミニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、ニッケル、のような卑金属粉末、及びそれらの合金粉末を用いることが好ましい。特に好適なのはメタリック用顔料として多用されているアルミニウム粉末である。本発明に用いるアルミニウム粉末としては、表面光沢性、白度、光輝性等メタリック用顔料に要求される表面性状、粒径、形状を有するものが適している。形状としては、粒状、板状、塊状、鱗片状、などの種々の形状がありうるが、塗膜に優れたメタリック感、輝度を与えるためには、鱗片状であることが好ましい。例えば、0.001から1μmの範囲の厚さを有し、1から100μmの範囲の長さまたは幅を有するものが好ましい。アスペクト比は、10から20000の範囲にあることが好ましい。ここで、アスペクト比とは、鱗片状アルミニウム粉末の平均長径をアルミニウム粉末の平均厚さで割った値である。また、アルミニウム粉末の純度は特に限定するものではないが、塗料用として用いられているものは純度99.5%以上である。アルミニウム粉末は、通常ペースト状態で市販されており、これを用いるのが好ましい。
【0015】
本発明に用いる樹脂は、分子内に一個以上の二重結合を有する単量体及び/又はオリゴマーを重合反応させて得られるものであることが好ましい。
【0016】
上記の一個以上の二重結合を有する単量体としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロトン酸、マレイン酸または無水マレイン酸)、リン酸またはホスホン酸のモノ、またはジエステル(例えば2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジ−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、トリ−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジ−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、トリ−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルホスフェート、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネート、2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、2−アクロイロキシエチルホスフェート)、カップリング剤(例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、ジルコアルミネート)、不飽和カルボン酸のニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)、または不飽和カルボン酸のエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸シクロヘキシル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールペンタアクリレートモノプロピオネート、トリアクリルホルマール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル)、などを好適に使用できる。
【0017】
さらには、環式不飽和化合物(例えば、シクロヘキセン)や、芳香族系不飽和化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、シクロヘキセンビニルモノオキシド、ジビニルベンゼンモノオキシド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アリルベンゼンまたはジアリルベンゼン)も好適に使用できる。
【0018】
分子内に一個以上の二重結合を有するオリゴマーとしては、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、アクリル変性ポリエステル、アクリル変性ポリエーテル、アクリル変性ウレタン、アクリル変性エポキシ、アクリル変性スピラン等が挙げられ、その一種または二種以上を混合して使用することができる。
【0019】
本発明における二重結合を一個以上有する単量体及び/又はオリゴマーの使用量は、金属顔料の金属分100重量部に対して0.1重量部から50重量部であることが好ましい。
【0020】
金属顔料を有機溶剤中に分散させるのに使用する有機溶剤は、金属顔料に対して不活性であればよく、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤中の金属顔料の濃度は0.1〜40重量%が好ましく、更に好ましくは1〜35重量%である。金属顔料への樹脂被覆を効率的に行う点において、有機溶剤中の金属顔料の濃度は0.1重量%以上であることが好ましい。また、金属顔料の分散状態を均一に保つ点において、有機溶剤中の金属顔料の濃度は40重量%未満であることが好ましい。
【0021】
本発明に用いられる重合開始剤は、一般にラジカル発生剤として知られるものであり、その種類は特に制限されない。重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキサイド類、および2,2′−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用量は、重合性モノマーの反応速度によってそれぞれ調整されるため特に限定されないが、金属顔料100重量部に対して、0.1重量部〜25重量部であるのが好ましい。
【0022】
本発明における樹脂被覆金属顔料を製造する際には、外的作用としてせん断的外的作用と振動的外的作用との併用が重要である。せん断的外的作用とは、金属顔料を溶媒中に分散させる際に、及びその分散液に単量体を添加する際に、高いせん断力を付加して物理的分散を促進する作用をいい、そのための方法としては、たとえばディスパーを用いて金属顔料や単量体を分散させる方法がある。振動的外的作用とは、振動発性装置や超音波発生装置などを用いて、上記分散液や重合反応中の混合溶液を、機械的に強力に振動させ、物理的分散を促進する作用のことである。
【0023】
本発明における振動的外的作用の付加の態様としては、重合反応中に間欠的に付加する態様、重合反応中に連続的に付加する態様、重合反応中に間欠的付加と連続的付加を組み合わせる態様、などの種々の態様をとることができる。
【0024】
また、本発明の製造方法において、振動的外的作用の付加方法は、振動の付加および超音波の照射が振動発生装置および超音波振動子からの外的作用を間接的に反応器に付加する方法、反応器内の処理分散液に直接的に付加する方法、外部循環型容器に処理分散液を循環させてその外部循環型容器に間接的または直接的に振動的外的作用を付加する方法等がある。
【0025】
本発明に使用される振動発生装置等による外的作用の振動は、周波数10Hz〜24kHzであることが好ましい。
【0026】
本発明に使用される外的作用の超音波は弾性体を伝わる弾性振動の一種であり、通常は波の進行方向に圧縮、膨張が伝わる縦波であるが、反応器壁およびその接触面等においては横波が存在することもある。なお、直接聞くことを目的としない音波も技術的な定義として超音波に含まれ、また、液体や固体の表面や内部を伝わる音波も全て超音波に含まれる。超音波としては、周波数15〜10000kHzで、出力5W以上が好ましく使用され得る。
【0027】
本発明の製造方法によって得られる樹脂被覆金属顔料は樹脂被覆前の金属顔料と比べて塗膜の光輝性および隠蔽性の低下がほとんどないことが特徴である。これは、金属顔料粒子のこれまでにない好適な分散状態下では、金属顔料粒子の表面に、樹脂をより一層均一に被覆させることできるためと考えられる。
【0028】
本発明の金属顔料を含有するメタリック塗料及びメタリックインキは、溶剤型、水性型等、何れの形態でも使用可能である。
また、このメタリック塗料及びメタリックインキは主として3つの基本成分、即ち(a)塗料用樹脂、(b)樹脂被覆金属顔料、(c)希釈剤から適宜選択して作製すればよい。
【0029】
溶剤型塗料及びインキで使用する塗料用樹脂としては、従来メタリック塗料及びメタリックインキで用いられている塗料用樹脂の中の任意のものを用いることができる。その樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし混合して用いてもよい。
【0030】
溶剤型塗料及びインキとして使用する場合の本発明の金属顔料の使用量は、塗料用樹脂100重量部に対して0.1重量部〜300重量部であることが好ましく、更に0.2重量部〜200重量部用いることが好ましい。このアルミニウム顔料が0.1重量部未満であると、メタリック塗料及びメタリックインキとして必要な金属光沢が不十分であり、また、300重量部を越えて用いると、塗料及びインキ中の金属顔料の量が多くなり過ぎて、塗装及び印刷作業性が悪くなり、かつ、塗膜物性も劣り実用的でない。
【0031】
溶剤型塗料及びインキにおいて使用できる希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系化合物、エタノール、プタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、トリクロロエチレン等の塩素化合物、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類が挙げられ、これらの希釈剤は単独または二種以上混合して使用できる。その組成は塗料用及びインキ用樹脂に対する溶解性、塗膜形成特性、塗装作業性等を考慮して適宜決定すればよい。
【0032】
さらに、メタリック塗料及びメタリックインキには、塗料業界で一般に使用されている顔料、染料、湿潤剤、分散剤、色分れ防止剤、レベリング剤、スリップ剤、皮張り防止剤、ゲル化防止剤、消泡剤等の添加剤を加えることができる。
【0033】
また、金属顔料及びメタリックインキは水性塗料用樹脂を用いることにより水性型塗料としても使用可能である。ただし、本発明の金属顔料が水性型塗料及びインキ中で水と反応するような場合には、反応阻害の添加が必要となる。ここで水性型塗料及びインキ用樹脂とは、水溶性樹脂または水分散性樹脂であって、これらの単独または混合物であってもよい。その種類は目的、用途により千差万別であり、特に限定されるものではないが、塗料用では、一般にはアクリル系、アクリル−メラミン系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の水性塗料用樹脂が挙げられる。
【0034】
水性型塗料及びインキに使用される本発明の樹脂被覆金属顔料は、塗料用樹脂100重量部に対して0.1重量部〜300重量部である。特に0.2重量部〜200重量部用いることが好ましい。この樹脂被覆金属顔料が0.1重量部未満であると、メタリック塗料及びメタリックインキとして必要な金属光沢が不十分であり、また、300重量部を越えて用いると、塗料及びインキ中の金属顔料の量が多くなり過ぎて、塗装作業及び印刷作業性が悪くなり、かつ、塗膜物性も劣り実用的でない。
【0035】
また、当該分野に於いて通常使用され得るものであって、本発明に於ける効果を損なわないもの及び量であれば、分散剤、増粘剤、タレ防止剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、界面活性剤、その他の有機溶剤、水等の添加剤も、加えることができる。
【0036】
本発明の樹脂被覆金属顔料は自動車用、一般家電用、携帯電話に代表される情報家電用、印刷用、鉄やマグネシウム合金などの金属、あるいは、プラスチック等の基材の塗装用に好適に使用でき、高い意匠性を発揮できる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の実施例を挙げて詳細な説明をするが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の記載における%は重量%を示す。
[実施例1]
容積1Lの四つ口フラスコに、
市販のアルミペースト 100g
(旭化成ケミカルズ株式会社製、0−2100「平均粒径10μm、不揮発分74%」)
ミネラルスピリット 500g
を装填し、窒素ガスを導入しながら攪拌し、系内の温度を70℃に昇温した。次いで、アクリル酸0.3gを添加し30分攪拌を続けた。
【0038】
その後、市販の小型振動発生装置を四つ口フラスコの下部に設置し、間接的に四つ口フラスコ内の混合物に振動的外的作用として約5分間、12kHzの周波数で振動させた。
次いで、
トリメチロールプロパントリメタクリレート 6.8g
ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート 2.9g
2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル 2.0g
ミネラルスピリット 20g
からなる溶液を作製し、市販の定量ポンプにより約0.18g/min.の速度で前記混合物にこの溶液を添加し、系内の温度を70℃に保ちながら合計6時間重合した。なお、重合中の上記外的作用の付加は1時間毎に約5分間実施した。重合終了後でサンプリングしたろ液中のトリメチロールプロパントリメタアクリレートの未反応量をガスクロマトグラフィで分析したところ、添加量の99%以上が反応していた。重合終了後、自然冷却し、スラリーを濾過し、樹脂被覆アルミペーストを得た。このペーストの不揮発分(JIS−K−5910による)は、50.4重量%であった。
【0039】
[実施例2]
実施例1で重合中の振動的外的作用の付加タイミングを15分毎に約5分間とした以外は実施例1と同様にして樹脂被覆アルミペーストを得た。このペーストの不揮発分(JIS−K−5910による)は、50.2重量%であった。
【0040】
[実施例3]
実施例1で用いた市販の小型振動発生装置の代わりに市販の超音波洗浄機を用いて、周波数42kHz、出力180Wの超音波で間接的に四つ口フラスコ内の混合物に照射し、重合中の振動的外的作用の付加タイミングを15分毎に約5分間とした以外は実施例1と同様にして樹脂被覆アルミペーストを得た。このペーストの不揮発分(JIS−K−5910による)は、50.1重量%であった。
【0041】
[比較例1]
振動的外的作用を一切行わない以外は実施例1と同様にして樹脂被覆アルミペーストを得た。このペーストの不揮発分(JIS−K−5910による)は、50.2重量%であった。
【0042】
[評価1(平均粒径差の算出)]
(株)島津製作所製;SALD−2200を用いて、実施例1から3、及び比較例1で得られた樹脂被覆金属顔料の平均粒径を測定し、樹脂被覆前の金属顔料との平均粒径差を算出した。
【0043】
[評価2(金属顔料の分散状態)]
実施例1から3、及び比較例1で得られた樹脂被覆金属顔料を、下記の組成でマイクロスパチュラを用いて手動により、シンナーに分散させた。目視で分散液に金属顔料の塊がないことを確認した後、先端毛細管付ピペットを用いて一滴の分散液をマイクログラスカバーの上に滴下し、60℃のオーブンで30分乾燥し、光学顕微鏡を用いて金属顔料の分散状態を観察し、粒子数を数えることで評価した。本評価では、株式会社ハイロックス製;デジタルマイクロスコープ KH−7700を用いて3500倍の倍率で観察した。
樹脂被覆金属顔料: 0.25g
(実施例1から3、比較例1、アルミニウム分として)
シンナー: 25g
(酢酸ブチル30%、トルエン45%、イソプロピルアルコール20%、エチルセロソルブ5%を混合したもの)
観察結果に応じて(A)2個以上の一次粒子から形成されている粒子凝集体粒子数と(B)凝集していない一次粒子数との割合、B/(A+B)を算出し、下記のように評価した。(数値が大きいほど良好。実用上0.3以上が好ましい。)
◎:0.9以上
○:0.6以上〜0.9未満
△:0.3以上〜0.6未満
×:0.3未満
【0044】
[評価3(塗膜の密着性、耐薬品性、光沢保持率の評価)]
実施例1から3、及び比較例1で得られた樹脂被覆金属顔料を使用して、下記の組成でメタリック塗料を作製した。
樹脂被覆金属顔料: 5g
(実施例1から3、比較例1、アルミニウム分として)
シンナー: 50g
(武蔵塗料株式会社製、商品名「プラエースシンナー No.2726」)
アクリル樹脂: 33g
(武蔵塗料株式会社製、商品名「プラエース No.7160」)
エアスプレー装置を用いて上記塗料をABS樹脂板に乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、60℃のオーブンで30分乾燥し、評価用塗板を得た。
上記の評価用塗板を用いて、密着性、耐薬品性、光沢保持率の評価を行った。
【0045】
(塗膜の密着性)
上記で作製した塗板を用い、セロテープ(登録商標:ニチバン(株)製、CT405AP−18)を塗膜に密着させ、45度の角度で引っ張り、金属顔料粒子の剥離度合いを目視で観察した。観察結果に応じて、下記のように評価した。
○:剥離なし
△:やや剥離あり
×:剥離あり
【0046】
(塗膜の耐薬品性)
上記で作製した塗板の下半分を2.5N−NaOH水溶液を入れたビーカーに浸漬し、23℃で24時間放置した。試験後の塗板を水洗、乾燥したのち、浸漬部と未浸漬部を、JIS−Z−8722(1982)の条件d(8−d法)により測色し、JIS−Z−8730(1980)の6.3.2により色差ΔEを求める。色差ΔEの値に応じて、下記のように評価した。(値が小さいほど良好。)
○:1.0未満
△:1.0以上〜2.0未満
×:2.0以上
【0047】
(塗膜の光沢保持率)
光沢計(スガ試験機(株)製、デジタル変角光沢計UGV−5D)を用いて60度光沢(入射角、反射角とも60度)を測定する。上記で作製した塗板の60度光沢の測定値をG’、樹脂を被覆していないアルミニウム粉末を用いて同様に作製した塗板の60度光沢の測定値をGとし、光沢保持率Rを下式によって求める。
R=(G’/G)×100
光沢保持率Rの値に応じて、下記のように評価した。(数値が大きいほど良好。実用上70以上が好ましい。)
◎:90以上
○:90未満〜80以上
△:80未満〜70以上
×:70未満
評価1、2および3の結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の樹脂被覆金属顔料は、メタリック塗料用、印刷インキ用、プラスチック練り込み用途に好適に使用可能であり、塗膜にしたときの密着性、耐薬品性に優れ、色調の低下が少ないので、自動車用、家電用等の塗料として利用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属顔料100重量部に対して0.1〜50重量部の樹脂が前記金属顔料の表面に付着している樹脂被覆金属顔料であって、前記樹脂被覆金属顔料の粒子の平均粒径と樹脂被覆前の金属顔料の粒子の平均粒径との差が0より大きく5μm以下である、樹脂被覆金属顔料。
【請求項2】
前記樹脂被覆金属顔料中の、(A)2個以上の一次粒子で形成されている粒子凝集体の粒子数と(B)凝集していない一次粒子の粒子数との割合、B/(A+B)が0.3〜1である、請求項1に記載の樹脂被覆金属顔料。
【請求項3】
前記樹脂被覆顔料の製造における樹脂被覆処理中に、振動的外的作用を付加することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂被覆金属顔料。
【請求項4】
前記樹脂被覆顔料の製造における樹脂被覆処理中に、超音波による振動処理を付加することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属顔料。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属顔料を含有するメタリック塗料組成物。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属顔料を含有するメタリックインキ組成物。

【公開番号】特開2009−227798(P2009−227798A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74078(P2008−74078)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】