説明

新規な生物活性ポリペプチド類、ならびにそれらの製造および含有薬学組成物

【課題】生物学的活性を示しそして薬学的に用いられ得る人工蛋白質の製造。
【解決手段】アルブミンまたはアルブミンの変異体にカプリングさせた、治療活性を示すポリペプチドから誘導される活性部分を含んでいるポリペプチドの提供。その活性部分は、全ペプチド構造または構造的修飾(1種以上の残基の変異、置換、付加および/または欠失)によって全ペプチド構造から誘導される治療活性を有する構造のポリペプチド類である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な生物活性ポリペプチド類、それらの製造、並びにそれらを含んでいる薬学組成物に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、アルブミンまたはアルブミンの変異体にカプリング(coupling)させた、治療活性を示す、天然もしくは人工ポリペプチドから誘導される活性部分を含んでいる、本質的に組換え型のポリペプチド類に関する。本発明のポリペプチド類が示す治療活性は直接的(病気の治療)または間接的(例えば、病気の予防、ワクチンの設計、医学画像形成技術などで用いられ得る)であり得ると理解する。
【背景技術】
【0003】
このアルブミン変異体は、下記の明細書において、与えられた同型のヒト血清アルブミンをコードする遺伝子を遺伝工学技術で修飾(変異、欠失および/または付加)することによって得られる、高い血漿半減期を有する何らかの蛋白質、並びに上記遺伝子がコードする蛋白質を生体外で修飾することによって得られる、高い血漿半減期を有する何らかの巨大分子を示していると理解する。高度の多型性を示すアルブミンである天然変異体が数多く同定され、分類分けされている[Witkamp L.R.他「Ann.Hum.Genet.、37(1973)219]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、生物学的活性を示しそして薬学的に用いられ得る人工蛋白質を製造することにある。実際、薬学的に開発することができなかった、効力のある1種以上の治療活性を示すポリペプチド類が数多く存在している。これは種々の理由を有している可能性があり、例えば特に、それらの生体内安定性が低いこと、それらの構造が複雑であるか或は脆いこと、産業的に許容される規模でそれらを製造するのが困難なことなどである。同様に、いくつかポリペプチド類は、投与、包装、薬物動態学などに関する問題から、生体内において期待される程の結果を与えていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの欠点に打ち勝つことを可能にするものである。本発明は、実際、これらのポリペプチド類が示す生物学的特性を最適に治療開発することを可能にする新規な分子を提供するものである。本発明は、特に、生物学的活性を示すポリペプチドから誘導した活性を示す構造のいずれかを、それらが示す上記生物学的特性を損なうことなく遺伝学的に、アルブミンを含んでいる別の蛋白質構造にカプリングさせることが可能であると言った証拠からもたらされたものである。本発明はまた、ヒト血清アルブミンを用いると活性部位が相互作用する部位にそれが効率良く提示され得ることと本発明のポリペプチドに高い血漿安定性が得られることを本出願者が示したことからもたらされたものである。従って、本発明のポリペプチド類は、与えられた生物学的活性を体の中に長期間に渡って維持することを可能にするものである。従って、これらは、投薬量を低くすることを可能にし、そしてある場合には、例えば投薬量が高いことによって生じる副作用を低くすることによって治療効果を高めることを可能にするものである。加うるに、本発明のポリペプチド類は、非常に小さい従って所望効果に高度に特異的な生物活性ポリペプチド類から誘導される構造を生じさせそして用いることを可能にするものである。治療学的に興味の持たれている生物活性ペプチドはまた、例えばランダムなペプチドライブラリーから単離された非天然ペプチド配列に相当していてもよいと理解する。更に、本発明のポリペプチドは体の中で特に有利な分布を示し、これによって、それらが示す薬学動態学的特性が修飾され、そしてこれは、それが示す生物活性を開発しそしてそれを用いる補助になる。加うるに、これらはまた、それらを用いる有機体に対して全く免疫原性を示さないか或は示しても弱いと言った利点を有している。最後に、組換え有機体は本発明のポリペプチド類を、それらを産業的に開発することを可能にするレベルで発現し得る(優先的に分泌し得る)。
【0006】
従って、本発明の1つの目的は、アルブミンまたはアルブミンの変異体にカプリングさせた、治療活性を示すポリペプチドから誘導される活性部分を含んでいるポリペプチド類に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
特定の態様において、治療活性を示すこれらのペプチド類はヒト由来のものでない。例えば、血液のおよび間隙の区分(interstitial compartment)の病理学で有効性を示し得る特性を示すペプチド類またはそれらの誘導体、例えばヒルジン(hirudin)、トリグラミン(trigramine)、アンチスタチン(antistatine)、マダニ抗凝血性ペプチド(tick anticoagulant peptides)(TAP)、アリエチン(arietin)、アプラギン(applagin)などが挙げられ得る。
【0008】
より詳細には、本発明の分子において、治療活性を示すポリペプチドは、ヒト由来のポリペプチドまたは分子変異体である。例えば、これは、酵素、酵素阻害剤、抗原、抗体、ホルモン、凝固調節に関与している因子、インターフェロン、サイトカイン[インターロイキン類ばかりでなく、レセプター(類)に結合する天然の拮抗薬であるそれらの変異体、SIS(誘発されて分泌される小型)型サイトカイン、並びに例えばマクロファージ炎症性蛋白質(MIP)など]、成長因子および/または分化因子[例えば形質転換した成長因子(TGF)、血液細胞分化因子(エリスロポイエチン、M−CSF、G−CSF、GM−CSFなど)、インシュリンおよびそれに類似している成長因子(IGF)、或はまた細胞透過因子(cell permeability factors)(VPF/VEGF)など]、骨組織の発生/吸収に関与している因子(例えばOIFおよびオステオスポンチン(osteospontin)、細胞運動性または移動に関与している因子[例えばオートクリン運動性因子(autocrine motility factor)(AMF)、移動刺激因子(MSF)、或はまたスキャター因子(scatter factor)(スキャター因子/肝細胞成長因子)]、殺菌もしくは抗真菌因子、化学走性因子[例えば血小板因子4(PF4)、或はまた単球化学誘引(chemoattracting)ペプチド類(MCP/MCAF)または好中球化学誘引ペプチド類(NCAF)など]、細胞増殖抑制性因子(例えばガラクトシド類に結合する蛋白質)、血漿(例えばフォンビルブラント因子(von Willebrand因子)、フィブリノーゲンなど)または間隙性(ラミニン(laminin)、テナシン(tenascin)、ビトロネクチン(vitronectin)など)接着分子または細胞外マトリックス、或はまた、循環のおよび間隙の区分の病理学[例えば動脈および静脈の血栓形成、癌転移、腫瘍脈管形成、炎症性ショック、自己免疫病、骨および骨関節病理学など]に関与している分子および/または細胞間相互作用の拮抗薬または作動薬であるペプチド配列いずれかの、全てまたは一部であってもよい。
【0009】
本発明のポリペプチド類の活性を示す部分は、例えば、治療活性全体を示すポリペプチド、それらから誘導される構造物、或はまたペプチドライブラリーから単離される非天然ポリペプチドから成っていてもよい。本発明の目的で、誘導される構造物は、治療活性を保持しているところの、修飾によって得られるポリペプチドいずれかを意味していると理解する。修飾は、遺伝的および/または化学的性質の変異、置換、欠失、付加または修飾いずれかを意味していると理解すべきである。上記誘導体は、種々の理由、例えば特に、該分子がそれの結合部位に対して示す親和力を上昇させる理由、それの産生レベルを改良する理由、プロテアーゼに対するそれの耐性を増大させる理由、それが示す治療効果を向上させる理由、或はまたそれの副作用を低くする理由、或はそれに新規な生物学的特性を与える理由などで生じさせ得る。例として、本発明のキメラポリペプチド類は、病気の予防または治療で用いられ得る薬物動態学特性および生物活性を示す。
【0010】
本発明の特に有利なポリペプチド類は、その活性部分が、
(a)全ペプチド構造、または
(b)構造的修飾(1種以上の残基の変異、置換、付加および/または欠失)によって(a)から誘導される、治療活性を示す構造、
を有しているポリペプチド類である。
【0011】
より詳細には、(b)型の構造の中には、特定のN−もしくはO−グリコシル化部位が修飾もしくは抑制されている分子、1個以上の残基が置換されている分子、或は全てのシステイン残基が置換されている分子などが挙げられ得る。また、考えられる結合部位との相互作用に関与していないか或はあまり関与していない領域または望まれない活性を示す領域を欠失させることによって(a)から得られる分子、並びに(a)に比べて加えられた残基、例えばN末端メチオニンおよび/または分泌用シグナルおよび/または結合用ペプチドなどを含んでいる分子も挙げられ得る。
【0012】
本発明の分子の活性を示す部分は直接か或は人工ペプチドを通してアルブミンにカプリングしていてもよい。更に、これは、この分子のN末端と共にC末端を構成していてもよい。好適には、本発明の分子における活性を示す部分は、このキメラのC末端部分を構成している。また、この生物学的活性を示す部分はそのキメラ内で繰り返し存在していてもよいと理解する。本発明の分子に関する図式的表示を図1に示す。
【0013】
本発明の別の主題は、上に記述したキメラ分子の製造方法に関するものである。より詳細には、この方法は、所望ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を真核生物細胞または原核生物細胞宿主が発現するようにした後、それが産生したポリペプチドを収穫することにある。
【0014】
本発明の枠内で用いられ得る真核生物細胞宿主の中には、動物細胞、酵母または菌・カビが挙げられ得る。特に、酵母に関しては、サッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シュヴァニオミセス(Schwanniomyces)またはハンセヌラ(Hansenula)属の酵母が挙げられ得る。動物細胞に関しては、COS、CHOおよびC127細胞などが挙げられ得る。本発明で用いられ得る菌・カビの中には、より詳細には、アスペルギルス種(Aspergillus ssp)またはトリコデルマ種(Trichoderma ssp)が挙げられ得る。原核生物宿主に関しては大腸菌(Escherichiacoli)などの細菌、或はコリネバクテリウム(Corynebacterium)、バチルス(Bacillus)またはストレプトミセス(Streptomyces)属に属する細菌を用いるのが好適である。
【0015】
本発明の枠内で用いられ得るヌクレオチド配列は種々の方法で製造され得る。一般に、これらは、このポリペプチドの機能的部分各々をコードする配列を読み段階で組み立てることによって得られる。この後者は、本分野の技術者が有する技術によって単離可能であり、例えば細胞のメッセンジャーRNA(mRNA)から直接か、或は相補DNA(cDNA)ライブラリーからの再クローニングによって単離可能であるか、或はまたこれらは、完全に合成されたヌクレオチド配列であってもよい。更に、これらのヌクレオチド配列をまたその後、例えば遺伝工学技術などによって修飾して、上記配列の誘導体または変異体を得ることも可能であると理解する。
【0016】
より好適には、本発明の方法におけるヌクレオチド配列は、コントロール下に置かれているヌクレオチド配列の発現が宿主内で生じるのを可能にする、本発明のポリペプチド類をコードする転写開始領域(プロモーター領域)を含んでいる発現カセットの一部である。この領域は、用いる宿主細胞内で高度に発現する遺伝子のプロモーター領域由来のものであってもよく、ここで、この発現は構成的(constitutive)または調節可能(regulatable)であってもよい。酵母に関するプロモーターは、ホスホグリセラートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GPD)、ラクターゼ(LAC4)、エノラーゼ類(ENO)、アルコールデヒドロゲナーゼ類(ADH)などのための遺伝子のプロモーターであってもよい。細菌に関するプロモーターは、ラムダバクテリオファージ由来の右側または左側遺伝子のプロモーター(P、P)、或はまた、トリプトファン(Ptrp)またはラクトース(Plac)オペロンのための遺伝子のプロモーターであってもよい。加うるに、このコントロール領域を、例えば追加的コントロール要素または合成した配列を導入するか、或は元のコントロール要素を欠失させるか或は置き換えることによるインビトロ変異誘発によって修飾してもよい。この発現カセットはまた、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の直ぐ下流に位置している、当該宿主内で機能を果す転写停止領域を含んでいてもよい。
【0017】
好適な様式において、真核生物または原核生物宿主内にヌクレオチド配列が発現しそして上記配列の発現の産物が培養培地に分泌される結果として、本発明のポリペプチド類が得られる。この組換えルートを用いるとその培養培地内で分子を直接得ることができることは、実際特に有利である。この場合、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の前に、その用いる宿主の分泌経路における発生期ポリペプチドの方向付けを行う「リーダー」配列(またはシグナル配列)が存在している。この「リーダー」配列は、生物学的活性を示すポリペプチドの天然シグナル配列[この場合、この後者は天然に分泌される蛋白質である]であるか、或は安定化構造のシグナル配列であってもよいが、これはまた他の何らかの機能的「リーダー」配列であるか或は人工の「リーダー」配列であってもよい。これらの配列の1つまたはその他の選択は、特に、その用いる宿主に従う。機能的シグナル配列の例には、性フェロモンまたは酵母の「キラー」トキシンのための遺伝子のシグナル配列が含まれる。
【0018】
この発現カセットに加えて、この組換え型宿主を選択することを可能にするマーカーを1つまたはいくつか加えてもよく、例えば、酵母S.セレビシエ(S.cerevisiae)由来のURA3遺伝子、或はゲネチシン(geneticin)(G418)の如き抗生物質に対する耐性を与えるか或は特定の金属イオンの如き他の何らかの毒性化合物に対する耐性を与える遺伝子などを加えてもよい。
【0019】
この発現カセットおよび選択マーカーによって生じるユニットを、当該宿主細胞に直接導入してもよいか、或は前以て機能的自己複製ベクターに挿入してもよい。上記1番目の場合として、好適には、宿主細胞のゲノムの中に存在している領域に相同性を示す配列を上記ユニットに加えた後、相同組換えによるこれらの配列の組み込みを目標として、その宿主のゲノムの中にそのユニットが組み込まれる頻度を上昇させるように、上記配列をその発現カセットおよび選択遺伝子の各側面に位置させる。この発現カセットを複製システムに挿入する場合、クルイベロミセス属の酵母に好適な複製システムは、K.ドロソフィラルム(K.drosophilarum)由来の単離したプラスミドpKD1から誘導されたものであり、そしてサッカロミセス属の酵母に好適な複製システムは、S.セレビシエ由来の2μプラスミドから誘導されたものである。更に、この発現プラスミドは、上記複製システムの全てまたは一部を含んでいてもよいか、或はプラスミドpKD1および2μプラスミド両方から誘導された要素を組み合わせてもよい。
【0020】
加うるに、これらの発現プラスミドは、大腸菌の如き細菌宿主と選択した宿主細胞との間のシャトルベクターであってもよい。この場合、この細菌宿主内で機能を果す複製開始点および選択マーカーが必要である。この発現ベクターの上に、その細菌を取り巻いている制限部位およびユニークな配列を位置させることも可能であり、これは、宿主細胞の形質転換を行う前にその端を切り取ったベクターをインビトロで切断して再連結することによって上記配列をサプレスする(suppress)ことを可能にし、そしてこれによって、コピー数の増加がもたらされると共に、上記宿主における発現プラスミドの安定性が上昇し得る。例えば、上記制限部位は、これらの部位が極めて希でありそして一般に発現ベクターから失われている限り、5’−GGCCNNNNNGGCC−3’(SfiI)または5’−GCGGCCGC−3’(NotI)の如き配列に相当していてもよい。
【0021】
上記ベクターまたは発現カセットの構築を行った後、この後者を、文献に記述されている通常技術に従って、その選択した宿主細胞の中に導入する。これに関して、細胞の中に外来DNAを導入することを可能にする如何なる方法も用いられ得る。これは、特に形質転換、エレクトロポレーション、接合、或は本分野の技術者に知られている他の何らかの技術であってもよい。酵母型宿主の例として、用いる種々のクルイベロミセス株の全細胞を、Ito他が記述した技術[J.Bacteriol.153(1983)163]に従い、酢酸リチウムとポリエチレングリコールの存在下で処理することによって、これらの株の形質転換を行う。エチレングリコールおよびジメチルスルホキサイドを用いた、Durrens他が記述した形質転換技術[Curr.Genet.18(1990)7]も用いた。Karube他が記述した方法[FEBS Letters 182(1985)90]に従うエレクトロポレーションでこれらの酵母の形質転換を行うことも可能である。代替操作をまた以下の実施例の中に詳述する。
【0022】
その形質転換した細胞を選択した後、上記ポリペプチド類を発現する細胞を接種し、そして「連続」方法ではその細胞が増殖している間か、或は「バッチ」培養ではその増殖が終了した時点で、上記ポリペプチド類の回収を実施することができる。次に、本発明の主題であるポリペプチド類をその培養上澄み液から精製して、それらの分子特徴付け、薬物動態学特徴付けおよび生物学的特徴付けを行う。
【0023】
本発明のポリペプチド類に好適な発現システムは、宿主細胞としてクルイベロミセス属の酵母を用い、K.マルキシアヌス・ベル・ドロソフィラルム(K.marxianus var.drosophilarum)由来の単離した染色体外レプリコンpKD1から誘導した特定のベクターで形質転換することにある。これらの酵母、特にK.ラクチス(K.lactis)およびK.フラギリス(K.fragilis)は、一般に、上記ベクターを安定に複製する能力を有していることに加えて、G.R.A.S.(「enerally ecognized afe」)有機体のリストに含まれていると言った利点を有している。好ましい酵母は、好適には、プラスミドpKD1から誘導される上記プラスミドを安定に複製する能力を有しておりそして本発明のポリペプチド類を高レベルで分泌することを可能にする選択マーカーと共に発現カセットが挿入されている、産業用クルイベロミセス属酵母である。
【0024】
本発明はまた、上記キメラポリペプチド類をコードするヌクレオチド配列、並びに上記配列を含んでいる真核生物もしくは原核生物の組換え型細胞にも関する。
【0025】
本発明はまた、本発明に従うポリペプチド類を医学製品として応用することにも関係している。より詳細には、本発明の主題は、上述した如きポリペプチド類またはヌクレオチド配列を1種以上含んでいる全ての薬学組成物である。実際、これらのヌクレオチド配列は遺伝治療で用いられ得る。
【0026】
説明的であり非制限的であると見なされるべき下記の実施例を用いて本発明を更に詳しく記述する。
【実施例】
【0027】
一般クローニング技術
分子生物学で通常に用いられている方法、例えばプラスミドDNAの予備抽出、塩化セシウム勾配におけるプラスミドDNAの遠心分離、アガロースまたはアクリルアミドゲル上の電気泳動、電気溶離によるDNAフラグメントの精製、フェノールまたはフェノール−クロロホルムを用いた蛋白質の抽出、食塩水培地内DNAのエタノールまたはイソプロパノール沈澱、大腸菌における形質転換などは、本分野の技術者によく知られており、そして文献の中に幅広く記述されている[Maniatis T.他「Molecular Cloning,a Laboratory Manual」、Cold Spring HarborLaboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1982;Ausubel F.M.他(編集)「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、New York、1987]。
【0028】
これらの制限酵素はNew England Biolabs(Biolabs)、Bethesda Research Laboratories(BRL)またはAmershamから供給されたものであり、そして供給業者の推奨に従って用いた。
【0029】
pBR322およびpUC型のプラスミドおよびM13シリーズのファージは市販のものである(Bethesda Research Laboratories)。
【0030】
連結反応に関しては、アガロースもしくはアクリルアミドゲル上の電気泳動により大きさに従ってDNAフラグメントを分離し、フェノールまたはフェノール/クロロホルム混合物を用いた抽出を行い、エタノールで沈澱させた後、製造業者の推奨に従い、ファージT4 DNAリガーゼ(Biolabs)の存在下でインキュベートした。
【0031】
大腸菌のDNAポリメラーゼIのクレノーフラグメント(Biolabs)を用い、供給業者の仕様書に従って、突き出ている5’末端の充填を実施する。ファージT4 DNAポリメラーゼ(Biolabs)の存在下、この製造業者の推奨に従って、その突き出ている3’末端の破壊を実施する。S1ヌクレアーゼを用いて調節した処理を行うことによって、その突き出ている5’末端の破壊を実施する。
【0032】
Amershamが市販しているキットを用い、Taylor他が開発した方法[Nucleic Acids Res.13(1985)8749−8764]に従って、合成オリゴデオキシヌクレオチド類を用いたインビトロ部位特異的変異誘発を実施する。
【0033】
「DNAサーマルサイクラー」(Perkin Elmer Cetus)を用い、この製造業者の仕様書に従って、いわゆるPCR技術[ポリメラーゼ触媒連鎖反応、Saiki R.K.他、Science 230(1985)1350−1354;Mullis K.B.およびFaloona F.A.、Meth.Enzym.155(1987)335−350]によるDNAフラグメントの酵素的増幅を実施する。
【0034】
Amershamが市販しているキットを用い、Sanger他が開発した方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、74(1977)5463−5467]により、ヌクレオチド配列の立証を実施する。
【0035】
本発明の蛋白質を発現させるためのプラスミド由来DNAを用いたK.ラクチスの形質転換を、本分野の技術者に知られている技術いずれかを用いて実施するが、この実施例を本明細書の中に示す。
【0036】
特に明記されていない限り、用いる菌株は大腸菌MC1060(LacIPOZYA、X74、galU、galK、strA)または大腸菌TG1(lac、proA、B、supE、thi、hsdD5/FtraD36、proA、lacI、lacZ、M15)である。
【0037】
用いる酵母は、出芽酵母に属しており、より詳細には、クルイベロミセス属の酵母に属している。特にK.ラクチスMW98−8C(a、uraA、arg、lys、K、pKD1°)およびK.ラクチスCBS293.91株を用い、そしてMW98−8C株のサンプルを、Centraalbureau voor Schimmelkulturen(CBS)、Baarn(オランダ)に1988年9月18日付けで寄託し、番号CBS579.88の下で登録された。
【0038】
プラスミドpET−8c52Kで形質転換した細菌株(大腸菌)を番号ATCC68306の下でAmerican Type Culture Collectionに1990年4月17日付けで寄託した。
【0039】
本発明の蛋白質をコードする発現プラスミドで形質転換した酵母株を、三角フラスコまたは21パイロット発酵器(SETRIC、フランス)中、豊富培地(YPD:1%の酵母抽出液、2%のバクトペプトン、2%のグルコース;或はYPL:1%の酵母抽出液、2%のバクトペプトン、2%のラクトース)の中で一定撹拌しながら28℃で培養する。
【0040】
実施例1:SAHのC末端におけるカプリング
プラスミドpYG404はヨーロッパ特許出願公開第361 991号の中に記述されている。このプラスミドは、S.セレビシエのPGK遺伝子を翻訳するための開始ATGの直ぐ上流に元々存在している21個のヌクレオチドの後に、prepro−SAH遺伝子をコードするHindIII制限フラグメントを含んでいる。この制限フラグメントのヌクレオチド配列を図2の中に含める。コーディング配列の中に位置しているMstII部位、即ち翻訳の終了を指定するコドンから3個の残基は、翻訳段階でSAHのC末端にカプリングさせることが望まれている生物活性ペプチドをクローニングするための部位として特に有効である。特定態様では、5’−CCTTAGGCTTA[3xN]AAGCTT−3’型のMstII−HindIII制限フラグメントがコードする配列で表されるペプチドを用いるのが有効であり、ここで、この配列は生物学的活性を示すペプチドをコードする(p個の残基は[3xN]である)。3個のC最末端アミノ酸(ロイシン−グリシン−ロイシン残基)を除く、SAHをコードする遺伝子全体に相当するHindIII−MstII制限フラグメントへの上記フラグメントの連結反応により、SAHの「prepro」エクスポート(export)領域の直ぐ後にSAH−ペプチド型のキメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子(図1、パネルA)を含んでいるHindIII制限フラグメントが生じる。別の態様において、この生物学的活性を示すペプチドは、そのキメラの中に2回以上存在していてもよい。
【0041】
実施例2:SAHのN末端におけるカプリング
特定態様において、部位特異的変異誘発とPCR増幅を一緒にした技術を用いることで、シグナルペプチド(例えばSAHのprepro領域)と、生物学的活性を示すペプチドを含んでいる配列と、成熟形態のSAHまたはそれの分子変異体の1つとの間の翻訳カプリングの結果として生じる、キメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を構築することも可能である。これらのハイブリッド遺伝子は、好適には、翻訳開始ATGの5’および翻訳停止コドンの3’で、HindIII制限部位に境を接しており、そしてこれらは、ペプチド−SAH型(図1、パネルB)のキメラ蛋白質をコードする。さらなる特定態様において、この生物学的活性を示すペプチドは、そのキメラ内に2回以上存在していてもよい。
【0042】
実施例3:SAHのN末端およびC末端におけるカプリング
実施例1および2に記述した部位特異的変異誘発とPCR増幅を一緒にした技術を用いることで、成熟形態のSAHまたはそれの分子変異体の1つと、SAHのN末端およびC末端にカプリングさせた生物活性ペプチドとの間の翻訳カプリングの結果として生じる、キメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を構築することができる。これらのハイブリッド遺伝子は、好適には、翻訳開始ATGの5’および翻訳停止コドンの3’で、HindIII制限部位に境を接しており、そしてこれらは、SAHの「prepro」エクスポート領域の直ぐ後に存在しているペプチド−SAH−ペプチド型(図1、パネルC)のキメラ蛋白質をコードする。さらなる特定態様において、この生物学的活性を示すペプチドは、そのキメラ内に2回以上存在していてもよい。
【0043】
実施例4:発現プラスミド類
機能的、調節可能または構成的プロモーター、例えばプラスミドpYG105(クルイベロミセス・ラクチスのLAC4プロモーター)、pYG106(サッカロミセス・セレビシエのPGKプロモーター)、pYG536(S.セレビシエのPHO5プロモーター)の中に存在しているプロモーター、或はハイブリッドプロモーター、例えばヨーロッパ特許出願公開第361 991号に記述されている如きプロモーターを用いて、上記実施例のキメラ蛋白質を酵母内で発現させることができる。本明細書では、これらのプラスミドpYG105およびpYG106が特に有効である、と言うのは、これらは、K.ラクチス内で機能を果す調節可能(pYG105)または構成的(pYG106)プロモーターを用いて、上記実施例に記述した如きHindIII制限フラグメントによってコードされそしてHindIII部位に産生配向(転写のためのプロモーターに関して基部にアルブミンの「prepro」領域を位置させる配向として定義する)でクローン化した遺伝子の発現を可能にするからである。このプラスミドpYG105は、ヨーロッパ特許出願公開第361 991号に記述されているプラスミドpKan707に相当しており、ここでは、ユニークでありそしてゲネチシン(G418)に対する耐性のための遺伝子の中に位置しているHindIII制限部位が部位特異的変異誘発で壊されているが未変化蛋白質を保存している(オリゴデオキシヌクレオチド5’−GAAATGCATAAGCTCTTGCCATTCTCACCG−3’)。その後、その変異プラスミドのURA3遺伝子をコードするSalI−SacIフラグメントを、K.ラクチスのLAC4プロモーター(SalI−HindIIIフラグメントの形態で)およびS.セレビシエのPGK遺伝子のターミネーター(HindIII−SacIの形態で)から成る発現カセットを含んでいるSalI−SacI制限フラグメントで置き換えた。このプラスミドpYG105はクルイベロミセス酵母内で分裂的に非常に高い安定性を示し、それの制限地図を図4に示す。プラスミドpYG105とpYG106が互いに異なっているのは、SalI−HindIIIフラグメントがコードする転写用プロモーターの性質のみである。
【0044】
実施例5:酵母の形質転換
例えば、下記の如く適合させた、酢酸リチウムで全細胞を処理する技術[Ito H.他「J.Bacteriol.153(1983)163−168]を用いて、クルイベロミセス属に属する酵母、特にK.ラクチスのMW98−8C株およびCBS293.91株の形質転換を行う。50mLのYPD培地中28℃で撹拌しながら、600nmにおける光学密度(OD600)が0.6から0.8になるまで、これらの細胞の増殖を行い、そして低速遠心分離で細胞を収穫し、TEの無菌溶液(10mMのトリスHCl、pH7.4;1mMのEDTA)で洗浄し、3−4mLの酢酸リチウム(TE中0.1M)の中に再懸濁させることによって、細胞密度が約2x10個細胞/mLになるようにした後、穏やかに撹拌しながら1時間30℃でインキュベートする。その得られる受容能のある細胞懸濁液の一定分量0.1mLを、DNAの存在下、ポリエチレングリコール(PEG4000、Sigma)の最終濃度が35%になるようにして、1時間30℃でインキュベートする。42℃で5分間熱ショックを与えた後、これらの細胞を2度洗浄し、0.2mLの無菌水の中に再懸濁させ、そして2mLのYPD培地中28℃で16時間インキュベートすることにより、Pk1プロモーター制御下で発現するG418耐性遺伝子の表現型発現を可能にし(ヨーロッパ特許出願公開第361 991号参照)、そして次に、この細胞懸濁液の200μLを選択YPD皿(G418、200μg/mL)上で平板培養した。これらの皿を28℃でインキュベートし、そして2から3日間細胞増殖を行った後、形質転換体が現れる。
【0045】
実施例6:キメラの分泌
G418を補った豊富培地上で選択した後、組換えクローンを、キメラ蛋白質の成熟形態を分泌する能力を有しているか否かに関して試験した。SAHと生物活性部分との間のキメラを発現させるためのプラスミドによって形質転換した株CBS293.91またはMW98−8Cに相当しているいくつかのクローンを、28℃のYPDまたはYPL培地内でインキュベートする。これらの細胞が定常増殖段階に到達した時点で、細胞上澄み液を遠心分離で回収し、エタノールの最終濃度が60%になるように−20℃で30分間沈澱させることによって任意に10倍濃縮し、そして次に、8.5%SDS−PAGEゲル使用電気泳動にかけた後、クーマシーブルーを用いたゲル染色によって直接的にか、或は生物活性部分に特異的な一次抗体またはSAHに特異的なラビットポリクローナル血清を用いた免疫ブロッティングを行った後、それらの試験を行った。免疫学的検出のための実験を行っている間、最初にニトロセルロースフィルターを特異的一次抗体の存在下でインキュベートし、数回洗浄し、この一次抗体に特異的なヤギ抗体の存在下でインキュベートした後、Vectastain(Biosys S.A.、Copiegne、フランス)が市販している「ABCキット」を用い、アビジン−ペルオキシダーゼ複合体の存在下でインキュベートした。次に、3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩(Prolabo)を添加し、この製造業者の推奨に従って、過酸化水素の存在下で免疫学的反応を明らかにする。
【0046】
実施例7:フォンビルブラント因子から誘導したキメラ
E.7.1. 血小板に対するvWFの結合に拮抗するフラグメント
E.7.1.1. vWFのThr470−Val713残基
プラスミドpET−8c52Kは、ヒトvWFの残基445から733をコードするvWF cDNAのフラグメントを含んでおり、従って一方ではvWFと血小板との間の相互作用に関する重要な決定基をいくつか含んでおり、そして他方では、基底膜および内皮下(sub−endothelial)組織の特定要素を含んでおり、特にvWFとGP1b[Mori H.他「J.Biol.Chem.263(1988)17901−17904]の間の相互作用に拮抗するペプチドG10とD5を含んでいる。このペプチド配列は、Titani他[Biochemistry 25(1986)3171−3184]が記述した相当する配列と同じである。これらの遺伝決定基の増幅は、例えば増幅すべき配列のどちらかの側に位置している隣接残基をコードするオリゴデオキシヌクレオチドをプライマーとして用いたPCR増幅技術により、プラスミドpET8c52Kを用いて実施され得る。次に、この増幅したフラグメントをM13型のベクターにクローン化し、多重クローニング部位のどちらかの側に位置している普遍プライマーを用いるか或はいくつかの同型を示す配列が知られているvWF遺伝子の増幅領域に特異的なオリゴデオキシヌクレオチドを用いた配列決定を行うことによって、それらの立証を行う[Sadler J.E.他「Proc.Natl.Acad.Sci.82(1985)6394−6398;Verweij C.L.他「EMBO J.5(1986)1839−1847;Shelton−Inloes B.B.他「Biochemistry 25(1986)3164−3171;Bonthron D.他「Nucleic Acids Res.17(1986)7125−7127]。このように、オリゴデオキシヌクレオチドである5′−CCCGGGATCCCTTAGGCTTAACCTGTGAAGCCTGC−3′(Sq1969、MstII部位にアンダーラインを引く)および5′−CCCGGGATCCAAGCTTAGACTTGTGCCATGTCG−3′(Sq2029、HindIII部位にアンダーラインを引く)を用いたプラスミドpET−8c52KのPCR増幅により、vWFのThr470からVal713残基を含んでいるMstII−HindIII制限フラグメントが生じる(図4、パネルE)。3個のC最末端アミノ酸を除き(図2参照)、SAHをコードする遺伝子全体に相当しているHindIII−MstII制限フラグメントに上記フラグメントを連結することにより、SAHの「prepro」エクスポート領域の直ぐ後にSAH−ペプチド型のキメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を含んでいるHindIII制限フラグメントが生じる(図1、パネルA)。この制限フラグメントを、プラスミドpYG105のHindIII部位に産生配向でクローン化し、これによって、発現プラスミドpYG1248が生じる(SAH−vWF470−713)。
【0047】
E.7.1.2. 分子変異体:
別の態様において、vWFの結合部位は、成熟vWFのThr470からAsp498残基を含んでいるペプチドである。ペプチドG10を含んでいる上記配列(Cys474−Pro488)は、Mori他[J.Biol.Chem.263(1988)17901−17904]に記述されており、ヒト血小板のGP1bとヒトvWFとの相互作用に拮抗し得る。例えば、オリゴデオキシヌクレオチドSq1969および5′−CCCGGGATCCAAGCTTAGTCCTCCACATACAG−3′(Sq1970、HindIII部位にアンダーラインを引く)を用いたプラスミドpET−8c52KのPCR増幅により、最初に、MstII−HindIII制限フラグメント(図5、パネルB)の中に、上記ペプチドG10に相当している配列を含め、これによって、ペプチドG10を含んでいるMstII−HindIII制限フラグメントが生じ、そしてこれの配列は、5′−CCTTAGGCTTAACCTGTGAAGCCTGCCAGGAGCCGGGAGGCCTGGTGGTGCCTCCCACAGATGCCCCGGTGAGCCCCACCACTCTGTATGTGGAGGACTAAGCTT−3′である(このペプチドG10をコードする配列を太字で示す)。3個のC最末端アミノ酸を除き(図2参照)、SAHをコードする遺伝子全体に相当しているHindIII−MstII制限フラグメントに上記フラグメントを連結することにより、SAHの「prepro」エクスポート領域の直ぐ後にSAH−ペプチド型のキメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を含んでいるHindIII制限フラグメントが生じる(図1、パネルA)。この制限フラグメントを、プラスミドpYG105のHindIII部位に産生配向でクローン化し、これによって、発現プラスミドpYG1214が生じる。
【0048】
別の態様において、合成オリゴデオキシヌクレオチド、例えばオリゴデオキシヌクレオチド5′−TTAGGCCTCTGTGACCTTGCCCCTGAAGCCCCTCCTCCTACTCTGCCCCCCTAAGCTTA−3′および5′−GATCTAAGCTTAGGGGGGCAGAGTAGGAGGAGGGGCTTCAGGGGCAAGGTCACAGAGGCC−3′を用いて、vWFをGP1bに結合させるための部位を直接設計する。これらのオリゴデオキシヌクレオチドを対にすることにより、vWFのLeu694からPro708残基が範囲を限定しているペプチドD5に相当しているMstII−HindIIIフラグメント(図5、パネルC)を含んでいるMstII−BglII制限フラグメントが生じる。3個のC最末端アミノ酸を除き(図2参照)、SAHをコードする遺伝子全体に相当しているHindIII−MstII制限フラグメントに上記MstII−HindIIIフラグメントを連結することにより、SAHの「prepro」エクスポート領域の直ぐ後にSAH−ペプチド型のキメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を含んでいるHindIII制限フラグメントが生じる(図1、パネルA)。この制限フラグメントを、プラスミドpYG105のHindIII部位に産生配向でクローン化し、これによって、発現プラスミドpYG1206が生じる。
【0049】
ペプチドG10とG5の間の部位特異的変異誘発、例えばコラーゲンおよび/またはヘパリンおよび/またはボトロセチンおよび/またはスルファチドおよび/またはリストセチンに結合する部位に特異的な変異誘発により、プラスミドpET−8c52Kの有効な変異体を削除する。1つの例は、残基Cys509とIle662との間を部位特異的変異誘発によって削除したプラスミドpMMB9である。オリゴデオキシヌクレオチドSq1969およびSq2029を用いた上記プラスミドのPCR増幅により、Thr470からTyr508およびArg663からVal713残基、特にvWFのペプチドG10およびD5を含んでいるが特に残基Glu542とMet622の間に位置しているコラーゲン結合部位が欠失しているMstII−HindIII制限フラグメントが生じる(図5、パネルD)[Roth G.J.他「Biochemistry 25(1986)8357−8361]。3個のC最末端アミノ酸を除き(図2参照)、SAHをコードする遺伝子全体に相当しているHindIII−MstII制限フラグメントに上記フラグメントを連結することにより、SAHの「prepro」エクスポート領域の直ぐ後にSAH−ペプチド型のキメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を含んでいるHindIII制限フラグメントが生じる(図1、パネルA)。この制限フラグメントを、プラスミドpYG105のHindIII部位に産生配向でクローン化し、これによって、発現プラスミドpYG1223が生じる。
【0050】
別の態様において、部位特異的変異誘発とPCR増幅を一緒にした技術を用いることにより、スルファチドおよび/またはボトロセチンおよび/またはヘパリンおよび/またはコラーゲンに結合する部位が1個以上欠失しておりそして/またはIIB型病状がvWFに関連して現れることに関与している何らかの残基で置換されている、図5のパネルAのMstII−HindIII制限フラグメントの変異体を自由自在に生じさせることができる。
【0051】
プラスミドpET−8c52Kの他の有効な変異体において、例えば部位特異的変異誘発による変異を導入して、ヒトvWFの471、474、509および695位に存在している1組のシステインの全てまたは一部を置き換えるか或はサプレスする。特定例は、一方では471および474位に存在しているシステイン、他方では471、474、509および695位に存在しているシステインが、それぞれグリシン残基で置き換えられているところの、プラスミドp5Eおよびp7Eである。オリゴデオキシヌクレオチドSq2149(5′−CCCGGGATCCCTTAGGCTTAACCGGTGAAGCCGGC−3′、MstII部位にアンダーラインを引く)およびSq2029を用いた上記プラスミドのPCR増幅により、少なくとも471と474位のシステイン残基がグリシン残基に変異している以外は天然vWFのThr470からVal713残基を含んでいるMstII−HindIII制限フラグメントを生じさせることができる。3個のC最末端アミノ酸を除き(図2参照)、SAHをコードする遺伝子全体に相当しているHindIII−MstII制限フラグメントに上記フラグメントを連結することにより、SAHの「prepro」エクスポート領域の直ぐ後にSAH−ペプチド型のキメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を含んでいるHindIII制限フラグメントが生じる(図1、パネルA)。これらの制限フラグメントを、プラスミドpYG105のHindIII部位に産生配向でクローン化し、これによって、発現プラスミドpYG1283(キメラSAH−vWF470−713、C471G、C474G)およびpYG1279(キメラSAH−vWF470−713、C471G、C474G、C509G、C695G)が生じる。
【0052】
他の特に有効な変異は、vWF関連IIB型病状に関与している少なくとも1つの残基、例えば残基Arg543、Arg545、Trp550、Val551、Val553、Pro574またはArg578などに対して影響を与えるものである(GP1bに対してvWFが示す固有親和力の向上)。インビトロにおける遺伝組換え技術を用いることでもまた、vWFの配列に1個以上の追加的残基を自由自在に導入することができ、例えば位置Asp539とGlu542の間に余分のメチオニンを導入することができる。
【0053】
E.7.2. 内皮下に対するvWFの結合に拮抗するフラグメント
特定態様において、例えばオリゴデオキシヌクレオチドSq2258(5′−GGATCCTTAGGGCTGTGCAGCAGGCTACTGGACCTGGTC−3′、MstII部位にアンダーラインを引く)およびSq2259(5′−GAATTCAAGCTTAACAGAGGTAGCTAACGATCTCGTCCC−3′HindIII部位にアンダーラインを引く)を用いたプラスミドpET−8c52KのPCR増幅[これは、天然vWFのCys509からCys695残基をコードするMstII−HindIII制限フラグメントを生じさせる]により、内皮下組織の成分、例えばコラーゲンにvWFが結合する部位を作り出す。スルファチドおよび/またはボトロセチンおよび/またはヘパリンおよび/またはコラーゲンそして/またはGP1bに対してvWFが示す親和性(vWF関連II型病状)を修飾する一因となる何らかの残基に対してvWFが結合する部位間の何らかの所望組み合わせを含んでいる、欠失分子変異体または修飾変異体も生じる。別の態様において、このコラーゲンに結合し得るドメインはまた、Pareti他[J.Biol.Chem.(1987)262:13835−13841]が記述した、残基911と1114との間に存在しているvWFフラグメント由来のものであってもよい。3個のC最末端アミノ酸を除き(図2参照)、SAHをコードする遺伝子全体に相当しているHindIII−MstII制限フラグメントに上記フラグメントを連結することにより、SAHの「prepro」エクスポート領域の直ぐ後にSAH−ペプチド型のキメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を含んでいるHindIII制限フラグメントが生じる(図1、パネルA)。これらの制限フラグメントを、プラスミドpYG105のHindIII部位に産生配向でクローン化し、これによって、相当する発現プラスミド、例えばプラスミドpYG1277(SAH−vWF509−695)が生じる。
【0054】
E.7.3. SAHとvWFとの間のキメラの精製および分子特徴
例えば実施例E.7.1.およびE.7.2.に従う発現プラスミドを用いて形質転換したCBS293.91株に相当している培養物上澄み液の中に存在しているキメラの特徴付けを、最初の場合として、SAH部分およびvWF部分に特異的な抗体を用いて行う。図7から9の結果は、SAHとvWFのフラグメントとの間のキメラ蛋白質を酵母K.ラクチスが分泌する能力を有しており、そしてこれらのキメラが免疫学的反応性を示すことを表している。これらのキメラのいくつかを精製することもまた望ましい可能性がある。次に、この培養物を遠心分離(10,000g、30分間)にかけ、その上澄み液を0.22mmフィルター(Millipore)に通した後、分別閾値が30kDaの所にある膜を用いた限外濾過(Amicon)で濃縮した。この得られる濃縮物を、次に、トリス−HCl溶液(50mM、pH8)に対して透析した後、カラムを用いた精製を行う。例えば、Blue−Trisacryl(IBF)使用アフィニティークロマトグラフィーにより、プラスミドpYG1206で形質転換したCBS293.91株の培養上澄み液に相当する濃縮物の精製を行う。イオン交換クロマトグラフィーによる精製もまた用いられ得る。例えば、キメラSAH−vWF470−713の場合、限外濾過後に得られる濃縮物をトリス−HCl溶液(50mM、pH8)に対して透析した後、同じ緩衝液内で平衡にしてカチオン交換カラム(5mL)(S Fast Flow、Pharmacia)の上にその画分20mLを置く。次に、このカラムをトリス−HCl溶液(50mM、pH8)で数回洗浄した後、NaCl勾配(0から1M)により、そのキメラ蛋白質をそのカラムから溶離させる。次に、このキメラ蛋白質を含んでいる画分をプールし、50mMのトリス−HCl溶液(pH8)に対して透析した後、再びSFast Flowカラムの上に置く。このカラムの溶離を行った後、蛋白質を含んでいる画分をプールし、水に対して透析し、凍結乾燥した後、例えば下記の特徴を示す:酵母CBS293.91が分泌する蛋白質の配列決定[SAH−vWF470−704 C471G、C474G]を行うことにより(Applied Biosystem)、SAHで期待されるN末端配列(Asp−Ala−His...)が得られ、このことは、SAHの「pro」領域の残基Arg−Argの二重項のC末端に接して、このキメラの妥当な成熟が生じていることを示している。SAHとvWFとの間のキメラ蛋白質が示す必須単量体特徴もまた、TSK3000カラム[東洋曹達株式会社(Toyo Soda Company)、0.2MのNaSOが入っているカコジル酸塩溶液(pH7)で平衡にした]を用いた時得られる溶離プロファイルによって立証され、例えばキメラ[SAH−vWF470−704 C471G、C474G]は、この条件下で、見掛け分子量が95kDaの蛋白質であるような挙動を示し、このことは、それが単量体特徴を有していることを示している。
【0055】
実施例8:ウロキナーゼから誘導したキメラ
E.8.1. 構築物
例えばPharmaciaが市販しているRT−PCRキットを用い、特定ヒト癌細胞の相当するメッセンジャーRNAから、ウロキナーゼのアミノ末端フラグメントに相当しているフラグメント(ATF:EGF様ドメイン+クリングル(kringle)ドメイン)を入手することができる。ヒトウロキナーゼのATFを含んでいるMstII−HindIII制限フラグメントを図10に示す。このMstII−HindIIIフラグメントにプラスミドpYG404のHindIII−MstIIフラグメントを連結させることにより、SAH分子が遺伝的にATFにカプリングしているキメラ蛋白質をコードするプラスミドpYG1341のHindIIIフラグメントを生じさせることができる(SAH−UK1→135)。同様に、プラスミドpYG1340は、ヒトウロキナーゼの最初の46残基の直ぐ前にSAHを含んでいるキメラをコードするHindIIIフラグメントを含んでいる(SAH−UK1→46、図10参照)。このプラスミドpYG1340(SAH−UK1→46)のHindIII制限フラグメントをプラスミドpYG105(LAC4)およびpYG106(PGK)のHindIII部位に産生配向でクローニングすることにより、それぞれ発現プラスミドpYG1343およびpYG1342が生じる。同様に、このプラスミドpYG1341(SAH−UK1→135)のHindIII制限フラグメントをプラスミドpYG105(LAC4)およびpYG106(PGK)のHindIII部位に産生配向でクローニングすることにより、それぞれ発現プラスミドpYG1345およびpYG1344が生じる。
【0056】
E.8.2. ハイブリッドの分泌
G418を補った豊富培地上で選択を行った後、キメラ蛋白質SAH−UKを成熟形態で分泌する能力を有しているか否かに関して、これらの組換えクローンを試験する。実施例E.9.1.に従う発現プラスミドで形質転換した、K.ラクチスCBS293.91株に相当しているいくつかのクローンを、28℃の選択完全液状培地内でインキュベートする。次に、この細胞上澄み液を、8.5%アクリルアミドゲル使用電気泳動にかけた後、クーマシーブルーを用いたゲル染色により直接か、或はヒトアルブミンに特異的か或はヒトウロキナーゼに特異的なラビットポリクローナル血清を一次抗体として用いた免疫ブロッティングにかけた後、それらの試験を行う。図11の結果は、ハイブリッド蛋白質であるSAH−UK1→46およびSAH−UK1→135を酵母クルイベロミセスが特に良好に分泌することを示している。
【0057】
E.8.3. SAHとウロキナーゼとの間のキメラの精製
実施例E.8.1.に従う発現プラスミドで形質転換したCBS293.91株の培養物を遠心分離にかけた後、この細胞上澄み液を、0.22mmのフィルター(Millipore)に通し、そして次に、分別閾値が30kDaの所にある膜を用いた限外濾過(Amicon)で濃縮した。この得られる濃縮物を、次に、1Mのトリス−HClストック溶液(pH7)で始めて50mMのトリス−HClに調整した後、同じ緩衝液内で平衡にしたアニオン交換カラム(3mL)(D−Zephyr、Sepracor)の上にその画分20mLを置く。次に、NaCl勾配(0から1M)により、そのキメラ蛋白質(SAH−UK1→46またはSAH−UK1→135)をそのカラムから溶離させる。次に、このキメラ蛋白質を含んでいる画分をプールし、50mMのトリス−HCl溶液(pH6)に対して透析した後、再び同じ緩衝液で平衡にしたD−Zephyrカラムの上に置く。このカラムの溶離を行った後、蛋白質を含んでいる画分をプールし、水に対して透析し、凍結乾燥した後、それらが示す生物活性の特徴付け、特に細胞のレセプタからウロキナーゼを追い出す能力に関する特徴付けを行う。
【0058】
実施例9:G−CSFから誘導したキメラ
E.9.1. 構築物
E.9.1.1. SAHのC末端におけるカプリング
例えば下記の方策に従い、ヒトG−CSFの成熟形態を含んでいるMstII−HindIII制限フラグメントを生じさせる。最初に、鋳型として働くプラスミドBBG13に対するプライマーとしてオリゴデオキシヌクレオチドSq2291(5′−CAAGGATCCAAGCTTCAGGGCTGCGCAAGGTGGCGTAG−3′、HindIII部位にアンダーラインを引く)およびSq2292(5′−CGGGGTACCTTAGGCTTAACCCCCCTGGGCCCTGCCAGC−3′、KpnI部位にアンダーラインを引く)を用いた酵素的PCR増幅技術により、KpnI−HindIII制限フラグメントを入手する。プラスミドBBG13は、British Bio−technology Limited、Oxford、英国から入手した、B形態の成熟ヒトG−CSF(174個のアミノ酸)をコードする遺伝子を含んでいる。次に、約550個のヌクレオチドから成る酵素増幅産物を、制限酵素KpnIおよびHindIIIで消化させた後、同じ酵素で切断したベクターpUC19にクローン化し、これによって組換え型プラスミドpYG1255が生じる。このプラスミドは、SAHの直ぐ下流にG−CSFを融合させることを可能にするMstII−HindIII制限フラグメントの給源であり、これのヌクレオチド配列を図12に示す。
【0059】
SAH部分とG−CSFとの間にペプチドリンカーを挿入して、例えば形質導入部分の機能的提示を良好にするのも望ましい可能性がある。例えば、オリゴデオキシヌクレオチドSq2742(5′−TTAGGCTTAGGTGGTGGCGGTACCCCCCTGGGCC−3′、この特別なリンカーのグリシン残基をコードするコドンにアンダーラインを引く)およびSq2741(5′−CAGGGGGGTACCGCCACCACCTAAGCC−3′)[これらは対になってMstII−ApaIフラグメントを生じる]を用い、プラスミドpYG1255のMstII−ApaIフラグメントの置換を行うことによって、MstII−HindIII制限フラグメントを生じさせる。従って、このようにして生じさせたプラスミドはMstII−HindIII制限フラグメントを含んでおり、この配列は、MstII−ApaIフラグメントを除き図12のそれと同じである。
【0060】
プラスミドpYG1255のMstII−HindIIIフラグメントにプラスミドpYG404のHindIII−MstIIフラグメントを連結させることにより、キメラ蛋白質をコードするプラスミドpYG1259のHindIIIフラグメントを生じさせることが可能であり、ここでは、翻訳段階における遺伝的カプリングにより、そのSAH分子のC末端にそのB形態の成熟G−CSFが位置する(SAH−G.CSF)。
【0061】
翻訳段階における遺伝的カプリングにより該SAH分子のC末端にそのB形態の成熟G−CSFが位置するキメラ蛋白質と共に特定のペプチドリンカーをコードするところの、MstII−ApaIフラグメント以外は同じHindIII制限フラグメントもまた容易に生じさせ得る。例えば、このリンカーは、プラスミドpYG1336のHindIIIフラグメントの中に4個のグリシン残基を含んでいる(キメラSAH−Gly−G.CSF)。
【0062】
プラスミドpYG1259のHindIII制限フラグメントを、発現プラスミドpYG105のHindIII制限部位に産生配向でクローン化し、これによって、発現プラスミドpYG1266が生じる(SAH−G.CSF)。別の例において、プラスミドpYG1259のHindIII制限フラグメントを、プラスミドpYG106のHindIII制限部位に産生配向でクローン化することにより、プラスミドpYG1267が生じる。プラスミドpYG1266とpYG1267は、K.ラクチスのLAC4プロモーター(プラスミドpYG1266)またはS.セレビシエのPGKプロモーター(プラスミドpYG1267)をコードするSalI−HindIII制限フラグメントを除き互いに同質の遺伝子である。
【0063】
別の例において、プラスミドpYG1336(キメラSAH−Gly−G.CSF)のHindIII制限フラグメントを、プラスミドpYG105(LAC4)およびpYG106(PGK)のHindIII部位に産生配向でクローン化することにより、それぞれ発現プラスミドpYG1351およびpYG1352が生じる。
【0064】
E.9.1.2. SAHのN末端におけるカプリング
特定態様において、部位特異的変異誘発とPCR増幅を一緒にした技術を用いることで、シグナルペプチド(例えばSAHのprepro領域)と、G−CSF活性を示す遺伝子を含んでいる配列と、成熟形態のSAHまたはそれの分子変異体の1つとの間の翻訳カプリングの結果として生じる、キメラ蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を構築することができる(パネルBのキメラ、図1参照)。これらのハイブリッド遺伝子は、好適には、翻訳開始ATGの5’および翻訳停止コドンの3’で、HindIII制限部位に境を接している。例えば、オリゴデオキシヌクレオチドSq2369(5′−GTTCTACGCCACCTTGCGCAGCCCGGTGGAGGCGGTGATGCACACAAGAGTGAGGTTGCTCATCGG−3′、アンダーラインを引いた残基(任意)は、この特別なキメラにおいて、4個のグリシン残基を含んでいるペプチドリンカーに相当している)を用いた部位特異的変異誘発により、プラスミドBBG13が有する成熟形態のヒトG−CSFを成熟形態のSAHの直ぐ上流に翻訳段階で位置させることができ、これによって、中間プラスミドAが生じる。同様に、オリゴデオキシヌクレオチドSq2338[5′−CAGGGAGCTGGCAGGGCCCAGGGGGGTTCGACGAAACACACCCCTGGAATAAGCCGAGCT−3′(非コーディングストランド)、成熟形態のヒトG−CSFが有する最初のN末端残基をコードするヌクレオチドに相補的なヌクレオチドにアンダーラインを引く]を用いた部位特異的変異誘発により、成熟形態のヒトG−CSFの直ぐ上流にSAHのprepro領域を翻訳読み段階でカプリングさせることができ、これによって、中間プラスミドBが生じる。次に、このプラスミドBのHindIII−SstIフラグメント(SAHの結合用prepro領域+成熟G−CSFのN末端フラグメント)とプラスミドAのSstI−HindIII−フラグメント[結合用成熟G−CSF−(グリシン)x4−成熟SAH]を結合させることによって、ペプチド−SAH型のキメラ蛋白質をコードするHindIIIフラグメントが生じる(図1、パネルB参照)。プラスミドpYG1301は、SAHのprepro領域の直ぐ下流に融合しているキメラG.CSF−Gly−SAHをコードする上記特異的HindIII制限フラグメントを含んでいる(図13)。このHindIII制限フラグメントをプラスミドpYG105(LAC4)およびpYG106(PGK)のHindIII部位に産生配向でクローン化することにより、それぞれ発現プラスミドpYG1302およびpYG1303が生じる。
【0065】
E.9.2. ハイブリッドの分泌
G418を補った豊富培地上で選択した後、組換えクローンを、SAHとG−CSFとの間のキメラ蛋白質の成熟形態を分泌する能力を有しているか否かに関して試験した。プラスミドpYG1266またはpYG1267(SAH−G.CSF)、pYG1302またはpYG1303(G.CSF−Gly−SAH)或はまたpYG1351またはpYG1352(SAH−Gly−G.CSF)で形質転換した株K.ラクチスCBS293.91に相当しているいくつかのクローンを、28℃の選択完全液状培地内でインキュベートする。次に、これらの細胞上澄み液を、8.5%アクリルアミドゲル使用電気泳動にかけた後、クーマシーブルーを用いたゲル染色によって直接的にか、或はヒトG−CSFに特異的なラビットポリクローナル抗体またはヒトアルブミンに特異的なラビットポリクローナル血清を一次抗体として用いた免疫ブロッティングを行った後、それらの試験を行った。図15の結果は、ヒトアルブミン(パネルC)およびヒトG−CSF(パネルB)両方に特異的な抗体がそのハイブリッド蛋白質SAH−G.CSFを認識することを示している。図16の結果は、酵母クルイベロミセスがキメラSAH−Gly−G.CSF(レーン3)を特に良好に分泌することを示しいるが、これは恐らくは、このキメラが分泌経路内を通っている間これらの2つの部分が独立して折り畳まれるにはそのSAH部分とG−CSF部分との間にペプチドリンカーが存在している方が好ましいことによるものであろう。更に、この酵母クルイベロミセスはまたN末端融合物(G.CSF−Gly−SAH)も分泌する(図16、レーン1)。
【0066】
E.9.3. SAHとG−CSFとの間のキメラの精製および分子特徴
例えば実施例E.9.1.に従う発現プラスミドを用いて形質転換したCBS293.91株の培養物を遠心分離にかけた後、その培養上澄み液を0.22mmフィルター(Millipore)に通し、そして次に、分別閾値が30kDaの所にある膜を用いた限外濾過(Amicon)で濃縮した。この得られる濃縮物を、次に、1Mのトリス−HClストック溶液(pH6)を用い50mMのトリス−HClに調整した後、同じ緩衝液内で平衡にしたイオン交換カラム(5mL)(Q Fast Flow、Pharmacia)の上にその画分20mLを置く。次に、NaCl勾配(0から1M)により、そのキメラ蛋白質をそのカラムから溶離させる。次に、このキメラ蛋白質を含んでいる画分をプールし、50mMのトリス−HCl溶液(pH6)に対して透析した後、再び同じ緩衝液で平衡にしたQ Fast Flowカラム(1mL)の上に置く。このカラムの溶離を行った後、蛋白質を含んでいる画分をプールし、水に対して透析し、凍結乾燥した後、例えば下記の特徴を示す:酵母CBS293.91が分泌する蛋白質SAH−G.CSFの配列決定を行うことにより(Applied Biosystem)、SAHで期待されるN末端配列(Asp−Ala−His...)が得られ、このことは、SAHの「pro」領域の残基Arg−Argの二重項のC末端に接して、このキメラの妥当な成熟が生じていることを示している(図2)。
【0067】
実施例10:免疫グロブリンから誘導したキメラ
E.10.1. 構築物
リンカーペプチド[Bird他、「Science (1988)242:423;Huston他(1988)「Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879]により免疫グロブリン(Ig)の重鎖と軽鎖を互いに連結させた可変フラグメントをコードするFv’フラグメントを、遺伝工学技術で構築することができる。図式的には、与えられたIgが有する重鎖と軽鎖の可変領域(約120個の残基)を、例えばPharmaciaが市販しているRT−PCRキット(マウスScFvモジュール)を用いて、相当するハイブリドーマのメッセンジャーRNAからクローン化する。第二段階で、合成した連結用ペプチド、例えばリンカー(GGGGS)x3を用いた遺伝工学により、これらの可変領域を遺伝的にカプリングさせる。マウスのハイブリドーマが分泌する免疫グロブリンのFv’フラグメントを含んでいるMstII−HindIII制限フラグメントを図17に示す。このMstII−HindIIIフラグメントにプラスミドpYG404のHindIII−MstIIフラグメントを連結させることにより、プラスミドpYG1382のHindIIIフラグメントを生じさせることが可能であり、これは、図17のFv’フラグメントにSAH分子が遺伝的にカプリングしているキメラ蛋白質(キメラSAH−Fv’)をコードする。プラスミドpYG1382のHindIII制限フラグメントを、プラスミドpYG105(LAC4)およびpYG106(PGK)のHindIII部位に産生配向でクローン化することにより、それぞれ発現プラスミドpYG1383およびpYG1384が生じる。
【0068】
E.10.2. ハイブリッドの分泌
G418を補った豊富培地上で選択した後、組換えクローンを、キメラ蛋白質SAH−Fv’の成熟形態を分泌する能力を有しているか否かに関して試験した。プラスミドpYG1383またはpYG1384(SAH−Fv’)で形質転換した株K.ラクチスCBS293.91に相当しているいくつかのクローンを、28℃の選択完全液状培地内でインキュベートする。次に、これらの細胞上澄み液を、8.5%アクリルアミドゲル使用電気泳動にかけた後、クーマシーブルーを用いたゲル染色によって直接的にか、或はヒトアルブミンに特異的なラビットポリクローナル血清を一次抗体として用いた免疫ブロッティングを行った後、それらの試験を行うか、或はマウス由来の免疫グロブリンに特異的なビオチニル化抗体と一緒に直接培養する。図18の結果は、そのハイブリッド蛋白質SAH−Fv’がヒトアルブミンに特異的な抗体によって認識され(パネルC)そしてマウス免疫グロブリンに対して免疫学的反応性を示すビオチニル化ヤギ抗体と反応する(パネルB)ことを示している。
【0069】
実施例11:キメラが示す生物学的活性
E.11.1. インビトロにおける生物学的活性
E.11.1.1. SAHとvWFとの間のキメラ
Prior他[Bio/Technology(1992)10:66]が記述した方法に従って、パラホルムアルデヒドで固定したヒト血小板凝集の用量依存阻害を測定することによって、これらの産物が示す拮抗作用を決定する。血小板凝集計(PAP−4、Bio Data、Horsham、PA、USA)内で上記測定を実施するが、これは、vWFの存在下37℃で撹拌しながら、ボトロセチン(8.2mg/mL)と種々の希釈率(濃度)の試験産物が示す光学透過率の経時的変動を記録するものである。各測定において、パラホルムアルデヒド(0.5%)で安定化した後、[NaCl(137mM);MgCl(1mM);NaHPO(0.36mM);NaHCO(10mM);KCl(2.7mM);グルコース(5.6mM);SAH(3.5mg/mL);HEPES緩衝液(10mM、pH7.35)]の中に再懸濁させたヒト血小板の懸濁液の400mL(8x10個の血小板)を、該血小板凝集計に備わっている筒状タンク(8.75x50mm、Wellcom Distriwell、159 rue Nationale、パリ)の中で4分間37℃で前インキュベートした後、非発熱性調剤用賦形剤[マンニトール(50g/L);クエン酸(192mg/L);L−リジン一塩酸塩(182.6mg/L);NaCl(88mg/L);NaOH(1M)を添加することによってpHを3.5に調整]の中で試験産物を種々の希釈率で希釈した溶液またはこの調剤用賦形剤単独(コントロールアッセイ)を30mL補充する。次に、その得られる懸濁液を37℃で1分間インキュベートした後、ヒトvFW[American Bioproducts、Parsippany、NJ、USA;ホルムアルデヒド(2x10個の血小板/mL)で固定した血小板と、vFWを0から100%含んでいるヒト血漿とリストセチン(10mg/mL)を用いたPAP−4(Platelet Aggregation Profiler(商標))の使用に関する推奨に従って測定したフォンビルブラント活性11%、36−45頁参照:vWProgram(商標)]の12.5mLを加え、37℃で1分間インキュベートした後、12.5mLのボトロセチン溶液[Sugimoto他、Biochemistry(1991)266:18172が記述した操作に従って、ボトロプス・ジャララカ(Bothrops jararaca)の凍結乾燥毒液(Sigma)から精製]を添加する。次に、そのタンクの中に入れた磁気棒(Wellcome Distriwell)を用いこの血小板凝集計が与える1,100rpmの磁気撹拌で撹拌しながら2分間、その透過率の読みを時間の関数として記録する。従って、経時的光学透過率の平均変動(各希釈毎にn5)は、この試験産物が種々の濃度で存在しているか或は存在していない場合の、vWFとボトロセチンが存在していることが原因となる血小板凝集の尺度である。次に、このような記録から、その産物の各濃度によって生じる血小板凝集の阻害%を決定し、そしてlog−log目盛りの中に、その産物希釈率の逆数の関数として、その阻害%を与える直線をプロットする。次に、IC50(即ち、この凝集の50%阻害をもたらす産物濃度)を上記直線から決定する。図8の表は、本発明のSAH−vWFキメラのいくつかが示すIC50値を比較したものであり、これらのいくつかは、Prior他[Bio/Technology(1992)10:66]が記述しそして標準値としてそのアッセイの中に含めている産物RG12986よりも良好な、血小板凝集の拮抗薬であることを示している。ブタ血漿のvWF(Sigma)存在下で同じヒト血小板凝集阻害試験を行うことにより、更に、本発明のハイブリッドのいくつか、特にいくつかのIIB型変移体が、ボトロセチン型補助因子の存在なしで血小板凝集の非常に良好な拮抗薬であることを示すことが可能である。また、Ware他[Proc.Natl.Acad.Sci.(1991)88:2946]が最初に記述した操作に従い、新鮮な血小板存在下(10個の血小板/mL)22℃で30分間インキュベートすると、血小板GPIb[Handa M.他(1986)、J.Biol.Chem.261:12579]にvWFが結合するのを競合的に阻害する阻害剤であるモノクローナル抗体125I−LJ−IB1(10mg/mL)が追い出されることにより、これらの特定キメラが示すボトロセチン非依存拮抗作用が実証され得る。
【0070】
E.11.1.2. SAHとG−CSFとの間のキメラ
本質的にTsuchiya他[Proc.Natl.Acad.Sci.(1986)83 7633]が記述した操作に従い、トリチウム化したチミジンの取り込みを測定することにより、その精製したキメラがIL3依存マウス系NFS60をインビトロ増殖させる能力を有するか否かを試験する。各キメラにおいて、1ゾーン内の3地点試験(産物の3種希釈率)において3回から6回測定を実施する、即ち活性を示す産物の量と標識チミジン(Amersham)の取り込みとの間の関係は直線関係にある。哺乳動物細胞内で発現する組換え型ヒトG−CSFから成る参照産物が示す活性もまた、各ミクロタイタープレートの中に計画的に組み入れる。図20の結果は、酵母クルイベロミセスが分泌しそして実施例E.9.3.に従って精製したキメラSAH−G.CSF(pYG1266)はNFS60系が細胞増殖するためのシグナルをインビトロで形質導入する能力を有していることを示している。この特別の場合において、このキメラが示す特異的活性(cpm/モル濃度)は、参照G−CSF(カプリングしていない)のそれよりも約7倍低い。
【0071】
E.11.2. インビボにおける生物学的活性
ラット(Sprague−Dawley/CD、250−300g、8−9週)に皮下注射した後、SAH/G−CSFキメラがインビボで顆粒球形成に対して示す刺激活性を試験し、そして哺乳動物細胞を用いて発現させた参照G−CSFのそれと比較する。7匹の動物から成る割合で試験する各産物を、連続して7日間(D1−D7)100mLの割合で背肩甲領域に皮下注射する。日D−6、D2(2回目の注射をする前)、D5(5回目の注射を行う前)およびD8に500mLの血液を採取し、そして血球算定を実施する。この試験においてキメラSAH−G.CSF(pYG1266)が示す特異的活性(好中球形成(neutropoiesis)単位/注射モル)は参照G−CSFのそれと同じである(図21)。この特異的キメラはインビトロで参照G−CSFのそれよりも7倍低い特異的活性を示していたことから(図20)、これは従って、SAH上にG−CSFを遺伝的にカプリングさせるとそれの薬物動態学特性が好適に修飾されることを示している。
【0072】
本発明は以下の通りである。
(1)アルブミンまたはアルブミンの変異体に遺伝的にカプリングしている、治療学的活性を示すポリペプチドから誘導される活性部分を含んでいる組換えポリペプチド。
(2)治療学的活性を示す該ポリペプチドがヒト由来のポリペプチドである(1)記載のポリペプチド。
(3)治療学的活性を示す該ポリペプチドが、酵素、酵素阻害剤、抗原、抗体、ホルモン、凝固因子、インターフェロン、サイトカイン、成長因子および/または分化因子、骨組織の発生/吸収に関与している因子、化学走性因子、細胞運動性または移動因子、細胞増殖抑制性因子、殺菌または抗真菌因子、或は血漿または間隙性接着分子または細胞外マトリックスの、全てまたは一部から選択されることを特徴とする(2)記載のポリペプチド。
(4)治療学的活性を示す該ポリペプチドが、循環のおよび間隙の区分の病理学に関与している分子および/または細胞相互作用の作動薬または拮抗薬であるいずれかのペプチド配列から選択されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチド。
(5)該活性部分が、
(a)全ペプチド構造、または
(b)(a)のフラグメントまたは構造的修飾(1種以上の残基の変異、置換、付加および/または欠失)によって(a)から誘導されそして治療学的活性を保持している構造、から選択される構造を有していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリペプチド。
(6)該活性部分をアルブミンのN末端にカプリングさせることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のポリペプチド。
(7)該活性部分をアルブミンのC末端にカプリングさせることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のポリペプチド。
(8)該活性部分が数回現れていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のポリペプチド。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
(10)発現したポリペプチドの分泌を可能にする「リーダー」配列を含んでいることを特徴とする(9)記載のヌクレオチド配列。
(11)転写開始領域および任意の転写停止領域の制御下で(9)または(10)に記載のヌクレオチド配列を含んでいる発現カセット。
(12)(11)記載の発現カセットを含んでいる自己複製プラスミド。
(13)(9)または(10)に記載のヌクレオチド配列、または(11)記載の発現カセット、または(12)記載のプラスミドが挿入されている、真核もしくは原核の組換え細胞。
(14)酵母、動物細胞、菌・カビまたは細菌であることを特徴とする(13)記載の組換え細胞。
(15)酵母であることを特徴とする(14)記載の組換え細胞。
(16)サッカロミセスまたはクルイベロミセス属の酵母であることを特徴とする(15)記載の組換え細胞。
(17)(13)〜(16)のいずれかに記載の組換え細胞を発現に適した条件下で培養した後、産生されるポリペプチドを回収することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のポリペプチドの製造方法。
(18)(1)〜(8)のいずれかに記載のポリペプチド類を1種以上含んでいる薬学組成物。
(19)遺伝治療で用いられ得る、(9)〜(11)のいずれかに記載のヌクレオチド配列を含んでいる薬学組成物。
【0073】
配列表
(2)配列同定番号1に関する情報:
(i)配列特徴:
(A)長さ:1859個の塩基対
(B)種類:核酸
(C)鎖:2本鎖
(D)トポロジー:線形
(ii)分子型:cDNA
(iii)仮定:なし
(iii)アンチセンス:なし
(ix)性質:
(A)名称/鍵:CDS
(B)位置:26...1855
(C)他の情報:/産物=「SAH−ペプチド型キメラ」
(ix)性質:
(A)名称/鍵:混ざり合った性質(misc feature)
(B)位置:1842...1848
(C)他の情報:/標準名=「Mst II部位」
【表1】

【表2】

【0074】
(2)配列同定番号2に関する情報:
(i)配列特徴:
(A)長さ:750個の塩基対
(B)種類:核酸
(C)鎖:2本鎖
(D)トポロジー:線形
(ii)分子型:cDNA
(iii)仮定:なし
(iii)アンチセンス:なし
(ix)性質:
(A)名称/鍵:CDS
(B)位置:3...746
(C)他の情報:/産物=「キメラSAH−vWF470のC末端(C−ter)フラグメント」
【表3】

【0075】
(2)配列同定番号3に関する情報:
(i)配列特徴:
(A)長さ:423個の塩基対
(B)種類:核酸
(C)鎖:2本鎖
(D)トポロジー:線形
(ii)分子型:cDNA
(iii)仮定:なし
(iii)アンチセンス:なし
(ix)性質:
(A)名称/鍵:CDS
(B)位置:3...419
(C)他の情報:/産物=「キメラSAH−UK1−135のC末端フラグメント」
【表4】

【0076】
(2)配列同定番号4に関する情報:
(i)配列特徴:
(A)長さ:541個の塩基対
(B)種類:核酸
(C)鎖:2本鎖
(D)トポロジー:線形
(ii)分子型:cDNA
(iii)仮定:なし
(iii)アンチセンス:なし
(ix)性質:
(A)名称/鍵:CDS
(B)位置:3...536
(C)他の情報:/産物=「キメラSAH−G.CSFのC末端フラグメント」
【表5】

【0077】
(2)配列同定番号5に関する情報:
(i)配列特徴:
(A)長さ:2455個の塩基対
(B)種類:核酸
(C)鎖:2本鎖
(D)トポロジー:線形
(ii)分子型:cDNA
(iii)仮定:なし
(iii)アンチセンス:なし
(ix)性質:
(A)名称/鍵:CDS
(B)位置:26...2389
(C)他の情報:/産物=「SAHのprepro領域の下流にあるキメラG.CSF−Gly−SAH」
(ix)性質:
(A)名称/鍵:misc recomb
(B)位置:620..631
(C)他の情報:/標準名=「PolyGlyリンカー」
(ix)性質:
(A)名称/鍵:misc feature
(B)位置:106..111
(C)他の情報:/標準名=「Apa I部位」
【表6】

【表7】

【0078】
(2)配列同定番号6に関する情報:
(i)配列特徴:
(A)長さ:756個の塩基対
(B)種類:核酸
(C)鎖:2本鎖
(D)トポロジー:線形
(ii)分子型:cDNA
(iii)仮定:なし
(iii)アンチセンス:なし
(ix)性質:
(A)名称/鍵:CDS
(B)位置:3...752
(C)他の情報:/産物=「キメラSAH−Fv’のC末端フラグメント」
(ix)性質:
(A)名称/鍵:misc recomb
(B)位置:384..428
(C)他の情報:/標準名=「合成リンカー」
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0079】
下記の図の中に示すプラスミドの表示は、一定の割合でプロットしたものでなく、実施したクローニングを理解するに重要な制限部位のみを示したものである。
【図1】SAH−ペプチド型(A)またはペプチド−SAH型(B)またはペプチド−SAH−ペプチド型(C)のキメラの図式的表示。用いる省略形は下記の通りである:M/LP − 翻訳開始メチオニン残基(任意に、分泌のためのシグナル配列が後に続いている);SAH − 成熟したアルブミンまたはそれの分子変異体の1つ;PEP − 与えられた治療特性を示す天然もしくは人工源のペプチド。このPEP配列は、A型、B型またはC型分子内に数回存在している可能性がある。黒色矢印は、この成熟した蛋白質のN末端を示している。
【図2】prepro−SAH−ペプチド型のキメラ蛋白質をコードするHindIII制限フラグメントのヌクレオチド配列の例。黒色矢印は、SAHの「前(pre)」と「後ろ(pro)」領域の末端を示している。MstII制限部位にアンダーラインを引き、そして翻訳の停止を指定するコドンを太字で示す。
【図3】図2の続きである。
【図4】プラスミドpYG105に関する制限地図、並びに本発明のキメラ蛋白質を発現させるためのプラスミドの構築を行う遺伝方策。用いる省略形:P − 転写プロモーター;T − 転写ターミネーター;IR − プラスミドpKD1の逆方向反復配列;LP − 分泌用シグナル配列;ApとKmはそれぞれアンピシリン(大腸菌)およびG418(酵母)に対する耐性のための遺伝子を示している。
【図5】フォンビルブラント因子から誘導したMstII−HindIII制限フラグメントのヌクレオチド配列の例。プラスミドpYG1248(パネルA)、pYG1214(パネルB)、pYG1206[パネルC、この特別なキメラでは、このvWFのLeu694残基もまたこのSAHの最終残基(Leu585)である]およびpYG1223(パネルD)のMstII−HindIIIフラグメントの構造の表示;これらのアミノ酸の番号付けは、Titani他[Biochemistry 25(1986)3171−3184]に従う成熟vWFの番号付けに相当している。これらのMstIIおよびHindIII制限部位にアンダーラインを引き、そして翻訳停止コドンを太字で示す。
【図6】プラスミドpYG1248のMstII−HindIII制限フラグメントのヌクレオチド配列。これらのアミノ酸の番号付け(右側のコラム)は、成熟したキメラ蛋白質SAH−vWF470→713(829個の残基)に相当している。この成熟vWFのThr470、Leu494、Asp498、Pro502、Tyr508、Leu694、Pro704およびPro708残基にアンダーラインを引く。
【図7】プラスミドpYG1248(SAH−vWF Thr470→Val713のキメラを発現させるためのプラスミド)およびpKan707(コントロールプラスミド)で形質転換した菌株CBS293.91を4日間培養(三角フラスコ)した後分泌される材料の特徴。この実験では、パネルA、BおよびCで得られるものを同じゲル(8.5%のSDS−PAGE)上で泳動させた後、個別に処理した。 A、クーマシーブルー染色;分子量標準(レーン2);YPL培地内においてプラスミドpKan707で形質転換した培養物の50μLに相当する上澄み液(レーン1)、またはYPD培地内におけるpYG1248(レーン3)またはYPL培地内におけるpYG1248(レーン4)。 B、ヒトvWFに特異的なマウス抗体を用いた後分泌される材料の免疫学的特徴:ビオチニル化した分子量標準を用いる以外はAと同じレジェンド。 C、ヒトアルブミンに特異的なラビット抗体を用いた後分泌される材料の免疫学的特徴:YPL培地内においてプラスミドpKan707で形質転換した培養物の50μLに相当する上澄み液(レーン1)、またはYPD培地内におけるpYG1248(レーン2)またはYPL培地内におけるpYG1248(レーン3)。
【図8】プラスミドpYG1206で形質転換した菌株CBS293.91が本発明のキメラを分泌する時の速度論(SAH−vWF Leu694−Pro708)。 A、クーマシーブルー染色;分子量標準(レーン1);「Fedバッチ」培養物をYPD培地に2.5μL入れて24時間(レーン2)、40時間(レーン3)または46時間(レーン4)増殖させたものに相当する上澄み液。 B、ヒトvWFに特異的なマウス抗体を用いた後分泌される材料の免疫学的特徴:ビオチニル化した分子量標準を用いる以外はAと同じレジェンド。
【図9】プラスミドpKan707(コントロールプラスミド、レーン2)、pYG1206(レーン3)、pYG1214(レーン4)およびpYG1223(レーン5)で形質転換したK.ラクチスが分泌する材料の特徴;分子量標準(レーン1)。これらの堆積物は、YPD培地中で増殖させた後の静置培養物から得られる上澄み液の50μLを8.5%のアクリルアミドゲル上で泳動させた後クーマシーブルーで染色したものに相当している。
【図10】プラスミドpYG1341のMstII−HindIII制限フラグメントのヌクレオチド配列(SAH−UK1→135)。プラスミドpYG1340のMstII−HindIII制限フラグメントの中に存在しているEGF様ドメイン(UK1→46)の範囲を示している。これらのアミノ酸の番号付けは、成熟したキメラ蛋白質SAU−UK1→135(720個の残基)に相当している。
【図11】プラスミドpYG1343(SAH−UK1−46)およびpYG1345(SAH−UK1−135)で個別に形質転換した菌株CBS293.91を用い、4日間増殖させた後(YPL+G418培地)のSAH−UK1−46およびSAH−UK1−135キメラ分泌。これらの堆積物(50μLの培養物に相当している)を、8.5%のPAGE−SDSゲル上で泳動させた後、クーマシーブルーで染色した:プラスミドpKan707(レーン1)、pYG1343(レーン3)またはpYG1345(レーン4)で形質転換したクローンから得られる上澄み液;分子量標準(レーン2)。
【図12】プラスミドpYG1259のMstII−HindIII制限フラグメントのヌクレオチド配列(SAH−G.CSF)。G−CSF部分の範囲(174個の残基)を示している。ApaIおよびSstI(SstI)制限部位にアンダーラインを引く。これらのアミノ酸の番号付けは、成熟したキメラ蛋白質SAH−G.CSF(759個の残基)に相当している。
【図13】プラスミドpYG1301のHindIII制限フラグメントのヌクレオチド配列(キメラG.CSF−Gly−SAH)。黒色矢印は、SAHの「前(pre)」と「後ろ(pro)」領域の末端を示している。ApaI、SstI(SacI)およびMstII制限部位にアンダーラインを引く。G.CSF(174個の残基)とSAH(585個の残基)ドメインを合成リンカーGGGGが分離している。これらのアミノ酸の番号付けは、成熟したキメラ蛋白質G.CSF−Gly−SAH(763個の残基)に相当している。翻訳停止コドンとHindIII部位との間に存在しているヌクレオチド配列は、ヨーロッパ特許出願公開第361 991号の中に記述されている如きSAH相補DNA(cDNA)由来のものである。
【図14】図13の続きである。
【図15】プラスミドpYG1266(SAH−G.CSF型のキメラを発現させるためのプラスミド)およびpKan707(コントロールプラスミド)で形質転換した菌株CBS293.91を4日間培養(三角フラスコ)した後分泌される材料の特徴。この実験では、パネルA、BおよびCで得られるものを同じゲル(8.5%のSDS−PAGE)上で泳動させた後、個別に処理した。 A、クーマシーブルー染色;分子量標準(レーン2);YPL培地内においてプラスミドpKan707で形質転換した培養物の100μLに相当する上澄み液(レーン1)、またはYPD培地内におけるpYG1266(レーン3)またはYPL培地内におけるpYG1266(レーン3)。 B、ヒトG−CSFに特異的な一次抗体を用いた後分泌される材料の免疫学的特徴:Aと同じレジェンド。 C、ヒトアルブミンに特異的な一次抗体を用いた後分泌される材料の免疫学的特徴:Aと同じレジェンド。
【図16】プラスミドpYG1267(キメラSAH−G.CSF)、pYG1303(キメラG.CSF−Gly−SAH)およびpYG1352(キメラSAH−Gly−G.CSF)で形質転換した菌株CBS293.91を4日間培養(三角フラスコ、YPD培地中)した後分泌される材料を8.5%のSDS−PAGE上で泳動させた後の特徴。 A、クーマシーブルー染色;プラスミドpYG1303(レーン1)、pYG1267(レーン2)またはpYG1352(レーン3)で形質転換した培養物の100μLに相当する上澄み液;分子量標準(レーン4); B、ヒトG−CSFに特異的な一次抗体を用いた後分泌される材料の免疫学的特徴:Aと同じレジェンド。
【図17】プラスミドpYG1382のMstII−HindIII制限フラグメントのヌクレオチド配列(SAH−Fv’)。このFv’フラグメントのVH(124個の残基)とVL(107個の残基)ドメインを合成リンカー(GGGGS)x3が分離している。これらのアミノ酸の番号付けは、成熟したキメラ蛋白質SAH−Fv’(831個の残基)に相当している。
【図18】プラスミドpYG1383(LAC4)で形質転換した菌株CBS293.91を、三角フラスコ中28℃で、YPD培地(レーン2)またはYPL(レーン3)内で4日間増殖した後のキメラSAH−Fv’分泌;分子量標準(レーン1)。200μLの培養物に相当している堆積物(エタノールで沈澱)をPAGE−SDSゲル(8.5%)上で泳動させる。 A、このゲルのクーマシーブルー染色。 B、SAHに特異的な一次抗体を用いた後分泌される材料の免疫学的特徴。
【図19】ホルムアルデヒドで固定したヒト血小板凝集に関するインビトロ拮抗作用のアッセイ:標準RG12986と比較したハイブリッドSAH−vWF694−708、[SAH−vWF470−713 C471G、C474G]および[SAH−vWF470−704 C471G、C474G]のIC50。C.Prior他が記述した方法[Bio/Technology(1992)10 66]に従い、ヒトvWFの存在下37℃で撹拌しながらボトロセチン(botrocetin)(8.2mg/mL)と種々の希釈率の試験産物が示す光学透過率の変動を記録する血小板凝集計を用い、この血小板凝集の用量依存阻害測定を実施する。次に、コントロール凝集(産物の存在なし)を半分阻害することを可能にするその産物の濃度を決定する(IC50)。
【図20】マウス株NFS60のインビトロ細胞増殖に対する活性。6時間インキュベートした後、細胞核の中に取り込まれる放射能(H−チミジン)をy軸上に示し(cpm)、そしてx軸上に表す産物の量をモル濃度(任意単位)で示す。
【図21】ラットにおける顆粒球形成に対するインビボ活性。好中球の数(7匹の動物の平均)を時間の関数としてy軸上に示す。試験した産物は、キメラSAH−G.CSF(pYG1266)(4または40mg/ラット/日)、参照G−CSF(10mg/ラット/日)、クルイベロミセス・ラクチス上澄み液から精製した組換え型SAH(SAH、30mg/ラット/日、ヨーロッパ特許出願公開第361 991号を参照)、または生理食塩水である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟ヒトエリスロポイエチンと成熟ヒトアルブミンとを含んでなる、融合タンパク質。
【請求項2】
エリスロポイエチンがアルブミンのN末端に融合されてなる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
エリスロポイエチンがアルブミンのC末端に融合されてなる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
タンパク質が分泌用シグナル配列を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる、核酸分子。
【請求項6】
ベクター配列を更に含んでなる、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
プロモーター配列を更に含んでなる、請求項5または6に記載の核酸分子。
【請求項8】
プロモーター配列が下記群から選択されるいずれかである、請求項7に記載の核酸分子:
a ハイブリッドプロモーター、
b 構成的プロモーター、
c 調節可能プロモーター、
d 酵母ホスホグリセラートキナーゼ(PGK)プロモーター、
e 酵母グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GDP)プロモーター、
f 酵母ラクターゼ(LAC4)プロモーター
g 酵母エノラーゼ類(ENO)プロモーター、
h 酵母アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)プロモーター、
i 酵母酸ホスフェート(PHO5)プロモーター、
j ラムダバクテリオファージPプロモーター、
k ラムダバクテリオファージPプロモーター、
l トリプトファンPtrpプロモーター、および
m ラクトースPlacプロモーター。
【請求項9】
選択マーカーをコードする配列を更に含んでなる、請求項5〜8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
選択マーカーが下記群から選択されるいずれかである、請求項9に記載の核酸分子:
a URA3遺伝子、
b ゲネチシン耐性、
c 金属イオン耐性、および
d アンピシリン耐性。
【請求項11】
転写終止領域を更に含んでなる、請求項5〜10のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
請求項5〜11のいずれか一項に記載の核酸分子を含んでなる、宿主細胞。
【請求項13】
宿主細胞が原核細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
宿主細胞が真核細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項15】
宿主細胞が動物細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項16】
動物細胞がCHO細胞またはCOS細胞である、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
宿主細胞が真菌である、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項18】
宿主細胞が酵母である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
酵母がサッカロミセス属である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
融合タンパク質を生産する方法であって、
a 請求項12〜19のいずれか一項に記載の宿主細胞を、核酸分子によりコードされる融合タンパク質の生産に適した条件下で培養すること、および
b 融合タンパク質を回収すること
を含んでなる方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法により生産された融合タンパク質。
【請求項22】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含んでなる、薬学組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−306939(P2007−306939A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214102(P2007−214102)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【分割の表示】特願2003−8385(P2003−8385)の分割
【原出願日】平成5年1月28日(1993.1.28)
【出願人】(591156825)アベンテイス・フアルマ・ソシエテ・アノニム (7)
【氏名又は名称原語表記】Aventis Pharma S.A.
【Fターム(参考)】