説明

新規な置換された2−アミノイミダゾール、その製造方法、その医薬または診断薬としての使用、および、その化合物を含有する医薬品

【課題】多様な疾患の予防または治療において、有用であり、とりわけ、腎疾患、例えば急性もしくは慢性の腎不全、胆管機能の不全、呼吸障害、例えばいびきもしくは睡眠時無呼吸、または、脳血管発作の治療で用いることができる化合物の提供。
【解決手段】式(I):


の化合物、ならびにその製薬的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム・プロトン交換体、特にサブタイプ3(NHE3)を阻害し、そして種々の疾患の予防または治療で用いることができる、2−アミノイミダゾール型の化合物に関する。そのために、これらの化合物は、とりわけ、腎障害、例えば急性もしくは慢性の腎不全、胆管機能障害、呼吸障害、例えばいびきもしくは睡眠時無呼吸、または、卒中、のために用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
R1およびR2は、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、1個または2個の二重結合を含む、5−、6−、7−または8−員の炭素環であり、
ここで、この環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12個のF原子、および/またはOH、NR9R10、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有す
るアルコキシの群からの1個もしくは2個の基で置換されており、
R9およびR10は、それぞれ独立して、H、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を
有するアルキルであり;
または、
R1およびR2は、それぞれ独立して、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、またはフェニルであり、
ここで、炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R1およびR2は、両方が同時に水素であることはなく;
R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシであり、
ここで、炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R3およびR7は、両方が同時に水素であることはなく;
R8は、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または3、4もしくは5個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、
ここで、炭素鎖またはシクロアルキル基は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換されるものとするが、
R3がClで、R4、R5、R6、R7およびR8が水素の場合は、R1およびR2は、同時にメチルではなく、そして、
(2,6−ジクロロフェニル)−(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミ
ンは除外するものとする]
の化合物、およびその製薬的に許容しうる塩、およびトリフルオロ酢酸塩に関する。
【0003】
好ましくは、
R1およびR2は、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、1個または2個の二重結合を含む、5−、6−、7−または8−員の炭素環であり、
ここで、この環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12個のF原子、および/またはCH3もしくはOCH3の群からの1個もしくは2個の基で置換されており、
R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R3およびR7は、両方が同時に水素であることはなく;
R8は、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または3、4もしくは5個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、
ここで、この炭素鎖またはシクロアルキル基は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換される、
式(I)の化合物、およびその製薬的に許容しうる塩、およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0004】
特に、好ましくは、
R1およびR2は、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、1個の二重結合を含む、5−、6−または7−員の炭素環であり、
R3およびR7は、それぞれ独立して、F、Cl、Br、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され;
R4、R5およびR6は、水素であり、
R8は、H、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換される、
式(I)の化合物、およびその製薬的に許容しうる塩、およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0005】
極めて特に好ましいものは、
(2,6−ジクロロフェニル)(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)アミン、または、(2,6−ジクロロフェニル)メチル(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)アミン、およびその製薬的に許容しうる塩、およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0006】
さらに、好ましくは、
R1およびR2は、それぞれ独立して、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、またはフェニルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され;
ここで、R1およびR2は、両方が同時に水素であることはなく;
R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、または1、2
、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、
7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R3およびR7は、両方が同時に水素であることはなく;
R8は、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または3、4もしくは5個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、
ここで、この炭素鎖、またはシクロアルキル基は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換されるが、
R3がClで、R4、R5、R6、R7およびR8が水素の場合は、R1およびR2は、同時にメチルではなく、ならびに、
(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミン
は除外する、
式(I)の化合物、およびその製薬的に許容しうる塩、およびトリフルオロ酢酸塩に関する。
【0007】
特に好ましくは、
R1およびR2は、それぞれ独立して、H、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、R1およびR2は、両方が同時に水素であることはなく;
R3およびR7は、それぞれ独立して、F、Cl、Br、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
R4、R5およびR6は、水素であり、
R8は、H、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換される、
(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミンは除外する、
式(I)の化合物、およびその製薬的に許容しうる塩、およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0008】
極めて特に好ましいものは、
(2,6−ジクロロフェニル)(4,5−ジメチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミン、およびその製薬的に許容しうる塩、およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0009】
一つの実施態様において、好ましい式(I)の化合物は、R1およびR2が、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、1個または2個の二重結合を含む、5−、6−、7−または8−員の炭素環を形成し、この環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11個のF原子、および/またはCH3もしくはOCH3の群からの1個もしくは2個の基で置換されており;特に好ましいのは、R1およびR2が、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、1個の二重結合を含む、5−、6−または7−員の非置換の炭素環を形成するものである。
【0010】
さらなる実施態様において、好ましい式(I)の化合物は、R1およびR2が、それぞれ独立して、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルとして記載されたものである。
【0011】
さらなる実施態様において、好ましい式(I)の化合物は、R3およびR7が水素はないものであり;特に好ましいのは、R3およびR7が、それぞれ独立して、F、Cl、Br、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであるものであり、ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは
9個のF原子で置換されたものであり;極めて特に好ましいのは、R3およびR7がそれぞれ独立してClまたはメチル、特にClであるものである。さらなる実施態様では、好ましい式(I)の化合物は、R4、R5およびR6が水素であるものである。
【0012】
さらなる実施態様において、好ましい式(I)の化合物は、R8が水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであるものであり;そして、特に好ましいのは、R8が水素またはメチルであるものである。
【0013】
本発明は、さらに、式(I):
【化2】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキル、2,3,4,5もしくは6個の炭素原子を有するアルケニル、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキニル、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルケニル、またはフェニルであり、
ここで、フェニルは、非置換、またはそれぞれ独立して、F、Cl、Br、I、OH、NR9R10、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個もしくは2個の基で置換されており、
R9およびR10は、それぞれ独立して、H、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキルであり;
そして、
ここで、この炭素鎖または環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12もしくは13個のF原子、および/または、OH、NR9R10、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、1、2、3もしくは4個の
炭素原子を有するアルコキシの群からの1個もしくは2個の基で置換されており、
R9およびR10は、それぞれ独立して、H、1、2、3または4個の炭素原子を有するア
ルキルであり;
ここで、R1およびR2は、好ましくは、同時にフェニルであることはなく、
または、
R1およびR2は、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、1個または2個の二重結合を含む、5−、6−、7−または8−員の炭素環であり、
ここで、この環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12個のF原子、および/またはNR9R10、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、OH、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有す
るアルコキシの群からの1個もしくは2個の基で置換されており、
R9およびR10は、それぞれ独立して、H、1、2、3または4個の炭素原子を有するア
ルキルであり;
R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、 (C2−C4)−アルケニル、3、4、5もし
くは6個の炭素原子を有するシクロアルキル、OH、1、2、3もしくは4個の炭素原
子を有するアルコキシ、CN、NO2、NH2、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルアミノ、または、それぞれが、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するジ
アルキルアミノであり、
ここで、この炭素鎖または環は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R3およびR7は、同時に水素であることはなく;
R8は、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または3、4もしくは5個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、
ここで、この炭素鎖または環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換されるものとする]
の化合物およびその製薬的に許容しうる塩を、ナトリウム/水素交換体(NHE)、特にNHE3の阻害により影響されうる疾患の治療用医薬品の製造のための使用に関する。
【0014】
一つの実施態様において、好ましいのは、R1およびR2が、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、1個または2個の二重結合を含む、5−、6−、7−または8−員の炭素環を形成し、この環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11個のF原子、および/またはCH3もしくはOCH3の群からの1個もしくは2個の基で置換されている式(I)の化合物の使用であり;特に好ましいのは、R1およびR2が、それらが結合している2個の炭素原子と一緒になって、1個の二重結合を含む、5−、6−または7−員の、非置換の炭素環を形成する化合物の使用である。
【0015】
さらなる実施態様において、好ましいのは、R1およびR2が、それぞれ独立して、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルとして記載されている式(I)の化合物の使用である。
【0016】
さらなる実施態様において、好ましいのは、R3およびR7が水素でない式(I)の化合物の使用であり;特に好ましいのは、R3およびR7が、それぞれ独立して、F、Cl、Br、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換された化合物の使用であり;極めて特に好ましいのは、R3およびR7がそれぞれ独立してClまたはメチル、特にClである化合物の使用である。さらなる実施態様では、好ましいのは、R4、R5およびR6が水素である式(I)の化合物の使用である。さらなる実施態様において、好ましいのは、R8が水素、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルである式(I)の化合物の使用であり;そして、特に好ましいのは、R8が水素またはメチルである化合物の使用である。
【0017】
もし、置換基のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7またはR8が、1個またはそれ以上の不斉中心を含む場合は、それらは、それぞれ独立して、S配位およびR配位のいずれもとることができる。化合物は光学的異性体の、ジアステレオマーの、ラセミ体の、または、それらのあらゆる割合での混合物の形態をとることができる。
【0018】
本発明は、式(I)の化合物の互変異性体の全ての形態を包含する。
【0019】
炭素鎖は、直鎖または分枝鎖の配列にした炭素原子、例えば1、2、3、4、5または6個の炭素原子を含む、全ての基である。その例には、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルアミノ基、または、ジアルキルアミノ基が挙げられる。炭素環は、環を形成する炭素原子、例えば3、4、5または6個の炭素原子を含む、全ての基である。炭素環の例には、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基が挙げられる。炭素鎖または環は、不飽和であっても良く、また様々な位置でポリの不飽和であってもよく、そして炭素鎖または環中で、1個またはそれ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13個の水素原子が、フッ素原子で置換されていても良い。置換された炭素鎖はどの位置でも置換できる。
【0020】
アルキル基は、直鎖でも分枝鎖でもいい。このことは、これらが置換基を有している場合、または他の基、例えばフルオロアルキル基またはアルコキシ基の置換基である場合にも適用される。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル(=1−メチルエチル)、n−ブチル、イソブチル(=2−メチルプロピル)、sec−ブチル(=1−メチルプロピル)、tert−ブチル(=1,1−ジメチルエチル)、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルペンチル、イソヘキシル、ネオヘキシルが挙げられる。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、イソプロピルである。アルキル基中の、1個またはそれ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13個の水素原子が、フッ素原子で置換されても良い。そうしたフルオロアルキル基の例には、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロイソプロピルが挙げられる。置換されたアルキル基はどの位置でも置換できる。
【0021】
アルケニル基は、直鎖でも分枝鎖でもいい。このことは、これらが、例えばフルオロアルケニル基の中での置換基を有している場合にも適用される。アルケニル基は、様々な位置で、不飽和であっても、またポリの不飽和であってもよい。アルケニル基の例には、エテニル、n−プロパ−1−エニル、n−プロパ−2−エニル、イソプロパ−1−エニル(=1−メチルエテニル)、n−ブタ−1−エニル、n−ブタ−2−エニル、n−ブタ−3−エニル、n−ブタ−1,3−ジエニル、イソブタ−1−エニル(=2−メチルプロパ−1−エニル)、イソブタ−2−エニル(=2−メチルプロパ−2−エニル)、sec−ブタ−1−エニル(=1−メチルプロパ−1−エニル)、ペンテニル、ヘキセニルが挙げられる。好ましいアルケニル基は、エテニル、n−プロパ−1−エニル、n−プロパ−2−エニル、n−ブタ−1−エニル、n−ブタ−2−エニル、n−ペンテニル、n−ペンタジエニル、イソペンテニル、tert−ペンテニル、ネオペンテニル、n−ヘキセニル、n−ヘキサジエニル、n−ヘキサトリエニル、3−メチルペンテニル、イソヘキセニル、ネオヘキセニルである。アルケニル基中の、1個またはそれ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11個の水素原子が、フッ素原子で置換されても良い。置換されたアルケニル基はどの位置でも置換できる。
【0022】
アルキニル基は、直鎖でも分枝鎖でもいい。このことは、これらが、例えばフルオロアルキニル基の中での置換基を有している場合にも適用される。アルキニル基は、様々な位置で、不飽和であっても、またポリの不飽和であってもよい。アルキニル基の例には、エチニル、n−プロパ−1−イニル、n−プロパ−2−イニル、n−ブタ−1−イニル、n−ブタ−2−イニル、n−ブタ−3−イニル、n−ブタ−1,3−ジイニル、sec−ブ
タ−2−イニル(=1−メチルプロパ−2−イニル)、n−ペンチニル、n−ペンタジイニル、イソペンチニル、tert−ペンチニル、ネオペンチニル、n−ヘキシニル、n−ヘキサジイニル、n−ヘキサトリイニル、3−メチルペンチニル、イソヘキシニル、ネオヘキシニルである。好ましいアルキニル基は、n−プロパ−1−イニル、n−プロパ−2−イニル、n−ブタ−1−イニル、n−ブタ−2−イニルである。アルキニル基中の、1個またはそれ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8または9個の水素原子が、フッ素原子で置換されても良い。置換されたアルキニル基はどの位置でも置換できる。
【0023】
シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルが挙げられる。シクロアルキル基中の、1個またはそれ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11個の水素原子が、フッ素原子で置換されても良い。置換されたシクロアルキル基はどの位置でも置換できる。
【0024】
シクロアルケニル基は、様々な位置で、不飽和、またポリの不飽和であってもよい。シクロアルケニル基の例には、シクロブタ−1−エニル、シクロブタ−2−エニル、シクロ
ペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、または、シクロヘキサジエニルが挙げられる。シクロアルケニル基中の、1個またはそれ以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8または9個の水素原子が、フッ素原子で置換されても良い。置換されたシクロアルケニル基はどの位置でも置換できる。
【0025】
フェニル基は、非置換、または、モノ−もしくはポリ置換、例えば、同じもしくは異なった基によるポリ置換、例えば、モノ−、ジ−もしくはトリ−置換されても良いモノ置換フェニル基において、置換基は、2位、3位または4位に位置して良い。二置換フェニルは、2.3位、2.4位、2.5位、2.6位、3.4位または3.5位で置換されても良い。
【0026】
使用された化合物の製造方法もまたここに記載される。すなわち、式(I)で記載される化合物は、当業者に周知の方法で、酸性条件下、式(II)のグアニジン、または、式(II)の互変異性体から、製造することができる。
【化3】

(式中、R1〜R8は式(I)に従って定義され、一方、Eは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基に対応し、この2個のE基は結合して環を形成しても良い)
【0027】
式(II)の化合物は、文献から知られた方法で、式(III)のシアナミドまたは式(VI)の化合物、および、式(V)の適当なアミノケタールまたはアセタールから得ることができる、ここで式(IV)におけるR基はアルキル基、好ましくはメチルに対応する、
【化4】

上記の、式(III)、(IV)および(V)でR8が水素の中間体の入手方法は、文献に開示されている(J. Med. Chem., 1975, 18, 90-99;GB1,131,191)。
【0028】
上記文献の改変法により、式(V)の化合物が、α−ハロケトンまたはアルデヒドから出発して、アジド−ハロゲン交換反応(好ましくは、アジ化ナトリウムを用いて)、ケタール化またはアセタール化反応(好ましくは、エチレングリコールを用いて)および還元(好ましくは、炭素上のパラジウムまたは二酸化プラチナの存在下で、水素を用いて)の順で、有利に製造できることが見出された(スキーム1):
【化5】

【0029】
本発明はさらに、式(V):
【化6】

[式中、
R1およびR2は、水素、1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキル、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルケニル、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキニル、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルケニル、またはフェニルであり、
ここで、フェニルは、非置換、またはそれぞれ独立して、F、Cl、Br、I、NR11R12、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個または2個の基で置換され、
R11、R12は、それぞれ独立して、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、ベンジル、4−メトキシベンジルであり;
そして、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子、および/またはNR11R12、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個または2個の基により置換され、
R11、R12は、それぞれ独立して、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、ベンジル、4−メトキシベンジルであり;
または、
R1およびR2は、それらが結合している2個の炭素原子と共に、飽和されたまたは1個の二重結合を含む5〜8員の炭素環であり、
ここで、この環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12個のF原子、および/またはNR11R12、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個または2個の基で置換され、
R11、R12は、それぞれ独立して、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、ベンジル、4−メトキシベンジルであり;
Eは、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または、2個のE基はE−Eが(C2−C4)−アルキレンである環状ケタールを形成し;
Halは、Cl、Br、Iである]
のα−アミノケタールを製造する方法にも関する。
【0030】
この方法は、以下の工程を含む:
式(VI)のα−ハロケトンまたはアルデヒドと、アジド、例えばNaN3とを、ハロゲン−アジド交換反応により、対応する式(VII)のα−アジドケトンまたはアルデヒドへと変
換する工程、
【化7】

【0031】
次いで、一価または二価アルコールとの、ケタール化反応またはアセタール化反応によって、式(VIII)のα−アジドケタールまたはアセタールを得る工程、
【化8】

【0032】
次いで、好ましくは例えば炭素上のパラジウムまたは二酸化プラチナのような触媒の存在下で水素を用いて、式(V)の化合物に還元する工程。
【化9】

【0033】
式(I)の化合物は、式(III)のシアンアミド、および、式(IX)のα−アミノケトンを出発物質として、アルコールのようなプロトン性溶媒、例えばエタノールの存在下で、製造することができる。
【化10】

【0034】
適切な代替法は、また適切な式(X)の1,2−ジアミノアルキレン誘導体と、式(XI
)のイソチオシアネートとを、二段階で反応させる方法である。
【化11】

式(XII)のチオ尿素が中間体として生成され、次に、好ましくはN,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはヨード化メチルを用いた環化反応により、式(I)の化合物を得る。
【0035】
式(IX)および(X)の出発物質は、市販のものが利用でき、または、当業者に知られている文献に記載された方法に従って、もしくは、その類似方法で製造することができる。
【0036】
驚くべきことに、本発明において記載された化合物が、ナトリウム/水素交換体(NHE)、特にNHE3の、強力な阻害剤であることを示すことができた。
【0037】
NHE3は、様々な動物種の体内で、主に、胆管、腸管および腎臓で見られる(Fliegel等、Biochem.Cell.Biol. 76: 735-741, (1998))が、脳でも検出されてきた(E.Ma等、Neuroscience 79: 591-603)。
【0038】
公知のNHE3阻害剤は、例えば、アシルグアニジン型(EP 825 178)、ノルボルニルアミン型(DE 199 60 204)、2−グアニジノキナゾリン型(WO 01 79186, WO 02 20496)、または、ベンズアミジン型(WO 01 21582, WO 01 72742)の化合物から誘導されている。また、NHE3阻害剤として記載されているスクアラミン(M.Donowitz等、Am. J. Physiol. 276 (Cell Physiol. 45: C136-C144))は、式(I)の化合物のように直接に作用はしないが、その最も強い効果には1時間後なって初めて到達する。
【0039】
イミダゾリジン型のNHE3阻害剤は、ドイツ特許出願DE 10163239に記載されており、チオフェン型のものは、ドイツ特許出願DE 10224892に記載されている。WO 02 46169 A1には、2−フェニルアミノベンズイミダゾール型のNHE3阻害剤が記載されている。驚くべきことに、今回、ここで記載された式(I)のイミダゾール誘導体もまた、強力なNHE3阻害剤であり、さらに有利な薬理学的性質を有することが見出された。
【0040】
クロニジンは、ここで記載された化合物に似ているが、弱いNHE阻害剤であることが知られている。そのラットNHE3に対する効果は、実際、非常に穏やかなもので、IC50は620μMである。それよりも、この化合物は、NHE2に対してはある選択性を示し、そのIC50は42μMである(J. Orlowski等、J. Biol. Chem. 268, 25536)。したがって、この化合物は、むしろNHE2阻害剤と呼ばれるべきである。この弱いNHE作
用の他に、クロニジンは、アドレナリンα2受容体、および、イミダゾリンI1受容体に高い親和性を有し、強い血圧降下作用を仲介する(Ernsberger等、Eur. J. Pharmacol. 134, 1, 1987)。式(I)の化合物は、増加したNHE3阻害作用を有することで、クロ
ニジンとは顕著に異なるものである。
【0041】
これらの予期せぬNHE阻害活性を基にして、式(I)の化合物は、NHEの活性化により、または、活性化されたNHEにより引き起こされる、疾患の予防および治療に適している。本発明の化合物の使用は、獣医学およびヒトの医学分野における、急性および慢性疾患の予防および治療に関している。
【0042】
したがって、本発明のNHE阻害剤は、虚血および/または再還流により引き起こされる疾患の治療に適している。
【0043】
ここで記載された化合物は、それらの薬理学的性質の結果として、梗塞の予防および梗塞の治療のため、ならびに狭心症の治療のための、心臓保護作用を有する成分を伴った抗不整脈用薬剤としては際立って好適であり、この関連において、これらは虚血誘導性損傷の進行、特に、虚血誘導性の心臓不整脈の誘導に関連する病理生理学的な進行を、抑制的な様式で、阻害または強く抑制する。本発明により使用される式(I)の化合物は、病理的な低酸素性および虚血症状に対するそれらの保護効果により細胞Na+/H+交換機構を阻害する結果として、虚血により誘導された急性または慢性の損傷、または、それにより一次的にまたは二次的に誘導された疾患の治療のための医薬品として使用できる。これは、外科処置のための医薬品としての使用に関しており、その例として、臓器移植の分野では、本化合物は、ドナーからの臓器の摘出前および摘出の間に臓器を保護し、例えば治療中または生理的浴液中での保存時、および、レシピエントの身体に移植する際に、摘出した臓器を保護するために用いることができる。この化合物は、また、例えば心臓および末梢血管における血管形成外科処置の実施の際に保護作用を有する、有用な医薬品である。
【0044】
本化合物は、虚血で誘導される損傷に対するその保護作用により、神経系、特に中枢神経系(CNS)の、虚血の治療のための医薬として好適であり、この関連により、これらは、例えば、卒中または脳浮腫の治療のために適している。
【0045】
さらに、本発明に従って使用される、式(I)の化合物は、様々な種類のショック症状、例えば、アレルギー性、心臓性、血液量減少性および細菌性ショックの治療にもまた、適している。
【0046】
さらに、本化合物は、呼吸駆動(respiratory drive)の改善をもたらし、そのために、以下の:中枢性呼吸駆動の障害(例えば、中枢性睡眠時無呼吸症、幼児突然死、手術後低酸素症)、筋関連呼吸障害、長期通気後の呼吸障害、高地順応に関連した呼吸障害、閉塞型および混合型睡眠時無呼吸症、低酸素症および高炭酸症を伴う急性および慢性肺障害、の臨床症状および疾患に関連する呼吸器の症状を治療するために用いられる。
加えて、この化合物は、上部気道の筋肉の緊張を増大させ、そのためにいびきがおさえられる。
【0047】
NHE阻害剤と、代謝性アシドーシスを誘導しそれ自体で呼吸活性を増大させる炭酸脱水酵素阻害剤(例えば、アセタゾールアミド)との組合せは、効果の強化および活性成分の使用量の低減による利点を有することがわかっている。
【0048】
ここで記載された化合物は、さらに、中枢神経系の過剰興奮により誘導される疾患および障害の治療および予防、特に、癲癇様疾患、中枢性誘導型の間代性および硬直性痙攣、精神の抑うつ状態、不安症および精神性疾患の治療のための医薬として好適である。ここ
で記載されたNHE阻害剤は、さらに、単独で、または、他の抗癲癇活性を有する物質もしくは抗精神病活性成分、もしくは炭酸脱水酵素阻害剤、例えばアセタゾルアミド、および、他のNHEもしくはナトリウム依存性の塩素−重炭酸イオン交換体(NCBE)の阻害剤と組合せて使用することができる。
【0049】
本発明により用いられる化合物が、軽度の緩下効果を有し、そのために、下剤として、または、便秘のリスクがある場合に用いることができることがわかってきた。
【0050】
本発明の化合物は、さらに、腸部分での虚血症状および/またはそれに続く再還流により引起される腸管の急性および慢性の疾患の予防および治療のために、有利に用いることができる。そうした合併症は、例えば、外科処置の後、便秘または著しく低下した腸管の活動性を伴ってしばしば観察される不適切な腸管蠕動によって誘導されることがある。
胆石形成を抑制する可能性もまた存在する。
【0051】
本発明により使用される式(I)の化合物は、細胞増殖、例えば、繊維芽細胞の増殖および血管平滑筋細胞増殖に対する強力な阻害作用により、さらに区別される。式(I)の化合物は、そのために、細胞増殖が一次性または二次性の原因として示される疾患の有効な治療薬として、ならびに、抗アテローム性動脈硬化症剤、糖尿病の後期合併症を抑制する薬剤、慢性腎障害、癌、心臓の線維増殖性疾患、および肺線維症、肝線維症もしくは腎線維症、器官、例えば心臓および前立腺の肥大および過形成を抑制する薬剤に適しており、そして、(鬱血性)心不全、または、前立腺肥大もしくは前立腺過形成の予防および治療のために有用である。
【0052】
本発明の化合物は、多くの疾患(本態性高血圧、アテローム性動脈硬化症、糖尿病等)で亢進し、また、例えば、赤血球、血小板もしくは白血球のような細胞で容易に測定可能な、細胞性ナトリウム−プロトンアンチポーター(Na/H交換体)の有効な阻害剤である。本発明の化合物は、そのために、優れた簡便な科学的ツールとしても好適であり、その例としては、異なった型の高血圧だけではなく、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、糖尿病の後期合併症、増殖性疾患等の識別および判定のための診断薬としての使用が挙げられる。
【0053】
式(I)の化合物は、さらに、腎臓の管状系におけるNaClの再吸収を減少させるかまたは完全に阻害するために、高血圧、例えば本態性高血圧の進行を防止する予防療法、および、その治療のために適している。したがって、これらの化合物は、高血圧を治療するために使用される医薬品の組合せ剤および処方のための相手方としても非常に適している。可能な組合せ剤の例には、チアジド様作用を有する利尿剤、ループ利尿剤、アルドステロンおよびシュードアルドステロン拮抗剤、例えば、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、ポリチアジド、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、ブメタニド、アミロライド、トリアムテレンが挙げられる。本発明のNHE阻害剤は、さらに、ACE阻害剤、例えば、ラミプリル、エナラプリルまたはカプトプリルと組合せて用いることができる。さらに有利な組合せ剤の相手方には、β−遮断剤も挙げられる。
【0054】
記載されたNHE阻害剤は、同様に、NHE阻害剤として血小板凝集それ自体を阻害でき、および、さらに凝固メディエーター、特にフォン・ウィルブランド因子の過剰の放出を阻害または抑制できることから、血栓性障害の予防および治療のために用いることができる。そのために、本発明のNHE阻害剤は、さらに抗凝固活性成分、例えば、アセチルサリチル酸、トロンビン拮抗剤、第Xa因子拮抗剤、線溶活性を有する医薬、第VIIa因子拮抗剤等と組合せて用いることができる。本発明のNHE阻害剤とNCBE阻害剤との組合せた使用も特に有利である。
【0055】
さらに、NHE阻害剤は血清リポ蛋白質へ好ましい効果を示すことがわかってきた。一般に、著しく高い血中脂質濃度、いわゆる高リポ蛋白質血症が、動脈硬化性の血管病変、特に、冠状動脈性心臓疾患の進行に関して、重要な危険因子であることが知られている。そのために、上昇した血清リポ蛋白質を減少させることが、動脈硬化性病変の予防および回復のために、例外なく重要である。本発明で用いられる化合物は、そのために、原因となる危険因子を除去することにより動脈硬化性病変を予防および回復させるために使用することができる。本発明のNHE阻害剤は、また、他の抗動脈硬化症活性成分、例えば、フィブレート類からの物質、MD-700およびLY295427のようなLD2受容体活性の上方調節剤(upregulator)、または、コレステロールもしくは胆汁酸の吸収阻害剤、または、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチンのようなスタチン類からの抗−高コレステロール血症剤、と有利な方法で組合せることもできる。
【0056】
内皮機能障害の症候群に対して血管を保護することにより、式(I)の化合物は、冠状動脈血管痙攣、間欠性跛行のような末梢血管性疾患、アテローム形成、動脈硬化症、左心室肥大および拡張性心筋症、ならびに血栓性疾患、の予防および治療のために有用な医薬である。
【0057】
該化合物は、同様に、原生動物によって引起される疾患の治療のために用いることができ、そして抗マラリア剤として特に適している。
本化合物はさらに、蚊、ダニおよび植物病害虫のような吸血性寄生虫を制御するためにも適している。
【0058】
それらの保護効果に基いて、本化合物はまた健康を保持し寿命を延ばすための医薬としても適している。
【0059】
ここで記載されたNHE阻害剤は、一般に、他の細胞内pHを調製する化合物と、有利な様式で組合せることができ、その適切な組合せの相手方は、炭酸脱水酵素の酵素阻害剤の群からの、ナトリウム−重炭酸イオン共輸送体もしくはナトリウム依存性の塩素−重炭酸イオン交換体のような重炭酸イオン輸送系の阻害剤、および、他のNHE阻害剤例えば他のNHEサブタイプに阻害効果を有するようなものであり、その理由は、ここで記載されたNHE阻害剤の薬理学的に重要なpH−調節効果がそのために増加することよる。
【0060】
それゆえに、該化合物は、睡眠時無呼吸症および筋関連性呼吸疾患の予防および治療用の医薬品を製造するため;いびきの予防および治療用の医薬品を製造するため;血圧を下げる医薬品を製造するため;腸閉塞の予防および治療用の緩下効果のある医薬品を製造するため;中枢性および末梢性の虚血および再還流により誘導される障害、例えば、急性腎不全、卒中、内因性のショック状態、腸管障害等、の予防および治療用の医薬品を製造するため;糖尿病および慢性腎障害、特に増大する蛋白質/アルブミンに関連する全ての腎臓の炎症(腎炎)に由来する後期の障害の治療用の医薬品を製造するため;高コレステロール血症の治療用の医薬品を製造するため;アテローム生成および動脈硬化症の予防用の医薬品を製造するため;増加したコレステロール濃度により引起される疾患の予防および治療用の医薬品を製造するため;内皮機能不全により引起される疾患の予防および治療用の医薬品を製造するため;外来性寄生虫の感染の治療用の医薬品を製造するため;それらの障害の治療用の医薬品を、血圧降下物質、好ましくはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、利尿剤、アルドステロン拮抗剤およびアンジオテンシン受容体拮抗剤との組合せにより製造するため;に有利に使用される。式(I)のNHE阻害剤と、血中脂質濃度を低下させる活性成分、好ましくは、HMG−CoA還元酵素阻害剤(例えば、ロバスタチンまたはプラバスタチン)との組合せは、後者が血中脂質の低下作用をもたらし、それにより式(I)のNHE阻害剤の血中脂質低下活性を増強するために、増大効果および活性成分の使用量の低減をもたらす有利な組合せであることがわかっている。
【0061】
新規な血中脂質濃度を減少させるための医薬品としての、式(I)のナトリウム−プロトン交換体阻害剤の投与、および、ナトリウム−プロトン交換体阻害剤と血圧降下剤および/または血中脂質低下活性を有する医薬品との組合せ製剤がクレームされている。
【0062】
本発明はまた、式(I)の化合物および/またはその製薬的に許容しうる塩の有効量を含有する、ヒトの医学分野、獣医分野または植物保護使用のための治療用組成物、ならびに、式(I)の化合物および/またはその製薬的に受容可能な塩の有効量を単独、または、1個またはそれ以上の他の薬理活性成分もしくは医薬との組合せを包含する、ヒトの医学分野、獣医分野または植物保護使用のための治療用組成物にも関する。
【0063】
式(I)の化合物を含有する医薬は、これに関連して、経口、非経口、静脈内、直腸内、経皮または吸入によって投与することができ、好ましい投与は、障害の特異的な性質に依存している。式(I)の化合物は、さらに、単独で、または、製薬用賦形剤と一緒にして、獣医学の分野、ヒトの医学の分野、および、作物保護のために、使用することができる。
【0064】
所望の製薬用剤形のために適した添加剤は、当業者がその専門的知識を基に精通している。溶媒、ゲル形成剤、座薬用基剤、錠剤用賦形剤および他の活性成分担体の他に、例えば、抗酸化剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、矯味矯臭剤、保存剤、可溶化剤または着色剤を用いることもできる。
【0065】
経口投与の形態のためには、活性化合物をこの目的に適した添加剤、例えば、担体、安定化剤または不活性希釈剤と混合し、汎用の方法で適切な投与形態、例えば、錠剤、被覆型錠剤、硬質ゼラチンカプセル剤または水性、アルコール性もしくは油性の溶液に加工する。使用できる不活性担体の例には、アラビアゴム、マグネシア、炭酸マグネシウム、リン酸カリウム、乳糖、グルコースまたは澱粉、特にトウモロコシ澱粉が挙げられる。さらに、乾燥顆粒および湿潤顆粒として製造を行うことも可能である。適切な油性担体または溶媒の例には、植物性または動物性油、例えば、ヒマワリ油または魚肝油が挙げられる。
【0066】
皮下または静脈内投与のためには、用いる活性化合物を、必要ならばこの目的のために常用される物質、例えば、可溶化剤、乳化剤または他の賦形剤と一緒に、溶液、懸濁液または乳化液に加工する。適切な溶媒の例には、水、生理的食塩水もしくはアルコール、例えばエタノール、プロパノール、グリセロール、および、糖溶液、例えば、グルコースもしくはマンニトール溶液、または、述べた種々の溶媒の混合物が挙げられる。
【0067】
エアゾールまたは噴霧剤の形態で投与するための製薬剤形として適切なのは、製薬上受容可能な溶媒、例えば、特にエタノールもしくは水、またはそれら溶媒の混合物の中の、式(I)の活性成分の溶液、懸濁液または乳化液である。この剤形は、必要ならば、さらに他の製薬用添加剤、例えば、界面活性剤、乳化剤および安定化剤、ならびに噴射用ガスを含有することができる。そうした製剤は、通常、活性成分を約0.1〜10質量%、特
に0.3〜3質量%含んでいる。
【0068】
投与する式(I)の活性成分の投与量、および投与の回数は、用いる化合物の有効性、作用の持続時間に依存しており;さらには、治療される疾患の性質および重症度、ならびに、治療される哺乳類の性別、年齢、体重および個別の感受性に依存している。
【0069】
平均して、式(I)の化合物の、約75kgの患者への一日投与量は、少なくとも0.
001mg/kg、好ましくは0.1mg/kg、最大で50mg/kg、好ましくは1
mg/kgである。疾患の急激な発症の時、例えば、心筋梗塞が発症した直後、より高用量、および特に、より多い投与回数、例えば、一日4回までの投与が必要になるかもしれない。一日当たり200mg/kgまでの投与量も、特に、例えば集中治療室の梗塞患者のための、静脈内投与の場合に、必要になるかもしれない。
【0070】
製薬上許容しうる塩は、例えば以下の酸:無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸;有機酸、例えば、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、から製造できる。この関連で、適切な酸付加塩は、全ての薬理学的に許容しうる酸であり、例えば、ハロゲン化物、特に塩酸塩、乳酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロールリン酸塩、マレイン酸塩およびパモ酸塩(この群はまた生理的に受容可能なアニオンに対応している)であり、トリフルオロ酢酸塩も挙げられる。
【0071】
実験および実施例の記載
用いた略語のリスト:
t 保持時間
TFA トリフルオロ酢酸
LCMS 液体クロマトグラフィー・質量分析
MS 質量分析
CI 化学イオン化
ES エレクトロスプレー
【0072】
共通事項:
以下で述べる保持時間(Rt)は、次のパラメーターを有するLCMS測定を参照する

方法A:
固定相: Merck Purospher、 3μ、2×55mm
移動相: 95%H2O(0.05%TFA)→95%アセトニトリル、4分;
95%アセトニトリル、1.5分;→5%アセトニトリル、1分;
0.5ml/分。
【0073】
方法B:
固定相: YMC J'sphere ODS H80、2×33mm
移動相: 95%H2O(0.05%TFA)→95%アセトニトリル、2.3分;
95%アセトニトリル、1分;→5%アセトニトリル、0.1分;
1ml/分。
【0074】
方法C:
固定相: YMC J'sphere ODS H80、2×33mm
移動相: 90%H2O(0.05%TFA)→95%アセトニトリル、2.5分;
95%アセトニトリル、0.8分;→10%アセトニトリル、0.05分;
1ml/分。
【0075】
方法D:
固定相: Merck Purospher、 3μ、2×55mm
移動相: 95%H2O(0.1%HCOOH)→95%アセトニトリル(0.1%
HCOOH)、5分;→95%アセトニトリル(0.1%HCOOH)、
2分;→95%H2O(0.1%HCOOH)、1分;0.45ml/分。
【0076】
方法E:
固定相: YMC J'sphere ODS H80、2×33mm
移動相: 98%H2O(0.05%TFA)+2%アセトニトリル、0.3分;
98%H2O(0.05%TFA)→95%アセトニトリル、2分;
95%アセトニトリル、0.4分;1ml/分。
【0077】
分取用HPLCは、次の条件下で行った:
固定相: Merck Purospher RP18 (10μM) 250×25mm
移動相: 90%H2O(0.5%TFA)→90%アセトニトリル、40分;
25ml/分。
【実施例】
【0078】
実施例1:(2,6−ジクロロフェニル)(1H−イミダゾール−2−イル)アミン塩酸

【化12】

(2,6−ジクロロフェニル)(1H−イミダゾール−2−イル)アミン塩酸塩は、文献
(J. Med. Chem., 1975, 18, 90-99; GB 1131191)に記載の方法により合成した。
MS−Cl+: 228.1; LCMS−Rt(A)=2.92分
【0079】
実施例2:(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル
)アミン塩酸塩
【化13】

a)2−(2−オキソプロピル)イソインドール−1,3−ジオン
【化14】

フタルイミド(3g)を乾燥テトラヒドロフラン(70mL)に溶解し、次に、水素化ナトリウム(539mg)のテトラヒドロフラン(15mL)懸濁液に、室温で、滴下により加えた。これを次に40℃で1時間加熱し、さらに、テトラヒドロフラン(15mL)に溶解したクロロアセトン(1.99g)の溶液を滴下で加えた。ついで混合物を還流温度で15時間保持した。冷却後、それを氷/水混合物に加え、次に、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせて飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、次に、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧下除去し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーに付した(n−ヘプタン/酢酸エチル2:1)。標題の化合物の2.9gが単離できた。
MS−Cl+: 204.2; LCMS−Rt(C)=1.60分
【0080】
b)C−(2−メチル−[1,3]ジオキソラン−2−イル)メチルアミン
【化15】

2−(2−オキソプロピル)イソインドール−1,3−ジオン(2.9g)をトルエン(60mL)中でエチレングリコール(1.71mL)およびパラ−トルエンスルホン酸(
271mg)と混合し、水トラップを付けて15時間加熱した。次いで、この混合物を減圧下乾燥し、残留物をエタノール(120mL)に溶解した。ヒドラジン(1g)を加え、65℃で1時間加熱し、次いで、さらにヒドラジン1gを加えた。加熱は65℃でさらに1時間半経過後停止した。終夜放置した後、形成した沈殿物を吸引濾過で分離し、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をエタノールに懸濁し、再度、濾過した。得られた濾液の濃度はアミンの1.9gであり、直接次の工程で使用できた。
MS−Cl+: 118.2; LCMS−Rt(B)=0.16分
【0081】
c)N−(2,6−ジクロロフェニル)−N’−(2−メチル−[1,3]ジオキソラン−2イルメチル)グアニジントリフルオロ酢酸塩
【化16】

2,6−ジクロロフェニルシアナミド(100mg、J. Med. Chem., 1975, 18, 90-99
に記載のとおり合成した)およびC−(2−メチル−[1,3]ジオキソラン−2−イル)
メチルアミン(69mg)をフラスコ中で混合し、150℃で0.5時間加熱した。水お
よびジクロロメタンを冷却した反応混合物に加えた。相分離はジクロロメタンで2回抽出して行った。有機相を合わせて硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。残留物を分取用HPLCで精製した。生成物を含む画分を合わせて、アセトニトリルをロータリーエバポレーター中で取除き、凍結乾燥した。所望のグアニジンが29mg得られた。
MS−Cl+: 304.2; LCMS−Rt(B)=1.51分
【0082】
d)(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミ
ン塩酸塩
N−(2,6−ジクロロフェニル)−N’−(2−メチル−[1,3]ジオキソラン−2イルメチル)グアニジントリフルオロ酢酸塩(29mg)を濃塩酸1mLと混合し、90℃で30分間加熱した。冷却後、水で希釈し、次に、ジクロロメタンを加えた。混合物を、次に、飽和重炭酸ナトリウム溶液でアルカリ性にし、ジクロロメタンで2回抽出した。有機相を合わせて硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。残留物を塩酸と混合し、凍結乾燥した。標題の化合物が14mg得られた。
MS−Cl+: 242.2; LCMS−Rt(B)=1.42分
【0083】
実施例3:(2,6−ジクロロフェニル)(4,5−ジメチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミン塩酸塩
【化17】

標題の化合物は、3−ブロモ−2−ブタノンから出発して、実施例2と類似の方法で合成した。
MS−Cl+: 256.2; LCMS−Rt(C)=1.43分
【0084】
実施例4:(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−5−フェニル−1H−イミダゾ
ール−2−イル)アミン塩酸塩
【化18】

1−アミノ−1−フェニルアセトン塩酸塩(189mg)、2,6−ジクロロフェニル
シアナミド(187mg、J. Med. Chem., 1975, 18, 90-99に記載のとおり合成した)およびトリエチルアミン(101mg)を還流温度でエタノール(10mL)中に3時間保持した。冷却後、減圧下で乾燥し、分取用HPLCで精製した。生成物を含有する画分を合わせて、アセトニトリルをロータリーエバポレーター中で除去し、次に、水性残留物を炭酸カリウムで中和し、その後、酢酸エチルで3回抽出した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発により乾燥し、次いで、塩酸を加えた後、凍結乾燥した。標題の化合物を26mg得た。
MS−Cl+: 318.2; LCMS−Rt(A)=4.14分
【0085】
実施例5:(2,6−ジクロロフェニル)(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)アミン塩酸塩
【化19】

a)1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカ−6−イルアミン
【化20】

2−クロロシクロヘキサノン(5g)をDMSO(10mL)に溶解し、DMSO(150mL)に溶解したアジ化ナトリウム(7.06g)を室温でゆっくりと滴下して加えた。次いで、この混合物を室温で60分攪拌した。反応混合物に氷水を加え、次に、n−ペンタン(100mL)で3回抽出した。有機相を合わせて水で一度洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、次に、この溶媒を濃縮したが完全に乾燥まではさせなかった。これを、次に、トルエンとの共蒸発により、残留するペンタンを除去した。この残留物を、無水トルエン(abs. toluene)(120mL)で希釈し、エチレングリコール(4.8g)および触媒量のp−トルエンスルホン酸と混合し、水トラップを付けて5時間加熱した。終夜放置の後、水トラップを付けて、さらに6時間加熱した。さらに、シュパチュラ(spatula)の先端に載る量の追加のp−トルエンスルホン酸およびエチレングリコール(6mL)を加えた。反応混合物を、次に、水で洗浄し、次いで、有機相をもう一度トルエンで抽出した。有機相を合わせて硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒をほぼ完全に除去した。残留物をメタノール(40mL)中に回収し、振盪器に移し、二酸化プラチナ(15mg)を加え水素を導入した後、2時間水素化反応を行った。二酸化プラチナを濾別し溶媒を濃縮した。租生成物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィー分離を行った(移動相、ジクロロメタン/メタノール/濃アンモニア: 10:0.5:0.1)。油状の生成物が1.105g得られた。
MS−ES+: 158.2; LCMS−Rt(E)=0.38分
【0086】
b)N−(2,6−ジクロロフェニル)−N’−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−
6−イル)グアニジン
【化21】

1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−6−イルアミン(500mg)を2,6−ジクロロフェニルシアンアミド(595mg、J. Med. Chem., 1975, 18, 90-99に記載のとおり合成した)とを130℃で反応させた。45分後、反応を停止させ、反応生成物を分取用HPLCで精製した。生成物を含む画分を合わせて、アセトニトリルをロータリーエバポレーターで除去し、水性残留物を炭酸カリウムで中和し、ジクロロメタンで3回抽出した。硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発により乾固させた。所望のグアニジンが476mg得られた。
MS−ES+:344.2; LCMS−Rt(D)=2.10分
【0087】
c)(2,6−ジクロロフェニル)(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)アミン塩酸塩
N−(2,6−ジクロロフェニル)−N’−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−6
−イル)グアニジン(426mg)を濃塩酸(5mL)と混合し、室温で5分間撹拌した。得られた沈降物を濾別し濃塩酸で洗浄した。濾液を水で希釈し、さらに沈降物を分別し、同様に濾別した。合わせた沈降物は、所望の化合物311mgを与えた。
MS−ES+: 282.19; LCMS−Rt(D)=2.01分
【0088】
実施例6:2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−1H−イミダゾール−4,5−ジカルボニトリル
【化22】

ジアミノマレオニトリル(500mg)を無水テトラヒドロフラン(7.5mL)に溶解し、次に、2,6−ジクロロフェニルイソチオシアネートを加えた。室温で3時間撹拌した後、終夜放置し、溶媒を除去し、残留物を精製した。生成物を含む画分を合わせて、アセトニトリルをロータリーエバポレーターで除去し、水性残留物を炭酸カリウムで中和し、酢酸エチルで3回抽出した。硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発により乾固させた。所望のチオ尿素中間体が73mg得られた。この生成物を、N,N’−ジクロロヘキシルカルボジイミド(48mg)と共に、無水テトラヒドロフラン中で、室温で5日間撹拌した。溶媒を除去し、残留物を分取用HPLCで精製した。生成物を含む画分を合わせて、アセトニトリルをロータリーエバポレーターで除去し、水性残留物を炭酸カリウムで中和し、酢酸エチルで3回抽出した。硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発により乾固させ、次いで残留物を凍結乾燥させた。所望のイミダゾールが16mg得られた。
MS−Cl+: 278.2; LCMS−Rt(B)=2.14分
【0089】
実施例7:(2,6−ジクロロフェニル)メチル(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)アミン塩酸塩
【化23】

a)(2,6−ジクロロフェニル)メチルシアンアミド
【化24】

2,6−ジクロロフェニルシアンアミド(1g、J. Med. Chem., 1975, 18, 90-99に記載のとおり合成した)を、乾燥ジメチルホルムアミド(25mL)に溶解し、次いで、粉末炭酸カリウム(739mg)を加えた。室温で5分間撹拌後、ヨード化メチル(1.5
2g)を滴下で加え、次に、混合物を室温で2時間撹拌した。溶媒を除去した後の残留物を水に回収し、エーテルで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。溶媒を除去後の残留物を分取用HPLCで精製した。生成物を含む画分を合わせて、アセトニトリルをロータリーエバポレーターで除去し、水性残留物を炭酸カリウムで中和し、酢酸エチルで3回抽出した。硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発により乾固させた。所望の生成物が600mg得られた。
MS−ES+: 201.1; LCMS−Rt(B)=2.23分
【0090】
b)N−(2,6−ジクロロフェニル)−N’−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−
6−イル)−N−メチル−グアニジン
【化25】

(2,6−ジクロロフェニル)メチルシアンアミド(25mg)の乾燥テトラヒドロフラン(5mL)の溶液を、乾燥THF(5mL)中の1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−6−イルアミン(195mg、実施例5)の沸騰する溶液に滴下して加え、次に、テトラヒドロフランを減圧下で除去した。残留物を次に130℃の油槽の中で15分間加熱し、続いて、分取用HPLCで精製した。生成物を含む画分を合わせて、アセトニトリルをロータリーエバポレーターで除去し、水性残留物を炭酸カリウムで中和し、酢酸エチルで3回抽出した。硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発により乾固させ、次いで残留物を凍結乾燥させた。所望の生成物が18mg得られた。
MS−ES+: 358.4; LCMS−Rt(E)=1.48分
【0091】
c)(2,6−ジクロロフェニル)メチル(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)アミン塩酸塩
濃塩酸(1mL)をN−(2,6−ジクロロフェニル)−N’−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−6−イル)−N−メチル−グアニジン(18mg)に加えた。10分後
、混合物を水で希釈し凍結乾燥させた。得られた生成物は、トルエンで3回、共沸させた。表題の化合物が16mg得られた。
MS−ES+: 296.17; LCMS−Rt(D)=2.12分
【0092】
薬理学的データ:
試験の記述:
この試験では、酸性化後の細胞内pH(pHi)の回復を確認し、これはもしNHE3
が機能できる場合は、例え重炭酸不含有の条件下でも開始される。この目的で、このpHiをpH−感受性蛍光色素BCECF(Calbiochem社、前駆体のBCECF−AMを使用
した)を用いて測定した。細胞(繊維芽細胞、LAP1細胞)を最初にBCECFと付加した。このBCECF蛍光は、「Ratio Fluorescence Spectrometer」(Photon Technology International社、South Brunswick, N.J., USA)により、励起波長が505および440nm、および、放射波長が535nmで測定され、検量線を用いてpHiに変換した。この細胞を、NH4Cl緩衝液(pH7.4)(NH4Cl緩衝液:115mM NaCl、20mM NH4Cl、5mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgSO4、20mM ヘペス、5mM グルコース、1mg/mL BSA;1M NaOHを用いてpHを7.4に調整する)中で、BCECFを付加する間も、インキュベートした。細胞内酸性化は、NH4Cl不含有緩衝液(下記参照)の975μLを、NH4Cl緩衝液中でインキュベートされた細胞のアリコット25μLへ添加して誘導した。続くpH回復速度を3分間記録した。被験物質の阻害能を計算するために、細胞は最初に完全にまたは絶対的にpHの回復が起こらない緩衝液中で調べられた。完全なpHの回復(100%)のために、細胞をNa+含有緩衝液(133.8mM NaCl、4.7mM KCl、1.25mM CaCl2、1.25mM MgCl2、0.97mM Na2HPO4、0.23mM NaH2PO4、5mM ヘペス、5mM グルコース;1M NaOHを用いてpHを7.0に調整する)中でインキュベートした。0%値を測定するために、細胞を、Na+不含有緩衝液(133.8mM 塩化コリン、4.7mM KCl、1.25mM CaCl2、1.25mM MgCl2、0.97mM K2HPO4、0.23mM KH2PO4、5mM ヘペス、5mM グルコース;1M KOHを用いてpHを7.0に調整する)中でインキュベートした。試験される物質はNa+含有緩衝液中で調製した。物質の各試験濃度での細胞内pHの回復は、最大回復の%で表される。個々のNHEサブタイプに対する特定の物質のIC50値は、シグマ−プロットプログラムを用いて、pH回復のパーセントから算出された。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、またはフェニルであり、
ここで、炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R1およびR2は、両方が同時に水素であることはなく;
R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシであり、
ここで、炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R3およびR7は、両方が同時に水素であることはなく;
R8は、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または3、4もしくは5個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、
ここで、炭素鎖またはシクロアルキル基は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換されるものとするが、
R3がClで、R4、R5、R6、R7およびR8が水素の場合は、R1およびR2は、両方が同時にメチルではなく、そして、
(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミンは除外するものとする]
の化合物、ならびにその製薬的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【請求項2】
R1およびR2は、それぞれ独立して、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、またはフェニルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され;
ここで、R1およびR2は、両方が同時に水素であることはなく;
R3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R3およびR7は、両方が同時に水素であることはなく;
R8は、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または、3、4もしくは5個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、
ここで、この炭素鎖、またはシクロアルキル基は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換されるものとするが、
R3がClで、R4、R5、R6、R7およびR8が水素の場合は、R1およびR2は、両方が同時にメチルではなく、そして、
(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミン
は除外する、
請求項1に記載の式(I)の化合物、ならびにその製薬的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【請求項3】
R1およびR2は、それぞれ独立して、H、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、R1およびR2は、両方が同時に水素であることはなく;
R3およびR7は、それぞれ独立して、F、Cl、Br、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
R4、R5およびR6は、水素であり、
R8は、H、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、この炭素鎖は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換されるものとするが、
(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミンは除外する、
請求項2に記載の式(I)の化合物、ならびにその製薬的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【請求項4】
(2,6−ジクロロフェニル)(4,5−ジメチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミン、ならびにその製薬的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
医薬品としての使用のための請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物およびその製薬的に許容しうる塩。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物1つまたはそれ以上および/またはその製薬的に許容しうる塩の有効量を含む、治療用組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物1つまたはそれ以上および/またはその製薬的に許容しうる塩の有効量と、炭酸脱水酵素阻害剤、
ナトリウム依存性の塩素−重炭酸イオン交換体(NCBE)の阻害剤、他のNHE阻害剤、血圧降下物質、血中脂質低下活性を有する医薬品からなる群より選ばれる1つまたはそれ以上の他の薬理学的活性成分または医薬品とを組み合わせて含む、治療用組成物。
【請求項8】
NHEを阻害するための医薬の製造のための請求項1〜4に記載の式(I)の化合物および/またはその製薬的に許容しうる塩の使用。
【請求項9】
NHE3を阻害するための医薬の製造のための請求項1〜4に記載の式(I)の化合物および/またはその製薬的に許容しうる塩の使用。
【請求項10】
NHEを阻害するための医薬の製造のための式(I):
【化2】

[式中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキル、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルケニル、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキニル、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルケニル、またはフェニルであり、
ここで、フェニルは、非置換、またはそれぞれ独立して、F、Cl、Br、I、OH、NR9R10、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個もしくは2個の基で置換されており、
R9およびR10は、それぞれ独立して、H、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキルであり;
そして、
ここで、この炭素鎖または環は、非置換、またはそれぞれ独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12もしくは13個のF原子、および/または、OH、NR9R10、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個もしくは2個の基で置換されており、
R9およびR10は、それぞれ独立して、H、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキルであり;
R3、R4、R5、R6またはR7は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、 (C2−C4)−アルケニル、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル、OH、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシ、CN、NO2、NH2、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキルアミノ、または、それぞれが1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するジアルキルアミノであり、
ここで、この炭素鎖または環は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換され、
ここで、R3およびR7は、同時に水素であることはなく;
R8は、H、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または3、4もしくは5個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、
ここで、この炭素鎖または環は、非置換、または、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子で置換されるものとするが、
(2,6−ジクロロフェニル)(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)アミンは除外する]
の化合物、および/または、その製薬的に許容しうる塩の使用。
【請求項11】
NHE3を阻害するための医薬の製造のための請求項10に記載の式(I)の化合物、および/または、その製薬的に許容しうる塩の使用。
【請求項12】
式(V):
【化3】

[式中、R1およびR2は、H、1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキル、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルケニル、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキニル、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルキル、4、5もしくは6個の炭素原子を有するシクロアルケニル、またはフェニルであり、
ここで、フェニルは、非置換、またはそれぞれ独立して、F、Cl、Br、I、NR11R12、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個または2個の基により置換され、
R11、R12は、それぞれ独立して、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、ベンジル、4−メトキシベンジルであり;
そして
ここで、この炭素鎖は、非置換、またはそれぞれ独立して、1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9個のF原子、および/またはNR11R12、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個または2個の基により置換され、
R11、R12は、それぞれ独立して、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、ベンジル、4−メトキシベンジルであり;
または、
R1およびR2は、それらが結合している2個の炭素原子と共に、飽和または二重結合を含む5〜8員の炭素環であり、
ここで、この環は、非置換、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12個のF原子、および/またはNR11R12、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、CN、CF3、または1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルコキシの群からの1個または2個の基により置換され、
R11、R12は、それぞれ独立して、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、ベンジル、4−メトキシベンジルであり;
Eは、1、2、3もしくは4個の炭素原子を有するアルキル、または、2個のE基はE−Eが(C2−C4)−アルキレンである環状ケタールを形成し;
Halは、Cl、Br、Iである]
のα−アミノケタールの製造方法であって、以下の工程:
式(VI)のα−ハロケトンまたはアルデヒドとアジドとを、アジド−ハロゲン交換反応により、対応する式(VII)のα−アジドケトンまたはアルデヒドに変換する工程、
【化4】

次いで、一価または二価アルコールとの、ケタール化反応またはアセタール化反応によって、式(VIII)のα−アジドケタールまたはアセタールを得る工程、
【化5】

次いで、式(V)の化合物に還元する工程、
【化6】

を含む、上記製造方法。

【公開番号】特開2011−16825(P2011−16825A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196422(P2010−196422)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【分割の表示】特願2006−501561(P2006−501561)の分割
【原出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】