説明

新規な複素環誘導体およびこれを用いた有機発光素子

本発明は、新規な複素環誘導体およびこれを用いた有機発光素子に関し、前記新規な複素環誘導体は、有機発光素子の寿命、効率、電気化学的安定性および熱的安定性を大きく向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物およびこれを用いた有機発光素子に関する。本出願は2009年9月10日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2009−0085474号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
有機発光現象は、特定有機分子の内部プロセスによって電流が可視光に転換される例の1つである。有機発光現象の原理は次の通りである。正極と負極との間に有機物層を介在させた時、2つの電極の間に電圧を印加すれば、負極と正極から各々電子と正孔が有機物層に注入される。有機物層に注入された電子と正孔は再結合してエキシトン(exciton)を形成し、このエキシトンが再び基底状態に落ちて光が出る。このような原理を利用した有機発光素子は、一般的に負極と正極およびその間に位置した有機物層、例えば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を含む有機物層で構成することができる。
【0003】
有機発光素子に用いられる物質としては純粋有機物質または有機物質と金属が錯体をなす錯化合物が大部分を占めており、用途により、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などに区分することができる。ここで、正孔注入物質や正孔輸送物質としてはp−タイプの性質を有する有機物質、すなわち、酸化し易く、酸化時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に用いられている。一方、電子注入物質や電子輸送物質としてはn−タイプ性質を有する有機物質、すなわち、還元し易く、還元時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に用いられている。発光層物質としてはp−タイプ性質とn−タイプ性質を同時に有した物質、すなわち、酸化と還元状態の全てにおいて安定した形態を有する物質が好ましく、エキシトンが形成された時に、これを光に転換する発光効率の高い物質が好ましい。
【0004】
上記にて言及したことの他に、有機発光素子に用いられる物質は次のような性質をさらに有することが好ましい。
【0005】
第1に、有機発光素子に用いられる物質は熱的安定性が優れることが好ましい。有機発光素子内においては、電荷の移動によるジュール熱(joule heating)が発生するためである。現在、正孔輸送層物質として主に用いられるNPBは、ガラス転移温度が100℃以下の値を有するため、高い電流を必要とする有機発光素子においては用い難いという問題がある。
【0006】
第2に、低電圧駆動が可能な高効率の有機発光素子を得るためには、有機発光素子内に注入された正孔または電子が円滑に発光層に伝達されると同時に、注入された正孔と電子が発光層の外に出てはいけない。このため、有機発光素子に用いられる物質は、適切なバンドギャップ(band gap)とHOMOまたはLUMOエネルギー準位を有しなければならない。現在、溶液塗布法によって製造される有機発光素子において、正孔輸送物質として用いられるPEDOT:PSSの場合、発光層物質として用いられる有機物のLUMOエネルギー準位に比べてLUMOエネルギー準位が低いため、高効率、長寿命の有機発光素子の製造に困難がある。
【0007】
この他に、有機発光素子に用いられる物質は、化学的安定性、電荷移動度、電極や隣接した層との界面特性などが優れていなければならない。すなわち、有機発光素子に用いられる物質は、水分や酸素による物質の変形が少ないべきである。また、適切な正孔または電子移動度を有することによって、有機発光素子の発光層において正孔と電子の密度が均衡をなすようにしてエキシトンの形成を極大化するべきである。また、素子の安定性のために金属または金属酸化物を含む電極との界面を良くしなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、有機発光素子に使用可能な物質に求められる条件、例えば適切なエネルギー準位、電気化学的安定性および熱的安定性などを満足させることができ、置換基により、有機発光素子に求められる多様な役割を果たすことができる化学構造を有する新規な複素環誘導体およびこれを用いた有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記化学式1で示される化合物を提供する:
【化1】

前記化学式1において、
Lは、少なくとも1つのAと連結される連結基であり、置換もしくは非置換のC〜C60アリーレン基、置換もしくは非置換のフルオレン基、または置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリーレン基であり、
およびYは互いに同じであるか異なり、各々独立に、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、または置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基であり、
pは1〜10の整数であり、
〜Xのうちの少なくとも1つは前記Lと連結され、残りは各々独立に水素;重水素;ハロゲン;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;置換もしくは非置換のC〜C50アルキル基;置換もしくは非置換のC〜C50アルコキシ基;置換もしくは非置換のC〜C50シクロアルキル基;置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロシクロアルキル基;置換もしくは非置換のC〜C60アリール基;置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;または置換もしくは非置換のシリコン基である。
【0010】
また、本発明は、第1電極、発光層を含む1層以上の有機物層および第2電極が積層された形態で含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が前記化学式1の化合物を含む有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物は、有機発光素子において、有機物層物質、特に発光物質、正孔注入物質および/または正孔輸送物質として用いることができ、この化合物を有機発光素子に用いる場合、素子の駆動電圧を下げ、光効率を向上させ、化合物の熱的安定性によって素子の寿命特性を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る有機発光素子の発光層は、赤色、緑色、青色または白色の燐光または蛍光ドーパントを含むことができる。この中、前記燐光ドーパントはIr、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、TbおよびTmからなる群から選択された1つ以上の元素を含む有機金属化合物であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】基板1、正極2、発光層3、負極4からなる有機発光素子の例を示すものである。
【図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8および負極4からなる有機発光素子の例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る化合物の一具体例は前記化学式1で示される。
前記化学式1において、アリール基は単環式もしくは多環式であってもよく、炭素数は特に限定されないが、6〜60が好ましい。単環式アリール基の例としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベンなどが挙げられ、多環式アリール基の例としてはナフチル基、アントラセニル基、フェナントレン基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基などが挙げられるが、本発明の範囲がこれらの例だけに限定されるものではない。
【0016】
前記化学式1において、ヘテロシクロアルキル基またはヘテロアリール基のような複素環基は、異種原子としてO、NまたはSを含む環状基であり、炭素数は特に限定されないが、3〜60が好ましい。ヘテロアリール基の例としてはチオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ピラダジン基、キノリニル基、イソキノリン基、アクリジル基などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0017】
前記化学式1において、置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基としては次のような複素環基が好ましいが、これらだけに限定されるものではない。
【0018】
【化2】

前記化学式1において、
【化3】

は、好ましくは下記の基があるが、これらだけに限定されるものではない。
【化4】

【0019】
前記化学式1において、フルオレン基は次のような構造が好ましいが、これらだけに限定されるものではない。
【化5】

前記化学式1において、アルキル基またはアルコキシ基は直鎖もしくは分枝鎖を含む。
【0020】
前記化学式1において、「置換もしくは非置換」とは、重水素;ハロゲン;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;C〜C50アルキル基;C〜C50アルコキシ基;C〜C50シクロアルキル基;C〜C60ヘテロシクロアルキル基;C〜C60アリール基;C〜C60ヘテロアリール基;アリールアミン基;フルオレン基;およびシリコン基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で置換もしくは非置換されることを意味する。
【0021】
本発明の一実施状態によれば、XがLと連結され、Xがアリール基であることが好ましい。
【0022】
本発明のまた他の一実施状態によれば、XがLと連結され、XおよびXがアリール基であることが好ましい。
【0023】
本発明の一実施状態によれば、XがLと連結され、Xがアリール基であることが好ましい。
【0024】
本発明のまた他の一実施状態によれば、XがLと連結され、XおよびXがアリール基であることが好ましい。
【0025】
前記化学式1の化合物の具体的な例としては下記化学式で示される化合物であってもよいが、これらだけに限定されるものではない。
【化6A】

【化6B】

【化6C】

【化6D】

【化6E】

【0026】
また、前記化学式1で示される化合物の一般的な製造方法は次の通りである。
先ず、下記反応式1のように化学式Aを製造する。
【化7】

前記反応式1において、R1〜R4は化学式1のX〜Xの定義と同一であり、nは1〜4の整数である。
【0027】
前記反応式1で作られた化学式AをPd触媒下で鈴木カップリング、アミン基の導入と臭素化反応をして、化学式1で示される化合物を製造することができる。
【0028】
本発明に係る化学式1で示される化合物は、多段階化学反応によって製造することができる。前記化合物の製造は、下記製造例によって記述される。製造例に示すように、一部の中間体化合物が先に製造され、その中間体化合物から化学式1で示される化合物が製造される。
【0029】
また、本発明に係る有機電子素子は、第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極との間に配置された1層以上の有機物層を含む有機電子素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は前記化学式1で示される化合物を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明の有機電子素子は、前述した化合物を用いて1層以上の有機物層を形成することを除いては、通常の有機電子素子の製造方法および材料によって製造することができる。
【0031】
前記化学式1で示される化合物は、有機電子素子の製造時、真空蒸着法だけでなく、溶液塗布法によって有機物層として形成することができる。ここで、溶液塗布法とはスピンコーティング、ディップコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらだけに限定されるものではない。
【0032】
本発明の有機電子素子の有機物層は単層構造であってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造であってもよい。例えば、本発明の有機電子素子は、有機物層として正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有してもよい。しかし、有機電子素子の構造はこれに限定されず、より少ない数の有機物層を含むことができる。
【0033】
したがって、本発明の有機電子素子において、前記有機物層は正孔注入層および正孔輸送層を含むことができ、この正孔注入層または正孔輸送層が前記化学式1で示される化合物を含むことができる。
【0034】
また、前記有機物層は発光層を含むことができ、この発光層が前記化学式1で示される化合物を含むことができる。
【0035】
このような多層構造の有機物層において、前記化学式1で示される化合物は、発光、正孔注入、正孔輸送、電子輸送、電子注入のうちの少なくとも1つの役割をする有機物層を形成することができる。特に、本発明に係る有機電子素子は、発光層、正孔注入および/または輸送層または発光と正孔輸送を同時にする層に含まれることがより好ましい。
【0036】
本発明に係る有機発光素子の発光層は、赤色、緑色、青色または白色を含む燐光または蛍光ドーパントを含むことができる。この中、前記燐光ドーパントはIr、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、TbおよびTmからなる群から選択された1つ以上の元素を含む有機金属化合物であってもよい。
【0037】
例えば、本発明の有機発光素子の構造は図1または図2に示すような構造を有してよいが、これらだけに限定されるものではない。
【0038】
図1には、基板1、正極2、発光層3および負極4が順次積層された構造の有機発光素子の例が示されている。図2には、基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8および負極4からなる有機発光素子の例が示されている。
【0039】
図1および図2には、基板上に正極が位置する正構造(normal)が例示されているが、これに限定されず、本発明は、基板上に負極が位置する逆構造(inverted)も含む。
【0040】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、スパッタリング(sputtering)や電子ビーム蒸発(e−beam evaporation)のようなPVD(physical vapor deposition)方法を利用し、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着して正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として用いることのできる物質を蒸着して製造することができる。このような方法の他に、基板上に負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着して有機発光素子を作ることもできる。
前記有機物層は正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層などを含む多層構造であってもよいが、これに限定されず、単層構造であってもよい。また、前記有機物層は、多様な高分子素材を用いて、蒸着法ではない溶媒工程(solvent process)、例えばスピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、スクリーン印刷、インクジェット印刷または熱転写法などの方法により、より少ない数の層に製造することができる。
【0041】
前記正極物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑になるように仕事関数の大きい物質が好ましい。本発明に用いられる正極物質の具体的な例としてはバナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)化合物(PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0042】
前記負極物質としては、通常、有機物層への電子注入が容易になるように仕事関数の小さい物質が好ましい。負極物質の具体的な例としてはマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造物質などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0043】
前記正孔注入物質としては、低い電圧において、正極から正孔の注入を円滑に受けられる物質であって、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては金属ポルフィリン(porphyrine)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
前記正孔輸送物質としては、正極や正孔注入層から正孔の輸送を受けて発光層に移せる物質であって、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としてはアリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共に存在するブロック共重合体などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0044】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子の輸送を各々受けて結合させることによって可視光線領域の光を出せる物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン;ルブレンなどが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0045】
前記電子輸送物質としては、負極から電子の注入を円滑に受けて発光層に移せる物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては8−ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯体などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0046】
本発明に係る有機発光素子は、用いられる材料により、前面発光型、背面発光型または両面発光型であってもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を通じ、本発明の化学式1で示される化合物の製造方法およびこれらを用いた有機電子素子の製造方法および性能について具体的に説明する。但し、下記実施例は説明のためのものであって、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0048】
<実施例>
<製造例1>化学式1−1で示される化合物の製造
【化8】

1)化学式1Aの製造
2−ブロモアセトフェノン(2−Bromoacetophenone、25.4g、127.6mmol)、2−ピコリン(2−picoline、11.9g、127.6mmol)をトルエン150mlを入れ、3時間窒素気流下で還流した。常温に冷却した後、できた生成物を濾過した。濾過した生成物をKCO(aq)において80°Cで攪拌した。常温に冷却した後、できた生成物を濾過し乾燥して、化学式1A(20.3g、収率82%)を得た。
MS:[M+H]=194
2)化学式1Bの製造
化学式1A(5.0g、25.87mmol)、1−ブロモ−4−クロロベンゼン(5.94g、31.05mmol)をNMP 100mlに溶解し、HO 1ml、KOAc(5.0g、51.74mmol)、PdCl(PPh(0.95g、1.29mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式1B(7.5g、収率95%)を得た。
MS:[M+H]=304
3)化学式1−1の製造
化学式1B(7.5g、24.69mmol)、N−フェニル−ビフェニルアミン(N−phenyl−biphenylamine、6.6g、27.15mmol)をキシレン150mlに溶解し、ナトリウム−Tert−ブトキシド(3.56g、37mmol)、Pd[P(t−Bu) 0.13g(0.247mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式1−1(7.3g、収率57%)を得た。
MS:[M+H]=513
【0049】
<製造例2>化学式1−2で示される化合物の製造
化学式1B(7.5g、24.69mmol)、N−ビフェニル−1−ナフチルアミン(N−biphenyl−1−naphtylamine、8.0g、27.15mmol)をキシレン150mlに溶解し、ナトリウム−Tert−ブトキシド(3.56g、37mmol)、Pd[P(t−Bu) 0.13g(0.247mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式1−2(6.8g、収率49%)を得た。
MS:[M+H]=563
【0050】
<製造例3>化学式1−3で示される化合物の製造
化学式1B(7.5g、24.69mmol)、ビスビフェニルアミン(bisbiphenylamine、8.73g、27.15mmol)をキシレン150mlに溶解し、ナトリウム−Tert−ブトキシド(3.56g、37mmol)、Pd[P(t−Bu) 0.13g(0.247mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式1−3(7.3g、収率44%)を得た。
MS:[M+H]=665
【0051】
<製造例4>化学式1−5で示される化合物の製造
【化9】

1)化学式5Bの製造
化学式1A(5.0g、25.87mmol)、1−ブロモ−4−クロロビフェニル(8.3g、31.05mmol)をNMP 100mlに溶解し、HO 1ml、KOAc(5.0g、51.74mmol)、PdCl(PPh(0.95g、1.29mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式5B(5.96g、収率60%)を得た。
MS:[M+H]=380
2)化学式1−5の製造
化学式5B(5.96g、15.69mmol)、N−フェニル−ビフェニルアミン(N−phenyl−biphenylamine、5.55g、17.26mmol)をキシレン150mlに溶解し、ナトリウム−Tert−ブトキシド(2.26g、23.53mmol)、Pd[P(t−Bu) 0.08g(0.157mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式1−5(4.9g、収率47%)を得た。
MS:[M+H]=665
【0052】
<製造例5>化学式1−9で示される化合物の製造
【化10】

1)化学式9Aの製造
2−ブロモアセトフェノン(2−Bromoacetophenone、10g、50.24mmol)、2−ベンジルピリジン(2−benzylpyridine、8.5g、50.24mmol)を、トルエン(toluene)150mlを入れ、3時間窒素気流下で還流した。常温に冷却した後、できた生成物を濾過した。濾過した生成物をKCO(aq)において80°Cで攪拌した。常温に冷却した後、できた生成物を濾過し乾燥して、化学式9A(8.7g、収率64%)を得た。
MS:[M+H]=270
2)化学式9Bの製造
化学式9A(5.0g、18.56mmol)、1−ブロモ−4−クロロベンゼン(4.3g、22.27mmol)をNMP 100mlに溶解し、HO 0.67ml、KOAc(3.64g、37.12mmol)、PdCl(PPh(0.68g、0.928mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式9B(5.9g、収率83%)を得た。
MS:[M+H]=380
3)化学式1−9の製造
化学式9B(7.39g、19.45mmol)、ビスビフェニルアミン(bisbiphenylamine、6.87g、21.4mmol)をキシレン150mlに溶解し、ナトリウム−Tert−ブトキシド(2.8g、29.17mmol)、Pd[P(t−Bu) 0.09g(0.194mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式1−9(7.3g、収率56%)を得た。
MS:[M+H]=665
【0053】
<製造例6>化学式1−11で示される化合物の製造
【化11】

1)化学式11Bの製造
化学式9A(5.0g、18.56mmol)、1−ブロモ−4−クロロビフェニル(5.96g、22.27mmol)をNMP 100mlに溶解し、HO 0.67ml、KOAc(3.64g、37.12mmol)、PdCl(PPh(0.68g、0.928mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式11B(6.0g、収率70%)を得た。
MS:[M+H]=456
2)化学式1−11の製造
化学式11B(6.0g、13.16mmol)、N−フェニル−ビフェニルアミン(N−phenyl−biphenylamine、3.54g、14.47mmol)をキシレン150mlに溶解し、ナトリウム−Tert−ブトキシド(1.89g、19.74mmol)、Pd[P(t−Bu) 0.067g(0.13mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式1−11(5.1g、収率58%)を得た。
MS:[M+H]=665
【0054】
<製造例7>化学式1−12で示される化合物の製造
化学式11B(6.0g、13.16mmol)、ビスビフェニルアミン(bisbiphenylamine、4.65g、14.47mmol)をキシレン150mlに溶解し、ナトリウム−Tert−ブトキシド(1.89g、19.74mmol)、Pd[P(t−Bu) 0.067g(0.13mmol)を添加した後、5時間窒素気流下で還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了し、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式1−12(6.5g、収率66%)を得た。
MS:[M+H]=741
【0055】
<実施例1>
ITO(インジウムスズ酸化物)が1,000Å厚さで薄膜コーティングされたガラス基板(corning 7059 glass)を、分散剤を溶かした蒸留水に入れて超音波で洗浄した。洗剤としてはFischer Co.の製品を使用し、蒸留水としてはMillipore Co.製品のフィルタ(Filter)で2次濾過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノール溶剤の順で超音波洗浄をして乾燥した。
【0056】
このように準備したITO透明電極上にヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(hexanitrile hexaazatriphenylene)を500Å厚さで熱真空蒸着して、正孔注入層を形成した。その上に、正孔を輸送する物質である上記製造例で合成した化学式1−1(400Å)を真空蒸着した後、発光層としてホストH1とドーパントD1化合物を(300Å)の厚さで真空蒸着した。その次、E1化合物(300Å)を電子注入および輸送層として熱真空蒸着した。前記電子注入および輸送層上に、12Å厚さのフッ化リチウム(LiF)と2,000Å厚さのアルミニウムを順次蒸着して負極を形成し、有機発光素子を製造した。
【0057】
前記過程において、有機物の蒸着速度は1Å/secを維持し、フッ化リチウムは0.2Å/sec、アルミニウムは3〜7Å/secの蒸着速度を維持した。
【化12】

【0058】
<実施例2>
前記実施例1において、正孔輸送層として、製造例で合成した化学式1−1の代わりに化学式1−2を用いたことを除いては、同一に実験した。
【0059】
<実施例3>
前記実施例1において、正孔輸送層として、製造例で合成した化学式1−1の代わりに化学式1−3を用いたことを除いては、同一に実験した。
【0060】
<実施例4>
前記実施例1において、正孔輸送層として、製造例で合成した化学式1−1の代わりに化学式1−5を用いたことを除いては、同一に実験した。
【0061】
<実施例5>
前記実施例1において、正孔輸送層として、製造例で合成した化学式1−1の代わりに化学式1−9を用いたことを除いては、同一に実験した。
【0062】
<実施例6>
前記実施例1において、正孔輸送層として、製造例で合成した化学式1−1の代わりに化学式1−11を用いたことを除いては、同一に実験した。
【0063】
<実施例7>
前記実施例1において、正孔輸送層として、製造例で合成した化学式1−1の代わりに化学式1−12を用いたことを除いては、同一に実験した。
【0064】
<比較例>
前記実施例1において、正孔輸送層として、製造例で合成した化学式1−1の代わりにNPBを用いたことを除いては、同一に実験した。
前記実施例1〜7および比較例のように、それぞれの化合物を正孔輸送層物質として用いて製造した有機発光素子を実験した結果を下記表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
本発明に係る化学式の化合物誘導体は、有機発光素子をはじめとする有機電子素子において、正孔注入、正孔輸送、電子注入および輸送、または発光物質の役割に果たすことができ、本発明に係る素子は、効率、駆動電圧、安定性の面に優れた特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示される化合物:
【化1】

前記化学式1において、
Lは、少なくとも1つのAと連結される連結基であり、置換もしくは非置換のC〜C60アリーレン基、置換もしくは非置換のフルオレン基、または置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリーレン基であり、
およびYは互いに同じであるか異なり、各々独立に、置換もしくは非置換のC〜C60アリール基、または置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基であり、
pは1〜10の整数であり、
〜Xのうちの少なくとも1つは前記Lと連結され、残りは各々独立に水素;重水素;ハロゲン;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;置換もしくは非置換のC〜C50アルキル基;置換もしくは非置換のC〜C50アルコキシ基;置換もしくは非置換のC〜C50シクロアルキル基;置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロシクロアルキル基;置換もしくは非置換のC〜C60アリール基;置換もしくは非置換のC〜C60ヘテロアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;または置換もしくは非置換のシリコン基である。
【請求項2】
前記化学式1のアリール基は、フェニル基、ビフェニル、テルフェニル基、スチルベン、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレン基、ピレニル基、ペリレニル基、またはクリセニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化学式1のヘテロアリール基は、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ピラダジン基、キノリニル基、イソキノリン基、またはアクリジル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化学式1の
【化2】

は下記化学式の中から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化3A】

【化3B】

【請求項5】
前記化学式1のフルオレン基は次のような構造の中から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化4】

【請求項6】
前記化学式1のヘテロアリーレン基は下記構造式の中から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化5】

【請求項7】
前記化学式1の化合物が下記化学式で示される、請求項1に記載の化合物:
【化6A】

【化6B】

【化6C】

【化6D】

【請求項8】
第1電極、発光層を含む1層以上の有機物層および第2電極が積層された形態で含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が請求項1の化合物を含む有機発光素子。
【請求項9】
前記発光層は、赤色、緑色、青色または白色の燐光または蛍光ドーパントを含む、請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記燐光ドーパントは、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、TbおよびTmからなる群から選択された1つ以上の元素を含む有機金属化合物である、請求項9に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−504568(P2013−504568A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528747(P2012−528747)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006167
【国際公開番号】WO2011/031086
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】