説明

新規な電子デバイスの製造方法、該方法で得られた電子デバイス、およびその用途

【課題】発光体層が高密度であるために高い発光輝度を有するとともに低閥電圧で駆動させることができ、また、空隙の低下により残存酸素等が減少して酸化による劣化を抑制できるために長期にわたって高い発光輝度を維持することができ、さらに経済性にも優れた新規な電子デバイスの製造方法に関する。
【解決手段】下記の工程(a)〜(d)により発光体層を形成することを特徴とする電子デバイス用発光素子の製造方法。
(a)基板上に蛍光体粒子からなる発光体層を形成する工程
(b)ついで、有機フィルムにて封印する工程
(c)圧力容器に入れ、ついで媒体を導入し、加圧する工程
(d)加圧を解除し、有機フィルムを開封して除去する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間等方圧縮方式(以下、CIP方式ということがある)による加圧処理を施すことにより形成された高密度の蛍光体粒子からな発光体層を有する発光素子を用いた新規な電子デバイスの製造方法、該方法で得られた電子デバイスおよびその用途に関する。
【0002】
さらに詳しくは、発光体層が高密度であるために高い発光輝度を有するとともに低閥電圧で駆動させることができ、また、空隙の低下により残存酸素等が減少して酸化による劣化を抑制できるために長期にわたって高い発光輝度を維持することができ、さらに経済性にも優れた新規な電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
蛍光体を用いた発光素子の多くは、蛍光体粒子を樹脂や溶媒に懸濁させ、印刷法やドクターブレード法、スピン法等により形成された発光体層を利用している。
たとえば、以下の用途に使用されている。
プラズマテレビ
たとえば、プラズマテレビは、各絵素セルに形成された発光体層を、プラズマにより発光させる方式にて表示を行っている。
【0004】
そして、発光体層は、赤色(R)発光特性、緑色(G)発光特性、青色(B)発光特性を有する各蛍光体粒子を高粘性樹脂バインダーに分散させ、印刷法にて、背面基板に予め形成されたセルの壁面に塗布し、ついで、450℃以上の温度にて樹脂などを除去して形成されている。図1はプラズマテレビ用画素セルの概略断面図を示す。
蛍光表示装置
また、蛍光表示装置では、紫外ないし青色の発光ダイオードチップにより発光する蛍光体膜を、その前面に配置して、可視光に波長変換することによって、白色系の発光または他の発光色を有する発光体層が用いられている。図5は蛍光表示装置用発光素子の概略断面図を示す。
【0005】
たとえば、青色発光のGaN系発光ダイオードチップに発光主波長が570nmの黄色発光を行うイットリウム・アルミニウム・ガメット(YAG:Y3Al512)蛍光体を組み合わせた表示装置は、青色とその補色である黄色で白色を作るものである。
【0006】
特許文献1には、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂およびポリプロピレン樹脂を含む弾性または延性を持つ材料から構成された板状またはフィルム状の蛍光体を発光ダイオードチップのパッケージの前面に配置して、白色発光を行うようにした蛍光表示装置が記載されている。
【0007】
特許文献2には、多価イオンを蛍光体粒子表面に付着させることによって帯電した蛍光体を発光ダイオードチップに吸着させることによって発光体層を形成する方法も開示されている。
FED
さらにまた、FED(Field Emission Display)では、電子線で発光する蛍光体、たとえば硫化亜鉛系や、希土類系(Y2O2S:Euなど)、酸化物系(Y2O3、Y2SiO5など)などからなる蛍光膜を、電子発生源に対峙して形成し、各絵素(単位蛍光体と電子源)ごとに制御して、表示を行うものであるが、その蛍光膜は、高粘性樹脂に分散させ、印刷機により
パターニングする印刷法やレジストに分散させドクターブレード法などにより形成される。図6はFED用発光素子の概略断面図を示す。
【特許文献1】特開2001−345482号公報
【特許文献2】特開2004−119634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来技術による発光体層は、蛍光体粒子を集めて構成されているため、空隙率が大きく、また不均質であり、均一に照射されてくる励起源である紫外線や電子線のエネルギーを効率よく、可視光に変換できているとはいえなかった。
【0009】
また、蛍光体粒子表面における散乱により、発光された光の一部が吸収されて、発光された光を効率よく膜外に取りだすことができないという問題点もあった。
樹脂を含む発光体層を形成した後、樹脂を焼成して除去する場合には、その空隙さらに大きくなり、また樹脂が残存する場合には、樹脂により、可視光への変換効率が低下する。
【0010】
これらの問題を防ぐために、通常、平板等を用いた圧縮プレス法で圧縮することもできるが、一方向からの加圧であり、効果がその方向に限られていることや、ひずみによる破損などの弊害などで、充分強い加圧を加えることは難しい。
【0011】
このため、発光体層が基板から脱離したり、発光体層が基板と密着してないことに起因する発光ムラなども問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、発光体層が緻密でかつ均質であるために高い発光輝度を有するとともに低閥電圧で駆動させることができ、経済性にも優れた新規な電子デバイスの出現が望まれていた。
【0013】
本発明の要旨は以下にある。
[1]下記の工程(a)〜(d)により発光体層を形成することを特徴とする電子デバイス
用発光素子の製造方法。
(a)基板上に蛍光体粒子からなる発光体層を形成する工程
(b)ついで、有機フィルムにて封印する工程
(c)圧力容器に入れ、ついで媒体を導入し、加圧する工程
(d)加圧を解除し、有機フィルムを開封して除去する工程。
[2]前記発光体層がさらに電子放出源を含む[1]の製造方法。
[3]前記蛍光体粒子の平均粒子径が0.01〜100μmの範囲にある[1]または[2]の製
造方法。
[4]前記工程(c)の加圧圧力が10〜10,000kgf/cm2の範囲にあり、温度が常温〜350℃の範囲にある[1]〜[3]の製造方法。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法で得られた発光素子を用いた電子デバイス。
[6]プラズマディスプレイ(PDP)である[5]の電子デバイス。
[7]さらに発光ダイオード(LED)を用いた蛍光表示装置(照明装置)である[5]の電子デバイス。
[8]電界放出ディスプレイ(FED)である[5]の電子デバイス。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光体層が冷間等方圧縮方式により形成されているために高密度であり、このためかかる発光体層を用いると、高い発光輝度を有するとともに低閥電圧で駆動
させることができ、また、空隙の低下により残存酸素等が減少して酸化による劣化を抑制できるために長期にわたって高い発光輝度を維持することができ、さらに経済性にも優れた新規なプラズマディスプレイ(PDP)、蛍光表示装置(照明装置および表示装置)および電界放出ディスプレイ(FED)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
製造方法
本発明に係る電子デバイス用発光素子の製造方法は、下記の工程(a)〜(d)により発光体層を形成することを特徴としている。
(a)基板上に蛍光体粒子からなる発光体層を形成する工程
(b)ついで、有機フィルムにて封印する工程
(c)圧力容器に入れ、ついで媒体を導入し、加圧する工程
(d)加圧を解除し、有機フィルムを開封して除去する工程。
【0016】
蛍光体粒子としては従来公知の蛍光体粒子を用いることができ、例えば、赤:(Y、Gd,Eu)23、ガドリニウム・ユウロピウム賦活酸化イットリウム(Y23:Gd,Eu)、銅およびアルミニウム賦活硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)、ユウロピウム賦活酸化イットリウム(Y23:Eu)、マンガン賦活硫化亜鉛(ZnS:Mn)、銅賦活硫化
亜鉛(ZnS:Cu)、銀賦活硫化亜鉛(ZnS:Ag)、銅およびアルミニウム賦活硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)、緑:マンガン賦活珪酸亜鉛(Zn2SiO4:Mn)、青:ユウロピウム賦活酸化アルミニウムバリウムマグネシウム(BaMgAl1017:Eu)、ユウロピウム賦活硫化イットリア(Y22S:Eu)、ユウロピウム賦活酸化イットリウム(Y23:Eu)等が挙げられる。
【0017】
このような蛍光体粒子は平均粒子径が0.01〜100μmの範囲にあることが好ましい。
蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm未満の場合は、蛍光体粒子によっては結晶性が不充分な場合があり、発光効率が不充分となることがある。
【0018】
蛍光体粒子の平均粒子径が100μmを超えるものは得ることが困難であり、得られたとしても経済性が問題となる。
発光体層は厚さが0.1〜1000μm、さらには0.2〜500μmの範囲にあることが好ましい。
【0019】
発光体層は厚さが0.1μm未満の場合は、蛍光体の量が少ないために励起エネルギーを充分吸収することができずロスが生じ、発光輝度が不充分となることがある。
発光体層は厚さが1000μmを超えると、発光に寄与しない蛍光体が増加して励起エネルギーの吸収がさらに高まることもなく、さらに放電エリアが減少し、一方放電ガスが増大するために発光輝度が低下し、信頼性の低下を招くことがある。
【0020】
また、発光体層の空隙率は、用いる蛍光体粒子の粒子径および粒子径分布によっても異なるが、概ね25容積%、さらには20容積%以下であることが望ましい。
発光体層の空隙率が25容積%以下の場合は、蛍光体粒子密度が高いために発光輝度に優れ、また透明性も増し光の散乱を抑制できるために発光輝度に優れた発光素子を得ることができる。さらに、酸化を抑制できるために寿命の長い発光素子を得ることができる。
【0021】
空隙率の測定方法は水銀圧入法により発光体層の細孔容積を求め、一方で発光体層の密度からもとめた発光体層の体積に対する割合として求めることができる。なお、必要に応じて、発光体層断面のSEM写真を撮影し、蛍光体粒子に該当する面積と空隙に該当する
面積とを求めることにより空隙率を求めることもできる。
【0022】
本発明の製造方法で得られる発光素子を用いる一態様例であるPDP用発光体素子をもとに、本発明の製造方法を説明する。図1は前記したようにPDP用発光体素子の断面模式図を示す。
【0023】
図1中、1は背面基板、2はリブ、3は前面基板、4は発光体層、5はガスを示し、発光素子は、背面基板1に形成されたリブ2に接して前面基板3が配置され、セルが構成されている。このセル内面には、背面基板1上とリブ2上に発光体4が形成され、発光体層と全面基板とに囲まれた空間にはガス5が封じ込めている。このような発光素子は、ガスへの放電により発生する真空紫外線(147nm)により蛍光体を励起して発光する。
【0024】
背面基板1としては、通常、ガラス(ソーダライムガラス)、セラミックス、FRD等が用いられる。
リブ2としては、従来公知の、感光性ガラスペーストを露光、現像、焼成して得たリブ、ガラスペースト膜をサンドブラストで切削して形成したリブ等が用いられる。
【0025】
前面基板3としては、従来公知のガラス、石英、アクリル等の基板上に錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫、アルミニウム、クロム等従来公知の導電膜が形成された基板を用いることができる。
【0026】
ガス5としては、従来公知のHe、Ne、Ar、Kr、Xe等、およびこれらの混合ガスを用いることができる。代表的にはHe−Xe、Ne−Xe等の混合ガスが挙げられる。
【0027】
また、発光体層5は前記したように蛍光体粒子からなっている。
以下、図1に示すセルプラズマディスプレイ(PDP)を例にとり、本発明にかかる発光素子の製造方法について説明する。
工程(a)
先ず、背面基板上にリブを配置し、背面基板とリブとに囲まれた内面に、たとえば印刷法の場合には蛍光体粒子と、必要に応じて高粘性の樹脂バインダーとからなる塗料を印刷し、フォトリソグラフ法の場合には、蛍光体粒子とフォトレジストとを混合した塗料を塗布することによって発光体膜5が形成された基板を得る。なお、本発明では、必要に応じて、この工程(a)で樹脂バインダー燃焼除去することができる。燃焼温度は通常450℃以上である。
【0028】
上記において、必要に応じて含まれる樹脂バインダーは、発光体層中の樹脂バインダーの含有量が固形分として0.1〜40重量%、さらには1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
【0029】
本発明に用いる樹脂バインダーとしては従来公知の樹脂バインダーを用いることができ、例えば、シアノエチルセルロース、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
発光体層中の樹脂バインダーの含有量が固形分として0.1重量%未満の場合は、蛍光体粒子等が緻密に充填できない場合があり、発光体層の強度が不充分となることがある。
【0030】
発光体層中の樹脂バインダーの含有量が固形分として40重量%を超えると、樹脂バインダーの燃焼除去が困難となる。
工程(b)
ついで、発光体膜5が形成された基板を柔軟性ある有機フィルム袋に入れ、密着させる。
【0031】
密着させるには、発光体膜5が形成された基板全体を有機フィルム製の袋にいれ、真空に引き発光体膜に密着させることが好ましい。図2は、工程(b)の概略概略図である。6はフィルム袋を示す。
【0032】
有機フィルムとしては、発光体層の形状に沿って柔軟に密着でき、このため発光体層に全方位から均一に加圧でき、工程(c)での印加される圧力に耐えることができ、発光体層へのコンタミの原因にならないこと等が重要な条件であり、例えば、ゴム、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン等の有機フィルムを用いることができる。
【0033】
また、これらに対応する樹脂液を塗布し、硬化させて用いることもできる。場合によっては、アルミニウム等の金属箔を用いることもできる。
工程(c)
ついで、有機フィルム袋を装着して密着させた後、圧力容器に入れ、加圧媒体を導入し、ついで加圧する。図3は、工程(c)の概略概略図であり、圧力容器に入れ加圧する工程の概略を示す。8は圧力容器、9は加圧媒体、10は加圧していることを示す。
【0034】
圧力容器としては、発光体膜5が形成された基板を入れることができ、後述する温度、圧力に耐えることができれば特に制限はない。
加圧媒体としては水、エチレングリコール、鉱物油などが用いられる。このような加圧媒体を用いることによって発光体層に全方位から均一に加圧することができ、蛍光体粒子の損傷もなく、得られる発光体層は空隙率が減少し、輝度の向上した発光素子を得ることができる。
【0035】
圧力は、発光体層に用いる蛍光体粒子の種類によっても異なるが10〜10,000kgf/cm2、さらには20〜5,000kgf/cm2の範囲にあることが好ましい。
前記圧力が10kgf/cm2未満の場合は得られる発光体層の緻密化が不十分であり
、発光輝度の向上、敷き位電圧の低下が不充分となることがある。
【0036】
前記圧力が10,000kgf/cm2を超えると基板が損傷したり、蛍光体粒子の種
類によっては蛍光体粒子が破壊して劣化したり、充分な発光輝度が得られないことがある。
【0037】
たとえば硫化亜鉛蛍光体のように、圧力で結晶の損傷が激しい場合には、低い加圧に抑えねばならないが、酸化物系のような場合には、1000kgf・cm2以上の圧力が可
能である。
【0038】
また、温度は用いる有機フィルム袋の耐熱性によって異なるが、通常、常温〜350℃の範囲にあることが好ましい。なお、加圧により発熱が顕著な場合には、加圧媒体が凍結しない範囲でより低温を採用することもできる。
工程(d)
ついで、加圧を解除し、発光体膜5が形成された基板を取り出し、有機フィルムを除去することによって緻密化された発光体膜5が形成された基板を得る。なお、本発明では、前記工程(a)の後に樹脂バインダーを燃焼除去しなかった場合に、必要に応じて、有機フィルムを除去した後、樹脂バインダーを通常450℃以上の温度で燃焼除去することもできる。
【0039】
ついで、常法によって、前面基板をリブに接して配置し、ガスを充填することによってPDP発光素子用セルを得る。
図4に、本発明により得られる緻密度向上効果と、輝度向上の効果の一例を、加圧圧力
との相関で示す。圧力とともに緻密度が改善され(図4a)、それにつれて輝度も向上(図4b)する。
【0040】
また副次効果として、基板と蛍光体、蛍光体粒子同士の付着力が向上した結果、脱落粒子に起因する不具合が減少し、歩留まりも向上する。また、空隙が減少することから残存酸素等による酸化を抑制できるために寿命の長い発光素子を得ることができる。さらに、樹脂バインダーを低減できることから、完全には除去できないバインダー残渣による劣化を低減することができる。
【0041】
本発明で製造される発光素子は、上記セルプラズマディスプレイ(PDP)の他に、発光ダイオード(LED)を用いた蛍光表示装置(照明装置)、電界放出ディスプレイ(FED)用途に好適である。
【0042】
つぎに、本発明に係る発光素子の別の態様例として発光ダイオード(LED)とともにを用いた蛍光表示装置(照明装置)用発光素子の断面図を模式的に図5に示した。
本発明の発光素子は、背面基板14上に発光ダイオードチップ15が設けてあり、基板の両端に設けたスペーサ13上に発光体層16を設けた前面基板17が載置してある。
【0043】
このとき、発光ダイオードチップ15から発せられる青色光と、発光ダイオードにより励起される発光体層16からの光(二次光源)との合成により、適切な白色光源を得るものである。
【0044】
本発明に用いる背面基板14としては従来公知の基板を用いることができ、例えば、ガラス−エポキシ樹脂、セラミックス等のプリント配線付の基板を用いることができる。
前面基板17としては従来公知の基板を用いることができ、例えば、ガラス、プラスチック、アクリル樹脂等の基板を用いることができる。
【0045】
発光ダイオードチップ15としては、主として紫外線ないし青色発光の放射を行う発光特性を有しているものを用いる。たとえばGaN系の発光ダイオード、SiC系およびZnSe系の発光ダイオード等が用いられる。紫外光ないし青色光の放射は、発光体層16を励起させて可視光を発生させる。発光体層16は、発光ダイオードチップ15からの放射が照射されたときに励起して可視光を発生し、その可視光が前面に放出できるよう、前面基板上に形成されている。
【0046】
発光体層を構成する蛍光体粒子としては、Sm、Eu賦活硫化ランタン、Ce賦活アルミン酸塩、Eu賦活リン酸およびEu賦活リン酸塩等が用いられ、所望の色になるように適宜選択して用いる。
【0047】
このような蛍光体粒子は平均粒子径が0.01〜100μmの範囲にあることが好ましい。
このような発光体層16は、前記と同様の工程(a)〜(d)により形成される。
【0048】
先ず、工程(a)として前面基板上に蛍光体粒子と樹脂バインダーとからなる塗料を塗布
して発光体膜16が形成された基板を得る。塗布する方法としては、印刷法、流し込み法、吹き付け法、静電塗装法等がある。なお、本発明では、必要に応じて、この工程(a)で樹脂バインダー燃焼除去することができる。燃焼温度は通常450℃以上である。
【0049】
前記PDP用発光素子セルの製造における工程(b)、工程(c)および工程(d)において、発光体膜16が形成された基板を用いて、同様にして緻密化された発光体層16を設けた前面基板17を得る。
【0050】
ついで、発光体層17を設けた前面基板17をスペーサ13と発光ダイオードチップ15を設けた背面基板14上に載置することによって素子を作製する。
得られた素子はLEDからの発光の利用効率が向上し、大幅な輝度向上が達せられる。
【0051】
また、本発明に係る発光体素子を電界放出ディスプレー(FED)に用いた場合の断面図を模式的に図6に示した。
図6の背面基板22上に電子源18が設けられた電子源付背面基板と、前面基板23上に発光体層19が形成され、該発光体層19上に金属膜21が設けられた発光体層付前面基板とがスペーサ20を介して一定間隔に保持され、対向して配置されている。
【0052】
電子源18で放出された電子は、背面基板と前面基板との間に印加された高電圧によって加速され、蛍光体粒子に衝突して蛍光体を励起し、各々の電子源により、青、緑、赤の三原色を発光させて、映像を得ることができる。
【0053】
背面基板22、前面基板23としては従来公知の基板を用いることができ、通常、ガラス(ソーダライムガラス)の基板を用いることができる。
電子源18としては従来公知の電子源を用いることができ、例えば、スピンドル型あるいはSurface-Conduction Electron Emitter(ESD)型等の電子源を用いることができ
る。
【0054】
発光体層19を構成する蛍光体粒子としては、青:Ag,Al賦活ZnS、緑:Cu,Al賦活ZnS、赤:Eu賦活Y22S等が用いられる。
このような蛍光体粒子は平均粒子径が0.01〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0055】
発光体層19上に設けられて金属膜21としては、通常アルミニウム膜が用いられる。
ここで、金属膜は発光体層で発光した光を効率的に前面に反射させる機能を有している。
【0056】
このような発光体層19は、前記同様に工程(a)〜(d)により形成される。
先ず、工程(a)として前面基板上に、個別に青、緑、赤に発光する蛍光体粒子と樹脂バ
インダーとからなる塗料を所定の間隔を設けて塗布し、発光体層19が形成された基板を得る。塗布方法としては、印刷法、流し込み法、吹き付け法、静電塗装法等の公知の手法を特に制限なく採用できる。なお、本発明では、必要に応じて、この工程(a)で樹脂バインダー燃焼除去することができる。燃焼温度は通常450℃以上である。次に、前記PDP用発光素子セルの製造における工程(b)、工程(c)および工程(d)と同様にして、発光体層19が形成された基板を用いる以外は同様にして緻密化された発光体層19を設けた前面基板23を得る。
【0057】
ついで、緻密化された発光体層19を設けた前面基板23上に金属膜を形成する。
金属膜を形成するには、例えば、アルミニウム膜を形成するには、通常、蒸着法が採用され、このときのアルミニウム膜の厚さは通常0.05〜0.2μmの範囲である。
【0058】
その後、金属膜21と発光体層19とを設けた前面基板23をスペーサ20を介して背面基板22上に電子源18が設けられた電子源付背面基板と対向して配置することによって素子を得ることができる。
【0059】
本発明のFED用発光素子は、発光体層がCIP方式で形成されているために発光体層表面が平坦であり、このため発光体層で発光した光は乱反射することなく効率的に前面に
反射し、さらに、発光体膜が緻密で空隙が少ないことから発光体層が透明性に優れ、光透過率が高く、このため発光輝度の高い素子を得ることができる。
[実施例]
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
PDP用発光素子(1)の作成
ガラス基板の片面にITOからなる透明導電層が形成された背面基板にフリットガラスを
焼結して形成したリブを有する背面基板を準備した。
【0060】
先ず、赤色(R)発光用塗料として、平均粒子径約3μmのユウロピウム賦活硼酸イットリ
ウム・ガドリウム((Y,Gd)BO3:Eu)蛍光体粒子(化成オプトニクス(株)製:KX-504A)85gをブチルカルピトールアセテート15gのバインダーに分散させたペーストを赤色[R]用画素セルにスクリーン印刷法で塗布した。
【0061】
次に、緑色(G)発光用塗料として、上記において、蛍光体粒子として平均粒子径3μmの
マンガン付活珪酸亜鉛(Zn2Si04:Mn)(化成才プトニクス(株)製:PI-GIS)を用いたペーストを緑色(G)用画素セルにスクリーン印刷法で塗布した。
【0062】
次に、青色(B)発光用塗料として、上記において、蛍光体粒子として平均粒子径3μmの
ユウロピウム付活酸化アルミニウムバリウムマグネシウム(BaMgAl10O17:Eu)(化成オプト
ニクス(株):KX-501A)を用いたペーストを青色(B)画素セルにスクリーン印刷法で塗布した。
【0063】
ついで、約100℃で加熱処理した後、450℃で2時間焼成してバインダーを除去した。形
成された発光体層の厚さは、20μm、空隙率は25容積%であった。
発光体層を形成したリブ付背面基板をポリプロピレン袋に入れ、真空封止を行い、ついで、圧力容器に入れ・水圧1000kgf・cm2下で15分間CIP処理を行った。その後、真空を破
り、袋を取り除いた後、ガラス基板の片面にITOからなるストライプ状の透明電極層を形
成した透明電極層付基板(前面基板)を載置し、さらに全体を外皮フィルムで覆い、He-Xe
ガスを充填して240×320画素のPDP用発光素子(1)を作製した。発光体層の厚さはいずれも10μm、空隙率は15容積%であった。
【0064】
発光輝度の測定
PDP用発光素子(1)の両電極に100Vの交流電圧を印加し、白色の発光輝度を測定
したところ、500cd/m2であった。
【0065】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定した。PDP用発光素子(1)の発光寿命は30.000時間であった

[比較例1]
PDP用発光素子(R1)の作成
実施例1において、CIP処理を実施しなかった以外は同様にしてPDP用発光素子(R1)を作成した。発光体層の厚さは20μm、空隙率は25容積%であった。
【0066】
発光輝度の測定
実施例1と同様にしてPDP用発光素子(R1)の発光輝度を測定したところ385cd/m2であった。
【0067】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定したところ23,000時間であった。
[実施例2]
照明用発光素子(2)の作成
ガラス基板の片面にITOからなる透明導電層が形成された前面基板準備した。
【0068】
ついで、平均粒子径約3μmの(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al10O17蛍光体粒子(化成オプトニクス(株)製:LP-B2)85gをブチルカルビトールアセテート15gのバインダーに分散
させたペーストを印刷法により塗布し、約100℃で加熱処理して発光体層を形成し、ついで、450℃で2時間焼成してバインダーを除去した。形成された発光体層の厚さは10μm、空隙率は25容積%であった。
【0069】
ついで、発光体層を形成した基板をポリプロピレン袋に入れ、真空封止を行い、ついで、圧力容器に入れ、水圧1000kgf・cm2下で15分間CIP処理を行った。
ついで、真空を破り、袋を取り除いた後、ガラス基板の片面に青色発光ダイオード(InGaN)チップを設けた背面基板を載置し、照明用発光素子(2)を作成した。発光体層
の厚さは5μm、空隙率は15容積%であった。また、発光体層の透過性が著しく向上した。
【0070】
発光輝度の測定
照明用発光素子(2)の両電極に100Vの交流電圧を印加し、発光輝度を測定したとこ
ろ、2,700cd/m2であった。
【0071】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定した。照明用発光素子(2)の発光寿命は720,000時間であった

(これを通常のプロセスにしたがって、InGaN青色LEDと組み合わせ、透過してくる青色光と、その青色光により励起されたYAGからの光をとりだす照明装置を作製した。輝度が35%向上、寿命も20%の向上が見られた。)
[比較例2]
照明用発光素子(R2)の作成
実施例2において、発光体層を形成した基板のCIP処理を実施しなかった以外は同様にして照明用発光素子(R2)を作成した。発光体層の厚さは10μm、空隙率は25容積%であった。
【0072】
発光輝度の測定
実施例2と同様にして照明用発光素子(R2)の発光輝度を測定したところ2,000cd/m2であった。
【0073】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定したところ60,000時間であった。
[実施例3]
FED用発光素子(3)の作成
ガラス基板の片面にITOからなる透明導電層が形成された前面基板準備した。
【0074】
つぎに、下記、3種の発光体層形成用ペーストを調製した。
1つは、赤色(R)発光用として平均粒子径約5μmのユウロピウム賦活酸化イットリ
ウム(Y23:Eu)蛍光体粒子(化成オプトニクス(株)製:LP-RE1)85gをブチルカルビトールアセテート15gのバインダーに分散させたペーストを調製した。
【0075】
1つは、上記において、緑色(R)発光用蛍光体粒子として平均粒子径5μmのCu,Al賦活ZnS(化成オプトニクス(株)製:P22-GN4)を用いたペーストを調製した。
他の1つには、上記において、青色(R)発光用蛍光体粒子として平均粒子径5μmのAg賦活ZnS(化成オプトニクス(株)製:P-22-B1)を用いたペーストを調製した。
【0076】
ついで、前面基板上に、図6に示したように、印刷法で塗布し、約100℃で加熱処理してR,G,Bの順に発光体層を形成し、ついで、450℃で2時間焼成して樹脂バインダーを除去した。形成された発光体層の厚さはいずれも15μm、空隙率は25%であった。
【0077】
ついで、発光体層を形成した基板をポリプロピレン袋に入れ、真空封止を行い、ついで、圧力容器に入れ、水圧1000kgf・cm2下で15分間CIP処理を行った。
ついで、真空を破り、袋を取り除き、発光体層上にアルミニウム膜を形成した後、ガラス基板の片面にスピンドル型の電子源(金属シリコン)を設けた電子源付背面基板とをスペーサを介して対向して配置し、真空中にてFED用発光素子(3)を作成した。発光体層
の厚さは7μm、空隙率は15容積%であった。
【0078】
発光輝度の測定
照明用発光素子(2)の両電極に100Vの交流電圧を印加し、発光輝度を測定したとこ
ろ、600cd/m2であった。
【0079】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定した。照明用発光素子(2)の発光寿命は40,000時間であった。
[比較例3]
FED用発光素子(R3)の作成
実施例3において、発光体層を形成した基板のCIP処理を実施しなかった以外は同様にしてFED用発光素子(R3)を作成した。発光体層の厚さは15μm、空隙率は25容積%であった。
【0080】
発光輝度の測定
実施例3と同様にして照明用発光素子(R3)の発光輝度を測定したところ500cd/m2であった。
【0081】
発光寿命の測定
上記発光輝度の測定を継続して行い、輝度が初期輝度の50%に減衰するまでの時間を発光寿命として測定したところ30,000時間であった。
耐電圧特性の測定
実施例3と同様にしてFED用発光素子(R3)の放電開始電圧を測定したところ9kVであった。
【0082】
以上、本発明によれば、全方向からの等圧加圧効果により、基板の破損なく、また、非加圧面の形状によらず、均質に加圧できることにより、各種デバイスにおける発光体層の緻密化が実現でき、その結果、発光輝度、寿命などの特性を大幅に改善することができる。
【0083】
また、発光体層と基板との密着性が向上し、このため無機接着剤の使用が不要となるか
、使用量を減少することができ、無機接着剤による発光輝度の低減を抑制することができる。
【0084】
実施例では、PDP,白色LED、FEDを例に挙げたが、他の、蛍光体を使用する各種デバイス、たとえばシンチレータや、CRTなどに適用できるのはもちろん、他の材料の薄膜にも適用でき、各種特性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】プラズマテレビ用画素セル(PDP用発光体素子)の概略断面図を示す。
【図2】本発明にかかる工程(b)の概略概略図を示す。
【図3】本発明にかかる工程(c)の概略概略図を示す。
【図4】緻密度向上効果と、輝度向上の効果の一例を示すグラフである。
【図5】蛍光表示装置用発光素子の概略断面図を示す。
【図6】FED用発光素子の概略断面図を示す。
【符号の説明】
【0086】
1…背面基板、2…リブ、3…前面基板、4…発光体層、5…ガス、7…フィルム袋、8…圧力容器、9…加圧媒体、10…加圧、13…スペーサ、14…背面基板、15…発光ダイオードチップ、16…発光体層、17…前面基板、18…電子源、19…発光体層、20…スペーサ、21…金属膜、22…背面基板、23…前面基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)〜(d)により発光体層を形成することを特徴とする電子デバイス用発光素子の製造方法。
(a)基板上に蛍光体粒子からなる発光体層を形成する工程
(b)ついで、有機フィルムにて封印する工程
(c)圧力容器に入れ、ついで媒体を導入し、加圧する工程
(d)加圧を解除し、有機フィルムを開封して除去する工程。
【請求項2】
前記発光体層がさらに電子放出源を含むことを特徴とする請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記蛍光体粒子の平均粒子径が0.01〜100μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(c)の加圧圧力が10〜10,000kgf/cm2の範囲にあり、温度が常
温〜350℃の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られた発光素子を用いた電子デバイス。
【請求項6】
プラズマディスプレイ(PDP)であることを特徴とする請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
さらに発光ダイオード(LED)を用いた蛍光表示装置(照明装置)であることを特徴とする請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項8】
電界放出ディスプレイ(FED)であることを特徴とする請求項5に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−179980(P2007−179980A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380118(P2005−380118)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】