説明

新規な2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリジノン誘導体、それらの製造方法およびそれらを含む医薬組成物

式(I)〔式中、R1=H、直鎖もしくは分枝鎖アリールアルキル(C1〜C6)、直鎖もしくは分枝鎖アルキル(C1〜C6)、直鎖もしくは分枝鎖アシル(C1〜C6)、直鎖もしくは分枝鎖アルコキシカルボニル(C1〜C6)、直鎖もしくは分枝鎖アリールアルコキシカルボニル(C1〜C6)、トリフルオロアセチル;R2=直鎖もしくは分枝鎖アルキル(C1〜C6);X=O、NOR3;R3=H、ヒドロキシ、アミノ(1または2個の直鎖または分枝鎖アルキル(C1〜C6)の基によって場合により置換されている)および直鎖もしくは分枝鎖アルコキシ(C1〜C6)からの1個以上の異なるか、もしくは同一の基によって場合により置換される直鎖もしくは分枝鎖アルキル(C1〜C6);Ar=アリール、ヘテロアリール〕で示される化合物、それらの異性体類および薬学的に許容され得る酸でのそれらの塩類、ならびに認知記憶助剤および鎮痛剤としてのそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン化合物類、それらの製造方法、それらを含む医薬組成物、ならびに、記憶および認知の促進剤として、そして鎮痛剤としてのそれらの使用に関する。
【0002】
増加する平均余命による加齢人口が、健常な大脳の加齢および、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病の経過によって生じる病的な大脳の加齢に関連する認知障害を大きく増加させた。
【0003】
加齢に関連する認知障害の治療において、今日用いられている物質の大部分は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(タクリン、ドネペジル)およびコリン作動薬(ネフィラセタム)の例のように直接的に、またはヌートロピック薬(ピラセタム、プラミラセタム)および大脳の血管拡張剤(ビンポセチン)の例のように間接的のいずれかに、中枢コリン作動系を促進することによって作用する。
【0004】
中枢コリン作動系に直接作用する物質は、多くの場合、それらの認知性の他に鎮痛性を有するが、また、望ましくない、低体温性も有している。
【0005】
それゆえ、加齢に関連する認知障害に対向すること、および/または認知の過程を改善することが可能で、鎮痛性を有し得るが低体温活性のない、新規な化合物類を合成することが、特に重要であった。
【0006】
4−ヒドロキシ−または4−オキソ−で置換される、1−アザ−2−アルキル−6−アリールシクロアルカン類および1−アザ−2−アルキル−6−アリールシクロアルケン類が、既に文献(J. Org. Chem. 1998, 53, 2426; Liebigs Ann. Chem. 1986, 11, 1986, 11, 1823; Synlett 1993, 9, 657; Tet. Lett. 1998, 39(3/4), 217)に記載されているが、薬理学的活性が、それらの化合物に関して記載されていない。特許出願EP-0119087は、鎮痛剤として使用される、1−アザ−2−アルキル−6−アリールシクロアルカン化合物類を記載している。
【0007】
より具体的には、本発明は、式(I):
【0008】
【化9】

【0009】
〔式中、
※ R1は、水素原子、アルキル部分が直鎖状もしくは分枝状であり得るアリール(C1〜C6)アルキル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルキル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アシル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、アルコキシ部分が直鎖状もしくは分枝状であり得るアリール(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、またはトリフルオロアセチル基を表し、
※ R2は、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基を表し、
※ Xは、酸素原子またはNOR3〔式中、
* R3は、水素原子、または、ヒドロキシ、アミノ(1または2個の直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基によって場合により置換されている)および直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルコキシから選択される1個以上の同一もしくは異なる基によって場合により置換される、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルキル基を表す〕を表し、
※ Arは、アリール基またはヘテロアリール基を表す〕
で示される化合物類、それらの鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類に関し、ここで、
アリールは、フェニル、ビフェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチル基であり、それらの基のそれぞれが、ハロゲン、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基、ヒドロキシ、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルコキシ、トリハロメチル、ニトロおよびアミノ(1個以上の直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基によって場合により置換されている)から選択される1個以上の同一または異なる置換基によって場合により置換されていると理解され、
そしてヘテロアリール基は、酸素、窒素および硫黄から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含む、芳香族単環式または二環式の5〜12員環基であると理解され、そのヘテロアリール基が、ハロゲン、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルコキシ、トリハロメチル、ニトロおよびアミノ(1個以上の直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基によって場合により置換されている)から選択される1個以上の同一または異なる置換基によって場合により置換されていてもよいと理解される。ヘテロアリール基としては、いかなる限定を意味することなく、チエニル、ピリジル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリルおよびイソチアゾリル基が挙げられる。
【0010】
薬学的に許容され得る酸としては、非限定的に、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ホスホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ショウノウ酸などが挙げられる。
【0011】
式(I)で示される、好ましい化合物類は、基Xが酸素原子を表すものである。
【0012】
本発明による、好ましい基R1は、水素原子または直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルコキシカルボニル基である。
【0013】
式(I)に関して定義したとおりの基Arに関して用いられた用語「アリール」は、好ましくは、場合により置換されるフェニル基である。
【0014】
式(I)に関して定義したとおりの基Arに関して用いられた用語「アリール」は、より好ましくは、置換されるフェニル基である。
【0015】
式(I)に関して定義したとおりの基Arに関して用いられた用語「ヘテロアリール」は、好ましくは、場合により置換されたチエニル基または場合により置換されたピリジル基である。
【0016】
本発明は、より特別には、
・tert−ブチル2−メチル−4−オキソ−6−(2−チエニル)−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
・2−メチル−6−(2−チエニル)−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
・tert−ブチル2−メチル−4−オキソ−6−フェニル−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
・2−メチル−6−フェニル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
・tert−ブチル6−(3−クロロフェニル)−2−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
・6−(3−クロロフェニル)−2−メチル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
・tert−ブチル6−(6−クロロ−3−ピリジル)−2−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
・6−(6−クロロ−3−ピリジル)−2−メチル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
である、式(I)で示される化合物に関する。
【0017】
好ましい化合物の、鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸での付加塩類が、本発明の不可欠な部分を形成する。
【0018】
本発明は、4−メトキシピリジンを、フェニルクロロホルメート、式(II):
【0019】
2MgBr (II)
【0020】
(式中、R2は、式(I)に関して定義したとおりである)で示される有機マグネシウム化合物、およびカリウムtert−ブトキシドと連続して反応させて、式(III):
【0021】
【化10】

【0022】
(式中、R2は、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(III)で示される化合物を、ブチルリチウムおよびヨウ素と反応させて、式(IV):
【0023】
【化11】

【0024】
(式中、R2は、先に定義したとおりである)で示されるヨウ化化合物を得、
式(IV)で示される化合物を、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)の存在下、式(V):
【0025】
ArB(OH)2 (V)
【0026】
(式中、Arは、式(I)に関して定義したとおりである)で示されるボロン酸と反応させて、式(I)で示される化合物の特定の例である式(I/a):
【0027】
【化12】

【0028】
(式中、ArおよびR2は、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(I/a)で示される化合物において、アミノ官能基を有機合成の従来技術によって場合により脱保護して、式(I)で示される化合物の特定の例である式(I/b):
【0029】
【化13】

【0030】
(式中、R2およびArは、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(I/b)で示される化合物を、式:R'1Y(式中、R'1は、アルキル部分が直鎖状もしくは分枝状であってもよいアリール(C1〜C6)アルキル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルキル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アシル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、アルコキシ部分が直鎖状もしくは分枝状であってもよいアリール(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、またはトリフルオロアセチル基を表し、そしてYは、脱離基を表す)で示される化合物と場合により反応させて、式(I)で示される化合物の特定の例である式(I/c):
【0031】
【化14】

【0032】
(式中、Ar、R'1およびR2は、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(I/b)および(I/c)で示される化合物が、式(I/d):
【0033】
【化15】

【0034】
(式中、Ar、R1およびR2は、先に定義したとおりである)で示される化合物を形成し、
式(I/d)で示される化合物を、式:H2N−OR3(式中、R3は、式(I)に関して定義したとおりである)で示される化合物と場合により反応させて、式(I)で示される化合物の特定の例である式(I/e):
【0035】
【化16】

【0036】
(式中、Ar、R1、R2およびR3は、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(I)で示される化合物の全体を構成する式(I/a)〜(I/e)で示される化合物類を、必要に応じて従来の精製技術により精製し、所望なら従来の分離技術により異性体類に分離し、そして所望なら薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類に変換することを特徴とする、式(I)で示される化合物の製造方法にも関する。
【0037】
本発明の化合物が、新規であるという事実に加え、それらは、認知過程を促進する性質および鎮痛性を示すため、大脳の加齢及び、神経変性的病理、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、コルサコフ病、前頭葉痴呆および皮質下痴呆に関連する認知欠陥の治療および疼痛の治療に用いられる。
【0038】
本発明は、活性成分として、式(I)で示される化合物を、1種以上の適切な不活性、非毒性賦形剤と一緒に含む医薬組成物にも関する。本発明による医薬組成物としては、より特別には、経口、非経口(静脈内または皮下)および経鼻投与に適したもの、錠剤または糖剤、舌下錠、ゼラチンカプセル、ロゼンジ、坐剤、クリーム、軟膏、皮膚用ゲル(dermal gels)、注射可能製剤、飲用可能懸濁液などが挙げられる。
【0039】
用いられる投与量は、障害の性質および重症度、投与経路、ならびに患者の年齢および体重に応じて適合させることができる。投与量は、1回以上の投与において1日あたり1〜500mgまで変動させる。
【0040】
以下の実施例は、本発明をいかなる範囲に限定することなく、本発明を例示する。
【0041】
用いられた出発原料は、公知の生成物、または公知の手順によって製造される生成物である。
【0042】
実施例に記載された化合物の構造は、慣例的な分光光度技術(赤外、核磁気共鳴、質量スペクトロメトリー)により決定した。
【0043】
製造例1:tert−ブチル4−メトキシ−2−メチル−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
エチルクロロホルメート37.81mmolを、アルゴン雰囲気下、無水テトラヒドロフラン100ml中の4−メトキシピリジン37.43mmolの、−25℃に冷却した溶液に添加する。−25℃で1時間撹拌した後、3M臭化メチルマグネシウム39.30mmolを滴下する。反応混合物を−25℃で30分間、その後、周囲温度で1時間撹拌する。その後、水100mlを添加し、その後、水相をジエチルエーテルで2回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、その後、減圧下で濃縮する。得られた油状物を無水テトラヒドロフラン100mlに取り出し、その後、溶液を−40℃に冷却し、その後、カリウムtert−ブトキシド0.15mmolを添加する。反応混合物を−40℃で2時間及び周囲温度で1時間撹拌し、その後、水100mlを添加する。水相をジエチルエーテルで2回抽出し、その後、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、予測される生成物を得る。
【0044】
製造例2:tert−ブチル6−ヨード−2−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
n−ブチルリチウム40.48mmolを、アルゴン雰囲気下、無水テトラヒドロフラン100ml中の製造例1の化合物33.73mmolの溶液に、−60℃で添加する。−60℃で30分間撹拌し、その後、ヨウ素37.11mmolを添加する。−60℃で2時間及びその後周囲温度で1時間撹拌した後、1N塩酸水溶液100mlを反応混合物に添加する。水相をジエチルエーテルで2回抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。シリカゲルのクロマトグラフィー(ジエチルエーテル/石油エーテル:4/6)での精製が予測される生成物を与える。
IR(KBr):νC=O=1668,1772cm-1
【0045】
実施例1:tert−ブチル2−メチル−4−オキソ−6−(2−チエニル)−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
100mlフラスコに、製造例2の化合物4.45mmol、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.22mmolおよびジメトキシエタン20mlを導入し、その後、水20mlに溶解した、チオフェン−2−ボロン酸5.34mmolおよび炭酸水素ナトリウム11.12mmolを導入する。反応混合物を還流下、約5時間激しく撹拌しながら加熱する。冷却した後、水相をクロロホルムで2回抽出し、有機相を塩化カルシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。シリカゲルのクロマトグラフィー(ジエチルエーテル/石油エーテル:4/6)での精製が予測される生成物を与える。
融点:90℃
IR(KBr):νC=O=1659,1718cm-1
元素微量分析:
%C %H %N
計算値 61.41 6.53 4.77
観測値 61.34 6.71 4.86
【0046】
実施例2:2−メチル−6−(2−チエニル)−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
実施例1の化合物2.73mmol、ジクロロメタン10mlおよびトリフルオロ酢酸27.27mmolを混合する。反応混合物を周囲温度で4時間撹拌し、その後、飽和炭酸カリウム水溶液を添加してアルカリ性にする。水相をジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合せ、その後、塩化カルシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。シリカゲルのクロマトグラフィー(酢酸エチル)での精製が予測される生成物を与える。
融点:155℃
IR(KBr):νC=O=1605cm-1;νNH=3288cm-1
元素微量分析:
%C %H %N
計算値 62.15 5.74 7.24
観測値 62.34 5.62 7.02
【0047】
実施例3:tert−ブチル2−メチル−4−オキソ−6−フェニル−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
フェニルボロン酸を用い、実施例1に記載の方法によって、予測される生成物が得られる。
融点:99℃
IR(KBr):νC=O=1655,1709cm-1
元素微量分析:
%C %H %N
計算値 71.06 7.37 4.87
観測値 70.92 7.51 4.71
【0048】
実施例4:2−メチル−6−フェニル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
実施例3の化合物から出発し、実施例2に記載の方法によって、予測される生成物が得られる。
融点:161℃
IR(KBr):νC=O=1605cm-1;νNH=3268cm-1
元素微量分析:
%C %H %N
計算値 76.98 7.00 7.48
観測値 77.21 7.06 7.22
【0049】
実施例5:tert−ブチル6(3−クロロフェニル)−2−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
3−クロロベンゼンボロン酸を用い、実施例1に記載の方法によって、予測される生成物が得られる。
融点:101℃
IR(KBr):νC=O=1674,1714cm-1
元素微量分析:
%C %H %N
計算値 63.45 6.26 4.35
観測値 63.39 6.36 4.21
【0050】
実施例6:6−(3−クロロフェニル)−2−メチル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
実施例5の化合物から出発し、実施例2に記載の方法によって、予測される生成物が得られる。
融点:133℃
IR(KBr):νC=O=1605cm-1;νNH=3255cm-1
元素微量分析:
%C %H %N
計算値 65.02 5.46 6.32
観測値 65.15 5.59 6.13
【0051】
実施例7:tert−ブチル2−メチル−4−オキソ−6−(6−クロロ−3−ピリジル)−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
6−クロロピリジン−3−ボロン酸を用い、実施例1に記載の方法によって、予測される生成物が得られる。
融点:115℃
IR(KBr):νC=O=1660,1711cm-1
元素微量分析:
%C %H %N
計算値 59.54 5.93 8.68
観測値 59.75 5.88 8.42
【0052】
実施例8:6−(6−クロロ−3−ピリジル)−2−メチル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
実施例7の化合物から出発し、実施例2に記載の方法によって、予測される生成物が得られる。
融点:216℃
IR(KBr):νC=O=1613cm-1;νNH=3256cm-1
元素微量分析:
%C %H %N
計算値 59.33 4.98 12.58
観測値 59.19 5.08 12.39
【0053】
本発明の化合物の薬理学的試験
【0054】
実施例9:NMRIマウスの体温
本発明の化合物の体温についての影響を、成体雄NMRIマウスにおいて評価した。試験される化合物または担体(20mg/kg)での薬理学的処置(腹腔内経路)の直前に、マウス(18〜20g)の直腸温度を測定した。その後、マウスを各ケージ(10×10×10cm)に入れ、処置後2時間の間、30分毎に直腸温度を測定した。値は、平均(℃)±平均の標準誤差であり、一因子分散分析検定と、適宜、その後のDunnett検定によって群間比較を実施した。これらの結果は、本発明の化合物類が、最大20mg/kgの用量で低体温活性を有さないことを示す。
【0055】
実施例10:NMRIマウスにおける、フェニル−p−ベンゾキノン(PBQ)に誘導された腹部痙縮
PBQのアルコール性溶液の腹腔内投与は、マウスにおいて腹部痙攣を引き起す(SIEGMUND et al., Proc. Soc. Exp. Biol., 1957, 95, 729-731)。その痙攣は、後脚の伸展を伴う腹部筋組織の反復痙縮を特徴とする。ほとんどの鎮痛剤が、これらの腹部痙攣に拮抗する(COLLIER et al., Brit. J. Pharmacol. Chem., 1968, 32, 295-310)。t=0分で、動物の体重を計測し、試験される化合物をIP経路で投与する。対照動物の群に、化合物に使用される溶媒を与える。t=30分で、PBQのアルコール性溶液(0.2%)を0.25ml/個体の容量でIP経路により投与する。PBQの投与直後に、動物をプレキシガラスのシリンダー(L=19.5cm;I.D.=5cm)に入れる。t=35分〜t=45分に動物の反応を観察し、実験担当者が動物あたりの腹部痙縮の総数を記録する。下表は、試験した化合物の活性用量で、対照動物で測定された腹部痙縮の数の%阻害率を示す。
【0056】
得られた結果は、本発明の化合物類が鎮痛性を有することを示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例11:Wistarラットにおける社会的認知
社会的認知テストは、最初、1982年にTHORおよびHOLLOWAY(J. Comp. Physiol., 1982, 96, 1000-1006)によって記載され、その後、新規な化合物の記憶認知効果を研究するため、様々な著者(DANTZER et al., Psychopharmacology, 1987, 91, 363-368; PERIO et al., Psychopharmacology, 1989, 97, 262-268)に提案された。そのテストは、ラットの嗅覚記憶の自然な発現と、忘却の自然な傾向とに基づいており、成体ラットによる若齢同種動物の認知によって記憶を評価することができる。無作為に取り出した若齢(21日齢)ラットを、成体ラットを飼育しているケージに5分間入れる。実験者は、ビデオ装置の助けを借りて、成体ラットの社会的認知挙動を観察し、全体の持続を測定する。その後、若齢ラットを成体ラットのケージから取り出し、2回目の導入まで自身のケージに入れる。その後、成体ラットにテストする化合物を与え(腹腔内経路)、2時間後に再度、若齢ラットの存在下におく(5分間)。その後、社会的認知挙動を再度、観察し、持続を測定する。下表は、秒で表す、2回の「認知」時間の差(T2−T1)を示す。
【0059】
得られた結果は、本発明の化合物が、低用量であっても、記憶を極めて大いに増大させることを示す。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例12:医薬組成物
活性成分10mgをそれぞれ含む錠剤1000錠を製造するための配合:
実施例1の化合物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
ヒドロキシプロピルセルロース・・・・・・・・・・・・・・2g
小麦デンプン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
ラクトース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g
ステアリン酸マグネシウム・・・・・・・・・・・・・・・・3g
タルク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


〔式中、
※ R1は、水素原子、アルキル部分が直鎖状もしくは分枝状であってもよいアリール(C1〜C6)アルキル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルキル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アシル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、アルコキシ部分が直鎖状もしくは分枝状であってもよいアリール(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、またはトリフルオロアセチル基を表し、
※ R2は、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基を表し、
※ Xは、酸素原子またはNOR3〔式中、
* R3は、水素原子、または、ヒドロキシ、アミノ(1または2個の直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基によって場合により置換されている)および直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルコキシから選択される1個以上の同一もしくは異なる基によって場合により置換されている直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルキル基を表す)を表し、
※ Arは、アリール基またはヘテロアリール基を表す〕
で示される化合物類、それらの鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類、ここで、
アリールは、フェニル、ビフェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチル基であり、それらの基のそれぞれが、ハロゲン、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基、ヒドロキシ、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルコキシ、トリハロメチル、ニトロおよびアミノ(1個以上の直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基によって場合により置換されている)から選択される1個以上の同一または異なる置換基によって場合により置換されていると理解され、
そしてヘテロアリール基は、酸素、窒素および硫黄から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含む芳香族単環式または二環式の5〜12員環基であると理解され、そのヘテロアリール基が、ハロゲン、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ、直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルコキシ、トリハロメチル、ニトロおよびアミノ(1個以上の直鎖状または分枝状(C1〜C6)アルキル基によって場合により置換されている)から選択される1個以上の同一または異なる置換基によって場合により置換されていてもよいと理解される。
【請求項2】
Xが、酸素原子を表すことを特徴とする、請求項1記載の式(I)で示される化合物類、それらの鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類。
【請求項3】
1が、水素原子、または直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルコキシカルボニル基を表すことを特徴とする、請求項1または2のいずれか記載の式(I)で示される化合物類、それらの鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類。
【請求項4】
Arが、場合により置換されるフェニル基を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の式(I)で示される化合物類、それらの鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類。
【請求項5】
Arが、置換されるフェニル基を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の式(I)で示される化合物類、それらの鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類。
【請求項6】
Arが、場合により置換されるチエニル基または場合により置換されるピリジル基を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の式(I)で示される化合物類、それらの鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類。
【請求項7】
・tert−ブチル2−メチル−4−オキソ−6−(2−チエニル)−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
・2−メチル−6−(2−チエニル)−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
・tert−ブチル2−メチル−4−オキソ−6−フェニル−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
・2−メチル−6−フェニル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
・tert−ブチル6−(3−クロロフェニル)−2−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
・6−(3−クロロフェニル)−2−メチル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
・tert−ブチル6−(6−クロロ−3−ピリジル)−2−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ピリジンカルボキシレート
・6−(6−クロロ−3−ピリジル)−2−メチル−2,3−ジヒドロ−4(1H)−ピリドン
である、請求項1記載の式(I)で示される化合物類、それらの鏡像体類、ジアステレオ異性体類、および薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類。
【請求項8】
4−メトキシピリジンを、フェニルクロロホルメート、式(II):
2MgBr (II)
(式中、R2は、式(I)に関して定義したとおりである)で示される有機マグネシウム化合物およびカリウムtert−ブトキシドと連続して反応させて、式(III):
【化2】


(式中、R2は、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(III)で示される化合物を、ブチルリチウムおよびヨウ素と反応させて、式(IV):
【化3】


(式中、R2は、先に定義したとおりである)で示されるヨウ化化合物を得、
式(IV)で示される化合物を、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)の存在下、式(V):
ArB(OH)2 (V)
(式中、Arは、式(I)に関して定義したとおりである)で示されるボロン酸と反応させて、式(I)で示される化合物類の特定の例である式(I/a):
【化4】


(式中、ArおよびR2は、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(I/a)で示される化合物において、アミノ官能基を有機合成の従来技術によって場合により脱保護して、式(I)で示される化合物類の特定の例である式(I/b):
【化5】


(式中、R2およびArは、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(I/b)で示される化合物を、式:R'1Y(式中、R'1は、アルキル部分が直鎖状もしくは分枝状であってもよいアリール(C1〜C6)アルキル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルキル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アシル基、直鎖状もしくは分枝状(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、アルコキシ部分が直鎖状もしくは分枝状であってもよいアリール(C1〜C6)アルコキシカルボニル基、またはトリフルオロアセチル基を表し、そしてYは、脱離基を表す)で示される化合物と場合により反応させて、式(I)で示される化合物類の特定の例である式(I/c):
【化6】


(式中、Ar、R'1およびR2は、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(I/b)および(I/c)で示される化合物が、式(I/d):
【化7】


(式中、Ar、R1およびR2は、先に定義したとおりである)で示される化合物を形成し、
式(I/d)で示される化合物を、式:H2N−OR3(式中、R3は、式(I)に関して定義したとおりである)で示される化合物と場合により反応させて、式(I)で示される化合物類の特定の例である式(I/e):
【化8】


(式中、Ar、R1、R2およびR3は、先に定義したとおりである)で示される化合物を得、
式(I)で示される化合物類の全体を構成する式(I/a)〜(I/e)で示される化合物類を、必要に応じて従来の精製技術により精製し、所望なら、従来の分離技術により異性体類に分離し、そして所望なら、薬学的に許容され得る酸でのそれらの付加塩類に変換することを特徴とする、式(I)で示される化合物類の製造方法。
【請求項9】
活性成分として、請求項1〜6のいずれか1項記載の式(I)で示される、少なくとも1種の化合物を、単独で、または1種以上の不活性で非毒性の薬学的に許容され得る担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項10】
活性成分として、請求項1〜6のいずれか1項記載の式(I)で示される、少なくとも1種の化合物を含む、記憶および認知の促進剤として使用するための、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
活性成分として、請求項1〜6のいずれか1項記載の式(I)で示される、少なくとも1種の化合物を含む、鎮痛剤として使用するための、請求項9記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2006−508110(P2006−508110A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550728(P2004−550728)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003276
【国際公開番号】WO2004/043952
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【Fターム(参考)】