説明

新規の正イオン性脂質、それの製造方法、およびそれを含む伝達体

本発明の正イオン性脂質は、核酸または負イオン性生理活性タンパク質伝達体の製造のために用いられる。本発明の正イオン性脂質は、製造および精製工程が簡便で大量生産時の経済性が高い。また、本発明の正イオン性脂質を含む核酸またはタンパク質伝達体は、細胞内に伝達しようとするデオキシリボ核酸、リボ核酸、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、核酸アプタマー(aptamer)等の核酸医薬や生理活性を保有した負イオン性タンパク質を細胞内に輸送する効率を顕著に増強させるだけでなく、細胞毒性を減少させて核酸またはタンパク質素材の医薬の治療効能を増強させる用途で有用にに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の正イオン性脂質、それの製造方法、およびそれを含む伝達体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、プラスミドデオキシリボ核酸(plasmid DNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロリボ核酸(micro RNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)など、各種核酸物質の医薬的用途が糾明されることに伴ってこれら核酸物質を細胞内へ効率的に伝達する核酸伝達物質の重要性も増大しつつある。
【0003】
細胞内へ核酸物質を伝達するための核酸伝達体は、大きくウイルス性ベクターと非ウイルス性ベクターとに区分することができる。
【0004】
非ウイルス性ベクターとしては、リポソーム、正イオン性高分子をはじめ、ミセル、エマルション、ナノ粒子などの多様な剤形を用いることができる。これら剤形において、正イオン性脂質は負電荷の核酸物質と静電気的に結合する力を提供するため、核酸伝達体設計の核心物質である。正イオン性脂質は、負イオン性核酸物質と安定したイオン結合による複合体粒子を形成し、このように形成された複合体は細胞膜融合や細胞内飲食作用(endocytosis)によって細胞内へ輸送されるようになる。
【0005】
従来に開発された正イオン性脂質は、中性の脂肪酸鎖に1級アミン(primary amine)、2級アミン(secondary amine)、3級アミン(tertiary amine)、または4級アンモニウム塩(qauarternary ammonium salt)などのアミン保有化合物を結合させて正イオン性を付与する方法を用いた。
【0006】
初期段階の核酸伝達用正イオン性脂質としては、1987年 Felgner博士研究陣が合成した正イオン性4級アミノ脂質であるN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリエチルアンモニウムクロリド(N−[1−(2,3−dioleyloxy)propyl]−N,N,N−triethylammonium chloride;DOTMA)がある。DOTMAは、細胞膜融合活性を有するものとして知られたジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoylphosphatidylethanolamine;DOPE)と正イオン性リポソームを形成して遺伝子伝達に利用されている。DOTMAの疏水性基は、二重結合を有する炭素数18個の脂肪族化合物グループ(aliphatic group)であり、スペイサーアーム(spacer arm)とエーテル結合(ether linker bond)を通じて化学的に連結された疏水性基の反対側に4級アンモニウム塩が結合されている。DOTMAの場合、遺伝子伝達効率は、比較的高い細胞毒性を有していて、多い工程の合成過程を経なければならないという短所を有している。
【0007】
DOTMAの高い毒性を解決し、細胞内への核酸伝達効率をより高めるためにDOTMAの他の形態の誘導体である1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(1,2−dimyristyloxypropyl−3−dimethylhydroxyethyl ammonium bromide;DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(N−[1−(2,3−dioleyloxy)propyl]−N,N,N−trimethylammonium methyl sulfate;DOTAP)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(2,3−dioleyloxy−N−[2−(sperminecarboxyamide)ethyl]−N,N−dimethyl−1−propane ammonium trifluoroacetate;DOSPA)などが開発された。
【0008】
また、コレステロール(cholesterol)誘導体である3β−[N−(N',N'−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(3−[N−(N',N'−dimethylaminoethane)carbamoyl]cholesterol;DC−Chol)、ジメチル−ジオクタデシルアンモニウムブロマイド(dimethyl−dioctadecyl ammonium bromide;DDAB)、N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)−ジドデシル−D−グルタメートクロライド(N−(α−trimethylammonioacetyl)−didodecyl D−glutamate chloride;TMAC)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(dioctadecylamidoglycylspermine;DOGS)などが合成されてデオキシリボ核酸などの核酸物質の伝達を目的として利用されている。
【0009】
これら正イオン性脂質は、4級アミン、3級アミン、またはヒドロキシエチル化4級アミンなどが脂質のヘッド部分に連結されて一つの正電荷を提供する種類(DC−Chol、DDAB、TMACなど)と、スペルミン(spermine)などのポリアミン(polyamine)物質が連結されて多数の正電荷を提供する種類(DOGS)とに区分することもできる。
【0010】
核酸伝達に用いられる正イオン性脂質の更に他の例は4級アンモニウム塩(quarternary ammonium salt)の界面活性剤(detergent)である。これらは、単一鎖、例えば、セトリメチルアンモニウムブロマイド(cetrimethylammonium bromide)または二重鎖、例えば、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(dimethyldioctadecyl ammonium bromide)等の界面活性剤であり、全て動物細胞に核酸伝達が可能である。 これら4級アンモニウム塩正イオン性脂質の場合、両親媒性 (amphiphile)に属するアミン基(amine group)は4級であり、スペーサーアーム(spacer arm)や連結結合(linker bond)なしに脂質の単一鎖が1級アミン基についている。しかし、これら両親媒性界面活性剤を用いた剤形もまた一般的に細胞毒性が深刻である問題点を有している。また他の両親媒性物質としてはDOTMAの構造に類似な1,2−ジオレオイル−3−(4'−トリメチルアンモニオ)ブタノイル−グリセロル(1,2−dioleoyl−3−(4’−trimethylammonio)butanoyl−sn−glycerol)、コレステリル(4'−トリメチルアンモニオ)ブタノエート(cholesteryl(4’−trimethylammonio)butanoate)、1,2−ジオレオイル−3−スクシニル−グリセロルコリンエステル(1,2−dioleoyl−3−succinyl−sn−glycerol choline ester)等があるが、これら両親媒性物質は、細胞内の核酸伝達効率(delivery efficiency)が一般的に低い。
【0011】
非ウイルス性ベクターのうち、正イオン性脂質は、レンチウイルスやアデノウイルスなどのウイルス性核酸輸送体に比べて製造方法が簡便で、ウイルスのキャプシドタンパク質による反復投与による免疫副作用が少なく、ウイルスそのものが有する遺伝子による体内安全性の問題が提起されなくて、製造コストまたは製造工程においても産業的に有利という長所がある。しかし、従来に開示されたいろんな核酸伝達用正イオン性脂質は、合成方法、細胞毒性、および細胞内への核酸伝達効率面からまだ補完されなければならない点が多い。よって、合成工程が短くて、細胞毒性の小さく、かつ細胞内へ効率的に核酸物質を伝達する技術の開発が要求される。
【0012】
核酸物質の外に生理活性タンパク質の場合にも生体内の短い半減期によって薬物動力学的な滞留時間が低く、頻繁な反復投与が要求されることが問題点として指摘されている。生理活性タンパク質の場合、ポリエチレングリコールのような高分子物質との化学的な接合によって生体内の滞留時間を増強させる技術が用いられている。 しかし、このような化学的な接合の場合、タンパク質の生理活性部位が化学的接合によって変形されてタンパク質本来の生理活性が減少する場合が多い。したがって、生理活性タンパク質に化学的な変形を与えず、かつ生体内でタンパク質が分解酵素によって迅速に分解されることを防止しうる伝達体の開発が必要である。特に、負イオン性生理活性タンパク質であるヘパリンなどの場合、正イオン性伝達体と静電気的複合体を形成する場合、化学的な構造の変形なしにも生体内の薬物動力学的な特徴を変化させることができる。
【0013】
前記問題を解決する為の様々な過度の試験および研究の結果、本発明者は、今までの一般的な正イオン性脂質の合成方法とは異なる、アミン構造を有する脂肪酸誘導体に負イオン性アミノ酸を結合させて正イオン性を付与する方法を開発して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、新規の正イオン性脂質、それの製造方法、およびそれを含む伝達体を提供することにある。
本発明の正イオン性脂質は多様な形態の核酸伝達体または生理活性を保有した負イオン性タンパク質の伝達体で製剤化して細胞内へ目的する物質の伝達を増強させることに用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、下記の一般式(I)の正イオン性脂質を提供する。
【0016】
【化1】

【0017】
前記式において、
【0018】
nは1または2であり、
【0019】
とRは、それぞれ炭素数12〜20個の飽和または不飽和炭化水素である。
【0020】
本発明の一具体例で、前記RとRは、それぞれ炭素数16個の飽和または不飽和炭化水素であってもよい。
【0021】
本発明の他の具体例で、前記RとRは、それぞれ炭素数18個の飽和または不飽和炭化水素であってもよい。
【0022】
前記一般式(I)で示す本発明の正イオン性脂質は、負電荷を有するアミノ酸グループと疎水性であるC12〜C20の飽和または不飽和脂肪酸アミン誘導体とが結合して構成される。
【0023】
本発明の正イオン性脂質は、親水性のアミノ酸グループと疏水性の脂肪酸部位で構成された両親媒性化合物としてアミノ酸のカルボキシ(−COOH)グループと脂肪酸誘導体のアミングループ(−NH)とのアミド(amide)結合からなる。
【0024】
よって、本発明は、また、負イオン性アミノ酸のカルボキシルグループ(−COOH)を脂肪酸アミン誘導体のアミングループ(−NH)にアミド結合(amide bond)で連結して前記化学式(I)の正イオン性脂質を製造する方法を提供する。
【0025】
本発明の正イオン性脂質を構成する脂肪酸アミン誘導体は、炭素数12〜20個の飽和または不飽和脂肪酸であればいかなるものであっても可能である。前記脂肪酸アミン誘導体は、例えば、オレイルアミン(oleylamine)、ミリスチルアミン(myristylamine)、パルミチルアミン(palmitylamine)、ステアリルアミン(atearylamine)、ラウリルアミン(laurylamine)、リノレイルアミン(linoleylamine)、アラキジルアミン(arachidylamine)などを含む。
【0026】
本発明の正イオン性脂質を構成するアミノ酸グループとしては、負電荷を有するアミノ酸のうち、炭素数10個以下のいかなるアミノ酸でも可能であるが、グルタミン酸(glutamic acid,E)またはアスパラギン酸(Aspartic acid、D)を用いることが望ましい。
【0027】
前記一般式(I)で、n=1である場合は、アミン構造を有する脂肪酸誘導体をアスパラギン酸と結合させて正イオン性脂質を合成した場合であり、n=2である場合は、アミン構造を有する脂肪酸誘導体をグルタミン酸と結合させて正イオン性脂質を合成した場合である。
【0028】
本発明の正イオン性脂質は、生体タンパク質の構成成分であるアミノ酸を用いて簡単な工程で高い収率の合成が可能である。本発明の正イオン性脂質の場合、正常な生体内環境の中性領域pHにてグルタミン酸とアスパラギン酸のアミン基が正電荷の形態で存在するようになるため、前記一般式(I)の正イオン性脂質は、全体的に細胞内で正電荷の電荷状態を保有するようになる。前記正イオン性脂質の正イオン電荷は、中性領域pHで負電荷を有している各種核酸物質と複合体を形成することを可能にし、また生体内で相対的に負電荷を保有している標的細胞膜との接触を増加させるのに役に立つ。したがって、本発明の正イオン性脂質は、核酸伝達用途のリポソーム、ミセル、エマルションなど多様な形態の核酸伝達体剤形(delivery formualtion)を製造するために用いることができる。
【0029】
よって、本発明は、また前記化学式(I)の正イオン性脂質を含む核酸伝達体(nucleic acid delivery system)を提供する。本発明において、核酸伝達体は、陰電荷を有する核酸配列との相互作用によって通常的に核酸と結合して細胞内へ流入しうる複合体を形成できる核酸運搬媒介体を示す。
【0030】
本発明において、核酸は、リボ核酸(RNA)、低分子干渉RNA(small interfering RNA)、アンチセンス オリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)、デオキシリボ核酸(DNA)、アプタマー(aptamer)等を含む。
【0031】
本発明の具体例で、本発明の正イオン性脂質を含む核酸伝達体は、リボ核酸(RNA)、低分子干渉RNA(small interfering RNA)、アンチセンス オリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)、デオキシリボ核酸(DNA)、アプタマー(aptamer)等を含む核酸の細胞内への運搬を媒介する。
【0032】
本発明の核酸伝達体は、リポソーム、ミセル、エマルション、およびナノ粒子で構成される群より選択される剤形(製剤、formulation)からなることができる。
【0033】
また、前記核酸伝達体は、本発明の正イオン性脂質成分の他にもガラクトース脂質誘導体、マンノース脂質誘導体、葉酸脂質誘導体、ポリエチレングリコール脂質誘導体、ビオチン脂質誘導体を更に含むことができる。
【0034】
本発明の一具体例で、前記核酸伝達体は、前記正イオン性脂質および細胞融合性リン脂質を含有するリポソーム剤形からなるものであってもよい。前記細胞融合性リン脂質は、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoylphosphatidylethanolamine;DOPE)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2−diphytanoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine)等を含む。
【0035】
本発明の他の具体例で、前記核酸伝達体は、前記正イオン性脂質および界面活性剤を含有するミセル剤形からなるものであってもよい。前記界面活性剤は、例えば、ツイン20(Tween20)、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(polyethylene glycol monooleyl ether)、エチレングリコールモノドデシルエーテル(ethylene glycol monododecyl ether)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(diethylene glycol monohexyl ether)、トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド(trimethylhexadecyl ammonium chloride)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(dodecyltrimethyl ammonium bromide)、シクロヘキシルメチルβ−D−マルトシド(cyclohexylmethylβ−D−maltoside)、ペンタエリスリチルパルミテート(pentaerythrityl palmitate)、ラウリルジメチルアミンオキサイド(lauryldimethylamine−oxide)、またはN−ラウロイルサルコシンソジウム塩(N−lauroylsarcosine sodium salt)などを含む。
【0036】
本発明の他の具体例で、前記核酸伝達体は、前記正イオン性脂質および界面活性剤を含有するエマルション剤形からなるものであってもよい。エマルション剤形として使用できる界面活性剤は、正イオン性(cationic)、両性イオン性(zwitterionic)、非イオン性(nonionic)等に分類される。正イオン性界面活性剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(cetyl trimethylammonium bromide)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(hexadecyl trimethyl ammonium bromide)などを用いることができ、両性イオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベタイン(dodecyl betaine)、ドデシルジメチルアミン酸化物(dodecyl dimethylamine oxide)、ジメチルパルミチルアンモニオプロパンスルホネート(3−(N,N−dimetylpalmitylammonio)propane sulfonate)などを用いることができ、非イオン性界面活性剤としては、ツイン−20(Tween 20)、ツイン−80(Tween 80)、トリトンX−100(Triton−X−100)、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(polyethylene glycol monooleyl ether)、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル(triethylene glycol monododecyl ether)、オクチルグルコシド(octyl glucoside)、またはノナノイルメチルグルカミン(N−nonanoyl−N−methylglucamine)などを用いることができる。
【0037】
正イオン性リポソーム、ミセル、エマルションなどの剤形からなる本発明の核酸伝達体は、動物細胞内に目的とする核酸の輸送効率を著しく増強させることができ、細胞に対する毒性も減少させる。
【0038】
本発明の正イオン性脂質を含有した核酸伝達体は、伝達しようとする核酸の使用目的によっていかなる動物細胞へも核酸伝達が可能である。下記の実施例では、前記核酸伝達体の腫瘍細胞(人の子宮頸癌の上皮細胞であるSiHa細胞株、肺癌細胞であるA549細胞株、膣粘膜ケラチン細胞株であるVK2細胞株、ネズミの肝癌細胞株であるHepa1−6)への核酸伝達効率を評価する。
【0039】
蛍光標識のついているdsRNAであるBlock iT(Invitrogen、USA)を用いて正イオン性脂質を含有する多様な剤形と複合体を形成して細胞内に伝達してこれを蛍光顕微鏡で観察すると、前記正イオン性脂質の細胞内へ伝達される核酸輸送能力を具体的に測定することができる。また、本発明の核酸伝達体の細胞毒性は、tetrazolium 3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5−diphenyltetrazolium bromideを用いた発色方法(MTT)を用いて評価することができる。
【0040】
本発明で記述された正イオン性脂質を含むリポソーム、ミセル、エマルションなどの核酸伝達体は、多様な細胞において核酸伝達の効率を増強させる目的から既に使われてきた正イオン性脂質であるDC−Cholを含有した正イオン性リン脂質リポソームより細胞内の輸送度を増加させるだけでなく細胞毒性も著しく減少させることができるため、デオキシリボ核酸、リボ核酸、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、核酸アプタマー(aptamer)等の核酸医薬を用いた治療療法などに効果的に使用することができる。
【0041】
また、本発明は、前記核酸伝達体と核酸の複合体を提供する。リポソーム、ミセル、エマルション、ナノ粒子などの剤形を有する本発明の核酸伝達体は、正イオン性脂質によって正電荷を有するようになるため、核酸伝達体の正電荷と核酸の負イオン性電荷によって単純な混合(mix)によって静電気結合を通じて核酸伝達体と核酸との複合体を形成することができる。
【0042】
前記核酸伝達体と核酸の複合体は、腫瘍、関節炎、心血管系、内分泌系疾患のような病因性タンパク質の過多発現から発生する各種疾患の治療のために細胞内へ導入されることが可能である。本発明の核酸伝達体は、核酸伝達効率が優秀なだけでなく細胞毒性が低いため、病因性タンパク質の細胞内過多発現を抑制して優秀な疾患治療の効果を得ることができる。
【0043】
よって、本発明は、また前記核酸伝達体と核酸の複合体を有効性分として含む病因性タンパク質の細胞内過多発現から発生する疾患を予防または治療するための組成物などの核酸医薬治療剤、核酸医薬治療剤の製造のための前記核酸伝達体と核酸複合体の使用、および治療上有効量の前記核酸伝達体と核酸複合体を対象体の細胞内へ導入することを含む腫瘍、関節炎、心血管系、内分泌系疾患などのような病因性タンパク質の過多発現から発生する各種疾患の予防または治療方法を提供する。
【0044】
本発明の核酸医薬治療剤により、in vivoまたはex vivoで、細胞内部に目的とする核酸を導入するようになると、標的タンパク質の発現を選択的に減少させるか、あるいは標的遺伝子に発生した変異を修正する役割を果たして病因性タンパク質の過多発現から発生する疾患や標的遺伝子によって発生した疾患などを治療できるようになる。
【0045】
本発明において、前記核酸伝達体と核酸の複合体の治療上有効量は、疾患治療の効果を期待するために投与に要求される量を意味する。したがって、疾患の種類、疾患の重症度、投与される核酸の種類、剤形の種類、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食餌、投与時間、投与経路および治療期間、同時に使われる化学抗癌剤などの薬品をはじめて多様な因子によって調節されることが可能である。成人に前記核酸医薬治療剤を、例えば、1日1回投与する時、0.001 mg/Kg〜100mg/Kgの容量で投与することが望ましい。
【0046】
代替的には、本発明の正イオン性脂質は、核酸の代わりに負イオン性タンパク質と複合体を形成して負イオン性タンパク質を細胞内に伝達する用途でも利用可能である。
【0047】
本発明は、前記タンパク質伝達体と負イオン性タンパク質の複合体を提供する。本発明の核酸伝達体の剤形と同様に前記タンパク質伝達体もまたリポソーム、ミセル、エマルション、ナノ粒子などの剤形を有することができ、正イオン性脂質成分の他に核酸伝達体が追加で包含できるもので例示した構成成分をまた含むことができる。本発明のタンパク質伝達体は、正イオン性脂質によって正電荷を有するようになるため、伝達体の正電荷と輸送されるタンパク質の負イオン性電荷によって単純な混合(mix)によって静電気結合を通じて伝達体と負イオン性タンパク質との複合体を形成することができる。
【0048】
前記タンパク質伝達体と負イオン性タンパク質の複合体は、腫瘍、関節炎、心血管系、内分泌系疾患などに対する治療効能を有する負イオン性生理活性タンパク質の生体内の安全性および有効性の増加のために導入することができる。本発明の正イオン性脂質で構成されたタンパク質伝達体は、負イオン性タンパク質と複合体の形成によって生体内でタンパク質分解酵素に対する抵抗性を付与することができ、細胞毒性が低いため生体内で向上された治療効果を得ることができる。
【0049】
よって、本発明は、また前記タンパク質伝達体と負イオン性タンパク質の複合体を有効性分として含むタンパク質医薬治療剤、タンパク医薬治療剤の製造のための前記伝達体と負イオン性タンパク質との複合体の使用および治療上有効量の前記伝達体とタンパク質の複合体を対象体の細胞内に導入することを含む腫瘍、関節炎、心血管系、内分泌系疾患などを含む各種疾患の治療方法を提供する。
【0050】
また、本発明の正イオン性脂質は、ex vivoで核酸アプタマーを用いる診断キットの構成成分としても利用することができる。例えば、診断用プレートの表面を正イオン性脂質でコーティングし、このコーティング面の上にアプタマーを結合させる場合、試料中のアプタマーと選択的に反応する物質の存在を診断するのに使用可能である。したがって、本発明は、本発明の正イオン性脂質でコーティングされたプレートを含む診断キットを提供する。前記診断キットの正イオン性脂質コーティング面には、アプタマーが結合されていることがある。
【発明の効果】
【0051】
上述した通り、本発明の正イオン性脂質は、製造および精製工程が簡便で大量生産時の経済性が高い。また、本発明の正イオン性脂質を含む核酸またはタンパク質伝達体は、目的するデオキシリボ核酸、リボ核酸、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、核酸アプタマー(aptamer)等の核酸医薬や生理活性を保有した負イオン性タンパク質を細胞内に輸送する効率を顕著に増強させるだけでなく、細胞毒性を減少させて核酸またはタンパク質医薬の治療効能を増強させる用途で有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1でグルタミン酸とオレインアミンとを結合して製造した正イオン性脂質ジオレオイルグルタミド(dioleoyl glutamide)の水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)の測定結果を示した図である。
【図2】蛍光標識のついているdsRNAを用いて比較例1の正イオン性リポソームと複合体形態で伝達した場合(A,C)と、本発明の正イオン性脂質を含む実施例11のリポソーム剤形を用いた場合(B,D)のdsRNAの伝達程度を人の肺腫瘍細胞株のA549細胞株にて位相差顕微鏡(A,B)と蛍光顕微鏡(C,D)を用いてそれぞれ観察した写真である。
【図3】蛍光標識のついているdsRNAを用いて比較例1の正イオン性リポソームと複合体形態で伝達した場合(A,C)と、本発明の正イオン性リン脂質を含む実施例13のリポソーム剤形を用いた場合(B,D)のdsRNAの伝達程度を人の子宮頸癌の上皮細胞であるSiHa細胞株にて位相差顕微鏡(A,B)と蛍光顕微鏡(C,D)を用いてそれぞれ観察した写真である。
【図4】蛍光標識のついているdsRNAを用いて比較例1の正イオン性リポソームと複合体形態で伝達した場合(B,D)と、本発明の正イオン性リン脂質を含む実施例14のミセル剤形を用いた場合(C,E)のdsRNAの伝達程度を人の子宮癌細胞のVK2細胞株にて位相差顕微鏡(B,C)と蛍光顕微鏡(D,E)を用いてそれぞれ観察した写真である(図4Aは、対照群として何も処理していないVK2細胞株の位相差顕微鏡の写真である)。
【図5】蛍光標識のついているdsRNAを用いて比較例1の正イオン性リポソームと複合体形態で伝達した場合(A,C)と、本発明の正イオン性脂質を含む実施例16のエマルション剤形を用いた場合(B,D)のdsRNAの伝達程度をネズミの肝癌細胞株のHepa1−6細胞株にて位相差顕微鏡(A,B)と蛍光顕微鏡(C,D)を用いて観察した写真である。
【図6】比較例1、2のリポソーム剤形(D,C)と本発明の正イオン性脂質を含む実施例12、14、17のリポソーム、ミセル、エマルション剤形をそれぞれ用いた場合(E,F、G)の、スタット3(stat3)選択的dsRNAの人の肺癌細胞株であるA549細胞内への伝達効能をRT−PCRで評価した、ターゲット遺伝子のスタット3の転写体発現をGAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)の転写体発現と比較した写真である(Aは、何も処理していない細胞そのものを用いた対照群、Bは、スタット3選択的低分子干渉RNAの単独処理群を示す)。
【図7】比較例1、2のリポソーム剤形(D,C)と本発明の正イオン性脂質を含む実施例11、16、20のリポソーム、エマルション、ミセル剤形をそれぞれ用いた場合(E,F,G)の、スタット3(stat3)選択的dsRNAの人の子宮頸癌細胞株であるHeLa細胞内への伝達効能を、RT−PCRで評価した、ターゲット遺伝子であるスタット3の転写体発現をGAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)の転写体(transcript)発現と比較した写真である(Aは、何も処理していない細胞そのものを用いた対照群、Bは、スタット3選択的低分子干渉RNA単独処理群を示す。
【図8】ターゲット遺伝子であるbcl−2に選択的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて比較例1、2のリポソーム剤形(D,C)と本発明の正イオン性脂質を含む実施例12、15、17のリポソーム、ミセル、エマルション剤形をそれぞれ用いた場合(E,F,G)の、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内の伝達効能を、RT−PCRを実施して、ターゲットであるbcl−2転写体(trascript)発現抑制を比較した写真である(Aは、何も処理していない細胞自体を用いた対照群、Bは、bcl−2選択的アンチセンスオリゴヌクレオチド単独処理群を示す)。
【図9】緑色蛍光タンパク質(green fluorescence protein)の発現を選択的に抑制するsiRNAを用いて比較例2のリポソーム剤形(B,E)と本発明の正イオン性脂質を含む実施例12のリポソーム剤形を用いた場合(C,F)の、siRNAの人の腎臓細胞株である293T細胞内への伝達効能を、緑色蛍光タンパク質の発現抑制程度として位相差顕微鏡(B,C)および蛍光顕微鏡(E,F)でそれぞれ比較した写真である(図9Aは、何も処理していない293T細胞の位相差顕微鏡の観察結果であり、図9Dは、蛍光顕微鏡の観察結果を示す)。
【図10】本発明の正イオン性脂質を含む実施例11、13、16のリポソーム、エマルション剤形とdsRNAの複合体を肺癌細胞株であるA549に対して細胞毒性実験を実施した結果である。
【図11】本発明の正イオン性脂質を含む実施例12、18、19のリポソーム剤形とdsRNAの複合体を人の子宮頸癌細胞株であるSiHaに対して細胞毒性実験を実施した結果である。
【図12】本発明の正イオン性脂質を含む実施例11、14、17のリポソーム、ミセル、エマルション剤形とdsRNAの複合体を人の膣粘膜ケラチン細胞株(vaginal keratinocyte)のVK2に対して細胞毒性実験を実施した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の利点及び特徴、そしてそれを達成する方法は、添付する図面とともに詳細に後述されている実施例を参照すると、明確となるだろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるのではなく、他の異なる形態に多様に具現することができる。本実施例はただ、本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるのであり、本発明は、請求項の範囲によって定義されるだけである。
【実施例】
【0054】
<新規の正イオン性脂質の合成>
(実施例1.ジオレオイルグルタミド(dioleoyl glutamide)の合成)
1-1).1当量(1.47g,10mmol)のグルタミン酸(glutamic acid)をトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid) 5mlとジクロロメタン(dichloromethane)5mlに入れて、40℃にて1時間の撹はんを行った。撹はんの後、反応物にアイスバス中でSOCl3当量(2.18ml,30mmol)を徐々に滴下させて、0〜40℃で6時間反応させた。反応の後、トリフルオロ酢酸とジクロロメタンを減圧濃縮して除去して薄層クロマトグラフィー法(thin layer chromatography,TCL)で反応可否を確認した。
【0055】
1-2).実施例1-1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、オレイルアミン(oleylamine) 1.5当量(4.01g,15mmol)をジクロロメタンに溶かして徐々に滴下させた。アイスバス中で1時間の撹はんの後、トリエチルアミン(triethylamine) 3mlを滴下させて0〜50℃で4時間反応させた。反応の後、トリエチルアミンとジクロロメタンを減圧濃縮して除去させた後、得られた生成物をエチルアセテート(ethylacetate)に溶かして過飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄して未反応グルタミン酸を除去させた。生成物が溶けているエチルアセテート中の微量の水分を塩化マグネシウム(MgCl)で除去した後、TLCで反応可否を確認した。生成物が溶けているエチルアセテートを減圧濃縮して除去させた後、真空状態で一夜乾燥して淡い茶色の強い粘度を有した液体生成物(4.12g,収得率92.8%)を得た。最終的に得られた生成物の正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を用いて確認した。図1は、グルタミン酸とオレイルアミンのアミド結合(amide bond)部分の水素が8.0ppmで検出され、グルタミン酸によるアミンの水素が2.0ppmで検出され、オレイルアミンの特徴的な二重結合の部分の水素が5.42ppmで検出されることを示す。
【0056】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H,グルタミン酸とオレイルアミンの−NH−CO)
2.0(2H,グルタミン酸の−NH)
5.42(2H,オレイルアミンの−CH=CH−)
【0057】
下記の反応式1に前記実施例1の反応過程を示した。
【化2】

前記反応式1のRとRは、それぞれ炭素数18の不飽和(C)炭化水素である。
【0058】
(実施例2.ジミリストイルグルタミド(dimyristoyl glutamide)の合成)
2-1).2当量のグルタミン酸(glutamic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてグルタミン酸誘導体生成物を得た。
【0059】
2-2).実施例2-1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、ミリスチルアミン(myristylamine)1.5当量(3.20g,15mmol)を用いて実施例1-2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の固体生成物(3.22g,収得率85.7%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を利用して確認した。
【0060】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H,グルタミン酸とミリスチルアミンの−NH−CO)
2.0(2H,グルタミン酸の−NH)
1.29(2H,ミリスチルアミンの−CH−)
【0061】
下記の反応式2に前記実施例2の反応過程を示した。
【化3】

前記反応式2のRとRは、それぞれ炭素数14の飽和炭化水素である。
【0062】
(実施例3.ジパルミトイルグルタミド(dipalmitoylglutamide)の合成)
3−1).2当量のグルタミン酸(glutamic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてグルタミン酸誘導体生成物を得た。
【0063】
3−2).実施例3−1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、パルミチルアミン(palmitylamine) 1.5当量(3.62g,15mmolを用いて実施例1-2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の固体生成物(3.74g,収得率90.1%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を利用して確認した。
【0064】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H,グルタミン酸とパルミチルアミンの−NH−CO)
2.0(2H,グルタミン酸の−NH)
1.29(2H,パルミチルアミンの−CH−)
【0065】
下記反応式3に前記実施例3の反応過程を示した。
【化4】

前記反応式3のRとRはそれぞれ炭素数16の飽和炭化水素である。
【0066】
(実施例4.ジステアロイルグルタミド(distearoyl glutamide)の合成)
4−1).2当量のグルタミン酸(glutamic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてグルタミン酸誘導体生成物を得た。
【0067】
4-2).実施例4-1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、ステアリルアミン(stearylamine)1.5当量(4.04g,15mmol)を用いて実施例1-2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の固体生成物(3.96g,収得率87.1%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を用いて確認した。
【0068】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H,グルタミン酸とステアリルアミンの−NH−CO)
2.0(2H,グルタミン酸の−NH)
1.29(2H,ステアリルアミンの−CH−)
【0069】
下記の反応式4に前記実施例4の反応過程を示した。
【化5】

前記反応式4のRとRはそれぞれ炭素数18の飽和炭化水素である。
【0070】
(実施例5.ジラウロイルグルタミド(dilauroyl glutamide)の合成)
5-1).2当量のグルタミン酸(glutamic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてグルタミン酸誘導体生成物を得た。
【0071】
5−2).実施例5−1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、ラウリルアミン(laurylamine) 1.5当量(2.78g,15mmol)を用いて実施例1-2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の固体生成物(3.32g,収得率91.9%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を用いて確認した。
【0072】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H,グルタミン酸とオレイルアミンの−NH−CO)
2.0(2H,グルタミン酸の−NH)
1.29(2H,ラウリルアミンの−CH−)
【0073】
下記反応式5に前記実施例5の反応過程を示した。
【化6】

前記反応式5のRとRは、それぞれ炭素数12の飽和炭化水素である。
【0074】
(実施例6.ジリノレオイルグルタミド(dilinoleoylglutamide)の合成)
6−1).2当量のグルタミン酸(glutamic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてグルタミン酸誘導体生成物を得た。
【0075】
6-2).実施例6−1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、リノレイルアミン(linoleylamine) 1.5当量(3.98g,15mmol)を用いて実施例1−2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の強い粘度を有した液体生成物(3.72g,収得率82.8%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を用いて確認した。
【0076】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H,グルタミン酸とリノレイルアミンの−NH−CO)
2.0(2H,グルタミン酸の−NH)
5.49,2.63(3H,リノレイルアミンの=CH−CH-)
【0077】
下記反応式6に前記実施例6の反応過程を示した。
【化7】

前記反応式6のRとRは、それぞれ炭素数18の二重不飽和(C,C12)炭化水素である。
【0078】
(実施例7.ジアラキドイルグルタミド(diarachidoyl glutamide)の合成)
7-1).2当量のグルタミン酸(glutamic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてグルタミン酸誘導体生成物を得た。
【0079】
7-2).実施例7-1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、アラキジルアミン(arachidylamine) 1.5当量(4.46g,15mmol)を用いて実施例1-2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の固体生成物(3.95g,収得率80.2%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を用いて確認した。
【0080】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H,グルタミン酸とアラキジルアミンの−NH−CO)
2.0(2H,グルタミン酸の−NH)
1.29(2H,アラキジルアミンの−CH−)
【0081】
下記反応式7に前記実施例7の反応過程を示した。
【化8】

前記反応式7のRとRはそれぞれ炭素数20の飽和炭化水素である。
【0082】
(実施例8.ジパルミトイルアスパルタミド(dipalmitoyl aspartamide)の合成)
8-1).2当量のアスパラギン酸(aspartic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてアスパラギン酸誘導体生成物を得た。
【0083】
8-2).実施例8−1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、パルミチルアミン(palmitylamine) 1.5当量(3.62g,15mmol)を用いて実施例1-2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の固体生成物(3.59g,収得率88.6%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を用いて確認した。
【0084】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H,アスパラギン酸とパルミチルアミンの−NH−CO-)
2.0(2H、アスパラギン酸の−NH)
1.29(2H、パルミチルアミンの−CH−)
【0085】
下記反応式8に前記実施例8の反応過程を示した。
【化9】

前記反応式8のRとRはそれぞれ炭素数16の飽和炭化水素である。
【0086】
(実施例9.ジステアロイルアスパルタミド(distearoyl aspartamide)の合成)
9−1).2当量のアスパラギン酸(aspartic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてアスパラギン酸誘導体生成物を得た。
【0087】
9−2). 実施例9−1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、ステアリルアミン(stearylamine) 1.5当量(4.04g,15mmol)を用いて実施例1-2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の固体生成物(4.02g,収得率90.4%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を用いて確認した。
【0088】
1H NMR(DMSO−d,ppm): 8.0(1H,アスパラギン酸とステアリルアミンの−NH−CO-)
2.0(2H,アスパラギン酸の−NH)
1.29(2H、ステアリルアミンの−CH−)
【0089】
下記反応式9に前記実施例9の反応過程を示した。
【化10】

前記反応式9のRとRは、それぞれ炭素数18の飽和炭化水素である。
【0090】
(実施例10.ジオレオイルアスパルタミド(dioleoyl aspartamide)の合成)
10-1.2当量のアスパラギン酸(aspartic acid)を実施例1-1)と同じ方法で反応させてアスパラギン酸誘導体生成物を得た。
【0091】
10-2).実施例10-1)で得られた反応生成物をジクロロメタンに溶かした後、オレイルアミン(oleylamine) 1.5当量(4.01g、15mmol)を用いて実施例1-2)と同じ方法で反応させた後、淡い茶色の強い粘度を有した液体生成物(4.07g,収得率92.1%)を得て正確な構造を水素核磁気共鳴分光器(HNMR spectromer)を用いて確認した。
【0092】
1H NMR(DMSO−d,ppm):8.0(1H、アスパラギン酸とオレイルアミンの−NH−CO-)
2.0(2H,アスパラギン酸の−NH)
5.42(2H,オレイルアミンの−CH=CH−)
【0093】
下記反応式10に前記実施例10の反応過程を示した。
【化11】

前記反応式10のRとRはそれぞれ炭素数18の不飽和(C)炭化水素である。
【0094】
<正イオン性脂質を含有する核酸伝達体の製造>
(実施例11.ジオレイルグルタミドを含有する正イオン性リポソームの製造)
実施例1で製造した正イオン性脂質のジオレオイルグルタミド(dioleoyl glutamide)と細胞融合性リン脂質のDOPE(Avanti Polar Lipid Inc.,USA)をそれぞれ1mlのクロロホルムに溶かした後、モル比1:1の割合でパイレックス(登録商標)10mlガラス隔膜バイアルに入れて混合した後、窒素環境ですべてのクロロホルムが蒸発する時まで低い速度で回転蒸発させて脂質薄膜フィルムを製造した。多重層の脂質膜を有するリポソーム(lipid multilamellar vesicle)を製造するためにこの薄膜フィルムにリン酸緩衝溶液1mlを添加してバイアルを37℃にして密封後3分間撹はん(vortexing)した。均一な大きさを作るためにこれをエクストルーダー(extruder、Northern Lipid Inc.,Canada)を用いて0.2μmポリカーボネート膜を3回通過させて製造した。得られた正イオン性リポソームは用いる前まで4℃で保管した。
【0095】
(実施例12.ジミリストイルグルタミドを含有する正イオン性リポソームの製造)
実施例2で製造した正イオン性脂質であるジミリストイルグルタミド(dimyristoyl glutamide)と細胞融合性リン脂質であるDOPE(Avanti Polar Lipid Inc.,USA)をそれぞれ1mlのクロロホルムに溶かした後、モル比1:1の割合でパイレックス(登録商標)10mlガラス隔膜バイアルに入れて混合した後、実施例11と同じ方法で正イオン性リポソームを製造した。
【0096】
(実施例13.ジステアロイルグルタミドを含有する正イオン性リン脂質リポソーム製造)
実施例4で製造した正イオン性脂質のジステアロイルグルタミド(distearoyl glutamide)と細胞融合性リン脂質である1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン,DphPE(1,2−diphytanoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine) (Avanti Polar Lipid Inc.,USA)をそれぞれ1mlのクロロホルムに溶かした後、モル比1:1の割合でパイレックス(登録商標)10mlガラス隔膜バイアルに入れて混合した後、実施例11と同じ方法で正イオン性リポソームを製造した。
【0097】
(実施例14.ジミリストイルグルタミドを含有する正イオン性ミセル(micelle)の製造)
実施例2で製造した正イオン性脂質のジミリストイルグルタミド(dimyristoyl glutamide)と界面活性剤のTween 20を1:1のモル割合で混合した後、混合液対比リン酸緩衝溶液を1:10の体積割合で混合して数回振とう混合(vortexing)した後、約1分間、超音波発生器を使って正イオン性ミセルを製造した。
【0098】
(実施例15.ジアラキドイルグルタミドを含有する正イオン性ミセル(micelle)製造)
実施例7で製造した正イオン性脂質であるジアラキドイルグルタミド(diarachidoyl glutamide)と界面活性剤のポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(polyethylene glycol monooleyl ether)を1:2のモル割合で混合した後、混合液対比リン酸緩衝溶液を1:10の体積割合で混合して数回振とう混合(vortexing)した後、約1分間、超音波発生器を使って正イオン性ミセルを製造した。
【0099】
(実施例16.ジパルミトイルアスパルタミドを含有する正イオン性エマルション(emulsion)製造)
実施例8で製造した正イオン性脂質のジパルミトイルアスパルタミド(dipalmitoyl aspartamide)とTween80を1:0.1のモル割合で混合して混合物をリン酸緩衝溶液に1:10の体積割合で加えた後、ホモジナイザー(homogenizer)を用いて約2分間均質化させて油滴が水内に分散された水中油型(o/w型)正イオン性エマルションを製造した。
【0100】
(実施例17.ジオレオイルアスパルタミドを含有する正イオン性エマルション(emulsion)製造)
実施例10で製造した正イオン性脂質のジオレオイルアスパルタミド(dioleoyl aspartamide)とTween80を1:0.1のモル割合で混合して混合物をリン酸緩衝溶液に1:10の体積割合で加えた後、ホモジナイザーを用いて約2分間均質化させて油滴が水内に分散した水中油型(o/w型)正イオン性エマルションを製造した。
【0101】
(実施例18.ジパルミトイルグルタミドおよびガラクトース脂質誘導体を含有する正イオン性リポソーム製造)
実施例3で製造した正イオン性脂質のジパルミトイルグルタミド(dipalmitoyl glutamide)、細胞融合性リン脂質であるDphPE(Avanti Polar Lipid Ind.,USA)、およびガラクトース脂質誘導体のセレブロシド(cerebroside) (Avanti Polar Lipid Ind.,USA)をそれぞれ1mlのクロロホルムに溶かした後1:1:0.05のモル割合で実施例11と同じ方法で正イオン性リポソームを製造して表面にガラクトース残基(galactose moiety)が存在する正イオン性リポソームを製造した。
【0102】
(実施例19.ジアラキドイルグルタミドおよびポリエチレングリコール脂質誘導体を含有する正イオン性リン脂質リポソームの製造)
実施例7で製造した正イオン性脂質であるジアラキドイルグルタミド(diarachidoyl glutamide)と細胞融合性リン脂質であるDOPE(Avanti Polar Lipid Ind.,USA)、ポリエチレングリコール脂質誘導体の1,2−diacyl−sn−glycero−3−phsphoethanolamine−N−[methoxy(polyethylene glycol)−3000(Avanti Polar Lipid Ind.,USA)をそれぞれ1mlのクロロホルムに溶かした後、1:1:0.05のモル割合で実施例11と同じ方法で正イオン性リポソームを製造して表面にポリエチレングリコール グループが存在する正イオン性リポソームを製造した。
【0103】
(実施例20.ジステアロイルアスパルタミドおよび葉酸脂質誘導体を含有する正イオン性リン脂質ミセルの製造)
実施例9で製造した正イオン性脂質のジステアロイルアスパルタミド(distearoyl aspartamide)と葉酸脂質誘導体1,2-distearoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine−N−[folate(polyethylene glycol)−2000 (Avanti Polar Lipid Ind.,USA)および界面活性剤のTween 20をそれぞれ1:0.05:1のモル割合で混合した後、1:10の混合液:リン酸緩衝溶液の体積割合で混合して数回振とう混合(vortexing)した後、約1分間、超音波発生器を使って正イオン性ミセルを製造した。
【0104】
[比較例1]既存の正イオン性脂質を用いたリポソーム製造
正イオン性脂質であるDC−Chol (Avanti Polar Lipid Ind.,USA)と細胞融合性リン脂質のDOPE(Avanti Polar Lipid Ind.,USA)をそれぞれ1mlのクロロホルムに溶かした後、モル比1:1の割合でパイレックス(登録商標)10mlガラス隔膜バイアルに入れて混合した後、窒素環境ですべてのクロロホルムが蒸発される時まで低い速度で回転蒸発させて脂質薄膜フィルムを製造した。多重層の脂質膜を有するリポソーム(lipid multilamellar vesicle)を製造するためにこの薄膜フィルムにリン酸緩衝溶液1mlを添加してバイアルを37℃にして密封後3分間撹はん(vortexing)した。均一な大きさを作るためにこれをエクストルーダー(extruder,Northern Lipid Inc.,Canada)を用いて0.2μmポリカーボネート膜を3回通過させて製造した。得られた正イオン性リポソームは用いる前まで4℃で保管した。
【0105】
[比較例2]既存の市販品である正イオン性リポソーム
既存の販売されている正イオン性リポソームであるLipofectAMINE2000(Invitrogen,USA)を購入して説明書に記載された方法のとおりに使った。
【0106】
[実験例]正イオン性脂質含有核酸伝達体の核酸伝達効率評価
(細胞培養)
人の子宮癌細胞株であるSiHaおよびHeLa、人の膣粘膜ケラチン細胞株(vaginal keratinocyte)であるVK2、人の肺癌細胞株であるA549、人の腎臓細胞株である293T、ネズミ(mouse)の肝癌細胞株であるHepa1−6は米国細胞株銀行(American Type Culture Collection,ATCC,USA)から購入して使った。SiHa、Hepa1−6細胞株は10%ウシ胎児血清w/v (CyClone laboratories Inc,USA)と100 unit/mlペニシリンまたは100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM(Dulbecco’s modified eagles medium,Gibco,USA)に培養した。A549細胞株は、10%のウシ胎児血清とペニシリン、ストレプトマイシンを含むRPMI 1640(Gibco,USA)で培養した。VK2細胞株は、0.1 ng/ml human再組合上皮細胞成長因子(Gibco,USA)、0.05mg/mlウシ脳下垂体抽出物(bovine pituitary extract(BPE,Gibco,USA))と100unit/mlペニシリンまたは100μg/mlストレプトマイシンを含むKeratinocyte−SFM(Gibco,USA)培地に培養した。
【0107】
[実験例I] 蛍光標識のついている低分子干渉RNAを用いた核酸伝達効率評価
I-1.A549細胞株における低分子干渉RNAの伝達効率評価
A549細胞株を実験前日、24ウェルプレートにウェル当たり8×10個ずつ播種(seeding)し、各プレートの細胞が60−70%程度に均一に成長した時、プレート内の培地を除去して新しい培地をウェル当たり500μlずつ添加した。エッペンドルフ チューブに血清が含まれていない培地50μlずつを入れて蛍光標識のついている低分子干渉RNA物質であるBlock−iT(20μmol、Invitrogen、USA)2μlずつと比較例1と実施例11で製造された正イオン性リポソーム10μlをそれぞれ添加した。これらを徐々にピペット操作(pipetting)して混合した後、室温で20分間放置した。このように製造された複合体をウェルプレートに添加して37℃のCOインキュベーターで24時間培養した。培養された細胞のメディアをウェル当たり500μlずつ新しいメディアに交換した後、蛍光顕微鏡で遺伝子伝達効率を観察した。図2は、比較例1(A,C)と実施例11(B,D)から製造された正イオン性リポソームの核酸伝達効率を位相差顕微鏡と蛍光顕微鏡で観察したものであって、Aは比較例処理時の位相差顕微鏡の写真であり、Bは実施例11の組成処理時の位相差顕微鏡の写真である。またCは、比較例処理時の蛍光マーカーで表示された低分子干渉RNAの細胞内への伝達を見せる蛍光顕微鏡の写真であり、Dは実施例11の組成処理時の蛍光顕微鏡の写真である。本図面から実施例11で本発明の正イオン性脂質を含有して製造された正イオン性リポソームが比較例1で製造された公知組成のリポソームよりA549細胞内で低分子干渉RNAの伝達効率を増加させることが分かる。
【0108】
I-2.SiHa細胞株における低分子干渉RNAの伝達効率評価
SiHa細胞株を実験前日24ウェルプレートにウェル当たり8×10個ずつ播種(seeding)した。各プレートの細胞が60−70%程度に均一に成長した時、プレート内の培地を除去して新しい培地をウェル当たり500μlずつ添加した。実験例I-1と同様の方法で比較例1および実施例13の正イオン性リポソームとBlock iTとの複合体をそれぞれ製造してウェルプレートに添加して37℃のCOインキュベーターで24時間培養した。培養された細胞のメディアをウェル当たり500μlずつ新しいメディアに交換した後、蛍光顕微鏡で核酸伝達効率を観察した。図3は、比較例1(A,C)と実施例13(B,D)から製造された正イオン性リポソームの核酸伝達効率を位相差顕微鏡と蛍光顕微鏡とでそれぞれ観察したものであって、Aは比較例1のリポソーム処理時の位相差顕微鏡の写真であり、Bは実施例13のリポソーム処理時の位相差顕微鏡の写真である。またCは、比較例処理時の蛍光標識のついている低分子干渉RNAの細胞内の伝達を見せる蛍光顕微鏡の写真であり、Dは実施例13のリポソーム処理時の蛍光顕微鏡の写真である。 本図面から実施例13で製造された新規の正イオン性脂質含有リポソームが比較例1の公知の正イオン性脂質含有リポソームよりSiHa細胞内で低分子干渉RNAの伝達効率を増加させることがわかる。
【0109】
I−3.VK2細胞株における低分子干渉RNAの伝達効率評価
VK2細胞株を実験前日24ウェルプレートにウェル当たり8×10個ずつ播種(seeding)し、各プレートの細胞が60−70%程度に均一に成長した時、プレート内の培地を除去して新しい培地をウェル当たり500μlずつ添加した。実験例I-1と同様の方法で比較例1の正イオン性リポソームおよび実施例14の正イオン性ミセルとBlock iTとの複合体をそれぞれ製造してウェルプレートに添加して37℃のCOインキュベーターで24時間培養した。 培養された細胞のメディアをウェル当たり500μlずつ新しいメディアに交換した後、蛍光顕微鏡で核酸伝達効率を観察した。図4は比較例1(B,D)の正イオン性リポソームと実施例14(C,E)から製造された正イオン性リン脂質ミセルの核酸伝達効率を位相差顕微鏡と蛍光顕微鏡で観察したもので、本図面から実施例14で製造された正イオン性脂質含有ミセル(図4E)が比較例1で使われた公知の正イオン性脂質含有リポソーム(図4D)よりVK2細胞内で低分子干渉RNAの伝達効率を増加させることがわかる。また位相差顕微鏡で観察される細胞の形態の側面からも比較例1の組成を処理した場合の細胞状態(図4B)は、細胞が形の収縮した形態が多く、何も処理していない対照群状態の図4Aに比べて細胞の形態が変形されたものが観察される反面、実施例14の正イオン性ミセル処理時の細胞状態は、図4Cに示されるように何も処理していない対照群状態の図4Aの細胞と類似の様相を示して細胞形態面から細胞毒性が顕著に減少したことが分かる。
【0110】
I−4.Hepa 1−6細胞株における低分子干渉RNAの伝達効率評価
Hepa 1−6細胞株を実験前日24ウェルプレートにウェル当たり8×10個ずつ播種(seeding)し、各プレートの細胞が60−70%程度に均一に成長した時、プレート内の培地を除去して新しい培地をウェル当たり500μlずつ添加した。実験例I-1と同様の方法で比較例1の正イオン性リポソームおよび実施例16の正イオン性エマルションとBlock iTとの複合体をそれぞれ製造してウェルプレートに添加して37℃のCOインキュベーターで24時間培養した。培養された細胞のメディアをウェル当たり500μlずつ新しいメディアに交換した後、蛍光顕微鏡で核酸伝達効率を観察した。図5は比較例1(A,C)の正イオン性リポソームと実施例16(B,D)から製造された正イオン性リン脂質エマルションの核酸伝達効率を位相差顕微鏡と蛍光顕微鏡で観察したもので、Aは比較例1のリポソーム処理時の位相差顕微鏡の写真であり、Bは実施例16の正イオン性エマルション処理時の位相差顕微鏡の写真である。またCは、比較例1のリポソーム処理時の蛍光標識のついている低分子干渉RNAの細胞内伝達を示す蛍光顕微鏡の写真であり、Dは、実施例16の正イオン性エマルション処理時の蛍光顕微鏡の写真である。前記図5から実施例16で製造された新規の正イオン性脂質含有エマルションが比較例1で製造された既存の正イオン性脂質含有製剤よりHepa1−6細胞内で低分子干渉RNAの伝達効率を増加させるということがわかる。
【0111】
[実験例II] 遺伝子発現確認を通した核酸伝達効能評価
II-1.A549細胞株における低分子干渉RNA伝達効能評価
A549細胞株を実験前日、24ウェルプレートにウェル当たり細胞を8×10ずつ播種(seedning)した。各プレートの細胞が60−70%程度に均一に成長した時、プレート内の培地を除去して新しい培地をウェル(well)当たり250μlずつ添加した。エッペンドルフチューブに血清が含まれていない培地50μlずつを入れてスタット3に選択的な低分子干渉RNAと比較例1、2と実施例12、14、17で製造された正イオン性リポソーム、ミセル、エマルションの複合体をそれぞれ添加した。スタット3(Stat3)遺伝子(Gene bank accession number:NM_213662)の発現抑制を誘導するためのsiRNAはsiGENOME SMARTpool(Dahrmacon,Lafayette,CO,USA)を用いて製作した。 メディアに含まれた低分子干渉RNA(siRNA)の最終濃度は、100nMとなるようにした。これらを徐々にピペット操作(pipetting)して混合した後、室温で20分間放置し、このように製造された複合体をウェルプレートに添加して37℃のCOインキュベーターで24時間培養した。24時間の後、Trizol試薬(Invirtogen,Carlsbad,CA,USA)を用いて細胞内に存在する全体リボ核酸(RNA)を分離し、このRNAはAccuPower RT PreMix(Bioneer,Daejeon,Korea)を用いてcDNAに逆転写した。スタット3(Stat3)に特異的なプライマーの配列は5'−AGTTCTCCTCCACCACCAAG−3’(左側)、5’−CCTTCTCCACCCAAGTGAAA−3’(右側)であり、PCR生成物の大きさは348塩基対であった。スタット3(Stat3)転写体(transcript)発現の程度は、スタット3特異的なPCR生成物のバンド密度をGAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)遺伝子を増幅して示されるバンド密度に補正して定量的な発現の変化を測定した。図6は、それぞれの組成を処理した場合の、SiHa細胞内でターゲット遺伝子スタット3の転写体発現を比較したものであって、Aは対照群、Bは低分子干渉RNA単独処理群、Cは比較例2処理群、Dは比較例1処理群、Eは実施例12処理群、Fは実施例14処理群、Gは実施例17処理群である。 対照群(A)と低分子干渉RNA単独処理群(B)は、低分子干渉RNAが細胞内に伝達されなくてスタット3転写体の発現に変化がなく、比較例1で製造されたリポソームは、実施例12、14、17で製造されたリポソーム、ミセル、エマルションより、スタット3転写体の発現の減少が少なかった。また実施例12、14、17で製造されたリポソーム、ミセル、エマルションは、市販品の比較例2の組成と同じように、スタット3転写体発現を効率的に減少させた。よって、図6から実施例12、14、17で製造された正イオン性脂質含有リポソーム、ミセル、エマルションが、それぞれSiHa細胞内に低分子干渉RNA物質を効率的に伝達して標的タンパク質の発現を選択的に抑制させることが分かる。
【0112】
II-2.HeLa細胞株における低分子干渉RNA伝達効能評価
HeLa細胞株を実験前日24ウェルプレートにウェル当たり8×10個ずつ播種(seeding)した。各プレートの細胞が60−70%程度に均一に成長した時、プレート中の培地を除去して新しい培地をウェル当たり250μlずつ添加した。エッペンドルフ チューブに血清の含まれていない培地50μlずつを入れてスタット3選択的な低分子干渉RNAと比較例1、2と実施例11、16、20で製造された正イオン性脂質含有リポソーム、エマルション、およびミセルとの複合体をそれぞれ添加した後、実験例II-1と同様の方法と条件で実験を遂行した。図7は、それぞれの組成で処理した場合の、HeLa細胞内でターゲット遺伝子スタット3の転写体発現を比較したもので、Aは対照群、Bは低分子干渉RNA単独処理群、Cは比較例2処理群、Dは比較例1処理群、Eは実施例11処理群、Fは実施例16処理群、Gは実施例20処理群である。 対照群(A)と低分子干渉RNA単独処理群(B)は、細胞内への伝達効率が低くてスタット3転写体の発現に変化がなく、比較例1で製造されたリポソームは、実施例11、16、20で製造されたリポソーム、エマルション、ミセル剤形より、スタット3転写体の発現の減少が少なかった。したがって、図7から実施例11、16、20で製造された正イオン性脂質含有剤形は、それぞれHeLa細胞内に低分子干渉RNA物質を効率的に伝達して標的タンパク質の発現を選択的に抑制させることが分かる。
【0113】
II−3.SiHa細胞株におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内伝達効率測定
SiHa細胞株を実験前日24ウェルプレートにウェル当たり細胞を8×10ずつ播種(seeding)した。各プレートの細胞が60−70%程度に均一に成長した時、プレート内の培地を除去して新しい培地をウェル(well)当たり250μlずつ添加した。エッペンドルフチューブに血清が含まれていない培地50μlずつを入れてアンチセンスオリゴヌクレオチドと比較例1、2と実施例12、15、17で製造された正イオン性脂質含有リポソーム、ミセル、エマルションとの複合体をそれぞれ添加した。Bcl2遺伝子(Gene bank accession number:NM_000633)の発現抑制を誘導するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドではバイオニーア(Bioneer,Daejeon,Korea)で合成注文したもの(5'−TCT CCC AGC GTG CGC CAT−3’)を使った。メディアに含まれたアンチセンスオリゴヌクレオチドの最終濃度は100nMとなるようにした。これらを徐々にピペット操作(pipetting)して混合した後、室温で20分間放置してこのように製造された複合体をウェルプレートに添加し37℃のCOインキュベーターで24時間培養した。24時間の後、Trizol試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を使って細胞内に存在する全体リボ核酸(RNA)を分離し、このRNAはAccuPower RT PreMix(Bioneer,Daejeon,Korea)を使ってcDNAに逆転写した。Bcl2に特異的なプライマーの配列は5'−ATG GCG CAC GCT GGG AGA AC−3’(左側)、5'−GCG GTA GCG GCGGGA GAA GT−3’(右側)であり、PCR生成物の大きさは348塩基対であった。Bcl2転写体発現の程度はBcl2特異的なPCR生成物のバンド密度をglyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase(GAPDH)遺伝子を増幅して示されるバンド密度に補正して定量的な発現の変化を測定した。図8は、それぞれの組成で処理した場合の、SiHa細胞内でターゲット遺伝子Bcl2の転写体発現を比較したものであって、Aは対照群、BはBcl2選択的アンチセンスオリゴヌクレオチド単独処理群、Cは比較例2とアンチセンスオリゴヌクレオチドの複合体処理群、Dは比較例1のリポソームとアンチセンスオリゴヌクレオチドの複合体処理群、Eは実施例12の正イオン性リポソームとアンチセンスオリゴヌクレオチドの複合体処理群、Fは実施例15の正イオン性ミセルとアンチセンスオリゴヌクレオチドの複合体処理群、Gは実施例17の正イオン性エマルションとアンチセンスオリゴヌクレオチドの複合体処理群である。細胞に何も処理していない対照群である図8Aに比べてアンチセンスオリゴヌクレオチド単独処理群(図8B)は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが細胞内に伝達されなくてBcl2転写体の量に変化がなかった。市販品である比較例2の組成や(図8C)、比較例1で製造されたリポソーム(図8D)と比較した場合、本発明の実施例12、15、17で製造された正イオン性脂質含有剤形は、細胞内でBcl2転写体の量を効果的に減少させた。したがって、図8から実施例12、15、17で製造された正イオン性脂質含有剤形はSiHa細胞内にアンチセンスオリゴヌクレオチド物質を伝達して標的物質であるBcl-2の細胞内発現を効果的に抑制させることが分かる。
【0114】
[実験例III] 蛍光タンパク質発現細胞株293T−GFPを用いた低分子干渉RNAの伝達効率評価
緑色蛍光タンパク質を発現する293T−GFP細胞株を実験前日24ウェルプレートにウェル当たり8×10個ずつ播種(seeding)して各プレートの細胞が60−70%程度に均一に成長した時、プレート中の培地を除去して新しい培地をウェル当たり500μlずつ添加した。エッペンドルフチューブに血清が含まれていない培地25μlずつを入れて緑色蛍光が発現するプラスミドの発現を抑制するsiRNAと比較例2および実施例12で製造された正イオン性リポソームをそれぞれ添加して複合体を製造してウェルプレートに添加して37℃のCOインキュベーターで24時間培養した。培養された細胞のメディアをウェル当たり500μlずつ新しいメディアに交換した後、蛍光顕微鏡で遺伝子伝達効率を観察した。緑色蛍光タンパク質の発現を抑制するための低分子干渉RNAは、バイオニーア(Bioneer,Korea)で販売する製品を用い、その配列は5'−GCA UCA AGG UGA ACU UCA A−3’(正方向)、5'−UUG AAG UUC ACC UUG AUG C−3’(逆方向)であった。メディアに含まれた低分子干渉RNAの最終濃度は、300nMとなるようにした。図9は、それぞれの組成で処理した場合の、293T細胞内で緑色蛍光タンパク質の発現を位相差顕微鏡と蛍光顕微鏡で観察したものであって、Aは緑色蛍光タンパク質発現293T細胞を何も処理していない場合の位相差顕微鏡の写真であり、Bは比較例2組成処理時の位相差顕微鏡の写真であり、Cは実施例12の組成処理時の位相差顕微鏡の写真である。またDは、何も処理していない293T細胞の蛍光顕微鏡の写真であり、Eは比較例2の組成処理時の蛍光顕微鏡の写真であり、Fは実施例12組成処理時の蛍光顕微鏡の写真である。何も処理していない293T細胞は、緑色蛍光タンパク質の発現が抑制されなくて蛍光発現が蛍光顕微鏡下で明確に観察されるのに対して、比較例2と実施例12の組成で処理した細胞は、蛍光タンパク質の発現を抑制する低分子干渉RNAが細胞内に伝達されて緑色蛍光の発現が抑制されることが分かる。
【0115】
[実験例IV] 正イオン性脂質含有核酸伝達体の毒性評価
IV−1.正イオン性脂質含有核酸伝達体のA549細胞株に対する毒性評価
本発明の新規正イオン性脂質を含む核酸伝達体の細胞毒性に関する評価をするために下記のような方法で実験を実施した。
人の肺癌細胞株であるA549細胞を、実施例11、13、16で製造した正イオン性脂質含有リポソーム、エマルションと低分子干渉RNA(siRNA)の複合体組成、そして低分子干渉RNA(siRNA)遺伝子単独組成で処理して細胞毒性を評価した。核酸伝達体のみの細胞毒性を明確に評価するために低分子干渉RNAは、細胞内で活性がないスクランブルRNA(scrambled RNA)を用いた。細胞毒性は、3−(4,5−dimethylthiazole−2−yl))−2、5−diphenyl tetrazolium bromide(MTT)試薬による方法で評価した。
【0116】
細胞をウェル当たり2×10細胞となるように48ウェル(well)に播種(seeding)して12時間培養した後、実施例11、13、16で製造した正イオン性脂質含有リポソーム、エマルションと低分子干渉RNAの複合体組成そして低分子干渉RNA(siRNA)のみでそれぞれ処理した。24時間経過後、それぞれMTT溶液を培地の10%となるように加えて、さらに4時間培養した後、上層液を除去して0.04N塩酸イソプロパノール溶液を添加した後にELISA readerを用いて570nmで吸光度を測定した。対照群では何も処理していない細胞が使われた。図10は、実施例11、13、16で製造された正イオン性脂質含有リポソーム、エマルションと低分子干渉RNA複合体の肺癌細胞株(A549)で細胞毒性実験を実施した結果であって、実施例11、13、16の正イオン性リポソーム、エマルションと低分子干渉RNAの複合体は、対照群と比較して大きい細胞毒性を示さなかった。よって、図10から実施例11、13、16で製造された本発明の正イオン性脂質含有リポソームやエマルション剤形は、人の肺癌細胞株に対して深刻な毒性を示さないということが分かる。
【0117】
IV−2.正イオン性脂質含有核酸伝達体のSiHa細胞株に対する毒性評価
SiHa細胞に実験例12、18、19で製造した正イオン性リン脂質リポソームと低分子干渉RNA(siRNA)の複合体組成、そして低分子干渉RNA(siRNA)遺伝子自体の組成を製造し、実験例IV−1に記載されたものと同様の方法で細胞毒性を評価した。 図11は、実施例12、18、19でそれぞれ製造された正イオン性脂質含有リポソームとスクランブル低分子干渉RNA複合体のSiHa細胞に対する毒性実験を遂行した結果であって、実施例12、18、19の正イオン性リポソームと低分子干渉RNAの複合体は対照群と比較して大きい細胞毒性を示さなかった。よって、本図面から実施例12、18、19で製造された本発明の正イオン性脂質含有リポソームは、子宮頸癌細胞株にて深刻な細胞毒性を示さないことが分かる。
【0118】
IV−3.正イオン性脂質含有核酸伝達体のVK2細胞株に対する毒性評価
VK2細胞に実施例11、14、17で製造した正イオン性リン脂質リポソーム、ミセル、エマルションと低分子干渉RNA(siRNA)の複合体組成、そして低分子干渉RNA(siRNA)遺伝子自体組成を製造し、実験例IV−1に記載されたのと同様の方法で細胞毒性を評価した。図12は、実施例11、14、17で製造された正イオン性リポソーム、ミセル、エマルション組成物とスクランブルRNAの膣粘膜ケラチン細胞株であるVK2で細胞毒性実験を実施した結果であって、実施例11、14、17の正イオン性リポソーム、ミセル、エマルションと低分子干渉RNAの複合体は、対照群と比較して大きい細胞毒性を示さなかった。よって、本図面から実施例11、14、17で製造された正イオン性脂質含有リポソーム、ミセル、エマルション剤形はVK2で深刻な細胞毒性を示さないことが分かる。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
上述した通り、本発明の正イオン性脂質は、製造および精製工程が簡便で大量生産時の経済性が高い。また、本発明の正イオン性脂質を含む核酸またはタンパク質伝達体は、目的とするデオキシリボ核酸、リボ核酸、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、核酸アプタマー(aptamer)等の核酸医薬や生理活性を保有した負イオン性タンパク質を細胞内に輸送する効率を顕著に増強させるだけでなく、細胞毒性を減少させて核酸またはタンパク質素材の医薬の治療効能を増強させる用途で有用に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)の正イオン性脂質を含む負イオン性タンパク質伝達体:
【化1】

前記式において、nは1または2であり、RとRはそれぞれ炭素数12〜20個の飽和または不飽和炭化水素である。
【請求項2】
下記の一般式(I)の正イオン性脂質を含むオリゴ核酸伝達体:
【化2】

前記式において、nは1または2であり、RとRはそれぞれ炭素数12〜20個の飽和または不飽和炭化水素である。
【請求項3】
前記オリゴ核酸伝達体は、低分子干渉RNAの細胞内の運搬のためのものであることを特徴とする請求項2に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項4】
前記オリゴ核酸伝達体は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内の運搬のためのものであることを特徴とする請求項2に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項5】
前記オリゴ核酸伝達体は、アプタマーの細胞内の運搬のためのものであることを特徴とする請求項2に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項6】
前記オリゴ核酸伝達体は、リポソーム、ミセル、エマルション、およびナノ粒子からなる群より選択される剤形からなることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項7】
ガラクトース脂質誘導体、マンノース脂質誘導体、葉酸脂質誘導体、ポリエチレングリコール脂質誘導体、ビオチン脂質誘導体を追加的に含むことを特徴とする請求項6に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項8】
前記オリゴ核酸伝達体は、前記正イオン性脂質および細胞融合性リン脂質を含有するリポソーム剤形からなることを特徴とする請求項6に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項9】
前記細胞融合性リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)であることを特徴とする請求項8に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項10】
前記細胞融合性リン脂質は、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンであることを特徴とする請求項8に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項11】
前記オリゴ核酸伝達体は、前記正イオン性脂質および界面活性剤を含有するミセル剤形からなることを特徴とする請求項6に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項12】
前記界面活性剤は、Tween 20、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、エチレングリコールモノドデシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、シクロヘキシルメチルβ−D−マルトシド、ペンタエリスリチルパルミテート、ラウリルジメチルアミンオキサイド、またはN−ラウロイルサルコシンソジウム塩であることを特徴とする請求項11に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項13】
前記オリゴ核酸伝達体は、前記正イオン性脂質および界面活性剤を含有するエマルション剤形からなることを特徴とする請求項6に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項14】
前記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミン酸化物、3−(N,N−ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホネート、Tween 20、Tween 80、トリトンX−100、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクチルグルコシド、またはN−ノナノイル−N−メチルグルカミンであることを特徴とする請求項13に記載のオリゴ核酸伝達体。
【請求項15】
請求項2のオリゴ核酸伝達体とオリゴヌクレオチドの複合体。
【請求項16】
請求項15のオリゴ核酸伝達体とオリゴヌクレオチドの複合体を有効成分として含む病因性タンパク質の過多発現から発生する疾患の予防および治療用組成物。
【請求項17】
病因性タンパク質の過多発現から発生する疾患が、腫瘍、関節炎、心血管系疾患、および内分泌系疾患から選択されたものであることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項15のオリゴ核酸伝達体とオリゴヌクレオチドの複合体を、人間又は人間ではない哺乳類に投与して病因性タンパク質の過多発現から発生する疾患を予防または治療する方法。
【請求項19】
病因性タンパク質の過多発現から発生する疾患が、腫瘍、関節炎、心血管系疾患、および内分泌系疾患から選択されるものであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
病因性タンパク質の過多発現から発生する疾患の治療剤を製造するための請求項15のオリゴ核酸伝達体とオリゴヌクレオチドの複合体の使用。
【請求項21】
病因性タンパク質の過多発現から発生する疾患は、腫瘍、関節炎、心血管系疾患、および内分泌系疾患から選択されたものであることを特徴とする請求項20に記載の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−537972(P2010−537972A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522798(P2010−522798)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004819
【国際公開番号】WO2009/028824
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510056353)コリア・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・ビジネス・ファウンデーション (15)
【出願人】(510140700)エスエヌユー・アールアンドディービー・ファウンデーション (4)
【Fターム(参考)】