説明

新規アザ二環式化合物、その製造法及びそれを含有する医薬組成物

【課題】中枢ヒスタミン作動系との相互作用を有する新規なアザ二環式化合物、及びそれを含有する医薬組成物の提供。
【解決手段】式(I):


[式中、・ALKは、アルキレン鎖を表し、・Wは、下記:


(式中、R及びR’は、それぞれ互いに独立して、水素、あるいは、場合により、ハロゲン等で置換されている直鎖状もしくは分岐の(C1〜C6)アルキル基を表す)から選択される基を表す]で示される化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアザ二環式化合物、それを製造する方法、及びそれを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の化合物は、インビボでの中枢ヒスタミン作動系との相互作用に関する薬理学的観点から、特に貴重である。
【0003】
出生時平均余命の延長による人口の高齢化は、それとともに、年齢に伴う神経病態、及び特にアルツハイマー病の発生率の多大な増加をもたらしている。脳の加齢、及び特に年齢に伴う神経病態の主な臨床的所見は、記憶及び認知機能の不全であって、それは認知症へと導くこともありうる。
【0004】
神経薬理学的研究からは、中枢神経系で、中枢ヒスタミン作動系経由のヒスタミンが、生理学的又は生理病理学的状況における神経伝達物質又は神経モジュレーターの役割を有することが示されている(Pell & Green, Annu. Rev. Neurosci., 1986, 9:209-254;Schwartz et al., Physiol. Rev., 1991, 71:1-51)。したがって、ヒスタミンは、様々な生理学的及び行動学的過程、たとえば体温調節、神経−内分泌的調節、概日リズム、カタレプシー状態、運動性、攻撃性、摂食行動、学習及び記銘、ならびにシナプス可塑性に関与することが示されている(Hass et al., Histaminergic neurons: morphology and function, Boca Raton, FL: CRC Press, 1991, pp.196-208;Brown et al., Prog. Neurobiology, 2001, 63:637-672)。
【0005】
動物で実施された研究からは、ヒスタミンの内因性シナプス外レベルの上昇は、覚醒、学習及び記憶過程の状態を促進し、食物摂取を調節するのを可能にすることが示されている(Brown et al., Prog. Neurobiol., 2000, 63:637-672;Passani et al., Neurosci. Biobehav. Rev., 2000, 24:107-113)。その結果、中枢レベルでのヒスタミンの代謝回転又は放出を増大できる化合物に対する潜在的治療適応症は、脳加齢、急性及び慢性的神経変性性疾患ならびに統合失調症に付随する認知不全の処置と、気分障害、統合失調症、睡眠障害、睡眠覚醒リズム障害及び注意欠陥多動症候群の処置とである。更に、研究から、満腹感の調節に関与する中枢視床下部核へのヒスタミンの注入は、ラットで摂食を減退させることが示されている。その上、遺伝的に肥満したラットでは、ヒスタミン作動性伝達の機能低下が立証されている(Machidori et al., Brain Research, 1992, 590:180-186)。その結果、摂食行動障害及び肥満症も、本発明の化合物に対する潜在的治療適応症である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、3−アザビシクロ[3,1,0]ヘキサン環系の存在によって、国際公開公報第2005/089747号出願で言及された化合物と区別される、新規なアザ二環式化合物に関する。
【0007】
驚いたことに、国際公開公報第2005/089747号出願の化合物との構造的な差異は、本発明の化合物に顕著な認知促進特性のみならず、強力な覚醒、抗鎮静、抗催眠及び抗うつ特性も与える。
【0008】
神経学的レベルでは、この組合せの活性は、脳の加齢、神経変性性疾患及び頭蓋外傷に付随する認知障害の新規な処置だけでなく、これらの病態に付随する精神行動学的障害、たとえば睡眠障害、無気力症及び/又は抑うつ状態の処置にも道を開く。その上、本発明の化合物の薬理学的プロファイルは、精神病の分野では、たとえば統合失調症、気分障害又は睡眠障害の新規な処置を想定することも可能にする。
【0009】
より具体的には、本発明は、式(I):
【0010】
【化1】


[式中、
・ALKは、アルキレン鎖を表し、
・Wは、下記:
【0011】
【化2】


(式中、R及びR’は、それぞれ互いに独立して、水素、あるいは、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される一つ以上の基で置換されている直鎖状もしくは分岐の(C〜C)アルキル基を表す)から選択される基を表し、
−用語「アルキレン」は、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐の二価の基を表し、
−用語「アルコキシ」は、直鎖状又は分岐であるアルキル鎖が1〜6個の炭素原子を有する、アルキル−オキシ基を表すと解される]
で示される化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩に関するものである。
【0012】
薬学的に許容され得る酸のうち、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ホスホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ショウノウ酸等を、非限定的な例として挙げることができる。
【0013】
薬学的に許容され得る塩基のうちでは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、t−ブチルアミン等を、非限定的な例として挙げることができる。
【0014】
好ましい式(I)の化合物は、W基がパラ位に位置する化合物である。
【0015】
ALKは、好ましくは、エチレン、プロピレン又はブチレン、より好ましくはやはりプロピレン基を表す。
【0016】
本発明の特定の実施態様は、W基が、基−CO−NH、−NH−CO−CH、−N(CH)−CO−CH又はNH−CO−CH−OCHを表す、式(I)の化合物に関するものである。
【0017】
より更に好ましくは、本発明は、
・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−N−メチルアセトアミド、
・N−(4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}フェニル)アセトアミド、
・N−(4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド、
・4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド、
・4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}ベンズアミド、
・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド、
・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)アセトアミド、及び
薬学的に許容され得る酸もしくは塩基とのその付加塩である、式(I)の化合物に関するものである。
【0018】
薬学的に許容され得る酸との付加塩のうちでは、より特別には、塩酸塩、シュウ酸塩及びクエン酸塩が好ましい。
【0019】
好ましいのは、N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−N−メチルアセトアミド塩酸塩である。
【0020】
4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩、4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミドシュウ酸塩及び4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミドクエン酸塩が、より更に特別に好ましい。
【0021】
本発明は、式(I)の化合物を製造する方法であって、出発材料として、式(II):
【0022】
【化3】


[式中、Wは、式(I)について定義されたとおりである]で示される化合物を用いて、式(II)の化合物と、式(III):
【0023】
【化4】


[式中、ALKは、式(I)について定義されたとおりである]で示される化合物とを塩基性媒体中で縮合させて、式(IV):
【0024】
【化5】


[式中、W及びALKは、上記に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、これと、式(V):
【0025】
【化6】

【0026】
で示される化合物とを縮合させて、上記に定義されたとおりの式(I):
【0027】
【化7】


で示される化合物を得て、これを、慣用の分離技法に従って精製してもよく、所望であれば、これを、薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩へと転換し、そしてこれを、適切な場合は、慣用の分離技法に従ってその異性体に分離することを特徴とする方法にも関するものである。
【0028】
式(II)、(III)及び(V)の化合物は、市販されているか、又は文献に記載された慣用の化学反応を用いて当業者が得ることができるかのいずれかである。
【0029】
あるいは、式(VI):
【0030】
【化8】


[式中、ALK基は、上記に定義されたとおりである]で示される化合物を、合成中間体として用いて、式NHRR’[式中、R及びR’は、式(I)について定義されたとおりである]で示されるアミンとカプリングさせることによって、式(I)[式中、W=−CONRR’である]で示される化合物を得ることができる。
【0031】
以下、式(I)[式中、W=−CONRR’である]で示される化合物を、式(I/a)の化合物と称することにする。
【0032】
同様に、式(VII):
【0033】
【化9】


[式中、ALK基は、上記に定義されたとおりである]で示される化合物を、合成中間体として用いて、式NHRR’[式中、R及びR’は、式(I)について定義されたとおりである]で示されるアミンとカプリングさせることによって、式(I/a)の化合物を得ることができる。
【0034】
更に、式(I/a)の化合物は、式(VIII):
【0035】
【化10】


[式中、ALK基は、上記に定義されたとおりであり、そしてR”は、直鎖状又は分岐の(C〜C)アルキル基を表す]で示される化合物を用い、上記に示された対応するカルボン酸(VI)及びアシル塩化物(VII)を経由することによっても得ることもできる。
【0036】
もう一つの選択肢は、式NHRR’のアミンの存在下で、式(VIII)で示される化合物を用いて、式(I/a)の化合物を直接得ることからなる。
【0037】
最後に、塩基性媒体中で、式(IX):
【0038】
【化11】


[式中、ALK基は、上記に定義されたとおりである]で示される化合物を、加水分解することによって、式(I/a)の化合物を得ることも可能である。
【0039】
式(I)の化合物の薬理学的研究からは、それが、記憶及び学習の過程を促進することによって認知促進特性、ならびに覚醒、抗鎮静、抗催眠及び抗うつ特性も有することが示された。更に、式(IX)の化合物も、認知促進特性を有する。
【0040】
神経学的レベルでは、本発明による化合物は、脳の加齢又は神経変性性疾患、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、レヴィー小体認知症、前頭及び皮質下認知症、前側頭認知症、血管性認知症、ハンチントン病及び多発性硬化症に付随する認知障害の処置、頭蓋外傷に付随する認知障害の新規な処置だけでなく、これらの病態に付随する精神行動学的障害、たとえば睡眠障害、無気力症及びうつ病の処置にも役立ち得る。アルツハイマー病及びパーキンソン病に付随する睡眠障害、たとえば日中睡眠過剰症は、特に、その標的である。
【0041】
精神病的レベルでは、これらの化合物は、気分障害の処置、より特別には抑うつ状態、統合失調症及びこれらに付随する認知障害の処置、ならびに睡眠障害、睡眠覚醒リズム障害及び注意欠陥多動症候群(ADHD)の処置にも有用であることができる。睡眠障害のうち、より特別には、ナルコレプシー;閉塞性睡眠無呼吸症候群又は注意欠陥多動症候群の際に生じる過眠症;及び日中過眠症を挙げ得る。
【0042】
本発明は、式(I)の少なくとも一つの化合物を、単独でか、又は薬学的に許容され得る一つ以上の賦形剤と組み合わせて含む、医薬組成物にも関するものである。
【0043】
本発明による医薬組成物中、活性成分の重量比率(組成物の総重量に対する活性成分の重量)は、1〜50%である。
【0044】
本発明による医薬組成物の中で、より特別には、経口、非経口、経鼻、経皮もしくは貫皮、直腸、経舌、眼内、又は呼吸器投与に適切であるもの、特に錠剤もしくは糖衣錠、舌下錠、サッシェ剤、パケット剤、カプセル剤、グロセット剤(glossettes)、トローチ剤、坐剤、クリーム剤、軟膏、経皮ゲル、及び飲用もしくは注射可能アンプル剤が挙げられ得る。
【0045】
有用な投与量は、患者の性別、年齢及び体重、投与経路、治療適応症の性質、ならびに付随するいかなる処置にも応じて変化し、1日あたり1〜3回の投与での処置のために、24時間あたり0.05〜500mgの範囲にわたる。
【0046】
下記の実施例は、本発明を例示するが、いかなる方途でもそれを限定しない。実施例に記載された化合物の構造は、通常の分光分析の手法(赤外線、NMR、質量分析等々)に従って決定した。
【0047】
情報として、下記のすべての化合物は、メソ型の立体化学構造を有する。
【0048】
実施例1、合成ルートA: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩
工程1: 4−(3−クロロプロポキシ)ベンズアミド
アセトニトリル10ml中の4−ヒドロキシベンズアミド0.004mol、1−ブロモ−3−クロロプロパン0.004mol及び炭酸セシウム0.006molからなる混合物を、5時間加熱還流した。
【0049】
工程2: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド
(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン0.004mol及びヨウ化ナトリウム0.002molを、工程1の反応混合物に周囲温度で加えた。次に還流を16時間再開した。沈殿物を濾別し、アセトニトリルですすいだ。濾液を濃縮乾固した。残留物をジクロロメタンに取った。得られた溶液を水酸化ナトリウム溶液で、次に水で抽出し、その後硫酸マグネシウムで乾燥させて、濃縮乾固した。残留物をLichroprep RP-18相の分取クロマトグラフィー技法により精製した。
質量スペクトル: [M+H]理論的m/z=243.1510;実験的m/z=243.1497
【0050】
工程3: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩
工程2で得た生成物を、エタノール10mlに溶解し、それに2N エタノールHCl溶液2mlを加えた。結晶化した生成物を濾別し、エタノールですすいで、減圧下で乾燥させた。
【0051】
元素微量分析:
%C %H %N %Cl %Cl
計算値 60.70 7.13 9.44 11.95 11.95
実測値 60.74 7.04 9.31 11.89 11.87
【0052】
実施例1、ルートB: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩
工程1: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンゾニトリル
実験手順は、実施例1の合成ルートA、工程1及び2と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドを4−ヒドロキシベンゾニトリルに代えた。
質量スペクトル: [M+H]理論的m/z=243.1510;実験的m/z=243.1497
【0053】
工程2: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩
上記の工程で得た化合物(2.2g)を、エタノール90mlに溶解し、KOH 5.1gの存在下で18時間還流した。混合物を水90mlに注ぎ、次に減圧下で半分の容量に濃縮した。得られた固体を濾別し、イソプロピルエーテルですすぎ、次に乾燥させた。実施例1の合成ルートA、工程3の操作手順に従って、塩酸塩を調製した。
元素微量分析
%C %H %N %Cl %Cl
計算値 60.70 7.13 9.44 11.95 11.95
実測値 60.36 7.11 9.11 11.36 11.93
【0054】
実施例1、ルートC: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩
工程1: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}安息香酸メチル
実験手順は、実施例1の合成ルートA、工程1及び2と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドを4−ヒドロキシ安息香酸メチルに代えた。
【0055】
工程2: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}安息香酸
工程1の化合物3.5g、2N 水酸化ナトリウム溶液12.7ml及びメタノール8mlの混合物を、1時間還流した。氷浴中で冷却している反応混合物に、2N HCl 12.7mlを加えた。沈殿物を水で洗浄し、減圧下で乾燥させた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 68.94 7.33 5.36
実測値 68.74 7.32 5.42
【0056】
工程3: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンゾイルクロリド塩酸塩
工程2に記載された生成物1.8gと塩化チオニル20mlの混合物を、2時間還流した。反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエンで2回共蒸発させた。固体の残留物をエチルエーテル中で均質にし、濾別して、減圧下で乾燥させた。
【0057】
工程4: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩
2N アンモニアメタノール2mlを、ジクロロメタン中の工程3に記載された生成物1gの溶液に0℃で滴下した。次に混合物を周囲温度で1時間撹拌し、2N 水酸化ナトリウム溶液で洗浄し、次に水で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。残留油状物をエタノール10mlに溶解し、それに2N エタノール性HCl溶液2mlを加えた。結晶化した生成物を濾別し、エタノールですすいで、減圧下で乾燥させた。
元素微量分析
%C %H %N %Cl
計算値 60.70 7.13 9.44 11.95
実測値 60.74 7.04 9.31 11.89
【0058】
実施例2: 4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}ベンズアミド
実験手順は、実施例1の合成ルートA、工程1及び2と同様にしたが、工程1で1−ブロモ−3−クロロプロパンを1−ブロモ−2−クロロエタンに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 68.27 7.37 11.37
実測値 67.07 7.12 11.15
【0059】
実施例3: 4−{4−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]ブトキシ}ベンズアミド
実験手順は、実施例1の合成ルートA、工程1及び2と同様にしたが、工程1で1−ブロモ−3−クロロプロパンを1−ブロモ−4−クロロブタンに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 70.04 8.08 10.21
実測値 69.96 8.07 9.91
【0060】
実施例4: N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)アセトアミド
実験手順は、実施例1の工程1及び2と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドをN−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 70.04 8.08 10.21
実測値 69.77 8.02 10.00
【0061】
実施例5: N−(4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}フェニル)アセトアミド
実験手順は、実施例2の工程1及び2と同様にしたが、工程1で4-ヒドロキシベンズアミドをN−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 69.21 7.74 10.76
実測値 68.86 7.66 10.55
【0062】
実施例6: N−(4−{4−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]ブトキシ}フェニル)アセトアミド
実験手順は、実施例3の工程1及び2と同様にしたが、工程1で4-ヒドロキシベンズアミドをN−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 70.80 8.39 9.71
実測値 70.44 8.35 9.14
【0063】
実施例7: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}−N,N−ジメチルベンズアミド
実験手順は、実施例1の合成ルートAの工程1及び2と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドを4−ヒドロキシ−N,N−ジメチルベンズアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 70.80 8.39 9.71
実測値 70.82 8.32 9.60
【0064】
実施例8: 4−{4−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]ブトキシ}−N,N−ジメチルベンズアミドシュウ酸塩
実験手順は、実施例3の工程1及び2と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドを4−ヒドロキシ−N,N−ジメチルベンズアミドに代えた。次に、エタノール6ml中の先の処理により得られた化合物0.38gに、シュウ酸0.32gを加えた。得られた生成物を濾別し、エチルエーテルですすいで、次に減圧下で乾燥させた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 61.21 7.19 7.14
実測値 60.13 6.93 6.71
【0065】
実施例9: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}−N,N−ジエチルベンズアミド塩酸塩
実験手順は、実施例1の合成ルートAの手順と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドを4−ヒドロキシ−N,N−ジエチルベンズアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N %Cl %Cl
計算値 64.67 8.28 7.94 10.05 10.05
実測値 64.92 7.59 8.24 12.57 10.78
【0066】
実施例10: 4−{4−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]ブトキシ}−N,N−ジエチルベンズアミド
実験手順は、実施例3の工程1及び2と同様にしたが、工程1で4-ヒドロキシベンズアミドを4−ヒドロキシ−N,N−ジエチルベンズアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 72.69 9.15 8.48
実測値 72.45 9.02 8.33
【0067】
実施例11: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}−N−メチルベンズアミド
実験手順は、実施例1の合成ルートA、工程1及び2と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドを4−ヒドロキシ−N−メチルベンズアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 70.04 8.08 10.21
実測値 69.93 8.00 10.09
【0068】
実施例12: 4−{4−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]ブトキシ}−N−メチルベンズアミド
実験手順は、実施例3の工程1及び2と同様にしたが、工程1で4-ヒドロキシベンズアミドを4−ヒドロキシ−N−メチルベンズアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 70.80 8.39 9.71
実測値 69.66 8.17 9.20
【0069】
実施例13: N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−N−メチルアセトアミド塩酸塩
実験手順は、実施例1の合成ルートAの手順と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドをN−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアセトアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N %Cl %Cl
計算値 62.86 7.76 8.62 10.91 10.91
実測値 62.27 7.56 8.46 11.62 11.29
【0070】
実施例14: N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド
実験手順は、実施例1の合成ルートA、工程1及び2と同様にしたが、工程1で4−ヒドロキシベンズアミドをN−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアセトアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 67.08 7.95 9.20
実測値 66.72 7.92 9.18
【0071】
実施例15: N−(4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド
実験手順は、実施例2の工程1及び2と同様にしたが、工程1で4-ヒドロキシベンズアミドをN−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアセトアミドに代えた。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 66.19 7.64 9.65
実測値 65.9 7.50 9.44
【0072】
実施例16: N−(4−{4−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]ブトキシ}フェニル)−N−メチルアセトアミド塩酸塩
実験手順は、実施例13の手順と同様にしたが、工程1で1−ブロモ−3−クロロプロパンを1−ブロモ−4−クロロブタンに代えた。
元素微量分析
%C %H %N %Cl %Cl
計算値 65.47 8.52 7.63 9.66 9.66
実測値 65.35 8.41 7.30 9.80 9.67
【0073】
実施例17: N−(4−{4−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]ブトキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド塩酸塩
実験手順は、実施例1の合成ルートAの手順と同様にしたが、工程1で、4−ヒドロキシベンズアミドをN−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メトキシアセトアミドに代え、かつ1−ブロモ−3−クロロプロパンを1−ブロモ−4−クロロブタンに代えた。
元素微量分析
%C %H %N %Cl %Cl
計算値 62.73 8.16 7.32 9.27 9.26
実測値 61.92 7.89 6.99 9.90 9.62
【0074】
実施例18: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド
実験手順は、実施例1の合成ルートA、工程1及び2を繰り返す。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 69.21 7.74 10.76
実測値 69.24 7.69 10.60
【0075】
実施例19: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミドシュウ酸塩
実験手順は、実施例1の合成ルートA、工程1及び2を繰り返す。それにより得られた化合物を、実施例8に記載の操作手順に従って塩に変換した。
元素微量分析
%C %H %N
計算値 56.73 6.13 7.60
実測値 55.98 6.28 6.94
【0076】
実施例20: 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミドクエン酸塩
実施例18の化合物の1当量を、クエン酸一水和物1.2当量の存在下で水に溶解して、標記生成物を得た。
1H NMR (600 MHz;DMSO-d6):δ (ppm) = 9.5-12.5 (sl, 3H); 7.85 (m, 3H); 7.20 (sl, 1H); 6.95 (m, 2H); 4.05 (t, 2H); 3.30 (dl, 2H); 2.80-3 (2 sl, 4H); 2.65 (d, 2H); 2.55 (d, 2H); 1.95 (qt, 2H); 1.6 (sl, 2H); 0.5-0.7 (2 m, 2H)。
【0077】
薬理学的研究
実施例A:NMRIマウスにおけるNτ−メチルヒスタミンの脳内レベル
Taylorらの方法(Biochem. Pharm., 1992, 44:1261-1267)に従って実施したこの研究の目的は、H型中枢ヒスタミンレセプターのアンタゴニストとしての本発明の化合物のエキソビボ活性を評価することである。この活性は、経口経路による試験化合物での処理後に、ヒスタミンの主要代謝物であるNτ−メチルヒスタミンの中枢レベルを測定することによって明らかにされる。Nτ−メチルヒスタミンの脳内濃度の上昇は、H型中枢ヒスタミンレセプターの遮断によるヒスタミンの代謝回転率の増大を示す。
【0078】
NMRIマウス(18〜20g)を、本発明の化合物又はそれらの担体(20ml/kg)で経口経路によって処理した。薬理学的処理の1時間後、動物を殺処分し、脳を取り出し、液体窒素中で凍結し、秤量し、そして0.1NHClO中4℃でホモジナイズした。ホモジナイズした生成物を、遠心分離した(15,000xg、17分、4℃)。上清を回収し、アリコートに分割した。アリコートを、液体窒素中で凍結し、分析まで−80℃で貯蔵した。
【0079】
τ−メチルヒスタミンの脳内レベルの決定は、毛細管電気泳動によって実施した。Nτ−メチルヒスタミンの組織レベルを、新鮮な脳1gあたりのμgで表した。担体で処理した動物(対照)と本発明の化合物で処理した動物との間の、Nτ−メチルヒスタミンの脳内レベルの比較を、一因子分散分析、次いで、必要ならば補足分析(ダネット検定)によって実施した。
【0080】
結果は、経口1〜30mg/kgという用量で、本発明の化合物が、Nτ−メチルヒスタミンの内在性脳内濃度を、濃度依存的な方式で200%より多く上昇させることができることを示した。
例示するならば、化合物1、5、6、13及び14は、経口10mg/kgで投与されたとき、Nτ−メチルヒスタミンの内在性脳内濃度を、それぞれ、99%、109%、106%、135%及び124%上昇させ、経口30mg/kgの用量では、それぞれ、227%、200%、210%、303%及び266%上昇させた。これらの結果は、本発明の化合物が、H型中枢ヒスタミンレセプターの強力なアンタゴニストであることを立証するものである。
【0081】
実施例B:覚醒ウィスター(Wister)系ラットにおける脳電図の記録
成長した雄のウィスター系ラットに、電極を、前頭葉及び頭頂葉皮質の表面に位置させて慢性的に移植した。消音室内のケージに入れたラットで、皮質の脳電図(EEG)の記録を作成した。各ラットが自身の制御のままに用いられるのを許しつつ、各投与の間に最低3日を置いて、同じ日の10時に、化合物及び担体を無作為方式で腹腔内経路によって投与した。徐波睡眠の際に支配的になり、覚醒及び逆説睡眠の際に消失する、徐波δ帯活性(1〜4Hz)の絶対出力を、連続する30分間にわたって平均した。徐波δ帯活性の出力の30分を超える低値及び高値は、それぞれ、覚醒及び睡眠の徴候である。結果は、本発明の化合物が、ラットにおける皮質の覚醒を増加させること(δ波の減少)を示した。
【0082】
例示するならば、腹腔内3mg/kgの用量で投与された化合物1及び13は、120分間の徐波δ出力の有意な減少を生じたが、これは皮質の活性化及び覚醒の徴候である。
【0083】
実施例C:ウィスター系ラットにおけるバルビタールとの相互作用
この試験の目的は、本発明の化合物の抗鎮静、覚醒及び/又は抗催眠特性を決定することであった。ラットを個別のケージに入れ、バルビタールの注射を行った(腹腔内170mg/kg)。次いで、立ち直り反射の喪失に基づいて決定される、睡眠の持続時間を、バルビタールの注射後4時間にわたって測定した。本発明の化合物又はその担体を、バルビタール投与の30分前に経口経路によって投与した。結果は、本発明の化合物が、強力な抗鎮静、抗催眠及び/又は覚醒特性を有することを立証するものである。
【0084】
たとえば、経口30mg/kgの用量で、化合物5、8、12及び15は、バルビタールによって生じる睡眠の持続時間を、それぞれ−80%、−79%、−55%及び76%も短縮した。
【0085】
実施例D:スプレーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)系ラットにおける物体認識
スプレーグ・ドーリー系ラットでの物体認識(Behav. Brain Res., 1988, 31:47-59)は、動物の自発的な探索活性に基づき、ヒトにおけるエピソード記憶の特徴性を有する。この記憶試験は、加齢(Eur. J. Pharmacol., 1997, 325:173-180)及びコリン作動性機能不全(Pharm. Biochem. Behav., 1996, 53(2):277-283)に感度があり、かなり類似する形状の二つの物体(一方は見慣れており、他方は新規である)の探索の差に基づくものである。試験の前に、動物を環境(物体なしの囲い)に馴化させた。最初の実験期間の間は、二つの同一物体が存在する囲いの中にラットを入れた(3分間)。各物体について、探索の持続時間を測定した。24時間後、第2の期間(3分間)の間に、二つの物体の一方を新しい物体に置き換えた。各物体について、探索の持続時間を測定した。査定の基準は、第2のセッションの間の新しい物体と見慣れた物体とに対する探索時間の差δ(秒で表す)であった。対照動物は、各セッションの60分前に経口経路によって担体で予め処理してあって、見慣れた物体及び新しい物体を同一の仕方で探索したが、これは、先に導入された物体が忘却されたことを示している。記憶認知を促進する化合物で処理された動物は、新しい物体を優先的に探索するが、これは、先に導入された物体が記憶されていることを示している。たとえば、本発明の実施例1により得られた結果は、経口0.3mg/kgの用量で6秒台の差δを示して、本発明の化合物が非常に低い用量でさえ、記銘を大いに強化することを示した。
【0086】
実施例E:ウィスター系ラットにおける社会的認知
1982年に初めて記載された(J. Comp. Physiol., 1982, 96:1000-1006)社会認識試験は、その後、新規化合物の記憶認知効果を研究するために様々な著者によって提唱されている(Psychopharmacology, 1987, 91:363-368;Psychopharmacology, 1987, 97:262-268)。この試験は、ラットの嗅覚記憶の自然な発現、及び忘却の自然な傾向に基づくもので、成長したラットが同種の若い動物を認知することによって記銘の評価を可能とする。無作為に採った若いラット(21日)を、成長したラットを収容したケージに5分間入れた。ビデオ装置を利用して、実験者は、成長したラットの社会的認知行動を観察し、その全体的な持続時間を測定した。次いで、若いラットを成長したラットのケージから除去し、2回目の導入までそれ自身のケージに入れた。成長したラットには、試験下の化合物を腹腔内経路によって与え、2時間後に、再び若いラットの存在に至らしめた(5分間)。次いで、社会的認知行動を再度観察し、かつその持続時間を測定した。評価の基準は、2回の遭遇の「認知」時間の差(T2−T1:秒で表す)であった。実施例1により得られた結果は、腹腔内1及び3mg/kgの用量について、それぞれ、21秒及び26秒の差(T2−T1)を示して、本発明の化合物が非常に低い用量であってさえ、記銘を大いに強化することを示した。
【0087】
実施例F:NMRIマウスにおけるビー玉埋め試験
マウスにおける自発的なビー玉埋めの行動は、抗うつ化合物についての非常に鋭敏な実証的試験である(Sanchez & Meier, Psychopharmacology, 1997, 129:197-205;Nicolas & Prinssen, Eur. J. Pharmacol., 2006, 547:106-115)。マウスを、24個のビー玉が存在する個別のケージに入れ、各動物が埋めたビー玉の数を、30分の期間について決定した。動物は、ビー玉を有するケージに入れる30分前に、本発明の化合物又はその担体で、腹腔内経路によって処理した。
【0088】
結果は、たとえば、化合物1、2、5及び15が腹腔内30mg/kgの用量で、埋められたビー玉の数のそれぞれ48%、99%、49%及び83%減少させたことを立証した。
【0089】
この結果は、本発明の化合物が、抗うつ特性を有することを立証するものである。
【0090】
実施例G:NMRIマウスにおける尾懸垂試験
マウスにおける尾懸垂試験(Porsolt et al., Arch. Int. Pharmacol., 1987, 288:11)によって、化合物の精神薬理学的特性の検出が可能である。NMRIマウスを、一片の粘着テープを利用して、尾によってフックから6分間懸垂させ、不動の時間を、運動検出装置を利用して自動的に測定した。懸垂させる24時間30分前に、動物を、腹腔内経路によって、本発明の化合物又はその担体で処理した。
【0091】
結果は、実施例1、4、5、13、14及び15が、腹腔内10mg/kgの用量で投与されたとき、不動時間をそれぞれ59%、36%、64%、53%、36%及び77%短縮することを示した。この結果は、本発明の化合物の抗うつ特性を確認するものである。
【0092】
実施例H:NMRIマウスにおける強制水泳試験
強制水泳試験は、化合物の抗うつ特性を検出するのに非常に広く用いられる(Porsolt et al., Arch. Int. Pharmacol., 1977, 229:327-336)。動物を、水を満たした円筒(14cm)に6分間入れ、ビデオ追跡システムによって、不動時間を最後の4分間について測定した。マウスを円筒にいれる30分前に、本発明の化合物又はその担体を腹腔内経路によって投与した。
【0093】
実施例1、5及び15は、腹腔内30mg/kgの用量で、不動をそれぞれ76%、32%及び34%短縮した。この結果は、本発明の化合物の抗うつ特性を示すものである。
【0094】
実施例I:医薬組成物
それぞれ活性成分100mgを含有する1、000錠のための製造処方:
実施例1の化合物 100g
ヒドロキシプロピルセルロース 20g
ポリビニルピロリドン 20g
コムギデンプン 150g
乳糖 900g
ステアリン酸マグネシウム 30g
【0095】
本発明の態様は、以下のとおりである。
【0096】
1. 式(I):
【化12】


[式中、
・ALKは、アルキレン鎖を表し、
・Wは、下記:
【化13】


(式中、R及びR’は、それぞれ互いに独立して、水素、あるいは、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される一つ以上の基で置換されている直鎖状もしくは分岐の(C〜C)アルキル基を表す)から選択される基を表し、
−用語「アルキレン」は、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐の二価の基を表し、
−用語「アルコキシ」は、直鎖状又は分岐であるアルキル鎖が1〜6個の炭素原子を有する、アルキル−オキシ基を表すと解される]
で示される化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【0097】
2. W基がパラ位に位置する、上記1の式(I)の化合物。
【0098】
3. ALKが、エチレン、プロピレン又はブチレン基を表す、上記1の式(I)の化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【0099】
4. ALKがプロピレン基を表す、上記1の式(I)の化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【0100】
5. W基が、基−CO−NH、−NH−CO−CH、−N(CH)−CO−CH又はNH−CO−CH−OCHを表す、上記1の式(I)の化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【0101】
6. W基が、基−CO−NHを表す、上記1の式(I)の化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【0102】
7. ・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−N−メチルアセトアミド、
・N−(4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}フェニル)アセトアミド、
・N−(4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド、
・4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド、
・4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}ベンズアミド、
・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド、
・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)アセトアミド、
である、上記1の式(I)の化合物、及び薬学的に許容され得る酸もしくは塩基とのその付加塩。
【0103】
8. 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩である、上記1の式(I)の化合物。
【0104】
9. 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミドベンズアミドシュウ酸塩である、上記1の式(I)の化合物。
【0105】
10. 4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミドクエン酸塩である、上記1の式(I)の化合物。
【0106】
11. 上記1の式(I)の化合物を製造する方法であって、出発材料として、式(II):
【化14】


[式中、Wは、上記1で定義されたとおりである]で示される化合物を用いて、式(II)の化合物と、式(III):
【化15】


[式中、ALKは、上記1で定義されたとおりである]で示される化合物とを塩基性媒体中で縮合させて、式(IV):
【化16】


[式中、W及びALKは、上記に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、これと、式(V):
【化17】


で示される化合物とを縮合させて、上記に定義されたとおりの式(I):
【化18】


で示される化合物を得て、これを、慣用の分離手法に従って精製してもよく、所望であれば、これを、薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩へと転換し、そしてこれを、適切な場合は、慣用の分離手法に従ってその異性体に分離することを特徴とする方法。
【0107】
12. W=−CONRR’[W、R及びR’は、上記1で定義されたとおり]である式(I)の化合物の合成中間体として用いるための、式(VI):
【化19】


[式中、ALK基は、上記1で定義されたとおりである]で示される化合物。
【0108】
13. W=−CONRR’[W、R及びR’は、上記1で定義されたとおり]である式(I)の化合物の合成中間体として用いるための、式(VII):
【化20】


[式中、ALK基は、上記1で定義されたとおりである]で示される化合物。
【0109】
14. W=−CONRR’[W、R及びR’は、上記1で定義されたとおり]である式(I)の化合物の合成中間体として用いるための、式(VIII):
【化21】


[式中、ALK基は、上記1で定義されたとおりであり、そしてR”は、直鎖状又は分岐の(C1〜C6)アルキル基を表す]で示される化合物。
【0110】
15. W=−CONRR’[W、R及びR’は、上記1で定義されたとおり]である式(I)の化合物の合成中間体として用いるための、式(IX):
【化22】


[式中、ALK基は、上記に定義されたとおりである]で示される化合物。
【0111】
16. 活性成分として、上記1〜10のいずれか1の式(I)の化合物、又は薬学的に許容され得る酸もしくは塩基とのその付加塩の少なくとも一つを、それ自体でか、あるいは薬学的に許容され得る賦形剤の一つ以上と組み合わせて含む医薬組成物。
【0112】
17. 脳の加齢、神経変性性疾患又は頭蓋外傷に付随する認知障害及び精神行動学的障害の処置、ならびに気分障害、統合失調症及びそれに付随する認知障害、睡眠障害、睡眠覚醒リズム障害、注意欠陥多動症候群又は肥満症の処置に用いるための、上記16の医薬組成物。
【0113】
18. アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、レヴィー小体認知症、前頭及び皮質下認知症、前側頭認知症、血管性認知症、ハンチントン病又は多発性硬化症に付随する認知障害ならびに精神行動学的障害の処置に用いるための、上記17の医薬組成物。
【0114】
19. 睡眠障害、無気力症及び/もしくは抑うつ状態のような精神行動学的障害の処置に用いるための、上記17又は18の医薬組成物。
【0115】
20. ナルコレプシー;閉塞性睡眠無呼吸症候群又は注意欠陥多動症候群の際に生じる過眠症;及び日中過眠症のような睡眠障害の処置に用いるための、上記17の医薬組成物。
【0116】
21. アルツハイマー病及びパーキンソン病に付随する睡眠障害の処置に用いるための、上記18の医薬組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化23】


[式中、
・ALKは、アルキレン鎖を表し、
・Wは、下記:
【化24】


(式中、R及びR’は、それぞれ互いに独立して、水素、あるいは、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ及びアルコキシから選択される一つ以上の基で置換されている直鎖状もしくは分岐の(C〜C)アルキル基を表す)から選択される基を表し、
−用語「アルキレン」は、2〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐の二価の基を表し、
−用語「アルコキシ」は、直鎖状又は分岐であるアルキル鎖が1〜6個の炭素原子を有する、アルキル−オキシ基を表すと解される]
で示される化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【請求項2】
W基がパラ位に位置する、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
ALKが、エチレン、プロピレン又はブチレン基を表す、請求項1記載の式(I)の化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【請求項4】
ALKがプロピレン基を表す、請求項1記載の式(I)の化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【請求項5】
W基が、基−CO−NH、−NH−CO−CH、−N(CH)−CO−CH又はNH−CO−CH−OCHを表す、請求項1記載の式(I)の化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【請求項6】
W基が、基−CO−NHを表す、請求項1記載の式(I)の化合物、その鏡像異性体及びジアステレオ異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩。
【請求項7】
・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−N−メチルアセトアミド、
・N−(4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}フェニル)アセトアミド、
・N−(4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド、
・4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド、
・4−{2−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]エトキシ}ベンズアミド、
・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)−2−メトキシアセトアミド、
・N−(4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}フェニル)アセトアミド、
である、請求項1記載の式(I)の化合物、及び薬学的に許容され得る酸もしくは塩基とのその付加塩。
【請求項8】
4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミド塩酸塩である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミドベンズアミドシュウ酸塩である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
4−{3−[(1R,5S)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル]プロポキシ}ベンズアミドクエン酸塩である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
請求項1記載の式(I)の化合物を製造する方法であって、出発材料として、式(II):
【化25】


[式中、Wは、請求項1で定義されたとおりである]で示される化合物を用いて、式(II)の化合物と、式(III):
【化26】


[式中、ALKは、請求項1で定義されたとおりである]で示される化合物とを塩基性媒体中で縮合させて、式(IV):
【化27】


[式中、W及びALKは、上記に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、これと、式(V):
【化28】


で示される化合物とを縮合させて、上記に定義されたとおりの式(I):
【化29】


で示される化合物を得て、これを、慣用の分離手法に従って精製してもよく、所望であれば、これを、薬学的に許容され得る酸又は塩基とのその付加塩へと転換し、そしてこれを、適切な場合は、慣用の分離手法に従ってその異性体に分離することを特徴とする方法。
【請求項12】
W=−CONRR’[W、R及びR’は、請求項1で定義されたとおり]である式(I)の化合物の合成中間体として用いるための、式(VI):
【化30】


[式中、ALK基は、請求項1で定義されたとおりである]で示される化合物。
【請求項13】
W=−CONRR’[W、R及びR’は、請求項1で定義されたとおり]である式(I)の化合物の合成中間体として用いるための、式(VII):
【化31】


[式中、ALK基は、請求項1で定義されたとおりである]で示される化合物。
【請求項14】
W=−CONRR’[W、R及びR’は、請求項1で定義されたとおり]である式(I)の化合物の合成中間体として用いるための、式(VIII):
【化32】


[式中、ALK基は、請求項1で定義されたとおりであり、そしてR”は、直鎖状又は分岐の(C1〜C6)アルキル基を表す]で示される化合物。
【請求項15】
W=−CONRR’[W、R及びR’は、請求項1で定義されたとおり]である式(I)の化合物の合成中間体として用いるための、式(IX):
【化33】


[式中、ALK基は、上記に定義されたとおりである]で示される化合物。
【請求項16】
活性成分として、請求項1〜10のいずれか一項記載の式(I)の化合物、又は薬学的に許容され得る酸もしくは塩基とのその付加塩の少なくとも一つを、それ自体でか、あるいは薬学的に許容され得る賦形剤の一つ以上と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項17】
脳の加齢、神経変性性疾患又は頭蓋外傷に付随する認知障害及び精神行動学的障害の処置、ならびに気分障害、統合失調症及びそれに付随する認知障害、睡眠障害、睡眠覚醒リズム障害、注意欠陥多動症候群又は肥満症の処置に用いるための、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、レヴィー小体認知症、前頭及び皮質下認知症、前側頭認知症、血管性認知症、ハンチントン病又は多発性硬化症に付随する認知障害ならびに精神行動学的障害の処置に用いるための、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
睡眠障害、無気力症及び/もしくは抑うつ状態のような精神行動学的障害の処置に用いるための、請求項17又は18記載の医薬組成物。
【請求項20】
ナルコレプシー;閉塞性睡眠無呼吸症候群又は注意欠陥多動症候群の際に生じる過眠症;及び日中過眠症のような睡眠障害の処置に用いるための、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項21】
アルツハイマー病及びパーキンソン病に付随する睡眠障害の処置に用いるための、請求項18記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2009−298790(P2009−298790A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−140660(P2009−140660)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【Fターム(参考)】