説明

新規エーテル化合物

【課題】洗浄剤に配合した場合等の洗浄力に優れた新規なポリグリセリルモノエーテルを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される新規エーテル化合物。


(式中、Rは、炭素数4〜22の炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリグリセリルモノエーテル化合物、該化合物からなる界面活性剤、該化合物を含有する洗浄剤組成物、該化合物を含有するポリグリセリルエーテル組成物並びに、該化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリセリルエーテル誘導体は、例えば、溶剤、乳化剤、分散剤、洗浄剤、増泡剤などとして有用な化合物である。ポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法としては、アルコール類にグリシドールを反応させる方法が知られている。この方法においては、従来、アルコール類に主にアルカリを作用させた後、グリシドールを滴下して反応させていた。また、脂肪族アルコールにグリシジルエステルを付加重合したのち、アルカリを用いて鹸化処理することによりアシル基を脱離する方法(特許文献1参照)、及びアルキルグリシジルエーテルをグリセリンと反応させ、アルキルジグリセリルエーテルを合成し、その水酸基にハロゲン化アリルを縮合させ、次いでアリル基を2個の水酸基に変換する操作を、目的の重合度に達するまで繰り返す方法(特許文献2参照)も知られている。更に、脂肪族アルコールに触媒存在下、グリシドールを付加重合させる方法(非特許文献1参照)も知られている。
【0003】
一方、グリセリンを原料とするグリセリンのモノアルキルエーテル、ポリグリセリンのモノアルキルエーテルを洗浄剤組成物に配合することが特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特開平9−188755号公報
【特許文献2】特開2001−114720号公報
【特許文献3】特開2001−49290号公報
【非特許文献1】GLYCIDOL: properties, reactions, applications Kleemann, Axel Dr. Alfred Huthig Verlag Heidelberg 1981
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来提案されているグリセリルモノエーテル又はポリグリセリルモノエーテルは、洗浄剤組成物に配合した場合等の洗浄力の向上について、更なる改良が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、洗浄剤に配合した場合等の洗浄力に優れた新規なポリグリセリルモノエーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表される新規エーテル化合物に関する。
【0007】
【化4】

【0008】
(式中、Rは、炭素数4〜22の炭化水素基を表す。)
【0009】
また、本発明は、下記一般式(2)で表される化合物とアルキルグリシジルエーテルとを反応させる工程を有する、上記本発明の新規エーテル化合物の製造方法に関する。
【0010】
【化5】

【0011】
(式中、X、Yは、それぞれ、保護基を含む基を示す。)
【0012】
また、本発明は、上記本発明の新規エーテル化合物からなる界面活性剤に関する。
【0013】
また、本発明は、上記本発明の新規エーテル化合物を含有する洗浄剤組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、上記本発明の新規エーテル化合物(a1)と、グリセリンの縮合度が1〜7であって前記エーテル化合物(a1)以外のポリグリセリルモノエーテル(a2)とからなるポリグリセリルエーテル組成物、及び該ポリグリセリルエーテル組成物を含有する洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一般式(1)で表されるエーテル化合物は、水中での界面活性能が効率的に発現するため、界面活性剤として、更には、洗浄剤組成物に配合する成分として有用である。また、本願発明の製造方法は、このような新規なエーテル化合物を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
一般式(1)のエーテル化合物はポリグリセリルモノエーテルの一種であり、グリセリン骨格が規則的に放射線状に分岐した骨格構造を持つ、いわゆるデンドリマー型ポリグリセリンである。
【0017】
一般式(1)中のRは、炭素数4〜22の炭化水素基であり、二重結合及び/又は分岐鎖を含んでも良い。一般式(1)中のRは、としては、アルキル基、アルケニル基が挙げられる。炭素数4〜22のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖のものが挙げられ、具体的には、直鎖アルキル基として、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基が挙げられる。
【0018】
また、分岐鎖アルキル基として、8〜20のα−オレフィンと一酸化炭素によるオキソ法で得られた9〜21のβ分岐アルコール又はα分岐脂肪酸から誘導されたアルキル基、又は炭素数4〜10の直鎖アルデヒド化合物のアルドール縮合で得られるゲルベ型アルコールから誘導されたアルキル基が挙げられる。
【0019】
また、直鎖アルケニル基として、パルミトイル基、オレイル基、リノール基、リノレン基が挙げられる。
【0020】
衣料用洗浄剤といった用途においては、Rは炭素数10〜16、更に12〜14のアルキル基が好ましい。
【0021】
本発明のエーテル化合物は、下記一般式(2)で表される化合物とアルキルグリシジルエーテルを反応させて得ることができる。
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、X、Yは、それぞれ、保護基を含む基を示す。)
【0024】
上記一般式(2)で表される化合物中のX、Yは、アルキルグリシジルエーテルとの反応における保護基(保護された部位)を含む基であり、脱保護反応によりグリセリン骨格を与える基である。また、X、Yは、カルボニル基及び/又はオキシ基を含むことができ、環構造を含むことができる。X、Yは、少なくとも1つ、更には両方が、アセタール構造を含む基であることが好ましい。
【0025】
上記一般式(2)で表される化合物中のX、Yのうち、少なくとも1つ、更には両方が下記一般式(3)で表される、保護基を含む基であることが好ましい。
【0026】
【化7】

【0027】
上記一般式(2)で表される化合物であって、一般式(3)の基を有する化合物は、グリセリンアセタールとエピハロヒドリンとの反応により、またトリグリセリンをケトンもしくはアルデヒドで保護することにより入手することができる。
【0028】
一般式(3)で表される基のように、アセタール構造を含む基としては、以下の基が挙げられる。なお、Phはフェニル基である。
【0029】
【化8】

【0030】
また、一般式(2)中のX、Yの他の例としては、以下の基が挙げられ、これらの中では、シリル基を含む一般式(3a)の基が好ましい。
【0031】
【化9】

【0032】
〔式中、R1、R2、R3、R1'、R2'、R3'は、それぞれ、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アリル基、t−ブチル基、ベンジル基のような炭化水素基、またはメトキシメチル基、エトキシメチル基、ベンジロキシメチル基のようなアルコキシ置換されたメチル基等のアルキル基を表す。また、式中、R1、R2、R3、R1'、R2'、R3'は、それぞれ同一でも異なっていても良い。〕
【0033】
また、アルキルグリシジルエーテルは、炭素数6〜20のアルキル基を有するものが好ましく、対応するアルコールとエピハロヒドリンにより合成することができる。また、市販品としては、四日市合成株式会社製エポゴーセーEX、セチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0034】
一般式(2)で表される化合物中のX、Yの両方が上記一般式(3)で表される基である化合物〔下記一般式(4)の化合物〕と、アルキルグリシジルエーテル〔下記一般式(5)の化合物、Rは好ましくは炭素数6〜20のアルキル基〕とを反応させる場合、本発明のエーテル化合物は、以下のような反応により得ることができる。一般式(2)で表される化合物中のX、Yが他の基である化合物を用いる場合も、基本的には同様に反応を行うことができる。
【0035】
【化10】

【0036】
上記一般式(2)で表される化合物、特に一般式(4)で表される化合物と、アルキルグリシジルエーテルとの反応に際して、両者の反応モル比は、一般式(2)の化合物、特に一般式(4)で表される化合物1モルに対してアルキルグリシジルエーテル0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.1〜3モル、更に好ましくは0.1〜1.5モルの割合で用いられる。
【0037】
反応は無触媒で行うこともできるが、酸触媒やアルカリ触媒等を用いることもできる。本反応で用いられる触媒に特に制限はないが、BF3・OEt2、TiCl4、SnCl4、AlCl3、硫酸、過塩素酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、等の酸触媒、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)2等の金属水酸化物、LiH、NaH、KH等の金属水素化物、一般式(R1O)m1(R1はアルキル基、M1は金属元素、mは金属のイオン価数を示す)で表される金属アルコラート、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ナフタレンカリウム、グリニャール試薬等の有機金属試薬、等のアルカリ触媒が挙げられる。これらの中では、BF3・OEt2やTlCl4、パラトルエンスルホン酸、金属水酸化物、金属水酸化物が、高活性で好ましく、中でも、NaOH、KOH、ナトリウム水素化物、カリウム水素化物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシドが、利便性と高活性を兼備した触媒種として好ましい。
【0038】
これらの触媒の使用量は、使用する触媒の活性や、アルキルグリシジルエーテルの量や濃度等により適宜選択すればよいが、一般式(2)の化合物に対して、0.001〜2モル当量が好ましく、0.005〜1.5モル当量がより好ましく、0.01〜1.0モル当量が更に好ましい。
【0039】
また、反応は、無溶媒で行うこともできるが、原料の混合を助ける目的で有機溶媒を適宜用いることができる。かかる有機溶媒としては、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、ニトロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる、また、反応は空気中で行うこともできるが、副生成物の生成を抑える目的で、不活性ガス中、例えば、窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
【0040】
反応温度は、使用するアルキルグリシジルエーテル類の種類や、触媒の種類と量などにより左右されるが、実用的な反応時間、収率などの面から、通常、0〜200℃程度、好ましくは30〜170℃、より好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は、反応条件等を考慮して適宜決定されるが、通常、30分から100時間程度、好ましくは1〜50時間、より好ましくは1〜30時間である。副反応抑制等の観点からは、アルキルグリシジルエーテルは、滴下により反応系に導入することが好ましい。
【0041】
反応終了後、反応液を必要に応じ洗浄処理したのち、ろ過、蒸留、抽出などの方法により処理し、必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0042】
上記スキームにおける縮合反応後の生成物は、脱保護工程を経ることによって、本発明の新規エーテル化合物に導くことができる。一般式(2)で表される化合物中のX、Yの両方が上記一般式(3)で表される基である化合物〔上記一般式(4)の化合物〕と、アルキルグリシジルエーテル〔上記一般式(5)の化合物、Rは好ましくは炭素数6〜20のアルキル基〕とを反応させた場合、かかる脱保護工程では、加水分解や加溶媒分解等、公知の反応を用いることができる。脱保護反応終了後、反応液を必要に応じて洗浄処理した後、ろ過、脱塩、蒸留、抽出などの方法により処理し、目的の新規エーテル化合物を得ることができ、必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0043】
本発明の新規エーテル化合物は、それ自体で界面活性剤、特に非イオン界面活性剤として使用できる。また、水で希釈して界面活性剤組成物として用いることができる。また、界面活性剤の用途は特に限定されない。また、界面活性剤の使用形態も特に限定されない。例えば、化合物単独、水溶液、水分散液、又は他の油相を含む乳化液、含水ゲル、アルコール溶液又は分散液や油性ゲル、ワックス等の固体状物質との混合又は浸潤・浸透等の状態又は形態であってもよい。
【0044】
本発明の新規エーテル化合物は、例えば、乳化、可溶化、分散、洗浄、起泡、消泡、浸透、抗菌等の目的で、乳化剤、可溶化剤、分散剤、洗浄剤、起泡剤、消泡剤、浸透剤、抗菌剤等として、食品、化粧品、香粧品、洗浄剤、農薬、医薬品等の用途において、前記の使用形態で広く利用することができる。特に、洗浄剤用として優れている。
【0045】
本発明のエーテル化合物はポリグリセリルエーテルであるので、他のポリグリセリルエーテルと併用してポリグリセリルエーテル組成物を得ることができる。そのような例として、本発明の新規エーテル化合物(a1)〔以下、(a1)成分という〕と、グリセリンの縮合度が1〜7であって前記エーテル化合物(a1)以外のポリグリセリルモノエーテル(a2)〔以下、(a2)成分という〕とからなるポリグリセリルエーテル組成物〔以下、(a)成分という〕が挙げられる。洗浄剤組成物用途においては、(a)成分中の(a1)成分の割合が0.1質量%以上、更に3〜100質量%、更に5〜100質量%、更に10〜100質量%、更に20〜100質量%、より更に50〜100質量%であることが好ましい。この範囲において低温洗浄性に優れる。
【0046】
本発明により、本発明のエーテル化合物を含有する洗浄剤組成物、また、上記(a)成分を含有する洗浄剤組成物が提供される。一例として、(a)成分とアルカリ剤(b)〔以下、(b)成分という〕とを含有する洗浄剤組成物が挙げられる。
【0047】
(b)成分としては、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩、オルトケイ酸塩、メタケイ酸塩、結晶性珪酸塩、リン酸塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。これらのアルカリ剤は1種類でも、2種類以上の混合物としても用いることができる。具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、1号ケイ酸ナトリウム、2号ケイ酸ナトリウム、3号ケイ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。ここで、結晶性珪酸塩は、20℃のイオン交換水に0.1質量%分散した分散液の最大pHが11以上であり、且つこの分散液1LのpHを10にするために5ml以上の0.1N−HCl水溶液を要するアルカリ性物質であり、ゼオライト(結晶性アルミノ珪酸塩)とは区別される。結晶性珪酸塩は層状ものが好ましく、特開平7−89712号公報、特開昭60−227895号公報及びPhys.Chem.Glasses.7,p127-p138(1966)、Z.Kristallogr.,129,p396-p404(1969)等に記載されているものを使用できる。0.42Na2O・0.14K2O・SiO2・0.03CaO・0.0005MgOで表される結晶性珪酸塩が好適に用いられる。また、ヘキスト社より商品名「Na−SKS−6」(δ−Na2Si25)として、粉末状、顆粒状のものが入手できる。
【0048】
本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、上記(a)成分、(b)成分の他に、界面活性剤、ゼオライト、その他衣料用洗剤の分野で公知の成分を含有することができる。
【0049】
本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、(a)成分以外の界面活性剤を含有することができる。(a)成分以外の界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤の1種又は組み合わせを挙げることができるが、好ましくは陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤である。
【0050】
陰イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩又は脂肪酸塩が好ましい。本発明では特に、アルキル鎖の炭素数が10〜14、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。これらの塩の対イオンとしては、アルカリ金属塩やアミン類が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
【0051】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)エーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが好ましい。特に、非イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを4〜20モル付加した〔HLB値(グリフィン法で算出)が10.5〜15.0、好ましくは11.0〜14.5であるような〕ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0052】
本発明のケイ酸塩化合物は、洗剤用ビルダーとして広く利用されているものが使用できる。例えば、結晶性又は非結晶性アルミノケイ酸塩やシリケート等が挙げられる。なかでもゼオライトが好ましい。
【0053】
ゼオライトとしては、式(c1)で表される化合物が好ましく、更に(c2)で表される化合物が好ましい。
【0054】
a(M2O)・Al23・b(SiO2)・w(H2O) (c1)
(式中、Mはアルカリ金属原子、a、b、wは各成分のモル比を表し、一般的には0.7≦a≦1.5、0.8≦b≦6、wは任意の正数を表す。)
Na2O・Al23・n(SiO2)・m(H2O) (c2)
(ここで、nは1.8〜3の数を表し、mは1〜6の数を表す。)
【0055】
ゼオライトとしては、A型、X型あるいはP型ゼオライトに代表される合成ゼオライトが挙げられる。ゼオライトの好適な平均粒子径は0.1〜10μmである。
【0056】
また、本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、有機ビルダーや、(b)成分、ゼオライト以外の無機ビルダーを含有することができる。有機ビルダーとしては、カルボン酸塩(アミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、シクロカルボン酸塩、マレイン酸誘導体、シュウ酸塩等)、有機カルボン酸(塩)ポリマー(アクリル酸重合体及び共重合体、多価カルボン酸重合体及び共重合体、グリオキシル酸重合体、多糖類及びこれらの塩等)等が挙げられる。中でも有機カルボン酸(塩)ポリマーが好ましい。これらビルダーの塩において、対イオンとしては、アルカリ金属塩、アミン類が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。これらのビルダーは、単独で又は2種以上を併用することができる。
【0057】
本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、漂白剤(過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤等)、再汚染防止剤(カルボキシメチルセルロース等)、柔軟化剤(ジアルキル型第四級アンモニウム塩、粘土鉱物等)、還元剤(亜硫酸塩等)、蛍光増白剤(ビフェニル型、アミノスチルベン型等)、泡コントロール剤(シリコーン等)、香料、酵素(プロテアーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ等)等の添加剤を含有させることができる。
【0058】
また、組成物が粒子状である場合の流動性及び耐ケーキング性の観点から、表面改質を行っても良い。表面改質剤としては、ゼオライトを用いることができ、その他に、ケイ酸カルシウム、二酸化ケイ素、ベントナイト、タルク、クレイ、非晶質シリカ誘導体等の珪酸塩化合物、金属石鹸、粉末の界面活性剤等の微粉体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸とマレイン酸のコポリマー又はその塩等のポリカルボン酸塩等の水溶性ポリマー、脂肪酸が挙げられる。より好ましくはゼオライトである。なお、(b)成分のうち、結晶性珪酸塩は表面改質剤としての効果も具備するため、好ましい。
【0059】
本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、(a1)成分を0.1〜80質量%、更に1〜40質量%、特に3〜20質量%含有することが好ましい。
【0060】
また、本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、(a)成分を0.1〜80質量%、更に1〜40質量%、特に3〜20質量%含有することできる。
【0061】
なお、本発明の衣料用洗剤組成物は、(a1)成分、(a2)成分以外のポリグリセリルアルキルエーテル(a’)〔以下、(a’)成分という〕を含有することもできる。
【0062】
また、本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、(b)成分を1〜90質量%、更に5〜50質量%、特に10〜40質量%含有することが好ましい。
【0063】
また、本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、(a)成分以外の界面活性剤を0.1〜50質量%、更に3〜30質量%、特に5〜15質量%含有することが好ましい。
【0064】
また、本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、ゼオライトを1〜90質量%、更に5〜50質量%、特に10〜40質量%含有することが好ましい。
【0065】
また、本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、(b)成分以外の無機塩を0.1〜80質量%、更に5〜50質量%、特に10〜40質量%含有することが好ましい。
【0066】
本発明の洗浄剤組成物、特に衣料用洗浄剤組成物は、液体でも粉末でも構わないが、洗浄性の理由から粉末状である場合には、嵩密度が300〜1000g/L、更に500〜900g/L、特に600〜800g/Lであることが好ましい。また、平均粒子径が150〜3000μm、更に500〜1500μm、特に600〜1200μmであることが好ましい。
【0067】
溶解性の理由から液体状である場合には、粘度が1〜1000mmPa・s、更に10〜500、特に50〜300であることが好ましい。また、pHが4〜13、更に5〜11、特に7〜11であることが好ましい。
【実施例】
【0068】
実施例1
下記(III)の新規エーテル化合物を以下のスキームで合成した。
【0069】
【化11】

【0070】
攪拌装置、窒素導入管および温度計を備えた3リットルの四つ口フラスコにエピクロロヒドリン333g及び2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール1500gを加えて攪拌し、40℃に昇温した。ここに48%苛性ソーダ水溶液450gを90分かけて滴下し、20時間、加熱攪拌を続けた。反応終了後、水1000gを加えて静置分層させて有機層を回収した。得られた有機層は190℃、0.2kPaで蒸留精製し、化合物(I)を755g得た。
【0071】
化合物(I)の核磁気共鳴スペクトル測定を行った結果を図1に示す(1H核、重クロロホルム溶媒)。また、化合物(I)の一部を、ジーエルサイエンス社製TMS−Iを用いて水酸基のトリメチルシリル化を行い、ガスクロマトグラフィー質量分析装置にて分析を行ったところ、単一の生成物であることが確認され、分子量393、組成式C18367Siを得た、これは理論値と完全に一致した。以上の結果から化合物(I)の構造であることを確認した。
【0072】
攪拌装置、窒素導入管および温度計を備えた200ミリリットルの四つ口フラスコに化合物(I)16.0g、水素化ナトリウム0.1gを加えて攪拌し、120℃に昇温した。ここに、ラウリルグリシジルエーテル6.05gを90分かけて滴下し、さらに3時間、加熱攪拌を続けた。室温まで冷却した後、反応混液に水を加え、酢酸エチルにて有機物を抽出した。溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(II)を4.5g得た。
【0073】
攪拌装置、ディーンスターク、冷却管及び温度計を備えた500ミリリットルの四つ口フラスコに化合物(II)4.5g、エタノール200g、水20g及び0.1M硫酸2gを加えて攪拌し、95℃に昇温して溶媒及びアセトンを連続的に留去した。反応終了後、残渣に水および0.1M苛性ソーダ水溶液4g加えた後、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂に通じて脱塩し、減圧下脱水して化合物(III)を3.8g得た。
【0074】
本化合物(III)の核磁気共鳴スペクトル測定及び赤外線吸収スペクトル測定を行った。重水を含んだ重ジメチルスルホキシド溶媒中の1H核のスペクトルデータを図2に、13C核のスペクトルデータを図3に、さらに赤外吸収スペクトル(液膜法)を図4に示す。
【0075】
また、化合物(III)0.05gにジーエルサイエンス社製TMS−Iを加えて加熱攪拌し、水酸基をトリメチルシリル化した後に、ガスクロマトクラフィー質量分析装置にて分析を行った。その結果、単一のピークであることが確認され、分子量843、組成式C39909Si5を得た。これは理論値と完全に一致した。以上のスペクトルデータから、得られた生成物が化合物(III)の構造〔一般式(1)中のRが炭素数12の直鎖アルキル基〕であることを確認した。
【0076】
なお、本実施例で用いた分析装置と測定条件は、以下である。
<核磁気共鳴装置>
Varian製 Marcury-400BB
測定条件
1H NMR・・・400MHz、緩和時間1秒、積算回数8回、室温
13C NMR・・・100MHz、緩和時間1秒、積算回数512回、室温
<赤外分光装置>
堀場製作所製 FT−710
【0077】
実施例2
下記の成分を用いて、表1に示す洗剤組成物を調製し、下記の方法で洗浄力を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
・a1−1:実施例1で得た、デンドリマー型テトラグリシジルポリラウリルエーテル〔(a1)成分100質量%〕
・a2−1:ラウリルアルコールに4モル倍のグリシドールをアルカリ触媒の存在下で反応させて得たポリグリセリルラウリルエーテル〔(a1)成分0質量%〕
・LAS:花王(株)製ネオペレックスG−15
・ゼオライト:(株)東ソー製、平均粒径3μmの4A型ゼオライト
【0079】
〔1〕洗浄力の評価方法
水道水1Lに対して表1に示す洗剤組成物0.6667gを溶解した後、下記の通り調製したミートソース汚染布5枚を入れ、ターゴトメータを用いて80回転/分の条件で20℃又は5℃(何れも液温)、10分間洗濯を行った。十分すすいだ後に乾燥させ、下記の式により洗浄率を測定した。
【0080】
洗浄率(%)=(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(白布の反射率−洗浄前の反射率)×100
【0081】
反射率は日本電色工業(株)製NDR-10DPで460nmフィルターを使用して測定した。
【0082】
<ミートソース汚染布の調製>
市販のミートソース(カゴメ(株)製、完熟トマトのミートソース)を50℃に加熱し、目開き710μmのメッシュを通過させて固形分を濾過して得られた液体、0.4mLを6cm×6cmの木綿金布#2023上に均一に塗布し、20℃、65%RHで15時間乾燥させたものを試験に供した。
【0083】
【表1】

【0084】
表1に示されるように、本発明の新規エーテル化合物を配合することで、20℃、5℃、何れの場合も洗浄力の向上がみられる。従って、本発明の新規エーテル化合物は水に対する溶解性が良好であると考えられる。なお、a1−1の化合物は、油と水の混合物に添加して乳化が確認できた。
【0085】
実施例3
以下の手順で本発明の新規エーテル化合物を含有する洗剤粒子1を製造した。
【0086】
(噴霧乾燥粒子の調製)
混合槽に水410質量部を入れ、水温が45℃に達した後に、硫酸ナトリウム110質量部、亜硫酸ナトリウム8質量部、蛍光染料2質量部を添加して10分間攪拌した。炭酸ナトリウム120質量部を添加し、40質量%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液150質量部を添加し10分間攪拌し、塩化ナトリウム40質量部と、更にゼオライト160質量部を添加し、15分間攪拌して均質なスラリーを得た(スラリー水分50質量%)。このスラリーの最終温度は50℃であった。
【0087】
スラリーをポンプで噴霧乾燥塔(向流式)に供給し、塔頂付近に設置した圧力噴霧ノズルから噴霧圧2.5MPaで噴霧を行った。噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が285℃で供給され、塔頂より98℃で排出された。得られた噴霧乾燥粒子1の水分は0.0%、嵩密度は510g/L、平均粒径290μmであった。
【0088】
(界面活性剤組成物の調製)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル400質量部とポリエチレングリコール(固形分60質量%)69質量部を80℃に加熱し、そこに実施例2で用いたa1−1成分3質量部とa2−1成分440質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸960質量部と48%水酸化ナトリウム水溶液258質量部を添加、撹拌して界面活性剤組成物を調製した。
【0089】
(洗剤粒子の調製)
上記で調製した界面活性剤組成物を80℃にした。次に、レディゲミキサー(松坂技研(株)製、容量130L、ジャケット付)に上記で調製した噴霧乾燥粒子を50質量部、炭酸ナトリウム9.332質量部投入し、主軸(攪拌翼、回転数:60rpm、周速:1.6m/s)の攪拌を開始した。尚、ジャケットに80℃の温水を10L/分で流した。そこに、上記界面活性剤組成物の21.27質量部を2分間で投入し、その後5分間攪拌を行い、界面活性剤組成物を担持させて、ベース洗剤粒子を得た。
【0090】
次に80℃に加熱した脂肪酸0.916質量部をスプレー噴霧しながら投入後、更に5分間攪拌を行った。この操作により、脂肪酸は炭酸ナトリウムと反応し、1質量部の石鹸となった。ポリエチレングリコール(有効分60質量%)を1.67質量部(有効分1.00質量部)投入し、層状粘土鉱物(ラウンドロジルDGAパウダー(ズード・ケミ社製))を1質量部と結晶性珪酸ナトリウム2質量部を投入し、5分間攪拌を行った。続いて5質量部のゼオライトを投入し、主軸(回転数:120rpm、周速:3.1m/s)とチョッパー(回転数:3600rpm、周速:28m/s)の攪拌を30秒間行った。レディゲミキサーの運転条件を、主軸(攪拌翼、回転数:60rpm、周速:1.6m/s)に戻し、更に10質量部のゼオライトを投入した。更にもう一度主軸(回転数:120rpm、周速:3.1m/s)とチョッパー(回転数:3600rpm、周速:28m/s)の攪拌を30秒間行った後、排出し、洗剤粒子1を得た。得られた洗剤粒子1の嵩密度は795g/L、平均粒径は315μmであった。
【0091】
比較例1
実施例3の界面活性剤組成物を以下により調製した界面活性剤組成物2とした他は実施例3と同様の条件で洗剤粒子2を得た。得られた洗剤粒子2の嵩密度は795g/L、平均粒径は315μmであり、本発明の新規エーテル化合物であるa1−1成分を添加した実施例3の洗剤粒子1と比較して嵩密度、平均粒径に全く変化が認められず、洗剤粒子1と同一の嵩密度、平均粒径を有する洗剤粒子が得られた。
【0092】
(界面活性剤組成物2の調製)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル400質量部とポリエチレングリコール(固形分60質量%)69質量部を80℃に加熱し、そこに実施例2で用いたa2−1成分440質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸960質量部と48%水酸化ナトリウム水溶液258質量部を添加、撹拌して界面活性剤組成物を調製した。
【0093】
<洗浄試験>
実施例3で得られた洗剤粒子1、及び比較例1で得られた洗剤粒子2を用いて、実施例2と同様の条件で洗浄試験を行った。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施例で得られた化合物(I)の核磁気共鳴スペクトル(1H核)測定の結果を示すチャート
【図2】実施例で得られた化合物(III)の核磁気共鳴スペクトル(1H核)測定の結果を示すチャート
【図3】実施例で得られた化合物(III)の核磁気共鳴スペクトル(13C核)測定の結果を示すチャート
【図4】実施例で得られた化合物(III)の赤外線吸収スペクトル測定の結果を示すチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される新規エーテル化合物。
【化1】


(式中、Rは、炭素数4〜22の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)中のRが、炭素数12〜18のアルキル基である請求項1記載の新規エーテル化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表される化合物とアルキルグリシジルエーテルとを反応させる工程を有する、請求項1又は2記載の新規エーテル化合物の製造方法。
【化2】


(式中、X、Yは、それぞれ、保護基を含む基を示す。)
【請求項4】
上記一般式(2)で表される化合物中のX、Yのうち、少なくとも1つが下記一般式(3)で表される基である請求項3記載の新規エーテル化合物の製造方法。
【化3】

【請求項5】
請求項1又は2記載の新規エーテル化合物からなる界面活性剤。
【請求項6】
請求項1又は2記載の新規エーテル化合物を含有する洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1又は2記載の新規エーテル化合物(a1)と、グリセリンの縮合度が1〜7であって前記エーテル化合物(a1)以外のポリグリセリルモノエーテル(a2)とからなるポリグリセリルエーテル組成物。
【請求項8】
請求項7記載のポリグリセリルエーテル組成物を含有する洗浄剤組成物。
【請求項9】
更に、アルカリ剤を含有する請求項8記載の洗浄剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−308410(P2008−308410A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154882(P2007−154882)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】